説明

液晶表示駆動用半導体集積回路

【課題】使用する液晶表示装置の仕様に応じた駆動条件等の設定を容易に行なうことができる液晶表示駆動用半導体集積回路(液晶コントロールドライバIC)を実現する。
【解決手段】液晶表示装置(300)を表示駆動する半導体集積回路化された液晶表示駆動用半導体集積回路(200)に、データを電気的に書き込み可能な不揮発性メモリ回路(EPROM)またはデータを電気的に書き込み消去可能な不揮発性メモリ回路(EEPROM)を内蔵させ該メモリ回路(250)に設定情報を格納させる。これとともに、メモリ回路は他の回路を構成する素子を形成する半導体製造プロセスと同一の工程によって形成することが可能な通常の素子で構成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置を駆動する液晶表示駆動用半導体集積回路(液晶コントロールドライバIC)に関し、例えば使用する液晶表示装置の特性や仕様を不揮発的に設定する手段を有する液晶コントロールドライバICに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話器やPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯用電子機器の表示装置としては、一般に複数の表示画素が例えばマトリックス状に2次元配列されたドットマトリックス型液晶パネルが用いられている。そして、機器内部には、この液晶パネルの表示制御を行なう半導体集積回路化された表示制御装置(液晶コントローラIC)や液晶パネルを駆動するドライバ回路もしくはそのようなドライバ回路を内蔵した液晶表示駆動装置(液晶コントロールドライバIC)が搭載されている。
【0003】
ところで、液晶表示装置は、使用する液晶の種類や駆動方式によって、ガンマ特性や駆動電圧、動作クロックの周波数など仕様が異なっているとともに、製造ばらつきによる特性の変動がある。そこで、液晶表示駆動装置を提供するメーカは、仕様の異なる液晶表示装置や製造ばらつきのある液晶表示装置に対しても適用できるように液晶表示駆動装置を構成して、装置の汎用性を高め、製造コストを下げるような工夫をしている。
【0004】
従来、仕様が異なる液晶表示装置であっても駆動できるようにするための対策として、液晶表示駆動装置の内部にレジスタを設けておく。これとともに、外部にEPROMのような不揮発性メモリを設けておいて、電源投入時の初期設定等で不揮発性メモリから内部のレジスタに駆動条件等の設定情報を転送する方式が実用化されている。また、液晶表示駆動装置の内部にヒューズなどを有する設定回路を設けておいて、適用する液晶表示装置が決まった時点で液晶表示装置の仕様に応じてヒューズを切断することによって設定を行なう方式も提案されている。ヒューズで液晶駆動装置の動作特性を調整するようにした発明としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−148064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の駆動条件等の設定方式のうち、外部ROMからレジスタへ情報を設定する方式は、電源投入時ごとに設定を行なわなくてはならないため、CPUの負担が重いとともにシステムの立ち上がりが遅くなるという欠点がある。また、ヒューズを用いる方式は、一旦設定を行なうと変更することができないため、設定後に使用する液晶表示装置またはその仕様に変更があると対応できないとともにユーザ側で設定を行なえないため使い勝手が悪いという欠点がある。
【0007】
さらに、製造ばらつきで回路等の特性が所望の値からずれた場合に、抵抗、容量など外付け素子の抵抗値や容量値を設定して回路の特性のずれを調整できるようにすることが一般に行なわれている。また、液晶表示装置や液晶駆動装置では、保護用のダイオードや昇圧用のキャパシタなどに外付け素子を用い、これらの外付け素子として用い、液晶ドライバICとともにフレキシブル基板などに実装することが行なわれている。そのため、外付け部品点数が比較的多く装置の小型化を困難であるとともに、外付け素子によって液晶ドライバICの外部端子数が多くなってチップサイズが大きくなるという欠点があった。
【0008】
この発明の目的は、使用する液晶表示装置の仕様に応じた駆動条件等の設定を容易に行なうことができる使い勝手のよい液晶表示駆動用半導体集積回路を提供することにある。
【0009】
この発明の他の目的は、製造ばらつきで液晶表示装置や液晶駆動用半導体集積回路の特性が所望の値からずれたとしても調整することができ、しかも外付け部品が少なくチップサイズも小さくすることが可能な液晶表示駆動用半導体集積回路を提供することにある。
【0010】
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添附図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を説明すれば、下記のとおりである。
【0012】
すなわち、液晶表示装置を表示駆動する半導体集積回路化された液晶表示駆動用半導体集積回路に、データを電気的に書き込み可能な不揮発性メモリ回路(EPROM)またはデータを電気的に書き込み消去可能な不揮発性メモリ回路(EEPROM)を内蔵させ該メモリ回路に設定情報を格納させる。これとともに、メモリ回路は他の回路を構成する素子を形成する半導体製造プロセスと同一の工程によって形成することが可能な通常の素子で構成するようにしたものである。
【0013】
不揮発性の内蔵メモリ回路を液晶表示駆動用半導体集積回路に持たせることによって、外付けROMとレジスタを使用する方式のように電源投入時に毎回設定情報を読み込む必要がなくなるため、CPUの負担が軽くなるとともにシステムの立ち上がりが速くなるという利点がある。特に携帯電話等に適用される液晶表示装置の立ち上げ時にリセット動作を行う場合には、携帯電話の電源立ち上げ時、及びスタンバイ状態からアクティブ状態になる時に液晶表示装置のリセット動作を行う必要がある場合もある。このような場合、マイクロプロセッサは様々なデバイス(RFモジュール、電源回路、メモリ、液晶表示装置の駆動制御用の半導体回路等)に初期値を設定する必要があり、マイクロプロセッサの動作負担は重い。そのため、液晶表示駆動用半導体集積回路における電源投入時の設定を速くすることは、CPUの負担を軽くしシステムの立ち上がりを速くする上で極めて有効である。
【0014】
また、不揮発性の内蔵メモリ回路を設けることによって、当該チップあるいはチップを含む液晶表示装置の個別識別情報(チップIDまたはモジュールID)を書き込んでおくことが可能になる。そのため、かかる不揮発性メモリ回路を内蔵した半導体集積回路を用いて液晶表示装置を構成するユーザなどにとっては、このIDを活用することにより、さまざまな管理が可能になるという利点が生まれる。なお、IDは、他の設定情報を書き込んだときに生じる余りの領域を利用して記憶させるようにすることもできる。
【0015】
ここで、他の回路を構成する素子を形成する半導体製造プロセスの工程によって形成することが可能な素子とは、フローティングゲートを持つFAMOSと呼ばれるような不揮発性記憶素子でない一般的な素子を意味する。一般に、EPROMまたはEEPROMと呼ばれるメモリICは、通常の素子に比べて複雑な構造を有する不揮発性記憶素子を用いて構成されるため、マスク枚数が多いなど製造コストが高くなる。
【0016】
ところが、通常の素子のみで構成可能な不揮発性メモリ回路を内蔵させて設定情報を格納するようにすれば、使用する液晶表示装置の仕様に応じて駆動条件等の設定を容易に行なうことができるとともに、駆動条件等に変更があったとしても容易に設定を変更可能なメモリ回路を安価に実現することができる。また、本発明によれば、外付け素子を用いずに、内蔵不揮発性メモリ回路に格納される設定値を変更することで特性のずれを調整することができるため、外付け部品点数はもちろん外付け素子を接続するための端子数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0018】
すなわち、本発明に従うと、使用する液晶表示装置の仕様に応じた駆動条件等の設定を容易に行なうことができる使い勝手のよい液晶駆動制御用半導体集積回路を実現することができる。
【0019】
また、本発明に従うと、製造ばらつきで特性が所望の値からずれたとしても、外付け素子を用いずに調整することができ、外付け部品点数を減らしチップサイズも小さくできる液晶駆動制御用半導体集積回路を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、不揮発性メモリ回路を内蔵した液晶コントロールドライバICとこのドライバにより駆動されるTFT液晶パネルとからなる液晶表示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明を適用した液晶コントロールドライバにおける発振回路の実施例を示すブロック図である。
【図3】図3は、外付け素子を使用して周波数調整可能とした発振回路の例を示す回路図である。
【図4】図4は、タイミングコントロール回路の一例を示す回路図である。
【図5】図5は、LCD用電源回路の一例を示す回路図である。
【図6】図6は、外付け素子を使用して電圧調整可能としたLCD用電源回路の例を示す回路図である。
【図7】図7は、図1の実施例の液晶コントロールドライバIC内の不揮発性メモリ回路(ROM)の書込み時の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】図8は、不揮発性メモリ回路(ROM)の読出し時の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】図9は、不揮発性メモリ回路におけるメーカ情報格納領域に好適なメモリ回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【図10】図10は、不揮発性メモリ回路を構成するメモリセルのレイアウトの例を示す平面図である。
【図11】図11は、不揮発性メモリ回路を構成するメモリセルの構造と書込み時の印加電圧を示す断面図である。
【図12】図12は、不揮発性メモリ回路を構成するメモリセルの構造と読出し時の印加電圧を示す断面図である。
【図13】図13は、不揮発性メモリ回路を構成するメモリセルの構造と消去時の印加電圧を示す断面図である。
【図14】図14は、不揮発性メモリ回路におけるユーザ情報格納領域に好適なメモリ回路の実施例を示す回路図である。
【図15】図15は、ユーザ情報格納領域に好適なメモリ回路の他の実施例を示す回路図である。
【図16】図16は、ユーザ情報格納領域に好適なメモリ回路のさらに他の実施例を示す回路図である。
【図17】図17は、本実施例の液晶コントロールドライバICを構成する各回路ブロックの半導体チップ上でのレイアウトの一例を示す平面図である。
【図18】図18は、本実施例の液晶コントロールドライバICを構成する各回路ブロックの半導体チップ上でのレイアウトの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。 先ず、本発明を適用して有効な不揮発性メモリ回路を内蔵した液晶表示駆動用半導体集積回路(液晶コントロールドライバIC)200を、図1を用いて説明する。図1は、不揮発性メモリ回路を内蔵した液晶コントロールドライバIC200とこのドライバにより駆動されるTFT液晶パネル300とからなる液晶表示システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1において、200はアクティブマトリックス方式で液晶パネルを駆動して表示を行なう液晶コントロールドライバIC、300はこの液晶コントロールドライバIC200により駆動されるTFT液晶パネルである。TFT液晶パネル300は、対向する2枚のガラス基板の一方に画像信号が印加される複数の信号線としてのソース線(ソース電極)と所定の周期で順次選択駆動される複数の選択走査線としてのゲート線(ゲート電極)が直交する方向に配設されている。
【0023】
また、ソース線とゲート線の各交点に画素電極と該画素電極にソース線上の画像信号に応じた電圧を印加するスイッチング素子としてのTFT(薄膜トランジスタ)からなる画素がマトリックス状に配置されている。これとともに、対向する他方のガラス基板には各画素に共通の電極が設けられ、これらの電極が形成された2枚のガラス基板間に液晶が封止されている。かかる構成のTFT液晶パネル300は公知であるので図示は省略する。
【0024】
液晶コントロールドライバIC200は、液晶パネル300のソース線SLを画像信号に応じて駆動するソースドライバ回路210、TFT液晶パネル300のゲート線GLを順番に走査駆動するゲートドライバ回路220、TFT液晶パネル300の各画素共通の電極にコモン電圧VCOMを印加するコモンドライバ回路230を備える。また、ドライバIC200は、これらのドライバ回路210〜230に必要とされる駆動電圧を発生するLCD用電源回路240、駆動条件等の設定情報を記憶する不揮発性メモリ回路250、外部のマイクロプロセッサ(以下、MPU又はCPUとも言う)等からの指令に基づいてチップ内部全体を制御する制御部260を備える。
【0025】
さらに、ドライバIC200は、内部の基準となるクロックφrを生成する発振回路270、生成された基準クロックφrに基づいて上記ドライバ回路210〜230等の動作タイミングを与える信号φ1,φ2,φ3……を生成するタイミングコントロール回路280、液晶パネル300に表示すべき画像データを記憶する表示用RAM290等を備える。これらの回路を備えるドライバIC200は単結晶シリコンのような1個の半導体チップ上に半導体集積回路として構成されている。
【0026】
なお、ドライバIC200は、電源電圧VCCが印加される外部端子と接地電位GNDが印加される外部端子とを有する。また、不揮発性メモリ回路250に書き込みを行なうのに必要なVCCよりも高い書込み電圧VPP1,VPP2が印加される外部端子が設けられている。
【0027】
この実施例の制御部260は、コマンドコードを設定するためのインデックスレジスタ261および該インデックスレジスタ261の内容に基づいて書込みがなされるコントロールレジスタ262や外部から供給されるデータおよび上記不揮発性メモリ回路250から読み出されたデータを保持するデータレジスタ263、不揮発性メモリ回路250の読み出し、書き込み制御を行なうリード/ライト制御回路264等を備える。
【0028】
また、この実施例の制御部260には、外部のMPUがインデックスレジスタ261に書込みを行なうことで実行するコマンドを指定して制御信号を生成する方式が採用されている。制御部260の制御方式として、外部のMPUからコマンドコードを受けると、このコマンドをデコードして制御信号を生成する方式を採用しても良い。データレジスタ263は、不揮発性メモリ回路250の出力部に設け、制御部260にはデータレジスタ263に読み出されたデータを所望の回路に分配するゲート回路を設けるようにしても良い。
【0029】
このように構成された制御部260による制御によって、液晶コントロールドライバIC200は、外部のMPUからの指令およびデータに基づいて上述したTFT液晶パネル300に表示を行なう際に、表示データを表示用RAM290に順次書き込んで行く描画処理を行なう。これとともに、制御部260は、表示RAM用290から順次表示データを読み出す読出し処理を行なってTFT液晶パネル300のソース線SLに印加する信号およびゲート線GL、コモン電極COMに印加する信号をドライバ210,220,230より出力させることにより液晶表示が行なわれる。
【0030】
駆動条件等の設定情報を記憶する不揮発性メモリ回路250は、後述のように、他の回路を構成する素子と同一の素子(本実施例ではCMOSトランジスタ)により構成されている。これによって、不揮発性メモリ回路250を形成するために製造工程が増えないようにされ、製造コストの上昇が抑えられる。ここで、不揮発性メモリ回路250に格納される設定情報は、大きく分けるとメーカ(ベンダ)において格納すべき設定情報とユーザ(アッセンブリメーカ)において格納すべき設定情報の2種類がある。実際に使用するときは、一方か、又は両方を設定することができる構成にすることができる。
【0031】
本実施例の液晶コントロールドライバICにおいては、不揮発性メモリ回路250に、メーカが設定する情報を格納するための第1の領域251とユーザが設定する情報を格納するための第2の領域252とが設けられている。このうち、第1の領域251は1度だけデータを書き込むことができるようにされ、第2の領域252は複数回データを書き込むことができるようにされている。
【0032】
メーカにおいて格納すべき設定情報には、内部の基準となるクロックを生成する発振回路270において生成するクロックφrの周波数を設定するための情報、基準クロックφrに基づいて動作クロックφ1,φ2,φ3……を生成するタイミングコントロール回路280において生成するクロックのタイミングを設定するための情報などがある。また、ドライバ210〜230に必要とされる駆動電圧を発生するLCD用電源回路240において発生する電圧のレベルを設定するための情報も、メーカにおいて格納すべき設定情報に含まれる。そして、上記発振回路270、タイミングコントロール回路280、LCD用電源回路240等は、不揮発性メモリ回路250から読み出された対応する設定情報に従って変更可能に構成されている。
【0033】
図2には、そのうち発振回路270の構成例が示されている。この実施例の発振回路270は、ORゲート271と直列形態のインバータINV1,INV2とフィードバックパスとからなるリングオシレータにより構成されている。そして、最終段のインバータINV2から初段のORゲート271へのフィードバックパス上に設けられた直列形態の複数の抵抗Rf1,Rf2,……Rfmの各接続ノードとオシレータの出力端子との間にスイッチング素子SW1,SW2,……SWmが設けられている。
【0034】
また、不揮発性メモリ回路250から読み出されデータレジスタ263に保持された対応する設定情報をデコードするデコーダDEC1が設けられ、このデコーダDEC1の出力によって上記スイッチング素子SW1,SW2,……SWmのいずれかがオン状態にされる。これにより、フィードバック信号の遅延時間が変化され、オシレータの出力である基準クロックφrの周波数が変更されるように構成されている。その結果、製造ばらつきで発振回路の周波数が所望の周波数からずれた場合にも、周波数のずれを調整できるようになる。また、液晶表示装置にあう特定の仕様の周波数に変更できるようにすることもできる。
【0035】
なお、フィードバック信号が入力されているオシレータの初段のORゲート271の他方の入力端子に入力されている信号COSCは、オシレータの起動信号である。この信号COSCがロウレベルにされるとオシレータは発振動作し、COSCがハイレベルにされるとオシレータは発振動作を停止するようになっている。デコーダDEC1を省略して、データレジスタ263に保持された設定情報によってスイッチング素子SW1,SW2,……SWmを直接制御するように構成しても良い。
【0036】
内蔵メモリと調整回路がない場合には、発振回路270により生成される基準クロックφrの周波数を変更するため、例えば図3に示されているように、フィードバック経路に設けられた抵抗Rfを、ドライバIC200に外付け素子として接続し、その抵抗値を変更するようにしなければならなかった。本実施例によれば、かかる外付け素子が不要となるため、外付け部品の数を減らしてシステムを小型化することができるとともに、外付け素子を接続するための外部端子も少なくできるため、チップ自身も小型化することができる。
【0037】
図4には、タイミングコントロール回路280の構成例が示されている。この実施例のタイミングコントロール回路280は、直列形態に接続された複数の遅延回路DLY1,DLY2……DLYnにより構成されている。各遅延回路DLY1,DLY2……DLYnの接続ノードとコントローラの入力端子との間に、スイッチング素子SW11,SW12,……SW1mが設けられている。
【0038】
これらのスイッチング素子SW11,SW12,……SW1mのいずれかが、不揮発性メモリ回路250から読み出されデータレジスタ263に保持された対応する設定情報の信号TC1,TC2,TC3などによってオン状態にされることにより、出力される信号TMDのタイミングが変更されるようになっている。データレジスタ263に保持された設定情報をデコードするデコーダを設けて、このデコーダの出力でスイッチング素子SW11,SW12,……SW1mを制御するように構成しても良い。
【0039】
ここで、タイミングコントロール回路280によりタイミングを調整する信号としては、例えば表示RAM280の動作タイミングを与える信号がある。表示RAM280は、液晶コントロールドライバの内部で最も高速で動作する回路であるため、その動作タイミングのずれはシステム全体の動作に影響を与える。そこで、表示RAM280の動作タイミングを与える信号を初期設定で調整することにより、所望の動作特性が得られるようになる。
【0040】
図5には、LCD用電源回路240の構成例が示されている。この実施例のLCD用電源回路240は、直列形態に接続されたラダー抵抗Rl1,Rl2,……Rlnと、各ラダー抵抗と並列に接続されたスイッチング素子SW21,SW22,……SW2nとを備える。そして、これらのスイッチング素子SW21,SW22,……SW2nが、不揮発性メモリ回路250から読み出されデータレジスタ263に保持された対応する設定情報によってオンまたはオフ状態にされる。これにより、LCD用電源回路240における基準となる電圧VCOMRのレベルが決定されるようになっている。
【0041】
図5において、LCD用電源回路240内に設けられているスイッチSWa1,SWa2は、液晶の劣化を防止するため液晶パネルを交流駆動すべく共通電極に印加する共通電位VCOMHとVCOMLを切り替えて所定の周期で極性反転させるスイッチである。また、スイッチSWm1,SWm2は、表示モード等に応じて共通電極に印加する共通電位VCOMH,VCOMLのうちVCOMHのレベルを切り替えるためのスイッチである。これらのスイッチSWa1とSWa2またSWm1とSWm2は、制御部260からの制御信号によってそれぞれ相補的すなわち一方がオンのときは他方がオフの状態にされる。
【0042】
内蔵メモリと調整回路がない場合には、基準となる電圧VCOMRのレベルを変更するため、例えば図6に示されているように、ドライバIC200に外付けの抵抗Rt1,Rt2を設けて、一方の抵抗Rt1の抵抗値を変更するようにしていた。本実施例によれば、かかる外付け素子が不要となるため、外付け部品の数を減らしてシステムを小型化することができるとともに、外付け素子を接続するための外部端子も少なくできるため、チップ自身も小型化することができる。
【0043】
次に、制御部260による不揮発性メモリ回路250の書込みの手順と動作タイミングを、図1および図7を用いて説明する。図7において、信号CS,RS,WR,RDはリード/ライト制御回路264にチップ外部より入力される制御信号である。このうち制御信号CSはチップが選択されたことを示す信号、RSはデータDBをインデックスレジスタにラッチするのかコントロールレジスタにラッチするのかを示す信号である。また、WRは書き込み動作を制御するための信号、RDは読み出し動作を制御するための信号である。リード/ライト制御回路264は、これらの制御信号CS,RS,WR,RDとタイミングコントローラ280からのクロックφ2に基づいて、メモリ回路250に供給する信号を生成する。WEはリード/ライト制御回路264により生成されてメモリ回路250に供給される書込み許可信号である。また、REはリード/ライト制御回路264により生成されてメモリ回路250に供給される読出し許可信号である。
【0044】
図7には、制御部260による不揮発性メモリ回路250の書込み動作タイミングが示されている。この書込み動作の説明は、特に制限されるものでないが、本実施例の液晶コントロールドライバでは、電源投入後にMPUからリセット信号RESETが入力されるとハイレベルからロウレベルになる場合の例を示している。また、図7の例は、アドレスは000〜011の4つのアドレスに書込む場合の例を示している。
【0045】
まず、リセット信号RESETが入力されると、チップ内部レジスタはリセットされる(図7、タイミングt1)。続いて、MPUなどに接続された制御バスBUSに、RS=Lowの期間にインデックスデータがドライバICに入力される。このとき、WRがロウからハイになるタイミングでこのインデックスデータがインデックスレジスタ261に格納される(図7、タイミングt2)。
【0046】
このとき、インデックスレジスタ261に格納されたインデックスデータにより、ROM系回路のコントロールレジスタ262が選択される。また、タイミングt2のあとで、制御バスBUSから、RS=Highの期間に制御等のデータ(今後単に「データ」と記す)がドライバICに入力される。このとき、WRがロウからハイになるタイミングで、このデータがコントロールレジスタ262に格納される(図7、タイミングt3)。
【0047】
<書込み期間>
t3のタイミングで、コントロールレジスタのデータが確定するが、データの内容は、書込みデータWDATA、書込みデアドレスADDR、ROM制御データOP0、OP1などである。書込みの場合は、制御データOP0のデータを0(Low)から1(High)にする。このとき、OP0が1(High)ならば、WE/RE制御回路264を制御して、書込み許可信号WEをハイレベルにアサートして、書き込み動作が行われる。
【0048】
書込みの終了は、制御バスBUSの制御信号RSがハイレベルの期間にコントロールレジスタのOP0のデータを1(High)から0(Low)に変えることにより、WE/RE制御回路264を制御して、書込み許可信号WEをロウレベルにネゲートする。これにより書込み動作が終了する(図7、タイミングt4)。
【0049】
アドレスを変えて書込みを再開する場合は、制御信号RSがハイレベルの期間にコントロールレジスタのOP0のデータを0(Low)から1(High)にする(図7、タイミングt5)。このとき、OP0が1(High)なので、WE/RE制御回路264は、書込み許可信号WEをハイレベルにアサートして、書き込み動作が行われる。このとき、データレジスタのアドレスは、更新しておく。これにより、タイミングt3からt4の期間で書いたアドレスとは異なるアドレスの領域に書込みが行われる。
【0050】
以後、タイミングt5の後は、前記のタイミングt3からt4と同様にコントロールレジスタのOP0のデータをセットすることにより書込みが終了する(図7、タイミングt6)。以降は、上記を繰り返す。
【0051】
なお、この実施例では、外部から入力される制御信号CS,RS,WR,RDに従って書き込み動作を実行するように構成したものを説明したが、チップ内部に1つのコマンドコードに対応した複数のマイクロ命令コードを格納したROMを設ける。そして、インデックスレジスタ261に書き込みコマンドが設定されると、マイクロ命令コードを読み出してリード/ライト制御回路264に対する制御信号を生成し、自動的に書き込み動作を実行させるように構成することも可能である。ただし、実施例のように外部からの制御信号に従った制御方式とすることにより、制御部260の規模を小さくすることができる。
【0052】
図8には、制御部260による不揮発性メモリ回路250の読出し動作タイミングが示されている。REはリード/ライト制御回路264により生成されてメモリ回路250に供給される読出し許可信号である。
【0053】
本実施例の液晶コントロールドライバでは、電源投入後にMPUからリセット信号RESETがハイレベルからロウレベルにアサートされ、これにより、チップ内部のレジスタがリセットされる。そして、インデックスレジスタ261に読み出しコマンドが設定されると、インデックスレジスタ261によってコントロールレジスタ262の所定の制御ビットOP1に"1"がセットされ、リード/ライト制御回路264により読出し許可信号REがハイレベルにアサートされて読出し動作が開始される(タイミングt11)。なお、このとき制御ビットOP0は"0"にされる。
【0054】
そして、コントロールレジスタ262の所定のフィールドに格納されている読出しアドレスRADDRがメモリ回路250へ供給されてデータの読出しが実行される。このとき、メモリ回路250に供給されたアドレスに対応した領域に記憶されているデータが一括して読み出される。なお、コントロールレジスタ262に読出し用の制御ビットOP1を設ける代わりに、リセット信号RESETを適当なディレイ回路等に通すことによってリード/ライト制御回路264の起動信号とし、ハイレベルの読出し許可信号REを出力させるように構成しても良い。
【0055】
次に、所定時間後にタイミングコントロール回路280からラッチタイミングを示す信号RSETが出力され、メモリ回路250から読み出されたデータがデータレジスタ263にラッチされる(タイミングt12)。その後、不揮発性メモリ回路250への読出し制御信号REがロウレベルにネゲートされて一回の読出し動作が終了する(タイミングt13)。
【0056】
読出しデータが複数のアドレスにわたっているときは、読出し許可信号REがロウレベルにネゲートされている間にコントロールレジスタ262の所定のフィールドに格納されている読出しアドレスRADDRを更新してから上記動作を繰り返すようにされる。
【0057】
本実施例では、リセット信号RESETが入力されるとインデックスレジスタ261によってコントロールレジスタ262の所定の制御ビットOP1に"1"がセットされることで読出し許可信号REが生成されるように構成されているが、リセット信号RESETを適当なディレイ回路等に通すことによって読出し許可信号REを生成するようにしても良い。また、本実施例の液晶コントロールドライバICは、リード/ライト制御回路264が、前述の制御信号CS,RS,WR,RDに基づいて、メモリ回路250からデータを読み出すように構成することができる。そして、かかる読出し機能は、例えば回路が正常に動作するか検査するテストモードにおいて有効化されるように構成しても良い。
【0058】
図9には、図1の不揮発性メモリ回路250のうちメーカが設定する情報を格納するための第1の領域251に使用して好適なメモリ回路の例が示されている。この実施例の不揮発性メモリ回路250は、FAMOSやMNOSのような不揮発性記憶素子を使用せずに、通常の回路構成素子であるPチャネルMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)とNチャネルMOSFETのみで構成されている。なお、図7には、図示の都合で、8個のメモリセルからなる1バイトの記憶容量のメモリ回路が示されているが、実際には、同様な構成のメモリ回路が複数個設けられ、アドレス信号でいずれかを選択的に動作させるように構成することで複数バイトの記憶容量のメモリ回路として構成されている。
【0059】
図9において、264は前述の制御信号CS,RS,WR,RDとコントロールレジスタ262からのデータDB0〜DB17に基づいてメモリ回路の書き込み、読出しのための信号を生成するリード/ライト制御回路である。また、254は書き込みのために必要な通常の電源電圧VCCよりも電位の高い書込み電圧VPP1,VPP2に基づいて回路内部で必要な所定のレベルの電源電圧VPP1M,VPP2Mを生成する内部電源制御回路である。さらに、255は不揮発性メモリセル、256は各メモリセルの読出し/書込み回路で、この実施例では1度に8ビットのデータをリード/ライトできるように、8個のメモリセルと読出し/書込み回路のペアが一方向に並んで配置されている。書込み電圧VPP1,VPP2は、例えば9Vと7Vである。
【0060】
LD0〜LD7はリード/ライト制御回路264から出力される書込みデータが乗るライトデータ線、PUは読出しを制御するための読出し制御線である。また、CGは8ビットのデータをリード/ライトするための通常のメモリアレイにおけるワード線に相当するコントロールゲート線である。さらに、SLはメモリセル255へ書き込み電圧を供給する書込み電圧供給ライン、PRGMは書込みを制御するための書込み制御線、VERはメモリセルの電位を制御するための電位制御線である。コントロールゲート線CGは、読出し制御信号REと書込み制御信号WEの排他的論理和を取るEORゲートG0の出力に応じて駆動される。LS1,LS2は、EORゲートG0の出力信号、書込み制御信号WEのレベルを変換するレベルシフト回路である。
【0061】
読出し/書込み回路256は、ライトデータ線LD0〜LD7のうちいずれかのライトデータ線と書込み制御線PRGMの信号を入力とするORゲートG1と、信号CERBがハイレベルのときに該ORゲートG1の出力信号を通過させる伝送ゲートMOSFET Qt1とを備える。さらに、読出し/書込み回路256は、読出し制御線PUに接続された抵抗R0および該抵抗R0と直列に接続された伝送ゲートMOSFET Qt2と、Qt2がオンされたときに抵抗R0の電位が降下したか否かを判別するセンス用インバータG2を備える。抵抗R0は、この例では固定抵抗を例示しているが、これに相当する動作をする回路で構成してもよい。
【0062】
メモリセル255は、伝送ゲートMOSFET Qt1と書込み電圧供給ラインSLとの間に互いにチャネルが並列の状態で接続された電荷注入用MOSFET Qw1,Qw2と、Qw1,Qw2のゲート端子とコントロールゲート線CGとの間に容量素子として接続されたMOS容量C1,C2とを有する。また、メモリセル255は、読出し制御線PUと電位制御線VERとの間に、上記抵抗R0および伝送ゲートMOSFET Qt2と直列形態に接続された読出し用MOSFET Qr1,Qr2を備える。上記電荷注入用MOSFET Qw1と読出し用MOSFET Qr1は互いにゲート端子同士が結合され、Qw2とQr2もゲート端子同士が結合され、それぞれのゲート端子はフローティングにされている。
【0063】
さらに、伝送ゲートMOSFET Qt1,Qt2もゲート端子同士が結合されており、リード/ライト制御回路264からの制御信号CERをインバータで反転した信号CERBが共通ゲートに供給され、CERBによって制御される。また、メモリセルの電位を制御する上記電位制御線VERは、この制御信号CERBをさらにインバータで反転した信号のレベルを変換するレベルシフト回路LS3によって駆動される。
【0064】
この実施例のメモリセル255は、コントロールゲート線CGでMOS容量C1,C2を介して電荷注入用MOSFET Qw1,Qw2のゲート電圧を高くした状態でライトデータに応じてQw1,Qw2のソース・ドレイン間に書込み電圧を印加してQw1,Qw2をオンまたはオフ状態に設定する。そして、Qw1,Qw2に選択的にドレイン電流を流すことによって発生したホットエレクトロンが、Qw1,Qw2のゲート電極に注入されることでデータの書込みが行なわれる。電荷注入用MOSFETと読出し用MOSFETを2つずつ設けているのは、電荷のリークによる記憶データの信頼性低下を防止するためである。
【0065】
データの読出し時には、コントロールゲート線CGでMOS容量C1,C2を介して読出し用MOSFET Qr1,Qr2のゲート電圧を高くする。これとともに、読出し制御線PUを高くし、VERを低くしてQr1,Qr2のソース・ドレイン間に電位差を与えてQr1,Qr2に電流が流れるか否かをインバータG2で判別する。
【0066】
具体的には、電荷注入用MOSFET Qw1,Qw2のゲート電極に電荷が注入されていると、読出し用MOSFET Qr1,Qr2のゲート電圧が相対的に低くなってオフ状態にされてドレイン電流は遮断される。一方、Qw1,Qw2のゲート電極に電荷が注入されていないと、読出し用MOSFET Qr1,Qr2のゲート電圧が相対的に高くなってオン状態にされ、ドレイン電流が流れる。これにより、R0とQr1との接続ノードの電位が変化する。この電位変化をインバータG2で判別することでメモリセルの状態を判定することができる。
【0067】
なお、この実施例では、読出し動作時、電荷注入用MOSFET Qw1,Qw2のうち一方のゲート電極の電荷がリークしたとしていても、他方のゲート電極の電荷がリークしていなければ、いずれか一方はオフにされてドレイン電流が流れない。そのため、電荷のリークによる記憶データの信頼性低下を防止することができる。電荷注入用MOSFET Qw1,Qw2と読出し用MOSFET Qr1,Qr2は、それぞれ1個のMOSFETで構成してもメモリセルとして有効に動作するので、一方の組を省略することが可能である。また、図1の実施例のメモリ回路250は、図9のような構成のメモリ回路に限定されず同様な機能を有する回路であれば良い。
【0068】
次に、上記実施例の液晶コントロールドライバに用いられる不揮発性メモリの具体的なデバイスの構造と、該不揮発性メモリにおけるデータの書き込み、消去および読み出しの各動作について、図10〜図13を用いて説明する。図10はメモリセル領域の要部平面図であり、図11〜図13は図10中のD−D’線に沿った断面を示している。
【0069】
図において、符号1で示されているのは例えば単結晶シリコンからなるp型半導体基板、2は基板1の表面に選択的に形成されたフィールド酸化膜、19,20は基板1およびフィールド酸化膜2の表面を覆うように形成された層間絶縁膜である。4AはMOS容量C1,C2が形成されるp型ウェル領域、4BはMOSFET Qw1,Qw2;Qr1,Qr2が形成されるP型ウェル領域、3はp型ウェル領域4A,4Bの下側に設けられたn型半導体分離領域である。5はn型半導体分離領域3に電位を与える給電領域としてのn型半導体領域、14Aはn型半導体領域5のバッファ層としてのn型半導体領域、14BはMOSFET Qw1,Qr1(Qw2,Qr2)のソース・ドレイン領域となるn型半導体領域である。
【0070】
また、15AはMOS容量C1の一方の端子となるp型半導体領域、15BはMOSFETQw1,Qr1のp型ウェル領域4Bに電位を与える給電領域としてのp型半導体領域、18は表面に形成される電極との接触抵抗を減らすためのコンタクト層である。さらに、6はMOS容量C1の誘電体層で、この誘電体層6はMOSFET Qw1,Qr1のゲート絶縁膜と同一工程で形成される。また、7AはMOS容量C1の他方の端子となる導電体層、7BはMOSFET Qw1,Qr1のゲート電極で、導電体層7AはQw1,Qr1のゲート電極と同一工程で形成される。
【0071】
データの書き込み時には、図11に示すように、n型半導体領域5を介してn型半導体分離領域3に例えば9Vを印加し、p型半導体領域15Bを介してMOSFET Qw1、Qr1(Qw2,Qr2)が形成されたp型ウェル領域4Bに0Vを印加する。また、p型半導体領域15Aを介して容量素子C1(C2)が形成されたp型ウェル領域4Aに順方向の9Vを印加する。MOSFET Qw1、Qr1(Qw2,Qr2)のゲート電極7Bと容量素子C1(C2)の一方の端子としての電極7Aとはつながっているため、p型ウェル領域4への9Vの印加により電極7Bの電位が持ち上げられる。
【0072】
また、データ書き込み用のMOSFET Qw1(Qw2)のソース、ドレインとしてのn型半導体領域14Bの一方に7Vを印加し、他方に0Vを印加する。さらに、データ読み出し用のMOSFET Qr1(Qr2)のソース、ドレインとしてのn型半導体領域14Bを0Vとする。これにより、データ書き込み用のMOSFET Qw1(Qw2)のチャネルに電流が流れ、そのとき発生したホットエレクトロン(e-)がゲート電極7Bに注入され、データの書き込みが行われる。なお、n型半導体分離領域3に9Vを印加するのは、p型ウェル領域4Aに9Vが印加されることでPN接合が順方向にバイアスされないようにするためである。
【0073】
データの読み出し時には、図12に示すように、n型半導体領域5を介してn型半導体分離領域3に例えば3Vを印加し、p型半導体領域15Bを介してMOSFET Qw1、Qr1(Qw2,Qr2)が形成されたp型ウェル領域4Bに0Vを印加する。また、p型半導体領域15Aを介して容量素子C1、C2が形成されたp型ウェル領域4Aに3Vを印加する。このp型ウェル領域4Aへの3Vの印加により電極7Aおよび7Bの電位が持ち上げられ、電極7Bに電荷が蓄積されているか否かに応じて、データ読み出し用のMOSFETQr1、Qr2がオンまたはオフ状態にされる。
【0074】
また、データ書き込み用のMOSFET Qw1(Qw2)のソース、ドレインとしてのn型半導体領域14Bを0Vとし、データ読み出し用のMOSFET Qr1(Qr2)のソース、ドレインとしてのn型半導体領域14Bの一方に0Vを印加し、他方に例えば図9に示した抵抗R0の一方を接続した時の電圧が印加される。図9に示した抵抗R0の一方はPUに接続されていることは前述のとおりである。このとき、データ読み出し用のMOSFETQr1,Qr2のオンまたはオフ状態に応じて電流が流れたり流れなかったりする。これが、インバータG2によって検出される。なお、n型半導体分離領域3に3Vを印加するのは、p型ウェル領域4Aに3Vが印加されることでPN接合が順方向にバイアスされないようにするためである。
【0075】
図14には、図1の不揮発性メモリ回路250のユーザが設定する情報を格納するための第2の領域252に使用して好適なメモリ回路の例が示されている。この実施例の不揮発性メモリ回路250は、図79の実施例の不揮発性メモリ回路250と同様に、FAMOSやMNOSのような不揮発性記憶素子を使用せずに構成されている。ただし、この実施例の不揮発性メモリ回路250は、記憶されたデータの消去が可能な構成となっている。データの消去は、コントロールレジスタ262の制御ビットOP0,OP1にそれぞれ"1"がセットされることにより、消去モードに入って消去を実行するように構成することができる。
【0076】
この実施例の不揮発性メモリ回路250は、図9の実施例の不揮発性メモリ回路250とほぼ同じ構成を有するので、同一構成の部分については説明を省略し、主として差異について説明する。図9の実施例の不揮発性メモリ回路250との第1の差異は、本実施例では、電源制御回路254が、外部から供給される第3の電圧VPP3に基づいた内部電圧VPP3Mを生成可能に構成されている点にある。第2の差異は、この内部電圧VPP3Mがコントロールゲート線CGを駆動するレベルシフト回路LS1にロウ側の電源電圧として供給されている点にある。
【0077】
内部電圧VPP3Mは、データ書込み時や読出し時には0Vのような接地電位にされる一方、データの消去時には−9Vのような電位とされ、これがコントロールゲート線CGを介してフローティングゲートに結合されている容量素子C1、C2に印加される。不揮発性メモリセル255を構成するMOSFET Qw1、Qw2、Qr1、Qr2は、図10および図11に示すレイアウトと構造を有する素子を用いることができる。
【0078】
かかる構成の素子からなるメモリ回路において、データを消去するには、図13に示すように、n型半導体領域5を介してn型半導体分離領域3に例えば9Vを印加し、p型半導体領域15Bを介してMOSFET Qw1、Qr1(Qw2,Qr2)が形成されたp型ウェル領域4Bに9Vを印加する。また、p型半導体領域15Aを介して容量素子C1(C2)が形成されたp型ウェル領域4Aに逆方向の−9Vを印加する。さらに、データ書き込み用のMOSFET Qw1(Qw2)およびデータ読み出し用のMOSFET Qr1(Qr2)のソース領域としてのn型半導体領域14BW1,14BR1を開放電位とし、Qw1(Qw2)およびQr1(Qr2)のドレイン領域としてのn型半導体領域14BW2,14BR2に9Vを印加する。
【0079】
ここで、容量素子C1、C2の容量電極(ゲート電極7A)の面積は、MOSFET Qw1、Qw2のゲート容量を形成する容量電極(ゲート電極7B)の面積より大きいことから(図10参照)、容量素子C1、C2の容量は、MOSFET Qw1、Qw2のゲート容量に比べて大きくなる。そのため、MOSFET Qw1、Qw2のゲート容量に印加される電圧は、容量素子C1、C2に印加される電圧より大きくなる。これにより、データ書き込み用のMOSFET Qw1、Qw2およびデータ読み出し用のMOSFET Qr1、Qr2の共通ゲート電極7Bに蓄積されていた電子(e-)がFNトンネル現象でp型ウェル領域4Bへ放出される。
【0080】
このように、容量素子C1、C2が形成されたp型ウェル領域4Aに負(逆方向)の電圧を印加し、MOSFET Qw1、Qw2、Qr1、Qr2が形成されたp型ウェル領域4Bに正(順方向)の電圧を印加する。これにより、ゲート破壊を起こさない電圧(9V以下)でデータ消去動作に必要な電位差(18V)を確保することが可能となる。なお、n型半導体分離領域3に9Vを印加するのは、p型ウェル領域4Bに9Vが印加されることでPN接合が順方向にバイアスされないようにするためである。かかる構成のメモリ回路を用いることにより複数回のデータの書込みが可能となる。
【0081】
図15には、図1の不揮発性メモリ回路250のユーザが設定する情報を格納するための第2の領域252に使用して好適なメモリ回路の他の例が示されている。この実施例の不揮発性メモリ回路250も、FAMOSやMNOSのような不揮発性記憶素子を使用せずに、通常の回路構成素子であるPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETのみで構成されている。また、この実施例の不揮発性メモリ回路250は、記憶されたデータの消去を想定していない場合の回路である。
【0082】
この実施例では、複数回のデータの書き込みを可能にするため、同一記憶容量を有する2つのバンクBNK1,BNK2が設けられている。それぞれのバンクは、図9に示されているメモリセル255と同一構成のメモリセルを有し、バンクBNK1,BNK2はリード/ライト制御回路264から出力されるそれぞれのバンク指示信号B0,B1によっていずれか一方が選択される。
【0083】
より具体的には、リード/ライト制御回路264から出力される書込みデータが乗るライトデータ線LD0〜LD7上の信号と上記バンク指示信号B0,B1のいずれか一方の信号とを入力とするNANDゲートG10〜G17,G20〜G27が設けられている。また、バンク指示信号B0と各制御線PU,CG,PRGM,SL上の信号とを入力とするNANDゲートG30,G31,G32,G33と、バンク指示信号B1と各制御線PU,CG,PRGM,SL上の信号とを入力とするNANDゲートG40,G41,G42,G43が設けられている。
【0084】
そして、バンク指示信号B0,B1によってNANDゲートG10〜G17とG30〜G33またはG20〜G27とG40〜G43のいずれか一方が有効化されることで、一方のバンクが選択される。これによって、見かけ上、データの書き換えが可能なメモリ回路が実現される。なお、一方のバンクへの書込みがなされたなら、次の書込みの際には自動的に他のバンクが選択されるような仕組みをチップ内部に設けておくようにしても良い。これによって、ユーザの誤った処理によるデータの上書きを防止することができる。この実施例では、バンクの数を2個としたが、3個以上設けるようにしても良い。これにより、見かけ上、2回以上データの書き換えが可能なメモリ回路が実現される。
【0085】
図16には、図1の不揮発性メモリ回路250のユーザが設定する情報を格納するための第2の領域252に使用して好適なメモリ回路のさらに他の例が示されている。
【0086】
この実施例では、複数回のデータの書き込みを可能にするため、同一記憶容量を有する2つのバンクBNK1,BNK2が設けられている。それぞれのバンクは、図7に示されているメモリセル255と同一構成のメモリセルを有するとともに、メモリセルが接続されるコントロールゲート線CGは共通のゲート線CGと各バンクBNK1,BNK2用のゲート線CG1,CG2が設けられている。さらに、電源回路254にはバンクBNK1用の書込み電圧VPP1-1とバンクBNK2用の書込み電圧VPP1-2を印加する電源端子P1,P2が設けられている。
【0087】
そして、これらの電源端子に印加された電圧に基づいて生成された内部書込み電圧VPP1-1M,VPP1-2Mが、各バンク用のゲート線CG1,CG2を駆動するレベルシフト回路LS1-1,LS1-2へそれぞれ供給されるように構成されている。これによって、電源端子P1に書込み電圧VPP1-1が印加されるとバンクBNK1に対するデータの書込みが可能にされ、電源端子P2に書込み電圧VPP1-2が印加されるとバンクBNK2に対するデータの書込みが可能にされる。
【0088】
書き込み電圧を印加する端子を替えることで、書き込みを行なうバンクを切り替えることができ、これにより、見かけ上、データの書き換えが可能なメモリ回路が実現される。書込み電圧VPP2もバンクごとに別々に供給するように構成しても良い。さらに、バンクの数および書き込み電圧を印加する端子の数を3個以上としても良い。
【0089】
図17には、本実施例の液晶コントローラドライバICを構成する各回路ブロックの半導体チップ上でのレイアウトの一例が示されている。図17においては、図1に示されている回路と同一の回路には同一の符号が付されている。符号G0〜Gi,Gi+1〜Gnはゲートドライバ回路220により生成されたゲート駆動信号を出力する端子(出力パッド)、S0〜Smはソースドライバ回路210により生成されたソース線駆動信号を出力する端子(出力パッド)である。
【0090】
また、VPP1〜VPP3,GNDは外部から供給されるROM書込み用の電源電圧が印加される電源端子(電源パッド)、DB0〜DB17はバスを介してCPUから供給される信号が入力される端子(入力パッド)である。特に制限されるものでないが、液晶パネルには左右にゲート駆動信号の入力端子を有するものがあるので、それに応じて、ゲート駆動信号を出力する端子(出力パッド)は2つのグループG0〜GiとGi+1〜Gnに分けられ、ソース線駆動信号を出力する端子(出力パッド)S0〜Smを挟むようにして両側に設けられている。
【0091】
図17から分かるように、本実施例の液晶コントローラドライバICにおいては、半導体チップの長手方向の一辺に沿って出力パッドG0〜GiとGi+1〜Gn,S0〜Smが配置され、反対側の辺に沿って入力パッドDB0〜DB17が配置されている。そして、出力パッドG0〜GiとGi+1〜Gn,S0〜Smに対応してチップの一方の辺には、ゲートドライバ回路220Aとソースドライバ回路210とゲートドライバ回路220Bが配置されている。また、チップのほぼ中央に、制御部260を構成するタイミングコントロール回路(280)などの回路が配置され、その両側に表示データ記憶用のRAM290A,290Bが配置されている。
【0092】
さらに、電源パッドVPP1〜VPP3の近傍にROM回路250が、また入力パッドDB0〜DB17の近傍にLCD用の電源を生成する電源回路240が配置されている。このように、ROM書込み用の電源電圧が印加される電源パッドVPP1〜VPP3の近傍にROM回路250が配置されているため、パッドから回路までの電源ラインが短くなり電力ロスが少なくて済む。これとともに、比較的高いROM書込み用の電源電圧が印加される電源パッドVPP1〜VPP3がチップの隅に設けられているため、他のパッドとの間の静電耐圧を高めることができる。この実施例では、静電耐圧をさらに高めるため、電源パッドVPP1〜VPP3の各パッドの間隔よりもグランドパッドGNDとの間隔を広くしている。
【0093】
図18には、本実施例の液晶コントローラドライバICを構成する各回路ブロックの半導体チップ上でのレイアウトの他の例が示されている。図18において、図17に示されている回路や端子と同一の回路、端子には同一の符号を付して重複した説明は省略する。図18の実施例では、チップのほぼ中央に配置された制御部260の隣にROM回路250が配置されている。
【0094】
液晶コントローラドライバICにおいては、書込みデータや読出しデータを伝送するため制御部260とROM回路250を結ぶ配線の数が比較的多くなるため、制御部260とROM回路250とを離しておくと配線の占有面積が大きくなりチップサイズの増大を招く。しかるに、本実施例のようなレイアウトを採用すると、配線の占有面積を減らしチップサイズを低減することができるという利点がある。本実施例は、ROM回路250の記憶容量が大きい場合に適用すると有効である。
【0095】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施例では、電荷のリークによる記憶データの信頼性低下を防止するためメモリセルに電荷注入用MOSFETと読出し用MOSFETを2つずつ設けているが、それぞれ1つのMOSFETからなるメモリセルであっても良い。
【0096】
また、前記実施例では、ユーザが設定する情報を格納するための第2の領域252のみが書替え可能に構成されている場合を説明したが、メーカが設定する情報を格納するための第1の領域251のメモリ回路のバンクの数を2個とし、見かけ上1回だけこの領域のデータを書き換えることができるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である3端子のスイッチ素子である薄膜トランジスタにより画素電極に電荷を注入するTFT液晶パネルを駆動する液晶コントロールドライバについて説明した。この発明はそれに限定されるものでなく、例えば、2端子のスイッチ素子により画素電極に電荷を注入するMIM液晶パネルを駆動する液晶コントロールドライバ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
200 液晶コントロールドライバIC
210 ソースドライバ
220 ゲートドライバ
230 コモンドライバ
240 LCD用電源回路
250 不揮発性メモリ回路
251 第1の領域(メーカ使用領域)
252 第2の領域(ユーザ使用領域)
254 電源制御回路
255 不揮発性メモリセル
256 読出し/書込み回路
260 制御部
261 インデックスレジスタ
262 コンロールレジスタ
263 データレジスタ
264 リード/ライト制御回路
270 発振回路
280 タイミングコントロール回路
290 表示用RAM
300 TFT液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルの走査線に印加される駆動信号および液晶パネルの信号線に印加される駆動信号を生成し出力し、前記液晶パネルを駆動する1つの半導体チップ上に形成された液晶表示駆動用半導体集積回路であって、
電気的に書き込み可能な第1グループの不揮発性メモリ回路及び電気的に書き込み消去可能な第2グループの不揮発性メモリ回路を内蔵し、
前記不揮発性メモリ回路は、第1のグループと第2のグループに分割され、
前記第1のグループには製造ばらつきを調整するための情報が1回のみ設定され、
前記第2のグループには前記液晶パネルの特性に応じた駆動条件が複数回設定され、
前記不揮発性メモリ回路は前記半導体チップ上において他の回路を形成する工程により形成され、各々分離領域により分離された多重のメモリセルを有し、
前記各々のメモリセルは、
半導体基板の主面の第1ウェル領域に形成された書込み用の第1電界効果型トランジスタと、
前記半導体基板の主面の前記第1ウェル領域に形成された読み出し用の第2電界効果型トランジスタと、
前記半導体基板の主面の前記第1ウェル領域から分離された第2ウェル領域に容量として機能するように形成された第3電界効果型トランジスタと、を有し、
前記第1電界効果型トランジスタと前記第2電界効果型トランジスタと前記第3電界効果型トランジスタのゲートは各々共通に接続され、
前記第3電界効果型トランジスタのソースとドレインに共通の正電圧が印加されたときに書込みが行われ、
前記多重のメモリセルには同一のデータが格納されることを特徴とする液晶表示駆動用半導体集積回路。
【請求項2】
前記不揮発性メモリ回路および前記他の回路は、Pチャネル型電界効果トランジスタとNチャネル型電界効果トランジスタとからなるCMOS回路により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示駆動用半導体集積回路。
【請求項3】
前記半導体チップは矩形状であり、上記走査線に印加される駆動信号および信号線に印加される駆動信号を出力する端子が上記半導体チップの長手方向の一方の縁部に沿って配置され、前記半導体チップの長手方向の他方の縁部に沿ってメモリ回路の書込み用の高電圧が印加される電源電圧端子と入力端子が配置され、前記不揮発性メモリ回路は前記電源電圧端子の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示駆動用半導体集積回路。
【請求項4】
前記半導体チップは矩形状であり、上記走査線に印加される駆動信号および信号線に印加される駆動信号を出力する端子が上記半導体チップの長手方向の一方の縁部に沿って配置され、前記半導体チップの長手方向の他方の縁部のほぼ中央にメモリ回路の書込み用の高電圧が印加される電源電圧端子が配置され、前記半導体チップのほぼ中央に前記不揮発性メモリ回路の書込みおよび読出しを行なう制御回路が配置され、前記不揮発性メモリ回路は前記制御回路と前記電源電圧端子の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示駆動用半導体集積回路。
【請求項5】
前記液晶表示駆動用半導体集積回路は、前記液晶パネルを交流駆動すべく共通電位に印加する共通電位のレベルを切替える機能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示駆動用半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−230398(P2012−230398A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141858(P2012−141858)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2005−157390(P2005−157390)の分割
【原出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】