説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルと、液晶表示パネルを保護する面板との接着面に気泡が発生することを防止する。
【解決手段】液晶表示パネルの上偏光板14に接着材31を介して面板30が設置されている。面板30の周囲にはデザイン性を向上するために額縁50が形成されている。額縁50は黒色インクを印刷して形成するが、黒色インク内に存在するSi量を0.7%以下、0.01%以上とすることによって面板30と接着材31との接着不良による気泡の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、特に携帯電話等に使用される小型の表示装置の強度と視認性の向上についての技術に関する
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、画面は一定のサイズを保ったまま、セットの外形寸法を小さくしたいという要求と同時に液晶表示パネルを薄くしたいという要求が強い。液晶表示パネルを薄くするには、液晶表示パネルを製作したあと、液晶表示パネルの外側を研磨して薄くしている。
液晶表示パネルを構成する画素電極、TFT(Thin Film Transistor)等が形成されているTFT基板、カラーフィルタが形成されている対向基板のガラス基板は例えば、0.5mmあるいは0.7mmというように規格化されている。これらの規格化されたガラス基板を市場から入手するのは困難である。また、非常に薄いガラス基板は製造工程で機械的強度、撓み等で問題を生じ、製造歩留まりを低下させる。その結果、規格化されたガラス基板を用いて液晶表示パネルを形成後、液晶表示パネルの外面を研磨して薄くしている。
【0003】
液晶表示パネルを薄くすると機械的強度が問題となる。液晶表示パネルの表示面に機械的圧力が加わると液晶表示パネルが破壊する危険がある。これを防止するために図8に示すように、液晶表示パネルを携帯電話等のセットに組み込む際、液晶表示パネルの画面側にフロントウインドウ(以後面板という)を取り付ける。
【0004】
面板に外力が加わった場合に液晶表示パネルに力がおよばないようにするために、面板は液晶表示パネルと離して設置される。しかし、図8のような構成では後に述べるように、表示画質を劣化させるといる問題を生ずる。図8のような構造による問題点を対策する技術として、例えば、「特許文献1」がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−174417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すような従来技術の場合、像が2重になって見えるという問題を生ずる。図8は反射型液晶表示パネルを例にとって説明している図である。図8において、液晶表示パネルは画素電極やTFT(Thin Film Transistor)等が形成されたTFT基板11とカラーフィルタ等が形成された対向基板12とから形成されている。図8において、外光Lが入射し、面板30を通過して液晶表示パネルで反射し、再び面板30を通過して人間の目に入る。ここで、外光Lは面板30で屈折するが、図8においては無視している。
【0007】
液晶表示パネルの画面P1で反射した光の一部は面板30の下面Q1で反射し、液晶表示パネルの画面P2に入射し、反射する。このP2で反射した光を人間が視認すると像が2重に見える現象を生ずる。図10は反射型の液晶表示パネルを例にとって説明したものであるが、透過型の場合も同様である。すなわち、透過型において、液晶表示パネルのP1での反射光と同じ角度で光が液晶表示パネルを透過してくると、面板30の下面Q1で反射し、反射型の場合と同様の経路をたどる。このように、画像が2重に見える現象は画質を劣化させる。
【0008】
これを対策したものとして、例えば「特許文献1」に記載の技術は、面板を液晶表示パネルとの間に粘着性の弾性体を設置している。粘着性の弾性体が外力から液晶表示パネルを保護し、かつ、粘着性弾性体の屈折率を面板の屈折率に近い値に設定することによって、面板界面での反射を抑えようとするものである。しかし、「特許文献1」の技術では、面板と弾性粘着材との間に気泡等の存在無く、均一に面板を貼るのは量産的には非常に難しい技術である。また、弾性粘着材の屈折率を面板の屈折率に近くする材料の選択が問題であるのに加え、弾性粘着材は相当の厚みを必要とするために、像が2重に見えるという問題は完全には解決することが出来ない。
【0009】
液晶表示パネルに設置する面板には、デザイン上の要請から、額縁状の遮光膜を形成する場合が多い。額縁状の遮光膜は黒色インクを印刷によって塗付し、面板をベーキングして乾燥させて固化する。黒色インクの印刷時にピンホールの発生を防止したり、レベリング効果によって印刷面を平坦にするために、添加剤を用いる。面板を接着材によって液晶表示パネルに接着する場合は、この添加剤が接着力に対して悪影響を及ぼす場合がある。本発明の課題は、面板を液晶表示パネルに接着する場合に、接着力に起因する気泡の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題点を克服するものであり、具体的な構成は下記のとおりである。
【0011】
(1)画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成された対向基板とを備えた液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記対向基板には上偏光板が接着され、前記上偏光板にはガラスで形成された面板が接着され、前記上偏光板と前記面板とは紫外線硬化樹脂で接着されており、前記面板の内側には額縁状に遮光膜が形成されており、前記遮光膜は、黒色インクを印刷することによって形成されており、前記黒色インクは、Siを0.7%以下、0.01%以上含むことを特徴とする液晶表示装置。
【0012】
(2)前記遮光膜はSiを0.5%以下、0.01%以上含むことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0013】
(3)前記黒色インクはカーボンブラックを含むことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0014】
(4)前記額縁は前記面板に印刷された後、70℃以下で30分以下の条件にて乾燥されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0015】
(5)前記額縁は前記面板に印刷された後、60℃以下で60分以下の条件にて乾燥されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0016】
(6)前記面板はアクリル樹脂によって形成されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0017】
(7)画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成された対向基板とを備えた液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記対向基板には上偏光板が接着され、前記上偏光板にはガラスで形成された面板が接着され、前記上偏光板と前記面板とは紫外線硬化樹脂で接着されており、前記面板の内側には額縁状に遮光膜が形成されており、前記遮光膜は、黒色インクを印刷することによって形成されており、前記黒色インクは、炭化水素系添加剤が添加されていることを特徴とする液晶表示装置。
【0018】
(8)前記黒色インクには、炭化水素系添加剤が1.2%以下、0.1%以上含まれていることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(9)前記黒色インクのSi含有量は0.01%よりも少ないことを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0020】
(10)前記黒色インクはカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【0021】
(11)前記面板はアクリル樹脂によって形成されていることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、面板の周辺に遮光膜を形成した液晶表示装置において、デザイン性を向上するために、面板周辺に、黒色インクを印刷することによって遮光膜を形成するが、黒色インクに含まれるSi量を0.7%以下、0,01%以上とすることによって、面板を液晶表示パネルに接着した際の、面板と液晶表示パネルとの間に気泡が発生することを防止することが出来る。同時に、印刷時のピンホールの発生を防止することが出来、さらに、レベリング効果によって印刷面を平坦にすることが出来る。
【0023】
また、本発明の他の側面によれば、面板周辺に印刷する黒色インクの添加剤として炭化水素系の添加剤を用いるので、面板と液晶表示パネルを接着した際の、面板と液晶表示パネルとの間に気泡が発生することを防止することが出来る。同時に、印刷時のピンホールの発生を防止することが出来、さらに、レベリング効果によって印刷面を平坦にすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の第1の実施例を示す分解斜視図である。図2は図1のA―A方向の分解断面図である。図1において、TFT基板11と対向基板12とで液晶表示パネルを構成している。TFT基板11にはマトリクス状に画素電極が形成され、各画素電極に信号をスイッチングするためのTFT(Thin Film Transistor)が形成されている。TFT基板11と対向してカラーフィルタが形成された対向基板12が設置される。
【0026】
TFT基板11および対向基板12は各々製造するときはガラス基板の厚さは0.5mmである。液晶を封止して液晶表示パネルが完成した後、外側を研磨し、液晶表示パネル全体の厚さを薄くしている。本実施例では研磨後の液晶表示パネルの厚さは約0.6mmである。すなわち、各ガラス基板を0.2mmずつ研磨して薄くしている。
【0027】
TFT基板11は対向基板12よりも大きく形成されており、TFT基板11が一枚となった部分に駆動IC13およびフレキシブル配線基板15が取り付けられる。液晶表示パネルは樹脂モールド16に収容され、機械的に保護される。液晶表示パネルはTFT基板11と対向基板12が2枚重ねとなった部分は機械的には強いが、TFT基板11が1枚となっている部分は機械的に弱いために、この部分には衝撃が加わらないようなモールド構造となっている。
【0028】
モールド16の下側にはバックライトが設置される。図1においては、バックライトは導光板17のみ記載している。すなわち、液晶表示パネルと導光板17との間には種々の光学シートが設置されるが、図1では省略している。フレキシブル配線基板15はモールド16の裏側に回りこみ、バックライトの下側に設置される。フレキシブル配線基板15にはバックライトの光源となるLED18(Light Emitting Diode)が取り付けられており、LED18は導光板17の側面に設置される。フレキシブル配線基板15にはLED18およびLED18電源のみでなく、液晶表示パネルを駆動するための電源、走査線、データ信号線等のための配線が設けられている。
【0029】
図1において、液晶表示パネルの上面には上偏光板14が設置されている。上偏光板14の上には面板30が設置される。この面板30はアクリル樹脂で形成されており、厚さは1.8mmである。面板30は厚さが液晶表示パネルに比べて厚く、かつアクリル樹脂はクラックし難いので、液晶表示パネルを保護するに十分な機械的強さを持っている。面板30はアクリル系接着材31によって液晶表示パネル、具体的には上偏光板14に接着される。
【0030】
面板30に使用される他の材料としては、ポリカーボネイト、ガラス等がある。ガラスを使用する場合は、強化ガラスを使用することが望ましい。また、ガラスはクラック防止のために、面取り等を適切に行うことが必要である。
【0031】
図1に示すように、面板30の周囲には黒色の額縁50が形成されている。表示装置のデザイン性を向上するためである。額縁50は、黒色の遮光物質を印刷によって塗布する。この額縁50を形成する遮光物質から、例えば、Si等が染み出すと、このSiによって、接着材31と面板30の接着性に影響を及ぼし、気泡を発生させる場合がある。本発明の重要な構成は、額縁50からのSiの染み出しを抑えて、面板30と液晶表示パネルの間の気泡の発生を防止することである。
【0032】
図2は図1のA−A方向の断面図であるが分解断面図となっている。実際には、液晶表示パネルおよびバックライトはモールド16内に収容される。面板30は液晶表示パネルに接着されることになる。図2において、TFT基板11と対向基板12との間には数ミクロンの間隔が存在しており、この間に液晶100が挟持されている。TFT基板11と対向基板12の周辺には封止材19が設置され、液晶を封止している。
【0033】
TFT基板11には画素電極、TFTのほか、走査線、データ信号線等が配設され、これらの配線は封止材19を貫通して外部に延在し、駆動IC13あるいはフレキシブル配線基板15と接続する。フレキシブル配線基板15はバックライトの背後にまで延在し、フレキシブル配線基板15に取り付けられたLED18が導光板17の側面に設置され、バックライトの光源となる。LED18は紙面垂直方向に複数設置される。
【0034】
図2において、導光板17は側面に設置されたLED18からの光を液晶表示パネル側に向ける役割を有する。反射シート25は導光板17から下方へ向かう光を液晶表示パネル側に向ける。導光板17の上に下拡散シート21が設置される。LED18は導光板17の側面に複数設置されるが、間隔を持って設置されるために、導光板17から上に向かう光は不均一になる。すなわち、LED18が設置された近辺がより明るくなる。下拡散シート21は導光板17から上方向に向かう光を均一にする役割を有する。
【0035】
下拡散シート21の上には下プリズムシート22が設置される。下プリズムシート22には一定ピッチで例えば、画面横方向に延在するプリズムが50μm程度の間隔で多数設置されており、導光板17を出射した光のうち、画面の縦方向に広がろうとする光を液晶表示パネルの画面鉛直方向に集束する。下プリズムシート22の上には上プリズムシート23が設置される。上プリズムシート23には一定ピッチで下プリズムシート22とは直角方向、例えば、画面縦方向に延在するプリズムが50μm程度の間隔で多数形成されている。これによって、導光板17を出射した光のうち、画面横方向に広がろうとする光を液晶表示パネルの面と鉛直方向に集束する。このように、下プリズムシート22と上プリズムシート23を用いることによって画面の縦、横方向に広がろうとする光を画面の法線方向に集束することが出来る。すなわち、下プリズムシート22および上プリズムシート23を使用することによって正面輝度を上げることが出来る。
【0036】
上プリズムシート23の上には上拡散シート24が設置されている。プリズムシートには一定方向に延在するプリズムが例えば、50μmピッチで形成されている。すなわち、50μmのピッチによって明暗の縞が形成されることになる。一方液晶表示パネルには、一定ピッチで走査線が画面横方向に、あるいはデータ信号線が画面縦方向に形成されている。したがって、走査線と下プリズムシート22との間、あるいは、データ信号線と上プリズムシート23との間で干渉を起こし、モアレが発生する。上拡散シート24は拡散作用によってこのモアレを軽減する役割を有する。
【0037】
上拡散シート24を出た光は液晶表示パネルに接着された下偏光板20に入射し、光は偏光される。偏光光は液晶表示パネル内の画素毎に液晶によって、透過率をコントロールされ、画像が形成される。液晶表示パネルを出た光は上偏光板14によって再び偏光され、人間の目に視認される。上偏光板14の上には面板30が設置される。本発明における面板30はアクリル樹脂で形成されている。面板30は接着材31によって上偏光板14に接着させられる。
【0038】
図3は面板30を上偏光板14に接着した後の状態である。図3は液晶表示パネルと面板30のみを示している。図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。図3(a)において、面板30の周囲には、黒色の額縁50が形成されている。額縁50の内側が表示領域40である。額縁50を設けるのは、デザイン性を向上するためである。図3(a)において、左側は、TFT基板11の端子部111である。端子部111には、液晶表示パネルに電源や信号を供給するための端子と液晶表示パネルを駆動するための駆動IC等が設置されるが、図3では省略されている。
【0039】
図3(b)において、TFT基板11の下側には下偏光板20が、対向基板12の上側には上偏光板14が接着されている。上偏光板14の上には、接着材31を介して面板30が取り付けられている。上偏光板14あるいは下偏光板20の板厚は0.13mm、面板30の厚さは1.8mmである。TFT基板11と対向基板12を合わせた液晶表示パネル全体の厚さが0.6mmであるのに対し、面板30はこれよりもかなり厚くなっている。さらに、アクリル樹脂はガラスに比べてクラックしにくいために、液晶表示パネルの強度に比べてはるかに強くなっており、機械的保護効果は十分に上げることが出来る。
【0040】
本実施例においては、面板30の大きさは対向基板12と同程度となっている。面板30の大きさはこれに限らず、面板30と液晶表示パネルの接着のし易さ等を考慮して、対向基板12よりも大きく、あるいは、小さくしても良い。
【0041】
面板30の周辺に形成された額縁50は、印刷によって面板30にあらかじめ塗布され、乾燥して固化した後、面板30と液晶表示パネルを接着材31によって接着する。面板30の貼り付けに用いる接着材31は当初は液体であるUV硬化樹脂を用いる。接着材31を当初は液体であるUV硬化樹脂を用いることによって、面板30の液晶表示パネルへの均一な貼り付けを可能としている。すなわち、接着材31を塗布した後、減圧雰囲気内において、液晶表示パネルと面板30を接着する。減圧雰囲気中において、液晶表示パネルと面板30を接着することによって気泡32の発生を防止することが出来る。
【0042】
貼り合わせ後、この当初液状の接着材31に、紫外線(UV)を照射することによって接着材31を硬化させ、面板30を液晶表示パネルに固定する。このようなプロセスによって面板30を液晶表示パネルに均一に接着することが可能になる。当初液体状の接着材31としては、例えば、アクリルオリゴマーを27%から30%含み、この他にUV反応性モノマー、光重合のための添加剤等を含んだアクリル系の樹脂を使用することが出来る。接着材31が硬化した後の厚さは50ミクロン程度である。
【0043】
額縁50を形成する遮光膜は面板30の内側に黒色インクを印刷によって塗布することによって形成されている。黒色インクは、例えば、次のような成分によって構成されている。すなわち、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合樹脂26%〜38%、顔料(カーボンブラック)3〜7%、その他の溶剤等である。
【0044】
黒色インクを面板30に印刷した際、遮光膜にピンホールが形成される場合がある。また、印刷によって塗布した後、印刷面には多少の凹凸が発生するが、この凹凸が印刷面の流動によって平坦化する。この現象をレベリング効果という。印刷面へのピンホールの発生の防止および、印刷面のレベリング効果の向上には、黒色インクにSiを添加することが効果的である。
【0045】
黒色インクを面板30に塗布した後、面板30を乾燥して黒色インクを面板30に固定する。Siの添加量が多い場合は、Siが遮光膜外、例えば、表示領域40周辺に拡散する。Siが面板30と接着材31との間に多く存在すると、面板30と接着材31の接着力が弱くなり、気泡32が発生する。
【0046】
気泡32が発生する様子を図4に示す。図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A断面図である。図4(a)において、表示領域40内に形成されている点線は、額縁50を形成する遮光膜から染み出てくるSiが存在する可能性のある領域である。この領域は、額縁50の内側からdの範囲であり、dは約2mmである。この領域がSi拡散領域41である。気泡32は、Si拡散領域41内において多発する。
【0047】
図4(b)は図4のA−A断面図である。気泡32が記載されている以外は、図3(b)と同様である。図4(b)において、気泡32は、額縁50の内側で、面板30と接着材31の間に発生していることを示している。気泡32は、額縁50の下側にも発生するが、額縁50の下側の気泡32は黒色である額縁50によって覆われているために視認されず、不良の原因とはならない。したがって、表示領域40周辺の気泡32を無くすことが重要である。
【0048】
気泡32が存在する部分の元素を同定すると、Siが多く検出される。Siは接着材31と面板30の接着力を悪化させ、気泡32を生じさせる。しかし、額縁50を形成するための黒色インクには、ピンホールの減少とレベリング効果を向上させるために、Siを添加することは必要である。
【0049】
Siが表示領域40に存在する原因は、黒色インクを印刷し、乾燥して固化する際に、Siが表示領域40に拡散するためである。また、気泡32は、Siの存在量によって発生する確率が異なる。すなわち、Siが一定量以下であれば、気泡32の発生は抑えることが出来る。表示領域40におけるSiの存在量は、黒色インクに添加されるSi量によって制御することが出来る。
【0050】
しがって、黒色インク内のSi添加量は、印刷時のピンホール発生と、レベリング効果、および、面板30を液晶表示パネルに接着した後の気泡32の発生率を勘案して決定する。実験によれば、先に述べた黒色インクを使用した場合は、黒色インク中に含まれるSi量を、額縁50を構成する遮光膜の成分の0.7%以下、0.01%以上とすることによってピンホールの発生の防止とレベリング効果を維持しつつ、気泡32の発生を抑えることが出来る。すなわち、Siをこのような範囲に抑えることによって、ピンホールの発生による不良、およびレベリング効果に関連する不良は0.1%以下に抑えることが出来る。また、気泡32の発生は、1%以下に抑えることが出来る。
【0051】
また、Si量を、額縁50を構成する遮光膜の成分の0.5%以下とすることによって、気泡32の発生はさらに抑えることが出来、気泡32による不良の発生率は0.5%以下とすることが出来る。以上述べた気泡32の発生は、黒色インクを面板30に塗布した後の乾燥条件によっても変化する。すなわち、乾燥温度が高いほど、また、乾燥時間が長いほど、Siが額縁50外に拡散する機会が多くなるからである。上記の結果は、黒色インク塗布後に、面板30を70℃で60分乾燥した場合に得られた値である。したがって、乾燥温度を下げるか、乾燥時間を短くすることによって気泡32の発生はさらに改善することが出来る。
【0052】
図5は図3に示す液晶表示パネルと面板30を組み合わせたハイブリッド液晶表示パネルを形成する工程を示す模式図である。図5において、(a)および(b)は面板30の工程であり、(c)は液晶表示パネルであり、(d)は液晶表示パネルと面板30を張り合わせた状態である。図5に示すように、面板30は、マザー面板130に複数形成さる。また、液晶表示パネルも複数のTFT基板11が形成されたマザーTFT基板110および複数の対向基板12が形成されたマザー対向基板130を組み合わせたものである。図5は、マザー基板から、面板30あるいは、液晶表示パネルが4個形成される例である。
【0053】
図5(a)において、マザー面板130に額縁50のための黒色インクが印刷によって形成される。この印刷された黒色インクにピンホールの発生が生じないように、あるいは、レベリング効果によって印刷面が平坦になるように、印刷条件および黒色インクの材料を決める。印刷後、特定条件によってマザー面板130を乾燥させ、黒色インクを固化する。
【0054】
その後、図5(b)に示すように、面板30の表示領域40、および額縁50にUV硬化樹脂を印刷によって塗布する。UV硬化樹脂は、印刷時は液体である。UV硬化樹脂の材料は先に説明したとおりである。
【0055】
一方、図5(c)に示すように、液晶表示パネルは面板30とは別途形成される。すなわち、4個分の液晶表示パネルのTFT基板11をマザーTFT基板110に形成する。また、4個分の液晶表示パネルの対向基板12をマザー対向基板130に形成しておく。図5(c)において、点線で示す部分はTFT基板11と対向基板12とをシールするためのシール部60である。シール部60の内側に液晶が封入される。液晶の封入は滴下方式でもよいし、吸入方式でも良い。このようにして、4個の液晶表示パネルがマザー基板に形成される。
【0056】
図5(b)のように形成したマザー面板130を反転し、図5(c)で形成したマザー液晶表示パネルのマザー対向基板130に接着する。この接着は、マザー面板130に形成されたUV接着材31によって行われる。この接着の工程は、接着部分に空気を巻き込まないようにするために、減圧雰囲気中において行われる。その後、UV接着材31の一部分に対してUVを照射して仮固定し、気泡32等の検査を行う。
【0057】
図6は図3に示す液晶表示パネルと面板30を組み合わせたハイブリッド液晶表示パネルを形成する工程を示すプロセスフローである。以後、液晶表示パネルと面板30を組み合わせたものをハイブリッド液晶表示パネルという。このフローは、図5で示したように、マザー液晶表示パネルあるいはマザー面板130に対して行われる。そして、図6に示す工程が終了したあと、マザー基板から、個々のハイブリッド液晶表示パネルを分離する。以後、図6の説明において、面板30あるいは、液晶表示パネルという場合は、マザー面板130あるいは、マザー液晶表示パネルを言う場合もある。
【0058】
図6において、中央のフローは面板30のプロセスフローである。図6において、DUVは(Deep UV)の意味であり、深紫外線を面板30に照射する工程である。深紫外線を面板30に照射することによって面板30に付着しているゴミ等を除去し易くする。DUV工程によって面板30を清浄化したあと、先ず、面板30の額縁50となる黒色インクを、印刷によって塗布する。この塗布工程では、ピンホールの発生が無いように、あるいは、レベリング効果が生じて印刷面が平坦になるように、黒色インク材料あるいは、印刷条件を決める。
【0059】
黒色インクによって額縁50が印刷された面板30を乾燥のためにベーキングする。このベーキングの時に、黒色インクに添加されているSiが、印刷された額縁50から析出して額縁50の内側の表示領域40に拡散する。このSiの拡散量が多いと、接着材31と面板30との接着に悪影響を及ぼす。
【0060】
面板30の乾燥条件によって、面板30のSi拡散領域41に存在するSiの量を比較したものが、図7である。図7において、横軸は、面板30に黒色インクを印刷した後に面板30を乾燥する乾燥温度である。縦軸は、図4に示すSi拡散領域41において、質量分析によってカウントされるSiのカウント数である。図7における評価は、乾燥時間が30分と60分の場合について行った。
【0061】
図7において、Si拡散領域41におけるSiのカウント数は乾燥温度が高い程多くなっている。また、同じ乾燥温度であれば、乾燥時間が長い程Siのカウント数が多くなっている。すなわち、印刷された黒色インクが乾燥して固化する際、添加されているSiが析出、分離するが、乾燥温度が高いほど、あるいは、乾燥時間が長いほど、析出、分離する量が多くなる。また、析出、分離したSiが面板30上を移動する速度、あるいは移動する量も乾燥温度が高いほど、また、乾燥時間が長いほど大きくなる。
【0062】
黒色インクにSiを添加する目的は、印刷時のピンホールの防止とレベリング効果を確保するためである。印刷時のピンホールとレベリングの関係から、黒色インクに添加されるSiの量を一定量確保しなければならない場合、印刷した後、乾燥時間を短く、あるいは、乾燥温度を低く抑える必要がある。図7は、乾燥、固化後の額縁50を形成する遮光膜のSi量が0.7%の場合の、乾燥温度、および、乾燥時間と、図4に示すSi拡散領域41におけるSiカウント量の関係を示すグラフである。
【0063】
図7において、乾燥温度として、70℃とする場合は、乾燥時間が30分であれば、Siカウント量は、150Kamu.binである。この場合の、対応する気泡32発生は1%以下に抑えることが出来た。一方、乾燥温度として60℃とする場合は、乾燥時間を60分としても、Siカウント量は、100Kamu.binである。この場合の、対応する気泡32発生率はやはり、1%以下に抑えることが出来た。また、乾燥温度60℃で30分であれば、気泡32発生の危険はより小さくすることが出来る。一方、Si量を小さくしても、ピンホールの発生を抑え、あるいは、レベリング効果を確保することが出来れば、面板30の乾燥温度を高く、また、乾燥時間を長くすることが出来る。
【0064】
図6に戻り、面板30に黒色インクを印刷し、乾燥させて額縁50を形成した後、面板30と液晶表示パネルを接着するための接着材31を印刷によって塗布する。この接着材31は、UV硬化樹脂で形成されている。この接着材31は、面板30の表示領域40、および額縁50を覆って印刷される。
【0065】
液晶表示パネルと面板30の貼り合わせは減圧雰囲気中において、液晶表示パネルと面板30を押し付けながら接着する。減圧雰囲気中において接着するので、面板30と液晶表示パネルの間に空気を巻き込むことが無く、これに起因する気泡32を防止することが出来る。しかし、面板30にSiが存在している場合、面板30と接着材31との接着が妨げられ、この部分に空気が浸入して気泡32を発生する場合がある。したがって、以上に述べたような、手段によって、Siが面板30に存在するようなポテンシャルを除去する必要がある。
【0066】
面板30と液晶表示パネルを接着したあと、接着材31の一部、具体的には面板30のコーナー部のみにUVを照射して面板30と液晶表示パネルを仮固定する。仮固定した状態で、面板30と液晶表示パネルが接着したハイブリッド液晶表示パネルの検査を行う。検査項目は、表示領域40の欠陥等である。この検査時に表示領域40における気泡32の有無も検査される。
【0067】
この検査において合格であれば、液晶表示パネル全体に対してUVを照射し、面板30と液晶表示パネルを完全に接着する。UVは面板30側から照射される。この場合、面板30周辺においては、額縁50が形成されており、額縁50の下にはUVが通過しないので、額縁50の下においては、接着材31が固化しない。額縁50の下の接着材31も固化させるために、UVを全面照射したあと、ハイブリッド液晶表示パネルを加熱することによって、面板30の額縁50の下の接着材31も固化して、信頼性を向上させる。
【0068】
図6において、検査工程で不良が発生した場合、そのハイブリッド液晶表示パネルは再生工程に回す。再生工程において、面板30と液晶表示パネルが分離される。検査前において、UVを接着材31の一部にのみ照射して面板30と液晶表示パネルを仮固定したのは、再生工程において、液晶表示パネルと面板30の分離を容易にするためである。面板30と液晶表示パネルは分離された後、各々、洗浄されて再生されることになる。
【0069】
以上のように、本実施例によれば、額縁50を構成する遮光膜中のSi量を特定範囲に規定することによって、面板30と液晶表示パネルを接着したときの、面板30と接着材31との間の接着力の低下による気泡32の発生を防止することが出来る。また、黒色インクを印刷したときのピンホール発生の防止、また、印刷時のレベリング効果を確保し、印刷面を平坦にすることが出来る。
【実施例2】
【0070】
実施例1における面板30の額縁50は、Siが添加された黒色インクを印刷することによって形成されている。Siは黒色インクを印刷する際に、ピンホールの発生を防止することと、印刷面をレベリングによって平坦化する目的から使用される。一方、Siを用いることによって、面板30の表示領域40周辺において接着材31の接着力が不安定になって、気泡32発生の原因となる。
【0071】
本実施例においては、添加剤として、Siではなく、炭化水素系の添加剤を用いることによって黒色インクを面板30に印刷する際に、ピンホールの発生防止と、レベリング効果を得るものである。本実施例に使用される黒色インクの材料は、実施例1で説明したものと同様である。すなわち、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とウレタン樹脂の混合樹脂26%〜38%、顔料(カーボンブラック)3〜7%、その他の溶剤等である。このような黒色インクに対して炭化水素系に添加剤を0.1%〜1.2%程度添加することによって、黒色インクを印刷した際のピンホールを防止することが出来、また、印刷面のレベリング効果を得ることが出来る。
【0072】
以上のような黒色インクを面板30に印刷によって塗付し、面板30を乾燥して額縁50を形成した後、接着材31を印刷によって実施例1と同様にして形成した。その後、面板30と液晶表示パネルを接着して、ハイブリッド液晶表示パネルを形成した。本実施例においては、黒色インク内のSiの量は0.01%よりも小さく、Siが実質的に存在しないので、面板30と接着材31の接着の問題は生じなかった。すなわち、図4に示す気泡32が多発する領域においては、同様な気泡32は観測されなかった。
【0073】
このように、本実施例による黒色インクを用いることによって、黒色インクの印刷において、接着材31と面板30の接着不良による気泡32を実質的に無くすことが出来る。また、黒色インクを印刷した際のピンホールの発生を防止することが出来、かつ、適当なレベリング効果を確保して印刷面を平坦化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が実施される液晶表示装置の分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】液晶表示パネルに面板が取り付けられた図である。
【図4】面板と液晶表示パネルの間に気泡が発生した図である。
【図5】本発明に関連する製造工程の要部を示す模式図である。
【図6】本発明に関連する製造工程のフローチャートである。
【図7】面板の乾燥条件と面板におけるSiの量の関係をしめすグラフである。
【図8】従来技術による面板と液晶表示パネルの関係図である。
【符号の説明】
【0075】
11…TFT基板、 12…対向基板、 13…駆動IC、 14…上偏光板、 15…フレキシブル配線基板、 16…モールド、 17…導光板、 18…LED、 19…封止材、 20…下偏光板、 21…下拡散シート、 22…下プリズムシート、 23…上プリズムシート、 24…上拡散シート、 25…反射シート、 30…面板、 31…接着材、 32…気泡、 40…表示領域、 41…Si拡散領域、 50…額縁、 60…シール部、 100…液晶、 110…マザーTFT基板、 111…端子部、 120…マザー対向基板、 130…マザー面板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成された対向基板とを備えた液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記対向基板には上偏光板が接着され、前記上偏光板にはガラスで形成された面板が接着され、
前記上偏光板と前記面板とは紫外線硬化樹脂で接着されており、
前記面板の内側には額縁状に遮光膜が形成されており、前記遮光膜は、黒色インクを印刷することによって形成されており、前記黒色インクは、Siを0.7%以下、0.01%以上含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記遮光膜はSiを0.5%以下、0.01%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記黒色インクはカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記額縁は前記面板に印刷された後、70℃以下で30分以下の条件にて乾燥されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記額縁は前記面板に印刷された後、60℃以下で60分以下の条件にて乾燥されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記面板はアクリル樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成された対向基板とを備えた液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記対向基板には上偏光板が接着され、前記上偏光板にはガラスで形成された面板が接着され、
前記上偏光板と前記面板とは紫外線硬化樹脂で接着されており、
前記面板の内側には額縁状に遮光膜が形成されており、前記遮光膜は、黒色インクを印刷することによって形成されており、前記黒色インクは、炭化水素系添加剤が添加されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記黒色インクには、炭化水素系添加剤が1.2%以下、0.1%以上含まれていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記黒色インクのSi含有量は0.01%よりも少ないことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記黒色インクはカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記面板はアクリル樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−175531(P2009−175531A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15181(P2008−15181)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】