説明

液晶装置および電子機器

【課題】液晶セル内に位相差層を備えていても製造工数を低減可能な半透過反射型液晶装置を提供すること。
【解決手段】液晶装置100は、対向基板10と、素子基板20と、対向基板10と素子基板20との間に位置する液晶層30と、対向基板10の液晶層30側の面上の画素2の領域に設けられた位相差層40と、対向基板10の液晶層30側の面上の画素2同士の間の領域に設けられた位相差層42と、を備え、位相差層42は、対向基板10と素子基板20とのギャップG1を保持していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
画素のそれぞれに透過表示領域と反射表示領域とを有する半透過反射型液晶装置で、位相差層を液晶セル内の反射表示領域に選択的に設ける構成が知られている(例えば特許文献1)。このような構成によれば、位相差層を液晶セル外の両側かつ全面に設ける構成に比べ、透過表示領域の表示品位を低下させることがなく、また液晶装置を薄型化できる。
【0003】
上述のような位相差層は、一般的に、一対の基板のうちの一方の基板の液晶層側に配置した高分子液晶等の材料からなる層を配向させた状態で硬化させた後、パターニングすることにより反射表示領域に選択的に形成される。一方、一対の基板のギャップを保持するため、フォトスペーサが用いられている。フォトスペーサは、一般的に、一方の基板の液晶層側にスペーサ材料を配置した後、パターニングすることにより画素同士の間の領域に形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−338256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、位相差層を液晶セル内に設ける構成の場合、上述のように、材料を配置しパターニングする工程が必要になるため、位相差層を液晶セル外の両側かつ全面に設ける構成に比べ、製造工数が多くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置は、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に位置する液晶層と、前記第1の基板の前記液晶層側の面上の画素の領域に設けられた第1の位相差層と、前記第1の基板の前記液晶層側の面上の前記画素同士の間の領域に設けられた第2の位相差層と、を備え、前記第2の位相差層は、前記第1の基板と前記第2の基板とのギャップを保持していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第2の位相差層が、液晶層を挟持する第1の基板と第2の基板とのギャップを保持している。すなわち、第2の位相差層がスペーサとしての役割を果たしている。これにより、スペーサの形成が不要になるのでスペーサ形成時のフォトリソグラフィに用いるマスクが不要になり、スペーサ形成工程がなくなるので液晶装置の製造工数を低減できる。
【0009】
また、スペーサの形成が必要な場合、第1の位相差層形成後にスペーサ形成工程を行うことで、スペーサの材料に含まれる溶媒やスペーサ形成時のフォトリソグラフィに用いる現像液等によって、第1の位相差層が部分的に溶解し第1の位相差層の光学特性が損なわれるリスクがある。スペーサの形成が不要になれば、このようなリスクを回避することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第2の位相差層は、前記第1の位相差層とほぼ同じ層厚を有しており、前記第1の基板は、前記液晶層側の前記画素同士の間の領域に、平面視で前記第2の位相差層に重なるように設けられた第1の調整層を備えていてもよい。
【0011】
この構成によれば、第2の位相差層は第1の位相差層とほぼ同じ層厚を有しているので、第1の位相差層と第2の基板との間に所望のギャップを保持するためには、第2の位相差層の層厚だけでは不足する。第2の位相差層に重なるように第1の調整層を設けることにより、第1の基板の第2の位相差層に重なる部分を厚くして、第2の位相差層の層厚の不足分を補うことができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第1の調整層は、着色層を含んでいてもよい。
【0013】
この構成によれば、着色層により第1の基板の第2の位相差層に重なる部分の厚さを厚くできる。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第1の調整層は、積層された色の異なる複数の前記着色層を含んでいてもよい。
【0015】
この構成によれば、着色層を積層することにより第1の基板の第2の位相差層に重なる部分の厚さをより厚くできる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第1の調整層は、遮光層を含んでいてもよい。
【0017】
この構成によれば、遮光層により第1の基板の第2の位相差層に重なる部分の厚さをより厚くできる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第1の調整層は、前記画素の領域を区画する隔壁を含んでいてもよい。
【0019】
この構成によれば、隔壁により第1の基板の第2の位相差層に重なる部分の厚さをより厚くできる。
【0020】
[適用例7]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第2の基板は、前記液晶層側の前記画素同士の間の領域に、平面視で前記第2の位相差層に重なるように設けられた第2の調整層を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、第1の位相差層と第2の基板との間に所望のギャップを保持するために、第2の位相差層と第1の調整層との合計の層厚では足りない場合、第2の調整層の層厚で補うことができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例に係る液晶装置であって、前記第2の調整層は、電極を含んでいてもよい。
【0023】
この構成によれば、電極により第2の基板の第2の位相差層に重なる部分の厚さを厚くできる。
【0024】
[適用例9]上記適用例に係る液晶装置であって、前記画素のそれぞれに設けられた反射表示領域と透過表示領域と、をさらに備え、前記第1の位相差層は前記反射表示領域に配置されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、基板の液晶層側の反射表示領域に位相差層を備えた半透過反射型の液晶装置の製造工数を低減できる。
【0026】
[適用例10]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の液晶装置を備えていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、上記の特徴を有する液晶装置を備えた電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の厚さや寸法の比率等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を一部省略してある。
【0029】
<液晶装置>
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る液晶装置の構成について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の表示領域の一部を示す平面図である。図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図1のA−A’線に沿った部分断面図である。なお、図1では、以下の位置関係の説明に必要な構成要素のみを図示している。本実施形態に係る液晶装置100は、FFS(Fringe-Field Switching)方式の半透過反射型の液晶装置である。
【0030】
図1に示すように、液晶装置100の表示領域には、赤(R)、緑(G)、青(B)の表示に寄与する画素2R,2G,2B(以下では、対応する色について区別しない場合には単に画素2と呼ぶ)が複数配置されている。画素2は、液晶装置100の表示の最小単位であり、隣り合う画素2同士の間に間隔が空くように、格子状に配置されている。なお、X軸は画素2の行方向を示し、Y軸は画素2の列方向を示している。
【0031】
画素2のそれぞれには、反射表示領域Rと透過表示領域Tとが設けられている。X軸に沿った方向に反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列され、Y軸に沿った方向に反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列されている。画素2R,2G,2Bから画素群4が構成されている。液晶装置100では、画素群4において画素2R,2G,2Bのそれぞれの表示の輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0032】
図2に示すように、液晶装置100は、第1の基板としての対向基板10と、第2の基板としての素子基板20と、液晶層30と、第1の位相差層としての位相差層40と、第2の位相差層としての位相差層42と、を備えている。液晶層30は、対向基板10と素子基板20との間に位置している。
【0033】
対向基板10は、液晶装置100の観察側に位置している。対向基板10は、基板11と、着色層12R,12G,12Bと、オーバーコート層14と、を備えている。基板11は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。
【0034】
基板11の液晶層30側の画素2R,2G,2Bのそれぞれの領域には、R、G、Bの3色のそれぞれに対応して、着色層12R,12G,12B(以下では、対応する色について区別しない場合には単に着色層12と呼ぶ)のいずれかが配置されている(図1参照)。例えば、図2に示す画素2Rには、着色層12Rが配置されている。着色層12Rは、画素2Rの領域から画素2同士の間の領域(以下では、画素間領域と呼ぶ)に亘って配置されている。
【0035】
着色層12R上の画素間領域には、第1の調整層としての着色層12G,12Bが積層されている。この着色層12R上に着色層12G,12Bが積層された構成により、画素間領域が遮光される。つまり、積層された着色層12R,12G,12Bは、画素間領域から漏れる光を遮って表示のコントラストを向上させる遮光層としての役割を果たしている。
【0036】
また、着色層12R上に積層された着色層12G,12Bにより、対向基板10の画素間領域における厚さが厚くなる。つまり、着色層12G,12Bは、対向基板10の画素間領域における厚さを厚くして、素子基板20とのギャップを保持できるように調整する役割を果たしている。
【0037】
オーバーコート層14は、画素2の領域と画素間領域とに亘って設けられており、着色層12を覆っている。オーバーコート層14は、例えばアクリル樹脂からなる。オーバーコート層14は、表示領域のほぼ全面に形成されるので、下地(着色層12)表面の凹凸がある程度均された表面形状を有している。したがって、オーバーコート層14の画素間領域における層厚は、画素2の領域における層厚よりも薄くなっている。
【0038】
位相差層40は、対向基板10上の反射表示領域Rにほぼ重なるように配置されている。位相差層42は、対向基板10上の画素間領域に配置されている。位相差層42は、例えば、円形の平面形状を有している。位相差層42の平面形状は、楕円形や多角形であってもよい。位相差層40および位相差層42は、同じ層厚を有している。位相差層40および位相差層42の層厚は、例えば2300nmである。
【0039】
位相差層40は、入射される可視光の波長に対し所定の位相差を付与する。位相差層42は、対向基板10と素子基板20とのギャップG1を保持している。すなわち、位相差層42は、液晶装置100におけるスペーサの役割を果たしている。ギャップG1は、例えば3500nmである。また、位相差層40と素子基板20とのギャップG2は、例えば1200nmである。
【0040】
位相差層40および位相差層42は、複屈折性を有する光硬化性材料または熱硬化性材料が配向された状態で硬化されて形成されている。ここで、位相差層40および位相差層42の形成方法を、その材料として光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶を用いる場合を例にとり説明する。なお、図示は省略する。
【0041】
まず、対向基板10上に配向膜を形成し、その配向膜にラビング法等により配向処理を施す。次に、配向処理を施した配向膜上に、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶と反応開始剤を含む有機溶媒とからなる材料(以下では、位相差層材料と呼ぶ)を、例えばスピンコート法により配置する。このとき、配向膜上に配置された位相差層材料中の液晶分子は、配向膜の配向規制力により配向する。
【0042】
次に、位相差層材料を加熱して有機溶媒を取り除いた後、位相差層40および位相差層42を形成する領域以外の部分をマスキングして、位相差層材料に紫外光を照射する。これにより、位相差層40および位相差層42を形成する領域において位相差層材料の液晶分子のアクリル基が光重合され硬化される。次に、位相差層材料のうちマスキングされ硬化されなかった部分を、例えば有機溶媒により除去する。以上により、対向基板10上に位相差層40および位相差層42が形成される。
【0043】
図2に示すように、素子基板20は、液晶層30を挟んで、対向基板10に対向する側に位置している。素子基板20は、基板21と、TFT素子部22aを含む回路層22と、反射層23と、共通電極24と、絶縁層25と、画素電極26と、を備えている。基板21は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。
【0044】
回路層22は、基板21の液晶層30側に形成されている。TFT素子部22aは、画素2のそれぞれに対応して設けられている。反射表示領域Rに位置する回路層22の上面には、図示しないが、外光を散乱させるための凹凸形状が形成されている。なお、回路層22には、図示しないが、配線パターン、接続部等が設けられている。
【0045】
反射層23は、回路層22上の反射表示領域Rに形成されている。反射層23は、回路層22上面に形成された凹凸形状を反映する形状を有している。反射層23は、反射率の高い金属膜からなる。反射層23の材料は、例えばアルミニウムやAPC(銀−パラジウム−銅の合金)である。共通電極24は、画素2の領域にほぼ重なるように形成されており、反射表示領域Rにおいては反射層23上に形成され、透過表示領域Tにおいては回路層22上に形成されている。共通電極24は、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。
【0046】
共通電極24上には、その上面を覆うように絶縁層25が形成されている。さらに、絶縁層25上には、画素2の領域にほぼ重なるように、複数のスリット状の開口部を有する画素電極26が形成されている。画素電極26は、コンタクトホール22bを介してTFT素子部22aに接続されている。画素電極26は、例えばITOからなる。画素電極26のそれぞれは、着色層12R,12G,12Bのいずれかに対応している。
【0047】
なお、図示しないが、対向基板10および素子基板20の液晶層30とは反対側には、それぞれ偏光板が配置されている。
【0048】
液晶層30は、対向基板10と素子基板20との間に位置している。対向基板10の液晶層30に接する側には、オーバーコート層14と位相差層40および位相差層42とを覆うように配向膜(図示しない)が形成されている。また、素子基板20の液晶層30に接する側には、絶縁層25と画素電極26とを覆うように、配向膜(図示しない)が形成されている。液晶層30は、これらの配向膜に施された配向処理によって配向方向が規制されている。
【0049】
液晶層30は、透過表示領域Tと反射表示領域Rとで層厚が異なる。液晶層30は、透過表示領域TにおいてギャップG1と同じ層厚を有し、反射表示領域RにおいてギャップG2と同じ層厚を有している。このことにより、液晶層30は、入射される可視光の波長に対して透過表示領域Tと反射表示領域Rとで異なる位相差を付与する。
【0050】
反射表示を行う液晶装置100では、光学設計上、暗表示を行う際に反射層23に到達する外光がすべての可視波長域でほぼ円偏光である必要がある。反射層23に到達した外光が楕円偏光であると暗表示に色づきが生じ、高コントラストな反射表示を得ることが困難になるからである。
【0051】
液晶装置100では、反射表示領域Rに対応する領域に選択的に位相差層40を配置し、反射表示領域Rにおける液晶層30の層厚が透過表示領域Tにおける液晶層30の層厚に比べて薄くなるように構成している。これにより、対向基板10側の偏光板と位相差層40と反射表示領域R内の液晶層30とで広帯域円偏光を作り出せるようにして反射層23に到達する外光をほぼすべての可視波長域で円偏光に近づけている。
【0052】
さて、液晶装置100において、ギャップG1は、対向基板10と素子基板20との間を保持する位相差層42の層厚で決まる。ギャップG2は、ギャップG1よりも位相差層40の層厚分だけ小さい。ところが、位相差層42の層厚は位相差層40の層厚と同じであるので、対向基板10と素子基板20との間にギャップG1を保持するためには、位相差層42だけではギャップG2に相当する厚さが不足する。したがって、対向基板10および素子基板20の少なくとも一方において、位相差層42に重なる領域でギャップG2に相当する1200nmの厚さを補う必要がある。
【0053】
本実施形態では、対向基板10の画素間領域において、平面視で位相差層42に重なるように第1の調整層としての着色層12G,12Bが着色層12R上に設けられている。着色層12R,12G,12Bのそれぞれの層厚は、例えば1000nmである。オーバーコート層14の層厚は、画素2の領域において例えば1000nmであり、画素間領域において例えば200nmである。
【0054】
この構成では、対向基板10の厚さは、画素2の領域において2000nmとなり、画素間領域において3200nmとなる。したがって、対向基板10の画素間領域における厚さと画素2の領域における厚さとの差D1は、ギャップG2と同じ1200nmとなる。このように、着色層12G,12Bは、対向基板10の位相差層42に重なる領域における厚さを厚くして位相差層42の層厚の不足分を補い、素子基板20とのギャップG1を保持できるように調整する役割を果たしている。
【0055】
上記第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0056】
(1)位相差層42が、液晶装置100のスペーサとしての役割を果たしている。これにより、スペーサの形成が不要になるので、スペーサ形成時のフォトリソグラフィに用いるマスクが不要になり、スペーサ形成工程がなくなるので、液晶装置100の製造工数を低減できる。
【0057】
(2)スペーサの形成が必要な場合、位相差層40形成後にスペーサ形成工程を行うことで、スペーサの材料に含まれる溶媒やスペーサ形成時のフォトリソグラフィに用いる現像液等によって、位相差層40が部分的に溶解し位相差層40の光学特性が損なわれるリスクがある。スペーサの形成が不要であるので、このようなリスクを回避することができる。
【0058】
(3)位相差層42は位相差層40と同じ層厚を有しているので、位相差層40と素子基板20との間に所望のギャップG2を保持するためには、位相差層42の層厚だけでは不足する。位相差層42に重なるように着色層12G,12Bを設けることにより、対向基板10の位相差層42に重なる部分を厚くして、位相差層42の層厚の不足分を補うことができる。
【0059】
なお、液晶装置100は、着色層12R上に着色層12G,12Bが積層された構成を有しているが、この形態に限定されない。画素間領域を遮光する効果を有しており、かつ画素間領域における対向基板10の厚さの不足分を補うことができれば、液晶装置100は、着色層12R上に着色層12Gまたは12Bのいずれか一方を積層する構成であってもよい。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る液晶装置の構成について図を参照して説明する。図3は、第2の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図である。なお、第1の実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0061】
第2の実施形態に係る液晶装置200は、第1の実施形態に係る液晶装置100に対して、対向基板10が画素間領域に遮光層16を備えており着色層12Bが積層されていない点と、素子基板20が画素間領域にダミー電極27を備えている点とが異なっているが、その他の構成は同じである。
【0062】
図3に示すように、対向基板10は、基板11と、遮光層16と、着色層12R,12Gと、オーバーコート層14と、を備えている。遮光層16は、基板11上の画素間領域に配置されており、格子状に形成されている。遮光層16は、平面視で位相差層42に重なっている。遮光層16の層厚は、例えば900nmである。
【0063】
着色層12Rは、画素2Rの領域から画素間領域に亘って配置されており、画素間領域においては遮光層16上に積層されている。着色層12R上の画素間領域には、着色層12Gが積層されている。本実施形態では、第1の調整層としての遮光層16と着色層12Gとにより、対向基板10の画素間領域における厚さが厚くなっている。
【0064】
素子基板20は、基板21と、TFT素子部22aを含む回路層22と、反射層23と、共通電極24と、絶縁層25と、画素電極26と、第2の調整層としてのダミー電極27と、を備えている。ダミー電極27は、絶縁層25上の画素間領域に、平面視で位相差層42に重なるように設けられている。ダミー電極27の層厚は、例えば100nmである。ダミー電極27により、素子基板20の画素間領域における厚さが厚くなっている。
【0065】
この構成では、対向基板10の厚さは、画素2の領域において2000nmとなり、画素間領域において3100nmとなる。したがって、対向基板10の画素間領域における厚さと画素2の領域における厚さとの差D1は1100nmとなる。この差D1は、位相差層42でギャップG1を保持するために必要なギャップG2に相当する厚さに対して、100nm不足している。一方、ダミー電極27が設けられたことにより、素子基板20の画素間領域における厚さと画素2の領域における厚さとの差D2は100nmとなる。この差D2により、対向基板10における差D1の不足分を補うことができる。
【0066】
上記第2の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0067】
(1)対向基板10の画素間領域における厚さを厚くしても所望の値に対して不足する場合、ダミー電極27により素子基板20の画素間領域における厚さを厚くしてその不足分を補い、対向基板10と素子基板20とのギャップG1を保持できるように調整することができる。
【0068】
(2)ダミー電極27は、遮光層16および着色層12に比べて層厚が薄いので、より小さな範囲で厚さの調整ができる。したがって、遮光層16および着色層12により対向基板10側で調整できない小さい範囲の厚さを、ダミー電極27により素子基板20側で調整することが可能である。
【0069】
なお、液晶装置200は、第2の調整層として、ダミー電極27の代わりに無機膜または有機膜を備えていてもよい。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る液晶装置の構成について図を参照して説明する。図4は、第3の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図である。なお、第1の実施形態および第2の実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0071】
第3の実施形態に係る液晶装置300は、第2の実施形態に係る液晶装置200に対して、対向基板10が画素間領域に隔壁18を備えており遮光層16と着色層12とが積層されていない点と、素子基板20が画素間領域にダミー電極28を備えている点とが異なっているが、その他の構成は同じである。
【0072】
図4に示すように、対向基板10は、基板11と、隔壁18と、着色層12Rと、オーバーコート層14と、を備えている。隔壁18は、基板11上の画素間領域に配置されており、格子状に形成されている。
【0073】
隔壁18は、平面視で位相差層42に重なっている。隔壁18は、画素2のそれぞれの領域を区画している。隔壁18は、着色層12Rを液滴吐出法を用いて形成する際に、着色層12Rの液材料が画素2の領域外に広がるのを防止するためのものである。隔壁18は、例えば、遮光性を有するアクリル樹脂からなる。隔壁18の層厚は、例えば2700nmである。
【0074】
着色層12Rは、隔壁18により区画された領域に配置されている。オーバーコート層14は、着色層12Rと隔壁18とを覆っている。本実施形態では、第1の調整層としての隔壁18により、対向基板10の画素間領域における厚さが厚くなっている。
【0075】
素子基板20は、基板21と、TFT素子部22aを含む回路層22と、反射層23と、共通電極24と、絶縁層25と、画素電極26と、ダミー電極27と、ダミー電極28と、を備えている。ダミー電極28は、回路層22と絶縁層25との間の画素間領域に、平面視で位相差層42に重なるように設けられている。ダミー電極28の層厚は、例えば200nmである。本実施形態では、第2の調整層としてのダミー電極27とダミー電極28とにより、素子基板20の画素間領域における厚さが厚くなっている。
【0076】
この構成では、対向基板10の厚さは、画素2の領域において2000nmとなり、画素間領域において2900nmとなる。したがって、対向基板10の画素間領域における厚さと画素2の領域における厚さとの差D1は900nmとなる。この差D1は、位相差層42でギャップG1を保持するために必要なギャップG2に相当する厚さに対して、300nm不足している。一方、ダミー電極27とダミー電極28とが設けられたことにより、素子基板20の画素間領域における厚さと画素2の領域における厚さとの差D2は300nmとなる。この差D2により、対向基板10における差D1の不足分を補うことができる。
【0077】
上記第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0078】
ダミー電極27とダミー電極28とを備えることにより、素子基板20の画素間領域における厚さの調整範囲を広くすることができる。
【0079】
なお、液晶装置300は、第2の調整層として、ダミー電極27またはダミー電極28の代わりに無機膜または有機膜を備えていてもよい。
【0080】
<電子機器>
上述した液晶装置100,200,300は、例えば、図5に示すように、電子機器としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部502に液晶装置100,200,300を備えている。この構成により、表示部502を有する携帯電話機500は優れた表示品質を有している。
【0081】
また、電子機器は、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、オーディオ機器、液晶プロジェクタであってもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0083】
(変形例)
上記の実施形態の液晶装置は、FFS方式の半透過反射型の液晶装置であったが、この形態に限定されない。液晶装置は、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式の液晶装置、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式の液晶装置、VA(Vertical Alignment)方式の液晶装置であってもよい。また、液晶装置は、反射型の液晶装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施形態に係る液晶装置の表示領域の一部を示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図3】第2の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図4】第3の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図5】本実施の形態における電子機器を示す図。
【符号の説明】
【0085】
2…画素、4…画素群、10…対向基板、11…基板、12…着色層、14…オーバーコート層、16…遮光層、18…隔壁、20…素子基板、21…基板、22…回路層、22a…TFT素子部、22b…コンタクトホール、23…反射層、24…共通電極、25…絶縁層、26…画素電極、27…ダミー電極、28…ダミー電極、30…液晶層、40…位相差層、42…位相差層、100,200,300…液晶装置、500…携帯電話機、502…表示部、R…反射表示領域、T…透過表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に位置する液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側の面上の画素の領域に設けられた第1の位相差層と、
前記第1の基板の前記液晶層側の面上の前記画素同士の間の領域に設けられた第2の位相差層と、を備え、
前記第2の位相差層は、前記第1の基板と前記第2の基板とのギャップを保持していることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記第2の位相差層は、前記第1の位相差層とほぼ同じ層厚を有しており、
前記第1の基板は、前記液晶層側の前記画素同士の間の領域に、平面視で前記第2の位相差層に重なるように設けられた第1の調整層を備えていることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶装置であって、
前記第1の調整層は、着色層を含んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶装置であって、
前記第1の調整層は、積層された色の異なる複数の前記着色層を含んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の液晶装置であって、
前記第1の調整層は、遮光層を含んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の液晶装置であって、
前記第1の調整層は、前記画素の領域を区画する隔壁を含んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の液晶装置であって、
前記第2の基板は、前記液晶層側の前記画素同士の間の領域に、平面視で前記第2の位相差層に重なるように設けられた第2の調整層を備えていることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶装置であって、
前記第2の調整層は、電極を含んでいることを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶装置であって、
前記画素のそれぞれに設けられた反射表示領域と透過表示領域と、をさらに備え、
前記第1の位相差層は前記反射表示領域に配置されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−198859(P2009−198859A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41076(P2008−41076)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】