説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びにそれらの製造に用いる化合物及び重合体

【課題】残像特性に優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤を提供する。
【解決手段】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤において、上記重合体として、下記式(1)で表される構造を主鎖に有する重合体を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びにそれらの製造に用いる化合物及び重合体に関し、詳しくは、特にTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子に好適に使用できる液晶配向膜を与える液晶配向剤、当該液晶配向剤の成分として有用な新規な化合物及び重合体、並びにそれらを用いて作製される液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子としては、例えば、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90°捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶表示素子や、液晶分子の長軸が基板間で180°以上捻れるようにした、いわゆるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子などが知られている。これら液晶表示素子における液晶分子の配向は、一般に、ラビング処理が施された液晶配向膜により発現される。また、液晶配向膜の材料としては、耐熱性や機械的強度、液晶分子との親和性等の観点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
【0003】
液晶表示素子の表示性能を良好にするには、液晶配向膜によって液晶分子の配向制御が好適に行われる必要があり、これを実現可能な液晶配向膜を作製するための液晶配向剤が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。特許文献1,2には、1,1−シクロアルキレン基を主鎖に有するポリアミック酸やポリイミド、1,4−シクロアルキレン基を側鎖に有するポリアミック酸等を含む液晶配向剤について開示されている。これら特許文献1,2では、上記構成のポリアミック酸やポリイミドを液晶配向剤中に含有させることで、形成された液晶配向膜上におけるプレチルト角の安定化、具体的には、温度変化に対するプレチルト角の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−27201号公報
【特許文献2】特開2009−229935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液晶配向膜上に安定したプレチルト角を発現できない場合、液晶表示素子に対する電圧印加の解除後において、液晶分子を電圧印加前の配向状態に戻すことができないことが考えられる。この場合、液晶分子による光の透過/遮断のスイッチングを好適に実施できず、その結果、電圧印加の解除後において表示画面に残像が生じるおそれがある。ところが、上記特許文献1,2では、温度変化に対するプレチルト角の安定性については検討されているものの、電圧印加の解除後におけるプレチルト角の安定性については検討されておらず、液晶表示素子の残像特性を改善するには至っていない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、残像特性に優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤、当該液晶配向剤の成分として有用な新規な化合物及び重合体、並びにそれらを用いて作製される液晶配向膜及び液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミック酸やポリイミドの主鎖に1,4−シクロアルキレン基を導入することで、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、化合物及び重合体が提供される。
【0008】
本発明によれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、該重合体が、下記式(1)で表される構造を主鎖に有することを特徴とする液晶配向剤が提供される。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は結合手を示す。)
【0009】
本発明の液晶配向剤によれば、電圧印加の前後においてプレチルト角を一定の角度で安定に維持することができる液晶配向膜を形成することができる。これにより、残像特性に優れた液晶配向膜を得ることができる。
【0010】
本発明において、上記ジアミンとしては、下記式(2)で表される化合物を用いるとよく、より具体的には、下記式(2)中におけるAとして、それぞれ独立にフェニレン基又は置換フェニレン基である化合物を用いるとよい。
【化2】

(式(2)中、Aは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、炭素原子が有する水素原子の少なくとも1つが置換されていてもよい。Bは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【0011】
また、本発明によれば、上記記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜、及び当該液晶配向膜を具備する液晶表示素子が提供される。これら液晶配向膜及び液晶表示素子は、特にTN型の液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0012】
本発明によれば、下記式(3)で表される化合物が提供される。また、この化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる重合体(ポリアミック酸及びそのイミド化重合体)が提供される。
【化3】

(式(3)中、Bは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。rは、それぞれ独立に、0〜5の整数であり、Rが複数存在する場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかの重合体(以下、特定重合体とも示す)を含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0014】
<ポリアミック酸>
本発明の液晶配向剤に含まれるポリアミック酸の少なくとも一部は、上記式(1)で表される構造を主鎖に有する。このようなポリアミック酸を得るには、例えば、上記式(1)で表される構造を主鎖に有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させるか、あるいは、テトラカルボン酸二無水物と、上記式(1)で表される構造を主鎖に有するジアミンとを反応させる。このうち、後者であるのが好ましい。
【0015】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのテトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0016】
具体的には、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
【0017】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。なお、上記のテトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記ポリアミック酸を合成するために用いるテトラカルボン酸二無水物としては、これらの中でも特に、PMDAを含んでいるのが好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を更に含んでいるのがより好ましい。
【0019】
テトラカルボン酸二無水物として、脂肪族又は脂環式のものと芳香族のものとを混合して用いる場合、脂肪族又は脂環式のテトラカルボン酸二無水物の比率は、その合計量が、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜95モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。上記範囲とすることにより、液晶配向膜としたときに、高い電圧保持率及び印刷性と優れた保存安定性とをバランスよく発現することができる。
【0020】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンは、上記式(2)で表される化合物(以下、ジアミン(D−1)ともいう。)を含むものであるのが好ましい。
【0021】
上記式(2)におけるRは、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基であり、mが2〜4の整数である場合、それぞれ同じであってもよいし異なっていてもよい。炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換したものを挙げることができる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合したものを挙げることができ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。
【0023】
上記式(2)におけるmは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
nは、1〜3の整数であり、好ましくは1である。
Bは、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、式(2)中における2つのBは、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、Bが単結合である。
【0024】
上記式(2)におけるAのうち、炭素数2〜6のアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基などを;
フェニレン基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などを;
ナフチレン基としては、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基などを;
ピリジレン基としては、2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基などを;
ピリミジニレン基としては、2,5−ピリミジニレン基などを;
トリアジニレン基としては、2,4−トリアジニレン基などを;
それぞれ挙げることができる。これらの基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基のほか、上記Rで例示した基などを挙げることができる。
【0025】
これらの中でも、Aとして好ましくは、置換又は無置換のフェニレン基である。すなわち、本発明におけるジアミンは、上記式(3)で表される化合物(以下、ジアミン(D−1−1)ともいう。)を含んでいるのが好ましい。この場合、形成される液晶配向膜において、液晶分子が有するベンゼン環との間での相互作用が誘起されやすくなり、液晶配向性をより良好にすることができる。より好ましくは、Aが無置換のフェニレン基である。
【0026】
Aが置換又は無置換のフェニレン基である場合、そのフェニレン基に結合される一級アミノ基は、Bに対して4−位に結合されているのが好ましい。なお、Aが置換フェニレン基である場合、その置換基(式(3)中のR)として具体的には、上記Rとして例示した基を挙げることができる。
【0027】
ジアミン(D−1)として具体的には、1,4−ビス(4−アミノフェニル)−trans−シクロヘキサン、2−メチル−1,4−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジメチル−1,4−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサンが好ましく、これらのうち、特に1,4−ビス(4−アミノフェニル)−trans−シクロヘキサンが好ましい。これらの化合物の少なくともいずれかを用いることにより、ポリアミック酸の主鎖に、「−ベンゼン環−シクロヘキサン−ベンゼン環−」の構造が導入される。これにより、液晶配向膜上におけるプレチルト角安定性、特に電圧印加前後でのプレチルト角安定性を一層高めることができるものと考えられる。
【0028】
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのジアミンとしては、上記式(2)で表される化合物のみを使用してもよいし、上記式(2)で表される化合物とともにその他のジアミンを併用してもよい。
【0029】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば、下記に示す脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0030】
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン、及び下記式(A−1)
【化4】

(式(A−1)中、X及びXIIは、それぞれ、単結合、*−O−、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基又はRと結合する。)であり、Rは、単結合、メチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数である。ただし、a及びbが同時に0になることはなく、X、XII及びRが同時に単結合になることはない。)
で表される化合物などを;
【0031】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンのうち上記以外のものを用いることができる。
【0032】
上記式(A−1)における−X−R−XII−で表される2価の基としては、メチレン基、炭素数2もしくは3のアルキレン基、*−O−、*−COO−又は*−O−CHCH−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基C2c+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0033】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【化5】

【0034】
上記式(2)で表される化合物の比率は、液晶配向膜上においてより安定したプレチルト角を発現できる観点から、ジアミンの全量に対して10〜100モル%であるのが好ましく、20〜90モル%であるのがより好ましく、40〜70モル%であるのが更に好ましい。
【0035】
<分子量調節剤>
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0036】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0037】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0038】
<ジアミン(D−1−1)の合成>
上記式(3)で表される化合物であるジアミン(D−1−1)については、有機化学の定法により適宜製造することができる。具体的には、Bが単結合であってn=1の化合物の場合、例えば、まず、下記式で表される化合物(M−1)にエーテル系溶媒中で金属マグネシウムを作用させ、次いで置換又は無置換のシクロヘキサン−1,4−ジオンを反応させることにより中間体(M−2)を得る(下記反応式(I)参照)。
【化6】

(式中、Yはハロゲン原子である。R、R、m及びrは、それぞれ上記式(3)におけるR、R、m及びrの定義と同じである。)
【0039】
Yのハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。これらのうち、反応性の観点からすると臭素原子が好ましい。反応式(I)の反応温度は、反応方法に応じて適宜設定すればよいが、−20〜150℃であるのが好ましく、0〜100℃であるのがより好ましい。反応に使用するエーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0040】
次いで、中間体(M−2)について、接触還元条件下、ニトロ基の還元及び水酸基の還元的除去を行う。これにより、上記式(3)で表される化合物であるジアミン(D−1−1)を得ることができる(下記反応式(II)参照)。
【化7】

(式中、R、R、m及びrは、それぞれ上記式(3)におけるR、R、m及びrの定義と同じである。)
【0041】
反応式(II)の反応は、ニッケル、パラジウム−炭素、PtO、Pd(OH)などの触媒存在下において、−20〜150℃で行うのが好ましく、0〜120℃で行うのがより好ましい。反応に使用する溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどを用いることができる。
【0042】
なお、nが2又は3の場合には、シクロヘキサン−1,4−ジオンに代えて、下記式(4)で表される化合物を用いることにより、上記式(3)で表される化合物(但し、Bが単結合であってnが2又は3)を得ることができる。
【化8】

(式中、kは、0又は1である。R及びmは、それぞれ上記式(3)におけるR、mの定義と同じである。)
【0043】
一方、Bが、*−O−、*−COO−又は*−OCO−である場合(但し、「*」を付した結合手がアミノフェニル基と結合する。)、公知の方法を用いて適宜合成することができる。具体的には、n=1の場合を例示すると、Bが*−O−である化合物は、例えば、1,4−シクロヘキサンジオールとハロゲン化ニトロベンゼンとを脱ハロゲン化水素縮合し、次いでニトロ基を還元することにより得ることができる。
Bが*−COO−である化合物は、例えば、1,4−シクロヘキサンジオールとニトロ安息香酸クロリドとのエステル化反応を行った後、次いでニトロ基を還元することにより得ることができる。
Bが*−OCO−である化合物は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボニルクロリドとニトロフェノールとのエステル化反応を行った後、次いでニトロ基を還元することにより得ることができる。
【0044】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸は、上記式(2)で表される化合物、好ましくは上記式(3)で表される化合物を含むジアミンと、上記のテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合が更に好ましい。
【0045】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間であるのが好ましく、0.5〜12時間であるのがより好ましい。
【0046】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0047】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
【0048】
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0049】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又はその第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下である。
【0050】
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0051】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0052】
<イミド化重合体>
本発明におけるイミド化重合体(ポリイミド)は、上記合成したポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。この場合、ポリアミック酸を溶解してなる上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
【0053】
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、65〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0054】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0055】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0056】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0057】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる本発明におけるポリアミック酸又はイミド化重合体(以下、特定重合体ともいう)は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0058】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如く特定重合体を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
【0059】
[その他の重合体]
その他の重合体は、溶液特性及び電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えば式(2)で表される化合物を含まないジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、該他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸又は他のポリイミドが好ましく、他のポリアミック酸がより好ましい。なお、他のポリアミック酸又は他のポリイミドを合成するために用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、特性重合体を合成するために用いられる化合物を挙げることができる。
【0060】
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
【0061】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
【0062】
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0063】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0064】
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0065】
[有機溶媒]
本発明の液晶配向剤は、特定重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0066】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るおそれがある。
【0068】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜6.0重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0069】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、上記の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を具備するものである。液晶表示素子における動作モードについて、IPS型やTN型、STN型といった水平配向型に適用してもよいし、VA型のような垂直配向型に適用してもよいが、好ましくは水平配向型であり、その中でも特にTN型に適用するのが好ましい。
【0070】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各動作モードに共通である。
【0071】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0072】
(1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱(好ましくは予備加熱(プレベーク)及び焼成(ポストベーク)からなる二段階加熱)することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0073】
液晶配向剤塗布後の塗布面を、次いで予備加熱(プレベーク)し、さらに焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.6μmである。
【0074】
(1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0075】
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0076】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0077】
さらに、上記の液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0078】
なお、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、上記のラビング処理を施してもよい。
【0079】
[工程(3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板につき、二枚の基板の液晶配向膜のラビング方向が直交又は逆平行となるように間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、二枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面に、偏光板を、その偏光方向が各基板に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。
【0080】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0081】
液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
【0082】
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0083】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0085】
<ジアミンの合成>
[合成例1−1]
下記スキーム1に従って、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)シクロヘキサン(以下、ジアミン(D−1−2)ともいう。)を合成した。
【化9】

【0086】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例2−1]
テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19g(80モル%)及びピロメリット酸二無水物5.3g(20モル%)と、ジアミンとして、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン12g(20モル%)、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン7.2g(15モル%)、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン1.2g(1.2モル%)、及び化合物(D−1−2)26g(63.8モル%)とを、N−メチル−2−ピロリドン320g及びγ―ブチロラクトン320gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行った。これにより、ポリアミック酸(P−1)を10重量%含有する溶液を得た。
【0087】
[合成例2−2及び2−3、比較合成例1]
テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、組成比を下記表1のようにした以外は、合成例1と同様にしてポリアミック酸(P−2)、(P−3)、(R−1)をそれぞれ10重量%含有する溶液を調製した。
【表1】

【0088】
表1中、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの略称は、それぞれ以下のとおりである。
[テトラカルボン酸二無水物]
T−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)
T−2:ピロメリット酸二無水物(PMDA)
T−3:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T−4:2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物
[ジアミン]
D−2−1:1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン
D−2−2:テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン
D−2−3:3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン
D−2−4:p−フェニレンジアミン
【0089】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
上記合成例2−1で得たポリアミック酸(P−1)を含有する溶液に、γ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、更にエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを、重合体の合計100重量部に対して20重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:BC=30:30:40(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、液晶配向剤を得た。
【0090】
[実施例2〜3、比較例1]
ポリアミック酸の種類をそれぞれ(P−2)、(P−3)、(R−1)のいずれかに変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。
【0091】
<液晶セルの製造>
調製した実施例1〜3、比較例1のそれぞれの液晶配向剤を、スピンコーターを用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
【0092】
次に、上記一対の基板の液晶配向膜を有するどちらか一枚の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように、かつ各配向膜におけるラビング方向が直交するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
【0093】
<液晶セルの評価>
(1)耐熱安定性の評価
上記で製造した液晶セルにつき、交流6.0V(ピーク−ピーク)を重畳した30Hz、3.0Vの矩形波を、70℃の環境温度で500時間印加した。500時間経過後のセルを目視で観察したときに、表示不良が見られなかった場合を耐熱安定性「良好」、表示不良は見られた場合を耐熱安定性「不良」として評価した。
【0094】
(2)電圧保持率の測定
上記で製造した液晶セルにつき、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。電圧保持率が95%以上の場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と評価した。
【0095】
(3)初期プレチルト角の測定
上記で製造した液晶セルにつき、「T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p1783(1977)」、及び「F.Nakano,et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p2013(1980)」に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した。測定は、液晶セルの作製後、電圧印加を行う前に行い、これを初期プレチルト角θiniとした。
【0096】
(4)プレチルト角安定性の評価
上記で製造した液晶セルにつき、AC9V、室温で、13時間駆動した後のプレチルト角(駆動後プレチルト角θac)を上記(3)と同じ方法で測定し、下記式(5)によりプレチルト角変化率α[%]を算出した。プレチルト角変化率αが3%未満のものを「良好」、それ以上のものを「不良」と評価した。
α=(θac−θini)/θini×100[%] …式(5)
【0097】
上記(1)〜(4)の結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0098】
表2に示すように、実施例1〜3の液晶セルは、いずれも、耐熱安定性及び電圧保持特性が良好であった。また、プレチルト角変化率αについては、実施例1〜3では、1.8〜2.6%であり、電圧印加前と電圧印加の解除後とでプレチルト角はさほど変化しなかった。これに対し、比較例1ではα=5.0%であり、電圧印加の前後においてプレチルト角が大きく変化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、
前記重合体は、下記式(1)で表される構造を主鎖に有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は結合手を示す。)
【請求項2】
前記ジアミンが、下記式(2)で表される化合物を含むものである請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(2)中、Aは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、炭素原子が有する水素原子の少なくとも1つが置換されていてもよい。Bは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【請求項3】
前記Aは、それぞれ独立に、フェニレン基又は置換フェニレン基である請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項6】
下記式(3)で表される化合物。
【化3】

(式(3)中、Bは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基である。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の整数である場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。rは、それぞれ独立に、0〜5の整数であり、Rが複数存在する場合、Rはそれぞれ独立して上記定義を有する。nは1〜3の整数であり、nが2又は3である場合、R及びmはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【請求項7】
請求項6に記載の化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる重合体。

【公開番号】特開2012−98476(P2012−98476A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245615(P2010−245615)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】