説明

液状化による埋設管路の浮き上がり防止方法

【課題】 地震時における地盤の液状化に伴って発生する埋設管路の浮き上がりを防止する方法を提供することである。
【解決手段】 埋設管路の長さ方向にわたって管路内面の底部に、高引張強度繊維材料製の帯状部材(10)を配置し、管路が接続されているマンホールの各々において、帯状部材の両端部をそれぞれ固定する工程を含むことを特徴とする方法が提供される。好ましくは、高引張強度繊維材料は、炭素繊維材料、ガラス繊維材料、又はアラミド繊維材料のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時における地盤の液状化に伴う埋設管路の浮き上がりを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年の兵庫県南部地震以後、下水道の耐震化に対する取り組みが急速に求められている。このような状況下において、下水道資材メーカーなどにより、人孔と管の接合部に設置する耐震継手や、管と管の継手に伸縮可撓性を持たせた耐震暗渠などが開発されている。このような状況下において、本発明者は、下水道の一構成部分であるマンホールについて、地盤の液状化による浮き上がりを防止する新規な方法を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
一方、下水道のもう1つの構成部分である埋設管路は、次のような特性を有している。
(1)埋設管路は内部が空間になっている比重の軽い構造物であり、地盤の液状化により底部に揚圧力が作用すると、浮き上がりを生じ易い。
(2)開削により埋設された管路は、埋め戻し土の液状化によっても浮き上がりを生ずることがある。
(3)埋設管路の部材厚さが薄いため、浮き上がり防止のための構造部材を直接設置することが困難である。
(4)浮き上がり防止のため間接的に杭を配置する方法は考えられるが、杭などの剛性の高い部材では地震時の杭の挙動が埋設管路に伝達され易いため、杭の地震時の挙動が荷重としてマンホールに作用するおそれがある。
(5)埋設管路の周辺には他の埋設物が数多く存在しているケースが一般的であり、浮き上がり防止対策領域が埋設管路設置個所以外の部分にも及ぶ場合には、他の埋設物の移設や防護が必要となる。
(6)既設マンホールは既成市街地に設置されており、施工環境が狭隘であるため、大型機械による施工が困難である。
(7)既設埋設管路周囲の再掘削を伴う方法では、施工期間が長期化し、掘削に伴う周囲環境への影響が懸念される。
(8)埋設管路自体を重量化して浮き上がりを防止しようとすると、地盤に過度な荷重を与えるおそれがある。
(9)重量化のための部材を確保すると、流下断面が減少し、常時の機能を確保することが難しい。
【0004】
【特許文献1】特開2005−248496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地震時における地盤及び埋め戻し土の液状化に伴う埋設管路の浮き上がりについては、埋設管路が上述のような特性を備えていることも影響して、未だ有効な対策がなされていないのが現状である。一方、地震時に埋設管路の浮き上がりが発生すると、医療施設、避難施設、防災施設からの汚水排水が不能となり、医療活動、避難生活、災害復旧活動に支障をきたし、また、地震後の降雨に対して雨水排水機能が確保されず二次災害を誘発するおそれもあることから、新設、既設を問わず、埋設管路の浮き上がり対策は、緊急の課題となっている。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、既設の埋設管路について、地震時における地盤の液状化に伴って発生する浮き上がりを防止する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の埋設管路の浮き上がり防止方法は、前記管路の長さ方向にわたって管路内面の底部に、高引張強度繊維材料製の帯状部材を配置し、前記管路が接続されているマンホールの各々において、前記帯状部材の両端部をそれぞれ固定する工程を含むことを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の埋設管路の浮き上がり防止方法は、前記請求項1の方法において、前記高引張強度繊維材料が、炭素繊維材料、ガラス繊維材料、又はアラミド繊維材料のいずれかであることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の埋設管路の浮き上がり防止方法は、前記請求項1又は2の方法において、前記管路内面の底部に配置された前記帯状部材を被覆する工程を更に含むことを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載の埋設管路の浮き上がり防止方法は、前記請求項3の方法において、前記被覆工程が、前記管路内部に内管を構築し、或いは、前記帯状部材の上面にモルタル又は塗料を塗布することによって行われることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大型機械を使用せず、他の埋設物や周辺地盤、構造物などに影響を及ぼさず、再掘削を伴わずに、埋設管路の浮き上がりを防止する方法を実施することができる。また、本発明の方法では、揚圧力にのみ抵抗するため、地盤に過度な荷重を与えることがない。また、本発明の方法では、杭のような剛な部材とは異なり、地震時において、帯状部材の挙動が過度に埋設管路に影響を及ぼすことがない。さらに、帯状部材を被覆することによって帯状部材の防護し、本発明の方法を実施した場合の耐用期間を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態に係る埋設管路の浮き上がり防止方法について詳細に説明する。図1は、本発明の浮き上がり防止方法を施した埋設管路及びこれに接続されるマンホールを示した概略断面図である。
【0013】
本発明の浮き上がり防止方法においては、対象とする埋設管路の長さ方向にわたって管路内面の底部に帯状部材10を配置し(図2参照)、当該埋設管路が接続されているマンホールの各々において、帯状部材10の両端部をそれぞれ固定する。
【0014】
帯状部材10は、埋設管路の底部に揚圧力が作用したとき管路の浮き上がりに抵抗する程の強度を有し、かつ、引張力の作用時における歪が小さい(歪が大きいと、その分だけ管路の浮き上がりを許容してしまう)ものである必要がある。これらの条件を満たす材料として、高引張強度繊維材料があげられる。好ましくは、本発明に用いる帯状部材10として、炭素繊維材料、ガラス繊維材料、アラミド繊維材料などが用いられる。
【0015】
図3は、帯状部材10の端部における固定方法の一例を示した図である。この方法では、帯状部材10の端部を2つの部分に分割し(図3(a)参照)、分割した端部を、マンホールの底面に配置された上下定着板12a、12bに設けられた溝に通し(図3(b)参照)、溝に通した端部を所定の方法で結束することによって、帯状部材10の端部が固定される。図4は、帯状部材10の端部における固定方法の別の例を示した図である。この方法では、複数の突起が設けられた下定着板14aと対応する凹部が設けられた上定着板14bとの間に帯状部材の端部を挟み込み(図4(b)参照)、上下定着板14a、14bをボルト等で固定することによって、帯状部材10の端部が固定される。帯状部材10の端部の固定方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0016】
なお、定着板12a、12b、14a、14bが配置されるマンホールの底面が、埋設管路の内面底部よりも下方に位置しているので、帯状部材10に或る程度の緊張力が加えられることになるが、帯状部材10に特に予応力(プレストレス)を加える必要はない。また、帯状部材10が必ずしも埋設管路の内面底部に接触している必要はない。
【0017】
好ましくは、本発明の浮き上がり防止方法においては、埋設管路の内面底部に配置された帯状部材10を被覆する工程を更に含んでいる。管路の内部が高圧水で洗浄されることがあるが、本被覆工程は、このような洗浄作業の際に帯状部材10を保護する役目を果たすとともに、防蝕効果を期待することもできる。
【0018】
被覆工程としては、例えば、熱硬化性樹脂を含浸させた材料(ライニング材料)を管路内に反転加圧させながら挿入し、加熱して樹脂を硬化させ管路内部に内管を構築する、いわゆる管更生方法を使用してもよい。或いは、対象とする管路に作業員が入ることができる程の大径管路である場合には、帯状部材10の上面にモルタルや塗料を塗布することによって、帯状部材10を被覆してもよい。
【0019】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0020】
例えば、前記実施の形態において説明した被覆工程は、必須の工程ではなく、帯状部材の配置/固定工程のみで本発明を構成することもできる。
【0021】
また、特許文献1に記載の方法と本発明の方法を併用することにより、埋設管路のみならず、マンホールの浮き上がりの防止も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の浮き上がり防止方法を施した埋設管路及びこれに接続されるマンホールを示した概略断面図である。
【図2】図1の線2−2に沿って見た断面図である。
【図3】図3(a)は、帯状部材の固定方法の一例を示した図であって、図1の線3a−3aに沿って見た断面図、図3(b)は、図3(a)の線3b−3bに沿って見た図である。
【図4】図4(a)は、帯状部材の固定方法の別の例を示した図であって、図3(a)と同様な図、図4(b)は、図4(a)の線4b−4bに沿って見た図である。
【符号の説明】
【0023】
10 帯状部材
12a、12b、14a、14b 定着板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化による埋設管路の浮き上がり防止方法であって、
前記管路の長さ方向にわたって管路内面の底部に、高引張強度繊維材料製の帯状部材を配置し、前記管路が接続されているマンホールの各々において、前記帯状部材の両端部をそれぞれ固定する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記高引張強度繊維材料が、炭素繊維材料、ガラス繊維材料、又はアラミド繊維材料のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記管路内面の底部に配置された前記帯状部材を被覆する工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆工程が、前記管路内部に内管を構築し、或いは、前記帯状部材の上面にモルタル又は塗料を塗布することによって行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−146411(P2007−146411A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339559(P2005−339559)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
【Fターム(参考)】