説明

液晶表示装置

【課題】全体としてコンパクトな構成の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置1は、上ガラス基板23、下ガラス基板28、上透明電極25、下透明電極27および上液晶層26からなる上側液晶セル21と、上ガラス基板33、下ガラス基板38、上透明電極35、下透明電極37および下液晶層36からなる下側液晶セル31と、コの字状の当接部18が形成された接続ピン10とを有して構成され、接続ピン10は、下透明電極27と上ガラス基板33の下面における上透明電極35を外れた部分とに当接部18を当接させるようにして、下ガラス基板28および上ガラス基板33の端部を一体として当接部18により上下方向に挟んで下透明電極27と当接部18とを電気接続可能であり、上透明電極35と下ガラス基板28の上面における下透明電極27を外れた部分とに当接部18を当接させて、上透明電極35と当接部18とを電気接続可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶分子からなる液晶層が内部に形成された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液晶表示装置は一般に、対向した2つのガラス基板の間に液晶分子からなる液晶層が形成されて構成され、ガラス基板の端部に露出した電極とプリント基板とが、例えば接続ピンにより電気接続される。このような液晶表示装置には、液晶層が形成された第1液晶セルおよび第2液晶セルを上下に重ねて設け、一方を表示用液晶セルとするとともに他方を位相補償用液晶セルとすることにより、斜めから見た場合に色調変化が少なく且つコントラストの高い表示を可能にしたものがある。例えば特許文献1の図1には、表示用液晶セルとしてのA層と、位相補償用液晶セルとしてのB層とを上下に重ねて構成された液晶表示装置が開示されている。
【0003】
図10に、2つの液晶セルを上下に重ねて構成された従来の液晶表示装置500を示す。この液晶表示装置500は、上液晶層521が形成された上側液晶セル520、下液晶層551が形成された下側液晶セル550および接続ピン610,650を主体に構成される。上側液晶セル520において、下ガラス基板540の端部上面に下透明電極530が露出しており、この下透明電極530の端部と接続ピン610とが当接して電気接続されている。また、下側液晶セル550においても、下ガラス基板570の端部上面に露出した下透明電極560と接続ピン650とが当接して電気接続されている。そして、これら接続ピン610,650の下端部が、プリント基板800と電気接続されるようになっている。
【0004】
図10に示すように、接続ピン610の上部は側面視「コ」の字状に形成されており、この部分が下ガラス基板540の端部を挟むように挿入されて下透明電極530と電気接続された後、導電ペースト720およびピン固定樹脂710が塗布されて固定される。裏側液晶セル550も同様に、下透明電極560と接続ピン650とが電気接続され、導電ペースト720およびピン固定樹脂710が塗布されている。
【特許文献1】特開平11−271751
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は一般的に、上述のように各液晶セル520,550のどちらにおいても、下ガラス基板540,570の上面に透明電極530,560を露出させて、接続ピン610,650と電気接続させていた。そのため、下透明電極560と接続ピン650との接続部分においては、導電ペースト720およびピン固定樹脂710を塗布して接続部を形成するために上下方向のスペースを確保する必要があることから、比較的厚いガラス基板(例えば、1.1mm程度)が使用されていた。このようなことから、液晶表示装置500は全体として上下方向に厚くなってしまうという課題があった。
【0006】
また、1つの液晶セルを用いた構成の場合においても同様に、従来は一般的に下ガラス基板の上面に透明電極を露出させて接続ピンと電気接続させていた。ところで最近、液晶表示装置における表示の立ち上がりを低温の使用環境下においても素早く行わせたいという要望があり、この要望に応えるべく上記透明電極とは別に例えば透明電極ヒータを用いて、それぞれの電極を下ガラス基板の同一面(例えば、下ガラス基板の下面)に露出させて接続ピンと電気接続させようとすると、電極の配置構成が複雑となってしまうという課題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、全体としてコンパクトに構成しつつ簡単な電極配置となった液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る液晶表示装置は、互いに平行に配置された一対の上側基板、前記一対の上側基板における互いに対向する面に形成された一対の上側電極(例えば、実施形態中の図4等における上透明電極25、下透明電極27)、および前記上側電極の間に封入された上側液晶層(例えば、実施形態における上液晶層26)からなる上側液晶セルと、互いに平行に配置された一対の下側基板、前記一対の下側基板における互いに対向する面に形成された一対の下側電極(例えば、実施形態における上透明電極35、下透明電極37)、および前記下側電極の間に封入された下側液晶層(例えば、実施形態における下液晶層36)からなり、前記上側液晶セルの下方に位置した下側液晶セルと、前記上側電極または前記下側電極と電気接続された接続ピンとを有して構成された液晶表示装置であって、前記一対の上側基板は、上側に位置した上側上部基板(例えば、実施形態における上ガラス基板23)、および前記上側上部基板の下側に位置して上面に前記上側電極が形成された上側接続端部が前記上側上部基板に対して側方に突出して形成された上側下部基板(例えば、実施形態における下ガラス基板28)から構成され、前記一対の下側基板は、下側に位置した下側下部基板(例えば、実施形態における下ガラス基板38)、および前記下側下部基板の上側に位置して下面に前記下側電極が形成された下側接続端部が前記下側下部基板に対して前記側方に突出して形成された下側上部基板(例えば、実施形態における上ガラス基板33)から構成され、前記接続ピンは、側面視コの字状の挟持部(例えば、実施形態における当接部18)が形成されて構成されており、前記接続ピンは、前記上側接続端部の上面に形成された前記上側電極と前記下側上部基板の下面における前記下側電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、上下に重なって位置した前記上側接続端部および前記下側接続端部を一体として前記挟持部により上下方向に挟んで前記上側電極と前記挟持部とを電気接続可能であり、前記下側接続端部の下面に形成された前記下側電極と前記上側下部基板の上面における前記上側電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記上側接続端部および前記下側接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記下側電極と前記挟持部とを電気接続可能に構成される。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る液晶表示装置は、互いに平行に配置された一対の基板、前記一対の基板における互いに対向する面に形成された一対の表示用電極、および前記表示用電極の間に封入された液晶層からなる液晶セルと、前記液晶セルの下面に設けられた表示補助電極(例えば、実施形態における透明電極ヒータ29)と、前記表示用電極または前記表示補助電極と電気接続された接続ピンとを有して構成された液晶表示装置であって、前記一対の基板は、上側に位置した上部基板、および前記上部基板の下側に位置して上面に前記表示用電極が形成され且つ下面に前記表示補助電極が形成された接続端部が前記上部基板に対して側方に突出して形成された下部基板から構成され、前記接続ピンは、側面視コの字状の挟持部が形成されて構成されており、前記接続ピンは、前記接続端部の上面に形成された前記表示用電極と前記下部基板の下面における前記表示補助電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記表示用電極と前記挟持部とを電気接続可能であり、前記接続端部の下面に形成された前記表示補助電極と前記下部基板の上面における前記表示用電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記表示補助電極と前記挟持部とを電気接続可能に構成される。
【0010】
なお、上述の液晶表示装置において、前記接続ピンにおける前記挟持部は、板状の上挟持板(例えば、実施形態における上接続部12)および前記上挟持板と上下に対向した板状の下挟持板(例えば、実施形態における下接続部13)からなり、前記上挟持板および前記下挟持板には、上下に貫通したペースト用開口部(例えば、実施形態におけるペースト用間隙12a,13a)が形成されており、前記挟持部と前記上側電極、前記下側電極、前記表示用電極または前記表示補助電極とが当接されて電気接続された接続部分に、前記ペースト用開口部に導電性を備えた導電ペーストが塗布され且つ塗布された前記導電ペースト、前記上挟持板および前記下挟持板を覆うように固定用樹脂が塗布されたことが好ましい。
【0011】
また、前記導電ペーストは、液滴状の前記導電ペーストを吐出可能なペースト吐出装置により吐出されて塗布されたことが好ましい。
【0012】
さらに、前記導電ペーストは、紫外線が照射されて硬化される特性を備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る液晶表示装置は、上側下部基板および下側上部基板の端部を接続ピンの挟持部により上下方向に挟み、上側下部基板の上面に形成された上側電極と挟持部とを当接させることで上側電極と接続ピンとを電気接続でき、また、下側上部基板の下面に形成された下側電極と挟持部とを当接させることで下側電極と接続ピンとを電気接続できるように構成されている。この構成から、下側上部基板の下面に下側電極を露出させた状態で、上側下部基板および下側上部基板の端部を接続ピンの挟持部により上下方向に挟むことで、下側液晶セルの下側電極と接続ピンとを電気接続することが可能となる。ところで、従来の構成では、下側液晶セルの透明電極と接続ピンとの接合部分に上下方向のスペースを確保する必要があったが、本発明に係る液晶表示装置によれば、そのスペースを確保する必要がなくなる。よって、従来の構成と比較して薄いガラス基板(例えば、0.55mm程度)を使用して液晶表示装置を構成できるようになり、そのため、液晶表示装置を全体として薄くコンパクトに構成可能となる。
【0014】
また、本発明に係る液晶表示装置は、下部基板の端部を接続ピンの挟持部により上下方向に挟み、下部基板の上面に形成された表示用電極と挟持部とを当接させることで表示用電極と接続ピンとを電気接続でき、また、下部基板の下面に形成された表示補助電極と挟持部とを当接させることで表示補助電極と接続ピンとを電気接続できるように構成されている。このような構成より、下部基板の上面に表示用電極および表示補助電極の両方を露出させることなく、下部基板の上面と下面とに分けて露出させることで、各電極の配置構成を複雑化させることなく各電極と接続ピンとを電気接続することができる。
【0015】
なお、挟持部を構成する上挟持板および下挟持板に、上下に貫通したペースト用開口部が形成され、挟持部と上記各電極とが当接されて電気接続された接続部分に導電ペーストが塗布されたことが好ましい。このように構成した場合、ペースト用開口部に塗布された導電ペーストの塗布状態を確認することで、接続ピンと各電極とが確実に電気接続されているか否かを簡易且つ即座に検査できる。
【0016】
また、導電ペーストは、液滴状の導電ペーストを吐出可能なペースト吐出装置により吐出されて塗布されたことが好ましい。このように構成すると、均一な量(粒径)の導電ペーストを、接続ピンと上記電極との各接続部分に塗布できるようになり、接続ピンと各電極との電気接続の信頼性を向上させることが可能となる。
【0017】
さらに、導電ペーストは、紫外線が照射されて硬化される特性を有したものが好ましい。この構成の場合、例えば紫外線照射装置を用いて紫外線を照射することにより、塗布された導電ペーストを比較的短時間のうちに確実に硬化させることが可能で、接続ピンと各電極との電気接続の信頼性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照ながら、本発明の好ましい実施形態について、実施例1および2を挙げて説明する。説明の便宜上、各図面に示す矢印方向を前後、左右および上下と定義して説明を行う。
【実施例1】
【0019】
まず、図1〜5を参照しながら、実施例1に係る液晶表示装置1の構成部材ついて説明する。図1に液晶表示装置1の全体図を、図2に液晶表示装置1の部分拡大図を、図3に後述する接続ピン10の斜視図を、図4および図5に液晶表示装置1の断面図をそれぞれ示す。
【0020】
液晶表示装置1は、図1(a)および(b)に示すように、装置本体20、およびこの装置本体20とプリント基板99とを接続する複数の接続ピン10から構成される。図2(a)から分かるように、接続ピン10は、装置本体20の前端部において、一定間隔毎に左右に並んで取り付けられており、この取付手順の詳細については後述する。
【0021】
接続ピン10は、図3に示すように、例えば板状金属材料をプレス加工することにより形成され、上部において側面視「コ」の字状に形成された当接部18と、この当接部18と繋がって下方に延びる支持部14とを主体に構成される。当接部18は、その前側に平板状の基部11が形成され、この基部11の上端部から後方に向けて2つの上接続部12,12が湾曲して延び、また、基部11の下端部から後方に2つの下接続部13,13が湾曲して延びている。
【0022】
上記の上接続部12,12の間にはペースト用間隙12a、下接続部13,13の間にはペースト用間隙13aが形成されている。支持部14の下端部は、プリント基板99と電気接続されるようになっており、この支持部14は、装置本体20とプリント基板99との上下距離に合わせて調整できるように、予め上下に長く形成されている。
【0023】
装置本体20は、図4および図5に示すように、上側液晶セル21および下側液晶セル
31を主体に構成され、以下においては、上側液晶セル21を表示用、下側液晶セル31を位相補償用とした構成を例示して説明する。
【0024】
上側液晶セル21は、上偏光板22、この上偏光板22の下面側に配設された上ガラス基板23、上ガラス基板23と上下に対向して配設された下ガラス基板28、上ガラス基板23と下ガラス基板28との間隙にシール部材24により密封された上液晶層26、上ガラス基板23の下面に設けられた上透明電極25、および下ガラス基板28の上面に設けられた下透明電極27を主体に構成される。
【0025】
下側液晶セル31は、上記下ガラス基板28の下側に位置した上ガラス基板33、上ガラス基板33と上下に対向して配設された下ガラス基板38、上ガラス基板33と下ガラス基板38との間隙にシール部材24により密封された下液晶層36、上ガラス基板33の下面に設けられた上透明電極35、下ガラス基板38の上面に設けられた下透明電極37、および下ガラス基板38の下側に位置した下偏光板32を主体に構成される。
【0026】
上記4つのガラス基板23,28,33,38はそれぞれ、例えば透明なガラスを用いて形成された平面状の基板であって、光を透過可能となっている。上液晶層26および下液晶層36は、例えばツィステッドネマティック液晶材料を用いて、規則的な配向方向を有する液晶分子が層状に積層されて構成されており、短軸方向に複屈折性を持ち、長軸方向には複屈折性を持たない光学的に一軸性の複屈折性結晶である。
【0027】
上偏光板22および下偏光板32は、特定の透過軸方向の振動を持った直線偏光のみを透過可能に形成された直線偏光板である。シール部材24としては、各液晶層26,36内の液晶分子が浸透しない性質を有したものが用いられており、このシール部材24により、液体である液晶分子の外部流出を防止するとともに、各液晶層26,36内への汚染物質の流入を防止可能となっている。
【0028】
図2(b)には、各ガラス基板の前端部のみを抜き出した斜視図を示している。この図から分かるように、下透明電極27は、所定幅で左右に並んだ状態で下ガラス基板28の前端部上面側に露出し、また上透明電極35は、ガラス基板33の前端部下面側に露出している。装置本体20が組み立てられた状態において、下透明電極27と上透明電極35とは上下に対向して位置しないように左右にずれて形成されている。また、上透明電極25と下透明電極27とは、上下一対に形成されるとともに、装置本体20を上方から見たときに所望の表示パターンとなるように形成されている(図1(a)参照)。なお、図1(a)には、左右の端部から3つ分は上透明電極35が露出し、その内側は下透明電極27が露出した構成を例示しているが、この構成は適宜設計変更可能である。
【0029】
このような構成部材からなる液晶表示装置1において、装置本体20の組立構成について説明する。図4および図5に示すように、下ガラス基板28の下側に上ガラス基板33が位置し、上側液晶セル21と下側液晶セル31とが上下に重なった状態となっている。そして、上ガラス基板23に対して下ガラス基板28が前方に突出し、下ガラス基板38に対して上ガラス基板33が前方に突出している。この前方に突出した下ガラス基板28の前端部上面側において、所定の左右位置に下透明電極27が左右に並んで露出している。また、上ガラス基板33の前端部下面側には、所定の左右位置に上透明電極35が左右に並んで露出している。
【0030】
以上、液晶表示装置1の構成部材について説明したが、以下において装置本体20に接続ピン10を取り付ける取付手順について詳しく説明する。
【0031】
接続ピン10の当接部18を、下ガラス基板28および上ガラス基板33の前端部に対して挿入し、接続ピン10のばね力により上接続部12と下接続部13とで上下に挟んだ状態とする。そうすることにより、下ガラス基板28の前端部上面側に露出した下透明電極27と上接続部12,12とを当接させるとともに、上ガラス基板33の前端部下面側に露出した上透明電極35と下接続部13,13とを当接させて、これらを電気接続させる。そして、上接続部12,12と下透明電極27とが当接している部分(左右端部から3つ分を除いた部分)に対しては、ペースト用間隙12aの位置に向けて、ペースト吐出装置(図示せず)により微小な液滴となった導電性を備えた導電ペースト52を吐出して付着させる(図2(a)および図5参照)。
【0032】
これにより、上接続部12,12と下透明電極27とが、導電ペースト52によって確実に接続されて電気接続の信頼性を向上させることができる。また、ペースト用間隙12aに向けて導電ペースト52を吐出して付着させるので、導電ペースト52の付着状態を確認することにより、確実に電気接続されているか否かを簡単且つ即座に検査可能である。
【0033】
また、下接続部13,13と上透明電極35とが当接している部分(左右端部から3つ分)に対しても同様に、ペースト用間隙13aの位置に向けてペースト吐出装置により導電ペースト52を吐出して付着させる(図2(a)および図4参照)。こうすることにより、下接続部13,13と上透明電極35とが導電ペースト52により確実に電気接続され、また、ペースト用間隙13aに付着した導電ペースト52の付着状態を確認することにより、確実に電気接続されているか否かを検査可能である。
【0034】
なお、導電ペースト52は、例えば黒鉛、銅、銀または金等の導電性の微粒子を含んだものであって、加熱されて硬化する熱硬化性のもの、自然乾燥により硬化するもの、および紫外線が照射されて硬化するUV硬化型のもののうち、いずれでも良い。上記UV硬化型の導電ペーストを用いることにより、例えば自然硬化させる場合と比較して、紫外線照射装置(図示せず)から紫外線を照射させることにより、確実且つ短時間のうちに硬化させることが可能となる。
【0035】
上記のようにして、導電ペースト52を付着させて十分乾燥させた後、上接続部12,12および下接続部13,13を覆うように、下ガラス基板28の前端部上面および上ガラス基板33の前端部下面に、例えば透明なピン固定樹脂51を塗布して硬化させる。こうすることにより、装置本体20に対して接続ピン10(当接部18)を確実に固定することができ、例えば装置本体20および接続ピン10に外力が作用しても、下透明電極27と上接続部12,12との電気接続、および上透明電極35と下接続部13,13との電気接続を維持することが可能である。
【0036】
ピン固定樹脂51が硬化した後、装置本体20とプリント基板99との上下距離に合わせて支持部14の下部を切断削除し、この支持部14の下端部とプリント基板99とを電気接続することで液晶表示装置1が駆動可能となる。なお、ピン固定樹脂51として、例えばUV硬化型の樹脂を用いることも可能である。
【0037】
ところで、従来の上側液晶セルと下側液晶セルとが上下に重なった構成の液晶表示装置は、下側液晶セルにおける下ガラス基板の上面に透明電極を露出させて接続ピンと電気接続させるとともに、この接続部分にピン固定樹脂を塗布するための上下の隙間を設けるために厚いガラス基板を用いる必要があり、全体として上下に厚い液晶表示装置(装置本体)となっていた。一方、本発明に係る液晶表示装置1においては、上述したように、下側液晶セル31における上透明電極35を、上ガラス基板33の前端部下面に露出させて接続ピン10と電気接続させる構成となっている。そのため、従来のようなピン固定樹脂を塗布するための隙間を設ける必要がなく、薄いガラス基板(例えば、0.55mm程度)を用いて構成することが可能となり、よって、液晶表示装置1を上下に薄くコンパクトに構成でき且つ軽量化を図ることも可能となる。
【0038】
また従来は、装置本体に接続ピンを取り付ける際、例えば上側液晶セルに対して接続ピンを取り付けた後で、下側液晶セルに対して接続ピンを取り付けるようにして、2度に分けて接続ピンの取り付けを行っていた。一方、本発明に係る液晶表示装置1においては、一度に全ての接続ピン10を装置本体20に取り付けることが可能で、従来と比較して作業工数を減らして作業効率を向上させることができる。さらに、従来の構成においては、上側液晶セルの端部および下側液晶セルの端部の各々に(2段分に)ピン固定樹脂を塗布する必要があり、作業工数の増加とともにピン固定樹脂の消費量増加に繋がっていた。一方、本発明に係る液晶表示装置1においては、1段分のみにピン固定樹脂51を塗布すれば良いので、作業工数およびピン固定樹脂51の消費量を減らすことが可能となる。
【0039】
以上、装置本体20に接続ピン10を取り付ける取付手順について説明したが、以下に上述のようにして構成された液晶表示装置1の駆動について説明する。
【0040】
まず、接続ピン10を介して、プリント基板99から下透明電極27および上透明電極35に液晶駆動用電圧が印加される。このとき、上側液晶セル21において、図示しない電圧印加部が下透明電極27に印加された上記液晶駆動用電圧を利用して、上透明電極25および下透明電極27に電圧を印加することにより、この電圧印加された上透明電極25および下透明電極27に挟持された領域の上液晶層26の液晶分子の向きを変化させる。こうすることにより、図1(a)に示す例えばセグメント26a,26bの領域における液晶分子の向きを変化させて、「1」という表示を行うことができる。
【実施例2】
【0041】
図6〜9を参照しながら、実施例2に係る液晶表示装置2の構成部材ついて説明する。図6に液晶表示装置2の全体図を、図7に液晶表示装置2の部分拡大図を、図8および図
9に液晶表示装置2の断面図をそれぞれ示す。なお、この実施例2に係る液晶表示装置2は、上述の液晶表示装置1において下側液晶セル31を除いた構成と類似しているため、以下の説明においては、液晶表示装置1と同一部材には同一番号を付してその説明を省略し、液晶表示装置1と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
図6(a)、図6(b)および図7(a)に示すように、液晶表示装置2は、装置本体60、およびこの装置本体60とプリント基板99とを接続する複数の接続ピン10から構成される。接続ピン10は、基本的には上述の実施例1において説明した構成となっているが、後述する下ガラス基板28の厚みに合わせて、上接続部12,12と下接続部13,13との上下間隔寸法が変更されている。
【0043】
装置本体60は、図8および図9に示すように、上偏光板22、この上偏光板22の下面側に配設された上ガラス基板23、上ガラス基板23と上下に対向して配設された下ガラス基板28、上ガラス基板23と下ガラス基板28との間隙にシール部材24により密封された上液晶層26、上ガラス基板23の下面に設けられた上透明電極25、下ガラス基板28の上面に設けられた下透明電極27、下ガラス基板28の下面に設けられた透明電極ヒータ29、および透明電極ヒータ29の下面に設けられた下偏光板32を主体に構成される。
【0044】
透明電極ヒータ29は、透明で且つフィルム状に形成されるとともに内部にヒータ電極29aを備え、このヒータ電極29aに電流を加えることにより発熱させることができる構成となっている。図7(b)に示すように、このヒータ電極29aは、透明電極ヒータ29の前端部下面側に所定幅で左右に並ぶように露出している。装置本体60が組み立てられた状態において、下透明電極27とヒータ電極29aとは上下に対向して位置しないように左右にずれて形成されている。なお、図6(a)には、左右の端部から2つ分はヒータ電極29aが露出し、その内側は下透明電極27が露出した構成を例示しているが、この構成は適宜設計変更可能である。
【0045】
上記構成の装置本体60に接続ピン10を取り付けるときは、上述の実施例1と同様に行うことで、下ガラス基板28の前端部上面側に露出した下透明電極27と上接続部12,12とを当接させるとともに(図9参照)、透明電極ヒータ29の前端部下面側に露出したヒータ電極29aと下接続部13,13とを当接させて(図8参照)、これらを電気接続させる。そして、下透明電極27およびヒータ電極29aが露出した部分に導電ペースト52を付着させて乾燥させた後、ピン固定樹脂51を塗布することで装置本体60に対して接続ピン10(当接部18)を確実に固定させることができる。
【0046】
以上のように構成された液晶表示装置2の駆動について、以下に説明する。接続ピン10を介して、プリント基板99から下透明電極27に液晶駆動用電圧が印加されるとともに、プリント基板99からヒータ電極29aに直流電流が供給される。このとき、図示しない電圧印加部が下透明電極27に印加された液晶駆動用電圧を利用して、上透明電極25および下透明電極27に電圧を印加することにより、この電圧印加された上透明電極25および下透明電極27に挟持された領域の上液晶層26の液晶分子の向きを変化させる。こうすることにより、所望の表示を行うことができるようになっている。
【0047】
この液晶表示装置2は、下ガラス基板28の下面に透明電極ヒータ29を設けた構成となっている。そのため、この透明電極ヒータ29に直流電流を供給することで、液晶分子の温度を、素早く向きを変えることができる温度にまで即座に上昇させることができるので、例えば低温状態における表示の立ち上がりに要する時間を短縮させることが可能となる。この液晶表示装置2は、例えば自動車に搭載されることにより、上記効果が顕著に発揮できる。
【0048】
また、液晶表示装置2は、下ガラス基板28の前端部上面側に下透明電極27を露出させて上接続部12,12と電気接続させ、下ガラス基板28(透明電極ヒータ29)の前端部下面側にヒータ電極29aを露出させて下接続部13,13と電気接続させている。そのため、例えば下ガラス基板28の上面側に下透明電極27およびヒータ電極29aを露出させる構成と比較して、電極の配置構成を簡単且つ単純にすることができ、接続ミス等の不具合を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した実施例1に係る液晶表示装置であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図2】(a)は図1(a)中のII(a)部分の拡大図を、(b)はガラス基板の斜視図をそれぞれ示す。
【図3】上記液晶表示装置に用いられる接続ピンの斜視図である。
【図4】図2(a)中のIV−IV部分を示した断面図である。
【図5】図2(a)中のV−V部分を示した断面図である。
【図6】本発明を適用した実施例2に係る液晶表示装置であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図7】(a)は図6(a)中のVII(a)部分の拡大図を、(b)はガラス基板および透明電極ヒータの斜視図をそれぞれ示す。
【図8】図7(a)中のVIII−VIII部分を示した断面図である。
【図9】図7(a)中のIX−IX部分を示した断面図である。
【図10】従来の液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 液晶表示装置
10 接続ピン
12 上接続部(上挟持板)
12a ペースト用間隙(ペースト用開口部)
13 下接続部(下挟持板)
13a ペースト用間隙(ペースト用開口部)
18 当接部(挟持部)
21 上側液晶セル
23 上ガラス基板(上側上部基板)
25 上透明電極(上側電極)
26 上液晶層(上側液晶層)
27 下透明電極(上側電極)
28 下ガラス基板(上側下部基板)
29 透明電極ヒータ(表示補助電極)
31 下側液晶セル
33 上ガラス基板(下側上部基板)
35 上透明電極(下側電極)
36 下液晶層(下側液晶層)
37 下透明電極(下側電極)
38 下ガラス基板(下側下部基板)
51 ピン固定樹脂(固定用樹脂)
52 導電ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された一対の上側基板、前記一対の上側基板における互いに対向する面に形成された一対の上側電極、および前記上側電極の間に封入された上側液晶層からなる上側液晶セルと、
互いに平行に配置された一対の下側基板、前記一対の下側基板における互いに対向する面に形成された一対の下側電極、および前記下側電極の間に封入された下側液晶層からなり、前記上側液晶セルの下方に位置した下側液晶セルと、
前記上側電極または前記下側電極と電気接続された接続ピンとを有して構成された液晶表示装置であって、
前記一対の上側基板は、上側に位置した上側上部基板、および前記上側上部基板の下側に位置して上面に前記上側電極が形成された上側接続端部が前記上側上部基板に対して側方に突出して形成された上側下部基板から構成され、
前記一対の下側基板は、下側に位置した下側下部基板、および前記下側下部基板の上側に位置して下面に前記下側電極が形成された下側接続端部が前記下側下部基板に対して前記側方に突出して形成された下側上部基板から構成され、
前記接続ピンは、側面視コの字状の挟持部が形成されて構成されており、
前記接続ピンは、
前記上側接続端部の上面に形成された前記上側電極と前記下側上部基板の下面における前記下側電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、上下に重なって位置した前記上側接続端部および前記下側接続端部を一体として前記挟持部により上下方向に挟んで前記上側電極と前記挟持部とを電気接続可能であり、
前記下側接続端部の下面に形成された前記下側電極と前記上側下部基板の上面における前記上側電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記上側接続端部および前記下側接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記下側電極と前記挟持部とを電気接続可能であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
互いに平行に配置された一対の基板、前記一対の基板における互いに対向する面に形成された一対の表示用電極、および前記表示用電極の間に封入された液晶層からなる液晶セルと、
前記液晶セルの下面に設けられた表示補助電極と、
前記表示用電極または前記表示補助電極と電気接続された接続ピンとを有して構成された液晶表示装置であって、
前記一対の基板は、上側に位置した上部基板、および前記上部基板の下側に位置して上面に前記表示用電極が形成され且つ下面に前記表示補助電極が形成された接続端部が前記上部基板に対して側方に突出して形成された下部基板から構成され、
前記接続ピンは、側面視コの字状の挟持部が形成されて構成されており、
前記接続ピンは、
前記接続端部の上面に形成された前記表示用電極と前記下部基板の下面における前記表示補助電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記表示用電極と前記挟持部とを電気接続可能であり、
前記接続端部の下面に形成された前記表示補助電極と前記下部基板の上面における前記表示用電極を外れた部分とに前記挟持部を当接させるようにして、前記接続端部を前記挟持部により上下方向に挟んで前記表示補助電極と前記挟持部とを電気接続可能であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
前記接続ピンにおける前記挟持部は、板状の上挟持板および前記上挟持板と上下に対向した板状の下挟持板からなり、
前記上挟持板および前記下挟持板には、上下に貫通したペースト用開口部が形成されており、
前記挟持部と前記上側電極、前記下側電極、前記表示用電極または前記表示補助電極とが当接されて電気接続された接続部分に、前記ペースト用開口部に導電性を備えた導電ペーストが塗布され且つ塗布された前記導電ペースト、前記上挟持板および前記下挟持板を覆うように固定用樹脂が塗布されたことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記導電ペーストは、液滴状の前記導電ペーストを吐出可能なペースト吐出装置により吐出されて塗布されたことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記導電ペーストは、紫外線が照射されて硬化される特性を備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145546(P2010−145546A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320267(P2008−320267)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(598097770)テスコム株式会社 (5)
【Fターム(参考)】