説明

液晶装置の製造方法

【課題】画素領域と画素領域間とで配向規制力を異ならせた配向膜を備えた液晶装置を良好に製造する。
【解決手段】一対の基板間に液晶層が挟持され、一方の基板には金属または金属酸化物が形成材料の複数の画素電極11が形成され、複数の画素電極11間の領域を覆う第1配向膜14と、複数の画素電極11の各々を覆う第2配向膜15と、を備える液晶装置の製造方法であって、画素電極11を覆って第1材料膜14aを形成する工程と、第1材料膜14a上に画素電極11が設けられていない領域を覆うレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクとして第1材料膜14aをエッチングし画素電極11を露出させる工程と、画素電極11上に気相蒸着法を用い第2材料膜15aを形成する工程と、を備え、第1材料膜14aの形成材料は有機高分子化合物であり、第2材料膜15aの形成材料はアルキル基を有するシラン化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶装置は、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の表示部として、あるいはプロジェクタのライトバルブ等として幅広く用いられている。液晶装置は、例えば画素電極と共通電極との間に挟持された液晶層、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜等を備えている。液晶層に電界が印加されると液晶分子の方位角が変化し、液晶層を通る光の偏光状態が変化する。これにより、液晶層を通った光の一部が偏光板に吸収されて所定の階調の光となり液晶装置から射出される。
【0003】
液晶装置には、表示品質を向上させる観点から広視野角の確保や応答速度の向上、高コントラスト化、高精細化、高輝度化等が期待されている。これらを実現する上で、液晶分子の配向を制御する技術は極めて重要である。例えば、垂直配向(VA)方式の液晶装置では、初期状態において液晶分子が基板表面に対して略垂直に屹立しているため、電圧無印加の状態で液晶装置を透過する光が液晶分子の影響を受けず、偏光板でほぼ完全に遮断されるように設計が可能である。そのため、高品質な黒表示を実現でき、コントラスト比を高くしやすいという特長を有する。
【0004】
しかし、VA方式の液晶装置では、電圧印加時の液晶分子の傾倒方向が規定されていないと、様々な方向に液晶分子が倒れてしまい、透過率の低下が生じるという課題がある。そのため特許文献1には、初期配向状態において液晶分子にプレチルト角を与える配向膜を設けることで、電圧印加時に液晶分子が倒れる方向を一方向に揃える構成が提案されている。
【0005】
しかし特許文献1の構成によれば、プレチルト角を大きくして液晶分子が倒れる方向を確実に規定しようとすると、液晶分子が備える屈折率異方性の影響により、電圧無印加状態において液晶装置を透過する光に位相差が生じる。生じる位相差は黒表示時の光漏れの原因となるため、表示品質の低下につながる。そのため、画素領域と画素領域間とで異なる特性の配向膜を設けることにより、良好な液晶装置とする構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
特許文献2には、画素部には垂直配向膜(プレチルト角が実質0°)、画素部周辺には液晶分子に対して所定の方位角の方向に傾斜したプレチルト角を与える水平配向膜、という2種の配向膜を選択的に設けた液晶装置が示されている。特許文献2では、基板上に一方の配向膜を選択的に形成した後、一方の配向膜を形成していない領域に他方の配向膜を形成している。
【0007】
このような構成では、電圧印加時に、水平配向膜上に配置される液晶分子が所定の方位角の方向に倒れる。すると、垂直配向膜上に配置される液晶分子は、水平配向膜上に配置される液晶分子からの配向規制力を受け、同じ方位角の方向に倒れる。そのため、垂直配向膜にプレチルト角を設定することなく、垂直配向膜上に配置される液晶分子の倒れる方向を制御することができる。
【0008】
また、特許文献2のように、液晶分子に対して異なるプレチルト角を備える複数の配向膜を一方の基板上に備える液晶装置の他の例として、特許文献3の構成が挙げられる。特許文献3には、低チルト角の配向膜上に部分的に高プレチルト角の配向膜を積層して形成した構成が提案されている。
【特許文献1】特開2004−163921号公報
【特許文献2】特開2007−155949号公報
【特許文献3】特開2007−232848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記方法には次のような問題がある。すなわち、特許文献2では、液滴吐出法を用いて各配向膜を選択的に形成することとしている。そのため、製造する液晶装置の画素が高精細化していくと、液滴吐出法による選択的な塗り分けが困難となり、液晶装置の高品質化が困難となる。
【0010】
特許文献3では、先に形成した低プレチルト角の配向膜上に、液滴吐出法を用いて高プレチルト角の配向膜を形成することとしているが、形成工程において、低プレチルト角の配向膜の性質により、配向膜上に配置する液滴がはじかれ、または塗れ広がってしまい、正確な塗り分けが困難であるという課題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、画素領域と画素領域間とで配向規制力を異ならせた配向膜を備えた液晶装置を良好に製造可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板間に誘電異方性が負の液晶分子を含む液晶層が挟持され、前記一対の基板のうち一方の基板の前記液晶層側には金属または金属酸化物を形成材料とする複数の画素電極が形成されていると共に、少なくとも前記複数の画素電極の間の領域を覆う第1配向膜と、前記複数の画素電極の各々を覆い前記第1配向膜と当接する複数の第2配向膜と、を備える液晶装置の製造方法であって、前記一方の基板上に、前記複数の画素電極を覆って前記第1配向膜の形成材料である第1材料膜を形成する工程と、前記第1材料膜上に、少なくとも前記画素電極が設けられていない領域を覆うレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記第1材料膜をエッチングし、前記画素電極を露出させる工程と、露出した前記画素電極上に、気相蒸着法を用いて前記第2配向膜の形成材料である第2材料膜を形成する工程と、を備え、前記第1材料膜の形成材料は、有機高分子化合物であり、前記第2材料膜の形成材料は、アルキル基を有するシラン化合物を含むことを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、フォトリソグラフィ技術を用いることで精細な加工を施した第1材料膜を形成することが可能である。また、第2材料膜は気相蒸着法を用いて形成する。そのため、第1材料膜に施された加工が微細なものであっても、第1材料膜から露出する画素電極が第2材料膜の原料の気体分子よりも大きい開口部から露出していれば、画素電極の表面に第2材料膜の原料気体が達し、第2材料膜を良好に成膜することができる。
【0014】
この際、第2材料膜の形成材料がシラン化合物であるために、表面に水酸基(−OH)を有さない有機高分子材料である第1材料膜上には付着しにくく、一方で、金属または金属酸化物を形成材料とする画素電極上に選択的に付着する。そのため、本方法によれば、画素領域と画素領域間とで異なる形成材料を成膜して配向規制力を異ならせた配向膜を容易に作り分けることができ、高画質な画像表示が可能な液晶装置を製造することができる。
【0015】
本発明においては、前記レジストパターンを形成する工程は、前記レジストパターンの形成材料を含む液状体を塗布し加熱して、前記液状体が含む溶媒を除去すると共に前記レジストパターンの形成材料を成膜する加熱工程を有し、前記加熱工程は、前記溶媒が蒸発する温度以上で、且つ、前記第1材料膜と前記レジストパターンの形成材料とが化学反応により結合する温度より低い温度で行うことが望ましい。
この方法によれば、不要な溶媒の除去を好適に行うことができると共に、第1材料膜とレジストパターンの形成材料とが化学結合する副反応を抑えることができる。そのため、レジストパターンを用いたエッチングの後で、第1材料膜の表面を劣化させることなく、また、第1材料膜表面にレジストパターンの残渣を残すことなく、良好にレジストパターンを除去することができ、高品質な配向膜を形成することができる。
【0016】
本発明においては、前記第2材料膜を形成する工程は、前記第2材料膜の形成材料を前記一方の基板の全面に蒸着する工程と、前記一方の基板の前記第2材料膜の形成材料を蒸着した面を、前記第2配向膜の形成材料の多量体を可溶な有機溶剤を用いて洗浄する工程と、を有することが好ましい。
この方法によれば、第1材料膜上に積層する多量体を有機溶剤によって良好に除去することができるため、蒸着マスクを用いることなく良好に第2材料膜を形成することができる。
【0017】
本発明においては、前記レジストパターンの形成材料には、ポジ型感光性樹脂を用いることが望ましい。
この方法によれば、エッチングにより除去する第1材料膜に重なる部分を露光してレジストパターンを形成するため、残存させる第1材料膜は露光による悪影響を受けることなく、信頼性の高い配向膜を形成することができる。
【0018】
本発明においては、前記画素電極を露出させる工程では、前記エッチングをドライエッチングにより行うことが望ましい。
第1材料膜上にレジストパターンを形成するためには、第1材料膜はレジスト形成材料を溶解する溶媒に対して難溶性にすることが好ましい。このような場合、ウエットエッチングを行うためには用いる第1材料膜の形成材料に応じて、適切なエッチャントを探し選択する必要があるが、ドライエッチングを用いると第1材料膜の溶媒に対する溶解性に関わらず良好なエッチングが可能となる。
【0019】
本発明においては、前記画素電極を露出させる工程では、前記ドライエッチングを、酸素プラズマを用いたプラズマエッチングにより行うことが望ましい。
この方法によれば、画素電極上に酸素プラズマ由来の水酸基が形成されるため、気相蒸着法を用いたシラン化合物の付着が良好に進行しやすくなる。
【0020】
本発明においては、前記シラン化合物は、炭素数6から20の直鎖アルキル基を備えることが望ましい。
分岐がない直鎖アルキル基を備えるシラン化合物を用いると、分岐構造を備える置換基よりも立体障害が小さいため、シラン化合物同士が密集した第2材料膜を画素電極上に形成することができる。この際、アルキル基の炭素数が5以下となると、液晶分子と相互作用し液晶分子に配向規制力を与える役割を有する分子鎖が短く、液晶分子に対する配向規制力が弱くなる。また、アルキル基の炭素数が21以上となると、立体障害が大きくなりすぎるために、シラン化合物同士が密集した第2材料膜を画素電極上に形成することが困難となる。そのため、配向規制力を確保するために必要な密度でシラン化合物を配置することが困難となり、液晶分子に対する配向規制力が弱くなる。したがって、シラン化合物が備える直鎖アルキル基の炭素数を6から20とすることで、良好な配向膜とすることができる。
【0021】
本発明においては、前記シラン化合物は、官能基としてアルコキシ基を備えるアルコキシシランであることが望ましい。
この方法によれば、官能基がアルコキシ基であるため、気相蒸着法によってシラン化合物から生じる副生成物がアルコキシ基由来のアルコールとなる。そのため、官能基としてハロゲンやアミノ基を用いた場合と比べ、副生成物が画素電極や第1材料膜を腐食することなく、良好に製造することができる。
【0022】
本発明においては、前記アルコキシシランは、1官能のモノアルコキシシランであることが望ましい。
気相蒸着法により第2材料膜を形成する場合、シラン化合物同士が気相部で反応する副反応が生じる。その際、官能基を2以上備えるシラン化合物を用いると、気相部において複数のシラン化合物同士が反応し、高分子量で難溶性の多量体が生成するおそれがある。このような難溶性の多量体は除去が困難であり、品質低下を招くおそれがある。しかしこの方法によれば、1官能のシラン化合物を用いるため、気相部での副反応により生じるシラン化合物同士の反応物は低分子量の2量体としかならないため、適宜リンス等の処理を行うことにより容易に除去することができる。そのため、容易に高品質な液晶装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る液晶装置の製造方法について説明する。まず図1を用いて、本発明に係る製造方法で製造する液晶装置の例を説明し、図2,3を用いて、図1で示す液晶装置を製造する製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0024】
図1は、本実施形態の製造方法で製造する液晶装置を示す説明図であり、図1(a)は液晶装置の画素を拡大して示す平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線に沿う断面図を示す。
【0025】
図1(a)に示すように、本実施形態の液晶装置1は、複数の有効画素領域(画素)Pを有しており、複数の画素Pの間が非有効画素領域Dになっている。本実施形態では、複数の画素Pの各々が略長方形状になっており、各々の画素Pの長軸方向が略同一方向に一致している。各画素Pは、各々の長軸方向および短軸方向に平行な配列軸に沿って並んでおり、行列状に配置されている。
【0026】
図1(b)に示すように、液晶装置1は、画素電極11を有する素子基板(一方の基板)10、素子基板10と対になり対向配置された対向基板20と、及びこれら基板間に挟持されている、誘電異方性が負の液晶材料LCを主体としてなる液晶層30と、を備えている。液晶装置1は、例えば、素子基板10側から液晶装置1内に入射する光を液晶層30で変調し対向基板20側へ射出する、透過型の液晶装置である。
【0027】
素子基板10は、例えばアクティブマトリクス型のものであり、ガラスや石英、プラスチック等からなる透明基板10Aを基体としている。透明基板10Aの液晶層30側には、薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子、データ線や走査線等の各種配線等を有する素子形成層13が設けられている。データ線は画像信号を供給するデータ線駆動回路と電気的に接続されており、走査線は走査信号を供給する走査線駆動回路と電気的に接続されている。スイッチング素子や各種配線を覆って絶縁膜が設けられている。
【0028】
絶縁膜の液晶層30側には画素Pごとに島状の画素電極11が形成されており、画素電極11の各々はスイッチング素子と電気的に接続されている。画素電極11はITO等の金属酸化物を主体とする透明導電材料からなるものである。スイッチング素子は、走査信号に基づいて画像信号をスイッチングし、これを画素電極11に所定のタイミングで供給するようになっている。
【0029】
これらスイッチング素子や各種配線と重なる部分の素子形成層13に遮光部13dが形成されている。平面的に遮光部13dと重なる領域が非有効画素領域Dとなっており、非有効画素領域Dは遮光部13dにより規定されている。遮光部13の非形成領域が画素Pになっており、照明光が画素Pを通るようになっている。ここでは、画素電極11が画素Pからその周辺の非有効画素領域Dに張出して形成されている。透明基板10Aにおける液晶層30と反対側には、偏光板12が設けられている。
【0030】
画素Pにおける画素電極11の液晶層30側には第1配向膜14および第2配向膜15が同一の面内に形成されている。本実施形態では、画素電極11上を覆って第2配向膜15が設けられており、画素Pと第2配向膜15の形成領域とがほぼ一致している。また、第1配向膜14は、非有効画素領域Dにおける第2配向膜15の間、すなわち画素電極11間の透明基板10Aと画素電極11の周縁とを覆って設けられている。なお、少なくとも画素Pの全体と重なるように第2配向膜15が配置されていればよく、画素Pから画素P周辺の非有効画素領域Dに張出して第2配向膜15が設けられていてもよい。
【0031】
第1配向膜14の形成材料としては、公知の水平配向材を用いることができる。本実施形態では市販品のポリイミド水平配向材(日産化学工業製サンエバーSE−3140)を採用している。
【0032】
第2配向膜15の形成材料としては、アルキル基を含有するシラン化合物を用いる。シラン化合物が有する置換基としては直鎖アルキル基が好ましく、炭素数が6〜20程度のアルキル基を有するもの、例えばオクタデシルトリエトキシシランやヘキシルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。第2配向膜15は、これらの材料の単分子膜として形成されており、第2配向膜15の表面硬さは、下地となる画素電極11の硬度を強く反映するものとなっている。本実施形態では、第2配向膜15の形成材料としてヘキシルジメチルエトキシシランを採用している。このように無機成分を含んだ第2配向膜を採用すれば、第2配向膜を通る光による光分解や光の吸収による熱分解等に対する化学的安定性が高くなる。
【0033】
第1配向膜14は、第2配向膜15よりも液晶分子を水平配向させる配向規制力が強くなっている。第2配向膜15は、液晶層30において平面的に重なる部分の液晶分子を垂直配向させる配向規制力を有している。本発明において、垂直配向とは液晶分子の極方向が透明基板10Aの法線方向となす角度であるプレチルト角が45°未満である配向状態を意味する。また、本発明はマルチドメインの液晶装置に関するものであり、水平配向とは、垂直配向の液晶層側よりもプレチルト角が大きい配向状態を意味する。ここでは、画素Pにおける液晶分子のプレチルト角を実質0°にしており、非有効画素領域Dにおける液晶分子のプレチルト角を画素P側よりも大きくしている。
【0034】
対向基板20は、ガラスや石英、プラスチック等からなる透明基板20Aを基体としている。透明基板20Aの液晶層30側にはベタ状の共通電極21が設けられており、その液晶層30側には第3配向膜22が設けられている。本実施形態の第3配向膜22は、画素Pと非有効画素領域Dとにわたってベタ状に形成された垂直配向膜であり、画素Pと非有効画素領域Dとで配向規制力が同様になっている。
【0035】
透明基板20Aにおける液晶層30と反対側には、偏光板23が設けられている。ここでは、偏光板12と偏光板23とは、各々の光学軸が直交するクロスニコル配置となっている。本実施形態では、素子基板10に遮光部13dを設けることとしたが、対向基板20の非有効画素領域Dと平面的に重なる領域に遮光部13dと同様の遮光部材を配置することもできる。
【0036】
以上のような液晶装置1では、画像信号が供給されていない状態(電圧無印加状態)で画素Pと平面的に重なる領域に配置される液晶分子LC1は、垂直配向膜である第2配向膜15と第3配向膜22とに挟持されるため垂直配向状態となる。一方で、非有効画素領域Dと平面的に重なる領域に配置される液晶分子LC2は、水平配向膜である第1配向膜14と垂直配向膜である第3配向膜22とに挟持される。第3配向膜22の形成材料としては、ポリイミド等の通常知られた材料を用いることができる。
【0037】
この場合、第1配向膜14の配向規制力を受けた液晶分子LC2が所定のプレチルト角を有して配向し、傾斜した液晶分子LC2が平面的に重なる液晶分子に配向規制力を及ぼす。そのため、第1配向膜14と重なる液晶分子LC2は、第2配向膜15と重なる液晶分子LC1と異なり、プレチルト角を有して傾斜した配向状態となる。図1(b)では、水平配向膜の影響を受け画素Pと重なる領域の液晶分子とは配向状態が異なることを強調するために、素子基板10側および対向基板20側において同様に液晶分子を傾斜させて図示している。
【0038】
このような液晶装置1に、画素電極11に画像信号が供給されていない状態で、例えば素子基板10側から照明光が供給されると、非有効画素領域Dでは照明光が遮光部13dによって遮られる。また、画素Pに入射した照明光のうち偏光板12の光学軸に直交する偏光が偏光板12に吸収され、光学軸に沿った偏光が偏光板12を通って液晶層30に入射する。画素Pの液晶層30で液晶分子が垂直配向しているので、ここに入射した光はその偏光状態がほとんど変化することなく対向基板20に入射する。対向基板20に入射した光は、偏光板23の光学軸が偏光板12と略直交しているので、そのほとんどが偏光板23に吸収される。このようにして、高品質な黒表示が得られるようになっている。
【0039】
また、画素電極11に画像信号が供給された状態で照明光が供給されると、画素Pでは偏光板12の光学軸に沿った偏光が液晶層30に入射する。画素電極11と共通電極21との間には画像信号に応じた電界が印加されており、この電界に応じて画素Pにおける液晶分子LCの傾斜角が変化する。
【0040】
ここで、液晶分子LC1の傾斜角が変化する方向(液晶分子が倒れる方向)は、非有効画素領域Dの液晶分子LC2の配向方向により規制される。そのため、液晶分子LCが倒れる方向にばらつきを生じることによるディスクリネーションの発生が防止され、ディスクリネーションによるコントラスト低下が防止される。画素Pにおける液晶層30に入射した光は、液晶分子の傾斜角に応じて偏光状態が変化し対向基板20に入射する。対向基板20に入射した光は、その偏光状態の変化に応じて偏光板23の光学軸に直交する偏光が吸収され、対向基板20から射出される。このように、画像信号に応じた階調の光が得られるようになっている。本実施形態の製造方法で製造する液晶装置1は、以上のような構成となっている。
【0041】
次に、図2および図3を用いて、本実施形態の液晶装置1の製造方法を、素子基板10の形成工程を中心にして説明する。図2および図3は、素子基板10の製造工程を示す工程図である。
【0042】
まず、図2(a)に示すように、透明基板10A上に遮光部13dを有する素子形成層13を形成し、素子形成層13上に島状の画素電極11を形成する。具体的には、ガラスや石英、プラスチック等の透光性を有する透明基板10Aに、図示略の走査線、データ線等の各種配線やスイッチング素子等を形成する。こららは、適宜層間絶縁膜等を介して配置し、各種配線やスイッチング素子と重なる部分に遮光部13dを形成しておく。そして、スイッチング素子と電気的に接続された島状の画素電極11を形成する。画素電極11は、画素Pとなる領域からその周辺に張出して形成する。
【0043】
次いで、図2(b)に示すように、透明基板10Aと画素電極11とを覆って第1材料膜14aを形成する(第1材料膜を形成する工程)。第1材料膜14aは後に第1配向膜14となる膜である。本実施形態では、市販品のポリイミド水平配向材(日産化学工業製サンエバーSE−3140)を形成材料とし、これを塗布法で透明基板10A上と画素電極11上とを覆ってベタ状に成膜する。そして、この膜を焼成して後述するポジ型フォトレジストを含む溶液の溶媒に対して不溶な第1材料膜14aを形成する。
【0044】
次いで、図2(c)に示すように、遮光部13dと平面的に重なる第1材料膜14aを覆ってレジストパターンRを形成する(レジストパターンを形成する工程)。ここでは、第1材料膜14aを覆ってポジ型フォトレジスト(例えば、住友化学株式会社製スミレジストPFM−12)を含む溶液を塗布してベタ状に成膜し(塗布する工程)、このフォトレジスト膜を150℃の基板温度で焼成する(溶媒を除去する工程)。そして、例えばg線(波長436nm)やi線(波長365nm)を遮光する遮光部を有したフォトマスクを、その遮光部の全体が非表示画素領域Dとなる箇所の全体に重なるように配置する。そして、フォトマスクを介してフォトレジスト膜にg線やi線を照射してこの膜を露光し、アルカリ現像液等を用いてこの膜を現像することにより、レジストパターンRが得られる。このように形成するレジストパターンRは微細な加工が可能であり、製造する液晶装置の高精細化に対応可能である。
【0045】
本工程における基板温度の設定は、次のような理由に基づいている。本発明者は、後に行うプロセスでレジストパターンRを第1材料膜14aから良好に剥離することが可能な条件について調査した。その結果、レジストパターンRの形成材料を焼成する際に、基板温度を適切に調整することによりレジストパターンRと第1材料膜14aとの密着性を制御することができることが分かった。
【0046】
一般に、配向膜は、形成が必要な箇所に配向膜の形成材料の前駆体を塗布し、前駆体の有する官能基を反応させて重合させ形成する。このような高分子材料の反応の場合には、前駆体が備える全ての官能基を反応させて重合を完結させることは困難であるため、前駆体に由来する官能基がわずかながらも残存した状態で配向膜として用いることが一般的である。
【0047】
一方、フォトレジストは、フォトレジスト自体が多くの官能基を有した分子構造をしている。また、フォトレジストには下地(ここでは第1材料膜14a)との密着性を高めるシランカップリング剤のようなカップリング剤等の添加剤が含まれていることが多い。
【0048】
配向膜の形成材料とフォトレジストとがこのような関係である場合、図2(c)の説明で示した焼成の温度によっては、レジストパターンRと第1材料膜14aとが強固に結合する。即ち、配向膜の形成材料内で重合反応を起こすべき前駆体由来の官能基が、レジストパターンRの形成材料が備える官能基と化学反応し、化学結合を生じてしまう。
【0049】
例えば、本実施形態の液晶装置では、第1材料膜14aとしてポリイミドを用いることとしている。ポリイミド膜は、工業的には前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を配置し、熱、または触媒を用いて脱水・環化(イミド化)反応を進めることで形成する。そのため、ポリイミド膜には、ポリアミック酸に由来するアミノ基(−NH−)や、カルボキシル基(−COOH)が残存していることが想定される。このような官能基を残した第1材料膜14aに対して、フォトレジストが有するシランカップリング剤のようなカップリング剤は水はアルコールが脱離する縮合反応を起こし、強固な共有結合を生じる。
【0050】
また、フォトレジストが有する官能基とポリイミド膜のアミノ基およびカルボキシル基との縮合反応も考えられる。例えば、フォトレジストがノボラック/キノンジアジド系のポジ型レジストである場合、ノボラックが有する酸性の水酸基(−OH)や、キノンジアジド化合物の分解物が有するカルボキシル基と、前述のポリイミド膜のアミノ基およびカルボキシル基とが縮合反応を起こすことで、強固な共有結合を有する高分子鎖を形成することが想定される。
【0051】
前述したように、第1材料膜14aが有する前駆体に由来する官能基は僅かであるとしても、化学反応は熱により促進されるため、昇温により反応確率が上がり、第1材料膜14aとフォトレジストとが例に挙げたような化学反応をするおそれがある。そのため、図2(c)で示した工程においては、フォトレジストとの反応をおさえる目的で、フォトレジストと第1材料膜14aとが化学反応し化学結合を生じる温度未満で焼成を行う。検討の結果、本実施形態の材料の組み合わせでは、基板温度を150℃以下とすると良いことが分かった。
【0052】
また、本工程の焼成は、ポジ型フォトレジスト溶液の溶媒の除去と、フォトレジストと第1材料膜14aとの密着性増強を目的として行う。密着性増強は、前述のカップリング剤の機能によるところが大きいため、焼成温度が低すぎると操作の主旨から外れる。したがって、少なくともフォトレジスト溶液の溶媒が蒸発する温度以上であり、更にはカップリング剤の反応を促進する温度以上での加熱を行う。また、溶媒の蒸発を促進するため、必要に応じて減圧環境下で加熱しても良い。
【0053】
以上のような理由により、上述したような基板温度に設定することで、レジストパターンRと第1材料膜14aとの密着性を制御することができ、後述する工程において第1材料膜14aに表面荒れを生じることなくレジストパターンRを剥離することができる。
【0054】
また、レジストパターンRの材料としては、ポジ型・ネガ型いずれも使用することが可能であるが、ポジ型フォトレジストを用いるほうがより望ましい。ポジ型フォトレジストを用いる場合、レジストパターンRのパターニング時に露光される第1材料膜14aは、後の工程で除去する箇所の材料膜である。そのため、露光による第1材料膜14aの劣化が形成される配向膜の品質に影響を与えることなく、信頼性の高い配向膜とすることが可能となる。
【0055】
次いで、図2(d)に示すように、レジストパターンRをマスクとし、エッチングにより画素Pの第1材料膜14aを除去してパターニングする(画素電極を露出させる工程)。微細加工が成されるレジストパターンRに基づいてエッチングを行うため、第1材料膜14aの微細加工が可能となる。エッチングにはドライエッチング法、ウエットエッチング法のいずれを用いることもできるが、ドライエッチング法の方が好ましい。
【0056】
本実施形態の製造方法では、第1材料膜14a上にレジストパターンRを形成するために、ポジ型フォトレジストを含む溶液の溶媒に対して不溶な第1材料膜14aを形成することとしている。そのため、ポジ型フォトレジスト溶液の溶媒と異なる性質で第1材料膜14aをエッチング可能なエッチャントを探し出し選択することとしても良いが、ドライエッチングを用いるとエッチャントに対する第1材料膜の溶解性を検討する必要なく、良好なエッチングが可能となる。また、ウエットエッチングと比べより微細加工が行いやすい点も好適である。
【0057】
中でも、酸素プラズマによるアッシングをドライエッチング法として用いると良い。酸素プラズマを用いると、エッチング後に画素電極11表面に酸素プラズマ由来の水酸基が形成される。そのため、後述する気相蒸着法を用いた第2材料膜の形成工程で、シラン化合物の付着が良好に進行する。
【0058】
以上のようにして、ベタ成膜された第1材料膜14aをエッチングし、パターニングされた第1材料膜14aとする。
【0059】
次いで、図3(a)に示すようにレジストパターンRを除去する。前述のように150℃以下の基板温度で焼成してレジストパターンRを形成しているので、レジストパターンRを良好に剥離し除去することができる。
【0060】
次いで、図3(b)に示すように、画素Pにおける画素電極11上にCVD法を用いて第2材料膜15aを形成する(第2材料膜を形成する工程、蒸着する工程)。図では、透明基板10A毎に第2材料膜15aの形成を行うバッチ式のCVD工程について示してある。具体的には、第2材料膜15aの形成材料420が入った容器410と、第1材料膜14aが形成された透明基板10Aとを密閉容器400内に放置し、密閉容器400内を例えば150℃以上の温度で1時間程度加熱することによって、第2材料膜15aの形成材料の蒸気を画素電極11の表面に接触させる。ここではバッチ式のCVD法を示したが、第1材料膜14aが形成された透明基板10Aを加熱した上で、第2材料膜15aの形成材料のガスを吹き付けるフロー式のCVD法であっても良い。
【0061】
ここで、第2材料膜15aの形成材料420は、アルキル基を備えるシラン化合物を用いる。アルキル基としては炭素数6から20の直鎖アルキル基が好ましい。分岐がない直鎖アルキル基を備えるシラン化合物を用いると、分岐構造を備える置換基よりも立体障害が小さいため、シラン化合物同士が密集した第2材料膜15aを画素電極11上に形成することができる。
【0062】
炭素数については、アルキル基の炭素数が5以下となると、液晶分子と相互作用し液晶分子に配向規制力を与える役割を有する分子鎖が短いため、液晶分子に対する配向規制力が弱くなる。また、アルキル基の炭素数が21以上となると、立体障害が大きくなりすぎるために、シラン化合物同士が密集した第2材料膜15aを画素電極11上に形成することが困難となる。
【0063】
これらの物性上のバランスから、シラン化合物が備える直鎖アルキル基の炭素数を6から20とすることが好ましい。
【0064】
また、形成材料420は、官能基としてアルコキシ基を備えるアルコキシシランを用いると良い。官能基がハロゲンやアミノ基である場合、第2材料膜15aの形成により酸性のハロゲン化水素や塩基性のアミンが生じる。これらは画素電極11や第1材料膜14aなどの構成物を腐食する恐れがある。しかし、官能基がアルコキシ基であると生じる副生成物がアルコキシ基由来のアルコールとなる。そのため、画素電極11や第1材料膜14aを劣化させることなく第2材料膜を形成することが可能となる。
【0065】
アルコキシ基については特に限定されないものの、反応により生成するアルコールが低分子量であるほうが除去しやすいことから、例えばメトキシ基(−O−CH)、エトキシ基(−O−C)などが好ましい。このような官能基を備えるシラン化合物として、例えば、オクタデシルトリエトキシシランやヘキシルジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0066】
また、一分子内に官能基を2以上備えるシラン化合物を用いると、気相部において複数のシラン化合物同士が反応し、高分子量で溶媒難溶性の多量体が生成するおそれがある。このような難溶性の多量体は除去が困難であるため、材料膜上に残存しやすい。すると、例えば、多量体が付着した箇所は、後のラビング工程で良好に配向規制力を付与することが出来ないため、製造する配向膜の品質低下を招くおそれがある。そのため、形成材料420には1官能のモノアルコキシシランを用いると良い。1官能のモノアルコキシシランでは、気相部での副反応により生じる反応物は低分子量の2量体としかならないため、前述の多量体よりも溶媒への溶解性が高く、適宜リンス等の処理を行うことにより容易に除去することができる。
【0067】
これらの理由から、本実施形態では第2材料膜15aの形成材料420として、炭素数6の直鎖アルキル基を有するヘキシルジメチルエトキシシランを用いる。
【0068】
ヘキシルジメチルエトキシシランを形成材料420として用いCVD法を行うと、ヘキシルジメチルエトキシシランは、表面にケイ素と強固な結合を生じる水酸基を備える画素電極11上に優先的に結合し、第2材料膜15aを生成する。一方で、水酸基を備えないポリイミドからなる第1材料膜14aとは結合しにくく、第2材料膜15a上には、気相部での反応で生じる副生成物であるヘキシルジメチルエトキシシランの2量体15bが積層する。
【0069】
次いで、図3(c)に示すように、第1材料膜14a上に形成される2量体15bを除去する(第2材料膜を形成する工程、洗浄する工程)。具体的には、2量体15bのみを可溶な溶媒(リンス液)を用いて第1材料膜14aを洗うことで、2量体15bを除去する。リンス液は、高い極性を備えるものを選択すると第1材料膜14aに膨潤したり、第1材料膜14aを溶解したりするおそれがあるため、例えばデカリンのような極性の低い炭化水素などを用いると良い。
【0070】
次いで、図3(d)に示すように第1材料膜14aと第2材料膜15aとに一括してラビング処理する。具体的には、第1材料膜14a及び第2材料膜15aが形成された透明基板10Aを処理ステージに着脱可能に固定する。そして、表面にラビング布を配置したラビング用ローラ300を第1材料膜14aの表面や第2材料膜15aの表面に接触させる。そして、接触した状態からさらにラビング用ローラ300を処理ステージ側に所定の高さ(押し込み量)だけ押し込むことにより、ラビング用ローラ300で第1材料膜14aや第2材料膜15aを押圧する。そして、処理ステージをラビング用ローラ300に対して所定の相対速度で移動させるとともに、ラビング用ローラ300を所定の回転数で回転させる。前記の押し込み量、相対速度、回転数によりラビング強度が規定され、ラビング強度に応じて液晶分子を水平配向させる配向規制力が付与される。
【0071】
ラビング処理によって、第1材料膜14aに対しては、ラビング強度に応じた配向規制力が付与され第1配向膜14となる。一方で、第2材料膜15aは、形成材料として用いるシラン化合物のアルキル基が炭素数6から20の長鎖アルキル基であるため、ラビング処理の影響を受けない、または、軽微な配向規制力しか付与されない。そのため、第2材料膜15aは第1材料膜14aよりも小さい配向規制力しか備えることなく、実質的に垂直方向に配向規制力を有する第2配向膜15となる。このようにラビング処理することにより、良好な第1配向膜14及び第2配向膜15が得られる。
【0072】
以上のようにして、第1配向膜14と第2配向膜15とを同一面に有する素子基板10を形成することができる。このように製造される素子基板10を用い、従来知られた方法にて液晶装置1を製造することができる。
【0073】
以上のような液晶装置1の製造方法によれば、フォトリソグラフィ技術を用いて加工を施した第1材料膜14aと、CVD法を用いて画素電極11上に形成した第2材料膜15aとを用い、画素Pの領域と非有効画素領域Dとで配向規制力を異ならせた2種の配向膜を容易に作り分けることができ、高画質な画像表示が可能な液晶装置1を製造することができる。
【0074】
また、本実施形態では、レジストパターンの形成時に、基板温度150℃で焼成して第1材料膜14a上にレジストパターンRの形成材料を成膜することとしている。そのため、溶媒の除去を好適に行うことができると共に、第1材料膜14aとレジストパターンRの形成材料とが化学結合する副反応を抑えることができる。したがって、レジストパターンRを用いたエッチングの後で、第1材料膜14aの表面を劣化させることなく、また、第1材料膜14a表面にレジストパターンRの残渣を残すことなく、良好にレジストパターンRを除去することができ、高品質な配向膜を形成することができる。
【0075】
また、本実施形態では、レジストパターンRの形成材料にポジ型感光性樹脂を用いることとしている。そのため、残存させる第1材料膜14aは露光されることなく形成することができ、露光による悪影響を受けることなく信頼性の高い配向膜を形成することができる。
【0076】
また、本実施形態では、酸素プラズマを用いたドライエッチングにより第1材料膜14aをパターニングすることとしている。そのため、第1材料膜14aの溶媒に対する溶解性に関わらず良好なエッチングが可能となる。また、画素電極上に酸素プラズマ由来の水酸基が形成されるため、気相蒸着法を用いたシラン化合物の付着が良好に進行しやすくなる。
【0077】
また、本実施形態では、第2材料膜15aの形成材料420として炭素数6の直鎖アルキル基を備えた1官能のモノアルコキシシランであるヘキシルジメチルエトキシシランを用いることとしている。そのため、形成反応時の副生成物が不具合を生じさせることなく、良好な配向膜とすることができる。
【0078】
なお、本実施形態においては、第1材料膜14aのパターニングにドライエッチングを用いることとしたが、ウエットエッチングを行うこととしても構わない。その場合、適切なエッチャントを選択する必要があるが、ひとたび最適なエッチャントを選択すると、同じ形成材料を用いた製造を繰り返す場合には、ドライエッチングと比べて一度に大量の基板を処理することが可能となるため有利である。
【0079】
また、本実施形態においては、エッチングガスに酸素を用い、酸素プラズマによるアッシングを行って第1材料膜14aのパターニングを行うこととしたが、SF6等の他のエッチングガスを用いた反応性ドライエッチングを行うこととしても構わない。
【0080】
また、本実施形態においては、シラン化合物を基板全面に蒸着した後に、リンス液によって多量体を除去することとしたが、第1材料膜14aに対応した蒸着マスクを用意して、該蒸着マスクを介してシラン化合物を蒸着し、第2材料膜15aを形成することとしても良い。その場合には、第2材料膜15aの形成後に行うリンス工程が不要となるため、形成済みの第1材料膜14aが有機溶剤に触れることがない。したがって、第1材料膜14aの品質がリンス液による膨潤や溶解により低下するおそれが無くなる。
【0081】
また、本実施形態においては、第2材料膜15aの形成後に、第1材料膜14aと第2材料膜15aとに一括してラビング処理することとしているが、これに限らない。レジストパターンRの除去後に第1材料膜14aにラビング処理を施して第1配向膜14を形成し、その後第2材料膜15aを形成することとしても良い。その場合、第2材料膜15aにはラビング処理を行わず、形成した第2材料膜15aの配向規制力を利用した第2配向膜15としてもよく、また、マスクラビング等の第1配向膜14に影響を与えない方法で第2材料膜15aの配向規制力・配向規制方向を制御することとしても良い。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0083】
例えば、液晶装置1は、それぞれ赤色、緑色、青色の3原色を表示可能なサブ画素を備えフルカラー表示が可能な構成であっても良い。また、液晶装置1として、透過型の液晶装置を例示したが、通常知られた構成の反射型の液晶装置にも好適に適用可能である。その場合には、画素電極11は透明導電性材料のみならず、アルミニウムや銅などの金属材料を用いることも可能となる。金属材料の表面は空気中の酸素により酸化され、水酸基を備えることが多く、シラン化合物を形成材料とする第2材料膜を良好に形成することができる。また、画素電極の形成材料に金属材料を用いた場合には、適宜酸素プラズマ処理を行うことで電極表面に水酸基を形成することができ、シラン化合物を良好に成膜することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る製造方法で製造する液晶装置の概略図である。
【図2】本実施形態の液晶装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】本実施形態の液晶装置の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0085】
1…液晶装置、10…素子基板(一対の基板、一方の基板)、11…画素電極、14…第1配向膜、14a…第1材料膜、15…第2配向膜、15a…第2材料膜、15b…2量体(多量体)、20…対向基板(一対の基板)、30…液晶層、LC,LC1,LC2…液晶分子、R…レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に誘電異方性が負の液晶分子を含む液晶層が挟持され、前記一対の基板のうち一方の基板の前記液晶層側には金属または金属酸化物を形成材料とする複数の画素電極が形成されていると共に、少なくとも前記複数の画素電極の間の領域を覆う第1配向膜と、前記複数の画素電極の各々を覆い前記第1配向膜と当接する複数の第2配向膜と、を備える液晶装置の製造方法であって、
前記一方の基板上に、前記複数の画素電極を覆って前記第1配向膜の形成材料である第1材料膜を形成する工程と、
前記第1材料膜上に、少なくとも前記画素電極が設けられていない領域を覆うレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記第1材料膜をエッチングし、前記画素電極を露出させる工程と、
露出した前記画素電極上に、気相蒸着法を用いて前記第2配向膜の形成材料である第2材料膜を形成する工程と、を備え、
前記第1材料膜の形成材料は、有機高分子化合物であり、
前記第2材料膜の形成材料は、アルキル基を有するシラン化合物を含むことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記レジストパターンを形成する工程は、前記レジストパターンの形成材料を含む液状体を塗布する工程と、前記液状体を加熱し前記液状体が含む溶媒を除去する工程と、を有し、
前記溶媒を除去する工程は、前記溶媒が蒸発する温度以上で、且つ、前記第1材料膜と前記レジストパターンの形成材料とが化学反応により結合する温度より低い温度で行うことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2材料膜を形成する工程は、前記第2材料膜の形成材料を前記一方の基板の全面に蒸着する工程と、
前記一方の基板の前記第2材料膜の形成材料を蒸着した面を、前記第2配向膜の形成材料の多量体を可溶な有機溶剤を用いて洗浄する工程と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記レジストパターンの形成材料には、ポジ型感光性樹脂を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
前記画素電極を露出させる工程では、前記エッチングをドライエッチングにより行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記画素電極を露出させる工程では、前記ドライエッチングを、酸素プラズマを用いたプラズマエッチングにより行うことを特徴とする請求項5に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記シラン化合物は、炭素数6から20の直鎖アルキル基を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の液晶装置の製造方法。
【請求項8】
前記シラン化合物は、官能基としてアルコキシ基を備えるアルコキシシランであることを特徴とする請求項7に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項9】
前記アルコキシシランは、1官能のモノアルコキシシランであることを特徴とする請求項8に記載の液晶装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−276677(P2009−276677A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129604(P2008−129604)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】