説明

液晶表示装置

【課題】表示品位に優れた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、複数の信号線27と、複数の走査線19と、複数の画素13と、を有したアレイ基板1と、分断された複数の分割部41a、41b、41cで構成された対向電極を有した対向基板と、液晶層と、制御部7と、を備えている。制御部7は、1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号を互いに時間差をつけて複数の分割部41a、41b、41cに与えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置として、軽量、小型および高精細な液晶表示装置が開発されている。一般に、液晶表示装置は、アレイ基板と、このアレイ基板に所定の隙間を置いて対向配置された対向基板と、これら両基板間に挟持された液晶層とを有している(例えば、特許文献1参照)。アレイ基板は、ガラス基板と、ガラス基板上に形成されたスイッチング素子と、ガラス基板及びスイッチング素子上に形成された絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、この絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してスイッチング素子に電気的に接続された画素電極とを有している。対向基板は、対向電極を有している。
【0003】
2枚の基板間には、基板間の隙間を一定に保持するため、粒径の均一なプラスティックビーズが散在されている。また、カラー表示する場合、アレイ基板および対向基板の一方の基板には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)からなる着色層を有したカラーフィルタが配置されている。
【0004】
上記のように構成された液晶表示装置において、液晶を劣化させないために、交流化駆動する必要がある。その方法の1つとして、1水平走査期間毎に対向電極の極性を反転する方法がある。これにより、液晶に印加する電圧を交流化して、画像を表示することができる。
【特許文献1】特開平5−107555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記対向電極は大きな負荷である。このため、対向電極を反転駆動させるときのラッシュ電流により、電界が発生してしまう。すると、その電界により、大きなEMI(electromagnetic interference)ノイズが発生してしまう。EMIノイズは、上記反転駆動に悪影響を及ぼすものである。このため、EMIノイズを低減させる技術が望まれている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、表示品位に優れた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る液晶表示装置は、
複数の信号線と、複数の走査線と、前記複数の信号線及び複数の走査線が交差した表示領域内に設けられた複数の画素と、を有したアレイ基板と、
分断された複数の分割部で構成された対向電極を有し、前記アレイ基板に隙間を置いて対向配置された対向基板と、
前記アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層と、
1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号を互いに時間差をつけて前記複数の分割部に与える制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、表示品位に優れた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
図1乃至図6に示すように、液晶表示装置は、アレイ基板1と、このアレイ基板1に対向配置された対向基板2と、これら両基板間に挟持された液晶層3とを備えている。液晶表示装置は、アレイ基板1及び対向基板2が重なった表示領域R1を有している。アレイ基板1は、表示領域R1にマトリクス状に配置された複数の画素13を有している。なお、画素13については後述する。
【0009】
液晶表示装置は、制御部7を備えている。制御部7は、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5及び対向電極駆動回路6を含んでいる。表示領域R1の外側において、ガラス基板10上には、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5及び対向電極駆動回路6が形成されている。走査線駆動回路4は、表示領域R1の外側に延出した複数の走査線19と接続されている。信号線駆動回路5は、表示領域R1の外側に延出した複数の信号線27と接続されている。対向電極駆動回路6は、表示領域R1の外側に設けられた電極及び配線を介して対向基板2の対向電極41と接続されている。
【0010】
アレイ基板1は、透明な絶縁基板として、例えばガラス基板10を備えている。ガラス基板10上にはアンダーコーティング層12が成膜されている。
【0011】
表示領域R1において、ガラス基板10上には、第1方向d1に沿って延出した複数の走査線19及び第1方向に直交した第2方向d2に沿って延出した複数の信号線27が配置されている。隣合う2本の信号線27及び隣合う2本の走査線19で囲まれた各領域には画素13が形成されている。
【0012】
次に、画素13を1つ取り出して説明する。
図2乃至図5に示すように、画素13は、画素電極34及び画素電極に接続されたスイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)14を有している。
【0013】
詳述すると、アンダーコーティング層12上に、チャネル層15が形成されている。チャネル層15は、アンダーコーティング層12上に形成された半導体膜をパターニングすることにより形成されている。この実施の形態において、チャネル層15は、ポリシリコンで形成されている。
【0014】
アンダーコーティング層12及びチャネル層15上に、ゲート絶縁膜18が成膜されている。ゲート絶縁膜18上に、複数の走査線19と、これら走査線の一部を延出した複数のゲート電極20とが形成されている。
【0015】
走査線19及びゲート電極20は、アルミニウムやモリブデン−タングステン等の遮光性を有する低抵抗材料により同時に形成されている。この実施の形態において、走査線19及びゲート電極20は、モリブデン−タングステンで形成されている。各ゲート電極20は、各チャネル層15に重なって形成されている。
【0016】
ゲート絶縁膜18、走査線19及びゲート電極20上に、層間絶縁膜22が形成されている。層間絶縁膜22上には、複数のソース電極26、複数の信号線27及び複数のドレイン電極28が形成されている。
【0017】
ソース電極26及び信号線27は、一体に形成され、互いに電気的に接続されている。ソース電極26は、ゲート絶縁膜18及び層間絶縁膜22の一部を貫通したコンタクトホール23を介してチャネル層15のソース領域RSに電気的に接続されている。ドレイン電極28は、ゲート絶縁膜18及び層間絶縁膜22の一部を貫通したコンタクトホール24を介してチャネル層15のドレイン領域RDに電気的に接続されている。
【0018】
ソース電極26、信号線27及びドレイン電極28は、アルミニウムやモリブデン−タングステン等の低抵抗材料により同時に形成されている。この実施の形態において、ソース電極26、信号線27及びドレイン電極28は、アルミニウムで形成されている。層間絶縁膜22、ソース電極26、信号線27及びドレイン電極28上に、絶縁膜として、透明な樹脂により平坦化膜31が成膜されている。
【0019】
平坦化膜31上には、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明な導電材料により複数の画素電極34が形成されている。画素電極34は、マトリクス状に配置されている。画素電極34は、平坦化膜31に形成されたコンタクトホール(図示せず)を介してドレイン電極28に電気的に接続されている。画素電極34は、隣合う2本の信号線27及び隣合う2本の走査線19に周縁を重ねて形成されている。画素電極34の上には配向膜37が形成されている。
【0020】
上記のように、TFT14及び画素電極34等が形成されたガラス基板10上に、図示しないが複数の柱状スペーサが形成されている。柱状スペーサが形成されたガラス基板10上に、配向膜37が形成されている。
各画素13は、TFT14及び画素電極34を1つずつ有している。
【0021】
次に、対向基板2について説明する。
図1、図2、図5及び図6に示すように、対向基板2は、透明な絶縁基板として、例えばガラス基板40を備えている。ガラス基板40上には、カラーフィルタ50が形成されている。
【0022】
カラーフィルタ50は、複数の赤色の着色層50R、複数の緑色の着色層50G及び複数の青色の着色層50Bを有している。各着色層は、ストライプ状に形成され、信号線27の延出した方向に平行である。各着色層の周縁は、信号線27に重なっている。カラーフィルタ50上には、ITO等の透明な導電材料により対向電極41が形成されている。
【0023】
対向電極41は、分断された複数の分割部で構成されている。この実施の形態において、対向電極41は、第1方向d1に並んだ3つの分割部41a、41b、41cで構成されている。分割部41aは、第1表示領域R2に形成され、複数の画素13に重ねられている。分割部41bは、第2表示領域R3に形成され、複数の画素13に重ねられている。分割部41cは、第3表示領域R4に形成され、複数の画素13に重ねられている。カラーフィルタ50及び対向電極41上に、配向膜43が形成されている。
【0024】
アレイ基板1及び対向基板2は、複数の柱状スペーサにより、所定の隙間を保持して対向配置されている。アレイ基板1及び対向基板2は、表示領域R1外周の両基板間に配置されたシール材60により接合されている。液晶層3は、アレイ基板1、対向基板2及びシール材60で囲まれた領域に形成されている。シール材60の一部には液晶注入口61が形成され、この液晶注入口61は封止材62で封止されている。
【0025】
次に、上述した対向電極駆動回路6について説明する。
図6乃至図8に示すように、対向電極駆動回路6は、遅延回路71b、71c、レベル変換回路72a、72b、72c、増幅回路73a、73b、73cを有している。遅延回路71b、71cは、抵抗及びコンデンサで形成され、入力された信号を遅延させて出力させるものである。ここでは、遅延回路71cは、遅延回路71bより長く遅延させるものである。
【0026】
即ち、順次走査される走査線駆動回路4に近接する第1表示領域R2に対向する分割部41aに対しては、入力された対向電極駆動信号を遅延させることなく直接的に、また、第1表示領域R2に順次隣接配置される第2表示領域R3及び第3表示領域R4に夫々対向する分割部41b、41cに対しては、後述するように遅延回路71b、71cで順次遅延された対向電極駆動信号が供給される。
【0027】
レベル変換回路72a、72b、72cは、直接入力される、もしくは遅延回路71b、71cを介して入力される信号の直流レベルを夫々の分割部41a、41b、41cに応じてレベル変換させるものである。増幅回路73a、73b、73cは、入力される信号を増幅させるものである。
【0028】
レベル変換回路72a及び増幅回路73aは、分割部41aに供給される1水平走査期間毎に極性を反転された入力信号の直流レベル及び振幅を調整された駆動信号Vcom1を分割部41aに与えるものである。遅延回路71b、レベル変換回路72b及び増幅回路73bは、分割部41bに供給される1水平走査期間毎に極性を反転された入力信号の直流レベル及び振幅を分割部41bに対応して調整され所定の遅延時間をもたせた駆動信号Vcom2を分割部41bに与えるものである。駆動信号Vcom2は、分割部41aに与えられる駆動信号Vcom1に時間t1だけ遅れて分割部41bに与えられる。遅延回路71c、レベル変換回路72c及び増幅回路73cは、分割部41cに供給される1水平走査期間毎に極性を反転された入力信号の直流レベル及び振幅を分割部41cに対応して調整され所定の遅延時間をもたせた駆動信号Vcom3を分割部41cに与えるものである。駆動信号Vcom3は、分割部41bに与えられる駆動信号Vcom2に時間t2だけ遅れて分割部41cに与えられる。
【0029】
上記のことから、対向電極駆動回路6は、1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号Vcom1、Vcom2、Vcom3を互いに時間差をつけて分割部41a、41b、41cに与えるものである。また、対向電極駆動回路6は、1水平走査期間毎につける上記時間差の総和(t1+t2)を1μs以内に制御するものである。
なお、信号線駆動回路5は、1水平走査期間毎に、駆動信号Vcom1、Vcom2、Vcom3とは逆の極性の映像信号Vsigを信号線27に与えるものである。
【0030】
以上のように構成された液晶表示装置によれば、対向電極41は、分断された複数の分割部41a、41b、41cで構成されている。対向電極駆動回路6(制御部7)は、1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号Vcom1、Vcom2、Vcom3を互いに時間差をつけて複数の分割部41a、41b、41cに与えるものである。
【0031】
この時間差をつけて分割部41a、41b、41cを駆動することによって、対向電極41の電位を反転させるときのラッシュ電流を低減させることができ、ラッシュ電流によって発生する電界を低減させることができる。このため、大きなEMIノイズを低減させることができる。より詳しくは、10MHz以下のEMIノイズを低減させることができる。これにより、対向電極41の反転駆動に及ぼす影響を抑制することができ、良好な反転駆動を実現することができる。
【0032】
上記したことから、表示品位に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0033】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0034】
例えば、図9に示すように対向電極駆動回路6が構成されていても良い。対向電極駆動回路6は、遅延回路71b、71c、増幅回路としてのバッファ76a、76b、76c及びレベル変換回路72a、72b、72cを有している。対向電極駆動回路6には、1水平走査期間毎に極性が反転した信号が入力される。遅延回路71b、71cは、抵抗74b、74c及びコンデンサ75b、75cで形成されている。この各遅延回路71b、71cを構成している抵抗74b、74c及びコンデンサ75b、75cの各時定数を調整することにより、遅延回路71bの出力には、入力信号に対して、換言すれば駆動信号Vcom1に対して時間τ1だけ遅延された遅延信号が得られる。同様に、遅延回路71cの出力には、遅延回路71bの出力よりも更に時間τ2だけ遅延された、換言すれば駆動信号Vcom1に対して時間τ1+τ2だけ遅延された遅延信号が得られる。
【0035】
この遅延された各遅延信号及び入力信号は、夫々バッファ76a、76b、76cで増幅された後に、各レベル変換回路72a、72b、72cにてレベル調整される。各レベル変換回路72a、72b、72cは、例えば両端に所定のバイアスが印加された分圧抵抗81a、81b、81cの中間点に接続されることによりレベル変換される。このレベル変換回路72a、72b、72cは、各分圧抵抗81a、81b、81cの抵抗値を夫々調整することにより、各分割部41a、41b、41cに応じた電圧レベルに調整される。従って、レベル変換回路72a、72b、72cの各出力には、1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号Vcom1、Vcom2、Vcom3を互いに時間差をつけて分割部41a、41b、41cに与えることができる。
【0036】
この対向電極駆動回路6の構成では、バッファ76a、76b、76cを前段に、レベル変換回路72a、72b、72cを後段に配置しているが、この配置順序は上述の実施の形態の説明のように入れ換えて配置しても何等差し支えない。
【0037】
対向電極駆動回路6は、遅延回路71b、71c無しに構成されていても良い。この場合、対向電極駆動回路6から分割部41a、41b、41cまでの配線抵抗を互いに異ならせれば良い。この配線抵抗を異ならせるための手段としては、配線パターンの幅や長さを相違させることにより達成できる。これにより、入力された信号を遅延させても良い。
【0038】
分割部41a、41b、41cに駆動信号を与える順番は制限されるものではなく、分割部41a、41b、41cには、互いに時間差をつけて駆動信号が与えられるものであれば良い。
【0039】
対向電極41を分断する際、分断する方向等は制限されるものではなく、任意に分断可能である。また、分断された複数の分割部で構成されていれば良い。この実施の形態において、対向電極41は、2つの分割部で構成されても、4つ以上の分割部で構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置の斜視図。
【図2】図1に示したアレイ基板の平面図であり、分割部の接続関係も併せて示した図。
【図3】図1及び図2に示したアレイ基板の一部を示す拡大平面図
【図4】図3に示したアレイ基板の等価回路図。
【図5】上記液晶表示装置の一部を示す拡大断面図。
【図6】上記液晶表示装置の対向基板を示す平面図。
【図7】上記液晶表示装置の対向電極駆動回路を示す概略図。
【図8】映像信号及び駆動信号を示すタイミングチャート。
【図9】上記対向電極駆動回路の変形例を示す概略図。
【符号の説明】
【0041】
1…アレイ基板、2…対向基板、3…液晶層、6…対向電極駆動回路、7…制御部、10…ガラス基板、13…画素、14…TFT、19…走査線、27…信号線、34…画素電極、40…ガラス基板、41…対向電極、41a,41b,41c…分割部、50…カラーフィルタ、71b,71c…遅延回路、72a,72b,72c…レベル変換回路、73a,73b,73c…増幅回路、74b,74c…抵抗、75b,75c…コンデンサ、R1…表示領域、R2…第1表示領域、R3…第2表示領域、R4…第3表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号線と、複数の走査線と、前記複数の信号線及び複数の走査線が交差した表示領域内に設けられた複数の画素と、を有したアレイ基板と、
分断された複数の分割部で構成された対向電極を有し、前記アレイ基板に隙間を置いて対向配置された対向基板と、
前記アレイ基板及び対向基板間に挟持された液晶層と、
1水平走査期間毎に極性を反転させた駆動信号を互いに時間差をつけて前記複数の分割部に与える制御部と、を備えている液晶表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、1水平走査期間毎につける前記時間差の総和を1μs以内に制御する請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate