説明

液晶表示装置

【課題】初期転移電圧を掛けることなしに、画像を表示することができるOCB型の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】反射部と透過部で液晶層の厚みが異なる半透過型の液晶表示装置10において、液晶層50の液晶がOCBモードであり、かつ、初期配向状態でツイスト配向であって画像表示状態ではベンド配向に転移するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過型の液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は、液晶テレビ等においてOCB型の液晶表示装置が用いられてきている(例えば、非特許文献1参照)。このOCB型の液晶表示装置は、広視野角で高速応答である特徴を有している。しかしながら、このOCBモードの液晶は、電圧無印加時にはスプレイ配向であり、電源投入時に初期転移電圧を印加してベンド配向に転移させる必要がある(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】日経フラットパネルディスプレイ戦略編2005 110頁 日経BP社
【非特許文献2】High-Speed Bend Transition Method using ElectricalTwist Field in OCB Mode TFT-LCDs Kenji nakao,Daiichi Suzuki,Tetsuya Kojima,Midori Tsukane,Hirofumi Wakemoto 1416・SID 04 DIGEST
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような従来のOCB型の液晶表示装置における電源投入時には、図8に示すような転移波形からなる初期転移電圧を画素電極と対向電極との間に印加する必要がある。この初期転移電圧は、±25V程度と比較的高い電圧である。一方で、半透過型液晶表示装置の画素反射部における液晶層の厚みは、画素透過部における液晶層の厚みの約半分であり、上記反射領域に金属異物があると対向基板との間でショートが発生し、画素欠陥及び輝点になる。
【0004】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、初期転移電圧を印加することなしに、画像を表示することができるOCB型の半透過型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、前記液晶層の液晶がOCBモードであり、かつ、初期配向状態でツイスト配向であり画像表示状態ではベンド配向に転移することを特徴とする液晶表示装置である。
【0006】
また、本発明は、アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、
前記液晶層の液晶がOCBモードであり、所定角度以上のプレチルト角からなる配向膜によって初期配向状態で前記液晶のベンド配向を保持する
ことを特徴とする液晶表示装置である。
【0007】
また、本発明は、アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、前記液晶層の液晶がOCBモードであり、前記液晶中に液晶ポリマーをネットワーク化させて、初期配向状態で前記液晶のベンド配向を保持したことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、初期転移電圧を印加することなしに自発的にOCBモードの液晶がベンド配向となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のOCB型の液晶表示装置10について図面に基づいて説明する。
【0010】
第1の実施形態のOCB型の半透過型液晶表示装置10について図1〜図5に基づいて説明する。
【0011】
液晶表示装置10の液晶セルは、アレイ基板12と対向基板14とからなる。図1に示すように、アレイ基板12には、画像信号が入力する複数本の信号線16と、これら信号線16と直交するように配された走査線18がガラス基板20上に配線され、信号線16と走査線18の交差部近傍にアモルファスシリコンまたはポリシリコンよりなる薄膜トランジスタ(以下、TFTという)22が形成されている。このTFT22のソース電極は信号線16と接続され、ゲート電極は走査線18と接続され、ドレイン電極は画素電極24と接続されている。
【0012】
各信号線16は、信号線ドライバー回路26に接続され、各走査線18は走査線ドライバー回路28に接続されている。
【0013】
図2に示すように液晶表示装置10は半透過型となっており、各画素29は画素反射部30と画素透過部32の2種類の領域から構成されている。画素反射部30は、画素電極24として、アルミニウム等の金属膜からなる反射電極34によって構成されている。また、画素透過部32の画素電極24は、ITO等の透明電極36から形成されている。そして、画素反射部30における液晶層の厚みAが、画素透過部32における液晶層の厚みBの半分となっている。
【0014】
さらに、アレイ基板12を構成するガラス基板20上には、上記で説明した信号線16、走査線18、TFT22が形成されたアレイ配線層38が形成されている。この配線層38上に画素29(画素電極24)がマトリックス状に形成される。画素反射部30を形成する箇所には、樹脂層40が形成され、その上に反射電極34が形成されている。このようにして液晶層50の厚みを画素反射部30で薄く調整している。一方、画素透過部32が形成される位置には、透明電極36が形成されている。この反射電極34及び透明電極36の上には、配向膜42が形成されている。
【0015】
対向基板14を構成するガラス基板43の下面には、R、G、Bからなるカラーフィルター層44が形成され、このカラーフィルター層44の下面には対向電極層46が形成され、更にその下面には配向膜48が形成されている。そして、このアレイ基板12と対向基板14との間には以下に説明するOCBモードの液晶を挟み、液晶層50が形成されている。画素透過部32における液晶層50の厚みBは4.6μmであり、画素反射部30における液晶層50の厚みは2.3μmである。
【0016】
アレイ基板12を構成するガラス基板20の下面には、位相差板52、λ/4板54、偏光板56が貼り付けられている。一方、対向基板14を構成するガラス基板43の上面にも、位相差板58、λ/4板60、偏光板62が貼り付けられている。
【0017】
本実施形態においては、図3、図4に示すように、液晶層50と位相差板52、58の複合体による総合的なリタデーションが、リタデーション=ほぼ0のときに黒表示、リタデーション=ほぼλ/2のときに白表示になるようにした。但し、画素反射部30では、図3に示すように液晶層50を2回通るため、液晶層50の厚みを画素透過部32におけるそれのほぼ1/2とすることで良好になる。尚、偏光板62とλ/4板60とで円偏光板となり、これは、図3に示すように円偏光と直線偏光の変換を実現するためである。図4に示すように、画素透過部32についても同様である。
【0018】
そして、本実施形態では、初期配向状態においてツイスト配向となるOCBモードの液晶を液晶層50に用いている。これは、初期転移電圧を印加することなく、ベンド配向に転移させるためである。即ち、非特許文献1に示すように、初期配向状態においてツイスト配向となる液晶を用いた場合には、ベンド配向が容易に発生する。そのため、液晶層50の液晶材料にカイラル剤を添加し、図5に示すように、初期配向状態で180°ツイスト配向を実現している。これにより、初期転移電圧を印加することなく、画像表示のために画像信号による電圧を印加することで、ベンド配向に速やかに転移する。したがって、初期転移電圧による画素欠陥や輝点が発生することがない。
【0019】
なお、本実施形態では、表示画面の全面にある全ての画素反射部30,画素透過部32に対してツイスト配向の液晶を用いたが、これに限らず画素反射部30,画素透過部32内に一部でもツイスト配向の液晶が有れば、液晶層50の全面に広がるため、ツイスト配向領域は画素透過部32または画素反射部30の一部でもよい。
【0020】
次に、第2の実施形態のOCB型の液晶表示装置10について図6に基づいて説明する。第1の実施形態と第2の実施形態との相違点は、初期転移電圧を印加することなくベンド配向に転移する構造が異なる点にある。
【0021】
本実施形態では、配向膜42と配向膜48のプレチルト角を30°以上にすることにより、図6に示すように初期転移状態でもベンド配向を保持するようにした。
【0022】
具体的には、側鎖型のポリイミド樹脂の配向膜42,48を用い、初期状態で30°以上のプレチルト角を有せば、自発的にベンド配向になり、初期転移電圧を印加することなくOCB型の液晶表示装置10を実現することができる。
【0023】
次に、第3の実施形態のOCB型の液晶表示装置10について図7に基づいて説明する。本実施形態と第1の実施形態との相違点も、初期転移状態でベンド配向を維持する構造にある。
【0024】
本実施形態ではベンド配向状態を保持するように液晶ポリマーを液晶中にネットワーク化させ、ベンド配向を安定化させるようにした。
【0025】
具体的には、図7に示すように、重合性の液晶モノマー材料を液晶中に溶解させ、電圧を印加してベント配向にする。この状態で紫外線を照射すると液晶モノマー材料が重合し、析出してネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造をベント配向状態で形成するため、電界をオフしてもベント配向が保持できる。
【0026】
このベント配向を維持するために、液晶ポリマーの濃度が5%以上必要であり、また、官能器を持つ液晶モノマーを含むことが効果的である。
【0027】
本実施形態でも、自発的にベント配向となり、初期転移電圧を印加することなくOCB型の液晶表示装置10を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる液晶表示装置の説明図である。
【図2】図1の液晶表示装置の縦断面図である。
【図3】図1の液晶表示装置の画素反射部の説明図である。
【図4】図1の液晶表示装置の画素透過部の説明図である。
【図5】図1の液晶表示装置のツイスト配向からベンド配向に転移する状態の説明図である。
【図6】第2の実施形態にかかる液晶表示装置におけるプレチルト角が30°以上の説明図である。
【図7】第3の実施形態にかかる液晶表示装置における液晶モノマーを重合させる説明図である。
【図8】従来のOCB型液晶表示装置における初期転移電圧の波形である。
【符号の説明】
【0029】
10 液晶表示装置
12 アレイ基板
14 対向基板
30 画素反射部
32 画素透過部
34 反射電極
36 透明電極
42 配向膜
48 配向膜
50 液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、
前記液晶層の液晶がOCBモードであり、かつ、初期配向状態でツイスト配向であり画像表示状態ではベンド配向に転移する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記反射部内または前記透過部内の一部の液晶がツイスト配向である
ことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、
前記液晶層の液晶がOCBモードであり、所定角°以上のプレチルト角からなる配向膜によって初期配向状態で前記液晶のベンド配向を保持する
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記所定角度が30°である
ことを特徴とする請求項3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
アレイ基板上に複数の画素が形成され、これら複数の画素の各々は反射部及び透過部を有し、かつ、前記反射部における液晶層の厚みと前記透過部における液晶層の厚みが異なる液晶セルを有した半透過型の液晶表示装置において、
前記液晶層の液晶がOCBモードであり、前記液晶中に液晶ポリマーをネットワーク化させて、初期配向状態で前記液晶のベンド配向を保持した
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶ポリマーは、
重合性の液晶モノマーを前記液晶中に溶解し、
前記液晶に電圧を印加してベンド配向にし、
前記ベンド配向状態で前記液晶に紫外線を照射して液晶モノマーを重合してネットワーク化する
ことを特徴とする請求項5記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−212560(P2007−212560A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29984(P2006−29984)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】