説明

液滴吐出装置およびそれを用いた画像記録方法

【課題】定着性に優れた画像を記録できる液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる液滴吐出装置は、複数種のインクから一種のインクを選択する選択手段と、選択手段から流通させたインクを吐出させるノズルと、選択手段とノズルとを繋ぐ液体供給路と、を有し、複数種のインクのうち第1インクおよび第2インクは、実質的に同一色であり、かつ、樹脂成分を含有し、第1インクは沸点が280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有せず、第2インクは沸点が280℃以上のアルキルポリオールを含有し、第1インク中の樹脂成分の含有率[WA]と、第2インク中の樹脂成分の含有率[WB]と、の関係は、(WA>WB)、であり、液体供給路の第2インクを第1インクで置き換えるときに使用する第1インクの量は、液体供給路の第1インクを第2インクで置き換えるときに使用する第2インクの量よりも多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置およびそれを用いた画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置では、一つの装置を用いて多様な被記録媒体への記録に対応できることが要求されている。一つの装置を用いて多様な被記録媒体に記録を行う際には、被記録媒体の種類に応じて、適したインクを用いる必要がある。そのため、被記録媒体の種類を変更する度に、現に装着されているインクカートリッジを一旦取り外し、それに代えて所望のインクが充填されたインクカートリッジを装着しなおすこと等が行われていた。
【0003】
しかしながら、インクカートリッジの交換は、液滴吐出装置のユーザーにとって煩雑な作業であり、該ユーザーに過大な負担を強いることになる。
【0004】
そこで、特許文献1では、インクカートリッジを交換することなく同一のノズルから吐出されるインクを必要に応じて交換することが可能な切り替え手段を備えた液滴吐出装置が提案されている。これによれば、例えば、フォトブラックおよびマットブラックのいずれか1種を同一のノズルから選択的に吐出させることができる。
【0005】
一方、従来から、溶媒として水をベースとした水性インク組成物が用いられている。このような水性インク組成物は、地球環境および安全性等の観点から、インクを吸収しやすい普通紙等に対する記録に限らず、インクを吸収しにくいプラスチック等のメディアに対する記録にも用いられるようになってきた。しかしながら、従来の水性インク組成物(以下、「普通インク」ともいう。)では、インクを吸収しにくいメディアに対する定着に優れていなかった。そのため、インクを吸収しにくいメディアに使用される水性インク組成物(以下、「レジンインク」ともいう。)では、普通インクよりも、インクを定着させるための樹脂成分の含有割合を高くし、沸点280℃以上の溶媒の含有割合を低くすることなどが行われている。しかし、レジンインクは、樹脂成分の含有量、沸点280℃以上の有機溶媒の含有量の関係上、吐出安定性に不具合が生じる場合があるので、普通インクとレジンインクの両者を切り替え手段により組み合わせることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した普通インクおよびレジンインクを、前述したようなインクの切り替え手段を備えた液滴吐出装置に適用すると、インクの切り替えを実行する際に、普通インクとレジンインクが互いに混ざり合う。そのため、切り替えられたインクに含まれる成分が本来配合されていた割合とならない状態で、そのままノズルから吐出される場合があった。
【0008】
特にレジンインクは、インクを吸収しにくい被記録媒体への定着性に優れていることが重要であるので、インク中の樹脂成分(被記録媒体に対する定着性に寄与する成分)と、沸点280℃以上の有機溶媒(被記録媒体に印刷した際の速乾性に寄与する成分)と、の含有率を一定基準に保持しておく必要がある。そのため、レジンインクを用いてインクを吸収しにくい被記録媒体に対する記録を行う際に、切り替えられたインクに含まれる成分が本来配合されていた割合から大きくずれると、記録される画像の定着性に優れないという不具合が生じる場合がある。
【0009】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、多様な種類の被記録媒体に対して定着性に優れた画像を記録できる液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]
本発明にかかる液滴吐出装置の一態様は、
複数種のインクから一種のインクを選択する選択手段と、
前記選択手段から流通させたインクを吐出させるノズルと、
前記選択手段と前記ノズルとを繋ぐ液体供給路と、
を有し、
前記複数種のインクのうち、第1インクおよび第2インクは、実質的に同一色であり、かつ、樹脂成分を含有し、
前記第1インクは、1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有せず、
前記第2インクは、1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを含有し、
前記第1インク中の前記樹脂成分の含有率[WA(質量%)]と、前記第2インク中の前記樹脂成分の含有率[WB(質量%)]と、の関係は、(WA>WB)、であり、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えるときに使用する当該第1インクの量は、前記液体供給路の前記第1インクを前記第2インクで置き換えるときに使用する当該第2インクの量よりも多い。
【0012】
適用例1の液滴吐出装置によれば、多様な種類の被記録媒体に対して定着性に優れた画像を記録することができる。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記液体供給路の内容量を内容量Aとし、前記液体供給路内にある前記第1インクを前記第2インクで置き換える際に使用する当該第2インクの置換量Bとしたときに、
前記内容量Aと前記置換量Bとの関係は、(内容量A>置換量B)、であることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記液体供給路の内容量を内容量Aとし、前記液体供給路内にある前記第2インクを前記第1インクで置き換える際に使用する当該第1インクの置換量Cとしたときに、
前記内容量Aと前記置換量Cとの関係は、(置換量C>内容量A)、であることができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第1インク中の前記樹脂成分の前記含有率[WA(質量%)]と、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の樹脂成分の含有率[WC(質量%)]と、
の関係が、
(0.95WA≧WC≧0.50WA)
であることができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の前記1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールの含有率は、2質量%以下であることができる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記第1インクは、インク低吸収性またはインク非吸収性の被記録媒体に記録されることができる。
【0018】
[適用例7]
本発明にかかる画像記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか1例に記載の液滴吐出装置を用いた画像記録方法であって、
前記ノズルから前記第1インクの液滴を吐出させて、当該液滴を被記録媒体に付着させる工程と、
前記被記録媒体を加熱して、前記被記録媒体に付着させた前記液滴を乾燥させる工程と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】選択手段を備えたプリンターの主要構成部を示す概略斜視図。
【図2】図1に示したプリンターの電気的な構成を示すブロック図。
【図3】第1充填状態とする場合に行われる処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図4】第2充填状態とする場合に行われる処理の流れを説明するためのフローチャート。
【図5】プリンターの電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0021】
1.液滴吐出装置
1.1.装置構成
以下、液体吐出装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、液滴吐出装置としてインクジェットプリンター(以下、「プリンター」という。)を例に挙げて、その主要な構成について説明する。図1は、プリンターの主要構成部を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示したプリンターの電気的な構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態では、図1および図2を用いて、2種のインクを切り替えることができる選択手段56を有するプリンター20について記述するが、本発明にかかるプリンターが備える選択手段は、3種以上のインクを切り替えるものであってもよい。
【0023】
また、以下の説明において、第1インクおよび第2インクは、実質的に同一色であり、それぞれ樹脂成分(後述)を含有するものとする。また、第1インク中の樹脂成分の含有率は、第2インク中の樹脂成分の含有率よりも高いこととする。なお、第3インクを備える場合には、第3インクは、例えば洗浄液のように、沈殿を生じにくい性状の溶液であるものとする。
【0024】
なお、本明細書において、「実質的に同一色」とは、目視による判断で、同一色と認定できる色相を有することをいう。
【0025】
図1に示すように、プリンター20は、用紙スタッカー22と、図示しないステップモーターで駆動される紙送りローラー24と、プラテン26と、キャリッジ28と、キャリッジモーター30と、キャリッジモーター30によって駆動される牽引ベルト32と、キャリッジ28の走査を案内するガイドレール34と、を備えることができる。また、キャリッジ28には、多数のノズルを備える記録ヘッド36が搭載されている。
【0026】
図1に示すように、液体供給路41は、記録ヘッド36に設けられたノズル図示せずと選択手段56とを繋ぐ流路である。記録ヘッド36は、液体供給路41を介してカートリッジ11aおよび11b、液体供給路42を介してカートリッジ12aおよび12b、液体供給路43を介してカートリッジ13aおよび13b、液体供給路44を介してカートリッジ14aおよび14bと接続されている。
【0027】
図1に示すように、カートリッジ11aにはブラックインク(K1)、カートリッジ11bにはブラックインク(K2)、カートリッジ12aにはシアンインク(C1)、カートリッジ12bにはシアンインク(C2)、カートリッジ13aにはマゼンタインク(M1)、カートリッジ13bにはマゼンタインク(M2)、カートリッジ14aにはイエローインク(Y1)、カートリッジ14bにはイエローインク(Y2)がそれぞれ収容されている。なお、K1、C1、M1およびY1は、第1インクに相当するインクであり、K2、C2、M2およびY2は、第2インクに相当するインクである。
【0028】
ここで、同一色に分類されるインクは、同一のノズルから吐出される。例えば、ブラックインクK1は、記録ヘッド36に備えられたノズルのうち、ブラックインクK2が吐出されるノズルと同一のノズルから吐出される。他色のインクについても、ブラックインクと同様である。
【0029】
液体供給路41〜44には、それぞれ、選択手段56を介して第1インクと第2インクとが選択的に供給されるようになっている。
【0030】
なお、図示しないカートリッジをさらに設けて、これに第3インクを収容して、該第3インクを第1インクが吐出されるノズルに、選択手段56を介して第1インク、第2インクおよび第3インクが選択的に充填されるように構成してもよい。この場合は、選択手段56は、3種のインクの切り替えが可能となるように適宜構成される。
【0031】
各カートリッジは、各インク(画像形成液)を収容したインクパックを備えており、インクパックの周囲には空気室が形成されている。図示しない加圧手段によって空気室を加圧することによって各インクパック内のインクが液体供給路41、42、43、44を経由して記録ヘッド36におけるノズルへ供給される。このように、本実施形態では、プリンター20は、キャリッジ28上にインクカートリッジが搭載されるいわゆるオンキャリッジタイプのプリンターとは異なり、プリンター20本体の所定の位置に固定的に装着されるオフキャリッジタイプのインクジェットプリンターを例示する。また、ここでは、加圧手段によって、ノズルからインクを吐出させる(押し出す)ことによって置換させる態様を例示しているが、ノズル側から吸引手段によってインクを吐出させる(抜き出す)ことによって置換させる態様であってもよい。
【0032】
図1に示すように、選択手段56の一方は、カートリッジ11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14b、に接続されている。また、選択手段56の他方は、液体供給路41、42、43、44に接続されている。選択手段56は、例えば液体供給路41、42、43、44に供給するインクを切り替える弁を備えることができる。これにより、弁の開閉動作によってインクを選択して、選択したインクを液体供給路41、42、43、44に供給することができる。なお、選択手段56は、すべてのカラーにおいて現に選択されているインクを一括して他のインクに切り替えることもできるし、各カラーのうち選択したカラーのインクのみを切り替えることもできる。
【0033】
記録用紙P(被記録媒体)は、用紙スタッカー22から紙送りローラー24によって巻き取られてプラテン26の表面上を、記録ヘッド36の主走査方向と直交する副走査方向へ送られる。キャリッジ28は、キャリッジモーター30により駆動される牽引ベルト32に牽引されて、ガイドレール34に沿って主走査方向に移動する。
【0034】
プリンター20は、図2に示すように、ホストコンピューター90から供給された信号を受信する受信バッファメモリー50と、画像データを格納するイメージバッファー54と、プリンター20全体の動作を制御するシステムコントローラー51(制御手段)と、メインメモリー52と、EEPROM53と、を備えている。EEPROM53に記憶されたファームウェアをメインメモリー52に読み出し実行することによって、プリンター20の各種動作が実現される。
【0035】
また、システムコントローラー51には、キャリッジモーター30を駆動する主走査駆動回路61と、紙送りモーター31を駆動する副走査駆動回路62と、記録ヘッド36を駆動するヘッド駆動回路63と、が接続されている。副走査駆動回路62、紙送りモーター31および紙送りローラー24は、紙送り機構を構成している。
【0036】
システムコントローラー51は、受信バッファメモリー50が受信した記録データに含まれる各種コマンドや、予めEEPROM53に書き込まれた設定条件等に応じて、主走査駆動回路61および副走査駆動回路62を制御する。
【0037】
例えば、高画質の画像を記録するように設定されている場合は、主走査駆動回路61および副走査駆動回路62によって、ラスタを副走査方向に間欠的に形成しつつ画像を記録するいわゆるインターレース方式の記録を行う。また、1ラスタを形成するノズルを間欠的タイミングで駆動させて記録するいわゆるオーバーラップ方式の記録を行うこともできる。
【0038】
さらに、システムコントローラー51には、表示手段55と、選択手段56と、計時手段57と、ノズル吐出検査手段58と、が接続されている。表示手段55は、プリンター20の液晶表示画面に表示内容を表示する。あるいは、表示内容をホストコンピューター90のプリンタードライバ91へ送信し、ドライバの表示画面91に表示する。選択手段56は、上述したように切り替え弁を備えることができ、システムコントローラー51からの指示に応じて液体供給路41に供給する液体を自動的に第1インクまたは第2インクのいずれかに切り替える。また、図示しないが、選択手段56は、3種以上のインクを切り替えるように構成されてもよい。計時手段57は、液体供給路41に第1インクが充填されたまま吐出動作がない状態(第1充填状態)が継続する時間、すなわち放置時間を計時する。
【0039】
ノズル吐出検査手段58は、キャリッジ28上の記録ヘッド36による記録可能なエリアから外れた非記録エリアに配置されている。キャリッジ28が、主走査方向に沿って記録エリアから非記録エリアへ移動することで、吐出状態の検査を行う状態となる。ノズル吐出検査手段58は、非記録エリアに移動した記録ヘッド36の各ノズルと対向するように記録ヘッド36の下方に配置されている。そして、ノズル吐出検査手段58は、記録ヘッド36の各ノズルから吐出されたインク滴を受けるための導電性インク吸収体と、帯電したインク滴の接近によって導電性インク吸収体に生じる誘導電流を検出する検出部と、各ノズルからインク滴を吐出する際にこのインク滴を帯電させるべく導電性インク吸収体に電圧を印加する電圧印加部と、導電性インク吸収体を収容するための有底容器と、を備えている。
【0040】
帯電したインク滴が各ノズルから導電性インク吸収体へ向けて吐出されると、このインク滴の接近に伴って導電性インク吸収体には、静電誘導現象等に基づいて誘導電流が生じる。すなわち、インク滴の接近に伴って、導電性インク吸収体にはインク滴とは逆極性の電荷が誘起されるように誘導電流が流れる。この誘導電流の検出の有無によってノズル詰まりを検査する。
【0041】
1.2.インクの切り替え方法
以上の構成を備えたプリンター20において、第1インクと第2インクとを切り替える方法について説明する。システムコントローラー51は、液体供給路41〜44において、第2インクが充填された第2充填状態から、第1インクが充填された第1インク充填状態に切り替えたり、第1充填状態から第2充填状態に切り替えたりする制御を行うことができる。以下では、第1充填状態とする場合に行われる処理と、第2充填状態とする場合に行われる処理と、プリンター20の電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理と、についてそれぞれ説明する。
【0042】
(1)第1充填状態とする場合に行われる処理
図3は、第1充填状態とする場合に行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。システムコントローラー51は、例えば、プリンター20の電源がオンにされたときに発信される信号や、プリンター20に印刷ジョブが入力されたときに発信される信号などを受信した場合に、図3のフローを開始させる。
【0043】
まず、システムコントローラー51は、EEPROM53に記憶されている現在液体供給路に充填されているインクの情報を読み出す(ステップS11)。
【0044】
次に、システムコントローラー51は、EEPROM53から読み出した情報から、液体供給路に充填されているインクが第1インクであるか否かを判定する(ステップS12)。
【0045】
第1インクであれば(ステップ12でY)、システムコントローラー51は、ノズル吐出検査手段58にノズル吐出検査を実行させて(ステップS15)、検査結果に基づき第1インクが充填されているノズルにノズル抜けがあるか否かを判定する(ステップ16)。後述するように、第1インクは、第2インクに比べて、インク中の樹脂成分の含有比率が高い。そのため、第1充填状態のまま放置されていると、プリンター20のノズル面において、第1インクが乾燥して固化したり増粘したりする。このような場合、ノズル詰まり等が発生して、吐出不良(ノズル抜けや飛行曲がり等)が発生する。以上のことから、第1充填状態のままプリンター20が放置されていた場合には、ノズル吐出検査を実行させることが好ましい。
【0046】
システムコントローラー51は、ノズル抜けがあると判定すると(ステップS16でY)、ノズルのクリーニングを行わせて、ノズル抜けを解消させる(ステップS17)。なお、ノズルのクリーニングは、図示しない吸引機構を用いてノズル内のインクの吸引や、ノズルから液滴を吐出させてノズルの詰まりを解消させるいわゆるフラッシング動作によって、行うことができる。本フローは、このようなステップを経て終了する。
【0047】
一方、第2インクであれば(ステップ12でN)、システムコントローラー51は、液体供給路の第2インクを第1インクに切り替える(ステップS13)。ステップS13において、システムコントローラー51は、選択手段56に対して第2インク側の弁を閉じて、第1インク側の弁を開けるよう指示する。次に、システムコントローラー51は、各カートリッジの図示しない加圧手段を駆動させて、第1インクを液体供給路に供給する。このようにして、液体供給路へ供給された第1インクは、ノズル位置に充填される。すなわち、それまで充填されていた第2インクは、第1インクによってノズルから押し出され、第1インクに切り替えられる(ステップS13)。
【0048】
また、システムコントローラー51は、インクの切り替え(ステップ13)とともに、EEPROM53に記憶されている液体供給路に充填されているインクの情報を、第1インクであることに書き換える(ステップ14)。このようにして、本フローは、終了する。
【0049】
本フローにおけるステップS12では、予め、第2インクから第1インクに切り替えることが設定されていたものとする。このような第2インクから第1インクへの切り替えの設定は、例えば、第1インクを用いるという入力情報に基づいて行われる。入力情報は、例えば、ユーザーによる入力手段(プリンター20に設けられた入力手段や、プリンター20に有線または無線で接続されたPC等の入力手段)の操作によって、システムコントローラー51に入力される。
【0050】
(2)第2充填状態とする場合に行われる処理
図4は、第2充填状態とする場合に行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。システムコントローラー51は、例えば、プリンター20の電源がオンにされたときに発信される信号や、プリンター20に印刷ジョブが入力されたときに発信される信号などを受信した場合に、図4のフローを開始させる。
【0051】
まず、システムコントローラー51は、EEPROM53に記憶されている現在液体供給路に充填されているインクの情報を読み出す(ステップS21)。
【0052】
次に、システムコントローラー51は、EEPROM53から読み出した情報から、液体供給路に充填されているインクが第2インクであるか否かを判定する(ステップS22)。第2インクであれば(ステップ22でY)、本フローは終了する。
【0053】
一方、第1インクであれば(ステップ22でN)、システムコントローラー51は、液体供給路の第1インクを第2インクに切り替える(ステップS23)。ステップS23において、システムコントローラー51は、選択手段56に対して第1インク側の弁を閉じて、第2インク側の弁を開けるよう指示する。次に、システムコントローラー51は、各カートリッジの図示しない加圧手段を駆動させて、第2インクを液体供給路に供給する。このようにして、液体供給路へ供給された第2インクは、ノズル位置に充填される。すなわち、それまで充填されていた第1インクは、第2インクによってノズルから押し出され、第2インクに切り替えられる(ステップS23)。
【0054】
また、システムコントローラー51は、インクの切り替え(ステップ23)とともに、EEPROM53に記憶されている液体供給路に充填されているインクの情報を、第2インクであることに書き換える(ステップ24)。
【0055】
次に、システムコントローラー51は、ノズル吐出検査手段58にノズル吐出検査を実行させて(ステップS25)、検査結果に基づき第2インクが充填されているノズルにノズル抜けがあるか否かを判定する(ステップ26)。システムコントローラー51は、ノズル抜けがあると判定すると(ステップS26でY)、ノズルのクリーニングを行わせて、ノズル抜けを解消させる(ステップS27)。なお、ノズルのクリーニングは、「1.2.インクの切り替え方法 (1)第1充填状態とする場合の処理」と同様の方法で行うことができる。本フローは、このようなステップを経て終了する。また、ステップ26において、システムコントローラー51がノズル抜けがないと判定すると(ステップS26でN)、本フローは終了する。
【0056】
なお、本フローにおけるステップS22では、予め、第1インクから第2インクに切り替えることが設定されていたものとする。このような第1インクから第2インクへの切り替えの設定は、「1.2.インクの切り替え方法 (1)第1充填状態とする場合に行われる処理」と同様の方法で行うことができる。
【0057】
(3)プリンター20の電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理
次に、プリンター20の電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理について説明する。図5は、プリンターの電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャートである。システムコントローラー51は、外部からプリンター20の電源をOFFする指示があると(ステップS31でY)、ホストコンピューター90のプリンタードライバ91に対して電源OFF継続予定時間の入力を促すメッセージを表示するよう指示する(ステップS32)。表示されたメッセージを読んだユーザーが電源OFF継続予定時間を入力すると、入力された値がプリンター20に送信される。
【0058】
システムコントローラー51は、入力を検知すると(ステップS33でY)、プリンタードライバ91から送信された電源OFF継続予定時間が予め設定された1ヶ月以上であるか否かを判定する(ステップS34)。システムコントローラー51は、電源OFF継続予定時間が1ヶ月以上であると判定すると(ステップS34でY)、選択手段56に対して第1インク側の弁を閉じて、第2インク側の弁を開けるよう指示する。次に、カートリッジの図示しない加圧手段を駆動させて、第2インクを液体供給路に供給する。そして、第2インクは、ノズル位置に充填される。すなわち、それまで充填されていた第1インクは、第2インクによってノズルから押し出され、第2インクに切り替えられる(ステップ35)。また、システムコントローラー51は、インクの切り替え(ステップ35)とともに、EEPROM53に記憶されている液体供給路に充填されているインクの情報を、第2インクであることに書き換える(ステップ36)。そして、システムコントローラー51は、電源OFF処理を実行する(ステップS37)。このようなステップを経て、本フローは終了する。
【0059】
一方、システムコントローラー51は、ステップS34で電源OFF継続予定時間が1ヶ月より短期間であると判定すると(ステップS34でN)、第1インクを第2インクへ切り替えることなく、そのまま電源OFF処理を実行する(ステップS27)。このようなステップを経て、本フローは終了する。
【0060】
以上のように、電源をOFFする指示があっても、電源OFF処理を実行する前に第1インクが充填された状態から第2インクが充填された状態へ切り替えることができる。すなわち、電源OFF中は、液体供給路に第2インクを充填させておくことができる。これにより、液体供給路に第1インクが充填されたまま長時間放置されることを防止することができる。一方、電源OFF継続予定時間がノズルに目詰まりが発生する時間として経験的に得られた1ヶ月よりも短い場合は、第2インクが充填されることなく電源がOFFされる。すなわち、目詰まりが発生する前に電源がON状態となり吐出動作が行われる予定であるため、目詰まりを発生させる可能性が低く、第2インクを充填することなく電源をOFFする。これにより、第2インクを無駄に消費することを防止することができる。
【0061】
上記(1)〜(3)で述べた通り、プリンター20は、所定の条件のときにシステムコントローラー51からの指示に応じて、第1充填状態および第2充填状態のいずれにも自動的に切り替える。そのため、インクの切り替えは、ユーザーが手動で行う必要がない。このため、液体供給路に第1インクまたは第2インクが自動的に充填される。
【0062】
さらに、選択手段56が、3種以上のインクを切り替えるように構成され、第1インク、第2インクおよび第3インクを切り替える構成とする場合には、選択手段56は、システムコントローラー51からの指示に応じて、第1充填状態、第2充填状態、および液体供給路に第3インクが充填された第3充填状態のいずれにも任意のタイミングで切り替えることができるように構成することができる。このようにすれば、所望の種類のインクを、液体供給路に充填することができる。
【0063】
1.3.切り替え量
本実施形態に係る液滴吐出装置では、切り替えに使用するインクの量を、使用するインクに含まれる成分や、インクの性質、液体供給路の容積等を基に、あらかじめ設定する。本設定は、例えば、ユーザーによる入力手段(プリンター20に設けられた入力手段や、プリンター20に有線または無線で接続されたPC等の入力手段)の操作によって、システムコントローラー51に入力されることで行われることができる。
【0064】
本実施形態に係る液滴吐出装置では、第1インク中の樹脂成分の含有率[WA(質量%)が、第2インク中の樹脂成分の含有率[WB(質量%)]よりも高い。また、1気圧における沸点が280℃以上のアルキルポリオール(以下、高沸点溶媒という)の含有率は、第2のインクの方が第1インクよりも高い(第1のインク中の高沸点溶媒の含有率が0質量%の場合も、「第2インクの方が第1インクよりも高い」ことに含まれる。)。そのため、第2インクを第1インクで置き換えるときに使用する当該第1インクの量は、第1インクを前記第2インクで置き換えるときに使用する当該第2インクの量よりも多くする設定を行う。
【0065】
このようにする理由は、インクの置き換え後に行う画像記録と関係している。以下、具体的に説明する。
【0066】
第2インクを第1インクで置き換えて第1充填状態にした後の画像の記録は、ノズルからインク(液滴)を吐出させ、被記録媒体にインクを付着させることにより行われる。このような場合、画像記録の初期段階で被記録媒体に付着するインクは、第1インクと第2インクとが混合されたインクからなる場合が多い。第2インク中の樹脂成分の含有率は、第1インク中の樹脂成分の含有率よりも低いため、第1インクと第2インクとが混合されたインク中の樹脂成分の含有率は、第1インク中の樹脂成分の含有率よりも低下する。また、第1インク中の高沸点溶媒の含有率は、第2インク中の高沸点溶媒の含有率よりも低いため、第1インクと第2インクとが混合されたインク中の高沸点溶媒の含有率は、第1インク中の高沸点溶媒の含有率よりも上昇する。そのため、第2インクを第1インクで置き換えた後に、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体(後述)に対する記録を行うと、記録される画像の定着性、速乾性が低下する場合がある。
【0067】
一方、第1インクを第2インクで置き換えて第2充填状態にした後の画像の記録は、主にインク吸収性の被記録媒体(後述)に対して行われる。そのため、上記の第1充填状態にした後に行われる画像の記録よりも、記録される画像の定着性が問題になりにくい。
【0068】
以上のことから、液体供給路の第2インクを第1インクで置き換えるときには、当該置き換えに使用する第1インクの量を、第1インクを前記第2インクで置き換えるときに使用する第2インクの量よりも多くして、液体供給路を第1インクで十分に置き換える必要がある。
【0069】
また、選択手段56とノズルとを繋ぐ液体供給路41の内容量を内容量Aとし、液体供給路41にある第1インクを第2インクで置き換える際に必要な第2インクの置換量Bとしたときに、内容量A>置換量B、であることが好ましい。これにより、インクの使用量を削減しつつインクの吐出安定性が良好となる。
【0070】
また、第2インクを第1インクで置き換える際に必要な第1インクの置換量Cとしたときに、置換量C>内容量Aであるのが好ましい。これにより、ノズルから吐出されるインクの定着性が良好となる。
【0071】
1.4.その他
本実施形態に係る液滴吐出装置では、第1インク中の樹脂成分の含有率[WA(質量%)]と、第2インクを第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の樹脂成分の含有率[WC(質量%)]と、の関係が、0.95WA≧WC≧0.50WAであることが好ましく、0.95WA≧WC≧0.80WAであることがより好ましく、0.95WA≧WC≧0.88WAであることが特に好ましい。
【0072】
WAとWCとの関係が、0.95WA≧WC≧0.50WAであると、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体へのインクの定着性が良好であるとともに、インクの使用量を低減することができる。また、WAとWCとの関係が、0.95WA≧WC≧0.80WAの範囲内にあると、第2インクを第1インクで置き換えるときに使用する第1インクの量を低減しつつ、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体へのインクの定着性を一層良好にすることができる。特に、WAとWCとの関係が、0.95WA≧WC≧0.88WAであると、第2インクを第1インクで置き換えるときに使用する第1インクの量を低減しつつ、インク低吸収およびインク非吸収性の被記録媒体へのインクの定着性をより一層良好にすることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る液滴吐出装置では、第2インク中の樹脂成分の含有率[WB(質量%)]と、第1インクを第2インクで置き換えた後に吐出されるインク中の樹脂成分の含有率[WD(質量%)]と、の関係が、3.1WB≧WD≧WBであることが好ましく、2.1WB≧WD≧WBであることがより好ましく、1.6WB≧WD≧WBであることが特に好ましい。WBおよびWDが上記関係にあると、第1インクから第2インクに置き換えて第2充填状態とした後、インクの吐出を行う際に、ノズルの詰まりや、飛行曲がり等の不具合を低減することができる。
【0074】
また、第2インクを第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の高沸点溶媒の含有率は、2質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがより一層好ましい。これによって、インク低吸収性および非吸収性の記録媒体に対しても速乾性を維持した記録が可能となる。
【0075】
1.5.インクの組成
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いる第1インクおよび第2インクは、実質的に同一色である。そのため、インクの置き換え後であっても、ノズルから吐出されるインクの色相の変化を少なくすることができる。
【0076】
また、第1インク中の樹脂成分の含有率[WA(質量%)]と、第2インク中の樹脂成分の含有率[WB(質量%)]と、の関係は、(WA>WB)である。また、第1インク中の高沸点溶媒の含有率は、第2インク中の高沸点溶媒の含有率よりも低い(第1のインク中の高沸点溶媒の含有率が0質量%の場合も、「第1インクの方が第2インクよりも低い」ことに含まれる。)。そのため、第1インクは、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に対する記録に使用されることが好ましく、第2インクは、インク吸収性の被記録媒体に対する記録に使用されることが好ましい。
【0077】
以下、上述した第1インクおよび第2インクに含まれる成分について、詳細に説明する。第1インクおよび第2インクは、互いに異なる成分を含有してもよいし、互いに同じ成分を含有して各成分の含有量が異なっていてもよい。したがって、以下では、特に断りがない限り、第1インクおよび第2インクのいずれか一種のインクを単に「インク」と称して説明する。
【0078】
(1)樹脂成分
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、樹脂成分を含有する。樹脂成分の機能の一つとしては、インクを固化させ、さらにインク固化物を被記録媒体上に強固に定着させることが挙げられる。このような樹脂成分としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、あるいはその変性体、あるいはポリウレタン、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でもよい。また、樹脂として、ポリウレタンを用いる場合には、インクにおける分散性、記録媒体に付着した際の記録媒体への接着性が良好な点で、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタンが好ましい。さらに、ポリウレタンを用いる場合は、該ポリウレタンの合成は、公知の方法を適用することができ、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、を反応させる方法を用いることができる。なお、インクには、複数種の樹脂成分が含有されていてもよい。
【0079】
第1インクに含まれる樹脂成分の含有量は、第1インク中の顔料1質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.25質量部以上1質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上0.8質量部以下である。第1インク中の樹脂成分が上記範囲内にあることにより、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に対しても、第1インクを固化・定着させることができる。
【0080】
第2インクに含まれる樹脂成分の含有量は、第2インク中の顔料1質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.05質量部以上0.7質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。第2インク中の樹脂成分が上記範囲内にあることにより、液滴吐出装置のノズル面でのインクの固化等を低減することができる。
【0081】
第1インクに含まれる樹脂成分の含有量は、第1インクの全質量に対して、固形分換算で好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下である。第1インク中の樹脂成分が上記範囲内にあることにより、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に対しても、第1インクを固化・定着させることができる。
【0082】
第2インクに含まれる樹脂成分の含有量は、第2インクの全質量に対して、固形分換算で好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。第2インク中の樹脂成分が上記範囲内にあることにより、液滴吐出装置のノズル面でのインクの固化等を低減することができる。
【0083】
なお、本実施形態に係る液滴吐出装置において、3種以上のインクを切り替えるように構成されている場合には、洗浄液からなる第3インクを用いることができる。洗浄液は、液滴吐出装置の動作を長期間休止する場合などに、装置の保守に用いられる。そのため、洗浄液には、インクを固化させる等の性質を備えた上記の樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0084】
(2)水
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、水を含有することができる。インクに使用可能な水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、カビやバクテリアの発生を長期間抑制することができ、インクを長期に安定に保つことができるためより好ましい。
【0085】
本実施形態のインクに水を含有させる場合の水の含有量は、限定されないが、インクの全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インクにおける水の含有量が、この範囲内であると、例えば、顔料をインクに配合した場合の顔料の分散性を高めることができ、インクの保存安定性を高めることができる。
【0086】
(3)1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオール(高沸点溶媒)
本実施形態に係る液滴吐出装置に使用する第1インクは、1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオール(高沸点溶媒)を実質的に含有しない。高沸点溶媒の代表例としては、グリセリン(沸点;290℃)が挙げられる。
【0087】
なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、インク中において、0.1質量%以上含有しないこと、より好ましくは0.05質量%以上含有しないこと、さらに好ましくは0.01質量%以上含有しないことをいう。
【0088】
第1インクは、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に対する記録に用いられることが多い。インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体は、インクが浸透しにくい性質を備えているので、付着したインクの乾燥性に優れない場合がある。そのため、本実施形態に係る液滴吐出装置に使用する第1インクには、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に付着した際の乾燥性を向上させるために、高沸点溶媒を実質的に含有させない。
【0089】
一方、本実施形態に係る液滴吐出装置に使用する第2インクは、インク吸収性の被記録媒体に好ましく用いられるので、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を低減させることを目的の一つとして、高沸点溶媒を含有する。第2インク中の高沸点溶媒の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0090】
(4)有機溶媒
本実施形態に係る液滴吐出装置に使用するインクは、有機溶媒を含有することができる。インクには、複数種の有機溶媒が含有されていてもよい。有機溶媒の機能の一つとしては、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を防止することが挙げられる。なお、有機溶媒は後述する界面活性剤とは異なる溶媒である。
【0091】
有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール(沸点;197℃)、ジエチレングリコール(沸点;244℃)、プロピレングリコール(沸点;188℃)、ジプロピレングリコール(沸点;232℃)、1,3−プロパンジオール(沸点;210℃)、1,4−ブタンジオール(沸点;230℃)、1,6−ヘキサンジオール(沸点;208℃)等の多価アルコール類や、トリエタノールアミン(沸点;335℃)等の有機アミンが挙げられる。
【0092】
インク中に有機溶媒を含有させる場合には、有機溶媒の含有量は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0093】
なお、第1インクは、1気圧下での沸点が280℃以上の有機溶媒を、1.5質量%以上含まないことがより好ましく、1.0質量%以上含まないことがより一層好ましく、0.5質量%以上含まないことが最も好ましい。これにより、第1インクがインク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に付着した際の乾燥性をより一層向上させることができる。1気圧下での沸点が280℃以上の有機溶媒としては、例えば、上記のトリエタノールアミン(沸点;335℃)が挙げられる。
【0094】
(5)1,2−アルカンジオール
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、1,2−アルカンジオールを含有することができる。1,2−アルカンジオール類は、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。
【0095】
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール(沸点;188℃)、1,2−ブタンジオール(沸点;194℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点;206℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点;223℃)、1,2−オクタンジオール(沸点;131℃)等が挙げられる。インク中に1,2−アルカンジオール類を含有させる場合には、1,2−アルカンジオール類の含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0096】
(6)ピロリドン誘導体
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、ピロリドン誘導体を含有することができる。ピロリドン誘導体は、被記録媒体の良好な溶解剤として作用し、被記録媒体に対するインクの定着性を向上させることができる。ピロリドン誘導体として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。インク中にピロリドン誘導体を含有させる場合には、ピロリドン誘導体の含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0097】
(7)界面活性剤
本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、被記録媒体へのインクの濡れ性を向上させて、インクの被記録媒体への浸透性を向上させることができる。なお、界面活性剤は上述の有機溶媒とは別個の溶剤として本発明では区別される。本実施形態のインクに使用可能な界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものを例示できる。
【0098】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、瘁|オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩、および、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体、フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0099】
フッ素系界面活性剤の中でも、好ましくは、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルホスホン酸、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン等であり、特に好ましくは、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムであって、水溶性の高いものが良い。
【0100】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などを挙げることができる。
【0101】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤などを挙げることができる。
【0102】
これらの界面活性剤の中でも、被記録媒体へのインクの濡れ性を向上させて、インクの被記録媒体への浸透性を向上させる効果に特に優れている点から、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤の少なくとも一種が好ましく用いることができる。
【0103】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0104】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0105】
インクに界面活性剤を含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、インクの全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0106】
(8)色材
本実施形態のインクには、色材として顔料、染料、金属酸化物および中空構造を有する粒子から選択される少なくとも1種を含有させてもよい。インク中に色材を含有させる場合には、色材の含有量は、インク全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
【0107】
(i)顔料
本実施形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。
【0108】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0109】
また、有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0110】
更に詳しくは、ブラック用として使用される無機顔料としては、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、又はNo2200B等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、又はRaven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、またはMonarch 1400等;あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、またはSpecial Black 4等が挙げられる。
【0111】
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。
【0112】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0113】
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
【0114】
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
【0115】
(ii)染料
染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0116】
イエロー系染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.フードイエロー3、4、C.I.ソルベントイエロー15、19、21、30、109等が挙げられる。
【0117】
マゼンタ系染料としては、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.ソルビライズレッド1、C.I.フードレッド7、9、14等が挙げられる。
【0118】
シアン系染料としては、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.ソルビライズバットブルー1、5、41、C.I.バットブルー4、29、60、C.I.フードブルー1、2、C.I.ベイシックブルー9、25、28、29、44等が挙げられる。
【0119】
また、マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の染料としては、例えば、C.I.アシッドグリーン7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.ダイレクトグリーン1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.リアクティブグリーン6、7、C.I.アシッドバイオレット15、43、66、78、106、C.I.ダイレクトバイオレット2、48、63、90、C.I.リアクティブバイオレット1、5、9、10、C.I.ダイレクトブラック154等が挙げられる。
【0120】
(iii)金属酸化物粒子
金属酸化物粒子としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム等の粒子が挙げられる。
【0121】
金属酸化物粒子の平均粒子径(d50)は、好ましくは30nm以上600nm以下であり、より好ましくは200nm以上400nm以下である。平均粒子径が前記範囲を超えると、インク組成物中で粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またヘッドの目詰まり等信頼性を損なうことがある。一方、平均粒子径が前記範囲未満であると、所望の色が得られない場合がある。
【0122】
なお、金属酸化物粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が挙げられる。
【0123】
(iv)中空構造を有する粒子
中空構造を有する粒子としては、特に限定されず、スチレン−アクリル樹脂等の有機化合物から形成されるものや、無機化合物から形成されるものなど、公知のものを用いることができる。
【0124】
中空構造を有し有機化合物からなる粒子としては、例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号等の明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。中空構造を有し有機化合物からなる粒子の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0125】
また、中空構造を有し無機化合物からなる粒子は、市販のものを用いることもできる。中空構造を有し無機化合物からなる粒子を製造する場合、その製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0126】
中空構造を有する粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、200nm以上1000nm以下であることが好ましく、400nm以上800nm以下であることがより好ましく、600nm以上800nm以下であるとことが特に好ましい。中空構造を有する粒子の外径が上記範囲内にあれば、白色インク中の分散を良好に保つことができ、また、被記録媒体に付着された際に、白色度が良好な画像を得ることができる。また、中空構造を有する粒子の内径は、100nm以上800nm以下程度が適当である。中空構造を有する粒子の平均粒子径d50は、金属酸化物粒子の平均粒子径d50と同様の方法で測定することができる。
【0127】
(9)その他の成分
本実施形態のインクが顔料を含有する際には、顔料を分散させるための顔料分散剤を添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インクに顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク中の顔料の含有量に対して、5質量%以上200質量%以下、好ましくは30質量%以上120質量%以下であり、分散すべき顔料によって適宜選択するとよい。
【0128】
また、本実施形態に係る液滴吐出装置に用いるインクは、さらに、pH調整剤、ポリオレフィンワックス、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有してもよい。これらの材料を添加すると、インクの有する特性をさらに向上させる点から好ましい。
【0129】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0130】
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造したワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、市販されているものを利用することができ、具体的には、ノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を用いることができる。
【0131】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0132】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0133】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0134】
2.画像記録方法
(1)第1インクを使用した画像記録方法
本発明の一実施形態における画像記録方法(以下、「第1インクを用いた画像記録方法」ともいう。)は、上記の液滴吐出装置を用いて行われ、ノズルから第1インクの液滴を吐出させて、当該液滴を被記録媒体に付着させる工程(以下、「付着工程」ともいう。)と、被記録媒体を加熱して、被記録媒体に付着させた液滴を乾燥させる工程(以下、「乾燥工程」ともいう。)と、を含む。本工程を経て、被記録媒体上に画像を形成することができる。なお、第1インクを用いた画像記録方法に用いる液滴吐出装置は、上述した液滴吐出装置の一態様として示したプリンター20を用いることができる。
【0135】
被記録媒体に付着した液滴を乾燥は、例えば、プリンター20に設けられた加熱部(図示せず)により行うことができる。
【0136】
加熱部による加熱方式としては、例えば、被記録媒体に熱源を直接接触させて加熱する方式、記録媒体に直接接触させないで赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射する方式や、温風を吹き付けたりする方式などが挙げられる。これらの方式は、それぞれ単独で使用することもできるし、同時に使用することもできる。これにより、記録時の乾燥温度を調節することができる。
【0137】
なお、プリンター20が加熱部を有していない場合には、液滴を付着させた被記録媒体を所定の温度に設定された乾燥機や恒温槽で乾燥させてもよい。
【0138】
被記録媒体の加熱温度は、40℃以上であり、好ましくは40℃以上80℃以下であり、より好ましくは40℃以上60℃以下である。被記録媒体の加熱温度が40℃以上であれば、インク中の液媒体の蒸発飛散を効果的に促進することができる。
【0139】
被記録媒体の加熱時間は、インク中に存在する液媒体が蒸発飛散し、かつ樹脂成分の硬化を促進することができれば特に制限されない。
【0140】
第1インクを用いた画像記録方法で使用される被記録媒体としては、インク吸収性の被記録媒体、ならびにインク非吸収性およびインク低吸収性の被記録媒体が挙げられる。
【0141】
第1インクを用いた画像記録方法は、乾燥工程を備えているため、上記の被記録媒体のなかでも、インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体を用いて行われることが好ましい。インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体は、インクの吸収性に乏しく、付着したインクの乾燥性に優れないためである。
【0142】
インク吸収性の被記録媒体としては、例えば、電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)等が挙げられる。
【0143】
インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
【0144】
インク非吸収性の記録媒体としては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0145】
ここで、本明細書において「インク低吸収性およびインク非吸収性の被記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である被記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0146】
(2)第2インクを使用した画像記録方法
第2インクを用いた画像記録方法は、上記の液滴吐出装置を用いて行われ、ノズルから第2インクの液滴を吐出させて、当該液滴を被記録媒体に付着させる工程を含む。本工程を経て、被記録媒体上に画像を形成することができる。なお、第2インクを用いた画像記録方法は、主としてインク吸収性の被記録媒体に対する記録に用いられるため、第1インクを使用した画像記録方法で説明した加熱工程を備えている必要はない。
【0147】
3.実施例
以下、本発明を以下の実験例により具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0148】
3.1.インクの調製
表1に示す配合量で、色材、樹脂成分、有機溶剤、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、界面活性剤およびイオン交換水等を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過し、真空ポンプを用いて脱気処理をした。このようにして、第1インクおよび第2インクを調製した。なお、表1に記載されている濃度の単位は質量%である。
【0149】
【表1】

【0150】
表1に示した各成分は、以下の通りである。
・二酸化チタン顔料(シーアイ化成株式会社製、商品名「NanoTek(R) Slurry」、固形分濃度15%、平均粒子径300nm)
・ウレタン樹脂(三井化学株式会社製、商品名「W635」、粒子径150nm)
・グリセリン
・プロピレングリコール
・1,2−ヘキサンジオール
・2−ピロリドン
・BYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリシロキサン系界面活性剤)
・イオン交換水
なお、二酸化チタン顔料は、分散溶媒中に二酸化チタン粒子を分散させた分散体である。各インクには、二酸チタン粒子(固形分)の含有量が固形分換算で10質量%となるように添加した。
【0151】
3.2.耐擦性の比較試験
図1に示すような選択手段56を備えたインクジェットプリンターを用意し、カートリッジ11aには第1インクを充填して、第1インクを記録ヘッド36から吐出させて、PETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ株式会社製)上に、第1インクからなるベタパターン画像を記録した。このようにして、耐擦性の比較試験用のサンプル1を得た。なお、記録は1440×720dpiの解像度、100%dutyで行った。
【0152】
なお、「duty」とは、下式(1)で算出される値である。
【0153】
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100 …(1)
(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0154】
これとは別途、印刷ヘッド36が完全に第2インクによって満たされた状態として、PETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ株式会社製)上に、第2インクからなるベタパターン画像を記録した。このようにして、耐擦性の比較試験用のサンプル2を得た。なお、記録は、サンプル2と同様の条件で行った。
【0155】
得られたサンプル1およびサンプル2について、学振型摩擦堅牢試験機AB−301(テスター産業株式会社製を用いて、荷重200g,摩擦回数10回の条件で、摩擦用白綿布(カナキン3号)を取り付けた摩擦子と記録物とを擦り合わせ、画像の表面状態を目視にて観察した。評価結果を表2に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。
A:画像の剥がれは認められない
B:画像の10%以上が剥がれる
C:画像の50%以上が剥がれる
D:画像の70%以上が剥がれる
【0156】
【表2】

【0157】
3.3.第2インクから第1インクへの置換
(1)耐擦性試験
選択手段56により、第2インクを記録ヘッド36へ供給できるようにし、記録ヘッド36、供給路41および選択手段56を、第2インクで満たした。次いで、選択手段56により、第1インクを記録ヘッド36へ供給できるようにし、第2インクを第1インクで置換する操作を行った。液体供給路の内容量の合計を100とした時に、置換に使用した第1インクの量を測定した。
【0158】
具体的には、第1インクの供給量が0、70、150、200、240となる時にノズルから吐出されるインクで、PETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ株式会社製)上に記録することにより評価用サンプルを作製した。なお、記録は1440×720dpiの解像度で行い、記録パターンは100%dutyベタパターンとした。
【0159】
そして、得られた評価用サンプルを、「3.2.耐擦性の比較試験」と同様の方法で耐擦性試験を行った。評価結果を表3に示す。なお、評価基準も「3.2.耐擦性の比較試験」と同様である。
【0160】
(2)WC値の測定
上記「3.3.第2インクから第1インクへの置換 (1)耐擦性試験」と同様の条件で、第2インクから第1インクへ置換した後、第2インクの供給量毎に、記録ヘッド36から最初に吐出されるインク1mlをサンプル瓶に保存した。そして、得られたインク中の樹脂成分の含有率[WC(質量%)]とグリセリンの含有率(質量%)を測定した。評価結果を表3に示す。
【0161】
なお、表3において、[(WC/WA)×100]の値が高くなり、グリセリンの含有率が低くなるほど、第2インクから第1インクへの置換が進んでいるといえる。
【0162】
【表3】

【0163】
3.4.第1インクから第2インクへの置換
(1)吐出安定性試験
選択手段56により、第1インクを記録ヘッド36へ供給できるようにし、記録ヘッド36、供給路41および選択手段56を、第1インクで満たした。次いで、選択手段56により、第2インクを記録ヘッド36へ供給できるようにし、第1インクを第2インクで置換する操作を行った。液体供給路41の内容量の合計を100とした時に、置換に使用した第2インクの量を測定した。
【0164】
具体的には、第2インクの供給量が0、70、120、150となる時にノズルからインクを吐出させて、A4用紙(富士ゼロックス社製、商品名「XeroxP」)10枚に連続して画像の記録を行った。このとき、ノズルの抜け、飛行曲がりの観察を行い、吐出安定性を評価した。評価結果を表4に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。
A:ノズルの抜けがなく、かつ、飛行曲がりもない
B:ノズルの抜けはないが、飛行曲がりがある
C:10以上のノズルに抜けが認められる
D:90以上のノズルに抜けが認められる
【0165】
(2)WD値の測定
上記「3.4.第1インクから第2インクへの置換 (1)吐出安定性試験」と同様の条件で、第1インクから第2インクへ置換した後、第2インクの供給量毎に、記録ヘッド36から最初に吐出されるインク1mlをサンプル瓶に保存した。そして、得られたインク中の樹脂成分の含有率[WD(質量%)]とグリセリンの含有率(質量%)を測定した。評価結果を表4に示す。
【0166】
なお、表4において、[(WD/WB)×100]の値が低くなり、グリセリンの含有率が高くなるほど、第1インクから第2インクへの置換が進んでいるといえる。
【0167】
【表4】

【0168】
3.5.評価結果
表2の評価結果から、第1インクは、インク非吸収性の被記録媒体に対する耐擦性に優れていたことから、定着性に優れていることが示された。
【0169】
表3の評価結果から、第2インクから第1インクへの置き換えでは、第1インクに要求される定着性の性能が最も高い基準になるためには、第1インクが240必要であることが示された。一方、表4の評価結果から、第1インクから第2インクへの置き換えでは、第2インクに要求される吐出安定性の性能が最も高い基準になるためには、第2インクが150必要であることが示された。このように、第2インクから第1インクへの置き換えに使用する第1インクの量は、第1インクから第2インクへの切り替えに使用する第2インクの量よりも、多くする必要があることが示された。また、第2インクから第1インクへの置き換えでは、第2インクの置換量は100を超える値が必要となることが分かった。
【0170】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0171】
11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14b…カートリッジ、20…プリンター、22…用紙スタッカー、24…紙送りローラー、26…プラテン、28…キャリッジ、30…キャリッジモーター、31…紙送りモーター、32…牽引ベルト、34…ガイドレール、36…記録ヘッド、41、42、43、44…液体供給路、50…受信バッファメモリー、51…システムコントローラー、52…メインメモリー、53…EEPROM、54…イメージバッファー、55…表示手段、56…選択手段、57…計時手段、58…ノズル検査手段、61…主走査駆動回路、62…副走査駆動回路、63…ヘッド駆動回路、90…ホストコンピューター、91…プリンタードライバ、P…被記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のインクから一種のインクを選択する選択手段と、
前記選択手段から流通させたインクを吐出させるノズルと、
前記選択手段と前記ノズルとを繋ぐ液体供給路と、
を有し、
前記複数種のインクのうち、第1インクおよび第2インクは、実質的に同一色であり、かつ、樹脂成分を含有し、
前記第1インクは、1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有せず、
前記第2インクは、1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを含有し、
前記第1インク中の前記樹脂成分の含有率[WA(質量%)]と、前記第2インク中の前記樹脂成分の含有率[WB(質量%)]と、の関係は、(WA>WB)、であり、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えるときに使用する当該第1インクの量は、前記液体供給路の前記第1インクを前記第2インクで置き換えるときに使用する当該第2インクの量よりも多い、液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記液体供給路の内容量を内容量Aとし、前記液体供給路内にある前記第1インクを前記第2インクで置き換える際に使用する当該第2インクの置換量Bとしたときに、
前記内容量Aと前記置換量Bとの関係は、(内容量A>置換量B)、である、液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記液体供給路の内容量を内容量Aとし、前記液体供給路内にある前記第2インクを前記第1インクで置き換える際に使用する当該第1インクの置換量Cとしたときに、
前記内容量Aと前記置換量Cとの関係は、(置換量C>内容量A)、である、液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第1インク中の前記樹脂成分の前記含有率[WA(質量%)]と、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の樹脂成分の含有率[WC(質量%)]と、
の関係が、
(0.95WA≧WC≧0.50WA)
である、液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記液体供給路の前記第2インクを前記第1インクで置き換えた後に吐出されるインク中の前記1気圧下の沸点が280℃以上のアルキルポリオールの含有率は、2質量%以下である、液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記第1インクは、インク低吸収性またはインク非吸収性の被記録媒体に記録される、液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液滴吐出装置を用いた画像記録方法であって、
前記ノズルから前記第1インクの液滴を吐出させて、当該液滴を被記録媒体に付着させる工程と、
前記被記録媒体を加熱して、前記被記録媒体に付着させた前記液滴を乾燥させる工程と、
を含む、画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171330(P2012−171330A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38433(P2011−38433)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】