説明

液晶表示装置

【課題】大型化の進む液晶表示装置の低コスト化と高画質化の両立を目的として、CCFLに代表される光源の輝度向上と、輝度・色度分布均一化を課題とする。また、これらを解決することにより、低コスト化と高画質化とを両立した高品位な液晶表示装置を得ることを目的とする。
【解決手段】発光色が青色系である青色蛍光体と、緑色系である緑色蛍光体と、赤色系である赤色蛍光体の3色発光蛍光体を備えた白色光源と、白色光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とから構成される液晶表示装置において、上記緑色蛍光体が組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、かつ組成比xとyとの値が、それぞれ0.50< x+y <0.70及び1.20< y/x <2.00の関係式を同時に満すことを特徴とする。さらに望ましくは、0.50< x+y <0.65及び1.50< y/x <1.70の関係式を同時に満足させることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特にバックライトとして高輝度かつ温度による輝度変化の小さい緑色蛍光体を備えた光源を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、図8の分解斜視図に示すようにバックライトユニット1と液晶素子2とから構成される。バックライトユニット1は、光源5とそれを点灯するための駆動回路9(インバータ)、筐体3、反射板4、拡散板6、プリズムシート7、偏光反射板8から構成される。
【0003】
液晶表示装置では、この光源5からの光をバックライトユニットにより液晶素子側へ導光し、液晶素子2において画素毎にその光の透過量を調整し、かつ画素毎に赤色、緑色、青色のいずれかの光を分光して透過することによりカラー表示を行う。
【0004】
一般に液晶表示装置の光源には、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)が用いられる。図9にCCFLの長軸方向での断面図を示した。CCFLはガラス管11の内壁に蛍光体12が塗布され、管両端に電極13を備えた構造である。また、管内には放電媒体14として水銀Hgと希ガス(アルゴンArやネオンNe)が封入されている。
【0005】
なお、この種のバックライト(光源と同義)に用いられるCCFLは、室内照明用の蛍光ランプとは異なり、非常に細長い特徴的な形状を有している。一般的に、室内照明用蛍光ランプは管径(管内径)30mm程度、管長1100mm程度である。これに対して、CCFLでは、例えば32インチ液晶表示装置の場合、管径(管内径)4mm程度、管長720mm程度である。CCFLでは、管径が非常に小さいことが特徴である。
【0006】
このようなCCFLでは、両端の電極13に高電圧を印加することにより点灯する。電圧印加により、電極から放出された電子が水銀Hgを励起し、励起された水銀Hgが基底状態に戻る際に紫外線を放射する。蛍光体はこの紫外線により励起され、可視光を管の外部へ放射する。
【0007】
CCFLに備えられた蛍光体12は、発光色が青色系(主発光ピーク波長が400nmから500nm程度)である青色蛍光体と、緑色系(主発光ピーク波長が500nmから600nm程度)である緑色蛍光体と、赤色系(主発光ピーク波長が600nmから650nm程度)である赤色蛍光体の粉末を所定の白色色度になるように混合して構成する。
【0008】
これら3色の蛍光体として一般には、青色蛍光体BaMgAl10O17:Eu2+、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+、赤色蛍光体Y2O3:Eu3+が利用されている。なお、蛍光体材料の通例表記として、「:」より前方は母体材料組成を、後方は発光中心を示し、母体材料の一部の原子を発光中心で置換していることを意味する。例えば、緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+ではLaPO4が母体材料であり、ランタンLaの一部を発光中心であるテルビウムTbで置換している。また、セリウムCeはTbの発光を増感させる増感剤として添加されている。このことから、LaPO4:Tb3+,Ce3+を(La,Tb,Ce)PO4と記述してもよい。
【0009】
CCFL(光源5)から放射された可視光は、図8に示すように、その直上に配置された拡散板6、プリズムシート7、偏光反射板8などの光学部材を透過してバックライトユニット1に対向する液晶素子2に入射する。また、CCFLからの光の利用効率を向上させるために、CCFLの直下には反射板4が配置され、反射板で反射した光も先述の光学部材を透過して液晶素子2へ入射する。
【0010】
一方、液晶素子2は図13に示す断面構造を有する。即ち、対向する一対のガラス基板21(21A、21B)と、その基板の内側表面上にそれぞれ配向膜23が塗布され、さらに基板間に液晶24と、カラーフィルタ25(赤色25A、緑色25B、青色25C)が挟持された構造である。
【0011】
ガラス基板21(21A−21B)間はスペーサ26により保持されている。偏光板22(22A、22B)は、一対の基板21(21A、21B)の外側にそれぞれ配置されている。液晶24は、配向膜23により一様な配向をしており、画素毎に形成された電極群(図13では示していない)に電圧を印加することにより駆動される。電圧が印加されると、液晶はそれによって生じる電界に応じて回転し、液晶層の屈折率が変化することで、光の透過量を調整する。
【0012】
また、カラーフィルタ25(25A、25B、25C)はバックライトユニット1からの白色光Wを画素毎に赤色光R、緑色光G、青色光Bに分光し、いずれかの光を透過する。なお、液晶の初期配向とその駆動の違いにより様々な表示モードがある。
【0013】
代表的な表示モードとしては、IPS(In Plane-Switching)モード、VA(Vertically Aligned)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、TN(Twisted Nematic)モードがある。
【0014】
特に、現在では、大型液晶テレビにおいて、IPSモードとVAモードが主流となっている。IPSモードでは基板面にほぼ平行に配向した液晶分子を、基板面にほぼ水平な電界によって駆動する方式である。一方、VAモードは、基板面に対してほぼ垂直に配向した液晶分子を、基板面にほぼ垂直な電界によって駆動する方式である。両モードとも視角特性に優れ、大型の液晶表示装置に適した表示モードである。
【0015】
液晶表示装置は、このように、バックライトユニットに備えられた光源からの光の透過量を液晶素子で画素毎に調整し、かつ画素毎に赤色、緑色、青色のいずれかの光を透過するカラーフィルタで分光することによりカラー表示を行う。
【0016】
なお、この種の緑色蛍光体LaPO4:Tb3+,Ce3+に関する文献として、例えば下記の特許文献1〜7及び非特許文献1が挙げられる。
【0017】
【特許文献1】特開昭57−23674号公報、
【特許文献2】特開平4−338105号公報、
【特許文献3】特開平5−302082号公報、
【特許文献4】特開平6−56412号公報、
【特許文献5】特開平9−249879号公報、
【特許文献6】特開2000−109826号公報、
【特許文献7】特開2002−212553号公報、
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ケミカルフェジックス第60巻、第2号、第34頁(1974年){The Journal of Chemical Physics, Vol. 60, No. 1, p34(1974)}
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年、液晶表示装置は、主に大型液晶テレビとしての市場拡大が進んでおり、更なる低コスト化と高画質化が要求されている。これら要求を解決するためには、光源であるCCFLの高輝度化と輝度・色度分布の均一化が課題である。
【0019】
特にCCFLの高輝度化は重要な課題であり、この課題を解決することにより、液晶表示装置の低コスト化を実現できる。例えば、同一輝度のバックライトユニットを設計する場合には、CCFLの本数を従来より削減することが可能となり、インバータ数も同時に削減できることを含めて考えれば、大きな低コスト化を実現できる。また、CCFLの高輝度化により、CCFLと液晶素子との間に介在する光学部材(例えば、輝度向上フィルムなど)を省くことが可能となり、液晶表示装置の低コスト化を実現できる。
【0020】
一方、CCFLの輝度・色度分布は、液晶表示装置の画質に大きく影響する因子であり、その均一化は重要な課題である。液晶表示装置では、光源からの光の透過量を液晶素子により調整し、さらに分光することによって画像を表示するため、人間は液晶素子を通して光源を直視していることになる。従って、CCFLの輝度・色度分布特性が液晶表示装置の画質に直接影響する。特に、CCFLのように形状が細長い管の場合には、管軸方向での輝度・色度分布(斑)を生じ易い。
【0021】
また、バックライトユニットに複数本のCCFLを配置した場合に、バックライトユニットの中央部に配置されたCCFLと端部に配置されたCCFLの輝度・色度が異なることによる画質低下も課題である。大型化の進む液晶表示装置の高画質化に向けて、光源の輝度分布と色度分布を改善することが必要である。
【0022】
なお、本課題である輝度分布や色度分布は、CCFLの直上に配置された厚膜の拡散板6によって、ある程度均一化されているが、本課題を光源5のみで解決できれば、拡散板の厚みを薄くすることも可能である。このことは、液晶表示装置の低コスト化に繋がる。
【0023】
したがって、本発明では、大型化の進む液晶表示装置の低コスト化と高画質化の両立を目的として、CCFLに代表される光源の輝度向上と、輝度・色度分布均一化を課題とし、以下で述べる手段によりこれらの課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では、光源の高輝度化と、輝度・色度分布均一化という課題を解決し、低コストと高画質を両立する高品位な液晶表示装置を提供することを目的として、以下の手段を用いる。
【0025】
まず、第一の手段として、発光色が青色系である青色蛍光体と、緑色系である緑色蛍光体と、赤色系である赤色蛍光体との3色発光蛍光体を備えた光源と、その光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とから構成される液晶表示装置であって、緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比xとyの値がそれぞれ次式(1)と(2)とを同時に満足する構成とする。
【0026】
0.500< x+y <0.700 ‥‥(1)
1.20< y/x <2.00 ‥‥(2)
さらには、後述する蛍光体を励起する紫外線の放射特性や、蛍光体の温度特性を考慮すると、緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比xとyの値がそれぞれ次式(3)と(4)とを同時に満足する構成がよい。
【0027】
0.500< x+y <0.650 ‥‥(3)
1.50< y/x <1.70 ‥‥(4)
また上記手段に加え、上記光源は、青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体との3色発光蛍光体を備えた密閉容器と、その密閉容器に封入された放電媒体と、放電媒体に電圧を印加するために密閉容器に備えられた電極とから構成され、放電媒体から放射される波長の異なる複数の紫外線により、蛍光体を励起して発光する構成とすることが望ましい。
【0028】
このとき、放電媒体より放射される波長の異なる複数の紫外線のうち少なくとも一つは、波長200nm未満の真空紫外線を含み、また少なくとも一つは波長200nm以上の紫外線を含むことが望ましい。
【0029】
具体的には、放電媒体の主成分は水銀Hgであり、放電媒体から放射される紫外線のうち、一つは波長185nmの真空紫外線であり、一つは波長254nmの紫外線であることが望ましい。
【0030】
さらに、波長185nmの真空紫外線と、波長254nmの紫外線の強度比I185/I254が、密閉容器内で0.20以上である場合に、上記蛍光体組成比の効果を顕著に示すことができる。
【0031】
また、密閉容器は、管状のガラス管であり、管の内径が5mm以下であることが望ましい。
【0032】
このとき、ガラス管に備えられた電極は、ガラス管の両端に配置され、かつ該ガラス管の内部に配置されているか、あるいは、ガラス管の両端に配置され、かつガラス管の外部に配置されていることが望ましい。
【0033】
なお、これら以上の条件を満たす具体的な光源の一つとして、光源は、放電媒体の主成分として水銀Hgを有し、管の内径が5mm以下の冷陰極蛍光管であることが望ましい。
【0034】
また、先に述べた緑色蛍光体は、中位粒径d50が、3.0μmから6.0μmの範囲にあることが望ましい。
【0035】
一方、液晶素子は、対向する一対の透明な基板と、これら一対の基板の内側表面上に塗布された配向膜と、配向膜間に挟持された液晶の層と、一対の基板の主面外側に配置された偏光板とから構成され、配向膜は垂直配向膜であり、液晶は電圧無印加時には基板面にほぼ垂直に配向し、電圧印加時には基板面に対して傾斜することにより光の透過量を調整することを特徴とする構成が望ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明では以上の手段を用いることにより、光源の輝度向上と、輝度・色度分布の均一化を両立することができる。また、このような光源を用いることにより、大型化の進む液晶表示装置において、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明では、発光色が青色系(主発光ピーク波長400nmから500nm程度)である青色蛍光体と、緑色系(主発光ピーク波長500nmから600nm程度)である緑色蛍光体と、赤色系(主発光ピーク波長600nmから650nm程度)である赤色蛍光体の3色発光蛍光体を備えた光源と、光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とを有して構成される液晶表示装置であり、緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比x、yが次式(1)と(2)とを同時に満足することを特徴とする。
【0038】
0.500< x+y <0.700 ‥‥(1)
1.20< y/x <2.00 ‥‥(2)
さらには、組成比x、yが次式(3)と(4)とを同時に満足することを特徴とする。
【0039】
0.500< x+y <0.650 ‥‥(3)
1.50< y/x <1.70 ‥‥(4)
本発明の最大の特徴は、液晶表示装置のバックライトを構成する光源に用いる緑色蛍光体として、(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4を利用し、かつその組成比が式(1)と(2)とを同時に満足することである。さらには、その組成比が式(3)と(4)とを同時に満足することである。
【0040】
本発明は、新しい組成比を有する緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4により、先に述べた液晶表示装置の光源に関する二つの大きな課題、(1)高輝度化と(2)輝度・色度分布の均一化とを同時に解決する。
【0041】
(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4は、図5に示す発光スペクトルを有するもので、従来の室内照明用蛍光ランプでも利用されてきた材料であるが、本発明では従来とは組成比が大きく異なる。本発明における (La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比は、液晶表示装置の光源に利用した場合、高輝度化と輝度・色度分布均一化の両立を実現できる組成比である。
【0042】
本発明者らは、液晶表示装置の光源が、室内照明用蛍光ランプと大きく異なる点に着目し、上記式(1)と(2)とに示した組成比、さらには式(3)と(4)とに示した組成比が、液晶表示装置の光源に有効であることを見出した。
【0043】
なお、ここで示す蛍光体の組成は、基本組成であり、微量の不純物を考慮した記述ではない。一般に蛍光体を合成する時にはフラックス(融材)を利用し、合成後には、フラックス構成元素が微量不純物として存在することがある。例えば、(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の合成時には、四ホウ酸リチウムLi2B4O7をフラックスとして利用する場合があり、蛍光体として微量のリチウムLiが存在する場合がある。
【0044】
また、蛍光体焼成時には、蛍光体と焼成容器(例えばアルミナ坩堝)が接することから容器を構成する元素も微量に存在することもある。本明細書での記述は、蛍光体の光学特性に影響を及ぼさない微量の不純物を考慮した記述ではない。
【0045】
以下、本発明において、上記組成比が液晶表示装置の光源に有効である理由について、各課題ごとに述べる。
(1)高輝度化
液晶表示装置に利用されているCCFLは、特に管径が非常に小さい点が特徴であり、室内照明用途の蛍光ランプとは構造(形状)が大きく異なる。例えば、一般家庭用照明蛍光ランプでは管径(管内径)が30mm程度であるのに対し、CCFLでは4mm程度と非常に小さい。本発明者らは、この管径の違いが、CCFL内部で発生する紫外線の放射特性に大きく影響することに着目し、その紫外線放射特性に最適な緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比を見出した。
【0046】
CCFLと照明蛍光ランプは、光源の分類としては水銀ランプに分類される。すなわち、蛍光体を内部に備えたガラス管の中に放電媒体として水銀が封入され、この水銀から放射される紫外線によって蛍光体を発光させる。
【0047】
水銀から放射される紫外線には、波長の異なる複数の紫外線があり、例えば、波長が365nm、313nm、298nm、254nmなどがあり、さらに波長200nm未満の185nmの真空紫外線(VUV:Vacuum Ultraviolet)がある。そして、これら紫外線の放射比率(強度比率)は、ガラス管の管径(内径)や温度に大きく依存し、照明蛍光ランプとCCFLでは、その放射比率が大きく異なる。蛍光体の発光特性は、励起源である紫外線の放射特性に大きく影響されるため、各種紫外線の放射比率が変化することにより蛍光体の最適組成も大きく異なる。本発明では、この点に着目した。
【0048】
照明蛍光ランプのように管径が大きい場合には、水銀から波長254nmの紫外線が主に放射され、その他の紫外線はほとんど放射されない。従って、照明蛍光ランプにおける蛍光体は、主に波長254nmの紫外線により励起される。
【0049】
一方、管径が小さくなると、185nm真空紫外線の放射比率が高くなる。本発明者らの検討から、CCFLのように管径が5mm以下と非常に小さい場合には、波長が185nm真空紫外線と254nm紫外線の放射比率I185/I254は0.20以上であることがわかった。さらに、この放射比率は、管の温度にも大きく依存し、CCFLをバックライトユニット内で点灯させたような高温環境下(60℃以上)では、放射比率I185/I254は0.50以上になる場合も考えられる。
【0050】
この波長185nm真空紫外線の放射比率が高いという現象は、CCFLのように管径が非常に小さい(管内径5mm以下)光源における特異的な現象であり、照明用蛍光ランプとは大きく異なる。従って、CCFLにおける蛍光体は、波長の異なる二種類の紫外線、すなわち254nm紫外線と185nm真空紫外線により励起される。
【0051】
そこで、本発明者らはCCFLにおいて、放射比率の高い波長185nm真空紫外線に着目し、波長254nm紫外線励起での蛍光体発光特性と、波長185nm真空紫外線励起での蛍光体発光特性を両立できる(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比を検討した。その結果として式(1)と式(2)とに示した組成範囲が液晶表示装置用光源の高輝度化に最適であることを見出した。さらには、式(3)と式(4)とに示した組成範囲がより最適であることを見出した。以下、(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の最適組成比の詳細について述べる。
【0052】
(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4では、Tbが発光中心であり、Tbからの発光により図5に示すような発光スペクトルを示す。そして、この発光過程は励起紫外線の波長によって異なる。波長220nmから300nmの紫外線は、Ceにより吸収され、CeからTbへのエネルギー伝達により発光する。
【0053】
一方、波長160nmから200nmまでの真空紫外線はTbによる直接吸収により発光する。これらの技術内容は、例えばThe Journal of Chemical Physics, Vol. 60, No. 1, p34(1974)に記述されている。従って、CCFLに本蛍光体を適用する場合には、管内で発生する二種類の紫外線(波長185nm真空紫外線と波長254nm紫外線)を効率よく可視光に変換する必要があり、そのためには、CeとTbの組成比が重要となる。特に、x+y(Ce+Tb総量)とy/x(CeとTb量の比率)が重要となる。
【0054】
そこで、本発明者らは、各種組成比を有する(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の真空紫外線励起および254nm紫外線励起での輝度を評価した。評価結果を図2と図3のグラフに示す。本グラフでの輝度は相対値で示し、現在汎用されている緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4(x+y=0.428、 y/x=2.18)の各励起における輝度を100%として示している。図中のVUV励起の表示は真空紫外線励起を表している。
【0055】
なお、この真空紫外線励起での評価は、波長185nm真空紫外線を用いて行うべきであるが、185nm単一の真空紫外線を放射できる光源がないため、本検討では波長の近いキセノンエキシマ光源(波長172nm)を利用した。波長は異なるが、ともに真空紫外線であること、蛍光体の吸収帯が同じであることから、172nm励起での蛍光体発光特性を議論に用いても問題ない。
【0056】
図2から、各励起における相対輝度は、x+y(Ce+Tb量)を変化させることで大きく変化することがわかる。このとき、254nm紫外線励起では、x+yを増すに伴い輝度は高くなり、x+y=0.42以上で相対輝度は100%を超える。
【0057】
一方、真空紫外線励起(VUV励起)では、ほぼ上に凸の放物線状の変化を示し、0.45から0.70の範囲において、輝度は高くなる。CCFLでは、254nm紫外線励起での発光特性と、真空紫外線励起での発光特性が、ある一定の比率で合わさった特性として観測される。従って、254nm紫外線励起での輝度と、真空紫外線励起での輝度の両立を考えると、x+yが0.50から0.70の範囲が望ましい。x+yが0.65以上では、VUV励起の輝度は低下するが、254nm励起での輝度が非常に高いため、0.70までは高輝度化が可能である。さらには、相対輝度が共に102%以上であれば、視覚的に効果を検知できることから、x+yが0.50から0.65の範囲が望ましい。
【0058】
次に、上記で高輝度化が期待できる組成範囲を有する(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4について、y/x(Ce/Tb比)と相対輝度の関係を検討した。その結果を図3に示す。図3から、各励起における相対輝度は、y/xを変化させることで大きく変化することがわかる。各励起における輝度の変化は、y/xに対して、ほぼ上に凸の放物線状に変化し、254nm紫外線励起での輝度と、真空紫外線励起(VUV励起)での輝度の両立を考えると、y/xが1.20から2.00の範囲が望ましい。さらには、相対輝度が共に102%以上であれば、視覚的に効果を検知できることから、y/xが1.50から1.70の範囲が望ましい。
【0059】
これらのことから、高輝度化には0.500< x+y <0.700と1.20< y/x <2.00とを同時に満足する組成比が望ましい。さらには、0.500< x+y <0.650と1.50< y/x <1.70とを同時に満足する組成比が望ましい。
(2)輝度・色度分布の均一化
もう一つの課題として、光源の輝度・色度分布が挙げられる。特にCCFLの場合には、管軸方向で輝度・色度分布を生じ、この分布が液晶表示装置の画質に影響する。液晶表示装置では、光源からの光の透過量を液晶素子により調整し、さらに分光することによって画像を表示するため、人間は液晶素子を通して光源を直視していることになる。従って、液晶表示装置において、光源の輝度・色度分布の均一化は非常に重要な課題である。一方、照明用蛍光ランプでは、このような輝度・色度分布は必ずしも重要な課題ではなかった。照明用蛍光ランプの場合には、蛍光ランプからの光を人間が直視することはほとんどなく、ある物体に照射させた反射光を見ていることになる。従って、蛍光ランプ自体の輝度・色度分布はほとんど影響しない。
【0060】
本発明は、液晶表示装置用の光源に必要な輝度・色度分布の均一化という、照明用蛍光ランプとは異なる課題に着目し、その課題を解決する。
【0061】
CCFLにおいて、輝度・色度分布を生じる一つの要因として、本発明者らは蛍光体の温度特性に着目した。ここで述べる温度特性とは、同じ強度の励起源が蛍光体に照射された場合に、温度によって蛍光体の発光効率が変化する現象を言う。図6に蛍光体の温度特性を説明するための概念図を示した。温度特性が悪い場合(図中特性A及び特性Cに相当)には、蛍光体の温度変化に対して発光効率(輝度)の変化が大きい。すなわち、温度に対する輝度変化の傾きが大きいことを意味する。一方、温度特性が良い場合(図中特性Bに相当)には、蛍光体の温度変化に対して、発光効率(輝度)の変化が小さい。すなわち、温度変化に対する輝度変化の傾きが小さいことを意味する。
【0062】
CCFLでは、電極が管の両端に配置され、この電極に高周波の高圧(〜50kHz, 1kV)が印加されるため、エネルギー損失による発熱で、非常に高温となる。CCFLでは、この電極部を熱源として、両端部から管の中央に向かって管温度は低下する。管温度の分布は、CCFLの管長やバックライトユニットに組み込まれた場合の状況により異なるが、ほぼ図7に示す分布を有する。この管温度の分布と、蛍光体の温度特性により輝度・色度分布を生じる。例えば、図6に示す特性Aのような緑色蛍光体の場合、CCFLで温度の高い電極近傍では、輝度が高くなり、温度が低い部分では輝度が低くなる。これにより管軸方向での輝度分布を生じる。さらに、現行汎用のCCFLでは、3色の蛍光体を所定の白色度となるように混合するため、温度の高い電極近傍では、緑色蛍光体の輝度が高く、緑色成分の多い白色となる。逆に温度の低い部分では、緑色蛍光体の輝度が低く、緑色成分の少ない白色となる。
【0063】
また、CCFLをバックライトユニット内に配置した場合には、ユニット内で温度分布が生じるためCCFLの輝度・色度分布も生じることが予想できる。特にユニット内での空気の対流を考えれば、ユニット上部で温度が高くなることが予想できる。従って、蛍光体の温度特性を十分に考慮する必要があり、理想的には図6の特性Bのように、光源の温度分布範囲において、輝度変化の小さい蛍光体が望まれる。
【0064】
蛍光体の温度特性は、蛍光体組成比に影響される。特に(La,Tb,Ce)PO4に含まれるCeは、温度特性に大きく影響する因子として知られており、一般にCe量が増えると温度特性が悪くなると言われている。従って、高輝度化を目的としてCe+Tb量やCe/Tb比を最適化しても、Ce量が増えることにより温度特性が悪くなる懸念がある。そこで本発明者らは、高輝度化の期待できる組成範囲において、組成比を変化させた(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4について、温度特性を評価した。当然のことながら、温度特性も励起源の波長により異なるため、真空紫外線及び、紫外線励起(VUV励起)での温度特性を評価した。
【0065】
図4に温度特性の評価結果を示す。横軸は、x+y(Ce+Tb量)である。縦軸は、輝度変化率であり、CCFLの管温度分布を考慮して、50℃から120℃での単位当りの輝度変化量から算出した値である。これまでの検討から、図4の破線以下(3%以下)では、視覚的に問題ないとされている。この図より、上記で述べた組成の範囲では、温度特性も問題のないことがわかった。ただし、図4のVUV励起での変化を見ると、x+yの増加に伴い、輝度変化量が大きくなっており、上記組成を超える範囲では、視覚的に問題を生じると予想できる。
【0066】
以上のことから、液晶表示装置の光源に用いる緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比として、0.500< x+y <0.700及び1.20< y/x <2.00の関係を両立することが望ましい。さらには、0.500< x+y <0.650及び1.50< y/x <1.70の関係を両立することが望ましい。これにより、液晶表示装置の光源として、高輝度化と、輝度・色度分布均一化との両課題を解決できる。
【0067】
なお、本発明における蛍光体の粒径は、中位径d50が3.0μmから6.0μmの範囲であることが望ましい。この粒径より大きな粒径を有する蛍光体、または逆に小さな粒径を有する蛍光体では、先に述べた効果的な光学特性を示さない。ここで述べる中位径は、蛍光体粒子の粒径分布において、質量が全粉体の重量の50%以上を占めるときの粒子径である。
【0068】
このような蛍光体は、液晶表示装置の光源に利用することが望ましい。そこで、次に液晶表示装置の光源について述べる。光源としては、現在CCFLが主流であるが、近年、その他種々の光源が提案されている。これら光源においても、本発明で提案する組成比を有する(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4を用いることで、高輝度化および輝度・色度分布の均一化を可能とする。以下、CCFL(冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp:熱陰極管)、EEFL(External Electrode Fluorescent Lamp:外部電極管)、平面型光源の構造及び特徴と、本蛍光体を用いることの有効性について述べる。
【0069】
<CCFL>
CCFLは図9に示す構造を有する。即ち、ガラス管11に蛍光体12を備え、管内部には放電媒体14が封入された構造である。電極13は管の両端に配置され、かつ管の内部に配置されている。放電媒体としては、水銀を主成分とし、その他アルゴンやネオンなどの希ガスも封入されている。
【0070】
CCFLでの特徴は上記ですでに述べたように、管径が3〜5mm程度と小さいために、254nm紫外線に加え185nm真空紫外線も同時に水銀から放射され、蛍光体の発光特性には、その真空紫外線励起の影響が大きい。従って、真空紫外線励起での輝度と、254nm紫外線励起での輝度を両立できる上記組成の緑色蛍光体を利用することが有効である。
【0071】
<HCFL>
また、CCFLだけでなく、光源として熱陰極管(HCFL:Hot Cathode Fluorescent Lamp)を利用し、先に述べた組成比を有する(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4を利用してもよい。HCFLは図10に示すように、CCFLに類似した構造であり、金属電極部13がフィラメント電極である点で大きく異なる。HCFLの両電極間に電圧を印加するとフィラメントから熱電子が放出され、この熱電子により水銀が励起され紫外線を放射する。HCFLでもCCFLと同様に、管径が非常に小さい場合には、254nm紫外線に加え185nm真空紫外線も放射され、その真空紫外線励起の影響が大きい。従って、真空紫外線励起での輝度と、254nm紫外線励起での輝度とを両立できる上記組成の緑色蛍光体を利用することが有効である。
【0072】
<EEFL>
EEFLは、図11に示す構造を有する。CCFLに類似した構造であり、ガラス管11に蛍光体12を備えた構造である。ただし、電極13は管の両端に配置され、かつ管の外部に配置されている点でCCFLと異なる。EEFLでは、外部の電極に高電圧を印加して、誘導電界により管内部の水銀を励起し、水銀から放射される波長254nmの紫外線と波長185nmの真空紫外線とにより蛍光体を発光させる。
【0073】
EEFLでは、電極直下のガラス管が誘電体層となり、この誘電体層でのエネルギー損失によりCCFL以上に熱を生じる。電極端部の温度は、CCFL端部の温度より高くなる。このことは、管軸方向での温度分布発生の要因となり、結果としてCCFL以上に輝度分布や色度分布を生じることになる。従って、上記組成比を有する緑色蛍光体を利用することにより、EEFLの高輝度化と、輝度・色度分布の均一化を同時に達成することができる。
【0074】
<平面光源>
平面光源は、図12に示す構造を有する。すなわち、蛍光体12を備えた密閉容器15(背面ガラス15A、前面ガラス15B)と、その背面ガラス上に配置された電極13(13A、13B)から構成される構造を有する。さらに電極上には、誘電体16が配置される。そして、この密閉容器内に放電媒体14が封入されている。放電媒体は、平面光源の種類によって異なるが、水銀を利用している光源もある。
【0075】
この場合には、CCFLと同様に254nm紫外線と185nm真空紫外線とが放射されるため、上記組成比を有する緑色蛍光体を利用することが有効である。特に大型液晶表示装置用の平面型光源では、その面が広く、面内での温度分布を生じやすいため、本蛍光体の利用が有効である。
【0076】
なお、これ以外の光源であっても、波長200nm未満の真空紫外線と、波長200nm以上の紫外線によって蛍光体を励起するような光源の場合には、本発明で示した組成を有する緑色蛍光体を利用することが有効である。これにより高輝度化と、輝度・色度分布の均一化を同時に達成できる。そして、このような光源を備えたバックライトを利用することにより、高輝度化と輝度・色度分布を抑制した高画質、低コストの液晶表示装置を得ることができる。
【0077】
さらに、このような緑色蛍光体を備えた光源は、特にVAモードの液晶素子との組み合わせが有効である。液晶素子には、液晶分子の初期配向状態と、その駆動方法により種々のモードに分類され、現在では、IPSモードやVAモード、OCBモード、TNモードが代表的である。本発明は、全てのモードに利用することが可能であるが、特にVAモードの液晶素子との組み合わせにより、VAモードの液晶素子が有する欠点を改善できる。その理由を以下で述べる。
【0078】
VAモードの液晶素子は、図14に示すように対向する一対の基板31(31A、31B)と、それら基板の内側表面上に塗布された配向膜33と、配向膜間に挟持された液晶34から構成される。さらに、基板の外側に偏光板32(32A、32B)が配置されている。配向膜33は垂直配向膜である。電極37(37A,37B)は両基板のそれぞれに形成され、これら電極間に電圧が印加される。電圧無印加時には、液晶の長軸方向が基板面にほぼ垂直な方向になる状態(図14(a))をとる。このとき液晶表示装置としては表示オフ、即ち黒表示である。次に電極に電圧が印加されると、基板面にほぼ垂直な方向の電界が発生し、この電界により液晶分子を基板面に倒すことで、液晶の層の屈折率を変化させ、光源からの光量を調整する。図14(b)が、その状態を示しており、液晶表示装置としては表示オンの状態となる。
【0079】
このVAモードでは、色度が視野角によって大きく変化するというVAモード特有の欠点を有する。特に、中間調表示での色度変化が大きい。従って、VAモードの液晶表示装置では、光源の色度変化と液晶素子に起因する色度変化の相乗効果により、他の表示モードに比べ画質が大きく低下する。特に大画面VAモード液晶表示装置の画面両端を見る場合には、CCFL電極近傍での色度変化と、液晶素子の視野角に対する色度変化の相乗効果により色度変化は最も大きくなる。
【0080】
従って、温度特性が良好な上記組成比を有する(La,Tb,Ce)PO4を緑色蛍光体として利用することにより、CCFLの色度変化を抑制でき、VAモードの液晶表示装置における色度の視野角依存性を低減できる。即ち、高画質な大型VAモード液晶表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0081】
以下、詳細な実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、従来、CCFLに利用されてきた緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4(x+y=0.428, y/x=2.18)を用いて作製した光源を備えた液晶表示装置については比較例1で述べる。
【0082】
<実施例1>
本実施例で利用する緑蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比はx+y=0.602、 y/x=1.68である。本蛍光体は室温において、比較例1で利用する緑蛍光体より高輝度である。輝度は、波長254nm励起で109%、真空紫外線励起(VUV励起)で102%を達成している。また、図1に本蛍光体の温度特性を示す。図1(a)は、波長254nm紫外線で励起した場合の特性である。
【0083】
また、図1(b)は真空紫外線励起での温度特性を示している。共に、光源温度分布範囲で輝度変化が小さいことがわかる。従って、波長254nm紫外線励起と真空紫外線励起(VUV励起)とでの発光特性を両立できており、CCFLでの高輝度化と輝度・色度分布の均一化が期待できる。
【0084】
本実施例における液晶表示装置は、図8に示すようにバックライトユニット1と液晶素子2とから構成される。さらに、バックライトユニット1は、白色光源5とそれを点灯するための駆動回路9(インバータ)、筐体3、反射板4、拡散板6、プリズムシート7、偏光反射板8から構成される。
【0085】
本実施例では、白色光源として図9に示したCCFLを用い、それに利用する緑色蛍光体材料(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比のみ従来と異なる。以下、新規組成の緑色蛍光体を利用したCCFLの作製と、このCCFLを用いたIPSモードの液晶表示装置の作製について述べる。
(1)CCFL作製:
CCFLの作製手順の概略は図15に示す通りである。まず、ビークルと呼ばれるニトロセルロースと酢酸ブチルから成る有機溶剤にアルミナなどの結着材、各色蛍光体材料を混合する。この混合液をサスペンジョンと称する。緑色蛍光体は、 (La1-x-y,Tbx,Cey)PO4(x+y=0.602、 y/x=1.68)を利用し、青色蛍光体及び赤色蛍光体は、従来と同様のBaMgAl10O17:Eu2+及びY2O3:Eu3+を利用する。
【0086】
次に、このサスペンジョンに、予め洗浄したガラス管の片側を浸し、もう一方の側よりポンプで吸入し、サスペンジョンを引き上げることによりガラス管内壁に蛍光体を塗布する。ガラス管の材質はコパールガラスであり、管径は3mmである。そして、ガラス管をベーキング(焼成)することにより、蛍光体を管内壁に固着させる。その後、電極を取り付け、ガラス管の片側を封止する。封止した側の逆側からアルゴンArやネオンNeなどの希ガスを注入し、排気することでガス圧を調整する。さらに水銀を注入後、ガラス管をシールする。最後に、このガラス管を一定時間点灯させてエージング処理を行う。
(2)バックライトユニット組み立て:
次にバックライトユニットの組み立てを図8で説明する。上記完成した複数本のCCFL5を金属筐体3に配置する。液晶テレビのような高輝度を要求される液晶表示装置では、CCFL複数本を平面的に並べて配置する直下方式が採用される。
【0087】
金属筐体3とCCFL5との間には、CCFLから筐体側に出射した光を効率よく利用するための反射板4を配置する。また、液晶表示装置の輝度面内分布を抑えるために、CCFLの直上に拡散板6を配置する。さらに、液晶表示装置の輝度向上を目的として、プリズムシート7や偏光反射板8を配置する。CCFLにはインバータ9が接続され、CCFLの点灯制御はインバータの駆動によって行われる。なお、これらをまとめてバックライトユニット1と称する。
(3)液晶素子:
バックライトユニット1の直上には、バックライト(白色光源CCFL)からの光の透過量を調整し、画素毎に赤色、緑色、青色に光を分光するカラーフィルタを有する液晶素子2を配置する。
【0088】
液晶素子の断面概略図は図13に示す通りである。基板21には、通常厚みが0.5mmのガラス基板を利用する。一方の基板21A上には、画素毎に電極(図13では図示されていない)を形成し、また、これら電極に電圧を供給する薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を形成する。他方の基板21Bには、画素毎にカラーフィルタ25(赤色25A、緑色25B、青色25C)を形成する。そして、これら一対の基板表面には液晶分子を配列させるための配向膜23を形成し、さらに基板間に液晶24を挟持する。また、基板の外側には偏光板22(22A、22B)を配置する。
【0089】
最後に、バックライトユニット1と液晶素子2とを組み合わせ、筐体10でカバーすることにより液晶表示装置を得る。
【0090】
本実施例によりCCFLの高輝度化と、輝度・色度分布の均一化とを両立することができる。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【0091】
<実施例2>
本実施例は、実施例1と比較して用いる緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比のみが異なる。組成比はx+y=0.551、 y/x=1.68である。それ以外は実施例1と同様である。
【0092】
本蛍光体は室温において、比較例1で利用する緑蛍光体より高輝度である。輝度は、波長254nm励起で107%、真空紫外線励起(VUV励起)で102%を達成している。
【0093】
また、図1(a)及び図1(b)に本蛍光体の温度特性を示す。波長254nm紫外線励起及び真空紫外線励起(VUV励起)共に、光源温度分布範囲で輝度変化が小さいことがわかる。従って、波長254nm紫外線励起と真空紫外線励起とでの発光特性を両立できており、CCFLでの高輝度化と輝度・色度分布の均一化が期待できる。
【0094】
本実施例によりCCFLの輝度向上と、輝度分布及び色度分布の均一化とを両立することができる。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【0095】
<実施例3>
本実施例は、実施例1と比較して用いる緑色蛍光体(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4の組成比のみが異なる。組成比はx+y=0.505、 y/x=1.70である。それ以外は実施例1と同様である。
【0096】
本蛍光体は室温において、比較例1で利用する緑蛍光体より高輝度である。輝度は、波長254nm励起で105%、真空紫外線励起(VUV励起)で103%を達成している。また、図1(a)及び図1(b)に本蛍光体の温度特性を示す。254nm紫外線励起及び真空紫外線励起共に、光源温度分布範囲で輝度変化が小さいことがわかる。従って、254nm紫外線励起と真空紫外線励起とでの発光特性を両立できており、CCFLでの高輝度化と輝度・色度分布の均一化とが期待できる。
【0097】
本実施例によりCCFLの輝度向上と、輝度分布及び色度分布の均一化とを両立することができる。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化を両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【0098】
<実施例4>
本実施例は、実施例1と比較して、光源の種類が異なる。実施例1ではCCFLを用いたが、本実施例では図11に示したEEFLを利用する。EEFLに利用する蛍光体は、実施例1と同様である。
【0099】
EEFLの作製は、CCFLと比較して、電極部の形成が異なる。EEFLでは、ガラス管に蛍光体を塗布後、ガラス管の一方を封じ、排気した後、放電媒体である水銀を導入し、ガラス管の他方を封じる。その後、例えば銅テープのようなフレキシブルな電極をガラス管の外部に配置する。
【0100】
このようなEEFLではガラス管自体がコンデンサーの役割を果たすためにバラストコンデンサが不要となり、一つのインバータ9により複数本のランプ5を点灯する多点灯駆動が可能である。このことは、CCFLに比べインバータ数を大きく削減できることから低コスト化が期待できる。
【0101】
しかし、このEEFLではガラス管そのものが誘電体となり、CCFLに比べ発熱量が大きくなる。即ち、電極部では非常に温度が上昇する。従って、CCFLに比べ温度分布を生じ易く、蛍光体の温度特性に起因する輝度・色度分布を生じ易い。従って、本蛍光体を利用することで、高輝度化と輝度・色度分布の均一化を同時に達成できる。
【0102】
液晶素子2などは実施例1と同様である。本実施例によりEEFLの輝度向上と、輝度分布及び色度分布の均一化とを両立することができる。また、このような光源を用いることで、低コスト化と高画質化とを両立した高品位な液晶表示装置を得ることができる。
【0103】
<実施例5>
本実施例は、実施例1に比較して、利用する液晶素子2の構成が異なる。実施例1ではIPSモードの液晶素子を利用したが、本実施例ではVAモードの液晶素子を利用する。
【0104】
従来のVAモードの液晶表示装置では、色度変化の視野角依存性が大きく、画面を正面から見た場合に、画面両側での色度変化が大きな問題であった。しかし、本蛍光体を利用して、CCFLの輝度・色度変化を抑制することで、従来のVAモード液晶表示装置に比較して、画面両側での輝度・色度変化を抑制することが可能となる。特に、中間調表示における色度変化を抑制することができる。
【0105】
<比較例1>
本比較例は、上記実施例と比較するための従来技術であり、緑色蛍光体として従来組成比の(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4(x+y=0.428、 y/x=2.18)を利用する。その他は実施例1と同様である。
【0106】
本蛍光体は輝度の基準であり、室温において、輝度は、波長254nm励起及び真空紫外線励起(VUV励起)で100%である。また、図1(a)及び図1(b)に本蛍光体の温度特性を示す。特に波長254nm紫外線励起において、光源温度分布範囲で輝度変化が大きいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1(a)】緑色蛍光体の波長254nm励起による温度特性を示す図である。
【図1(b)】緑色蛍光体のVUV励起による温度特性を示す図である。
【図2】緑色蛍光体相対輝度の組成比x+y(Ce+Tb量)依存性を示す図である。
【図3】緑色蛍光体相対輝度の組成比y/x(Ce/Tb比)依存性を示す図である。
【図4】緑色蛍光体輝度変化率の組成比x+y(Ce+Tb量)依存性を示す図である。
【図5】緑色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図6】蛍光体の温度特性を概念的に説明するための図である。
【図7】CCFL管軸方向における温度分布を概念的に示す図である。
【図8】液晶表示装置の分解斜視図を示す図である。
【図9】冷陰極管(CCFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図10】熱陰極管(HCFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図11】外部電極管(EEFL)の断面構造の概略を示す図である。
【図12】平面型光源の概略的な断面を示す図である。
【図13】液晶素子の断面構造の概略を示す図である。
【図14】VAモードの液晶素子の概略を説明するための図である。
【図15】冷陰極管(CCFL)の作製フローを示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1…バックライトユニット、
2…液晶素子、
3…筐体(下)、
4…反射板、
5…光源(例えばCCFL)、
6…拡散板、
7…プリズムシート、
8…偏光反射板、
9…インバータ、
10…筐体(上)、
11…ガラス管、
12…蛍光体、
13…電極、
14…放電媒体、
15…密閉容器(15A、15B)、
16…隔壁、
21、31…ガラス基板、
22、32…偏光板、
23、33…配向膜、
24、34…液晶、
25(25A、25B、25C)…カラーフィルタ(赤色、緑色、青色)、
26…スペーサ、
27、37…画素電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色が青色系である青色蛍光体と、緑色系である緑色蛍光体と、赤色系である赤色蛍光体との3色蛍光体を有する光源と、
前記光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とを備える液晶表示装置であって、
前記緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比xとyの値がそれぞれ次式(1)と(2)とを同時に満足することを特徴とする液晶表示装置。
0.500< x+y <0.700 ‥‥(1)
1.20< y/x <2.00 ‥‥(2)
【請求項2】
発光色が青色系である青色蛍光体と、緑色系である緑色蛍光体と、赤色系である赤色蛍光体との3色蛍光体を有する光源と、
前記光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とを備える液晶表示装置であって、
前記緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比xとyの値がそれぞれ次式(3)と(4)とを同時に満足することを特徴とする液晶表示装置。
0.500< x+y <0.650 ‥‥(3)
1.50< y/x <1.70 ‥‥(4)
【請求項3】
前記光源は、前記青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体とを備えた密閉容器と、該密閉容器に封入された放電媒体と、該放電媒体に電圧を印加するために密閉容器に備えられた電極とから構成され、該放電媒体から放射される波長の異なる複数の紫外線により、前記蛍光体を励起して発光することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記放電媒体より放射される波長の異なる複数の紫外線のうち、少なくとも一つは波長200nm未満の真空紫外線を含み、また他の少なくとも一つは波長200nm以上の紫外線を含むことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記放電媒体の主成分は水銀Hgであり、該放電媒体から放射される紫外線のうち、一つは波長185nmの真空紫外線を含み、他の一つは波長254nmの紫外線を含むことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記波長185nmの真空紫外線と、前記波長254nmの紫外線の強度比I185/I254が、密閉容器内で0.20以上であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記密閉容器は、管状のガラス管であり、管の内径が5mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記ガラス管に備えられた電極は、該ガラス管の両端に配置され、かつ該ガラス管の内部に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記ガラス管に備えられた電極は、該ガラス管の両端に配置され、かつ該ガラス管の外部に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記光源は、放電媒体の主成分として水銀Hgを有し、管の内径が5mm以下の冷陰極蛍光管であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記緑色蛍光体は、中位粒径d50が、3.0μmから6.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記光源は、前記青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体とを備えた密閉容器と、該密閉容器に封入された放電媒体と、該放電媒体に電圧を印加するために密閉容器に備えられた電極とから構成され、該放電媒体から放射される波長の異なる複数の紫外線により、前記蛍光体を励起して発光することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記放電媒体より放射される波長の異なる複数の紫外線のうち、少なくとも一つは波長200nm未満の真空紫外線を含み、また他の少なくとも一つは波長200nm以上の紫外線を含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記放電媒体の主成分は水銀Hgであり、該放電媒体から放射される紫外線のうち、一つは波長185nmの真空紫外線を含み、他の一つは波長254nmの紫外線を含むことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記波長185nmの真空紫外線と、前記波長254nmの紫外線の強度比I185/I254が、密閉容器内で0.20以上であることを特徴とする請求項14に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記密閉容器は、管状のガラス管であり、管の内径が5mm以下であることを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記ガラス管に備えられた電極は、該ガラス管の両端に配置され、かつ該ガラス管の内部に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記ガラス管に備えられた電極は、該ガラス管の両端に配置され、かつ該ガラス管の外部に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
前記光源は、放電媒体の主成分として水銀Hgを有し、管の内径が5mm以下の冷陰極蛍光管であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
前記緑色蛍光体は、中位粒径d50が、3.0μmから6.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項21】
前記液晶素子は、対向する一対の透明な基板と、該一対の基板の内側表面上に塗布された配向膜と、該配向膜間に挟持された液晶の層と、該一対の基板の外側に配置された偏光板とから構成され、前記配向膜は垂直配向膜であり、前記液晶は電圧無印加時には基板面にほぼ垂直に配向し、電圧印加時には基板面に対して傾斜することにより光の透過量を調整することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項22】
前記液晶素子は、対向する一対の透明な基板と、該一対の基板の内側表面上に塗布された配向膜と、該配向膜間に挟持された液晶の層と、該一対の基板の外側に配置された偏光板とから構成され、前記配向膜は垂直配向膜であり、前記液晶は電圧無印加時には基板面にほぼ垂直に配向し、電圧印加時には基板面に対して傾斜することにより光の透過量を調整することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項23】
発光色が青色系である青色蛍光体と、緑色系である緑色蛍光体と、赤色系である赤色蛍光体との3色蛍光体を有する光源と、
前記光源からの光の透過量を画素毎に調整し、かつ画素毎に青色、緑色、赤色のいずれかの光を透過するカラーフィルタを有する液晶素子とを備える液晶表示装置であって、
前記緑色蛍光体は、組成式(La1-x-y,Tbx,Cey)PO4で表され、組成比xとyの値がそれぞれ次式(3)と(4)とを同時に満足し、
0.500< x+y <0.650 ‥‥(3)
1.50< y/x <1.70 ‥‥(4)
前記液晶素子は、対向する一対の透明な基板と、該一対の基板の内側表面上に塗布された配向膜と、該配向膜間に挟持された液晶の層と、該一対の基板の外側に配置された偏光板とから構成され、液晶表示モードがIPSモードで駆動することを特徴とする液晶表示装置。

【図1(a)】
image rotate

【図1(b)】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−147937(P2007−147937A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341530(P2005−341530)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】