説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【要約書】
【課題】 垂直配向性、電圧保持率性に優れており、高湿度下に放置した場合でもコントラストムラ、表示欠損を発現せず、信頼性を有する垂直配向型液晶表示素子およびそのための液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】 テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を反応させて得られるポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体 100重量部、および分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物 0.01〜100重量部を含有する、垂直配向型液晶配向剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶配向剤および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、垂直配向性、電圧保持率および耐湿性に優れた液晶配向膜を与えることができる液晶配向剤および上記液晶配向膜を備えた、信頼性の高い液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板表面にポリアミック酸、ポリイミドなどからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。
【0003】
これらに対しMVA(Multi domain Vertical Alignment)方式やPVA(Patterned Vertical Alignment)と呼ばれる垂直配向型液晶表示素子が提案されている。これらのMVA方式やPVA方式の液晶表示素子は、視野角、コントラストなどに優れ、液晶配向膜の形成においてラビング処理を行わなくてよいなど、製造工程の面でも優れている。MVA方式やPVA方式に好適な液晶配向膜としては、垂直配向性に優れることが要求される。
【0004】
またさらに、最近では液晶表示素子も大型化、軽量化、低消費電力化等の面から高性能な表示素子としてめざましい発展を遂げており、それに伴い液晶配向膜に対する要求性能も益々厳しくなってきている。特に低消費電力化を目的とした低電圧駆動型液晶表示素子において電圧保持率や高温にて長時間電圧を印加する信頼性試験に対する要求が厳しくなってきているほか、製造プロセスにおいて配向膜が空気中の水分を吸収することによって発生する配向ムラの問題も存在しており、この問題の解決が迫られている。しかしながら、従来までのMVA方式やPVA方式に好適な液晶配向膜では、例えば、特許文献1、特許文献2のようにエポキシ基を配向剤構造に有しており、垂直配向性や電気特性に優れているものも見られるが、未だ吸湿の問題を解決することができていない。このような状況から電圧保持率性など電気的特性を損なうことなく、かつ耐湿性に優れた液晶配向膜を供する液晶配向剤の開発が待ち望まれていた。
【特許文献1】特開2002−323701号公報
【特許文献2】特開2004−94179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、垂直配向性、電圧保持率性および耐湿性に優れた液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を反応させて得られるポリアミック酸(以下、「特定重合体I」という)および/またはそのイミド化重合体(以下、「特定重合体II」という) 100重量部、並びに
(B)分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物 0.01〜100重量部
を含有することを特徴とする、垂直配向型液晶配向剤によって達成される。
【0009】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、本発明の上記液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする垂直配向型液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明液晶配向剤によれば、垂直配向性、電圧保持率性に優れており、さらに高湿度下に放置した場合でもコントラストムラ、表示欠損を発現せず、信頼性を有する垂直配向型液晶表示素子を作成することができる。
【0011】
本発明の垂直配向型液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
ポリアミック酸およびそのイミド化重合体
本発明では、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を反応させて得られるポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体が用いられる。
【0014】
本発明において用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸二無水物および芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0015】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0016】
脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、下記式(a)および(b)で表される化合物などを挙げることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1およびR4は、芳香環を有する2価の有機基を示し、R2およびR3は、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するR2およびR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(1)〜(4)で表される化合物などを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
【化2】

【0021】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、50モル%以上が脂環族テトラカルボン酸二無水物であるポリアミック酸およびそのイミド化重合体が電圧保持率の点で好ましい。好ましい脂環族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、上記式(a)で表される化合物のうち下記式(5)〜(7)で表される化合物および上記式(b)で表される化合物のうち下記式(8)で表される化合物を挙げることができる。特に好ましいものとして、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、および下記式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
【化3】

【0023】
本発明で用いられるジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミンおよび下記式(I)〜(II)で表される化合物などの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R5 は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基を示し、Xは2価の有機基を示す。)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R6 は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基を示し、X は2価の有機基を示し、複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。)
下記式(III)で表されるモノ置換フェニレンジアミン類;下記式(IV)で表されるジアミノオルガノシロキサン;
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、R7 は、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−および−CO−から選ばれる2価の有機基を示し、R8 は、ステロイド骨格、トリフルオロメチル基およびフルオロ基から選ばれる基を有する1価の有機基または炭素数6〜30のアルキル基を示す。)
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、R9 は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するR9は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
下記式(9)〜(13)で表される化合物などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、yは2〜12の整数であり、zは1〜5の整数である。)
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン 、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、上記式(9)〜(13)で表される化合物、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、上記式(I)で表される化合物のうち下記式(14)で表される化合物、上記式(II)で表される化合物のうち下記式(15)で表される化合物および上記式(III)で表される化合物のうち下記式(16)〜(21)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化9】

【0035】
プレチルト角発現成分を有するジアミンの使用量は、全ジアミンのうち2.5〜50モル%であることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる特定重合体Iは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られる。かかる反応は有機溶媒中で、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度で行われる。
【0037】
反応溶液としては、例えば合成されるポリアミド酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0038】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物中のアミノ基1当量に対してテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となるようにすることが好ましく、0.3〜1.4当量となるようにするのがより好ましい。
【0039】
本発明に用いられる特定重合体IIは、上記した特定重合体Iを、加熱するかまたは脱水剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化することにより得られる。加熱によりイミド化する場合の反応温度は、好ましくは60℃〜200℃、より好ましくは100℃〜170℃である。反応温度が60℃未満では反応の進行が遅れがちであり、また200℃を超えると可溶性ポリイミドの分子量が大きく低下することがある。また、脱水剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化する場合には、前記した有機溶媒中で行うことができる。反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃である。脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。また、イミド化触媒としては例えばピリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。脱水剤の使用量は、特定重合体Iの繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、イミド化触媒の使用量は使用する脱水剤1モルに対し0.5〜10モルとするのが好ましい。
【0040】
このようにして得られる特定重合体Iおよび特定重合体IIのそれぞれは、その対数粘度(ηln)の値が、好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.05〜5dl/gである。
【0041】
本発明における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記式(I)によって求められるものである。
【0042】
【数1】

【0043】
なお、前記有機溶媒には、貧溶媒であるアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素を、生成する重合体が析出しない程度に併用することができる。かかる貧溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン;乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルの如きエステル;ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランの如きエーテル;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンの如きハロゲン化炭化水素およびヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き炭化水素などを挙げることができる。
【0044】
得られる特定重合体IIのイミド化率は、FT−IR測定における1,381cm-1付近の吸収(C−N−C変角振動=イミド結合の吸収)と、1,503cm-1付近の吸収(アミック酸結合の吸収)とのピーク面積比から、下記式によりイミド化率を算出した。
【0045】
イミド化率={α1/(α1+α2)}×100(%)
α1:1,381cm-1付近の吸収のピーク面積
α2:1,503cm-1付近の吸収のピーク面積
なお、α2は塗膜を300℃のホットプレートで10分間加熱したものの1,503cm-1付近の吸収を0として、ピーク面積を求めた値である。
【0046】
本発明において用いられるエポキシ化合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を含有する。かかるエポキシ化合物としては、部分構造(i) 、(ii)または(iii)を有する化合物が好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
(ここで、Rは水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示し、そしてkは1〜3、lは1〜3、mは1〜4、nは1〜20の整数を示す)
部分構造(i)を有する化合物としては、例えばノボラックフェノール系エポキシ化合物が挙げられる。これらにはジャパンエポキシレジン(株)製商品名EPIKOTE−152、同−154、EPICURE−MP402FPY、同−YLH129B65等を例示できる。部分構造(ii) を有する化合物としては、例えば1,12,2−テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型固形エポキシ樹脂、EPIKOTE−1031S等が挙げられる。部分構造(iii) を有する化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業(株)製商品名セロキサイド2021−A、同−P等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は1種でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
また、ここに挙げたエポキシ化合物の多くは高分子量体であるが、本発明に用いるエポキシ化合物は、分子量によって制限されるものではない。
【0050】
本発明の液晶配向剤は、例えば、特定重合体Iおよび/または特定重合体IIを含有する溶液にエポキシ化合物を添加することにより有利に調製できる。この際用いられる溶媒としては前述の溶剤と同じ溶剤を挙げることができる。
【0051】
エポキシ化合物の使用割合は、特定重合体Iおよび/または特定重合体II100重量部に対して0.01〜100重量部である。
【0052】
本発明の液晶配向剤は、特定重合体Iおよび/または特定重合体IIを含有するが、これらの特定重合体の分子量を調節しまた基板への最適な塗布性を実現するためにモノアミンを反応時に添加してもよい。
【0053】
この際に用いられるモノアミンとしては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。
【0054】
本発明の液晶配向剤は、液晶セルを形成する少なくとも一方の基板が突起形状またはパターン形状を有する垂直配向型液晶表示素子に用いられる。上記形状は、素子の配向規制手段として用いられる。このような液晶表示素子としては、例えば、MVA方式の液晶表示素子が挙げられる。MVAモードとは“液晶 Vol.3 No.2 117(1999年)”や特開平11−258605号公報に示されているように、突起を配向規制手段に用いた垂直配向モードを示す。突起およびパターンは、TFT基板側およびカラーフィルター側のそれぞれに形成されていてもよく、例えばカラーフィルター側に突起を有し、TFT側にパターンを有する等、両方の配向規制手段を有するものでもよい。
【0055】
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0056】
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている液晶狭持基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。液晶配向剤塗布後の加熱温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜を形成するが、加熱することによって脱水閉環を進行させ、イミド化された塗膜とすることもできる。
【0057】
形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0058】
また、本発明の液晶配向剤は特定重合体Iおよび/または特定重合体IIと基板との接着性を改善する目的で、官能性シラン含有化合物を含有することができる。
本発明の液晶配向剤には、目的の物性を損なわない範囲内で、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0059】
(2)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内にネガ型ネマティック型液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0060】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0061】
液晶としては、例えばネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として市販されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
【0062】
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において調製された液晶配向剤の評価項目および評価方法を下記に示す。
(液晶分子の垂直配向性)
垂直配向型液晶表示素子の垂直配向性は電圧OFF時および交流12V(ピーク−ピーク)での液晶表示素子を観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判断した。
(液晶表示素子の耐湿性試験)
垂直配向型液晶表示素子の耐湿性は素子を室温、高湿度下(90%RH)に放置し、電圧をオン・オフさせた時に液晶セル中の異常ドメインの認められない場合を良好とした。
(液晶表示素子の信頼性試験)
液晶配向剤の信頼性は、垂直配向型液晶表示素子に直流6.0V、交流6.0V(ピーク−ピーク)を重畳した30Hz、3.0Vの矩形波を70℃の環境温度で167時間印加した後、電圧をOFFとし、残像が消去したのちに、ムラなく、均一に垂直配向しているか目視により確認した。
【0064】
(電圧保持率)
液晶表示素子に温度40度で3Vの電圧、60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した際、3V印加解除から167ミリ秒後の保持電圧を、(株)東陽テクニカ製VHR−1を用いて測定し、電圧保持率を求めた。この際に液晶としてネガ型MLC−2038(Merck社製)を用いた。
【0065】
合成例1
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物2.3g、p−フェニレンジアミン0.88g、および上記式(9)で表されるジアミン化合物1.1gをN−メチル−2−ピロリドン16.8gに溶解させ、60℃で5時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈殿させた。その後、メタノールで洗滌し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、特定重合体Ia55.6gを得た。
【0066】
合成例1で得られた特定重合体Iaを39.0gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、0.88gのピリジンと1.13gの無水酢酸を添加し、110℃で4時間イミド化を行った。次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈殿させ、固有粘度0.63dL/gの特定重合体IIa53.0gを得た。得られた特定重合体IIaのイミド化率を表1示した。
【0067】
合成例2
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物1.89g、p−フェニレンジアミン0.55gおよび、上記式(9)で表されるジアミン化合物1.76gをN−メチル−2−ピロリドン16.8gに溶解させ以外は合成例1と同様にして特定重合体Ib55.7gを得た。
【0068】
合成例1で得られた特定重合体Ibを39.0gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、0.73gのピリジンと0.95gの無水酢酸を添加し、110℃で4時間イミド化を行った。次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈殿させ、固有粘度0.5dL/gの特定重合体IIb52.1gを得た。
【0069】
合成例3
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物2.9g、p−フェニレンジアミン1.1g、および上記式(9)で表されるジアミン化合物0.6gをN−メチル−2−ピロリドン16.8gに溶解させた以外は合成例1と同様に特定重合体Ic54.1gを得た。
【0070】
特定重合体Ic、ピリジン1.32g、無水酢酸1.70gを39.0gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解した以外は、合成例1と同様にイミド化を行うことで、固有粘度0.32dL/gの特定重合体IIc52.5gを得た。
【0071】
合成例4
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物2.9g、p−フェニレンジアミン1.1g、および上記式(9)で表されるジアミン化合物0.6gをN−メチル−2−ピロリドン16.8gに溶解させた以外は合成例1と同様に特定重合体Id54.6gを得た。
【0072】
特定重合体Idを、ピリジン1.76g、無水酢酸2.27gを39.0gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解した以外は、合成例1と同様にイミド化を行うことで、固有粘度0.48dL/gの特定重合体IId52.1gを得た。
【0073】
合成例5
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.6g、ピロメリット酸二無水物1.5g、p−フェニレンジアミン2.2g、および上記式(9)で表されるジアミン化合物3.6gをN−メチル−2−ピロリドン48.0gに溶解させた以外は合成例1と同様に固有粘度0.45dL/gの特定重合体Ie54.0gを得た。
合成例1〜5
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜9および比較例1〜5
【0076】
実施例1
合成例1で得られた特定重合体IIa3.88gとエポキシ化合物であるエピコート154、0.58gをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて、固形分濃度3.5重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、液晶配向剤溶液を調製した。この溶液を厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃で1分間、その後200℃で1時間乾燥することにより乾燥膜厚600オングストロームの塗膜を形成した。
【0077】
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷法により塗布した後、2枚の基板の間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着して接着剤を硬化させた。基板の表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、液晶を注入充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して垂直配向型液晶表示素子を作製した。
【0078】
上記のようにして作製された垂直配向型液晶表示素子は、垂直配向性も良好であり、電圧保持率が97%を示し、添加剤を加えていない場合の電圧保持率は89であることから添加剤を加えることにより向上が見られた。また90%RTの高湿度下に置いた場合でも吸湿によって発生する配向ムラは観測されず良好な結果を示した。従って、本実施例により作製された液晶表示素子によれば、垂直配向性、電圧保持率性に優れ、高湿度下においてもコントラストムラを発現しないことが確認された。
【0079】
実施例2〜9
下記表2に示す処方に従って、合成例2〜4で得られた特定重合体II(IIb〜IId)、合成例5で得られた特定重合体Ieのそれぞれとエポキシ化合物とを混合して実施例1と同様に3.5%の溶液とした。この際、エポキシ化合物として実施例2〜5では化合物Aを用い、実施例6、7ではそれぞれ化合物B、Cを用い、実施例8、9ではエポキシ化合物として化合物Aを重合体100重量部に対しそれぞれ10部、40部とした以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、各種評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0080】
比較例1〜5
下記表2に示した処方に従って、合成例1〜4で得られた特定重合体II(IIb〜IId)、合成例5で得られた特定重合体Ieだけを用いた以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、各種評価・試験を行った。結果を下記表3に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
*添加量:重合体100重量部に対する添加剤の重量部
A:エピコート154
B:エピコート1031S
C:セロキサイド2021
【0083】
【表3】






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を反応させて得られるポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体 100重量部、並びに
(B)分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物 0.01〜100重量部
を含有することを特徴とする、垂直配向型液晶配向剤。
【請求項2】
分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物が下記式(i)、(ii)および(iii):
【化1】

ここで、Rは水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示し、そしてkは1〜3、lは1〜3、mは1〜4、nは1〜20の整数を示す、
のそれぞれで表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
請求項1に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、垂直配向型液晶表示素子。





















【公開番号】特開2006−23344(P2006−23344A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198951(P2004−198951)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】