説明

液晶配向促進剤、液晶組成物、高分子材料およびフィルム

【課題】十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れた液晶配向促進性を示す材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物を含む液晶配向促進剤。



[式中、L1〜L6は単結合、−O−、−CO−、−COO−等;Spは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基;A1、A2は二価の芳香族炭化水素基または複素環基;Tは


等;Hbは炭素数3〜30のフッ化アルキル基;k,l,m,n,pは0以上の整数;oは1〜4の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、様々な用途に有用な液晶配向促進剤とそれを含む液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は配向処理の施された膜(配向膜)上に塗布すれば、規則正しく配向する。また、液晶を二枚の配向膜に挟み込むことによって液晶の配向状態を制御することができる。従って、棒状液晶性分子とそれを封入するための二枚の基板からなる液晶セルと、棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層とからなる液晶表示装置においては、二枚の基板上に形成された配向膜の間隙に棒状液晶性分子が注入された状態になっているため、棒状液晶性分子の配向状態を比較的容易に制御することができる。
【0003】
他方で、液晶表示装置の視野角拡大あるいは着色の解消を目的として、液晶セルと偏光板との間に、光学補償シート(位相差板)を配置することが行われている。この場合、透明支持体上に液晶性分子から形成した光学異方性層を有する光学異方性素子を光学補償シートとして使用する。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。この時、液晶性分子は、透明支持体と光学異方性層との間に設けられる一枚の配向膜によって配向させる。しかし、一枚の配向膜では、液晶性分子を配向膜界面から空気界面まで均一に配向(モノドメイン配向)させることが難しい。これは、配向処理の施されていない界面(空気界面)側では、配向規制力がないため、液晶の配向が乱れてしまうためである。液晶性分子が均一に配向していないと、ディスクリネーションによる光散乱が生じ、不透明な膜が形成される。このような膜は液晶表示装置の視認性向上の観点から好ましくない。
【0004】
このような必要性から、配向処理の施されていない界面(空気界面)側において、配向膜を有さずとも液晶に配向規制力を与え、均一に配向させる技術が開発されている(特許文献1)。ここでは、液晶配向促進剤を添加することにより、液晶性分子の配向を制御している。そして、液晶配向促進剤を用いることにより、液晶性分子が容易に均一に配向する液晶組成物を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−129162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載される液晶配向促進剤の使用可能濃度範囲や溶解性は必ずしも十分ではなく、なお改善の余地があった。また、特許文献1に記載される液晶配向促進剤と同等以上の液晶配向促進作用を示す材料を提供することが望まれる。そこで本発明は、従来技術における当該課題を解決し、十分な溶解性を示し、使用可能な濃度範囲が広くて、優れた液晶配向促進性を示す材料を提供することを目的とした。また、それによって液晶性分子が容易に均一に配向する新たな液晶組成物を提供することも目的とした。即ち本発明は、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な液晶配向促進剤とそれを含む液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 一般式(I)で表される化合物を含む液晶配向促進剤。
【化1】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−または−CONR−(Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSpは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、該アルキレン中の隣接しないメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−、−OHで置換されていてもよく、A1、A2はおのおの独立して二価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Tは
【化2】

で表される二価の基または芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbは炭素数3〜30のフッ化アルキル基を表し、k,l,m,n,pはおのおの独立して0以上の整数を表し、oは1〜4のいずれかの整数である。k,l,m,n,o,pが2以上であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[2] 一般式(I)においてl=m=1、k=n=0である[1]に記載の液晶配向促進剤。
[3] 一般式(I)においてTが
【化3】

である[1]または[2]に記載の液晶配向促進剤。
[4] 一般式(I)においてA1およびA2がおのおの独立して
【化4】

[式中、pは0〜4のいずれかの整数を表す。]
である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の液晶配向促進剤。
[5] L3が−COO−かつL4が−OCO−であり、A1およびA2がフェニレン基であり、L2およびL5が−O−であるような[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶配向促進剤。
【0008】
[6] 重合性液晶分子および上記一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物。
[7] 重合性液晶分子が重合性の棒状分子である[6]に記載の液晶組成物。
[8] 少なくとも1種のキラル化合物を含有する[6]または[7]に記載の液晶組成物。
【0009】
[9] [6]〜[8]のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
[10] [9]に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
[11] [6]〜[8]のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
[12] 光学異方性を示す[10]又は[11]に記載のフィルム。
[13] 選択反射特性を示す[10]〜[12]のいずれか1項に記載のフィルム。
[14] 赤外線波長域に選択反射特性を示す[13]に記載のフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用濃度範囲が広くて溶剤溶解性が高く液晶配向促進作用も高い一般式(I)で表される配向促進剤を利用して、光学異方性フィルム、遮熱フィルム等の種々の光学部材の材料をはじめとする、種々の用途に有用な液晶組成物、及び高分子材料、並びにこれらを利用したフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[液晶配向促進剤]
本発明の液晶配向促進剤は、下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。下記式(I)の化合物は二価の基を中心に有し、末端にフッ化アルキル基を有することを特徴とする。末端にフッ化アルキル基を有する化合物は配向促進剤として効果的であるが、従来知られている配向促進剤は、使用濃度範囲が狭いといった点や溶解性が低いといった点があり、用途が制限されていた。下記式(I)の化合物は同等以上の配向性能をより広い濃度範囲かつ良好な溶解性で示すことから、それらを含む組成物は製造において使用しやすいというメリットがある。また重合で硬化可能であることから、光学部材等の種々の用途に有用である。
【0013】
【化5】

【0014】
一般式(I)において、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(Rは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基)を表し、より好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、さらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。上記のRがとりうるアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
【0015】
Spは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、より好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基であり、該アルキレン中の隣接しないメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−、−OHで置換されていてもよい。アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
【0016】
1、A2は二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基を表し、より好ましくは二価の芳香族炭化水素である。二価の芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、フェニレン基であることがさらにより好ましい。フェニレン基である場合は、メタ位またはパラ位に結合手を有することが好ましく、パラ位に結合手を有することが特に好ましい。二価の複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。A1、A2で表される二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を挙げることができる。これらの基の説明と好ましい範囲については、下記のTの対応する記載を参照することができる。A1、A2で表される二価の芳香族炭化水素基または二価の複素環基に対する置換基としては、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、臭素原子、塩素原子、シアノ基などを挙げることができる。A1とA2は同一であることが好ましい。
【0017】
Tは
【化6】

で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、より好ましくは
【化7】

であり、さらに好ましくは
【化8】

である。Xがとりうるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状であることが好ましい。好ましいアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。
Xがとりうるアルコキシ基のアルキル部分については、Xがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
Xがとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
Xがとりうるエステル基としては、RCOO−で表される基を例示することができる。Rとしては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。Rがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲については、上記のXがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。エステルの具体例として、CH3COO−、C25COO−を挙げることができる。−COOR0としては、R0が水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表す。
0が隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基を表す場合、−Sp6−(L7−Sp7q−CH3で表される基または−Sp8−(L8−Sp9r−Hb0で表される基であることがより好ましい。
Sp6、Sp7、Sp8、Sp9はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、より好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、Sp6、Sp7、Sp8、Sp9が表すアルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよいが置換されていないことが好ましく、該アルキレン基には分枝があっても無くてもよいが好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
7、L8はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(L7、L8中におけるRは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、−NRCO−、−CONR−は溶解性を減ずる効果があり、膜作成時にヘイズ値が上昇する傾向があることからより好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、化合物の安定性の観点からさらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−であり、よりさらに好ましくは−O−である。
qは1〜4の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、2または3であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。rは1〜4の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。qおよびrが2以上の整数である場合、複数のL7、L8、Sp7、Sp9はそれぞれ独立であっても異なっていてもよい。
Hb0は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。Hb0は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基と炭素数2〜30のフルオロアルキル基の中では、炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
0が−Sp5−Pを表す場合、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、Sp5が表すアルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該アルキレン基には分枝があっても無くてもよいが好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。
前記Pは重合性基を表し、該重合性基としては特に制限はないが、エチレン性不飽和二重結合基であることが好ましく、メタクリロイル基またはアクリロイル基であることがより好ましく、アクリロイル基であることが特に好ましい。
Ya、Yb、Yc、Ydがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。二価の芳香族複素環基の説明と好ましい範囲については、下記のA1とA2の芳香族複素環基に関する説明と記載を参照することができる。
【0018】
Hbは炭素数3〜30のフッ化アルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のフッ化アルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のフッ化アルキル基である。ここで、フッ化アルキル基は水素で置換されていても置換されていなくてもよい。フッ化アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。フッ化アルキル基としては、末端がパーフルオロアルキル基であるものを好ましく例示することができる。すなわち、以下の一般式で表される基であることが好ましい。
(Cp2p+1)−(Cq2q)−
上式において、pは1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。qは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。p+qは3〜30である。
【0019】
k,l,m,n,pは0以上の整数を表し、oは1〜4のいずれかの整数である。また、k,l,m,n,o,pが2以上であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、kが2であるとき、分子内に2つ存在するL1は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(I)のk,l,m,nは0〜6のいずれかの整数であることが好ましく、0〜4のいずれかの整数であることがより好ましく、0〜3のいずれかの整数であることがさらに好ましく、0〜2のいずれかの整数であることがさらにより好ましい。一般式(I)のk,l,m,nの好ましい組み合わせとして、l=m=1でありk=n=0である組み合わせと、l=m=1でありk=n=1である組み合わせを挙げることができ、より好ましい組み合わせとしてl=m=1でありk=n=0である組み合わせを挙げることができる。oは1または2であることが好ましい。pは1〜4のいずれかの整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかに該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。
【0021】
一般式(I)で表される化合物は、以上述べたフッ化アルキル基(Hb)、連結基(L1k−Sp−(L2−A1l−L3および−L4−(A2−L5m−Sp−(L6n、ならびに排除体積効果を持つ2価の基であるTを組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するフッ化アルキル基(Hb)は互いに同一であることが好ましく、分子内に存在する連結基(L1k−Sp−(L2−A1l−L3および−L4−(A2−L5m−Sp−(L6nも互いに同一であることが好ましい。末端のHb−(L1k−Sp−および−Sp−(L6n−Hbは、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Cp2p+1)−(Cq2q)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−
上式において、pは1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。qは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。p+qは3〜30である。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
また、一般式(I)のlが1以上であるとき、末端のHb−(L1k−Sp−L2−および−L5−Sp−(L6n−Hbは、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−O−(Cr2r)−O−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−COO−(Cr2r)−COO−
(Cp2p+1)−(Cq2q)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式におけるp、qおよびrの定義は直上の定義と同じである。
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。ただし、本発明で採用することができる一般式(I)で表される化合物は、下記の具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
【化14】

【0028】
【化15】

【0029】
【化16】

【0030】
一般式(I)で表される化合物は、特開2002−129162号公報や特開2002−97170号や当該公報において引用されている文献に記載される合成法を適宜選択して組み合わせることにより合成することができる。また、その他の公知の合成法も必要に応じて組み合わせることにより合成することができる。
【0031】
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、重合性液晶性分子と一般式(I)で表される化合物とを含む。本発明の液晶組成物では、1種類以上の重合性液晶性分子と1種類以上の非重合性液晶性分子を併用してもよい。また、一般式(I)で表される化合物を二種類以上使用してもよく、一般式(I)で表される化合物とそれ以外の液晶配向促進剤を併用してもよい。液晶配向促進剤は、液晶性分子の量の0.01〜20質量%の量で使用することが好ましい。使用量は、0.1〜5質量%の量であることが好ましい。重合性液晶性分子としては、ディスコティック液晶性分子または棒状液晶性分子を用いることが好ましい。
【0032】
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am.Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載されている。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−Q)n
上式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Qは重合性基であり;nは4〜12の整数である。上記式の円盤状コア(D)の具体例を以下に示す。以下の各具体例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。以下の具体例の中では、トリフェニレン(D4)が特に好ましい。
【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
連結基Lや重合性基Qの詳細や好ましい範囲については、特開2002−129162号公報の[0161]〜[0171]を参照することができる。
【0037】
重合性棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0038】
重合性棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7であることが好ましい。重合性基の具体例については、特開2002−129162号公報の[0169]を参照することができる。棒状液晶性分子は、短軸方向に対してほぼ対称となる分子構造を有することが好ましい。そのためには、棒状分子構造の両端に重合性基を有することが好ましい。以下に、棒状液晶性分子の具体例を示す。
【0039】
【化20】

【0040】
【化21】

【0041】
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
【化24】

【0044】
【化25】

【0045】
【化26】

【0046】
【化27】

【0047】
【化28】

【0048】
【化29】

【0049】
【化30】

【0050】
【化31】

【0051】
【化32】

【0052】
【化33】

【0053】
【化34】

【0054】
【化35】

【0055】
【化36】

【0056】
【化37】

【0057】
液晶組成物は、重合性液晶性分子および液晶配向促進剤に加えて、必要に応じて溶媒、不斉炭素原子を含む化合物、あるいは重合性開始剤(後述)や他の添加剤(例えば、セルロースエステル)を含むことができる。液晶組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0058】
[フィルム]
一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物を塗布等の方法により製膜することによりフィルムを形成することができる。液晶組成物を配向膜の上に塗布し、液晶層を形成することにより光学異方性素子を作製することもできる。
液晶組成物の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法)により実施できる。液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(Q)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)が含まれる。
【0059】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。ディスコィック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。液晶層の厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが最も好ましい。液晶層中の液晶配向促進剤の塗布量は、0.005〜0.5g/m2であることが好ましく、0.01〜0.45g/m2であることがより好ましく、0.02〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.03〜0.35g/m2であることが最も好ましい。
【0060】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。配向膜に使用するポリマーの種類は、液晶性分子の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定する。液晶性分子を水平(平均傾斜角:0〜50゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向膜用ポリマー)を用いる。液晶性分子を垂直(平均傾斜角:50〜90゜)に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させるポリマーを用いる。配向膜の表面エネルギーを低下させるためには、ポリマーの側鎖に炭素数が10〜100の炭化水素基を導入することが好ましい。
【0061】
具体的なポリマーの種類については、様々な表示モードに対応する液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。なお、配向膜を用いて、光学異方性層の液晶性分子を配向させてから、液晶層を透明支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。また、平均傾斜角が5゜未満の配向の場合は、ラビング処理をする必要はなく、配向膜も不要である。ただし、液晶性分子と透明支持体との密着性を改善する目的で、界面で液晶性分子と化学結合を形成する配向膜(特開平9−152509号公報記載)を用いてもよい。密着性改善の目的で配向膜を使用する場合は、ラビング処理を実施しなくてもよい。二種類の液晶層を透明支持体の同じ側に設ける場合、透明支持体上
に形成した液晶層を、その上に設ける液晶層の配向膜として機能させることも可能である。
【0062】
[透明支持体]
本発明のフィルムや本発明のフィルムを有する光学異方性素子は、透明支持体を有していてもよい。透明支持体として、ガラス板またはポリマーフイルム、好ましくはポリマーフイルムが用いられる。支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明支持体として、一般には、光学等方性のポリマーフイルムが用いられている。光学等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。また、光学等方性透明支持体では、厚み方向のレターデーション(Rth)も、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがさらに好ましい。透明支持体の面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re=(nx−ny) d
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz] d
式中、nxおよびnyは、透明支持体の面内屈折率であり、nzは透明支持体の厚み方向の屈折率であり、そしてdは透明支持体の厚さである。
【0063】
透明支持体として光学異方性のポリマーフイルムが用いられる場合もある。そのような場合、透明支持体は、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性支持体の場合、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性支持体の場合、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。光学異方性透明支持体の面内レターデーション(Re)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがさらに好ましく、20〜200nmであることが最も好ましい。光学異方性透明支持体の厚み方向のレターデーション(Rth)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜300nmであることがより好ましく、20〜200nmであることがさらに好ましい。
【0064】
透明支持体を形成する材料は、光学等方性支持体とするか、光学異方性支持体とするかに応じて決定する。光学等方性支持体の場合は、一般にガラスまたはセルロースエステルが用いられる。光学異方性支持体の場合は、一般に合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、欧州特許0911656A2号明細書に記載されている(1)レターデーション上昇剤の使用、(2)セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは(3)冷却溶解法によるフイルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフイルムを製造することもできる。ポリマーフイルムからなる透明支持体は、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
【0065】
光学異方性透明支持体を得るためには、ポリマーフイルムに延伸処理を実施することが好ましい。光学的一軸性支持体を製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性支持体を製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、ポリマーフイルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフイルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10゜未満であることが好ましく、5゜未満であることがさらに好ましく、3゜未満であることが最も好ましい。
【0066】
透明支持体の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体に紫外線吸収剤を添加してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。接着層については、特開平7−333433号公報に記載がある。接着層の厚さは、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0067】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0068】
<合成例1>
化合物(1)を下記ルートで合成した。
(1−1)エステル(1b)の合成
塩化メチレン100mlにアルコール(1a)(70.0g,200mmol)を加え、そこへトリエチルアミン(29.2ml,210mmol)を加えた。この溶液を氷水に浸し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(35.3ml,210mmol)を内温が20℃以下になるように滴下し、氷冷下で1時間反応させた。反応液を分液操作に施し、有機層をエバポレーターにより濃縮した。得られた液体を減圧蒸留し、対応するトリフルオロメタンスルホン酸エステル(1b)(85.0g,収率88%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ4.8(t,2H)
【0069】
(1−2)アルデヒド(1c)の合成
エステル(1b)(26.5g,55mmol)とパラヒドロキシベンズアルデヒド(6.1g,50mmol)を炭酸カリウム(7.6g,55mmol)存在下、DMAc30ml中、90℃で2時間反応させた。分液処理の後、濃縮操作により粗体としてアルデヒド(1c)を得た。このアルデヒドを精製せずにそのまま次工程に用いた。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ4.6(t,2H), 7.1(d,2H), 7.9(d,2H), 9.9(s,1H)
【0070】
(1−3)カルボン酸(1d)の合成
アルデヒド(1c)を特開2002−97170号公報の10頁[0085]〜[0087]に記載の方法でカルボン酸(1d)に誘導した(15.2g、(エステル(1b)から総収率65%)。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.6(t,2H), 7.1(d,2H), 8.2(d,2H)
【0071】
(1−4)化合物(1)の合成
カルボン酸(1d)(3.3g,7.1mmol)をトルエン15mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.77ml,10.6mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5mlを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン1.4mlに溶かしたメチルハイドロキノン(434mg,3.5mmol)を滴下した。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、メタノールで再結晶して化合物(1)(2.5g,69%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 4.6(t,4H), 7.0-7.2(d×2/s×3,7H), 8.2(d×2,4H)
【0072】
【化38】

【0073】
<合成例2>
化合物(2)を下記ルートで合成した。
(2−1)トシル誘導体(2b)の合成
アルコール(2a)(45.7ml,300mmol)とパラトルエンスルホニルクロライド(60.1g,315mmol)を120mlの塩化メチレン中、氷冷下で1時間反応させた。反応液を分液操作に施し、有機層をエバポレーターにより濃縮し、粗体として黄色液体のトシルエーテル体(2b)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ2.4(s,3H), 3.6(d,2H), 4.2(d,2H), 4.4(s,2H),7.1-7.4(d×3,s×1,7H), 7.8(d,2H)
【0074】
(2−2)フッ化アルキルエーテル(2d)の合成
トシル誘導体(2b)(16.2g,50mmol)とフッ化アルコール(2c)(12.1ml,55ml)をトルエン100mlに加え、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液105ml加えた。70℃に昇温して30分攪拌した後、水酸化カリウム水溶液(3.1g/水20ml)を添加した。その後、80℃に昇温し、5時間反応させた。酢酸エチルを100ml、水を50mlを加えて分液した後濃縮し、粗体としてエーテル(2d)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1HNMR(300MHz、CDCl3)δ2.5(m,2H), 3.8(d,2H), 4.0(d,2H), 4.4(s,2H),7.1-7.4(m,5H)
【0075】
(2−3)アルコール(2e)の合成
エーテル(2d)(20.0g,40mmol)を酢酸エチル40ml中で、パラジウム触媒(1.2g,5%パラジウム/活性炭素、デグサタイプE 101 O/W 5%Pd,wako社製)存在下、水素と反応させた。反応終了後、セライトろ過によりパラジウム触媒を除去し、濃縮し、粗体のアルコール(2e)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.4(m,2H), 3.6(d,2H), 3.7(d,2H), 3.8(d,2H)
【0076】
(2−4)メタンスルホン酸エステル(2f)の合成
アルコール(2e)(18.0g,45mmol)を酢酸エチル30ml中に添加し、氷冷した。反応系内の温度を20℃以下に保って、メタンスルホニルクロライド(3.8ml,49.5mmol)を滴下した。室温で3時間反応させ、酢酸エチルと水によって分液し、濃縮し、粗体のメタンスルホン酸エステル(2f)を得た。このまま精製せずに次工程の原料として使用した。
【0077】
(2−5)アルデヒド(2g)の合成
エステル(2f)(18.5g,42.8mmol)とパラヒドロキシベンズアルデヒド(5.22g,42.8mmol)を炭酸カリウム(6.51g,47.1mmol)存在下、DMAc40ml中、90℃で反応させ、粗体のアルデヒド(2g)を得た。カラム精製により、アルデヒド(2g)を10.5g得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3-2.5(m,2H), 3.8(d×2,4H), 4.2(d,2H), 7.0(d,2H), 7.8(d,2H), 9.9(s,1H)
【0078】
(2−6)カルボン酸(2h)の合成
アルデヒド(2g)(10.5g,20.5mmol)を特開2002−97170号公報の10頁[0085]〜[0087]に記載の方法でカルボン酸(2h)に誘導した(8.2g、収率76%)。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.0(t,2H), 7.8(d,2H), 8.2(d,2H)
【0079】
(2−7)化合物(2)の合成
カルボン酸(2h)(2.1g,4.0mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.44ml,6.0mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5mlを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.73mlに溶かしたメチルハイドロキノン(248mg,2.0mmol)を滴下した。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、メタノールで再結晶して化合物(2)(1.5g,60%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 2.4-2.5(m,4H), 3.8(d×2.8H), 4.2(d,4H), 7.0(d×2,4H), 7.0-7.2(s×1 d×2,3H), 8.2(d×2,4H)
【0080】
【化39】

【0081】
<合成例3>
化合物(64)を下記ルートで合成した。
カルボン酸(3a)までは既知の合成法を用いて下記に示したルートで合成できる。カルボン酸(3a)(2.34g,4.0mmol)をトルエン10mlと触媒量のDMF中で塩化チオニル(0.44ml,6.0mmol)と反応させて酸クロライドとし、過剰の塩化チオニル及びトルエン除去後、THF5mlを系中に添加した。そこへ、THF5ml及びジイソプロピルエチルアミン0.77mlに溶かしたメチルハイドロキノン(124mg,2.0mmol)を滴下した。分液操作後、エバポレーターにて濃縮し、酢酸エチル/メタノールで再結晶して化合物(64)(0.79g,31%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 2.4-2.6(m,4H), 2.8(t,4H), 3.0(t,4H), 4.5(t,4H), 7.0-7.2(d×2/s×1,3H), 7.3(d×2,4H), 8.2(d×2,4H)
【化40】

【0082】
<合成例4>
合成例2においてメチルハイドロキノンを用いた代わりに4−アミノ−m−クレゾールを用いた以外は合成例2と同様の操作により化合物(4)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ2.3(s,3H), 2.3-2.6(m,4H), 3.9(t×2,8H), 4.2(t,4H),7.0(d×2,4H), 7.1(s×1,d×1,2H), 7.6(s,1H), 7.8(d,2H), 7.9(d,1H), 8.1(d,2H)
【0083】
<合成例5>化合物(73)の合成
【化41】

化合物(73)は以下のルートにより合成した。
【化42】

(5−1)化合物(5a)の合成
DMAc(8ml)へ2,5−ジヒドロキシ安息香酸(800mg、5.19mmol)とトリエチルアミン(731μl、5.20mmol)、スルホン酸エステル(1.16g、5.20mmol)を添加し、外温90℃へ上昇させて3時間攪拌した。室温まで冷却してから酢酸エチルを添加し、1mol/lの塩酸を加えて分液した。水層を除去した後、飽和食塩水を加え再度分液操作を行った後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。ヘキサンを添加して加熱還流した後、吸引ろ過により化合物(5a)を得た(0.71g、収率49%)。
(5−2)化合物(73)の合成
化合物(2)の合成において、メチルハイドロキノンの代わりに化合物(5a)を用いる以外は同様にして化合物(73)を合成した。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ1.5-1.7(m,4H), 2.4-2.6(m,4H), 3.5(m,4H), 3.8-3.9(m,8H), 4.0(t,2H), 4.2-4.3(m,6H), 5.8(d.1H), 6.0-6.1(dd,1H), 6.3-6.4(d,1H), 7.0(m,4H), 7.3(dd,1H), 7.5(dd,1H), 7.9(d,1H) 8.2(m,4H)
【0084】
<実施例1〜8および比較例1〜3>
表1に記載される液晶配向促進剤を用いて、光学異方性フィルムを形成して評価した。まず、下記組成の塗布液を調製した。液晶配向促進剤の濃度は、棒状液晶化合物に対して0.01質量部、0.10質量部、0.20質量部となるように調製した。
下記の棒状液晶化合物1 100質量部
下記のキラル剤(A) 2.8質量部
IRGACURE819(チバジャパン社製) 3質量部
表1に記載される液晶配向促進剤 上記の量
表1に記載される溶媒 溶質濃度が25質量%となる量
【化43】

調製した塗布液をマイクロピペッターを用いて50μl量り取り、配向膜付ガラス上(SE―130)に滴下して2000rpmの回転速度でスピンコートした。85℃で2分間加熱し、1分間放冷したのち、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:500mJ/m2)することで、光学異方性フィルムを形成した。光学異方性フィルムの膜厚は約5μmであった。
【0085】
製造した各光学異方性フィルムの配向性を目視及びヘイズで評価した。ヘイズは、日本電飾社製ヘイズメータNDH2000を用いて測定した。
配向促進試験では、液晶配向促進剤の濃度が0.01質量%である光学異方性フィルムのヘイズ値の大きさにより、液晶配向促進剤の配向促進作用を下記の4段階で評価した。0.01質量%濃度では液晶配向促進剤は溶媒に完全に溶解しており、測定されたヘイズ値が小さいほど液晶配向促進作用が大きいことを示している。
◎ 5.5未満
○ 5.5以上8.5未満
△ 8.5以上10.0未満
× 10.0以上
溶解・配向促進試験では、液晶配向促進剤の濃度が0.10質量%と0.20質量%である光学異方性フィルムのヘイズ値により下記の4段階で溶解・配向促進作用を評価した。評価が高いものは、溶解性が良好で配向促進作用も大きいことを示している。評価が低いものは、主として溶解性が低いことを示している。
◎ 0.25未満
○ 0.25以上0.60未満
△ 0.60以上1.00未満
× 1.00以上
【0086】
【表1】

【0087】
【化44】

【0088】
表1に示すように、本発明の液晶配向促進剤は液晶配向作用が大きくて、濃度が高くなっても溶媒に対する溶解性が高いことが確認された。また、溶媒の種類を変えても同じ傾向を示しており、本発明の液晶配向促進剤が塗布溶媒の適用範囲が広くて、使用適性が高いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物を含む液晶配向促進剤。
【化1】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−または−CONR−(Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSpは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、該アルキレン中の隣接しないメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−、−OHで置換されていてもよく、A1、A2はおのおの独立して二価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Tは
【化2】


で表される二価の基または芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbは炭素数3〜30のフッ化アルキル基を表し、k,l,m,n,pはおのおの独立して0以上の整数を表し、oは1〜4のいずれかの整数である。k,l,m,n,o,pが2以上であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
一般式(I)においてl=m=1、k=n=0である請求項1に記載の液晶配向促進剤。
【請求項3】
一般式(I)においてTが
【化3】

である請求項1または2に記載の液晶配向促進剤。
【請求項4】
一般式(I)においてA1およびA2がおのおの独立して
【化4】

[式中、pは0〜4のいずれかの整数を表す。]
である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶配向促進剤。
【請求項5】
3が−COO−かつL4が−OCO−であり、A1およびA2がフェニレン基であり、L2およびL5が−O−であるような請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶配向促進剤。
【請求項6】
重合性液晶分子および一般式(I)で表される化合物を含む液晶組成物。
【化5】

[式中、L1、L2、L3、L4、L5、L6はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−または−CONR−(Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)を表し、またSpは単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、該アルキレン中の隣接しないメチレン基は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−、−OHで置換されていてもよく、A1、A2はおのおの独立して二価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Tは
【化6】

で表される二価の基または芳香族複素環基を表す(Xは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基または−COOR0(R0は水素原子、隣接するCH2がOまたはSで置換されていてもよいアルキル基もしくはフッ化アルキル基、または−Sp5−Pを表し、Sp5は単結合または炭素数1〜10のアルキレン基(但し、該アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい)を表し、Pは重合性基を表す)を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)であり、Hbは炭素数3〜30のフッ化アルキル基を表し、k,l,m,n,pはおのおの独立して0以上の整数を表し、oは1〜4のいずれかの整数である。k,l,m,n,o,pが2以上であるとき、複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項7】
重合性液晶分子が重合性の棒状分子である請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のキラル化合物を含有する請求項6または7に記載の液晶組成物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶組成物を重合させてなる高分子材料。
【請求項10】
請求項9に記載の高分子材料の少なくとも1種を含有するフィルム。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の液晶組成物のコレステリック液晶相を固定してなるフィルム。
【請求項12】
光学異方性を示す請求項10又は11に記載のフィルム。
【請求項13】
選択反射特性を示す請求項10〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
赤外線波長域に選択反射特性を示す請求項13に記載のフィルム。

【公開番号】特開2012−211306(P2012−211306A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36513(P2012−36513)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】