説明

液晶表示装置

【課題】 キー領域等の表示を光の減衰や反射がなく明瞭に行えるようにし、且つスイッチが押圧されたとき、そのスイッチの情況を表示色を種々に変化させて示すことを可能にする。
【解決手段】
可撓性を有する2枚の基板間に液晶を挟持した液晶表示パネル11と、複数色の光を出射して液晶表示パネル11を照明可能な照明装置16の導光シート12と、押圧を感知するスイッチシート13とをこの順に積層し、液晶表示パネル11の前面側からスイッチシート13を局部的に押圧可能に構成する。そして、照明装置16に複数色の光のうち所定の色の光だけを用いる照明期間を各色毎に順次繰り返させ、その各色毎の照明期間と同期して液晶表示パネル11をFSC駆動する回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性を有する液晶表示パネルと押圧を感知するスイッチシートとが積層された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、表示体上に表示されたスイッチ(操作ボタン)領域に接触や押圧されるタッチ入力によって、それに応じた様々な機能やサービスを提供する装置が広く知られている。例えば、カラー液晶表示パネルの上に、接触位置を透明電極の抵抗値から特定する抵抗検知型のタッチパネルを積層し、操作方法や動作情況の説明とともに様々なタッチ入力用スイッチを表示する装置がある。
【0003】
一方、抵抗検知型のタッチパネルはある程度の押圧が必要となるため、表示体がこの圧力を嫌う場合には光学方式のタッチパネルが使われることがある。
例えば特許文献1には、フィールドシーケンシャルカラー駆動でカラー表示を行う液晶表示パネル上に、光学方式のタッチパネルを備えた装置が開示されている。この光学方式のタッチパネルは、導光板と、導光板の側面に概ね垂直に光を入射させる光源と、この側面に対向する側面に配置された受光素子アレイからなる。
【0004】
このタッチパネルでは、先端の屈折率が導光板の屈折率よりも大きいペンが導光板表面に接触されると、全反射を繰り返しながら受光素子に向かって導光板内を進行していた光が接触点においてペン先に吸収される。これにより特定の受光素子では到達する光量が減衰するため、その情報からペン先の位置情報が得られる。特許文献1では、FSC駆動方式の液晶表示パネルと組み合わせたことによって、ペン先の接触するべき位置を精密に表示できる旨が記載されている。
【0005】
ところで、操作情況に応じて表示されているスイッチの色を変化させるという使い方は、前述のようなカラー液晶表示パネルとタッチパネルの組合せで実現できる。しかし、デジタルカメラや携帯電話機など携帯型の電子機器には、屋外での使用や薄型化など様々な制約が加わるので工夫が必要となる。
【0006】
例えば特許文献2に開示された装置のスイッチ部は、液晶表示パネルと透光性LED及びタッチパネルの積層体となっている。平面的に見れば、液晶パネルに表示されたスイッチ領域に、発光色の異なる複数の透光性LEDが存在している。スイッチ領域を押すと、タッチパネルが押圧位置を検知し、透光性LEDが点滅したり発光色を変化させたりして、様々な情報を操作者に知らせる。この装置は、透明LEDの明るい発光でスイッチの情況を示せるので太陽光下でも視認性が良いという特徴がある。
【0007】
これまで示した例は、いずれも液晶表示パネルの上に透明なタッチパネルを積層している。この構造では、タッチパネル透過時の光の減衰やタッチパネル表面の反射が避けられない。この対策として、プラスチックなど可撓性のある基板からなる液晶表示素子の下にスイッチシートを設けたものもある。この場合、スイッチシートは不透明でよくなる。
【0008】
例えば特許文献3には、スイッチアレイと、エレクトロルミネッセンスを使った照明シートと、可撓性液晶表示パネルとを積層した装置が開示されている。
この装置は、可撓性液晶表示パネルに示されたスイッチ領域を指で押すと、その部分の可撓性液晶表示パネルと照明シートが変形し、最下層のスイッチアレイのスイッチを押し、そのスイッチが導通する。なおこの装置ではスイッチ領域の表示内容はプログラマブルとなっており、装置の動作情況・機能に応じて表示内容が変わるこことが特徴となっていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−259347号公報
【特許文献2】特開2006−244292号公報
【特許文献3】特開昭63−132323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に開示されている装置は、照明シートとしてエレクトロルミネッセンスを使っているので単色表示しかできなかった。このためスイッチの機能や情況に応じて色も変えたいという要求を満足させるものではなかった。
【0011】
この発明は、上述したような従来のタッチ入力用装置が有する種々の問題に鑑みてなされたものであり、液晶表示パネルによるキー領域等の表示を光の減衰や反射がなく明瞭に行えるようにし、且つ液晶表示パネルに積層されたスイッチを押圧したとき、そのスイッチの情況をその表示色を種々に変化させて示すことが可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は上記の目的を達成するため、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持した液晶表示パネルと、その液晶表示パネルを複数色の光で照明可能な照明装置と、押圧を感知するスイッチシートとを有する液晶表示装置を、次のように構成したものである。
【0013】
上記照明装置は、液晶表示パネルの背面側又は前面側に上記導光シートが配置された可撓性を有する導光シートを有し、上記スイッチシートと、導光シート及び液晶表示パネルとが積層され、上記液晶表示パネルの前面側から上記スイッチシートを局部的に押圧可能に構成する。
さらに、上記照明装置に複数色の光のうち所定の色の光だけを用いる照明期間を各色毎に順次繰り返させ、その各色毎の照明期間と同期して上記液晶表示パネルにその色に応じた表示をさせるフィールドシーケンシャルカラー(FSC)駆動回路を備える。
【0014】
上記導光シートは、上記スイッチシートと液晶表示パネルの間に配置されているとよい。あるいは、上記液晶表示パネルの基板を上記導光シートと兼用することもできる。
また、上記液晶表示パネル上に容量センサシートを積層して設けてもよい。
【0015】
上記照明装置は、赤、緑、青の3色を発光するLED素子を光源として備え、そのLED素子から出射された光が上記導光シートの側面に入射するようにするのが好ましい。
あるいは、上記照明装置は、赤、緑、青の3色を発光する線状光源を備え、その線状光源から出射された光が上記導光シートの側面に入射するようにするとなおよい。
【0016】
上記導光シートとスイッチシートとの間に反射層を設けるのが望ましい。
そして、上記照明装置による照明を停止し、上記液晶表示パネルを外光により反射表示モードで表示させる低消費電力駆動回路を備えるとよい。
また、上記液晶表示パネルを上記低消費電力駆動回路で駆動するときには、上記フィールドシーケンシャルカラー(FSC)駆動回路で駆動するときよりも駆動周波数を低くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明による液晶表示装置は、小型化及び軽量化が容易で全体を自由に曲げることができ、キー領域等の表示を光の減衰や反射がなく明瞭に行え、且つその各キーの情況を表示色を種々に変化させて示すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1から図4を参照しながら、この発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
〔第1の実施形態:図1〜図6〕
図1は、この発明による液晶表示装置の第1の実施形態の構成を示す分解斜視図である。図2はその液晶表示装置の一部を拡大して示す模式的断面図、図3はその液晶層付近の一部分をさらに拡大して示す模式的断面図である。図4は、同じくその液晶表示装置のスイッチ領域の一例を示す平面図である。図5はこの発明による液晶表示装置の駆動回路の一例を示すブロック図、図6はその駆動波形の一例を示す図である。なお、これらの図面の説明において、同一または対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示す液晶表示装置10は、スイッチシート13と可撓性を有する液晶表示パネル11とが照明装置16の導光シート12を挟んで積層されており、可撓性を有する液晶表示パネル11の外面からスイッチシート13を局部的に押圧可能である。そのスイッチシート13には、押圧を感知する多数のスイッチ(図示せず)が配置されている。
【0021】
照明装置16は、液晶表示パネル11を複数色の光で照明可能な照明装置であり、可撓性(柔軟性)を有する導光シート12と、その導光シート12の光出射方向(積層方向)と略直交する2側面にそれぞれ対向して配置された光源としてのLED素子14、15とを有している。そして、LED素子14、15から出射した光は、導光シート12の側面(図中の矢印で示した方向)から導光シート12に入射する。各LED素子14、15は、三色LEDとも呼ばれ、制御信号によって赤、緑、青の発光を独立して制御できる。
【0022】
図2及び図3によって、この液晶表示装置10を構成する各部材の積層構造をさらに詳しく説明する。
液晶表示パネル11は、可撓性を有する2枚の基板である下側の基板24と上側の基板23との間に液晶層を挟持した可撓性を有する液晶表示パネルであり、さらに下側の基板24の下側に偏光板25を、上側の基板23の上側に位相差板22と偏光板21を積層している。これらの偏光板21、25と位相差板22は厚みが約100μmである。
【0023】
この液晶表示パネル11の液晶層付近を図3にさらに詳細に示す。下側の基板24と上側の基板23とシール(図示せず)とで形成された空間に液晶が注入されて液晶層203を形成している。上下の基板23、24の対向する各内面にはそれぞれ透明電極201、205が形成され、その上に配向膜202、204が形成されている。また液晶層203の厚さを一定に保つため、ホトリソグラフィ法によって基板23又は24に固定されたスペーサ206が形成されている。
【0024】
上下の基板23、24は厚みが約100μmのポリカーボネート等の透明な可撓性樹脂からなっている。透明電極201、205は酸化インジウム錫(ITO)からなり、厚さを約0.03μmと薄くして屈曲性を確保している。配向膜202、204はポリイミドで、厚さが約0.05μmである。この透明電極201、205は、ドットマトリクス状、直交するストライブ状、あるいはセグメント状などに多数形成され、一方の透明電極は共通の全面電極(コモン電極)にすることもできる。
【0025】
液晶層203は、ツイスト角が240°のネマチック液晶で、一般にスーパーツイステッドネマチック(STN)液晶と呼ばれ、スタティック駆動時のスイッチング速度の速いことが知られている。層の厚さは約4μmである。
【0026】
図2に戻って、照明装置16の導光シート12は、厚さが約100μmのシリコンゴムであり、スイッチシート13側の面に反射層がコーティングしてある。
スイッチシート13は、比較的硬質なベース基板27と柔軟な上部基板26と、これら上下の基板26、27の対向する面にそれぞれ接着している複数の電極28、29とから構成されている。
【0027】
そして、図2に示すように、この液晶表示装置10の可撓性を有する液晶表示パネル11の外面から指20などで電極28、29に対応する部分が押されると、その部分の液晶表示パネル11、導光シート12、及びスイッチシート13の上部基板26が局部的に撓んで下降し、上下の電極28、29が接触してONになる。押圧されないときは上下の電極28、29が離れた状態(OFF)になっている。
【0028】
図4において、液晶表示パネル11の透明電極201、205が平面的に重なる領域(以下「画素」と称する)と、スイッチシート13のスイッチ用の電極28、29との平面的な関係を説明する。
この例では、スイッチ用の電極28、29の領域内には、3個の画素31、32、33がある。液晶表示パネル11の操作モードによってこれらの画素31、32、33のうち一つが選択的に点灯する(表示される)。透明電極201をコモン電極、透明電極205をセグメント電極とすれば、スイッチ用の電極28、29が存在する領域内に、透明電極201が1個、透明電極205が3個あることになる。
【0029】
図5にこの液晶表示装置の駆動回路の一例を示す。この駆動回路はFSC駆動回路41と低消費電力駆動回路42と、そのいずれかを選択して動作させる駆動選択手段43とによって構成されている。44はスイッチシート13に配置された各スイッチのON/OFF状態をスキャン動作等によって検出するスイッチ検出回路である。駆動選択手段43は、外部スイッチの操作又はこの液晶表示装置10のスイッチシート13の電極によるスイッチの一つを使用して選択動作を行うようにすることができる。
【0030】
FSC駆動回路41は、LED素子14、15の赤、緑、青の各色を別々に所定の周期で順次繰り返し発光させて照明装置16に液晶表示パネル11を照明させ、その各色毎の照明期間と同期して、表示色に対応する画像データに応じて液晶表示パネル11の各画素の液晶に駆動電圧を印加してカラー表示を行う回路である。この駆動をフィールドシーケンシャルカラー(Field Sequential Color:FSC)駆動という。
【0031】
低消費電力駆動回路42は、照明装置16の発光を停止するかもしくは1色のみを発光させ、上記FSC駆動の所定の周期より長い周期で、液晶表示パネル11の各画素の液晶に画像データに応じて駆動電圧を印加して白黒表示又はモノカラー表示を行う回路である。この駆動を低消費電力駆動という。
【0032】
次に、図6によってFSC駆動回路41によるFSC駆動(FSCモード)と、低消費電力駆動回路42による低消費電力駆動(低消費電力モード)を説明する。
FSC駆動では1フィールドが赤、緑、青のサブフィールド期間tR、tG、tBから構成される。図6は2フィールド期間を示しており、前述のように透明電極201をコモン電極、透明電極205をセグメント電極とした場合の例を示す。透明電極201には、FSC駆動時には駆動信号C201A、低消費電力モード時には駆動信号C201Bを印加する。なお透明電極201、205に印加する駆動信号の振幅は10Vであり、フィールド周波数は70Hzである。
【0033】
まずFSC駆動の場合を説明する。駆動信号C201Aはサブフィールド期間毎に反転する。画素を赤のサブフィールド期間tRだけ透過状態にし、緑と青のサブフィールド期間tG、tBを非透過状態にするには、透明電極205に駆動信号S205Rを印加する。この駆動信号S205Rは、赤のサブフィールド期間tRだけ駆動信号C201Aと逆極性になって、透明電極201と透明電極205の間に所定の電圧を印加する。
【0034】
同様に緑のサブフィールド期間tGだけを透過状態にするには、透明電極205に駆動信号S205Gを印加する。この駆動信号S205Gは、緑のサブフィールド期間tGだけ駆動信号C201Aと逆極性になって、透明電極201と透明電極205の間に所定の電圧を印加する。
【0035】
青のサブフィールド期間tBだけを透過状態にするには、透明電極205に駆動信号S205Bを印加する。この駆動信号S205Bは、青のサブフィールド期間tBだけ駆動信号C201Aと逆極性になって、透明電極201と透明電極205の間に所定の電圧を印加する。
照明装置16のLED素子14、15は、制御信号RLEDがハイレベルの時に赤色発光となる。同様に制御信号GLED、BLEDがハイレベルの時にそれぞれ緑色発光、青色発光となる。
【0036】
透明電極205に駆動信号S205Rを印加すれば、サブフィールド期間tRだけ透過状態にあり、このときLED素子14、15が赤の発光を行っているので、画素は赤く見える。なお混色を防ぎ色純度を上げるため、発光を開始するタイミングをサブフィールド期間tRの開始より液晶の応答時間分だけ遅らせる。他の色によって画素を表示する場合も同様である。一般にFCS駆動は、セグメント電極側の駆動波形を工夫し、例えばパルス幅変調すればフルカラー表示できることが知られている。
【0037】
次に、低消費電力駆動の場合について説明する。低消費電力駆動では図6の下部に示すように、透明電極201に駆動信号C201Bを印加する。画素を透過状態にするには、透明電極205に駆動信号C201Bと逆極性の駆動信号S205ONを印加する。画素を非透過状態にするには、駆動信号C201Bと同極性の駆動信号S205OFを印加する。
【0038】
低消費電力駆動では、外光を利用できる場合には照明装置16のLED素子14、15を点灯させない。また、液晶表示パネル11の駆動周波数を下げることによってさらに低消費電力化が達成される。同時に駆動信号振幅をFSC駆動時の1/3に低減できるため低消費電力化が促進される。導光シート12の裏面に反射層がコーティングしてあるので、低消費電力駆動のときには導光シート12が反射板として働き、画素が透過状態では鏡面反射、非透過状態では黒となる。すなわち、液晶表示パネル11は外光による反射表示モードになる。このようにすれば、キー入力可能な状態で低消費電力化を図れる。
【0039】
しかし、外光が充分でない暗い環境で使用する場合などには、照明装置16のLED素子14、15に1色のみを発光させ、液晶表示パネル11の各画素の液晶に、FSC駆動に比べてその所定の周期より長い周期で且つ振幅を小さくした駆動電圧を印加して、モノカラー表示を行うこともできる。
【0040】
なお、反射層をスイッチシート13の上面に形成したり、スイッチシート13と導光シート12との間に反射シートを介在させて反射層としてもよい。
あるいはまた、図5における低消費電力駆動回路42と駆動選択手段43を省略して、FSC駆動だけを行うようにしてもよい。
【0041】
〔第2の実施形態:図7〕
次に、この発明による液晶表示装置の第2の実施形態を説明する。図7はその構成を示す図1と同様な分解斜視図である。
【0042】
この液晶表示装置10Aは、図1に示した液晶表示装置10の液晶表示パネル11上に容量センサシート19を積層している。また、照明装置16に代えて、導光シート12と線状光源18とからなる照明装置16Aを配設している。
【0043】
容量センサシート19は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる透明な絶縁性のPETシートの下面にITOからなる多数の電極を配列形成し、指がそのPETシートの表面に接触したときの電極間の容量変化によって接触位置を検出することができる。
【0044】
線状光源18は、導光シート12と略同じ厚さで導光シート12の一側面の長さと略同じ長さを有するプリズム片17の一方の長側面である射出面18aを導光シート12の一側面に対向させて平行に配置し、そのプリズム片17の短側面18b、18cに対向させて一対の3色LEDであるLED素子14,15を配置している。
【0045】
そして、LED素子14,15の発光による赤、緑、青のいずれかの光がプリズム片17に各短側面18b、18cから入射し、射出面18aと反対側の長側面18dに形成された反射型プリズムで反射しながら均一化して射出面18aの全面から均一に射出し、導光シート12に一側面から入射して、そこで拡散反射されて導光シート12の上面から液晶表示パネル11の全面を略均一に照明する。
【0046】
この第2の実施形態の液晶表示装置10Aの駆動回路も、図5に示した駆動回路と同様であり、そのFSC駆動及び低消費電力駆動も同様である。なお、容量センサシート19の各電極の容量変化によってタッチ位置を検知するタッチ検知回路を設ける。例えば、タッチ検出回路は容量センサーシートの各電極を走査し、各電極の容量値を計測する。この計測値からタッチ位置の座標を求める。これらの電極の微小な容量に対し、基準電圧までに達する時間(パルス数)を測る方法や、電極の容量を使った発振器の発振周波数を測る方法が知られている。
【0047】
この実施形態の液晶表示装置10Aは、容量センサシート19を設けたことによって、その表面をなぞったり軽く触れたりしたときの情報を容量センサシート19で取り込んで、液晶表示パネル11の表示状態やこの液晶表示装置10Aを搭載した装置の機能などを制御することができる。
また、強く押したときには前述した第1の実施形態の液晶表示装置10と同様に、その情報をスイッチシート13で取り込んで、液晶表示パネル11の表示状態やこの液晶表示装置10Aを搭載した装置の機能などを制御することができる。その場合、通常は容量センサシート19からの情報は無効にする。
【0048】
さらに、照明装置16Aの光源として線状光源18を使用したことによって、小型化と照明光の均一化を図ることができる。すなわち図1に示した第1の実施形態では、点光源であるLED素子14、15を導光シート12の側面に対向して直接取り付けるので、LED素子の発光を取付け辺に沿って平面的に拡散させて表示領域を均一に照明するための領域がLED素子14、15と表示領域の間に必要となる。これに対し図7に示した第2の実施形態では、線状光源18から導光シート12に向かって出射する光が予め均一化されているので、前述の拡散させる領域が不要となり、表示装置の小型化につながる。
【0049】
〔種々の変更例〕
なお、照明装置は図1に示した第1の実施形態と同様な照明装置16のままにして、液晶表示パネル11上に容量センサシート19を積層して設けるようにしたり、照明装置だけを図7に示した導光シート12と線状光源18とからなる照明装置16Aに変更して、容量センサシート19を設けないようにしてもよい。
【0050】
また、いずれの実施形態においても、照明装置の導光シート12を液晶表示パネル11の背面(下面)側に配置してバックライトとしており、この方が液晶表示パネル11に対する均一な面照明が容易であるが、液晶表示パネル11の前面(上面)側に照明装置の導光シート12を配置してフロントライトにすることも可能である。
【0051】
その場合には、光源の発光によって側面から入射する光を下方に拡散反射させる必要がある。例えば導光シート12の上面側に、反射型プリズムを形成する。このとき液晶表示パネル11の背面(下面)側に反射層又は反射シートを設けておく。
さらに、バックライトの場合には、液晶表示パネル11の図2及び図3に示した下側の基板24を照明装置の導光シート12に兼用することも可能である。また、フロントライトの場合には、液晶表示パネル11の上側の基板23を照明装置の導光シート12に兼用することも可能である。
【0052】
〔第3の実施形態:図8、図9〕
次に、この発明による液晶表示装置の第3の実施形態を説明する。図8はその構成を示す図7と同様な分解斜視図、図9はその液晶表示パネルの一部を拡大して示す模式的断面図である。
【0053】
図8に示す液晶表示装置10Bは、図7に示した液晶表示装置10Aにおける液晶表示パネル11に代えて、高分子分散型の液晶表示パネル50を用いたものである。この例では、液晶表示パネル50の下基板を照明装置16Bの導光シートに兼用するので、図7における導光シート12を設けていない。その他の構成は、図7によって説明した第2の実施形態と同様であり、光源に線状光源18を使用し、液晶表示パネル50上に容量センサシート19を積層している。
【0054】
その液晶表示パネル50は図9に示すように、2枚の可撓性を有する基板51,52の周縁部をシール材53で張り合わせ、その間に高分子分散型液晶層55を挟持している。可撓性を有する基板51,52は、例えばポリカーボネート、PET、PES等のフレキシブルで透明なプラスチックフィルム(厚さは例えば100μm程度)である。その2枚の基板51,52の対向する内面には、ITO等による膜厚が30nm程度の透明電極56,57が形成されている。その電極56,57は、互いに直交するストライプ状電極か、あるいは全面電極とセグメント電極又はドットマトリクス電極による画素電極として形成されているが、図9では簡略化して、いずれも一体の電極膜のように示している。
【0055】
高分子分散型液晶は、しばしば高分子領域と液晶領域の混合の仕方で分類される。本実施形態で用いた高分子分散型液晶層55は、スポンジ状あるいはネットワーク状の高分子材料の中に液晶を分散させた固形の高分子分散型液晶薄膜(厚さ5〜15μm程度)である。その高分子分散型液晶層55を挟む電極56,57間に電圧を印加しないときは、高分子材料と液晶の屈折率が異なるため光を散乱して不透明になっており、適当な大きさの電圧を印加すると、高分子材料と液晶の屈折率が略同じになるため透明になる。
【0056】
この高分子分散型液晶層55は、シール材53で所定の間隔を保って接着して張り合わせた基板51,52間に、シール材53の図示していない注入口から、紫外線硬化性樹脂液(例えばアクリル系樹脂液)と光重合開始剤と液晶(ネマチック液晶等)との混合液を注入して注入口を封止した後、外部から紫外線を照射して作成される。紫外線の照射によって、樹脂のみが重合反応を起こしてポリマネットワークを形成し、液晶は相分離してそのポリマネットワーク内に分散する。この状態では、紫外線硬化性樹脂によるポリマネットワークは各基板51,52の内面(電極56,57の表面も含む)に固着している。
【0057】
そこで、この液晶表示パネル50全体に波状のうねりを加えて、高分子分散型液晶層55と可撓性樹脂基板51,52との間を剥離させ、その間に略均一な微小隙間58を形成する。このようにすることによって、液晶パネル50の表示面の同じ部分を多数回局所的にタッチ(加圧)しても圧痕が生じ難くなり、たとえ圧痕が生じても短時間で回復してその圧痕が消失する。
【0058】
このように、高分子分散型液晶層55と基板51,52との間を剥離させても、高分子分散型液晶層55の周囲はシール材53によって位置規制されているので、押圧されたときに平面方向に位置ずれすることはない。
この高分子分散型の液晶表示パネル50の下側の基板52の下面に反射層59を形成する。この反射層59に代えて、スイッチシート13の上面に反射層を形成するか、液晶表示パネル50とスイッチシート13との間に反射シートを配置してもよい。
【0059】
そして、液晶表示パネル50の下側の基板52の一側面52aに対向させて、線状光源18を配設している。線状光源18からの複数色のいずれかの光を基板52に入射して、反射層59によって上方に反射させながら進行して高分子分散型液晶層55を照明する。すなわち、この下側の基板52を照明装置16Bの導光シートに兼用している。
【0060】
高分子分散型液晶層55は、上述した紫外線硬化型のポリマネットワーク中に液晶を分散させたものに限らず、他の種類のものでもよい。たとえば、一方の基板に高分子分散型液晶材料を塗布して乾燥固化した後、他方の基板を重ねてラミネートすることによって、高分子分散型液晶層を形成することもできる。
【0061】
この実施形態によれば、液晶表示パネル50の表示面の同じ部分を多数回局所的にタッチしても圧痕が生じ難く、たとえ圧痕が生じても短時間で回復してその圧痕が消失するので、長期に亘って見やすい画面を維持できる。また、照明装置の導光シートを省略できるので、コスト低減と小型化に有効である。その他の作用効果は第2の実施形態と同じである。
【0062】
この第3の実施形態の液晶表示装置10Bの駆動回路も、図5に示した駆動回路と同様であり、それに容量センサシート19の各電極の容量変化によってタッチ位置を検知するタッチ検知回路を設ければよい。
なお、容量センサシート19を省略してもよいし、光源として線状光源18に代えて、第1の実施形態と同様に赤、緑、青の3色を発光するLED素子14、15を使用してもよい。
【0063】
また、液晶表示パネル50の上側の基板51を照明装置16Bの導光シートに兼用して、高分子分散型液晶層55を前面側から照明するフロントライトにすることもできる。上下の基板51、52に同時に光を入射させても良い。
上述した各実施形態に記載した基板の厚さや電極の膜厚などの数値は一例を示したものであり、用途や全体のサイズその他の条件などによって適宜変更し得ることは勿論である。
【0064】
〔携帯電話機への搭載例〕
次に、この発明による液晶表示装置を携帯電話機への搭載例を説明する。図10は、この発明による液晶表示装置を搭載した携帯電話機をメインデスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【0065】
この携帯電話機60は本体部61とメインデスプレイ部62とが開閉可能に連結され、メインデスプレイ部62にはカラー液晶表示パネルによるメインデスプレイ63が設けられている。本体部の上面には、キーパッドとしてこの発明による液晶表示装置10(上述したいずれの実施形態のものでもよいが代表して10とする)が搭載されている。
【0066】
この液晶表示装置10の液晶表示パネルには、初期状態では通常の携帯電話機のキーパッドの各キーと同じテンキーや各種機能選択キー等の各キーが表示さており、その各キー表示領域をタッチすることによってダイヤル入力や機能選択などを行うことができる。また、機能選択に応じてキー表示を変化させることもでき、次に操作可能なキーのみの表示色を変えることもできる。
【0067】
さらに、入力モードにより、入力可能なキーのみを特定の色で表示したり、メインパネルのキーの表示色とキーパッドのキーの表示色を関連させたり、ユーザがキーの色を自由に設定することもでき、ファッション性や操作性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明による液晶表示装置は、小型化及び軽量化が容易で全体を自由に曲げることができ、キー領域等の表示を光の減衰や反射がなく明瞭に行え、且つその各キーの情況を表示色を種々に変化させて示すことが可能である。
そのため、携帯電話機や携帯端末などの各種携帯型電子機器のキーパットとして最適であり、その他の各種機器のオペレーションパネルにも適用でき、曲面形状のオペレーションパネルなどを実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明による液晶表示装置の第1の実施形態の構成を示す分解斜視図である。
【図2】同じくその液晶表示装置の一部を拡大して示す模式的断面図である。
【図3】その液晶層付近の一部分をさらに拡大して示す模式的断面図である。
【図4】同じくその液晶表示装置のスイッチ領域の一例を示す平面図である。
【図5】同じくその液晶表示装置の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図6】その駆動回路による駆動波形の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】この発明による液晶表示装置の第2の実施形態の構成を示す分解斜視図である。
【図8】この発明による液晶表示装置の第3の実施形態の構成を示す図7と同様な分解斜視図である。
【図9】同じくその液晶表示パネルの一部を拡大して示す模式的断面図である。
【図10】この発明による液晶表示装置を搭載した携帯電話機をメインデスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B:液晶表示装置 11:可撓性を有する液晶表示パネル
12:導光シート 13:スイッチシート 14,15:LED素子
16:照明装置 17:反射型プリズム片 18:線状光源
20:指 21,25:偏光板 22:位相差板
23,24:液晶表示パネルの基板
26,27:スイッチシートの基板 28,29:スイッチシートの電極
31,32,33:画素
41:FSC駆動回路 42:低消費電力駆動回路
43:駆動選択手段 44:スイッチ検知回路
51,52:可撓性を有する基板 53:シール材
55:高分子分散型液晶層 56,57:透明電極
58:微小隙間 59:反射層 60:携帯電話機 61:本体部
62:メインデスプレイ部 63::メインデスプレイ
201:透明電極(コモン電極) 205:透明電極(セグメント電極)
202,204:配向膜 203:液晶層
C201A,C201B…コモン電極の駆動信号
S205R,S205G,S205B…FSC駆動時のセグメント電極の駆動信号
S205ON,S205OF…低消費電力駆動時のセグメント電極の駆動信号、RLED,GLED,BLED…LED素子の制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持した液晶表示パネルと、該液晶表示パネルを複数色の光で照明可能な照明装置と、押圧を感知するスイッチシートとを有する液晶表示装置において、
前記照明装置は、前記液晶表示パネルの背面側又は前面側に配置された可撓性を有する導光シートを有し、
前記スイッチシートと、前記導光シート及び前記液晶表示パネルとが積層され、前記液晶表示パネルの前面側から前記スイッチシートを局部的に押圧可能であり、
前記照明装置に前記複数の光のうち所定の色の光だけを使う照明期間を各色毎に順次繰り返させ、その各色毎の照明期間と同期して前記液晶表示パネルにその色に応じた表示をさせるフィールドシーケンシャルカラー駆動回路を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記導光シートは、前記スイッチシートと前記液晶表示パネルの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示パネルの基板を前記導光シートと兼用したことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示パネル上に容量センサシートを積層したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記照明装置は、赤、緑、青の3色を発光するLED素子を光源として備え、該LED素子から出射された光が前記導光シートの側面に入射することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記照明装置は、赤、緑、青の3色を発光する線状光源を備え、該線状光源から出射された光が前記導光シートの側面に入射することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記導光シートと前記スイッチシートとの間に反射層を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記照明装置による照明を停止し、前記液晶表示パネルを外光により反射表示モードで表示させる低消費電力駆動回路を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示パネルを前記低消費電力駆動回路で駆動するときには、前記フィールドシーケンシャルカラー駆動回路で駆動するときよりも駆動周波数が低いことを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−9116(P2009−9116A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138108(P2008−138108)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】