液晶表示装置及びこれを用いた3板式液晶プロジェクタ
【課題】ねじれネマチック型の液晶ライトバルブの視野角特性に起因する色むらを光学的に解決した液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る液晶表示装置は、赤色光、緑色光及び青色光用のねじれネマチック型の液晶ライトバルブ33,34,35を用いている。そして、クロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bを透過する変調光を生成する液晶ライトバルブ(例えば緑色光用の液晶ライトバルブ34)と、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成する他の二つの液晶ライトバルブ(例えば、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35)とで、カイラル方向が異なるように組み合わせる。後者の二つの液晶ライトバルブの入射側又は出射側に配置されるλ/2位相差板31,32は、これら液晶ライトバルブのカイラル方向と逆の方向とされている。
【解決手段】本発明に係る液晶表示装置は、赤色光、緑色光及び青色光用のねじれネマチック型の液晶ライトバルブ33,34,35を用いている。そして、クロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bを透過する変調光を生成する液晶ライトバルブ(例えば緑色光用の液晶ライトバルブ34)と、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成する他の二つの液晶ライトバルブ(例えば、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35)とで、カイラル方向が異なるように組み合わせる。後者の二つの液晶ライトバルブの入射側又は出射側に配置されるλ/2位相差板31,32は、これら液晶ライトバルブのカイラル方向と逆の方向とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを備えた液晶表示装置及びこれを用いた液晶プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投写型液晶映像表示装置の高輝度化、高コントラスト化と共に画質の向上が重要となってきており、特に白〜黒に至る全階調において、むらのない均一な表示が要求されている。特に3板式液晶表示装置においては、通常の配置によれば、特許文献1などに記載されているように、クロスダイクロイックプリズムにおいて直進透過する緑色光に対し、反射されて透過する赤色光及び青色光が合成されるため、ねじれネマチック型の液晶ライトバルブの視野角特性の影響で生じる輝度差が原因の色むらを生ずる。
【0003】
この色むらの発生については、次のように解析される。図9は、これを説明するための3板式液晶表示装置における液晶ライトバルブ周りの図である。通常の3板式液晶表示装置においては、この図に示すように、クロスダイクロイックプリズム101を直進させる変調光を緑色光とし、クロスダイクロイックプリズム101の反射膜で反射させて透過する変調光を赤色光及び青色光としている。このために、クロスダイクロイックプリズム101には、赤色光用の反射膜101aと青色光用の反射膜101bとがクロス状に形成されている。そして、緑色光用の液晶ライトバルブ102は、緑色光が両反射膜を直進して透過する位置に配置されている。また、赤色光用の液晶ライトバルブ103及び青色光用の液晶ライトバルブ104は、赤色光及び青色光が赤色光用の反射膜101a及び青色光用の反射膜101bで反射されて、緑色光と同一の方向に変換されて透過するように配置されている。このようにして、緑色光、赤色光及び青色光が合成されている。
【0004】
また、各液晶ライトバルブ102,103,104は、図9に示すように、液晶パネル102b,103b,104bの入射側及び出射側に偏光板102a,102c,103a,103c,104a,104cが配置されて構成されている。また、図示しないが特許文献2などに記載されているように、光源から液晶ライトバルブに至る経路における反射効率を向上させるために、光源から出射された光束は全てS偏光に変換されている。また、光源からS偏光光が照射されることを受けて、赤色光用の液晶ライトバルブ103及び青色光用の液晶ライトバルブ104の入射側にλ/2位相差板105,106がそれぞれ配置されている。これにより、S偏光の赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム101に入射されるので、クロスダイクロイックプリズム101における反射効率を向上させることができる。
【0005】
このような従来の液晶表示装置において、液晶ライトバルブ102,103,104における液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向については格別の配慮が払われていなかった。同様に、λ/2位相差板105,106における光束の回転方向についても格別の配慮が払われていなかった。このため、図10に示すように、これら液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向、及び、λ/2位相差板105,106における光束の回転方向は、通常は全てが同一方向に統一されていた。
【0006】
また、一般に、液晶ライトバルブ102,103,104は、液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向によりコントラストの低い明視方向とコントラストの高い暗視方向とが存在する。図9に示す液晶ライトバルブ102,103,104は、それぞれがカイラル方向左回りの液晶パネル102b,103b,104bを有する。このようなカイラル方向左回りのねじれマチック型の液晶パネルにおいては、液晶ライトバルブ102,103,104の入射側から見て左側がコントラストの低い明視方向であり右側がコントラストの高い暗視方向となっている。なお、図9においては、明視側を薄く表し、暗視側を濃く表している。
【0007】
さらに、上記構成においては、赤色光及び青色光が反射膜101a,101bにて反射されて光路が90度変更されてクロスダイクロイックプリズム101を透過するのに対し、緑色光はクロスダイクロイックプリズム101を直進して透過する。このため、明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域(図示左側の領域)で合成されるとともに、暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域(図示右側の領域)で合成される。このようにコントラストが高低の緑色光、青色光及び赤色光が合成される結果、図11に示すように、スクリーン107の上右方にマゼンダ色気味の色むら107aが現れ、上左方に緑色気味の色むら107bが現れるという問題があった。
【0008】
このような光学的な問題に対し、特許文献1においては、この色むら107a,107bを打ち消すように原色映像信号に補正信号を重畳する電気的な方策が採られている。
【特許文献1】特開2000−122023号公報、段落番号0002−0005
【特許文献2】特開平10−186548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、原色映像信号に補正信号を重畳することにより、上述の色むら107a,107bを防止する電気的な方法も一つの方策であるが、その根本原因であるコントラストが高低の緑色光、青色光及び赤色光が混色されることを回避することにより、色むらを光学的に解決することが必要と考えられる。
【0010】
本発明は、このような背景の下になされたものであって、ねじれネマチック型の液晶ライトバルブの視野角特性に起因する色むらを光学的に解決した液晶表示装置及びこれを用いた液晶プロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液晶表示装置は、照射された光を映像信号に基づいて光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブと、これら液晶ライトバルブを照射する光源と、前記液晶ライトバルブにて光変調された赤色光、緑色光及び青色光の各映像光を合成するクロスダイクロイックプリズムと、前記液晶ライトバルブを通過する経路に設置された偏光回転用の位相差板とを備えた液晶表示装置において、前記液晶ライトバルブのうちの一の液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成し、他の二つの液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成するように構成されるとともに、前記一の液晶ライトバルブと前記他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされ、前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ配置されるとともに、位相差板における光束の回転方向が前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向とは逆の方向となるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書においてねじれネマチック型の液晶ライトバルブは、TNモード又はSTNモードの液晶パネルを用いた液晶ライトバルブをいい、ノーマルホワイトモード又はノーマルブラックモード何れでもよい。
【0013】
上記のように構成すると、光学的要因による色むらの発生を光学的に可決することができる。すなわち、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成する液晶ライトバルブと、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成する他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされている。このため、前記一の液晶ライトバルブにおける明視方向側を通過したコントラストの低い光に対して、前記他の二つの液晶ライトバルブにおける明視方向側を通過したコントラストの低い光が合成される。また、これとは反対に、前記一の液晶ライトバルブにおける暗視方向側を通過したコントラストの高い光に対して、前記他の二つの液晶ライトバルブにおける暗視方向側を通過したコントラストの高い光が合成される。これにより、従来問題となっていた色むらが軽減される。また、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路に偏光回転用の位相差板が配置されているので、クロスダイクロイックプリズムにおける反射効率が良くなる。さらに、この位相差板における透過光の回転方向を前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向と逆の方向とすることにより光学的補償が行われ、さらに、色むらが緩和される。このように本発明によれば、従来と同様の機器配置構成により色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【0014】
また、前記位相差板は、λ/2位相差板であることが好ましい。このようにすることにより全体の構成が簡略化される。例えば、λ/2を用いる代わりにλ/4板を2枚用いることもできるが構成が煩雑となる。
【0015】
また、前記液晶ライトバルブは、入射側及び出射側に偏光板を有し、前記位相差板は、その近傍に位置する前記液晶ライトバルブの偏光板と共に、共通の支持基板に積層されて支持されているようにすることが好ましい。位相差板も偏光板も樹脂薄膜により構成されているので、共通の支持基板に積層されることにより構成を簡略化することができる。
【0016】
また、前記位相差板は、前記一の液晶ライトバルブを通過する経路には配置されず、他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ設置されていることが好ましい。前記一の液晶ライトバルブを透過する光は、クロスダイクロイックプリズムにおいて反射されずに透過されるのみである。従って、このように構成することにより、前記一の液晶ライトバルブを通る経路に偏光回転用の位相差板を設置しない構成となり、無駄のない構成とすることができる。
【0017】
また、前記一の液晶ライトバルブは、緑色光用の液晶パネルであり、前記他の二つの液晶ライトバルブは、赤色光用の液晶パネル及び青色光用の液晶ライトバルブであるように構成することができる。このように構成すると、液晶表示装置における一般的機器配置構成として利用できるので広い範囲で利することができる。
【0018】
また、本発明に係る3板式液晶プロジェクタは、上記の液晶表示装置を用いた液晶プロジェクタであるので、色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブのカイラル方向と偏光回転用の位相差板の回転方向を組み合わせるという光学的方法により、輝度差原因の色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る液晶表示装置を用いた一例としての液晶プロジェクタについて、図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの実施の形態に係る3板式液晶プロジェクタの光学系を示した平面図である。
【0021】
この投写型表示装置は、照明光学系10と、ダイクロイックミラー21,22と、反射ミラー24,25,26と、リレーレンズ28,29と、2枚のλ/2位相差板31,32と、3枚の液晶ライトバルブ33,34,35と、クロスダイクロイックプリズム37と、投写レンズ系39とを備えている。
【0022】
照明光学系10は、略平行な光束を出射する光源11と、インテグレータレンズ12と、入射光を所定の直線偏光光成分に変換する偏光変換素子13と、集光レンズ14、全反射ミラー15とを備えている。照明光学系10は、被照明領域である3枚の液晶ライトバルブ33,34,35を略均一に照明するための光学系である。
【0023】
光源11は、放射状の光線を出射する放射光源としての光源ランプ11aと、光源ランプ11aから出射された放射光を略平行な光束として出射する凹面鏡11bとを有している。凹面鏡11bとしては、放物面鏡が用いられている。
【0024】
インテグレータレンズ12は、第1のレンズアレイ12aと第2のレンズアレイ12bとから構成されている。第1のレンズアレイ12a及び第2のレンズアレイ12bは、略矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。また、各小レンズは、液晶ライトバルブ33,34,35の形状と略相似形をなすように設定されている。光源11から出射された平行光束は、このインテグレータレンズ12により分割され、第1のレンズアレイ12aにおける光源像を液晶ライトバルブ33,34,35で結像させる機能を有する。
【0025】
偏光変換素子13は、インテグレータレンズ12を介して照射されるランダムな偏光方向を有する光束を全てS偏光光に変換することによって、投写型表示装置における光の利用効率を高めるものである。
【0026】
インテグレータレンズ12から出射された部分光束は、偏光変換素子13でS偏光光に変換されて集光レンズ14に入射する。
集光レンズ14は、これらの複数の部分光束を重畳させて、被照明領域である液晶ライトバルブ33,34,35に集光させる重畳光学系として機能し、これにより各液晶ライトバルブ33,34,35を略均一に照明する。集光レンズ14で集光されたS偏光である光束は、全反射ミラー15で反射されて第1のダイクロイックミラー21に出射される。
【0027】
2枚のダイクロイックミラー21,22は、全反射ミラー15で反射された白色光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する色光分離手段としての機能を有する。
第1のダイクロイックミラー21は、照明光学系から出射された白色光束の赤色光成分をS偏光光のままで透過させるとともに、青色光成分及び緑色光成分をS偏光光のままで反射させる。第1のダイクロイックミラー21を透過した赤色光は、反射ミラー24で反射され、λ/2位相差板31を通って赤色光用の液晶ライトバルブ33に達する。λ/2位相差板31は、図2に示すように、遅相軸31aを、後述する偏光板33aの透光軸に対し入射側から見て時計回転方向に135度とする。このλ/2位相差板31は、これにより、S偏光の赤色光を、P偏光光として液晶ライトバルブ33に入射させる機能を有する。
【0028】
第1のダイクロイックミラー21で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー22によってS偏光光のまま反射されて緑色光用の液晶ライトバルブ34に達する。一方、青色光は、S偏光光のままで第2のダイクロイックミラー22を透過し、リレーレンズ28,29及び反射ミラー25,26を備えたリレーレンズ系を通ってλ/2位相差板32に入射される。このλ/2位相差板32から青色光用の液晶ライトバルブ35を経由してクロスダイクロイックプリズム37に至る経路は、図2に示すように、前述のλ/2位相差板31から赤色光用の液晶ライトバルブ33を経由してクロスダイクロイックプリズム37に至る経路と同様の構成である。λ/2位相差板32は、図2に示すように、遅相軸32aを、後述する偏光板35aの透光軸に対し入射側から見て時計回転方向に135度とする。λ/2位相差板32に入射された青色光は、このλ/2位相差板32においてP偏光に変換されて青色光用の液晶ライトバルブ35に達する。他方、第2のダイクロイックミラー22で分離されたS偏光の緑色光は、そのまま緑色光用の液晶ライトバルブ34に入射する。
【0029】
3枚の液晶ライトバルブ33,34,35は、与えられた画像情報(画像信号)に従って、3色の色光をそれぞれ変調して画像を形成する光変調手段としての機能を有する。
赤色光用の液晶ライトバルブ33は、図1及び図2に示すように、液晶パネル33bと、液晶パネル33bの入射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板33aと、出射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板33cとで構成されている。赤色光用の液晶ライトバルブ33に入射するP偏光の赤色光は、P偏光光透過用の偏光板33aをそのまま透過し、液晶パネル33bによって変調されることにより、一部がS偏光光に変換され、S偏光光のみがS偏光光透過用の偏光板33cを透過して出射する。
【0030】
緑色光用の液晶ライトバルブ34は、図1及び図3に示すように、液晶パネル34bと、液晶パネル34bの入射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板34aと、出射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板34cとで構成されている。緑色光用の液晶ライトバルブ34に入射するS偏光の緑色光は、S偏光光透過用の偏光板34aをそのまま透過し、液晶パネル34bによって変調されることにより、一部がP偏光光に変換され、P偏光光のみがP偏光光透過用の偏光板34cを透過して出射する。
【0031】
青色光用の液晶ライトバルブ35は、図1及び図2に示すように、液晶パネル35bと、液晶パネル35bの入射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板35aと、出射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板35cとで構成されている。青色光用の液晶ライトバルブ35に入射するP偏光の青色光は、P偏光光透過用の偏光板35aをそのまま透過し、液晶パネル35bによって変調されることにより、一部がS偏光光に変換され、S偏光光のみがS偏光光透過用の偏光板35cを透過して出射する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム37は、液晶ライトバルブ33,34,35で変調された3色の色光を合成してカラー画像を形成する色合成手段としての機能を有する。このために、クロスダイクロイックプリズム37には、赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bとがクロス状に形成されている。赤色光用の液晶ライトバルブ33で変調されたS偏光の赤色光は、赤色光用の反射膜37aで反射されて投写レンズ系39の方向に出射される。また、青色光用の液晶ライトバルブ35で変調されたS偏光の青色光も、同様に、青色光用の反射膜37bで反射されて投写レンズ系39の方向に出射される。これに対し、緑色光用の液晶ライトバルブ34で変調されたP偏光の緑色光は、赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bとをそのまま透過して投写レンズ系39の方向に出射される。
【0033】
赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bは、S偏光光に対する反射率特性が、P偏光光に対する反射率特性よりも優れている。従って、赤色光と青色光をS偏光光としてクロスダイクロイックプリズム37に入射させ、緑色光をP偏光光としてクロスダイクロイックプリズム37に入射させることによって、赤色光と青色光に対しては高い反射率を得ることができ、一方、緑色光に対しては高い透過率を得ることができる。この結果、3色の光の利用効率をそれぞれ高めることができる。
【0034】
そして、本発明は、赤色光及び青色光が通過する入射側のλ/2位相差板31,32から赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35を経て合成プリズムに至る経路(図2参照)、及び、緑色光が通過する緑色光用の液晶ライトバルブ34を経て合成プリズムに至る経路(図3参照)に特徴を備えている。
【0035】
すなわち、赤色光及び青色光が通過する入射側のλ/2位相差板31,32から赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35を経てクロスダイクロイックプリズム37に至る経路においては、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35に左カイラルの液晶パネル33b,35bが使用されている。また、この経路に配置されるλ/2位相差板31,32は、遅相軸31a,32aが、入射側から見てP偏光光透過用の偏光板33a,35aの透過軸に対して135度とされているとともに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向が、液晶ライトバルブ33,35の左カイラルとは逆の右回りとされている。また、λ/2位相差板31,32は、P偏光光透過用の偏光板33aに積層された状態で一つの基板に支持されるように構成されている。
【0036】
一方、緑色光が通過する液晶ライトバルブ34を経てクロスダイクロイックプリズム37に至る経路においては、図3に示すように、液晶ライトバルブ34に右カイラルの液晶パネル34bが使用されている。このように、液晶ライトバルブ34と液晶ライトバルブ33,35とは、液晶パネルのカイラル方向が逆となる組み合わせに構成されている。なお、この経路にはλ/2位相差板が使用されていない。
【0037】
従って、クロスダイクロイックプリズム37においては、図4に示すように、赤色光及び青色光は、反射膜37a,37bにおいて反射されて光路が90度変更されてクロスダイクロイックプリズム37を透過する。これに対し、緑色光は、クロスダイクロイックプリズム37を直進して透過する。このため、緑色光用の液晶ライトバルブ34における明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35における明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域側(図4における右側)を通過して合成される。また、緑色光用の液晶ライトバルブ34における暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35における暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域側(図4における左側)を通過して合成される。また、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bの左カイラルとは逆の右回転方向としているので、光学的補償が成されている。これにより前述のスクリーン上左方の緑色気味の色むら及び上右方のマゼンダ色気味の色むらが改善される。
【0038】
【表1】
表1は、上記実施の形態についての実験結果を示すものである。また、図7に各実験に供された構成上の特徴を比較できるように表示している。
【0039】
表1における参考例1は、図7における参考例1の欄に示すように、実施の形態1において、λ/2位相差板31,32の遅相軸31a,32aを入射側から見て時計回りに45度として、光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の左回りとしたものである。なお、他の構成は、実施の形態1と同一である。
【0040】
また、表1における従来例1は、図7における従来例1の欄に示すように、実施の形態1において、赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向を緑色光用の液晶パネル34bのカイラル方向と同一の右方向としている。また、従来例1は、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の右回りとしている。
【0041】
また、この実験は、光源11からの白色光を各液晶ライトバルブ33,34,35を経由させて、クロスダイクロイックプリズム37にて合成してスクリーンに投写することにより得られる黒表示の画面において、黒表示の均一性をCIE色度座標の(x、y)を用いて画面内の色差(Δx,Δy)で表している。換言すると、Δxは、黒色に表示されたスクリーン上のCIE色度座標におけるx座標についての最大差であり、Δyは、黒色に表示されたスクリーン上のCIE色度座標におけるy座標についての最大差である。従って、このΔx及びΔyが小さくなると全体として色むらが小さくなるといえる。
【0042】
実験の結果は、表1に記載のように、本実施の形態は、色差(0.06,0.031)である。これに対し、参考例1は、色差(0.013,0.033)であり、従来例は、色差(0.042,0.084)である。従って、本実施の形態は参考例1及び従来例1より改善されている。
【0043】
本発明に係る実施の形態は、以上のように構成されているので、次のような作用効果を奏することができる。
(1)緑色光用の液晶ライトバルブ34と、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35とでは、液晶パネルのカイラル方向が異なるように組合せされている。さらに、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35の入射側に配置されるλ/2位相差板31,32は、光束の回転方向が赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向とは逆の右回りとなるように構成されている。これにより色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。なお、本実施の形態においては、緑色光用の液晶ライトバルブ34が本発明における一の液晶ライトバルブであり、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35が発明における他の二つの液晶ライトバルブである。
【0044】
(2)赤色光用の液晶ライトバルブ33(第2の液晶ライトバルブ)及び青色光用の液晶ライトバルブ35(第3の液晶ライトバルブ)の入射側に配置される位相差板としては、λ/2位相差板とされているので全体の構成が簡略化される。なおλ/2位相差板を用いる代わりに、λ/4位相差板を2枚用いるなどの他の構成も可能であるが、構成が煩雑となる。
【0045】
(3)また、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35は、入射側及び出射側に偏光板33a,33c,35a,35cを有し、λ/2位相差板31,32が入射側の偏光板33a,35aに積層された形態として共通の支持基板に支持されているので、偏光板33a,35a及びλ/2位相差板31,32の支持構造が簡略化される。
【0046】
(4)また、λ/2位相差板31,32は、緑色光用の液晶ライトバルブ34を通過する経路には配置されず、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35を通過する経路にそれぞれ設置されているので、緑色光用の液晶ライトバルブ34を通過する経路の構成を簡素化することができる。
【0047】
(5)赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35の入射側にλ/2位相差板31,32が配置されているので、クロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射される光束がY偏光光となっている。従って、クロスダイクロイックプリズム37における反射効率がよい。
【0048】
(6)緑色光用の液晶ライトバルブ34で変調された緑色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bを透過し、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35で変調された赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射される構成となっている。従って、液晶表示装置における一般的な機器配置構成として利用することができ、広い範囲で利用することができる。
【0049】
(7)この実施の形態に係る3板式液晶プロジェクタは、上記構成の液晶表示装置を用いているので、光学的方法により輝度差原因の色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図5、図6及び前述の図7に基づき説明する。実施の形態2は、緑色光用の液晶ライトバルブ34を左カイラルとした場合の構成を示す。
【0051】
この実施の形態2においては、緑色光用の液晶ライトバルブ34の液晶パネル34bを左カイラルとしているので、このカイラル方向に対応して図5に示すように、赤色光用の液晶ライトバルブ33の液晶パネル33b及び青色光用の液晶ライトバルブ35の液晶パネル35bとして右カイラルのものを使用している。また、液晶ライトバルブ33,35の入射側に設けられるλ/2位相差板31,32として、光束の回転方向が液晶パネル33b,35bのカイラル方向の逆方向である左回りのものを使用している。
【0052】
実施の形態2は、以上のように、クロスダイクロイックプリズム37においては、図6に示すように、各液晶パネル33b、34b、35bにおける明視方向及び暗視方向が実施の形態1の場合と逆方向になっている。この結果、明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域側(図6における左側)を通過して合成される。また、暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域側(図6における右側)を通過して合成される。さらに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bの右カイラルとは逆の左回りとしているので、光学的補償が成されている。従って、実施の形態1の場合と同様に、スクリーン上左方の緑色気味の色むら及び上右方のマゼンダ色気味の色むらが改善される。
【0053】
【表2】
表2は、上記実施の形態についての実験結果を示すものである。
【0054】
この表2における参考例2は、図7における参考例2の欄に示すように、実施の形態2において、λ/2位相差板31,32の遅相軸31a,32aを入射側から見て時計回りに135度とし、光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の右回りとしたものである。
【0055】
また、表2における従来例2は、図7における従来例2の欄に示すように、実施の形態2において、赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向を緑色光用の液晶パネル34bのカイラル方向と同一の左カイラルとしている。また、従来例2は、λ/2位相差板31,32の光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の左回りとしている。
【0056】
また、この実験は、先の実施の形態1に説明したものと同様に、光源11からの白色光を各液晶ライトバルブ33,34,35を経由させて、クロスダイクロイックプリズム37にて合成して投写することにより得られる黒表示の画面において、黒表示の均一性をCIE色度座標の(x、y)を用いて画面内の色差(Δx,Δy)で表している。
【0057】
実験の結果は、表2に記載のように、本実施の形態は、色差(0.015,0.025)である。これに対し、参考例2は、色差(0.021,0.059)であり、従来例2は、色差(0.021,0.059)である。従って、本実施の形態は参考例2及び従来例2より改善されている。
【0058】
実施の形態2は以上のように構成されているので、実施の形態1の場合と同様の効果を奏することができる。
(変形例)
本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば、次のように変形することもできる。
【0059】
・各実施の形態では、λ/2位相差板31,32を液晶ライトバルブ33,35の入射側に設置しているが、これを図8に示すように、液晶ライトバルブ33,35の出射側、つまり、液晶ライトバルブ33,35とクロスダイクロイックプリズム37との間に設置することもできる。例えば、実施の形態1においてこのように変形する場合は次のようにする。すなわち、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35は、入射側の偏光板33a,35aをS偏光光用偏光板とし、出射側の偏光板33c,35cをP偏光光用偏光板とする。また、λ/2位相差板31,32は、遅相軸31a,32aが、入射側から見て手前に設置されているP偏光光透過用の偏光板33c,35cの透過軸に対して135度とされているとともに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向が、液晶ライトバルブ33,35の左カイラルとは逆の右回りとされている。従って、λ/2位相差板31,32は、設置場所が異なるが、実施の形態1のものと同一のものでよい。なお、このように変形した場合も変形前のものと同様の効果を奏することができる。また、このように変形した場合は、λ/2位相差板31,32を出射側の偏光板33c,35cに積層し、これらを共通の支持基板で支持するようにすれば、支持基板の構造を簡略化することができる。
【0060】
・各実施の形態では、P偏光光透過用の偏光板33a,35aの入射側に設置する位相差板をλ/2位相差板31,32としているが、P偏光をS偏光に変換するものであれば他の構成としてもよい。例えば、λ/4位相差板を2枚組み合わせて行う方法でも可能である。
【0061】
・各実施の形態においては、緑色光がクロスダイクロイックプリズム37を直進して透過し、赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射して透過する構成を採っているが、直進させる色光及び反射させる色光を他のものに変更してもよい。なお、この場合は、クロスダイクロイックプリズム37のみならずダイクロイックミラーの構成を色光の変更に対応して変更する必要がある。このため、この場合には一般のカラー用の液晶表示装置との共通性が薄くなるという問題がある。
【0062】
・各実施の形態では、光源11の光を複数の部分光束に分割する2つのレンズアレイ12a,12bからなるインテグレータレンズ12を用いていたが、この発明は、このようなインテグレータレンズ12を用いない投写型表示装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶プロジェクタに利用することができる。また、このような液晶プロジェクタは、ホームシアター、会議室、研修室、教室、娯楽場、各種展示室、スタジオなど多方面の施設において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶プロジェクタの光学系である。
【図2】同光学系における赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図3】同光学系における色緑色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図4】同光学系における色むら軽減の原理説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る液晶プロジェクタの光学系における赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図6】同光学系における色むら軽減の原理説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1及び実施の形態2における液晶ライトバルブを通過する経路における機器の構成を、参考例及び従来例と比較して示した構成一覧図である。
【図8】変形例に係る、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図9】従来の液晶プロジェクタにおける色むら発生原理説明図である。
【図10】同液晶プロジェクタにおける赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図11】同液晶プロジェクタにおける色むらの発生状態説明図である。
【符号の説明】
【0065】
11…光源、31,32…(λ/2)位相差板、33…(赤色光用の)液晶ライトバルブ、33a,33c,34a,34c,35a,35c…偏光板、33b,34b,35b・t晶パネル、34…(緑色光用の)液晶ライトバルブ、35…(青色光用の)液晶ライトバルブ、37…クロスダイクロイックプリズム、37a,37b…反射膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを備えた液晶表示装置及びこれを用いた液晶プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投写型液晶映像表示装置の高輝度化、高コントラスト化と共に画質の向上が重要となってきており、特に白〜黒に至る全階調において、むらのない均一な表示が要求されている。特に3板式液晶表示装置においては、通常の配置によれば、特許文献1などに記載されているように、クロスダイクロイックプリズムにおいて直進透過する緑色光に対し、反射されて透過する赤色光及び青色光が合成されるため、ねじれネマチック型の液晶ライトバルブの視野角特性の影響で生じる輝度差が原因の色むらを生ずる。
【0003】
この色むらの発生については、次のように解析される。図9は、これを説明するための3板式液晶表示装置における液晶ライトバルブ周りの図である。通常の3板式液晶表示装置においては、この図に示すように、クロスダイクロイックプリズム101を直進させる変調光を緑色光とし、クロスダイクロイックプリズム101の反射膜で反射させて透過する変調光を赤色光及び青色光としている。このために、クロスダイクロイックプリズム101には、赤色光用の反射膜101aと青色光用の反射膜101bとがクロス状に形成されている。そして、緑色光用の液晶ライトバルブ102は、緑色光が両反射膜を直進して透過する位置に配置されている。また、赤色光用の液晶ライトバルブ103及び青色光用の液晶ライトバルブ104は、赤色光及び青色光が赤色光用の反射膜101a及び青色光用の反射膜101bで反射されて、緑色光と同一の方向に変換されて透過するように配置されている。このようにして、緑色光、赤色光及び青色光が合成されている。
【0004】
また、各液晶ライトバルブ102,103,104は、図9に示すように、液晶パネル102b,103b,104bの入射側及び出射側に偏光板102a,102c,103a,103c,104a,104cが配置されて構成されている。また、図示しないが特許文献2などに記載されているように、光源から液晶ライトバルブに至る経路における反射効率を向上させるために、光源から出射された光束は全てS偏光に変換されている。また、光源からS偏光光が照射されることを受けて、赤色光用の液晶ライトバルブ103及び青色光用の液晶ライトバルブ104の入射側にλ/2位相差板105,106がそれぞれ配置されている。これにより、S偏光の赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム101に入射されるので、クロスダイクロイックプリズム101における反射効率を向上させることができる。
【0005】
このような従来の液晶表示装置において、液晶ライトバルブ102,103,104における液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向については格別の配慮が払われていなかった。同様に、λ/2位相差板105,106における光束の回転方向についても格別の配慮が払われていなかった。このため、図10に示すように、これら液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向、及び、λ/2位相差板105,106における光束の回転方向は、通常は全てが同一方向に統一されていた。
【0006】
また、一般に、液晶ライトバルブ102,103,104は、液晶パネル102b,103b,104bのカイラル方向によりコントラストの低い明視方向とコントラストの高い暗視方向とが存在する。図9に示す液晶ライトバルブ102,103,104は、それぞれがカイラル方向左回りの液晶パネル102b,103b,104bを有する。このようなカイラル方向左回りのねじれマチック型の液晶パネルにおいては、液晶ライトバルブ102,103,104の入射側から見て左側がコントラストの低い明視方向であり右側がコントラストの高い暗視方向となっている。なお、図9においては、明視側を薄く表し、暗視側を濃く表している。
【0007】
さらに、上記構成においては、赤色光及び青色光が反射膜101a,101bにて反射されて光路が90度変更されてクロスダイクロイックプリズム101を透過するのに対し、緑色光はクロスダイクロイックプリズム101を直進して透過する。このため、明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域(図示左側の領域)で合成されるとともに、暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域(図示右側の領域)で合成される。このようにコントラストが高低の緑色光、青色光及び赤色光が合成される結果、図11に示すように、スクリーン107の上右方にマゼンダ色気味の色むら107aが現れ、上左方に緑色気味の色むら107bが現れるという問題があった。
【0008】
このような光学的な問題に対し、特許文献1においては、この色むら107a,107bを打ち消すように原色映像信号に補正信号を重畳する電気的な方策が採られている。
【特許文献1】特開2000−122023号公報、段落番号0002−0005
【特許文献2】特開平10−186548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、原色映像信号に補正信号を重畳することにより、上述の色むら107a,107bを防止する電気的な方法も一つの方策であるが、その根本原因であるコントラストが高低の緑色光、青色光及び赤色光が混色されることを回避することにより、色むらを光学的に解決することが必要と考えられる。
【0010】
本発明は、このような背景の下になされたものであって、ねじれネマチック型の液晶ライトバルブの視野角特性に起因する色むらを光学的に解決した液晶表示装置及びこれを用いた液晶プロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液晶表示装置は、照射された光を映像信号に基づいて光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブと、これら液晶ライトバルブを照射する光源と、前記液晶ライトバルブにて光変調された赤色光、緑色光及び青色光の各映像光を合成するクロスダイクロイックプリズムと、前記液晶ライトバルブを通過する経路に設置された偏光回転用の位相差板とを備えた液晶表示装置において、前記液晶ライトバルブのうちの一の液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成し、他の二つの液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成するように構成されるとともに、前記一の液晶ライトバルブと前記他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされ、前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ配置されるとともに、位相差板における光束の回転方向が前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向とは逆の方向となるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書においてねじれネマチック型の液晶ライトバルブは、TNモード又はSTNモードの液晶パネルを用いた液晶ライトバルブをいい、ノーマルホワイトモード又はノーマルブラックモード何れでもよい。
【0013】
上記のように構成すると、光学的要因による色むらの発生を光学的に可決することができる。すなわち、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成する液晶ライトバルブと、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成する他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされている。このため、前記一の液晶ライトバルブにおける明視方向側を通過したコントラストの低い光に対して、前記他の二つの液晶ライトバルブにおける明視方向側を通過したコントラストの低い光が合成される。また、これとは反対に、前記一の液晶ライトバルブにおける暗視方向側を通過したコントラストの高い光に対して、前記他の二つの液晶ライトバルブにおける暗視方向側を通過したコントラストの高い光が合成される。これにより、従来問題となっていた色むらが軽減される。また、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路に偏光回転用の位相差板が配置されているので、クロスダイクロイックプリズムにおける反射効率が良くなる。さらに、この位相差板における透過光の回転方向を前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向と逆の方向とすることにより光学的補償が行われ、さらに、色むらが緩和される。このように本発明によれば、従来と同様の機器配置構成により色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【0014】
また、前記位相差板は、λ/2位相差板であることが好ましい。このようにすることにより全体の構成が簡略化される。例えば、λ/2を用いる代わりにλ/4板を2枚用いることもできるが構成が煩雑となる。
【0015】
また、前記液晶ライトバルブは、入射側及び出射側に偏光板を有し、前記位相差板は、その近傍に位置する前記液晶ライトバルブの偏光板と共に、共通の支持基板に積層されて支持されているようにすることが好ましい。位相差板も偏光板も樹脂薄膜により構成されているので、共通の支持基板に積層されることにより構成を簡略化することができる。
【0016】
また、前記位相差板は、前記一の液晶ライトバルブを通過する経路には配置されず、他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ設置されていることが好ましい。前記一の液晶ライトバルブを透過する光は、クロスダイクロイックプリズムにおいて反射されずに透過されるのみである。従って、このように構成することにより、前記一の液晶ライトバルブを通る経路に偏光回転用の位相差板を設置しない構成となり、無駄のない構成とすることができる。
【0017】
また、前記一の液晶ライトバルブは、緑色光用の液晶パネルであり、前記他の二つの液晶ライトバルブは、赤色光用の液晶パネル及び青色光用の液晶ライトバルブであるように構成することができる。このように構成すると、液晶表示装置における一般的機器配置構成として利用できるので広い範囲で利することができる。
【0018】
また、本発明に係る3板式液晶プロジェクタは、上記の液晶表示装置を用いた液晶プロジェクタであるので、色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブのカイラル方向と偏光回転用の位相差板の回転方向を組み合わせるという光学的方法により、輝度差原因の色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る液晶表示装置を用いた一例としての液晶プロジェクタについて、図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの実施の形態に係る3板式液晶プロジェクタの光学系を示した平面図である。
【0021】
この投写型表示装置は、照明光学系10と、ダイクロイックミラー21,22と、反射ミラー24,25,26と、リレーレンズ28,29と、2枚のλ/2位相差板31,32と、3枚の液晶ライトバルブ33,34,35と、クロスダイクロイックプリズム37と、投写レンズ系39とを備えている。
【0022】
照明光学系10は、略平行な光束を出射する光源11と、インテグレータレンズ12と、入射光を所定の直線偏光光成分に変換する偏光変換素子13と、集光レンズ14、全反射ミラー15とを備えている。照明光学系10は、被照明領域である3枚の液晶ライトバルブ33,34,35を略均一に照明するための光学系である。
【0023】
光源11は、放射状の光線を出射する放射光源としての光源ランプ11aと、光源ランプ11aから出射された放射光を略平行な光束として出射する凹面鏡11bとを有している。凹面鏡11bとしては、放物面鏡が用いられている。
【0024】
インテグレータレンズ12は、第1のレンズアレイ12aと第2のレンズアレイ12bとから構成されている。第1のレンズアレイ12a及び第2のレンズアレイ12bは、略矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。また、各小レンズは、液晶ライトバルブ33,34,35の形状と略相似形をなすように設定されている。光源11から出射された平行光束は、このインテグレータレンズ12により分割され、第1のレンズアレイ12aにおける光源像を液晶ライトバルブ33,34,35で結像させる機能を有する。
【0025】
偏光変換素子13は、インテグレータレンズ12を介して照射されるランダムな偏光方向を有する光束を全てS偏光光に変換することによって、投写型表示装置における光の利用効率を高めるものである。
【0026】
インテグレータレンズ12から出射された部分光束は、偏光変換素子13でS偏光光に変換されて集光レンズ14に入射する。
集光レンズ14は、これらの複数の部分光束を重畳させて、被照明領域である液晶ライトバルブ33,34,35に集光させる重畳光学系として機能し、これにより各液晶ライトバルブ33,34,35を略均一に照明する。集光レンズ14で集光されたS偏光である光束は、全反射ミラー15で反射されて第1のダイクロイックミラー21に出射される。
【0027】
2枚のダイクロイックミラー21,22は、全反射ミラー15で反射された白色光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する色光分離手段としての機能を有する。
第1のダイクロイックミラー21は、照明光学系から出射された白色光束の赤色光成分をS偏光光のままで透過させるとともに、青色光成分及び緑色光成分をS偏光光のままで反射させる。第1のダイクロイックミラー21を透過した赤色光は、反射ミラー24で反射され、λ/2位相差板31を通って赤色光用の液晶ライトバルブ33に達する。λ/2位相差板31は、図2に示すように、遅相軸31aを、後述する偏光板33aの透光軸に対し入射側から見て時計回転方向に135度とする。このλ/2位相差板31は、これにより、S偏光の赤色光を、P偏光光として液晶ライトバルブ33に入射させる機能を有する。
【0028】
第1のダイクロイックミラー21で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー22によってS偏光光のまま反射されて緑色光用の液晶ライトバルブ34に達する。一方、青色光は、S偏光光のままで第2のダイクロイックミラー22を透過し、リレーレンズ28,29及び反射ミラー25,26を備えたリレーレンズ系を通ってλ/2位相差板32に入射される。このλ/2位相差板32から青色光用の液晶ライトバルブ35を経由してクロスダイクロイックプリズム37に至る経路は、図2に示すように、前述のλ/2位相差板31から赤色光用の液晶ライトバルブ33を経由してクロスダイクロイックプリズム37に至る経路と同様の構成である。λ/2位相差板32は、図2に示すように、遅相軸32aを、後述する偏光板35aの透光軸に対し入射側から見て時計回転方向に135度とする。λ/2位相差板32に入射された青色光は、このλ/2位相差板32においてP偏光に変換されて青色光用の液晶ライトバルブ35に達する。他方、第2のダイクロイックミラー22で分離されたS偏光の緑色光は、そのまま緑色光用の液晶ライトバルブ34に入射する。
【0029】
3枚の液晶ライトバルブ33,34,35は、与えられた画像情報(画像信号)に従って、3色の色光をそれぞれ変調して画像を形成する光変調手段としての機能を有する。
赤色光用の液晶ライトバルブ33は、図1及び図2に示すように、液晶パネル33bと、液晶パネル33bの入射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板33aと、出射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板33cとで構成されている。赤色光用の液晶ライトバルブ33に入射するP偏光の赤色光は、P偏光光透過用の偏光板33aをそのまま透過し、液晶パネル33bによって変調されることにより、一部がS偏光光に変換され、S偏光光のみがS偏光光透過用の偏光板33cを透過して出射する。
【0030】
緑色光用の液晶ライトバルブ34は、図1及び図3に示すように、液晶パネル34bと、液晶パネル34bの入射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板34aと、出射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板34cとで構成されている。緑色光用の液晶ライトバルブ34に入射するS偏光の緑色光は、S偏光光透過用の偏光板34aをそのまま透過し、液晶パネル34bによって変調されることにより、一部がP偏光光に変換され、P偏光光のみがP偏光光透過用の偏光板34cを透過して出射する。
【0031】
青色光用の液晶ライトバルブ35は、図1及び図2に示すように、液晶パネル35bと、液晶パネル35bの入射側に設けられたP偏光光透過用の偏光板35aと、出射側に設けられたS偏光光透過用の偏光板35cとで構成されている。青色光用の液晶ライトバルブ35に入射するP偏光の青色光は、P偏光光透過用の偏光板35aをそのまま透過し、液晶パネル35bによって変調されることにより、一部がS偏光光に変換され、S偏光光のみがS偏光光透過用の偏光板35cを透過して出射する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム37は、液晶ライトバルブ33,34,35で変調された3色の色光を合成してカラー画像を形成する色合成手段としての機能を有する。このために、クロスダイクロイックプリズム37には、赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bとがクロス状に形成されている。赤色光用の液晶ライトバルブ33で変調されたS偏光の赤色光は、赤色光用の反射膜37aで反射されて投写レンズ系39の方向に出射される。また、青色光用の液晶ライトバルブ35で変調されたS偏光の青色光も、同様に、青色光用の反射膜37bで反射されて投写レンズ系39の方向に出射される。これに対し、緑色光用の液晶ライトバルブ34で変調されたP偏光の緑色光は、赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bとをそのまま透過して投写レンズ系39の方向に出射される。
【0033】
赤色光用の反射膜37aと青色光用の反射膜37bは、S偏光光に対する反射率特性が、P偏光光に対する反射率特性よりも優れている。従って、赤色光と青色光をS偏光光としてクロスダイクロイックプリズム37に入射させ、緑色光をP偏光光としてクロスダイクロイックプリズム37に入射させることによって、赤色光と青色光に対しては高い反射率を得ることができ、一方、緑色光に対しては高い透過率を得ることができる。この結果、3色の光の利用効率をそれぞれ高めることができる。
【0034】
そして、本発明は、赤色光及び青色光が通過する入射側のλ/2位相差板31,32から赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35を経て合成プリズムに至る経路(図2参照)、及び、緑色光が通過する緑色光用の液晶ライトバルブ34を経て合成プリズムに至る経路(図3参照)に特徴を備えている。
【0035】
すなわち、赤色光及び青色光が通過する入射側のλ/2位相差板31,32から赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35を経てクロスダイクロイックプリズム37に至る経路においては、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35に左カイラルの液晶パネル33b,35bが使用されている。また、この経路に配置されるλ/2位相差板31,32は、遅相軸31a,32aが、入射側から見てP偏光光透過用の偏光板33a,35aの透過軸に対して135度とされているとともに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向が、液晶ライトバルブ33,35の左カイラルとは逆の右回りとされている。また、λ/2位相差板31,32は、P偏光光透過用の偏光板33aに積層された状態で一つの基板に支持されるように構成されている。
【0036】
一方、緑色光が通過する液晶ライトバルブ34を経てクロスダイクロイックプリズム37に至る経路においては、図3に示すように、液晶ライトバルブ34に右カイラルの液晶パネル34bが使用されている。このように、液晶ライトバルブ34と液晶ライトバルブ33,35とは、液晶パネルのカイラル方向が逆となる組み合わせに構成されている。なお、この経路にはλ/2位相差板が使用されていない。
【0037】
従って、クロスダイクロイックプリズム37においては、図4に示すように、赤色光及び青色光は、反射膜37a,37bにおいて反射されて光路が90度変更されてクロスダイクロイックプリズム37を透過する。これに対し、緑色光は、クロスダイクロイックプリズム37を直進して透過する。このため、緑色光用の液晶ライトバルブ34における明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35における明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域側(図4における右側)を通過して合成される。また、緑色光用の液晶ライトバルブ34における暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35における暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域側(図4における左側)を通過して合成される。また、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bの左カイラルとは逆の右回転方向としているので、光学的補償が成されている。これにより前述のスクリーン上左方の緑色気味の色むら及び上右方のマゼンダ色気味の色むらが改善される。
【0038】
【表1】
表1は、上記実施の形態についての実験結果を示すものである。また、図7に各実験に供された構成上の特徴を比較できるように表示している。
【0039】
表1における参考例1は、図7における参考例1の欄に示すように、実施の形態1において、λ/2位相差板31,32の遅相軸31a,32aを入射側から見て時計回りに45度として、光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の左回りとしたものである。なお、他の構成は、実施の形態1と同一である。
【0040】
また、表1における従来例1は、図7における従来例1の欄に示すように、実施の形態1において、赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向を緑色光用の液晶パネル34bのカイラル方向と同一の右方向としている。また、従来例1は、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の右回りとしている。
【0041】
また、この実験は、光源11からの白色光を各液晶ライトバルブ33,34,35を経由させて、クロスダイクロイックプリズム37にて合成してスクリーンに投写することにより得られる黒表示の画面において、黒表示の均一性をCIE色度座標の(x、y)を用いて画面内の色差(Δx,Δy)で表している。換言すると、Δxは、黒色に表示されたスクリーン上のCIE色度座標におけるx座標についての最大差であり、Δyは、黒色に表示されたスクリーン上のCIE色度座標におけるy座標についての最大差である。従って、このΔx及びΔyが小さくなると全体として色むらが小さくなるといえる。
【0042】
実験の結果は、表1に記載のように、本実施の形態は、色差(0.06,0.031)である。これに対し、参考例1は、色差(0.013,0.033)であり、従来例は、色差(0.042,0.084)である。従って、本実施の形態は参考例1及び従来例1より改善されている。
【0043】
本発明に係る実施の形態は、以上のように構成されているので、次のような作用効果を奏することができる。
(1)緑色光用の液晶ライトバルブ34と、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35とでは、液晶パネルのカイラル方向が異なるように組合せされている。さらに、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35の入射側に配置されるλ/2位相差板31,32は、光束の回転方向が赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向とは逆の右回りとなるように構成されている。これにより色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。なお、本実施の形態においては、緑色光用の液晶ライトバルブ34が本発明における一の液晶ライトバルブであり、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35が発明における他の二つの液晶ライトバルブである。
【0044】
(2)赤色光用の液晶ライトバルブ33(第2の液晶ライトバルブ)及び青色光用の液晶ライトバルブ35(第3の液晶ライトバルブ)の入射側に配置される位相差板としては、λ/2位相差板とされているので全体の構成が簡略化される。なおλ/2位相差板を用いる代わりに、λ/4位相差板を2枚用いるなどの他の構成も可能であるが、構成が煩雑となる。
【0045】
(3)また、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35は、入射側及び出射側に偏光板33a,33c,35a,35cを有し、λ/2位相差板31,32が入射側の偏光板33a,35aに積層された形態として共通の支持基板に支持されているので、偏光板33a,35a及びλ/2位相差板31,32の支持構造が簡略化される。
【0046】
(4)また、λ/2位相差板31,32は、緑色光用の液晶ライトバルブ34を通過する経路には配置されず、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35を通過する経路にそれぞれ設置されているので、緑色光用の液晶ライトバルブ34を通過する経路の構成を簡素化することができる。
【0047】
(5)赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35の入射側にλ/2位相差板31,32が配置されているので、クロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射される光束がY偏光光となっている。従って、クロスダイクロイックプリズム37における反射効率がよい。
【0048】
(6)緑色光用の液晶ライトバルブ34で変調された緑色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bを透過し、赤色光用の液晶ライトバルブ33及び青色光用の液晶ライトバルブ35で変調された赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射される構成となっている。従って、液晶表示装置における一般的な機器配置構成として利用することができ、広い範囲で利用することができる。
【0049】
(7)この実施の形態に係る3板式液晶プロジェクタは、上記構成の液晶表示装置を用いているので、光学的方法により輝度差原因の色むらを緩和した均一性のよいカラー映像を得ることができる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図5、図6及び前述の図7に基づき説明する。実施の形態2は、緑色光用の液晶ライトバルブ34を左カイラルとした場合の構成を示す。
【0051】
この実施の形態2においては、緑色光用の液晶ライトバルブ34の液晶パネル34bを左カイラルとしているので、このカイラル方向に対応して図5に示すように、赤色光用の液晶ライトバルブ33の液晶パネル33b及び青色光用の液晶ライトバルブ35の液晶パネル35bとして右カイラルのものを使用している。また、液晶ライトバルブ33,35の入射側に設けられるλ/2位相差板31,32として、光束の回転方向が液晶パネル33b,35bのカイラル方向の逆方向である左回りのものを使用している。
【0052】
実施の形態2は、以上のように、クロスダイクロイックプリズム37においては、図6に示すように、各液晶パネル33b、34b、35bにおける明視方向及び暗視方向が実施の形態1の場合と逆方向になっている。この結果、明視方向側を通過したコントラストの低い緑色光と明視方向側を通過したコントラストの低い青色光及び赤色光とが同一領域側(図6における左側)を通過して合成される。また、暗視方向側を通過したコントラストの高い緑色光と暗視方向側を通過したコントラストの高い青色光及び赤色光とが同一領域側(図6における右側)を通過して合成される。さらに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向を液晶パネル33b,35bの右カイラルとは逆の左回りとしているので、光学的補償が成されている。従って、実施の形態1の場合と同様に、スクリーン上左方の緑色気味の色むら及び上右方のマゼンダ色気味の色むらが改善される。
【0053】
【表2】
表2は、上記実施の形態についての実験結果を示すものである。
【0054】
この表2における参考例2は、図7における参考例2の欄に示すように、実施の形態2において、λ/2位相差板31,32の遅相軸31a,32aを入射側から見て時計回りに135度とし、光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の右回りとしたものである。
【0055】
また、表2における従来例2は、図7における従来例2の欄に示すように、実施の形態2において、赤色光用の液晶パネル33b及び青色光用の液晶パネル35bのカイラル方向を緑色光用の液晶パネル34bのカイラル方向と同一の左カイラルとしている。また、従来例2は、λ/2位相差板31,32の光束の回転方向を液晶パネル33b,35bのカイラル方向と同一の左回りとしている。
【0056】
また、この実験は、先の実施の形態1に説明したものと同様に、光源11からの白色光を各液晶ライトバルブ33,34,35を経由させて、クロスダイクロイックプリズム37にて合成して投写することにより得られる黒表示の画面において、黒表示の均一性をCIE色度座標の(x、y)を用いて画面内の色差(Δx,Δy)で表している。
【0057】
実験の結果は、表2に記載のように、本実施の形態は、色差(0.015,0.025)である。これに対し、参考例2は、色差(0.021,0.059)であり、従来例2は、色差(0.021,0.059)である。従って、本実施の形態は参考例2及び従来例2より改善されている。
【0058】
実施の形態2は以上のように構成されているので、実施の形態1の場合と同様の効果を奏することができる。
(変形例)
本発明は、上記の実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、例えば、次のように変形することもできる。
【0059】
・各実施の形態では、λ/2位相差板31,32を液晶ライトバルブ33,35の入射側に設置しているが、これを図8に示すように、液晶ライトバルブ33,35の出射側、つまり、液晶ライトバルブ33,35とクロスダイクロイックプリズム37との間に設置することもできる。例えば、実施の形態1においてこのように変形する場合は次のようにする。すなわち、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブ33,35は、入射側の偏光板33a,35aをS偏光光用偏光板とし、出射側の偏光板33c,35cをP偏光光用偏光板とする。また、λ/2位相差板31,32は、遅相軸31a,32aが、入射側から見て手前に設置されているP偏光光透過用の偏光板33c,35cの透過軸に対して135度とされているとともに、λ/2位相差板31,32における光束の回転方向が、液晶ライトバルブ33,35の左カイラルとは逆の右回りとされている。従って、λ/2位相差板31,32は、設置場所が異なるが、実施の形態1のものと同一のものでよい。なお、このように変形した場合も変形前のものと同様の効果を奏することができる。また、このように変形した場合は、λ/2位相差板31,32を出射側の偏光板33c,35cに積層し、これらを共通の支持基板で支持するようにすれば、支持基板の構造を簡略化することができる。
【0060】
・各実施の形態では、P偏光光透過用の偏光板33a,35aの入射側に設置する位相差板をλ/2位相差板31,32としているが、P偏光をS偏光に変換するものであれば他の構成としてもよい。例えば、λ/4位相差板を2枚組み合わせて行う方法でも可能である。
【0061】
・各実施の形態においては、緑色光がクロスダイクロイックプリズム37を直進して透過し、赤色光及び青色光がクロスダイクロイックプリズム37の反射膜37a,37bで反射して透過する構成を採っているが、直進させる色光及び反射させる色光を他のものに変更してもよい。なお、この場合は、クロスダイクロイックプリズム37のみならずダイクロイックミラーの構成を色光の変更に対応して変更する必要がある。このため、この場合には一般のカラー用の液晶表示装置との共通性が薄くなるという問題がある。
【0062】
・各実施の形態では、光源11の光を複数の部分光束に分割する2つのレンズアレイ12a,12bからなるインテグレータレンズ12を用いていたが、この発明は、このようなインテグレータレンズ12を用いない投写型表示装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶プロジェクタに利用することができる。また、このような液晶プロジェクタは、ホームシアター、会議室、研修室、教室、娯楽場、各種展示室、スタジオなど多方面の施設において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る液晶プロジェクタの光学系である。
【図2】同光学系における赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図3】同光学系における色緑色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図4】同光学系における色むら軽減の原理説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る液晶プロジェクタの光学系における赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図6】同光学系における色むら軽減の原理説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1及び実施の形態2における液晶ライトバルブを通過する経路における機器の構成を、参考例及び従来例と比較して示した構成一覧図である。
【図8】変形例に係る、赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図9】従来の液晶プロジェクタにおける色むら発生原理説明図である。
【図10】同液晶プロジェクタにおける赤色光用及び青色光用の液晶ライトバルブを通過する経路の構成図である。
【図11】同液晶プロジェクタにおける色むらの発生状態説明図である。
【符号の説明】
【0065】
11…光源、31,32…(λ/2)位相差板、33…(赤色光用の)液晶ライトバルブ、33a,33c,34a,34c,35a,35c…偏光板、33b,34b,35b・t晶パネル、34…(緑色光用の)液晶ライトバルブ、35…(青色光用の)液晶ライトバルブ、37…クロスダイクロイックプリズム、37a,37b…反射膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された光を映像信号に基づいて光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブと、これら液晶ライトバルブを照射する光源と、前記液晶ライトバルブにて光変調された赤色光、緑色光及び青色光の各映像光を合成するクロスダイクロイックプリズムと、前記液晶ライトバルブを通過する経路に設置された偏光回転用の位相差板とを備えた液晶表示装置において、
前記液晶ライトバルブのうちの一の液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成し、他の二つの液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成するように構成されるとともに、前記一の液晶ライトバルブと前記他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされ、
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ配置されるとともに、位相差板における光束の回転方向が前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向とは逆の方向となるように構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記位相差板は、λ/2位相差板であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶ライトバルブは、入射側及び出射側に偏光板を有し、前記位相差板は、その近傍に位置する前記液晶ライトバルブの偏光板と共に、共通の支持基板に積層されて支持されていることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相差板は、前記一の液晶ライトバルブを通過する経路には配置されず、他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ設置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路において、前記他の二つの液晶ライトバルブの入射側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路において、前記他の二つの液晶ライトバルブの出射側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記一の液晶ライトバルブは、緑色光用の液晶パネルであり、前記他の二つの液晶ライトバルブは、赤色光用の液晶パネル及び青色光用の液晶ライトバルブであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の液晶表示装置を用いたことを特徴とする3板式液晶プロジェクタ。
【請求項1】
照射された光を映像信号に基づいて光変調するねじれネマチック型の赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶ライトバルブと、これら液晶ライトバルブを照射する光源と、前記液晶ライトバルブにて光変調された赤色光、緑色光及び青色光の各映像光を合成するクロスダイクロイックプリズムと、前記液晶ライトバルブを通過する経路に設置された偏光回転用の位相差板とを備えた液晶表示装置において、
前記液晶ライトバルブのうちの一の液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜を透過する変調光を生成し、他の二つの液晶ライトバルブは、クロスダイクロイックプリズムの反射膜で反射されて透過する変調光を生成するように構成されるとともに、前記一の液晶ライトバルブと前記他の二つの液晶ライトバルブとではカイラル方向が異なるように組み合わされ、
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ配置されるとともに、位相差板における光束の回転方向が前記他の二つの液晶ライトバルブのカイラル方向とは逆の方向となるように構成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記位相差板は、λ/2位相差板であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶ライトバルブは、入射側及び出射側に偏光板を有し、前記位相差板は、その近傍に位置する前記液晶ライトバルブの偏光板と共に、共通の支持基板に積層されて支持されていることを特徴とする請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相差板は、前記一の液晶ライトバルブを通過する経路には配置されず、他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路にそれぞれ設置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路において、前記他の二つの液晶ライトバルブの入射側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記位相差板は、前記他の二つの液晶ライトバルブを通過する経路において、前記他の二つの液晶ライトバルブの出射側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項4記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記一の液晶ライトバルブは、緑色光用の液晶パネルであり、前記他の二つの液晶ライトバルブは、赤色光用の液晶パネル及び青色光用の液晶ライトバルブであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の液晶表示装置を用いたことを特徴とする3板式液晶プロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−288554(P2009−288554A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141468(P2008−141468)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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