液晶装置及び液晶装置の製造方法
【課題】信頼性が高く、且つ、良好なコントラスト特性を有し、ディスクリネーションの発生を防止した液晶装置、及びその簡素化された製造方法を提供する。
【解決手段】液晶装置が有する配向膜11が、垂直配向領域40Aに対応する部分の液晶分子を垂直配向させる垂直配向膜41と、表示領域の間に存在する水平配向領域40Bに対応する部分において液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向膜42からなり、垂直配向膜41と水平配向膜42が共通の共通膜40を有するとともに、垂直配向膜41に長鎖アルキル鎖28A、水平配向膜42に短鎖アルキル鎖28Bを有する。
【解決手段】液晶装置が有する配向膜11が、垂直配向領域40Aに対応する部分の液晶分子を垂直配向させる垂直配向膜41と、表示領域の間に存在する水平配向領域40Bに対応する部分において液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向膜42からなり、垂直配向膜41と水平配向膜42が共通の共通膜40を有するとともに、垂直配向膜41に長鎖アルキル鎖28A、水平配向膜42に短鎖アルキル鎖28Bを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子を用いて映像を大画面に表示する装置として液晶プロジェクターがある。プロジェクターにおいては高輝度、高コントラストであることが重要である。従来、プロジェクター用の液晶表示素子の配向方式としては、ツイストネマチック(TN)型に代表される水平配向方式が用いられていたが、近年では、高コントラスト表示が可能な垂直配向方式が採用されつつある。
【0003】
垂直配向方式では、負の誘電率異方性を有する液晶分子が基板表面に対して垂直に配向しており、液晶分子に方位角方向の配向規制力を与えることが難しい。そのため、電圧印加時には、画素電極端から基板面に平行な方向に発生する横電界の影響によって、液晶分子が様々な方向に倒れてしまい、ディスクリネーションが発生する。このようなディスクリネーションは、明暗のムラやコントラストの低下、残像等の表示欠陥として視認される。
【0004】
垂直配向方式の液晶分子の方位角方向における配向方向を制御する方法として、液晶分子をあらかじめ所定の方向に傾けておく(プレチルト)方法があるが、液晶分子を傾けることによって、電圧無印加時においても、若干のリタデーション(位相差)が発生し光漏れが生じてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1や特許文献2では、画素領域では液晶分子を垂直配向させて良好なコントラスト特性を確保しつつ、画素領域周辺の主に非表示領域では液晶を水平配向させている。このように、画素内部の液晶分子の電圧印加時における配向方向を制御することによって配向にみだれが生じる現象であるディスクリネーションの発生を防止する方法が提案されている。配向膜に関連して、特許文献3や非特許文献1に単分子膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−294544号公報
【特許文献2】特開2009−271189号公報
【特許文献3】特開2005−64289号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】京都大学大学院 杉村氏著 『自己集積化分子膜』第12.9版(2008.08.29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、図10に示すように、第1基板の画素領域A1にのみSi−O骨格の重合膜43が存在し、第1基板の画素領域外A2及び第2基板(図示せず)にはこのようなSi−O骨格の重合膜43が存在しない構造となっている。これにより、第1基板と第2基板の配向膜構造の非対称性に起因して、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良による信頼性低下が問題となる。一方、特許文献2では、図11に示すように、ITO(Indium Tin Oxide)電極(画素電極9及び図示しない共通電極)上に直接シランカップリング剤にて表面処理をしており、ITOに光を照射することで発生する不純物イオンによって液晶分子が劣化してしまう可能性があり、信頼性に問題が生じる。そこで、信頼性が高く、且つ、良好なコントラスト特性を有し、ディスクリネーション等の発生を防止した液晶装置、及びこの液晶装置を生産性良く製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる液晶装置は、複数の画素電極上に第1配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置され第2配向膜を有する第2基板と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に挟持される液晶層とを備えた液晶装置であって、前記第1配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有し、前記垂直配向領域には前記第1基板に対して垂直に起立した長鎖アルキル鎖を有し、前記水平配向領域には前記第1基板に対して一方向に傾倒し前記長鎖アルキル鎖より分子長の短い短鎖アルキル鎖を有することを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、第1基板の第1配向膜と第2基板の第2配向膜との間に液晶層が配置されている。そして、画素電極の表示領域に対応する部分は液晶分子が垂直配向する垂直配向領域となっており、表示領域の間では液晶分子が一定方位方向に水平配向する水平配向領域となっている。そして、電極に電圧を印加するとき垂直配向する液晶分子が水平配向する液晶分子の影響を受けて配向状態が変化する。
【0012】
第1基板には共通膜が設置され、垂直配向領域には長鎖アルキル鎖が配置されている。そして、水平配向領域には短鎖アルキル鎖が配置されている。そして、垂直配向領域と水平配向領域とは共通膜を共有する為、第1配向膜と第2配向膜との配向膜構造の対称性が極めて高くなる。その結果、液晶層が安定して動作し、液晶装置は信頼性を高くすることができる。
【0013】
[適用例2]上記適用例に記載の液晶装置は、前記共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜となっている。画素電極に光を照射するとき不純物イオンが発生する。このとき、共通膜が不純物イオンをブロッキングするため、信頼性を向上させることができる。
【0015】
[適用例3]上記適用例に記載の液晶装置は、前記垂直配向領域の長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記水平配向領域の短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜9とすることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、長鎖アルキル鎖の炭素原子数が10〜20であり、短鎖アルキル鎖の炭素原子数が1〜9となっている。電圧印加時において、長鎖アルキル鎖によって垂直配向した液晶分子の配向方向が、短鎖アルキル鎖によって水平配向した液晶分子によって規制される。このため、画素電極の端から発生する横電界の影響を抑えて液晶分子が一定の方向に配向するようになる。従って、良好なコントラスト特性を維持しつつ、ディスクリネーション等の発生を防止することが可能となる。
【0017】
[適用例4]本適用例にかかる液晶装置の製造方法は、複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて短鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、前記配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記短鎖アルキル鎖の表面官能基を極性官能基に光酸化するパターニング工程と、シランカップリング剤を用いて前記光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、成膜工程において、第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて配向膜を形成している。これにより、共通膜上に短鎖アルキル鎖が形成される。パターニング工程では、配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射している。これにより、短鎖アルキル鎖の表面官能基が極性官能基に光酸化される。表面処理工程では、シランカップリング剤を用いて光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する。ラビング工程では、配向膜にラビング処理を施している。
【0019】
従って、第1基板上に共通膜を有する垂直配向領域と水平配向領域とが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで配向膜が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで配向膜が形成できる。パターニング工程では、短鎖アルキル鎖の表面官能基が極性官能基に光酸化する程度に光照射すれば十分である。従って、アルキル分子を完全に分解するよりも露光時間を短縮できる。その結果、垂直配向領域と水平配向領域とを有する配向膜を生産性良く形成することができる。
【0020】
[適用例5]本記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて長鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、前記配向膜の前記水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記長鎖アルキル鎖を除去するパターニング工程と、シランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、成膜工程では第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて前記配向膜を形成している。パターニング工程では配向膜の水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、長鎖アルキル鎖を除去している。表面処理工程ではシランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する。ラビング工程では配向膜にラビング処理を施している。
【0022】
従って、第1基板上に共通膜を有する垂直配向領域と水平配向領域とが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで配向膜が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで配向膜が形成できる。その結果、垂直配向領域と水平配向領域とを有する配向膜を生産性良く形成することができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、表面処理工程の前に前記ラビング工程を施すことが好ましい。
【0024】
本適用例によれば、垂直配向領域においてラビング工程の後に表面処理工程を施している。従って、ラビング工程にて配向膜にスジが形成されるときにも、後工程にて長鎖アルキル鎖を形成することによりスジを目立たなくすることができる。従って、ラビング工程に起因するスジ等の表示不良を低減させることができる為、表示品位をさらに向上させることができる。
【0025】
[適用例7]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、前記第1基板の前記液晶層と対向する側の面に、前記画素電極を形成する前に前記非表示領域に対応する部分を遮光する遮光膜を設けて、前記パターニング工程では前記第1基板の前記液晶層と対向する面とは反対の面側から光を照射することが好ましい。
【0026】
本適用例によれば、前記遮光膜をマスクにしたセルフアライメントによって、垂直配向領域と水平配向領域とを形成している。従って、パターニング用のマスクを用意する必要がない。従って、省資源な製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1にかかる液晶装置の表示領域を模式的に示す平面図。
【図2】液晶装置の模式断面図。
【図3】垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【図4】液晶装置の電圧印加時における液晶の配向を模式的に示す図。
【図5】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図6】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図7】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図8】実施形態2にかかる液晶装置の製造方法の説明するための模式図。
【図9】実施形態3にかかる(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図、(b)は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図、(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図。
【図10】従来例にかかる垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【図11】従来例にかかる垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
〔液晶装置の構成〕
図1は、実施形態にかかる液晶装置の表示領域を模式的に示す平面図である。図2は、液晶装置の模式断面図であり、図1のX−X’線に沿った断面図に相当する。いずれも電圧無印加状態を示している。
まず、実施形態にかかる液晶装置1の概略構成について説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、液晶装置1はTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の液晶パネル58を備えている。液晶パネル58は第1基板10と当該第1基板10に対向して配置される第2基板20と、当該第1基板10と第2基板20との間に挟持された液晶層50とから構成されている。
【0030】
第1基板10はガラス等の光透過性の基板本体10Aを備えている。当該基板本体10A上には遮光膜13が形成され、当該遮光膜13を覆うように層間絶縁層14が形成されている。当該層間絶縁層14上には複数の画素電極9が形成され、当該複数の画素電極9を覆うように第1配向膜11が形成されている。従って、第1基板10は、基板本体10A、遮光膜13、層間絶縁層14、画素電極9、第1配向膜11等から構成されている。また、遮光膜13上には、スイッチング素子である図示しないTFT素子や、図示しない各種配線等が形成されている。
【0031】
第1基板10は、面内にマトリクス状に配置された複数の画素電極9を備えている。画素電極9の外周部を9aとし、周縁部を9bとする。画素電極9は、内側に設けられた四角形の表示領域としての画素領域58Pと、画素領域58Pの間を遮光する非表示領域としての遮光領域58BMとを有して構成されている。
【0032】
画素電極9は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなる。遮光膜13は、例えばCr等の遮光材料からなり、画素電極9の間の電極間9G及び周縁部9bを遮光している。したがって、基板本体10A側から入射する光は、遮光領域58BMによって区画された画素開口部としての画素領域58Pを透過することになる。
【0033】
第1配向膜11は、複数の画素電極9の画素領域58Pに対応する部分において液晶層50の液晶分子51を垂直配向させる垂直配向膜41と、遮光領域58BMに対応する部分において液晶層50の液晶分子52を一定方位方向に水平配向させる水平配向膜42とを有している。そして、第1基板10の面内には、画素領域58Pの全体を含んで垂直配向領域40Aが形成されており、遮光領域58BMでは垂直配向領域40Aを取り囲むように水平配向領域40Bが形成されている。また、遮光領域58BMの幅をa、水平配向領域40Bの幅をb、画素電極9の電極間9Gの幅をcとするとき、これらの関係はa>b>cとなっている。このように、画素電極9の電極間9Gの幅(c)よりも水平配向領域40Bの幅(b)の方が大きくなるように設定し、画素電極9の周縁部9b上に水平配向膜42の一部が配置されている。尚、第1基板10では、遮光領域58BMの幅(a)と水平配向領域40Bの幅(b)とが等しい構成であってもよい。
【0034】
一方、第2基板20は、ガラス等の光透過性の基板本体20Aを備えている。基板本体20A上には共通電極21が形成され、共通電極21上には垂直配向膜からなる第2配向膜22が形成されている。従って、第2基板20は基板本体20A、共通電極21、第2配向膜22から構成されている。共通電極21及び第2配向膜22は、画素領域58P毎に区画されることなく第2基板20側の表示領域全体に亘って設けられている。
【0035】
液晶層50は誘電率異方性が負の液晶から構成されている。そして、第1基板10の第1配向膜11と第2基板20の第2配向膜22とが液晶層50を挟持するように形成されている。また、互いに対向配置された第1基板10と第2基板20との外周に位置する端縁部は、図示しないシール材によって封止されている。これにより、液晶層50は液晶装置1から漏れないようになっている。
【0036】
液晶装置1は、液晶パネル58の両側に配置された一対の1/4波長板81,82と、これら一対の1/4波長板81,82の外側に配置された一対の偏光板71,72とを備えている。第1基板10及び第2基板20の外側には、1/4波長板81,82が互いの光軸を直交させるようにそれぞれ配置されている。また、偏光板71,72は、互いの偏光軸が内側に配置された1/4波長板81,82の光軸に対して略45゜の角度をなすように、且つ互いの偏光軸が直交するように配置されている。また、偏光板71の下方には、図示しない光源ユニットが配置されている。
【0037】
次に、本実施形態の特徴的な構成を有する第1配向膜11を説明する。図3は、垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図である。図3に示すように、第1配向膜11は垂直配向膜41及び水平配向膜42によって構成されている。そして、垂直配向膜41及び水平配向膜42は、ともにシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜の共通膜40を共有している。
【0038】
そして、垂直配向膜41は、垂直配向領域40Aに対応する画素電極9上の共通膜40の表面を炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aが化学的に修飾している。この長鎖アルキル鎖28Aは、その直鎖が基板本体10Aの液晶層50側の面である基板面に対して略垂直に起立した状態で結合しており、これによって垂直配向能を有することになる。
【0039】
一方、水平配向膜42は水平配向領域40Bに形成される。水平配向領域40Bでは画素電極9の周縁部9bと電極間9Gで露出する層間絶縁層14との上に存在する共通膜40の表面を炭素原子数1〜9の短鎖アルキル鎖28Bが化学的に修飾している。この短鎖アルキル鎖28Bは、直鎖が基板面の方向に対して一方向に傾倒した状態とされている。尚、基板面の方向は第1基板10の法線方向を示す。これによって一方向に配向規制力を有することとなる。換言すれば、水平配向能を有することになる。
【0040】
また、水平配向膜42によって液晶層50の液晶分子52を配向させるプレチルト角は、基板表面に対して1゜〜20゜とすることが好ましい。さらに、プレチルト角は1゜〜10゜以下であることがより好ましい。これにより、電圧印加時に発生する横電界の影響を抑えることができるほどの配向規制力を得ることができる。
【0041】
第2配向膜22は、垂直配向膜41と同様に、共通電極21上の共通膜40の表面を炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aが化学的に修飾している。当該長鎖アルキル鎖28Aでは直鎖が基板面に対して略垂直に起立した状態で結合している。これにより、長鎖アルキル鎖28Aは垂直配向能を有する。
【0042】
尚、第2基板20側にも遮光膜13及び水平配向膜42と同様の構成を形成してもよい。このような構造にすることによってより強い配向規制力が得られる。このとき、プロセスの増加が伴うので、プロセスを増加させたくないときには第1基板10側だけに遮光膜13及び水平配向膜42を配置する方法でも配向規制力は十分得られる。
【0043】
以上のように、初期配向状態である電圧無印加状態において、画素領域58Pに対応する部分の垂直配向領域40Aに形成された垂直配向膜41の長鎖アルキル鎖28Aが液晶分子51を垂直配向させている。また、遮光領域58BMに対応する部分の水平配向領域40Bに形成された水平配向膜42の短鎖アルキル鎖28Bが液晶層50の液晶分子52を一定方位方向に水平配向させている。
【0044】
図4は、液晶装置の電圧印加時における液晶の配向を模式的に示す図である。図4に示すように、画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加する。このときには、印加した電圧に応じて垂直配向領域40Aの垂直配向膜41上に位置する液晶分子51が基板法線方向からチルトする。尚、チルトするとは傾斜することを称す。液晶分子51がチルトする角度に応じて、液晶パネル58の厚さ方向に透過する光が変調される。これにより、液晶パネル58は階調表示が可能になる。
【0045】
このとき、垂直配向領域40Aの水平配向領域40B近傍に位置する液晶分子51が、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52の配向に大きく影響を受ける。そして、垂直配向領域40A上の液晶分子51がチルトするときには、垂直配向領域40A上の液晶分子51は水平配向領域40B上の液晶分子52と同じ方向にチルトする。
【0046】
このため、電圧印加時に液晶分子51は総て揃った方向にチルトし、均一に配向するようになる。これにより、画素電極9の端部から第1基板10に平行な方向に横方向電界が生じても、この横方向電界の影響を受け難くなる。その結果、液晶分子51の配向対立に起因するディスクリネーション等の発生を防止することができる。
【0047】
また、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52は、遮光領域58BM内に位置するため、画素領域58Pの透過率に寄与することはなく、画素領域58Pの透過率は垂直配向領域40A上に位置する液晶分子51にのみ依存している。したがって、電圧無印加時に画素領域58Pから光漏れが生じることはない。
【0048】
さらに、第1基板10に形成された垂直配向領域40Aの垂直配向膜41と水平配向領域40Bの水平配向膜42とが共通膜40を共有している。これにより、同様の共通膜40をもつ第2基板20との配向膜構造の対称性が極めて高くなっている。一般的に、これが非対称であると、液晶層50中に存在する不純物イオン等の両基板(配向膜)への吸着量に差が生じ、共通電極電位の大幅な変動が引き起こされる。その結果、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良による信頼性低下の課題が発生する。これに対して、前述のように対称性の高い配向膜構造をもつ本実施形態においては、表示品位に優れた高信頼性の液晶装置1が実現できる。
【0049】
また、ITO電極からなる画素電極9及び共通電極21上に直接アルキル鎖が存在する構造においては、光照射することでITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態においては、ITO電極とアルキル鎖との間に共通膜40が存在する構造となっている。この共通膜40が不純物イオンをブロッキングする為、ITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化することを防止する。その結果、液晶パネル58の信頼性が向上する。
【0050】
以上述べたように、本実施形態にかかる液晶装置1によれば、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとに共通の共通膜40が配置され、第1基板10と第2基板20との対称性が高い配向膜構造となっている。従って、良好なコントラスト特性を有しディスクリネーション等の発生を防止した液晶装置1において、高い信頼性の実現が可能となる。
【0051】
〔液晶装置の製造方法〕
次に、本実施形態における液晶装置1の特徴的な製造方法の一実施形態を説明する。尚、以下の説明において例示される材料等は一例であって必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
液晶装置1が備える液晶パネル58は、第1基板10を作製する工程と、この工程と並行または前後して、前記第2基板20を作製する工程と、作製された第1基板10と第2基板20とを対向させ、シール材により貼り合わせ、その間の空間に誘電率異方性が負の液晶を注入して、所定厚の液晶層50を形成する工程とを経ることによって製造される。
【0053】
(第1基板の作製工程)
第1基板10の作製工程において第1配向膜11の形成工程を中心にして説明する。図5〜図7は、液晶装置の製造方法を説明するための模式図である。まず、図5(a)に示すように、ガラスからなる基板本体10A上にCr(クロム)からなる遮光膜13を格子状に形成する。遮光膜13は公知のフォトリソグラフィ法を用いて形成することができる。この遮光膜13によって遮光領域58BMを規定すると共に、この遮光領域58BMに囲まれた領域が画素領域58Pとなる。
【0054】
続いて、遮光膜13上に図示しないTFT素子やデータ線、走査線等の配線を公知のフォトリソグラフィ法にて形成する。そして、TFT素子や配線を覆うようにして層間絶縁層14を形成する。層間絶縁層14はスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができる。続いて、画素領域58Pから遮光領域58BM側に張り出すように、ITO(インジウム錫酸化物)からなる複数の画素電極9を、層間絶縁層14により平坦化された面内にマトリクス状に並べてパターン形成する。尚、これらの工程は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0055】
(水平配向膜形成)
次に、成膜工程を行う。図5(b)に示すように、成膜工程では、炭素原子数1〜9の短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜31の材料(例えば日産化学工業株式会社製OA材料等)を、画素電極9及び層間絶縁層14上に塗布する。続いて、無機配向膜31の材料を乾燥・焼成して無機配向膜31を成膜する。塗布する方法は、特に限定されることなく種々の方法が採用可能であり、スピンコート法、フレキソ印刷法、浸漬法(ディップコート法)、スプレーコート法、各種印刷法等の方法を用いることができ、さらにはインクジェット法等が好適に用いられる。インクジェット法は所定の領域に限定して塗布できる為、省資源な塗布を行うことができる。
【0056】
図5(c)は、短鎖アルキル基を含有する無機配向膜の模式断面図である。無機配向膜31の主鎖骨格は、次の化合物式のようにシロキサン骨格系をベースとするものである。
【0057】
【化1】
【0058】
(垂直配向膜形成)
続いて、パターニング工程を行う。図5(d)に示すように、塗布プロセスにより成膜した無機配向膜31に光パターニングを行う。垂直配向領域40Aに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10上に形成した無機配向膜31に対して光としてのVUV光45(真空紫外光)を照射する。このとき、VUV光45を第1基板10の液晶層50と対向させる予定の面側から照射する。つまり、無機配向膜31に選択的にVUV光45を照射する。これにより、垂直配向領域40Aとなる予定の場所の短鎖アルキル鎖28Bの表面官能基が極性官能基に光酸化(親水化)される。
【0059】
VUV光45としては、例えば、波長172nmのエキシマレーザー等、アルキル鎖表面改質に適した波長のものが選択され、露光部の短鎖アルキル鎖28Bの最表面の官能基が光酸化する程度の時間照射を行う。一方、フォトマスク44により遮光された水平配向領域40Bでは、VUV光45が透過せず露光されないため、短鎖アルキル鎖28Bが表面改質されずにそのまま存在することになる。その結果、図6(a)及び図6(b)に示すように、表面が活性化された活性化領域41aとそうでない非活性化領域42aという化学的性質の異なる領域を形成することができる。
【0060】
次に、表面処理工程を行う。図6(c)に示すように、光パターニングした無機配向膜31に、長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を気相処理により反応させて、垂直配向膜41となる長鎖アルキル鎖28Aを形成する。詳細には、炭素原子数10〜20の長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を有した容器と共に基板本体10Aを密閉容器内に放置する。そして、この容器を加熱しながらシランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの画素電極9が形成された面に接触させる。これにより、VUV光45により表面改質された短鎖アルキル鎖28Bにのみ長鎖アルキル基が選択的に結合される。その結果、垂直配向領域40Aには長鎖アルキル鎖28Aが形成される。
【0061】
尚、シランカップリング剤とは、一分子中に有機官能基と加水分解基とを有したものである。シランカップリング剤によって無機物と有機物を結びつけ、材料の物理的強度や耐久性、接着性等の向上を可能にするものである。具体的には、珪素原子(Si)に1つの有機官能基と、2〜3の無機物と反応する官能基を有したもので、次の化合物式によって表される。
【0062】
【化2】
【0063】
使用するシランカップリング剤としては、特に限定されないものの、有機官能基が良好な撥水性(垂直配向性)を有し、且つ良好な耐光性を有するものであれば良い。具体的には、化合物式における有機官能基(Y)がアルキル基であるものが好適に用いられる。また、加水分解基についても特に限定されないものの、例えばメトキシ基(−O−CH3)、エトキシ基(−O−C2H5)等が好ましい。
【0064】
本実施形態では、無機配向膜31の短鎖アルキル鎖28B表面の一部を改質させた。その後、基板本体10Aを、例えば炭素原子数18の長鎖アルキル鎖28Aを側鎖に有するシランカップリング剤(ODS:オクタデシルトリエトキシシラン)を有した容器と共に、密閉容器内に放置する。そして、この容器を180℃の温度で加熱しながら2時間放置し、シランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの画素電極9が形成された面に接触させる。ここで、長鎖アルキル鎖28Aは、シラノール基(Si−OH)を有していることにより、VUV光45の照射により生成した極性官能基と強固に結合する。したがって、長鎖アルキル鎖28Aを画素電極9の垂直配向領域40A上に無機配向膜31を介して形成することができる。
【0065】
このような手法は、例えば、特許文献3や非特許文献1に示されるように、VUV光45を利用したSAM(Self-Assembled-Monolayer)のマイクロパターニング技術として公知となっている。
【0066】
次に、ラビング工程を行う。図6(d)に示すように、ラビング布をローラーに巻きつけたラビング処理装置55を用いて、第1基板10の長鎖アルキル鎖28A及び短鎖アルキル鎖28Bが形成された面を一定方位方向にラビング処理する。尚、ラビング処理はアルキル鎖を押圧しながら擦る処理を示す。ここで、鎖長が短い短鎖アルキル鎖28Bは、基板面に対してチルトし易くなっている。従って、短鎖アルキル鎖28Bはラビング処理を行うことによって、その殆どがラビング方向に沿って一様に傾倒(チルト)する。尚、鎖長が長い長鎖アルキル鎖28Aはラビングされてもほとんど水平方位方向に配向せず、垂直に起立した垂直配向状態を維持する。
【0067】
以上のようにして、垂直配向領域40Aに垂直配向膜41を、水平配向領域40Bに水平配向膜42を、それぞれ備えた第1基板10を作製することができる。
【0068】
(第2基板の作製工程)
次に、第2基板20の作製工程について説明する。図7(a)に示すように、ガラス等の光透過性の材料からなる基板本体20A上に、ITO等の透明導電体を用いて共通電極21を形成する。そして、共通電極21上に長鎖アルキル鎖28Aを主体とした垂直配向膜からなる第2配向膜22を形成する。これらの工程は公知の手法を用いることができ、例えば共通電極21の形成には蒸着法等が好適である。
【0069】
第2配向膜22(垂直配向膜)は、上述した垂直配向膜41と同様に、炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aを含有する無機配向膜を塗布により形成することができる。この場合、第2配向膜22は、画素領域毎に区画することなく、第1基板10側の垂直配向領域40A及び水平配向領域40Bに対応した共通電極21上に形成する。以上のようにして、第2配向膜22を備えた第2基板20を作製することができる。
【0070】
(基板の貼合せ及び液晶の注入工程)
次に、図7(b)に示すように、第1配向膜11及び第2配向膜22が内側になるようにして第1基板10と第2基板20とを貼り合わせる。続いて、図7(c)に示すように、第1基板10と第2基板20との間に液晶層50を封入する。そして、第1基板10と第2基板20との周囲を封止することにより、液晶パネル58が作製される。
【0071】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1基板10の液晶層50と対向する側の面に垂直配向膜41及び水平配向膜42を形成している。このとき、レジスト等を用いることなく、塗布により成膜した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけの簡素化された手法でプロセスの増加を最小限に留めている。従って、生産性良く液晶パネル58を製造することができる。
【0072】
さらに、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとに共通膜40が配置され、共通膜40上に長鎖アルキル鎖28Aが結合された垂直配向膜41と短鎖アルキル鎖28Bが結合された水平配向膜42とが精度よく形成されている。従って、同様の膜をもつ第2基板20との配向膜構造の対称性が極めて高いので、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良を防止できる。その結果、高信頼性な液晶パネル58を実現できる。
【0073】
(2)本実施形態によれば、電圧印加時に液晶分子51は総て揃った方向にチルトし、均一に配向するようになる。これにより、画素電極9の端部から第1基板10に平行な方向に横方向電界が生じても、この横方向電界の影響を受け難くなる。その結果、液晶分子51の配向対立に起因するディスクリネーション等の発生を防止することができる。
【0074】
(3)本実施形態によれば、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52は、遮光領域58BM内に位置するため、画素領域58Pの透過率に寄与することはなく、画素領域58Pの透過率は垂直配向領域40A上に位置する液晶分子51にのみ依存している。したがって、電圧無印加時に画素領域58Pから光漏れが生じることはない。
【0075】
(4)本実施形態によれば、ITO電極とアルキル鎖との間に共通膜40が存在する構造となっている。この共通膜40が不純物イオンをブロッキングする為、ITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化することを防止する。その結果、液晶パネル58の信頼性が向上する。
【0076】
(5)本実施形態によれば、長鎖アルキル鎖28Aの炭素原子数が10〜20であり、短鎖アルキル鎖28Bの炭素原子数が1〜9となっている。電圧印加時において、長鎖アルキル鎖28Aによって垂直配向した液晶分子の配向方向が、短鎖アルキル鎖28Bによって水平配向した液晶分子によって規制される。このため、画素電極の端から発生する横電界の影響を抑えて液晶分子が一定の方向に配向するようになる。従って、良好なコントラスト特性を維持しつつ、ディスクリネーション等の発生を防止することが可能となる。
【0077】
(6)本実施形態によれば、第1基板10上に共通膜40を有する垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとが形成される。そして、成膜工程により形成した無機配向膜31に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで第1配向膜11が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで第1配向膜11が形成できる。パターニング工程では、短鎖アルキル鎖28Bの表面官能基が極性官能基に光酸化する程度に光照射すれば十分である。従って、アルキル分子を完全に分解するよりも露光時間を短縮できる。その結果、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを有する第1配向膜11を生産性良く形成することができる。
【0078】
(実施形態2)
次に、配向膜の特徴的な製造方法について図8の液晶装置の製造方法の説明するための模式図を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、長鎖アルキル鎖28Aの一部を除去し、その場所に短鎖アルキル鎖28Bを形成する点にある。尚、本実施形態において、実施形態1と同様の部材または部位については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0079】
図8(a)に示すように、まず、成膜工程を行う。成膜工程では、垂直配向領域40A及びに水平配向領域40Bに長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41を作製する。このとき、長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41の材料を塗布し、垂直配向膜41の材料を乾燥・焼成して垂直配向膜41を成膜する。次に、パターニング工程を行う。パターニング工程では、第1基板10上に形成した垂直配向膜41において水平配向領域40Bに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10の液晶層50を配置する予定の側からVUV光45を照射する。その結果、図8(b)に示すように、水平配向領域40Bに位置する長鎖アルキル鎖28Aが完全に分解除去される。
【0080】
次に、図8(c)に示すように、表面処理工程を行う。表面処理工程では短鎖アルキル鎖28Bを有するシランカップリング剤を用いて短鎖アルキル鎖28Bを含有する水平配向膜42を作製する。このとき、短鎖アルキル鎖28Bは、炭素原子数1〜9の短鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を有した容器と共に密閉容器内に放置し、この容器を加熱しながらシランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの液晶層50と対向する予定の側の面に接触させることにより、露光により長鎖アルキル鎖28Aが分解除去された水平配向領域40Bに選択的に結合される。
【0081】
次に、ラビング工程を行う。ラビング工程は実施形態1と同様の工程であり説明を省略する。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、成膜工程では第1基板10に長鎖アルキル鎖28Aを有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて配向膜を形成している。パターニング工程では配向膜の水平配向領域40Bとなる場所に選択的に光を照射し、長鎖アルキル鎖28Aを除去している。表面処理工程ではシランカップリング剤を用いて長鎖アルキル鎖28Aを除去した場所に短鎖アルキル鎖28Bを形成する。ラビング工程では配向膜にラビング処理を施している。
【0083】
従って、第1基板10上に共通膜40を有する垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで第1配向膜11が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで第1配向膜11が形成できる。その結果、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを有する第1配向膜11を生産性良く形成することができる。
【0084】
(実施形態3)
[電子機器]
次に、上記実施形態の液晶装置1を備えた電子機器の例について説明する。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話500は液晶表示部501を備えている。そして、液晶表示部501に上記実施形態の液晶装置1が用いられている。従って、携帯電話500は液晶表示部501に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0085】
図9(b)は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(b)において、情報処理装置600は情報処理装置本体603を備えている。そして、情報処理装置本体603は入力部にキーボード601を備え、液晶表示部602に上記実施形態の液晶装置1を備えている。従って、情報処理装置600は液晶表示部602に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0086】
図9(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(c)において、時計700は液晶表示部701を備えている。そして、液晶表示部701に上記実施形態の液晶装置1が用いられている。従って、時計700は液晶表示部701に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0087】
このように図9に示す電子機器は、表示部に上記の一例たる液晶装置1を適用したものであるので、高信頼性な表示部を備えた装置となる。
【0088】
尚、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
実施形態1では、第1基板10側に遮光膜13を設けた構成となっているが、第2基板20側に遮光膜13を設けた構成としてもよい。この場合も、第1配向膜11は、複数の画素電極9の画素領域58Pに対応する部分(垂直配向領域40A)において垂直配向膜41を形成する。そして、遮光領域58BMに対応する部分(水平配向領域40B)において水平配向膜42を形成する。さらに、第2基板20の液晶層50と対向する側の面の遮光領域58BMに対応する場所に画素領域58Pを取り囲むように遮光膜13を形成してもよい。これにより、水平配向領域40Bが遮蔽される為、良好な画質を得ることができる。尚、変形例1の内容は実施形態2にも適用することができる。
【0089】
(変形例2)
実施形態1の成膜工程では、短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜31の材料を塗布し、無機配向膜31の材料を乾燥・焼成して無機配向膜31を成膜した。成膜工程では別の方法を用いても良い。酸化シリコン(SiO2)等の無機膜を蒸着法やスパッタ法により成膜する。その後に短鎖アルキル鎖28Bを有するシランカップリング剤により表面処理を行い、無機配向膜31を成膜しても良い。
【0090】
(変形例3)
実施形態2の成膜工程では、長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41の材料を塗布し、垂直配向膜41の材料を乾燥・焼成して垂直配向膜41を成膜した。成膜工程では別の方法を用いても良い。酸化シリコン(SiO2)等の無機膜を蒸着法やスパッタ法により成膜する。その後に長鎖アルキル鎖28Aを有するシランカップリング剤により表面処理を行い、垂直配向膜41を成膜しても良い。
【0091】
(変形例4)
実施形態1の成膜工程では、垂直配向領域40Aに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10の液晶層50と対向させる予定の面側からVUV光45を照射した。マスクする方法はこの方法に限らない。
【0092】
画素電極9を形成する前に遮光領域58BMに対応する部分を遮光する遮光膜13が設けてある。パターニング工程では、遮光膜13をマスクにしたセルフアライメントによって、第1基板10の液晶層50と対向する面とは反対の面側から無機配向膜31の表面を光酸化するVUV光45を照射しても良い。これにより、フォトマスクを用いない簡素化された製造プロセスで、前述のような化学的性質の異なる領域を精度良く形成することが可能である。尚、この場合は、画素領域58Pと垂直配向領域40Aとがほぼ一致し、遮光領域58BMと水平配向領域40Bとがほぼ一致することになる。
【0093】
本変形例では遮光膜13をマスクにしたセルフアライメントによって、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを形成している。従って、パターニング用のマスクを用意する必要がない。従って、省資源な製造方法とすることができる。
【0094】
(変形例5)
実施形態1では、表面処理工程の後にラビング工程を行った。これに限らず、長鎖アルキル鎖28Aを有するシランカップリング剤表面処理の前、すなわち、短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜を形成した後、もしくは、光パターニングを行った後にラビング処理を行うことも可能である。これにより、垂直配向領域40A(表示領域)におけるラビングスジ等の表示不良を低減させることができる為、表示品位をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…液晶装置、9…画素電極、10…第1基板、11…第1配向膜、13…遮光膜、20…第2基板、22…第2配向膜、28A…長鎖アルキル鎖、28B…短鎖アルキル鎖、40…共通膜、40A…垂直配向領域、40B…水平配向領域、45…光としてのVUV光、50…液晶層、58BM…非表示領域としての遮光領域、58P…表示領域としての画素領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子を用いて映像を大画面に表示する装置として液晶プロジェクターがある。プロジェクターにおいては高輝度、高コントラストであることが重要である。従来、プロジェクター用の液晶表示素子の配向方式としては、ツイストネマチック(TN)型に代表される水平配向方式が用いられていたが、近年では、高コントラスト表示が可能な垂直配向方式が採用されつつある。
【0003】
垂直配向方式では、負の誘電率異方性を有する液晶分子が基板表面に対して垂直に配向しており、液晶分子に方位角方向の配向規制力を与えることが難しい。そのため、電圧印加時には、画素電極端から基板面に平行な方向に発生する横電界の影響によって、液晶分子が様々な方向に倒れてしまい、ディスクリネーションが発生する。このようなディスクリネーションは、明暗のムラやコントラストの低下、残像等の表示欠陥として視認される。
【0004】
垂直配向方式の液晶分子の方位角方向における配向方向を制御する方法として、液晶分子をあらかじめ所定の方向に傾けておく(プレチルト)方法があるが、液晶分子を傾けることによって、電圧無印加時においても、若干のリタデーション(位相差)が発生し光漏れが生じてしまう。
【0005】
これに対して、特許文献1や特許文献2では、画素領域では液晶分子を垂直配向させて良好なコントラスト特性を確保しつつ、画素領域周辺の主に非表示領域では液晶を水平配向させている。このように、画素内部の液晶分子の電圧印加時における配向方向を制御することによって配向にみだれが生じる現象であるディスクリネーションの発生を防止する方法が提案されている。配向膜に関連して、特許文献3や非特許文献1に単分子膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−294544号公報
【特許文献2】特開2009−271189号公報
【特許文献3】特開2005−64289号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】京都大学大学院 杉村氏著 『自己集積化分子膜』第12.9版(2008.08.29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、図10に示すように、第1基板の画素領域A1にのみSi−O骨格の重合膜43が存在し、第1基板の画素領域外A2及び第2基板(図示せず)にはこのようなSi−O骨格の重合膜43が存在しない構造となっている。これにより、第1基板と第2基板の配向膜構造の非対称性に起因して、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良による信頼性低下が問題となる。一方、特許文献2では、図11に示すように、ITO(Indium Tin Oxide)電極(画素電極9及び図示しない共通電極)上に直接シランカップリング剤にて表面処理をしており、ITOに光を照射することで発生する不純物イオンによって液晶分子が劣化してしまう可能性があり、信頼性に問題が生じる。そこで、信頼性が高く、且つ、良好なコントラスト特性を有し、ディスクリネーション等の発生を防止した液晶装置、及びこの液晶装置を生産性良く製造する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる液晶装置は、複数の画素電極上に第1配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置され第2配向膜を有する第2基板と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に挟持される液晶層とを備えた液晶装置であって、前記第1配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有し、前記垂直配向領域には前記第1基板に対して垂直に起立した長鎖アルキル鎖を有し、前記水平配向領域には前記第1基板に対して一方向に傾倒し前記長鎖アルキル鎖より分子長の短い短鎖アルキル鎖を有することを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、第1基板の第1配向膜と第2基板の第2配向膜との間に液晶層が配置されている。そして、画素電極の表示領域に対応する部分は液晶分子が垂直配向する垂直配向領域となっており、表示領域の間では液晶分子が一定方位方向に水平配向する水平配向領域となっている。そして、電極に電圧を印加するとき垂直配向する液晶分子が水平配向する液晶分子の影響を受けて配向状態が変化する。
【0012】
第1基板には共通膜が設置され、垂直配向領域には長鎖アルキル鎖が配置されている。そして、水平配向領域には短鎖アルキル鎖が配置されている。そして、垂直配向領域と水平配向領域とは共通膜を共有する為、第1配向膜と第2配向膜との配向膜構造の対称性が極めて高くなる。その結果、液晶層が安定して動作し、液晶装置は信頼性を高くすることができる。
【0013】
[適用例2]上記適用例に記載の液晶装置は、前記共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜となっている。画素電極に光を照射するとき不純物イオンが発生する。このとき、共通膜が不純物イオンをブロッキングするため、信頼性を向上させることができる。
【0015】
[適用例3]上記適用例に記載の液晶装置は、前記垂直配向領域の長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記水平配向領域の短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜9とすることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、長鎖アルキル鎖の炭素原子数が10〜20であり、短鎖アルキル鎖の炭素原子数が1〜9となっている。電圧印加時において、長鎖アルキル鎖によって垂直配向した液晶分子の配向方向が、短鎖アルキル鎖によって水平配向した液晶分子によって規制される。このため、画素電極の端から発生する横電界の影響を抑えて液晶分子が一定の方向に配向するようになる。従って、良好なコントラスト特性を維持しつつ、ディスクリネーション等の発生を防止することが可能となる。
【0017】
[適用例4]本適用例にかかる液晶装置の製造方法は、複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて短鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、前記配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記短鎖アルキル鎖の表面官能基を極性官能基に光酸化するパターニング工程と、シランカップリング剤を用いて前記光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本適用例によれば、成膜工程において、第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて配向膜を形成している。これにより、共通膜上に短鎖アルキル鎖が形成される。パターニング工程では、配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射している。これにより、短鎖アルキル鎖の表面官能基が極性官能基に光酸化される。表面処理工程では、シランカップリング剤を用いて光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する。ラビング工程では、配向膜にラビング処理を施している。
【0019】
従って、第1基板上に共通膜を有する垂直配向領域と水平配向領域とが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで配向膜が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで配向膜が形成できる。パターニング工程では、短鎖アルキル鎖の表面官能基が極性官能基に光酸化する程度に光照射すれば十分である。従って、アルキル分子を完全に分解するよりも露光時間を短縮できる。その結果、垂直配向領域と水平配向領域とを有する配向膜を生産性良く形成することができる。
【0020】
[適用例5]本記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、前記第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて長鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、前記配向膜の前記水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記長鎖アルキル鎖を除去するパターニング工程と、シランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、成膜工程では第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて前記配向膜を形成している。パターニング工程では配向膜の水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、長鎖アルキル鎖を除去している。表面処理工程ではシランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する。ラビング工程では配向膜にラビング処理を施している。
【0022】
従って、第1基板上に共通膜を有する垂直配向領域と水平配向領域とが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで配向膜が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで配向膜が形成できる。その結果、垂直配向領域と水平配向領域とを有する配向膜を生産性良く形成することができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、表面処理工程の前に前記ラビング工程を施すことが好ましい。
【0024】
本適用例によれば、垂直配向領域においてラビング工程の後に表面処理工程を施している。従って、ラビング工程にて配向膜にスジが形成されるときにも、後工程にて長鎖アルキル鎖を形成することによりスジを目立たなくすることができる。従って、ラビング工程に起因するスジ等の表示不良を低減させることができる為、表示品位をさらに向上させることができる。
【0025】
[適用例7]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法は、前記第1基板の前記液晶層と対向する側の面に、前記画素電極を形成する前に前記非表示領域に対応する部分を遮光する遮光膜を設けて、前記パターニング工程では前記第1基板の前記液晶層と対向する面とは反対の面側から光を照射することが好ましい。
【0026】
本適用例によれば、前記遮光膜をマスクにしたセルフアライメントによって、垂直配向領域と水平配向領域とを形成している。従って、パターニング用のマスクを用意する必要がない。従って、省資源な製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1にかかる液晶装置の表示領域を模式的に示す平面図。
【図2】液晶装置の模式断面図。
【図3】垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【図4】液晶装置の電圧印加時における液晶の配向を模式的に示す図。
【図5】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図6】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図7】液晶装置の製造方法を説明するための模式図。
【図8】実施形態2にかかる液晶装置の製造方法の説明するための模式図。
【図9】実施形態3にかかる(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図、(b)は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図、(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図。
【図10】従来例にかかる垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【図11】従来例にかかる垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
〔液晶装置の構成〕
図1は、実施形態にかかる液晶装置の表示領域を模式的に示す平面図である。図2は、液晶装置の模式断面図であり、図1のX−X’線に沿った断面図に相当する。いずれも電圧無印加状態を示している。
まず、実施形態にかかる液晶装置1の概略構成について説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、液晶装置1はTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の液晶パネル58を備えている。液晶パネル58は第1基板10と当該第1基板10に対向して配置される第2基板20と、当該第1基板10と第2基板20との間に挟持された液晶層50とから構成されている。
【0030】
第1基板10はガラス等の光透過性の基板本体10Aを備えている。当該基板本体10A上には遮光膜13が形成され、当該遮光膜13を覆うように層間絶縁層14が形成されている。当該層間絶縁層14上には複数の画素電極9が形成され、当該複数の画素電極9を覆うように第1配向膜11が形成されている。従って、第1基板10は、基板本体10A、遮光膜13、層間絶縁層14、画素電極9、第1配向膜11等から構成されている。また、遮光膜13上には、スイッチング素子である図示しないTFT素子や、図示しない各種配線等が形成されている。
【0031】
第1基板10は、面内にマトリクス状に配置された複数の画素電極9を備えている。画素電極9の外周部を9aとし、周縁部を9bとする。画素電極9は、内側に設けられた四角形の表示領域としての画素領域58Pと、画素領域58Pの間を遮光する非表示領域としての遮光領域58BMとを有して構成されている。
【0032】
画素電極9は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなる。遮光膜13は、例えばCr等の遮光材料からなり、画素電極9の間の電極間9G及び周縁部9bを遮光している。したがって、基板本体10A側から入射する光は、遮光領域58BMによって区画された画素開口部としての画素領域58Pを透過することになる。
【0033】
第1配向膜11は、複数の画素電極9の画素領域58Pに対応する部分において液晶層50の液晶分子51を垂直配向させる垂直配向膜41と、遮光領域58BMに対応する部分において液晶層50の液晶分子52を一定方位方向に水平配向させる水平配向膜42とを有している。そして、第1基板10の面内には、画素領域58Pの全体を含んで垂直配向領域40Aが形成されており、遮光領域58BMでは垂直配向領域40Aを取り囲むように水平配向領域40Bが形成されている。また、遮光領域58BMの幅をa、水平配向領域40Bの幅をb、画素電極9の電極間9Gの幅をcとするとき、これらの関係はa>b>cとなっている。このように、画素電極9の電極間9Gの幅(c)よりも水平配向領域40Bの幅(b)の方が大きくなるように設定し、画素電極9の周縁部9b上に水平配向膜42の一部が配置されている。尚、第1基板10では、遮光領域58BMの幅(a)と水平配向領域40Bの幅(b)とが等しい構成であってもよい。
【0034】
一方、第2基板20は、ガラス等の光透過性の基板本体20Aを備えている。基板本体20A上には共通電極21が形成され、共通電極21上には垂直配向膜からなる第2配向膜22が形成されている。従って、第2基板20は基板本体20A、共通電極21、第2配向膜22から構成されている。共通電極21及び第2配向膜22は、画素領域58P毎に区画されることなく第2基板20側の表示領域全体に亘って設けられている。
【0035】
液晶層50は誘電率異方性が負の液晶から構成されている。そして、第1基板10の第1配向膜11と第2基板20の第2配向膜22とが液晶層50を挟持するように形成されている。また、互いに対向配置された第1基板10と第2基板20との外周に位置する端縁部は、図示しないシール材によって封止されている。これにより、液晶層50は液晶装置1から漏れないようになっている。
【0036】
液晶装置1は、液晶パネル58の両側に配置された一対の1/4波長板81,82と、これら一対の1/4波長板81,82の外側に配置された一対の偏光板71,72とを備えている。第1基板10及び第2基板20の外側には、1/4波長板81,82が互いの光軸を直交させるようにそれぞれ配置されている。また、偏光板71,72は、互いの偏光軸が内側に配置された1/4波長板81,82の光軸に対して略45゜の角度をなすように、且つ互いの偏光軸が直交するように配置されている。また、偏光板71の下方には、図示しない光源ユニットが配置されている。
【0037】
次に、本実施形態の特徴的な構成を有する第1配向膜11を説明する。図3は、垂直配向膜及び水平配向膜の構成を拡大して模式的に示す斜視図である。図3に示すように、第1配向膜11は垂直配向膜41及び水平配向膜42によって構成されている。そして、垂直配向膜41及び水平配向膜42は、ともにシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜の共通膜40を共有している。
【0038】
そして、垂直配向膜41は、垂直配向領域40Aに対応する画素電極9上の共通膜40の表面を炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aが化学的に修飾している。この長鎖アルキル鎖28Aは、その直鎖が基板本体10Aの液晶層50側の面である基板面に対して略垂直に起立した状態で結合しており、これによって垂直配向能を有することになる。
【0039】
一方、水平配向膜42は水平配向領域40Bに形成される。水平配向領域40Bでは画素電極9の周縁部9bと電極間9Gで露出する層間絶縁層14との上に存在する共通膜40の表面を炭素原子数1〜9の短鎖アルキル鎖28Bが化学的に修飾している。この短鎖アルキル鎖28Bは、直鎖が基板面の方向に対して一方向に傾倒した状態とされている。尚、基板面の方向は第1基板10の法線方向を示す。これによって一方向に配向規制力を有することとなる。換言すれば、水平配向能を有することになる。
【0040】
また、水平配向膜42によって液晶層50の液晶分子52を配向させるプレチルト角は、基板表面に対して1゜〜20゜とすることが好ましい。さらに、プレチルト角は1゜〜10゜以下であることがより好ましい。これにより、電圧印加時に発生する横電界の影響を抑えることができるほどの配向規制力を得ることができる。
【0041】
第2配向膜22は、垂直配向膜41と同様に、共通電極21上の共通膜40の表面を炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aが化学的に修飾している。当該長鎖アルキル鎖28Aでは直鎖が基板面に対して略垂直に起立した状態で結合している。これにより、長鎖アルキル鎖28Aは垂直配向能を有する。
【0042】
尚、第2基板20側にも遮光膜13及び水平配向膜42と同様の構成を形成してもよい。このような構造にすることによってより強い配向規制力が得られる。このとき、プロセスの増加が伴うので、プロセスを増加させたくないときには第1基板10側だけに遮光膜13及び水平配向膜42を配置する方法でも配向規制力は十分得られる。
【0043】
以上のように、初期配向状態である電圧無印加状態において、画素領域58Pに対応する部分の垂直配向領域40Aに形成された垂直配向膜41の長鎖アルキル鎖28Aが液晶分子51を垂直配向させている。また、遮光領域58BMに対応する部分の水平配向領域40Bに形成された水平配向膜42の短鎖アルキル鎖28Bが液晶層50の液晶分子52を一定方位方向に水平配向させている。
【0044】
図4は、液晶装置の電圧印加時における液晶の配向を模式的に示す図である。図4に示すように、画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加する。このときには、印加した電圧に応じて垂直配向領域40Aの垂直配向膜41上に位置する液晶分子51が基板法線方向からチルトする。尚、チルトするとは傾斜することを称す。液晶分子51がチルトする角度に応じて、液晶パネル58の厚さ方向に透過する光が変調される。これにより、液晶パネル58は階調表示が可能になる。
【0045】
このとき、垂直配向領域40Aの水平配向領域40B近傍に位置する液晶分子51が、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52の配向に大きく影響を受ける。そして、垂直配向領域40A上の液晶分子51がチルトするときには、垂直配向領域40A上の液晶分子51は水平配向領域40B上の液晶分子52と同じ方向にチルトする。
【0046】
このため、電圧印加時に液晶分子51は総て揃った方向にチルトし、均一に配向するようになる。これにより、画素電極9の端部から第1基板10に平行な方向に横方向電界が生じても、この横方向電界の影響を受け難くなる。その結果、液晶分子51の配向対立に起因するディスクリネーション等の発生を防止することができる。
【0047】
また、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52は、遮光領域58BM内に位置するため、画素領域58Pの透過率に寄与することはなく、画素領域58Pの透過率は垂直配向領域40A上に位置する液晶分子51にのみ依存している。したがって、電圧無印加時に画素領域58Pから光漏れが生じることはない。
【0048】
さらに、第1基板10に形成された垂直配向領域40Aの垂直配向膜41と水平配向領域40Bの水平配向膜42とが共通膜40を共有している。これにより、同様の共通膜40をもつ第2基板20との配向膜構造の対称性が極めて高くなっている。一般的に、これが非対称であると、液晶層50中に存在する不純物イオン等の両基板(配向膜)への吸着量に差が生じ、共通電極電位の大幅な変動が引き起こされる。その結果、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良による信頼性低下の課題が発生する。これに対して、前述のように対称性の高い配向膜構造をもつ本実施形態においては、表示品位に優れた高信頼性の液晶装置1が実現できる。
【0049】
また、ITO電極からなる画素電極9及び共通電極21上に直接アルキル鎖が存在する構造においては、光照射することでITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態においては、ITO電極とアルキル鎖との間に共通膜40が存在する構造となっている。この共通膜40が不純物イオンをブロッキングする為、ITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化することを防止する。その結果、液晶パネル58の信頼性が向上する。
【0050】
以上述べたように、本実施形態にかかる液晶装置1によれば、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとに共通の共通膜40が配置され、第1基板10と第2基板20との対称性が高い配向膜構造となっている。従って、良好なコントラスト特性を有しディスクリネーション等の発生を防止した液晶装置1において、高い信頼性の実現が可能となる。
【0051】
〔液晶装置の製造方法〕
次に、本実施形態における液晶装置1の特徴的な製造方法の一実施形態を説明する。尚、以下の説明において例示される材料等は一例であって必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
液晶装置1が備える液晶パネル58は、第1基板10を作製する工程と、この工程と並行または前後して、前記第2基板20を作製する工程と、作製された第1基板10と第2基板20とを対向させ、シール材により貼り合わせ、その間の空間に誘電率異方性が負の液晶を注入して、所定厚の液晶層50を形成する工程とを経ることによって製造される。
【0053】
(第1基板の作製工程)
第1基板10の作製工程において第1配向膜11の形成工程を中心にして説明する。図5〜図7は、液晶装置の製造方法を説明するための模式図である。まず、図5(a)に示すように、ガラスからなる基板本体10A上にCr(クロム)からなる遮光膜13を格子状に形成する。遮光膜13は公知のフォトリソグラフィ法を用いて形成することができる。この遮光膜13によって遮光領域58BMを規定すると共に、この遮光領域58BMに囲まれた領域が画素領域58Pとなる。
【0054】
続いて、遮光膜13上に図示しないTFT素子やデータ線、走査線等の配線を公知のフォトリソグラフィ法にて形成する。そして、TFT素子や配線を覆うようにして層間絶縁層14を形成する。層間絶縁層14はスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができる。続いて、画素領域58Pから遮光領域58BM側に張り出すように、ITO(インジウム錫酸化物)からなる複数の画素電極9を、層間絶縁層14により平坦化された面内にマトリクス状に並べてパターン形成する。尚、これらの工程は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0055】
(水平配向膜形成)
次に、成膜工程を行う。図5(b)に示すように、成膜工程では、炭素原子数1〜9の短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜31の材料(例えば日産化学工業株式会社製OA材料等)を、画素電極9及び層間絶縁層14上に塗布する。続いて、無機配向膜31の材料を乾燥・焼成して無機配向膜31を成膜する。塗布する方法は、特に限定されることなく種々の方法が採用可能であり、スピンコート法、フレキソ印刷法、浸漬法(ディップコート法)、スプレーコート法、各種印刷法等の方法を用いることができ、さらにはインクジェット法等が好適に用いられる。インクジェット法は所定の領域に限定して塗布できる為、省資源な塗布を行うことができる。
【0056】
図5(c)は、短鎖アルキル基を含有する無機配向膜の模式断面図である。無機配向膜31の主鎖骨格は、次の化合物式のようにシロキサン骨格系をベースとするものである。
【0057】
【化1】
【0058】
(垂直配向膜形成)
続いて、パターニング工程を行う。図5(d)に示すように、塗布プロセスにより成膜した無機配向膜31に光パターニングを行う。垂直配向領域40Aに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10上に形成した無機配向膜31に対して光としてのVUV光45(真空紫外光)を照射する。このとき、VUV光45を第1基板10の液晶層50と対向させる予定の面側から照射する。つまり、無機配向膜31に選択的にVUV光45を照射する。これにより、垂直配向領域40Aとなる予定の場所の短鎖アルキル鎖28Bの表面官能基が極性官能基に光酸化(親水化)される。
【0059】
VUV光45としては、例えば、波長172nmのエキシマレーザー等、アルキル鎖表面改質に適した波長のものが選択され、露光部の短鎖アルキル鎖28Bの最表面の官能基が光酸化する程度の時間照射を行う。一方、フォトマスク44により遮光された水平配向領域40Bでは、VUV光45が透過せず露光されないため、短鎖アルキル鎖28Bが表面改質されずにそのまま存在することになる。その結果、図6(a)及び図6(b)に示すように、表面が活性化された活性化領域41aとそうでない非活性化領域42aという化学的性質の異なる領域を形成することができる。
【0060】
次に、表面処理工程を行う。図6(c)に示すように、光パターニングした無機配向膜31に、長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を気相処理により反応させて、垂直配向膜41となる長鎖アルキル鎖28Aを形成する。詳細には、炭素原子数10〜20の長鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を有した容器と共に基板本体10Aを密閉容器内に放置する。そして、この容器を加熱しながらシランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの画素電極9が形成された面に接触させる。これにより、VUV光45により表面改質された短鎖アルキル鎖28Bにのみ長鎖アルキル基が選択的に結合される。その結果、垂直配向領域40Aには長鎖アルキル鎖28Aが形成される。
【0061】
尚、シランカップリング剤とは、一分子中に有機官能基と加水分解基とを有したものである。シランカップリング剤によって無機物と有機物を結びつけ、材料の物理的強度や耐久性、接着性等の向上を可能にするものである。具体的には、珪素原子(Si)に1つの有機官能基と、2〜3の無機物と反応する官能基を有したもので、次の化合物式によって表される。
【0062】
【化2】
【0063】
使用するシランカップリング剤としては、特に限定されないものの、有機官能基が良好な撥水性(垂直配向性)を有し、且つ良好な耐光性を有するものであれば良い。具体的には、化合物式における有機官能基(Y)がアルキル基であるものが好適に用いられる。また、加水分解基についても特に限定されないものの、例えばメトキシ基(−O−CH3)、エトキシ基(−O−C2H5)等が好ましい。
【0064】
本実施形態では、無機配向膜31の短鎖アルキル鎖28B表面の一部を改質させた。その後、基板本体10Aを、例えば炭素原子数18の長鎖アルキル鎖28Aを側鎖に有するシランカップリング剤(ODS:オクタデシルトリエトキシシラン)を有した容器と共に、密閉容器内に放置する。そして、この容器を180℃の温度で加熱しながら2時間放置し、シランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの画素電極9が形成された面に接触させる。ここで、長鎖アルキル鎖28Aは、シラノール基(Si−OH)を有していることにより、VUV光45の照射により生成した極性官能基と強固に結合する。したがって、長鎖アルキル鎖28Aを画素電極9の垂直配向領域40A上に無機配向膜31を介して形成することができる。
【0065】
このような手法は、例えば、特許文献3や非特許文献1に示されるように、VUV光45を利用したSAM(Self-Assembled-Monolayer)のマイクロパターニング技術として公知となっている。
【0066】
次に、ラビング工程を行う。図6(d)に示すように、ラビング布をローラーに巻きつけたラビング処理装置55を用いて、第1基板10の長鎖アルキル鎖28A及び短鎖アルキル鎖28Bが形成された面を一定方位方向にラビング処理する。尚、ラビング処理はアルキル鎖を押圧しながら擦る処理を示す。ここで、鎖長が短い短鎖アルキル鎖28Bは、基板面に対してチルトし易くなっている。従って、短鎖アルキル鎖28Bはラビング処理を行うことによって、その殆どがラビング方向に沿って一様に傾倒(チルト)する。尚、鎖長が長い長鎖アルキル鎖28Aはラビングされてもほとんど水平方位方向に配向せず、垂直に起立した垂直配向状態を維持する。
【0067】
以上のようにして、垂直配向領域40Aに垂直配向膜41を、水平配向領域40Bに水平配向膜42を、それぞれ備えた第1基板10を作製することができる。
【0068】
(第2基板の作製工程)
次に、第2基板20の作製工程について説明する。図7(a)に示すように、ガラス等の光透過性の材料からなる基板本体20A上に、ITO等の透明導電体を用いて共通電極21を形成する。そして、共通電極21上に長鎖アルキル鎖28Aを主体とした垂直配向膜からなる第2配向膜22を形成する。これらの工程は公知の手法を用いることができ、例えば共通電極21の形成には蒸着法等が好適である。
【0069】
第2配向膜22(垂直配向膜)は、上述した垂直配向膜41と同様に、炭素原子数10〜20の長鎖アルキル鎖28Aを含有する無機配向膜を塗布により形成することができる。この場合、第2配向膜22は、画素領域毎に区画することなく、第1基板10側の垂直配向領域40A及び水平配向領域40Bに対応した共通電極21上に形成する。以上のようにして、第2配向膜22を備えた第2基板20を作製することができる。
【0070】
(基板の貼合せ及び液晶の注入工程)
次に、図7(b)に示すように、第1配向膜11及び第2配向膜22が内側になるようにして第1基板10と第2基板20とを貼り合わせる。続いて、図7(c)に示すように、第1基板10と第2基板20との間に液晶層50を封入する。そして、第1基板10と第2基板20との周囲を封止することにより、液晶パネル58が作製される。
【0071】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、第1基板10の液晶層50と対向する側の面に垂直配向膜41及び水平配向膜42を形成している。このとき、レジスト等を用いることなく、塗布により成膜した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけの簡素化された手法でプロセスの増加を最小限に留めている。従って、生産性良く液晶パネル58を製造することができる。
【0072】
さらに、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとに共通膜40が配置され、共通膜40上に長鎖アルキル鎖28Aが結合された垂直配向膜41と短鎖アルキル鎖28Bが結合された水平配向膜42とが精度よく形成されている。従って、同様の膜をもつ第2基板20との配向膜構造の対称性が極めて高いので、焼きつき・フリッカー・残像等の表示不良を防止できる。その結果、高信頼性な液晶パネル58を実現できる。
【0073】
(2)本実施形態によれば、電圧印加時に液晶分子51は総て揃った方向にチルトし、均一に配向するようになる。これにより、画素電極9の端部から第1基板10に平行な方向に横方向電界が生じても、この横方向電界の影響を受け難くなる。その結果、液晶分子51の配向対立に起因するディスクリネーション等の発生を防止することができる。
【0074】
(3)本実施形態によれば、画素電極9の周縁部9b上の液晶分子52は、遮光領域58BM内に位置するため、画素領域58Pの透過率に寄与することはなく、画素領域58Pの透過率は垂直配向領域40A上に位置する液晶分子51にのみ依存している。したがって、電圧無印加時に画素領域58Pから光漏れが生じることはない。
【0075】
(4)本実施形態によれば、ITO電極とアルキル鎖との間に共通膜40が存在する構造となっている。この共通膜40が不純物イオンをブロッキングする為、ITO電極の表面から発生した不純物イオン等により液晶層50が劣化することを防止する。その結果、液晶パネル58の信頼性が向上する。
【0076】
(5)本実施形態によれば、長鎖アルキル鎖28Aの炭素原子数が10〜20であり、短鎖アルキル鎖28Bの炭素原子数が1〜9となっている。電圧印加時において、長鎖アルキル鎖28Aによって垂直配向した液晶分子の配向方向が、短鎖アルキル鎖28Bによって水平配向した液晶分子によって規制される。このため、画素電極の端から発生する横電界の影響を抑えて液晶分子が一定の方向に配向するようになる。従って、良好なコントラスト特性を維持しつつ、ディスクリネーション等の発生を防止することが可能となる。
【0077】
(6)本実施形態によれば、第1基板10上に共通膜40を有する垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとが形成される。そして、成膜工程により形成した無機配向膜31に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで第1配向膜11が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで第1配向膜11が形成できる。パターニング工程では、短鎖アルキル鎖28Bの表面官能基が極性官能基に光酸化する程度に光照射すれば十分である。従って、アルキル分子を完全に分解するよりも露光時間を短縮できる。その結果、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを有する第1配向膜11を生産性良く形成することができる。
【0078】
(実施形態2)
次に、配向膜の特徴的な製造方法について図8の液晶装置の製造方法の説明するための模式図を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、長鎖アルキル鎖28Aの一部を除去し、その場所に短鎖アルキル鎖28Bを形成する点にある。尚、本実施形態において、実施形態1と同様の部材または部位については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0079】
図8(a)に示すように、まず、成膜工程を行う。成膜工程では、垂直配向領域40A及びに水平配向領域40Bに長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41を作製する。このとき、長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41の材料を塗布し、垂直配向膜41の材料を乾燥・焼成して垂直配向膜41を成膜する。次に、パターニング工程を行う。パターニング工程では、第1基板10上に形成した垂直配向膜41において水平配向領域40Bに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10の液晶層50を配置する予定の側からVUV光45を照射する。その結果、図8(b)に示すように、水平配向領域40Bに位置する長鎖アルキル鎖28Aが完全に分解除去される。
【0080】
次に、図8(c)に示すように、表面処理工程を行う。表面処理工程では短鎖アルキル鎖28Bを有するシランカップリング剤を用いて短鎖アルキル鎖28Bを含有する水平配向膜42を作製する。このとき、短鎖アルキル鎖28Bは、炭素原子数1〜9の短鎖アルキル基を有するシランカップリング剤を有した容器と共に密閉容器内に放置し、この容器を加熱しながらシランカップリング剤の蒸気を基板本体10Aの液晶層50と対向する予定の側の面に接触させることにより、露光により長鎖アルキル鎖28Aが分解除去された水平配向領域40Bに選択的に結合される。
【0081】
次に、ラビング工程を行う。ラビング工程は実施形態1と同様の工程であり説明を省略する。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、成膜工程では第1基板10に長鎖アルキル鎖28Aを有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて配向膜を形成している。パターニング工程では配向膜の水平配向領域40Bとなる場所に選択的に光を照射し、長鎖アルキル鎖28Aを除去している。表面処理工程ではシランカップリング剤を用いて長鎖アルキル鎖28Aを除去した場所に短鎖アルキル鎖28Bを形成する。ラビング工程では配向膜にラビング処理を施している。
【0083】
従って、第1基板10上に共通膜40を有する垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとが形成される。そして、成膜工程により形成した配向膜に、光照射によるパターニング、表面処理、及びラビングするだけで第1配向膜11が形成されている。従って、簡素化された手法のプロセスで第1配向膜11が形成できる。その結果、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを有する第1配向膜11を生産性良く形成することができる。
【0084】
(実施形態3)
[電子機器]
次に、上記実施形態の液晶装置1を備えた電子機器の例について説明する。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話500は液晶表示部501を備えている。そして、液晶表示部501に上記実施形態の液晶装置1が用いられている。従って、携帯電話500は液晶表示部501に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0085】
図9(b)は、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(b)において、情報処理装置600は情報処理装置本体603を備えている。そして、情報処理装置本体603は入力部にキーボード601を備え、液晶表示部602に上記実施形態の液晶装置1を備えている。従って、情報処理装置600は液晶表示部602に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0086】
図9(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(c)において、時計700は液晶表示部701を備えている。そして、液晶表示部701に上記実施形態の液晶装置1が用いられている。従って、時計700は液晶表示部701に信頼性の高い液晶装置1を備えた装置とすることができる。
【0087】
このように図9に示す電子機器は、表示部に上記の一例たる液晶装置1を適用したものであるので、高信頼性な表示部を備えた装置となる。
【0088】
尚、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
実施形態1では、第1基板10側に遮光膜13を設けた構成となっているが、第2基板20側に遮光膜13を設けた構成としてもよい。この場合も、第1配向膜11は、複数の画素電極9の画素領域58Pに対応する部分(垂直配向領域40A)において垂直配向膜41を形成する。そして、遮光領域58BMに対応する部分(水平配向領域40B)において水平配向膜42を形成する。さらに、第2基板20の液晶層50と対向する側の面の遮光領域58BMに対応する場所に画素領域58Pを取り囲むように遮光膜13を形成してもよい。これにより、水平配向領域40Bが遮蔽される為、良好な画質を得ることができる。尚、変形例1の内容は実施形態2にも適用することができる。
【0089】
(変形例2)
実施形態1の成膜工程では、短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜31の材料を塗布し、無機配向膜31の材料を乾燥・焼成して無機配向膜31を成膜した。成膜工程では別の方法を用いても良い。酸化シリコン(SiO2)等の無機膜を蒸着法やスパッタ法により成膜する。その後に短鎖アルキル鎖28Bを有するシランカップリング剤により表面処理を行い、無機配向膜31を成膜しても良い。
【0090】
(変形例3)
実施形態2の成膜工程では、長鎖アルキル鎖28Aを含有する垂直配向膜41の材料を塗布し、垂直配向膜41の材料を乾燥・焼成して垂直配向膜41を成膜した。成膜工程では別の方法を用いても良い。酸化シリコン(SiO2)等の無機膜を蒸着法やスパッタ法により成膜する。その後に長鎖アルキル鎖28Aを有するシランカップリング剤により表面処理を行い、垂直配向膜41を成膜しても良い。
【0091】
(変形例4)
実施形態1の成膜工程では、垂直配向領域40Aに対応する部分に開口部を有するフォトマスク44を用いて、第1基板10の液晶層50と対向させる予定の面側からVUV光45を照射した。マスクする方法はこの方法に限らない。
【0092】
画素電極9を形成する前に遮光領域58BMに対応する部分を遮光する遮光膜13が設けてある。パターニング工程では、遮光膜13をマスクにしたセルフアライメントによって、第1基板10の液晶層50と対向する面とは反対の面側から無機配向膜31の表面を光酸化するVUV光45を照射しても良い。これにより、フォトマスクを用いない簡素化された製造プロセスで、前述のような化学的性質の異なる領域を精度良く形成することが可能である。尚、この場合は、画素領域58Pと垂直配向領域40Aとがほぼ一致し、遮光領域58BMと水平配向領域40Bとがほぼ一致することになる。
【0093】
本変形例では遮光膜13をマスクにしたセルフアライメントによって、垂直配向領域40Aと水平配向領域40Bとを形成している。従って、パターニング用のマスクを用意する必要がない。従って、省資源な製造方法とすることができる。
【0094】
(変形例5)
実施形態1では、表面処理工程の後にラビング工程を行った。これに限らず、長鎖アルキル鎖28Aを有するシランカップリング剤表面処理の前、すなわち、短鎖アルキル鎖28Bを含有する無機配向膜を形成した後、もしくは、光パターニングを行った後にラビング処理を行うことも可能である。これにより、垂直配向領域40A(表示領域)におけるラビングスジ等の表示不良を低減させることができる為、表示品位をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…液晶装置、9…画素電極、10…第1基板、11…第1配向膜、13…遮光膜、20…第2基板、22…第2配向膜、28A…長鎖アルキル鎖、28B…短鎖アルキル鎖、40…共通膜、40A…垂直配向領域、40B…水平配向領域、45…光としてのVUV光、50…液晶層、58BM…非表示領域としての遮光領域、58P…表示領域としての画素領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極上に第1配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置され第2配向膜を有する第2基板と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に挟持される液晶層とを備えた液晶装置であって、
前記第1配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有し、
前記垂直配向領域には前記第1基板に対して垂直に起立した長鎖アルキル鎖を有し、前記水平配向領域には前記第1基板に対して一方向に傾倒し前記長鎖アルキル鎖より分子長の短い短鎖アルキル鎖を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜であることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記垂直配向領域の長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記水平配向領域の短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜9とすることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項4】
複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて短鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、
前記配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記短鎖アルキル鎖の表面官能基を極性官能基に光酸化するパターニング工程と、
シランカップリング剤を用いて前記光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項5】
複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて長鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、
前記配向膜の前記水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記長鎖アルキル鎖を除去するパターニング工程と、
シランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記表面処理工程の前に前記ラビング工程を施すことを特徴とする請求項4記載の液晶装置の製造方法。
【請求項1】
複数の画素電極上に第1配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置され第2配向膜を有する第2基板と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に挟持される液晶層とを備えた液晶装置であって、
前記第1配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有し、
前記垂直配向領域には前記第1基板に対して垂直に起立した長鎖アルキル鎖を有し、前記水平配向領域には前記第1基板に対して一方向に傾倒し前記長鎖アルキル鎖より分子長の短い短鎖アルキル鎖を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記共通膜がシロキサン骨格系をベースとした主鎖骨格をもつ無機膜であることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記垂直配向領域の長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記水平配向領域の短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜9とすることを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項4】
複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板に短鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて短鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、
前記配向膜の前記垂直配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記短鎖アルキル鎖の表面官能基を極性官能基に光酸化するパターニング工程と、
シランカップリング剤を用いて前記光酸化した場所に長鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項5】
複数の画素電極上に配向膜を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層とを備え、前記配向膜は、前記複数の画素電極の表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を垂直配向させる垂直配向領域と、前記表示領域の間に存在する非表示領域に対応する部分において前記液晶層の液晶分子を一定方位方向に水平配向させる水平配向領域と、前記垂直配向領域と前記水平配向領域とが共有する共通膜と、を有する液晶装置の製造方法であって、
前記第1基板に長鎖アルキル基を有する配向膜材料を塗布し、乾燥させて長鎖アルキル鎖を有する前記配向膜を形成する成膜工程と、
前記配向膜の前記水平配向領域となる場所に選択的に光を照射し、前記長鎖アルキル鎖を除去するパターニング工程と、
シランカップリング剤を用いて前記長鎖アルキル鎖を除去した場所に短鎖アルキル鎖を形成する表面処理工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記表面処理工程の前に前記ラビング工程を施すことを特徴とする請求項4記載の液晶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−163891(P2012−163891A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25923(P2011−25923)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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