説明

液晶表示装置

【課題】バックライト装置の光源各々の輝度を中央部から外周に向かって徐々に低下させる構成において画面全体の輝度ムラを抑制しつつ極力省電力化を図ることのできる液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】液晶パネルの垂直方向や水平方向に配列された複数の光源により該液晶パネルを背後から照明する際に,光源各々の輝度を液晶パネルの中央部から外周に向かって徐々に低下するように傾斜させる構成において,液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量が小さいほど輝度傾斜が小さく(図3(b)参照),該変化量が大きいほど輝度傾斜が大きくなるように光源各々の輝度を制御する(図3(c)参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶パネルの背面側に垂直方向や水平方向に配列された複数の光源によって該液晶パネルを背後から照明するバックライト装置を有する液晶表示装置に関し,特に,前記光源各々の輝度を傾斜させる液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビジョン受像機や液晶モニタ装置などの液晶表示装置は,液晶パネルを背後から照明するバックライト装置を備えている。このバックライト装置は,液晶パネルの垂直方向や水平方向に配列された複数の光源を有している。なお,光源としては冷陰極管やLEDが用いられる。
従来から,液晶表示装置において,バックライト装置の光源各々の輝度を,液晶パネルの中央部から外周に向って徐々に低下するように傾斜させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
ところで,近年の液晶表示装置では省電力性能が重要視されつつあるため,該液晶表示装置における消費電力の大部分を占めるバックライト装置の省電力化を図ることが望ましい。ここで,前述したようにバックライト装置の光源各々の輝度を中央部から外周に向かって徐々に低下させることで,全体を中央部と同様の輝度で発光させる場合に比べて消費電力を省減することができる。そして,光源各々の輝度が低下する傾斜が大きいほど,外周に近い光源の消費電力が小さくなるため,省電力効果が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−75216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,バックライト装置において光源各々の輝度の傾斜が大きくなると,その光源の輝度の違いが輝度ムラとしてユーザに認識され,表示品位が悪化するおそれがある。特に,液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量が大きい場合には,光源の輝度の違いがわかりづらいが,その1フレームの画像がベタ画像のように全体的な階調の変化量が小さいものである場合には,光源の輝度の違いによる輝度ムラが目立つことになり,表示品位が悪化する。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,バックライト装置の光源各々の輝度を傾斜させる構成において画面全体の輝度ムラを抑制しつつ極力省電力化を図ることのできる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,液晶パネルの垂直方向や水平方向に配列された複数の光源により該液晶パネルを背後から照明するバックライト装置と,前記光源各々の輝度を傾斜させる輝度傾斜手段とを備えてなる液晶表示装置に適用されるものであって,前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの表示映像の特徴量に応じて前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものであることを特徴として構成される。ここに,前記輝度傾斜手段は,例えば前記液晶パネルの中央部から外周に向かって徐々に低下するように前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものである。
これにより,前記液晶パネルの表示映像の特徴量に応じて前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを調整することができるため,該表示映像における輝度ムラを防止することができる範囲で省電力化を図ることが可能となる。
例えば,前記特徴量は,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量であることが考えられる。そして,前記輝度傾斜手段は,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量が小さいほど前記傾斜が小さく,該変化量が大きいほど前記傾斜が大きくなるように前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものであることが考えられる。これにより,1フレームにおける変化量が大きく輝度ムラが見えづらい場合には,前記傾斜を大きくして省電力効果を高めることができ,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量が小さく輝度ムラが目立つ場合には,前記傾斜を小さくして輝度ムラを防止することができる。
具体的には,前記液晶パネルの全体や一部の領域に表示される映像の1フレーム毎の映像信号の度数分布(色分布など)を示すヒストグラムを取得し,該ヒストグラムに基づいて前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量を判断することが考えられる。特に,前記液晶パネルの全体及び一部の領域についてヒストグラムを取得して,前記液晶パネルの全体及び一部の領域のヒストグラムに基づいて前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量を判断することが望ましい。
本発明のより具体的な構成としては,前記光源各々の輝度を異なる傾斜で変化させるために予め設定された複数の輝度傾斜フィルタを記憶するフィルタ記憶手段を更に備えてなり,前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量に応じて,前記フィルタ記憶手段に記憶された前記輝度傾斜フィルタのいずれかを選択し,該輝度傾斜フィルタを用いて前記光源各々の輝度を変化させるものであることが考えられる。
さらに,前記バックライト装置が,前記液晶パネルの背後にマトリクス状に配置された複数のLEDを有するものであって,前記輝度傾斜手段が,前記LED各々の輝度を垂直方向及び水平方向に傾斜させるものであることが考えられる。これにより,前記バックライト装置の中央部から左右方向や上下方向に離れるに連れてLEDの輝度を低くすることができるため,高い省電力効果を得ることができる。
なお,前記バックライト装置では隣接する光源が相互に輝度を補っているため,前記液晶パネルの中央部の周囲の光源の輝度を低下させると,該中央部の表示輝度が低下することになる。そこで,前記輝度傾斜手段は,前記光源各々の輝度傾斜の前後において前記液晶パネルの中央部の輝度を一定に維持するべく,該中央部の周囲の位置に対応する前記光源の輝度の低下量が大きいほど該中央部に対応する前記光源の輝度が高くなるように前記光源各々の輝度を制御するものであることが望ましい。これにより,前記中央部の輝度を一定に維持しつつ前記バックライト装置の輝度に傾斜をつけることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,前記液晶パネルの表示映像の特徴量に応じて前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを調整することができるため,該表示映像における輝度ムラを防止することができる範囲で省電力化を図ることが可能となる。特に,前記液晶パネルの中央部の周囲の位置に対応する前記光源の輝度の低下量が大きいほど該中央部に対応する前記光源の輝度が高くなるように前記光源各々の輝度を制御するものであることが望ましい。これにより,前記中央部の輝度を一定に維持しつつ前記バックライト装置の輝度に傾斜をつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置に設けられたバックライト装置の一例を示す模式図。
【図3】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置に設けられたバックライト装置による液晶パネルの表示輝度の傾斜の一例を示す模式図。
【図4】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置で実行されるバックライト制御処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置で実行されるバックライト制御処理で利用されるヒストグラムの一例を説明するための図。
【図6】実施例に係る液晶表示装置で実行されるバックライト制御処理で利用されるヒストグラムの一例を説明するための図。
【図7】実施例に係る液晶表示装置で実行されるバックライト制御処理で利用されるヒストグラムの一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図1に示すように,本発明の実施の形態に係る液晶表示装置Xは,表示制御部11,液晶パネル21,液晶駆動部22,バックライト装置31,バックライト制御部32などを有している。
前記液晶表示装置Xは,例えば液晶テレビジョン受像機や液晶モニタ装置などである。なお,本実施の形態では,一般的な液晶テレビジョン受像機や液晶モニタ装置が備える本発明に直接影響しない他の構成要素の説明を省略する。
【0009】
前記表示制御部11は,MPUやRAM,ROMなどの制御機器を有しており,前記MPUが前記ROMに記憶された所定の制御プログラムに従って処理を実行することにより,前記液晶駆動部22や前記バックライト制御部32に制御指示を与え,前記液晶パネル21や前記バックライト装置31の動作を制御する。
具体的に,前記表示制御部11は,不図示のアンテナによって受信されるテレビジョン放送や不図示の外部入力端子から入力される映像コンテンツなどに含まれた映像信号を受信し,該映像信号に基づいて垂直同期信号や水平同期信号などを生成する。そして,前記表示制御部11は,前記映像信号や前記垂直同期信号,前記水平同期信号を前記液晶駆動部22に入力する。
ここで,前記表示制御部11は,テレビジョン放送の映像信号の周波数である60Hzの倍速の120Hzの駆動周波数の垂直同期信号を生成する。そのため,前記表示制御部11は,前記映像信号における1フレームの画像を前記液晶駆動部22に2回ずつ出力し,或いは前記映像信号における連続する2フレームから補間画像を生成してそのフレーム間に挿入して前記液晶駆動部22に出力する。
【0010】
また,前記表示制御部11は,入力される映像信号に基づいて輝度レベルごとの画素数をカウントして輝度ヒストグラムを算出し,その輝度ヒストグラムに基づいて映像信号や前記バックライト装置31の光度を調整する。
具体的に,前記表示制御部11は,映像信号に基づく映像を前記液晶パネル21に表示させるために必要な表示輝度を実現し得る範囲で極力前記バックライト装置31の光度を低下させるように,前記バックライト装置31に設けられた後述のLED31a各々に対応する輝度信号を調整する。これにより,前記バックライト装置31の光度が極力下げられるため省電力化が図られる。
そして,前記表示制御部11は,そのバックライト装置31の光度に基づいて映像信号を補正する。即ち,前記表示制御部11は,前記バックライト装置31の光度を低下させる場合には,前記映像信号の階調信号を元の映像信号よりも高い値となるように補正する。
これにより,前記バックライト装置31の光度が極力低いものとなり,該バックライト装置31における消費電力をできるだけ省減することができる。
【0011】
前記液晶パネル21は,液晶層と該液晶層に走査信号及びデータ信号を印加するための走査電極及びデータ電極とによって形成され,印加電圧により透過率が変化する複数の液晶素子を有する従来周知のアクティブマトリクス型の液晶パネルである。
前記液晶駆動部22は,前記表示制御部11から入力される映像信号と垂直同期信号及び水平同期信号とに基づいて,前記液晶パネル21の走査電極(ゲート電極)及びデータ電極(ソース電極)を駆動させる。具体的に,前記液晶駆動部22は,垂直同期信号の受信後,1ライン目に対応する水平同期信号に応じて走査電極にゲート信号を出力すると共に,1ライン目に対応する映像信号をデータ電極に順次出力する。これにより,1ライン目の画像表示が行われる。その後,前記液晶駆動部22は,2ライン目に対応する水平同期信号が入力されると,2ライン目の走査電極にゲート信号を出力し,2ライン目に対応する映像信号をデータ電極に順次出力する。その後も同様の処理が繰り返されることにより前記液晶パネル21の全画面の画像表示が行われる。
【0012】
前記バックライト装置31は,前記液晶パネル21の背面側に配列された複数の光源により該液晶パネル21を背後から照明するものである。ここに,図2は,前記バックライト装置31の構造の一例を示す模式図である。
図2に示すように,前記バックライト装置31は,前記液晶パネル21の背後に,垂直方向及び水平方向のマトリクス状に配列された複数のLED31aを有している。
前記バックライト制御部32は,前記表示制御部11から入力される輝度信号に応じて,前記バックライト装置31のLED31a各々を個別に明滅させる。このとき,前記LED31aの発光輝度は,前記輝度信号のデューティ比によって定まる供給電力により変化する。もちろん,所定数の前記LED31aごとにグループ化し,そのグループ毎に前記LED31aを明滅させる構成であってもよい。なお,前記LED31aの数は図2に示すもの限らず,前記液晶パネル21のサイズに応じて適宜設計変更すればよい。
【0013】
ところで,前記バックライト装置31においても,前述したように前記LED31a各々の輝度を中央部から外周に向けて徐々に低下するように傾斜させれば,省電力化を図ることが可能である。例えば,前記バックライト制御部32において,前記LED31a各々の輝度信号に対し,中央部から外周に向けて減衰率が大きくなるように予め設定された輝度傾斜フィルタを施すことによって,前記LED31a各々の輝度に傾斜をつけることが可能である。
但し,前記バックライト装置31において輝度を傾斜させるとき,その傾斜の傾きが大きく,且つ前記液晶パネル21の表示映像がベタ画像のように1フレームにおける変化量(表示映像の特徴量の一例)が小さいものであれば,その輝度の傾斜が目立つため,輝度ムラとなってユーザに認識されやすくなり,表示品位が悪化する。一方,前記バックライト装置31の輝度の傾斜が小さい場合や,前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量が大きい場合には,その輝度の傾斜が目立ちにくくなるため,ユーザに輝度ムラとして認識されにくく,表示品位の悪化は抑えられる。
【0014】
そこで,前記表示制御部11は,後述のバックライト制御処理(図4参照)を実行することにより,前記バックライト装置31のLED31a各々の輝度を中央部から外周に向けて徐々に低下するように傾斜させると共に,その輝度傾斜の程度を前記液晶パネル21の表示映像に応じて変更する。具体的に,前記表示制御部11は,前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量が小さいほど前記傾斜が小さく,該変化量が大きいほど前記傾斜が大きくなるように前記LED31a各々の輝度を制御する。ここに,係る処理を実行するときの前記表示制御部11が輝度傾斜手段に相当する。
本実施の形態では,前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を変更するための手法として,前記バックライト制御部32において,前記バックライト装置31のLED31a各々の輝度信号のデューティ比を,輝度傾斜の程度が異なる輝度傾斜フィルタF1,F2のいずれかを用いて変更する場合を例に挙げて説明する。前記輝度傾斜フィルタF1,F2は前記バックライト制御部32や前記表示制御部11などに設けられた記憶メモリ(フィルタ記憶手段の一例)に予め記憶されている。もちろん,より多数の輝度傾斜フィルタを記憶しておき,その輝度傾斜フィルタを選択的に用いてもよい。また,所定の演算式により前記LED31a各々の輝度を傾斜させること等も他の実施例として考えられる。
【0015】
ここに,図3(b),(c)は,図3(a)に示すように前記輝度傾斜フィルタF1,F2を施さないときの前記液晶パネル21の表示輝度を100(%)として,前記輝度傾斜フィルタF1を施した場合,前記輝度傾斜フィルタF2を施した場合の前記液晶パネル21の表示輝度の傾斜結果を示したものである。なお,図3は,前記液晶パネル21の表示輝度を,水平方向の所定間隔ごとの領域H1〜H9,垂直方向の所定間隔ごとの領域V1〜V5に分割して模式的に示したものである。
図3(b)に示すように,前記輝度傾斜フィルタF1は,前記液晶パネル21の表示映像の中央部の一部の輝度は100(%)であるが,その外周部の輝度が垂直方向及び水平方向の四隅に向かって徐々に低下し,その四隅の端部では輝度が約93(%)まで低下するように前記LED31a各々に対応する輝度信号のデューティ比を傾斜させるものである。
また,図3(c)に示すように,前記輝度傾斜フィルタF2は,前記液晶パネル21の表示映像の中央部のごく一部の輝度は100(%)であるが,その外周部の輝度が垂直方向及び水平方向の四隅に向かって前記輝度傾斜フィルタF1よりも大きな傾きで徐々に低下し,その四隅の端部で約78(%)まで低下するように前記LED31a各々に対応する輝度信号のデューティ比を傾斜させるものである。
但し,一般に,多数の前記LED31aを有する所謂直下型LEDバックライトである前記バックライト装置31では,隣接する前記LED31a各々が相互に輝度を補うこと(輝度アシスト)により前記液晶パネル21の表示輝度が定まる。そのため,前記輝度傾斜フィルタF1,F2によって前記LED31a各々の輝度に傾斜をつける場合に,中央部の周囲の輝度だけを低下させると該中央部の輝度もそれに伴って若干低下することとなる。そこで,前記輝度傾斜フィルタF1,F2は,前記液晶パネル21の中央部の表示輝度を一定(例えば100(%))に維持するべく,該中央部の周囲の位置に対応する前記LED31aの輝度の低下量が大きいほど,該中央部の位置に対応する前記LED31aの輝度が大きくなるように前記LED31a各々に対応する輝度信号のデューティ比を補正するように予め設定されている。
【0016】
以下,図4フローチャートに従って,前記表示制御部11により実行されるバックライト制御処理の手順の一例を説明する。ここに,図4におけるS1,S2,…は処理手順(ステップ)番号を表す。
当該バックライト制御処理は,前記液晶表示装置Xにおいて前記液晶パネル21への映像表示が行われる場合に,前記表示制御部11によって随時実行される。また,ユーザによるリモコン操作などに応じて前記表示制御部11が当該バックライト制御処理の実行の有無(輝度傾斜の有無)を切り換えることが可能な構成も他の実施例として考えられる。
【0017】
<ステップS1>
まず,ステップS1では,前記表示制御部11は,前記液晶パネル21の全体に表示される映像の1フレームにおける映像信号の度数分布であるヒストグラム(色ヒストグラム等)を取得する。例えば,前記ヒストグラムは,1フレームにおける所定範囲の階調(色)成分ごとの画素数を示すものである。具体的には,各画素の階調が256階調で表現される場合,16階調毎や32階調毎の画素数をカウントすることが考えられる。ここに,係る処理を実行するときの前記表示制御部11がヒストグラム取得手段に相当する。
ここで,図5(a)は表示映像の1フレームの変化量が小さい場合のヒストグラム,図5(b)は表示映像の1フレームの変化量が大きい場合のヒストグラムの一例を示している。
図5(a)に示すように1フレームに含まれた16階調毎の画素数が偏っている場合には,その1フレームの画像がベタ画像に近いものであって変化量が小さいと判断し,図5(b)に示すように1フレームに含まれた16階調毎の画素数が全体的に分散している場合には,その1フレームにおける画像の変化量が大きいと判断することが可能である。
【0018】
<ステップS2〜S3>
そして,ステップS2〜S3において,前記表示制御部11は,前記ステップS1で取得されたヒストグラムに基づいて前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量の程度を判断し,処理を分岐する。
具体的に,前記表示制御部11は,1フレームに含まれた16階調毎の画素数のいずれかの値が,予め設定された第1の閾値K1(%)以上である場合(例えば図5(a)参照),即ち表示映像の1フレームにおける変化量が小さい場合には(S2のYes側),処理をステップS21に移行させる。
また,前記表示制御部11は,1フレームに含まれた16階調毎の画素数の全ての値が前記第1の閾値K1(%)未満である場合(例えば図5(b)参照),即ち表示映像の1フレームにおける変化量が大きい場合には(S2のNo側),処理をステップS3に移行させる。
なお,本実施の形態では,表示映像の1フレームの画像に含まれた全画素の階調変化量を表示映像の特徴量として利用する場合を例に挙げて説明するが,表示映像における輝度ムラが目立ちやすいか否かを判断することのできる他の指標を表示映像の特徴量として利用することも考えられる。
【0019】
<ステップS21>
ステップS21では,前記表示制御部11は,前記バックライト装置31に対し,前記輝度傾斜フィルタF1,F2を用いることなく,そのままの輝度で前記LED31a各々を発光させるように制御指示を与える。これにより,前記液晶パネル21の表示映像における輝度ムラが防止される。
【0020】
<ステップS3>
一方,ステップS3では,前記表示制御部11は,1フレームに含まれた16階調毎の画素数のいずれかの値が前記第1の閾値K1よりも小さい予め設定された第2の閾値K2(%)以上である場合,即ち表示映像の1フレームにおける変化量が比較的小さい場合には(S3のYes側),処理をステップS31に移行させ,前記第2の閾値K2(%)未満である場合,即ち表示映像の1フレームにおける変化量が比較的大きい場合には(S3のNo側),処理をステップS32に移行させる。
【0021】
<ステップS31>
ステップS31では,前記表示制御部11は,表示映像の1フレームにおける変化量が比較的小さいことに応じて前記輝度傾斜フィルタF1を選択し,前記バックライト制御部32に対し,前記輝度傾斜フィルタF1を用いて前記LED31a各々の輝度を変換させるように制御指示を与える。
この場合,前記LED31a各々の輝度は,前記バックライト制御部32において前記輝度傾斜フィルタF1によってその一部が減衰される。これにより,例えば図3(b)に示したように,前記LED31a各々の輝度が中央部から外周部に向けて傾斜することとなり,更なる省電力化を図ることができる。さらに,この場合には,表示映像の1フレームにおける変化量がある程度大きいため,前記LED31a各々の輝度に傾斜をつけても,前記液晶パネル21の表示映像における輝度ムラはユーザに認識されにくく,表示品位の悪化は抑えられる。
さらに,前記表示制御部11が,前記輝度傾斜フィルタF1を用いて前記LED31a各々の輝度を調整することで,前記液晶パネル21の中央部の周囲の位置に対応する前記LED31aの輝度が低下するが,その輝度の低下による該液晶パネル21の中央部の表示輝度の低下を相殺するように,前記液晶パネル21の中央部に位置する前記LED31aの輝度が高く調整されるため,該液晶パネル21の中央部の表示輝度が一定(例えば100(%))に維持される(図3(b)参照)。
【0022】
<ステップS32>
一方,ステップS32では,前記表示制御部11は,表示映像の1フレームにおける変化量が比較的大きいことに応じて,前記輝度傾斜フィルタF1よりも輝度傾斜が急となる前記輝度傾斜フィルタF2を選択し,前記バックライト制御部32に対し,前記輝度傾斜フィルタF2を用いて前記LED31a各々の輝度を変換させるように制御指示を与える。
この場合,前記LED31a各々の輝度は,前記バックライト制御部32において前記輝度傾斜フィルタF2によってその一部が減衰される。これにより,例えば図3(c)に示したように,前記LED31a各々の輝度が,中央部から外周部に向けて図3(b)に示した場合よりも大きな傾きで傾斜することとなるため,前記輝度傾斜フィルタF1を用いる場合に比べて更に省電力化を図ることができる。しかも,この場合には,表示映像の1フレームにおける変化量が十分に大きいため,前記LED31a各々の輝度に急な傾斜をつけても,前記液晶パネル21の表示映像における輝度ムラはユーザに認識されにくく,表示品位の悪化は抑えられる。
さらに,前記表示制御部11が,前記輝度傾斜フィルタF2を用いて前記LED31a各々の輝度を調整することで,前記液晶パネル21の中央部の周囲の位置に対応する前記LED31aの輝度が低下するが,その輝度の低下による該液晶パネル21の中央部の表示輝度の低下を相殺するように,前記液晶パネル21の中央部に位置する前記LED31aの輝度が高く調整されるため,該液晶パネル21の中央部の表示輝度が一定(例えば100(%))に維持される(図3(c)参照)。
【0023】
以上,説明したように,前記液晶表示装置Xでは,前記表示制御部11が前記バックライト制御処理(図4参照)を実行することにより,前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量が大きく輝度ムラが見えづらい場合には,前記LED31a各々の輝度の傾斜を大きくして省電力効果を高めることができ,前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量が小さく輝度ムラが目立つ場合には,前記LED31a各々の輝度の傾斜を小さくして輝度ムラを防止することができる範囲で省電力化を図ることが可能となる。
また,前記表示制御部11は,前記輝度傾斜フィルタF1,F2を用いることで,前記液晶パネル21の中央部の周囲の位置に対応する前記LED31aの輝度の低下量が大きいほど該中央部に対応する前記LED31aの輝度が高くなるように前記LED31a各々の輝度を制御することになるため,前記輝度傾斜フィルタF1,F2が施される前後において前記液晶パネル21の中央部の表示輝度を一定に維持することが可能である。
なお,本実施の形態では,前記輝度傾斜フィルタF1,F2が,前記バックライト装置31においてLED31a各々の輝度を前記液晶パネル21の垂直方向及び水平方向の両方に傾斜させる場合を例に挙げて説明したが,これに限らずいずれか一方向にのみ傾斜させることも他の実施例として考えられる。従って,一方向にのみ傾斜させる場合には,前記バックライト装置31のLED31aに代えて,垂直方向又は水平方向に配列された複数の冷陰極管(蛍光管)を光源として用いることも可能である。
【実施例】
【0024】
前記実施の形態では,前記液晶パネル21の表示映像の1フレーム全体について算出したヒストグラム(図5参照)に応じて,前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を選択する手法について説明した。本実施例では前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を選択する手法の他の例について説明する。
一般に,前記液晶表示装置Xで映像を視聴するユーザの目につきやすいのは前記液晶パネル21の中央部である。そこで,前記表示制御部11が,前記バックライト制御処理において,前記液晶パネル21の表示映像の1フレーム全体及び中央部の所定領域それぞれのヒストグラムを取得し(S1),その二つのヒストグラムに基づいて前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量を判断することが考えられる(S2〜S3)。
【0025】
ここに,図6,図7それぞれは,(a)が前記液晶パネル21の表示映像の1フレーム全体,(b)が前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける中央部の所定領域のみを対象として算出されたヒストグラムの一例を示している。
図6に示すように,前記液晶パネル21の表示映像の1フレーム全体では変化量が小さい場合(図6(a))であっても,中央部では変化量が大きい場合(図6(b))がある。この場合には,ユーザの目に付きやすい中央部の変化量が大きいため,前記バックライト装置31における輝度傾斜を大きくしても,ユーザは輝度ムラを感じにくい。また,例えば映画などのようにアスペクト比の違いにより,前記液晶パネル21の表示映像の上下又は左右に黒帯部が生じている可能性もある。
そのため,このような場合,前記表示制御部11は,中央部の変化量の程度を優先させ,該中央部の変化量が大きいことに応じて前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を大きくすることが考えられる。
一方,図7に示すように,前記液晶パネル21の表示映像の1フレーム全体では変化量が大きいが(図7(a)),中央部では変化量が小さい場合(図7(b))も考えられる。この場合には,ユーザの目に付きやすい中央部の変化量が小さいため,前記バックライト装置31における輝度傾斜を大きくすると,ユーザが輝度ムラを感じやすい。
そのため,このような場合,前記表示制御部11は,中央部の変化量の程度を優先させ,該中央部の変化量が小さいことに応じて,前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を小さくすることが考えられる。
なお,その他,前記液晶パネル21の表示映像の中央部の領域のみを対象としてヒストグラムを算出し,該ヒストグラムに基づいて前記液晶パネル21の表示映像の1フレームにおける変化量を判断し,前記バックライト装置31における輝度傾斜の程度を選択することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は,液晶テレビジョン受像機や液晶モニタ装置などの液晶表示装置への利用が可能である。
【符号の説明】
【0027】
11:表示制御部
21:液晶パネル
22:液晶駆動部
31:バックライト装置
31a:LED(光源の一例)
32:バックライト制御部
S1,S2,…:処理手順(ステップ)番号
X:液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルの垂直方向及び/又は水平方向に配列された複数の光源により該液晶パネルを背後から照明するバックライト装置と,前記光源各々の輝度を傾斜させる輝度傾斜手段とを備えてなる液晶表示装置であって,
前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの表示映像の特徴量に応じて前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量が小さいほど前記傾斜が小さく,該変化量が大きいほど前記傾斜が大きくなるように前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものである請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの中央部から外周に向かって徐々に低下するように前記光源各々の輝度の傾斜の大きさを制御するものである請求項1又は2のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルの全体及び/又は一部の領域に表示される映像の1フレーム毎の映像信号の度数分布を示すヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段を更に備えてなり,
前記輝度傾斜手段が,前記ヒストグラム取得手段により取得されるヒストグラムに基づいて前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量を判断するものである請求項2又は3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記ヒストグラム取得手段が,前記液晶パネルの全体及び一部の領域についてヒストグラムを取得するものであって,
前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの全体及び一部の領域のヒストグラムに基づいて前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量を判断するものである請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記光源各々の輝度を異なる傾斜で変化させるために予め設定された複数の輝度傾斜フィルタを記憶するフィルタ記憶手段を更に備えてなり,
前記輝度傾斜手段が,前記液晶パネルの表示映像の1フレームにおける変化量に応じて,前記フィルタ記憶手段に記憶された前記輝度傾斜フィルタのいずれかを選択し,該輝度傾斜フィルタを用いて前記光源各々の輝度を変化させるものである請求項2〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記バックライト装置が,前記液晶パネルの背後にマトリクス状に配置された複数のLEDを有するものであって,
前記輝度傾斜手段が,前記LED各々の輝度を垂直方向及び水平方向に傾斜させるものである請求項1〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記輝度傾斜手段が,前記光源各々の輝度傾斜の前後において前記液晶パネルの中央部の輝度を一定に維持するべく,該中央部の周囲の位置に対応する前記光源の輝度の低下量が大きいほど該中央部に対応する前記光源の輝度が高くなるように前記光源各々の輝度を制御するものである請求項1〜7のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−242690(P2011−242690A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116539(P2010−116539)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】