説明

液晶表示装置の製造方法

【課題】液晶表示装置の歩留まりの低下を低減でき、工程管理を容易化でき、コントラスト等の性能を向上できる液晶表示装置の製造方法を得る。
【解決手段】少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含み、溶媒に溶かしたブロックポリマーを、液晶性ポリマー成分が基板とは反対側になるように、TFT基板10、CF基板20に塗布する液晶高分子塗布工程130、140と、配向方向を規定したテンプレートとTFT基板10、CF基板20に各々ギャップを設け低分子液晶を介して対向させ、液晶性ポリマー成分のガラス転移点以上の温度から除冷することにより、液晶性ポリマー成分を規定方向に配向するテンプレート配向工程150、160と、テンプレートと基板間にUVを照射してブロックポリマーをUV硬化させ、配向を固定化するUV硬化工程170、180と、TFT基板10及びCF基板20の間に液晶を充填する液晶適下注入工程230等を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配向膜として、少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含むブロックポリマーを用い、テンプレートを使用して、非接触な方法による均一配向を実現した液晶表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置の製造方法について図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、従来の液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。また、図7は、従来の液晶表示装置の製造方法のラビング工程を示す図である。
【0003】
図6において、上段の工程910A〜工程950と、下段の工程910B〜工程960は、上段及び下段の工程を同時進行で処理する場合もあれば、上段又は下段の工程の後、下段又は上段の工程を処理する場合もある。
【0004】
洗浄工程910Aにおいて、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレイ工程を終了したTFT基板10を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0005】
洗浄工程910Bにおいて、CF(Color Filter:カラーフィルター)生成工程を終了したCF基板20を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0006】
次に、配向膜形成工程920A、920Bは、印刷工程と、プレベーク工程と、本硬化工程の3つの工程からなる。
【0007】
印刷工程において、配向膜(溶媒に溶けたポリイミド)をフレキソ印刷法等でTFT基板10、CF基板20に塗布して、配向膜を形成する。
【0008】
プレベーク工程において、印刷した配向膜から溶媒を飛ばす為に、60〜100℃程度で数分間加熱する。多くはホットプレート方式やオーブン式である。
【0009】
本硬化工程において、最終的な重合を行わせる為に、二百数十℃で数十分加熱する。
【0010】
次に、ラビング工程930A、930Bにおいて、液晶の並び方向(配向の向き)を決める為に、図7に示すように、綿やレーヨンなどの布(バフ材)93を巻き付けたローラ92で、TFT基板10、CF基板20に形成された配向膜91の表面を擦る。
【0011】
次に、洗浄工程940A、940Bにおいて、ラビング工程930A、930Bで発生した布の毛や配向膜の削れカスを洗い流す。
【0012】
次に、導通材塗布工程950において、TFT基板10とCF基板20の導通を取る為、TFT基板10にAgペースト等の導通材を点状に塗布する。なお、IPSモードでは不要である。
【0013】
シール塗布工程960において、液晶が入る領域を囲む為に、CF基板20にシール剤を塗布する。また、シール剤は、TFT基板10とCF基板20を接着させる役割も担う。シール剤を塗布した後、90℃程度で数分間プレベークを行う場合がある。シール剤は熱硬化タイプとUV(Ultraviolet ray:紫外線)硬化タイプがあるが、液晶滴下注入を行う場合は、UV硬化タイプのシール剤を用いる場合が多い。
【0014】
次に、液晶滴下注入工程970は、液晶滴下工程と、重ね合わせ工程の2つの工程からなる。
【0015】
液晶滴下工程において、CF基板20に液晶を必要量滴下する。
【0016】
重ね合わせ工程において、液晶を滴下したCF基板20とTFT基板10を真空下で精密に重ね合わせる。重ね合わせた後、基板を大気中に取り出すことにより、大気圧で目標とするセルGAPまで潰される。その後、シール剤に紫外線(UV)を照射することで、シール剤を半硬化させる。
【0017】
そして、加熱工程980において、150℃程度で数十分加熱し、シール剤を本硬化させると共に、液晶を一旦、等方相から液晶相に再配向させることで配向の安定性を高める。
【0018】
なお、関連の先行技術文献として、ブロックポリマーでない液晶性高分子を配向膜とし液晶が充填されていない状態で磁場を印加する液晶表示装置の製造方法が記載された特許文献1、ブロック共重合体について記載された特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特公平7−54381号公報
【特許文献2】特開2004−124088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、従来の液晶表示装置の製造方法では、一対の基板の相対する表面に液晶配向膜材料を塗布し、塗布した材料を乾燥硬化することにより配向膜を形成し、その配向膜の表面をラビング処理することで、配向特性を持たせていた。従って、ラビング工程930A、930B起因のラビングキズ、異物などの不良が発生し、歩留まりが低下するという問題点があった。また、ラビング工程930A、930Bは制御因子の定量化が難しいため、工程管理が難しいという問題点があった。さらに、ラビングキズや、ラビング方向のズレ、TFT基板10とCF基板20の重ね合わせ時のズレにより、液晶表示装置のコントラストなどの性能が低下するという問題点があった。
【0021】
また、液晶表示装置特有の視野角特性を改善する目的で、2つ以上の配向分割を行う場合、従来の方法では、配向特性を持たせるための処理を分割数に応じて繰り返し行う必要があった。この結果、配向分割を行う場合には、上述した問題とともに、非常に多くの工程を要することとなるため、設備投資やランニングコストの上昇、あるいはスループットの低下といった問題もあった。
【0022】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、液晶表示装置の歩留まりの低下を低減し、工程管理を容易化でき、かつ液晶表示装置のコントラストなどの性能を向上することができる液晶表示装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この発明に係る液晶表示装置の製造方法は、少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含み、この液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせ、溶媒に溶かしたブロックポリマーを、前記液晶性ポリマー成分が基板とは反対側になるように、第1の基板及び第2の基板に塗布する液晶高分子塗布工程と、配向方向を規定したテンプレートと前記ブロックポリマーを塗布した第1の基板、前記テンプレートと前記ブロックポリマーを塗布した第2の基板にそれぞれギャップを設けて、低分子液晶を介して対向させ、前記液晶性ポリマー成分のガラス転移点以上の第1の所定温度から除冷することにより、前記低分子液晶の配向力によって、前記液晶性ポリマー成分を規定方向に配向するテンプレート配向工程と、前記テンプレートと基板間に紫外線を照射して前記ブロックポリマーをUV硬化させ、配向を固定化するUV硬化工程と、液晶が入る領域を囲む為に、前記第2の基板にシール剤を塗布するシール塗布工程と、前記第1の基板及び前記第2の基板の間に液晶を充填形成する液晶滴下注入工程と、第2の所定温度で所定時間加熱する加熱工程とを設けたものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る液晶表示装置の製造方法によれば、配向膜として液晶性高分子を用い、テンプレートによる配向処理を行うことにより、非接触、かつ安価な方法で高い配向性を実現することで、液晶表示装置の歩留まりの低下を低減でき、工程管理を容易化でき、かつ液晶表示装置のコントラストなどの性能を向上することができる液晶表示装置の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法の液晶高分子塗布工程を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法のテンプレート配向工程及びUV硬化工程を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法の加熱・除冷工程及びUV硬化工程を示す図である。
【図6】従来の液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。
【図7】従来の液晶表示装置の製造方法のラビング工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。この実施の形態1では、TFT基板10、CF基板20の両基板ともにテンプレート30を用いて配向させる場合について説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0027】
図1において、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法は、洗浄工程110と、洗浄工程120と、液晶高分子塗布工程130と、液晶高分子塗布工程140と、テンプレート配向工程150と、テンプレート配向工程160と、UV硬化工程170と、UV硬化工程180と、洗浄工程190と、洗浄工程200と、導通材塗布工程210と、シール塗布工程220と、液晶滴下注入工程230と、加熱工程240とが設けられている。
【0028】
図1において、上段の工程110〜工程210と、下段の工程120〜工程220は、上段及び下段の工程を同時進行で処理する場合もあれば、上段又は下段の工程の後、下段又は上段の工程を処理する場合もある。なお、図1では、TFT基板10に上段の工程110〜工程210を実施し、CF基板20に下段の工程120〜工程220を実施しているが、逆でもよい、つまり、CF基板20に上段の工程110〜工程210を実施し、TFT基板10に下段の工程120〜工程220を実施してもよい。
【0029】
つぎに、この実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法の各工程の動作について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図2は、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法の液晶高分子塗布工程を示す図である。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法のテンプレート配向工程及びUV硬化工程を示す図である。
【0031】
まず、図1の洗浄工程110において、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレイ工程を終了したTFT基板(アレイ基板)10を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0032】
また、洗浄工程120において、CF(Color Filter:カラーフィルター)生成工程を終了したCF基板(カラーフィルター基板)20を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0033】
次に、液晶高分子塗布工程130、140は、塗布工程と、プレベーク工程と、本硬化工程の3つの工程からなる。
【0034】
塗布工程において、配向膜として、溶媒に溶かした液晶性高分子(液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせたブロックポリマー)を、TFT基板10、CF基板20に塗布して形成する。
【0035】
図2(a)に示すように、少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含むブロックポリマー1を用いる。また、図2(b)に示すように、液晶性ポリマー成分が基板10、20と反対側(液晶側)に向くように、ブロックポリマー1及び基板表面を設計する。
【0036】
図2(c)及び(d)に示すように、液晶を配向させる為の成分(液晶性ポリマー成分)1aが上を向く、つまり基板10、20と反対側(液晶側)に向くようにする。必要に応じて、液晶を配向させる為の成分1aとは異なる成分1b、1cと相性の良い物質(界面調整膜)2を基板10、20に塗布することで、液晶性ポリマー成分1aが上を向くことを実現する。なお、図2(e)は、液晶を配向させる為の成分(液晶性ポリマー成分)1aが上を向いていない例を示す。
【0037】
プレベーク工程において、塗布した液晶性高分子(液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせたブロックポリマー)から溶媒を飛ばす為に、60〜100℃程度で数分間加熱する。多くはホットプレート方式又はオーブン式である。
【0038】
本硬化工程において、ブロックポリマー1とガラス基板との密着を向上させる為に、百数十℃で数十分加熱する。
【0039】
次に、テンプレート配向工程150において、配向方向を規定したテンプレート30と液晶性高分子を塗布したTFT基板10とに数μmのギャップを設けて、低分子液晶3Aを介して対向させ、液晶性高分子のガラス転移点Tg以上の温度から除冷することにより、低分子液晶3Aは規定方向に配向し、更に低分子液晶3Aの配向力により、液晶性高分子も規定方向に配向する。なお、配向に使用した低分子液晶3Aは、本来の表示に使用する低分子液晶3とは異なるものであり、洗浄工程190、200において、液晶成分のみ分離して回収し、再利用することも可能である。
【0040】
図3(a)に示すように、配向方向を規定したテンプレート30と液晶性高分子を塗布したTFT基板10とに数μmのギャップを設けて、低分子液晶3Aを介して貼り合せた後、液晶性ポリマー成分のガラス転移点Tg以上の温度、例えば、150℃で30分加熱し、1℃/minで常温まで除冷する。なお、テンプレート30は、低分子液晶をアンカリングし、配向方向を規定できるものなら何でも良く(ラビング基板、金属、樹脂、セラミックス、ゴム等、又、コーティングやナノインプリントによる加工等)、例えば、ガラス基板に一定方向の微小な溝を設けた様なものである。
【0041】
また、テンプレート配向工程160において、同様に、配向方向を規定したテンプレート30と液晶性高分子を塗布したCF基板20とに数μmのギャップを設けて、低分子液晶3Aを介して貼り合せ、液晶性高分子のガラス転移点Tg以上の温度から除冷することにより、低分子液晶3Aは規定方向に配向し、更に低分子液晶3Aの配向力により、液晶性高分子も規定方向に配向する。
【0042】
次に、UV硬化工程170、180において、均一配向が得られた段階で、テンプレート30と基板10、20のそれぞれの間に紫外線(UV)を照射することで、液晶高分子(ブロックポリマー)がUV硬化し、配向を固定化する。つまり、液晶性高分子にUV硬化機能を持たせ、均一配向を得た後、UV硬化することで、配向安定性を高める。
【0043】
図3(b)に示すように、ブロックポリマーにUV硬化機能成分を持たせ、テンプレート配向により均一配向を得た後、例えば、数百〜数万mJ(ミリジュール)の紫外線(UV)を照射してUV硬化することで、配向安定性を高める。このUV照射は、液晶性ポリマー成分のガラス転移点Tg及び液晶のNI点よりも低い温度で照射し、配向を固定化する。なお、UV照射は、テンプレート30側から行っても良いし、基板10、20側から行っても良い。さらに、テンプレート30側と基板10、20側の両側から行っても良い。
【0044】
次に、洗浄工程190、200において、テンプレート配向工程150、160、UV硬化工程170、180を終了したTFT基板10、CF基板20を洗浄する。この時点で、洗浄液から液晶性高分子を配向させる為に用いた液晶3Aを分離して回収することで、液晶3Aを再利用することも可能である。
【0045】
次に、導通材塗布工程210において、TFT基板10とCF基板20の導通を取る為、TFT基板10にAgペースト等の導通材を点状に塗布する。なお、IPSモードでは不要である。
【0046】
シール塗布工程220において、液晶が入る領域を囲む為に、CF基板20にシール剤を塗布する。また、シール剤は、TFT基板10とCF基板20を接着させる役割も担う。シール剤を塗布した後、90℃程度で数分間プレベークを行う場合がある。シール剤は熱硬化タイプとUV(Ultraviolet ray:紫外線)硬化タイプがあるが、液晶滴下注入を行う場合は、UV硬化タイプのシール剤を用いることが多い。
【0047】
次に、液晶滴下注入工程230は、液晶滴下工程と、重ね合わせ工程の2つの工程からなる。
【0048】
液晶滴下工程において、CF基板20に液晶を必要量滴下する。
【0049】
重ね合わせ工程において、液晶を滴下したCF基板20とTFT基板10を真空下で精密に重ね合わせる。重ね合わせた後、基板を大気中に取り出すことにより、大気圧で目標とするセルGAPまで潰される。その後、シール剤に紫外線(UV)を照射することで、シール剤を半硬化させる。
【0050】
そして、加熱工程240において、150℃程度で数十分加熱し、シール剤を本硬化させる。つまり、シール剤が硬化する温度以上で加熱する。
【0051】
この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法によれば、配向処理は非接触配向で行う為、ラビングによる傷がなく、歩留まり及びコントラストを向上することができる。また、テンプレート配向工程150、160は制御因子の定量化が容易なため、工程管理が比較的簡単である。また、液晶性高分子として、ブロックポリマーを用いると、均一配向性が向上する。このブロックポリマーを用いる場合、液晶成分が低分子液晶側(基板と反対側)に向く様、ブロックポリマー及び基板表面を設計する。また、テンプレート30に配向方向の異なる複数の微小パターンを形成しておくことで、非接触で、かつ、複数回のフォトリソ工程、ラビング工程を繰り返さずとも、配向方向の異なる複数の配向パターンを転写でき、配向分割を容易に行うことが可能となる。さらに、液晶性高分子にUV硬化機能を持たせ、モノマーや開始剤を用いず、架橋させるので、モノマーや開始剤が液晶中に残留する問題はなく、信頼性の低下を防止できる。なお、この発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の製造方法は、白黒のLCD(液晶表示装置)やSTNなどのパッシブタイプのLCDにも適用できる。また、高分子液晶を配向させるために磁場配向を行う従来例もあるが、本願は磁場配向を行わない。
【0052】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法の工程を示す図である。この実施の形態2では、ラビングした基板(TFT基板10、CF基板20のいずれか)をテンプレートとして用い、配向させる場合を説明する。
【0053】
図4において、この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の別の製造方法は、洗浄工程110と、洗浄工程120と、液晶高分子塗布工程140と、配向膜形成工程250と、ラビング工程260と、洗浄工程270と、導通材塗布工程210と、シール塗布工程220と、液晶滴下注入工程230と、加熱・除冷工程240と、UV硬化工程280とが設けられている。
【0054】
図4において、上段の工程110〜工程210と、下段の工程120〜工程220は、上段及び下段の工程を同時進行で処理する場合もあれば、上段又は下段の工程の後、下段又は上段の工程を処理する場合もある。なお、図4では、TFT基板10に上段の工程110〜工程210を実施し、CF基板20に下段の工程120〜工程220を実施しているが、逆でもよい、つまり、CF基板20に上段の工程110〜工程210を実施し、TFT基板10に下段の工程120〜工程220を実施してもよい。
【0055】
つぎに、この実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法の各工程の動作について図面を参照しながら説明する。
【0056】
図5は、この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法の加熱・除冷工程及びUV硬化工程を示す図である。
【0057】
まず、図4の洗浄工程110において、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレイ工程を終了したTFT基板(アレイ基板)10を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0058】
また、洗浄工程120において、CF(Color Filter:カラーフィルター)生成工程を終了したCF基板(カラーフィルター基板)20を、セル工程に投入する際に、最初に洗浄する。
【0059】
次に、液晶高分子塗布工程140は、塗布工程と、プレベーク工程と、本硬化工程の3つの工程からなる。
【0060】
塗布工程において、配向膜として、溶媒に溶かした液晶性高分子(液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせたブロックポリマー)を、CF基板20に塗布して形成する。
【0061】
プレベーク工程において、塗布した液晶性高分子(液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせたブロックポリマー)から溶媒を飛ばす為に、60〜100℃程度で数分間加熱する。多くはホットプレート方式又はオーブン式である。
【0062】
本硬化工程において、ブロックポリマー1とガラス基板との密着を向上させる為に、百数十℃で数十分加熱する。
【0063】
配向膜形成工程250は、印刷工程と、プレベーク工程と、本硬化工程の3つの工程からなる。
【0064】
印刷工程において、配向膜(溶媒に溶けたポリイミド(PI:polyimide))4をフレキソ印刷法等でTFT基板10に塗布して、配向膜を形成する。
【0065】
プレベーク工程において、印刷した配向膜4から溶媒を飛ばす為に、60〜100℃程度で数分間加熱する。多くはホットプレート方式やオーブン式である。
【0066】
本硬化工程において、最終的な重合を行わせる為に、二百数十℃で数十分加熱する。
【0067】
次に、ラビング工程260において、液晶の並び方向(配向の向き)を決める為に、図7に示すように、綿やレーヨンなどの布(バフ材)93を巻き付けたローラ92で、TFT基板10に形成された配向膜4の表面を擦る。
【0068】
次に、洗浄工程270において、ラビング工程260で発生した布の毛や配向膜4の削れカスを洗い流す。
【0069】
次に、導通材塗布工程210において、TFT基板10とCF基板20の導通を取る為、TFT基板10にAgペースト等の導通材を点状に塗布する。なお、IPSモードでは不要である。
【0070】
シール塗布工程220において、液晶が入る領域を囲む為に、CF基板20にシール剤を塗布する。また、シール剤は、TFT基板10とCF基板20を接着させる役割も担う。シール剤を塗布した後、90℃程度で数分間プレベークを行う場合がある。シール剤は熱硬化タイプとUV(Ultraviolet ray:紫外線)硬化タイプがあるが、液晶滴下注入を行う場合は、UV硬化タイプのシール剤を用いることが多い。
【0071】
次に、液晶滴下注入工程230は、液晶滴下工程と、重ね合わせ工程の2つの工程からなる。
【0072】
液晶滴下工程において、CF基板20に液晶を必要量滴下する。
【0073】
重ね合わせ工程において、液晶を滴下したCF基板20とTFT基板10を真空下で精密に重ね合わせる。重ね合わせた後、基板を大気中に取り出すことにより、大気圧で目標とするセルGAPまで潰される。その後、シール剤に紫外線(UV)を照射することで、シール剤を半硬化させる。
【0074】
次に、加熱・除冷工程240において、150℃程度で数十分加熱し、シール剤を本硬化させると共に、除冷することで、非接触配向を実現する。
【0075】
図5(a)に示すように、液晶3の充填後に、液晶性ポリマー成分のガラス転移点Tg以上の温度、例えば、150℃で30分加熱し、1℃/minで常温まで除冷する。ここで、ラビングしたTFT基板10をテンプレートとして用い、配向させる
【0076】
そして、UV硬化工程280において、均一配向が得られた段階で、基板10、20の間に紫外線(UV)を照射することで、液晶高分子(ブロックポリマー)がUV硬化し、配向を固定化する。
【0077】
図5(b)に示すように、ブロックポリマーにUV硬化機能成分を持たせ、均一配向を得た後、例えば、数百〜数万mJ(ミリジュール)の紫外線(UV)を照射してUV硬化することで、配向安定性を高める。このUV照射は、液晶性ポリマー成分のガラス転移点Tg及び液晶のNI点よりも低い温度で照射し、配向を固定化する。なお、UV照射は、TFT基板10側から行っても良いし、CF基板20側から行っても良い。さらに、TFT基板10側とCF基板20側の両側から行っても良い。
【0078】
この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法によれば、テンプレートとして、片面のみラビングした基板を用いると、液晶滴下注入後の加熱・除冷工程240において、テンプレート配向のプロセスを行える(片基板のみ非接触配向)。テンプレートとして、片面のみラビングした基板を用い方法では、片面分のラビングキズが低減できるため、歩留まりの向上が期待できる。また、ラビング基板の配向方向にもう一方の基板の配向方向が一致するので、配向軸のズレがなく、コントラストの向上が期待できる。また、液晶性高分子として、ブロックポリマーを用いると、均一配向性が向上する。このブロックポリマーを用いる場合、液晶成分が低分子液晶側(基板と反対側)に向く様、ブロックポリマー及び基板表面を設計する。さらに、液晶性高分子にUV硬化機能を持たせ、モノマーや開始剤を用いず、架橋させるので、モノマーや開始剤が液晶中に残留する問題はないため、信頼性の低下を防止できる。なお、この発明の実施の形態2に係る液晶表示装置の製造方法は、白黒のLCD(液晶表示装置)やSTNなどのパッシブタイプのLCDにも適用できる。また、高分子液晶を配向させるために磁場配向を行う従来例もあるが、本願は磁場配向を行わない。
【0079】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る液晶表示装置の製造方法として、液晶表示装置特有の視野角特性を改善する目的で、2つ以上の配向分割を行う場合について説明する。先の実施の形態1、2では、同一平面上に1つの配向規定方向を持つテンプレートを用いて、液晶表示装置に配向特性を持たせていた。
【0080】
しかしながら、同一平面上に1つの配向規定方向だけを有する液晶表示素子は、視野角が狭いという問題を有しており、視野角特性を改善するには、2つ以上の方向に配向分割を行うことが有効である。このような配向分割を行う場合にも、本発明で提案しているテンプレート配向を容易に適用することができる。具体的には、例えば、先の実施の形態1におけるテンプレート配向工程150、160において用いられるテンプレートとして、あらかじめ、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを用意しておくことが考えられる。
【0081】
従来のラビング処理を用いた方法により配向分割を行うためには、配向特性を持たせるための処理を分割数に応じて繰り返し行う必要があった。しかしながら、この実施の形態3のように、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを用いて配向分割を行うことで、処理工程を繰り返す必要がなくなる。この結果、設備投資やランニングコストの上昇、あるいはスループットの低下といった従来方法における問題を解消することができる。
【0082】
この発明の実施の形態3に係る液晶表示装置の製造方法によれば、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを用いることで、ラビング処理を行うことなく、配向分割を実現できる。配向処理は、非接触配向で行う為、ラビングによる傷がなく、歩留まり及びコントラストを向上することができる。さらに、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを用いるだけで、分割配向に関わる工程を繰り返すことなく、先の実施の形態1で示した工程と同一工程で、配向分割された液晶表示装置を製造でき、スループットの低下を防止できる。
【0083】
上述したように、本願発明は、配向膜として液晶性高分子(液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせたブロックポリマー)を用い、テンプレートによって配向させることにより、非接触、かつ安価な方法で高い配向性を実現している点を技術的特徴としている。特に、配向膜として液晶性高分子を用いることで、従来から知られているポリイミド、SiO2、ITOといった材料を配向膜として用いた場合には得ることができない、十分な均一配向を実現している。さらに、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを作成することで、配向分割された液晶表示装置の製造にも本願発明を容易に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 ブロックポリマー、1a 液晶性ポリマー成分、2 界面調整膜、3 低分子液晶、3A 低分子液晶、4 配向膜、10 TFT基板、20 CF基板、110 洗浄工程、120 洗浄工程、130 液晶高分子塗布工程、140 液晶高分子塗布工程、150 テンプレート配向工程、160 テンプレート配向工程、170 UV硬化工程、180 UV硬化工程、190 洗浄工程、200 洗浄工程、210 導通材塗布工程、220 シール塗布工程、230 液晶滴下注入工程、240 加熱工程、250 配向膜形成工程、260 ラビング工程、270 洗浄工程、280 UV硬化工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含み、この液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせ、溶媒に溶かしたブロックポリマーを、前記液晶性ポリマー成分が基板とは反対側になるように、第1の基板及び第2の基板に塗布する液晶高分子塗布工程と、
配向方向を規定したテンプレートと前記ブロックポリマーを塗布した第1の基板、前記テンプレートと前記ブロックポリマーを塗布した第2の基板にそれぞれギャップを設けて、低分子液晶を介して対向させ、前記液晶性ポリマー成分のガラス転移点以上の第1の所定温度から除冷することにより、前記低分子液晶の配向力によって、前記液晶性ポリマー成分を規定方向に配向するテンプレート配向工程と、
前記テンプレートと基板間に紫外線を照射して前記ブロックポリマーをUV硬化させ、配向を固定化するUV硬化工程と、
液晶が入る領域を囲む為に、前記第2の基板にシール剤を塗布するシール塗布工程と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の間に液晶を充填形成する液晶滴下注入工程と、
第2の所定温度で所定時間加熱する加熱工程と
を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記液晶高分子塗布工程の前に、前記第1の基板及び前記第2の基板を洗浄する第1の洗浄工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記液晶高分子塗布工程は、
前記ブロックポリマーを、前記第1の基板及び前記第2の基板に塗布する塗布工程と、
塗布したブロックポリマーから溶媒を飛ばす為に、第3の所定温度で数分間加熱するプレベーク工程と、
前記ブロックポリマーとガラス基板との密着を向上させる為に、第4の所定温度で数十分間加熱する本硬化工程とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記UV硬化工程の後に、前記第1の基板及び前記第2の基板の導通を取る為、前記ア第1の基板に導通材を塗布する導通材塗布工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記液晶滴下注入工程は、
前記第2の基板に液晶を必要量滴下する液晶滴下工程と、
液晶を滴下した第2の基板と前記第1の基板を真空下で重ね合わせる重ね合わせ工程とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記UV硬化工程の後に、前記第1の基板及び前記第2の基板を洗浄する第2の洗浄工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項7】
第1の基板に配向膜を形成する配向膜形成工程と、
前記第1の基板に形成された配向膜の表面を擦るラビング工程と、
少なくとも1つの成分に液晶性ポリマー成分を含み、この液晶性ポリマー成分にUV硬化機能成分を持たせ、溶媒に溶かしたブロックポリマーを、前記液晶性ポリマー成分が基板とは反対側になるように、第2の基板に塗布する液晶高分子塗布工程と、
液晶が入る領域を囲む為に、前記第2の基板にシール剤を塗布するシール塗布工程と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の間に液晶を充填形成する液晶滴下注入工程と、
前記液晶性ポリマー成分のガラス転移点以上の第1の所定温度で所定時間加熱して除冷する加熱・除冷工程と、
基板間に紫外線を照射して前記ブロックポリマーをUV硬化させ、配向を固定化するUV硬化工程と
を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記配向膜形成工程及び前記液晶高分子塗布工程の前に、前記第1の基板及び前記第2の基板を洗浄する第1の洗浄工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項7記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記液晶高分子塗布工程は、
前記ブロックポリマーを、前記第2の基板に塗布する塗布工程と、
塗布したブロックポリマーから溶媒を飛ばす為に、第2の所定温度で数分間加熱するプレベーク工程と、
前記ブロックポリマーとガラス基板との密着を向上させる為に、第3の所定温度で数十分間加熱する本硬化工程とを含む
ことを特徴とする請求項7記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記ラビング工程の後に、前記第1の基板及び前記第2の基板の導通を取る為、前記第1の基板に導通材を塗布する導通材塗布工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項7記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記液晶滴下注入工程は、
前記第2の基板に液晶を必要量滴下する液晶滴下工程と、
液晶を滴下した第2の基板と前記第1の基板を真空下で重ね合わせる重ね合わせ工程とを含む
ことを特徴とする請求項7記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記ラビング工程の後に、前記第1の基板を洗浄する第2の洗浄工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項7記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の基板はアレイ基板、かつ前記第2の基板はカラーフィルター基板である、あるいは
前記第1の基板はカラーフィルター基板、かつ前記第2の基板はアレイ基板である
ことを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記テンプレート配向工程は、同一平面上に2つ以上の配向規定方向を持つテンプレートを用いることで配向分割を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれかに記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−39467(P2011−39467A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232532(P2009−232532)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】