説明

液状化に伴う変状箇所検出支援装置及び液状化に伴う変状箇所検出支援プログラム

【課題】液状化現象により地中に生じた空洞の位置を正確に推定することができる液状化に伴う変状箇所検出支援装置及び液状化に伴う変状箇所検出支援プログラムを提供する。
【解決手段】計測結果取得部40が、レーザスキャナの計測結果である高さ情報を取得すると、勾配演算部42が、計測結果取得部40が取得した高さ情報に基づき、地表面の勾配を演算する。凹所部検出部44は、勾配演算部42の演算結果に基づき、平面状の底面と、その底面の周囲を包囲する、底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する。空洞部推定部46は、上記凹所部検出部44が検出した、液状化現象に特徴的な形状の凹所部を検出し、この凹所部に基づいて地面中の空洞部の存在を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化に伴う変状箇所検出支援装置及び液状化に伴う変状箇所検出支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線カメラにより道路等の構造物の表面の温度分布を計測し、この温度分布に基づいて道路等の内部の亀裂、剥離等の異常点(変状)を検出する技術が提案されている(例えば、下記特許文献1)。これは、内部の変状箇所の表面温度が、健全部の表面温度よりも高くなる、あるいは低くなることを利用して内部変状をとらえるものである。
【0003】
しかし、一般に道路等の構造物の表面に、車両の通行により生じるわだち掘れ等の凹凸がある場合にも、表面に温度分布が発生する。従って、上記従来の技術においては、計測した温度分布が内部変状に基づくものであるか、表面の凹凸に基づくものであるかを識別することができないという問題があった。
【0004】
特に、地震の際に発生する液状化現象により地中に空洞が生じる場合にも、地表面に凹部が形成されるが、上記従来の技術では、わだち掘れ等による表面の凹凸と液状化現象により生じた内部変状による凹凸とを区別できず、上記空洞の探査を行うことができないという問題があった。
【0005】
また、液状化現象により地中に生じた空洞を対象として、下記特許文献2に記載されているような地中レーダを使用した探査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−337493号公報
【特許文献2】特開平11−352223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、地中レーダを使用した物理探査では探査車の走行距離によって空洞の発生している現場を特定しているため、液状化現象により地中に生じた空洞の位置を正確に推定することは困難であった。
【0008】
本発明の目的は、液状化現象により地中に生じた空洞の位置を正確に推定することができる液状化に伴う変状箇所検出支援装置及び液状化に伴う変状箇所検出支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の実施形態は、液状化に伴う変状箇所検出支援装置であって、レーザ計測により、地表面上の各点の高さ情報を取得する高さ情報取得手段と、前記高さ情報取得手段の計測結果を取得して、地表面の勾配を演算する勾配演算手段と、前記勾配演算手段の演算結果に基づき、略平面状の底面と、前記底面の周囲を包囲する、前記底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する凹所部検出手段と、前記凹所部検出手段が検出した凹所部に基づき地面中の空洞部の存在を推定する空洞部推定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の実施形態は、上記液状化に伴う変状箇所検出支援装置において、レーザ計測の対象が道路表面であり、前記凹所部の底面は、道路に形成された道路横断勾配よりも勾配が小さいことを特徴とする。
【0011】
また、第3の実施形態は、上記液状化に伴う変状箇所検出支援装置が、前記高さ情報の取得地点の座標を取得する座標取得手段を備え、前記高さ情報とその取得位置とを3次元座標で構成した点群データとして保持することを特徴とする。
【0012】
また、第4の実施形態は、上記液状化に伴う変状箇所検出支援装置が、地表面の温度を計測するための赤外線熱計測手段と、前記赤外線熱計測手段の計測結果を熱画像データに変換する変換手段と、前記高さ情報と前記熱画像データとを、前記高さ情報の取得位置及び前記赤外線熱計測手段の計測位置に基づいて合成する合成手段と、前記合成手段が合成した高さ情報と熱画像データとの合成結果の画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5の実施形態は、上記液状化に伴う変状箇所検出支援装置において、前記空洞部推定手段は、道路の車両走行方向に平行して単純な一本線状に伸びているか否か、または、車両の走行に伴い、タイヤの両側面のうち車両の幅方向の中心から遠い側の側面側に形成される路面の勾配が車両の幅方向の中心から近い側の側面側に形成される路面の勾配より大きくなるか否かに基づき、わだち掘れにより形成された凹所部を液状化現象により形成された凹所部の候補から除外することを特徴とする。
【0014】
また、第6の実施形態は、液状化に伴う変状箇所検出支援プログラムであって、コンピュータを、レーザ計測により計測した、地表面上の各点の高さ情報を取得する計測結果取得手段、前記計測結果取得手段が取得した高さ情報に基づき、地表面の勾配を演算する勾配演算手段、前記勾配演算手段の演算結果に基づき、略平面状の底面と、前記底面の周囲を包囲する、前記底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する凹所部検出手段、前記凹所部検出手段が検出した凹所部に基づき地面中の空洞部の存在を推定する空洞部推定手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液状化現象により地中に生じた空洞の位置を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態にかかる液状化に伴う変状箇所検出支援装置を搭載した車両の例を示す図である。
【図2】図1に示された制御装置を構成するコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【図3】実施形態にかかる制御装置の機能ブロック図である。
【図4】TINによる数値標高モデルによって作成された三角形状面が液状化凹所部の周囲壁を構成する場合の勾配の算定例を示す図である。
【図5】レーザスキャナの計測結果に基づき、変換部が生成した等高線画像の例を示す図である。
【図6】実施形態にかかる液状化に伴う変状箇所検出支援支装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、実施形態にかかる液状化に伴う変状箇所検出支援装置を搭載した車両の例が示される。図1において、車両100に搭載された液状化に伴う変状箇所検出支援装置は、レーザスキャナ10、赤外線熱計測装置12、光学カメラ14、座標計測装置16、距離発生手段18及び制御装置20を含んで構成されている。なお、上記装置群は、例えばモービルマッピングシステム(MMS)等として一体化されたものを使用することができる。
【0019】
レーザスキャナ10は、路面等の地表面上の各点までの距離を測定する装置であり、地表面にレーザ光を発射し、地表面からの反射波を受け取って地表面との距離を検出する構成となっている。レーザスキャナ10が地表面上の各点までの距離を測定する際には、レーザスキャナ10が車両の進行方向に直交する方向にレーザ光によるスキャンを行い、これを繰り返しながら車両を進行させ、これによって得られた反射波のデータから地表面上の各地点までの距離を演算する。このようにして得た地表面上の各点とレーザスキャナ10との距離とレーザ発射角度(仰俯角)により、地表面の相対的な高さ情報を含む点群データを得ることができる。地震の際に液状化現象が発生すると、地中に空洞が発生する場合が多いが、空洞の発生に伴い、地表面にも凹所(陥没)が生じる場合が多い。後述するように、液状化現象により発生する凹所の形状は、車両が道路を通行すること等により発生するわだち掘れである凹所(陥没)とは異なり、特有の形状をしているので、上記点群データに含まれる高さ情報を解析し、液状化現象に特有の凹所を検出することにより、液状化による空洞の位置を推定することができる。
【0020】
赤外線熱計測装置12は、赤外線カメラを含んで構成され、道路の路面等の地表面の温度を計測する。一般に、対象物の内部(地中)に亀裂、空洞、剥離等の、対象物が当初の状態から変化した状態となる変状が発生すると、対象物の構成要素と亀裂、空洞等の内部の空気とで熱容量が異なるため、太陽光で加熱され、あるいは夜間の冷気で冷却された場合に、上記内部の変状が存在している部分と変状が存在していない部分とで、対象物の表面の温度が異なり、温度分布が発生する。通常空気は対象物の構成要素より熱容量が小さいため、昼間は変状が存在していない部分より変状が存在している部分の表面温度が高温になり、夜間は低温になる。ただし、上記亀裂、空洞等の変状部分に雨水等が浸入し、内部滞水となっている場合には、水の熱容量が大きいので、空気の場合とは逆に、昼間は変状が存在していない部分より変状が存在している部分の表面温度が低温になり、夜間は高温になる。いずれの場合にも、内部に変状が存在している部分と存在していない部分とで地表面に温度分布が発生するので、赤外線熱計測装置12により、地表面の温度を測定することにより、内部の変状の発生を検出することができる。なお、上記赤外線カメラは、波長が3〜8μmの中間赤外線を使用するのが好適である。上記波長範囲の赤外線を使用することにより、感度を向上でき、また、電子シャッター方式によりシャッター速度を高速化して解像度を向上できるからである。また、赤外線カメラは、太陽光の地表面からの反射によるノイズをさけるため、地表面に対して所定角度傾けて撮影を行うのが好適である。
【0021】
また、気象条件(太陽光照射角度、気温等)や対象物条件(表面積、厚み等)に影響されるが、一般に、地表面の凹凸が大きいと、太陽光の照射により昼間に平坦部に比べて凸部の温度が上昇しやすく、夜間には放熱が大きくなって平坦部に比べて凹凸部の温度が下降しやすい傾向にある等の理由により、凹凸に起因して地表面に温度分布が発生する。従って、液状化により生じた凹所と他の原因による凹所とを区別する必要があるが、本実施形態では、レーザスキャナ10により得た高さ情報を解析し、液状化により発生した凹所を求めて、この結果に赤外線熱計測装置12により計測した地表面の温度分布を重畳することにより、液状化に起因する空洞(内部変状)を正確に検出することができる。
【0022】
座標計測装置16は、GPS(全地球測位システム)受信機を含んで構成され、レーザスキャナ10、赤外線熱計測装置12の計測位置の座標値(例えば、経度、緯度、標高)を計測する。なお、座標計測装置16は、GPSデータを補完するためのジャイロ等を備えているのが好適である。これにより、レーザスキャナ10で求めた相対的な高さ情報を、地表面の高さを含む三次元座標データ(点群データ)とすることができる。
【0023】
距離発生手段18は、車両の所定の走行距離ごとにパルス信号を発生する。レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12は、距離発生手段18が発生するパルス信号に同期して、それぞれの計測を行う構成となっている。また、座標計測装置16も上記パルス信号に同期して座標値を計測する。このような構成により、本実施形態にかかる車両100の車速が変動しても、常に一定の距離間隔でレーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12が計測を行うことができる。なお、上記距離発生手段18としては、例えば空間フィルタの原理を用いた非接触型速度・距離計を使用することができる。
【0024】
制御装置20は、適宜なコンピュータにより構成され、レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測結果を解析し、液状化に起因する空洞箇所の推定処理等を行う。なお、制御装置20は、車両100に搭載せず、レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測データを適宜な通信手段または記憶媒体を介して取得する構成としてもよい。また、レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12を異なる車両に搭載し、制御装置20が後で計測データを統合してもよい。
【0025】
図2には、図1に示された制御装置20を構成するコンピュータのハードウェア構成の例が示される。図2において、制御装置20は、中央処理装置(例えばマイクロプロセッサ等のCPUを使用することができる)22、ランダムアクセスメモリ(RAM)24、読み出し専用メモリ(ROM)26、入力装置28、表示装置30、通信装置32及び記憶装置34を含んで構成されており、これらの構成要素は、バス36により互いに接続されている。また、入力装置28、表示装置30、通信装置32及び記憶装置34は、それぞれ入出力インターフェース38を介してバス36に接続されている。
【0026】
CPU22は、RAM24またはROM26に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM24は主としてCPU22の作業領域として機能し、ROM26にはBIOS等の制御プログラムその他のCPU22が使用するデータが格納されている。
【0027】
また、入力装置28は、キーボード、ポインティングデバイス等により構成され、使用者が動作指示等を入力するために使用する。
【0028】
また、表示装置30は、液晶ディスプレイ等により構成され、レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測結果の画像等を表示する。なお、表示装置30は、他のコンピュータ等に設けてもよい。
【0029】
また、通信装置32は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU22がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。また、レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測結果を、通信装置32を介して外部の装置に送信してもよい。
【0030】
また、記憶装置34は、ハードディスク等の記憶装置であり、レーザスキャナ10、赤外線熱計測装置12、光学カメラ14、座標計測装置16及び距離発生手段18の計測結果(上記点群データを含む)等の、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶する。なお、記憶装置34としては、ハードディスクの代わりに、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0031】
図3には、実施形態にかかる制御装置20の機能ブロック図が示される。図3において、制御装置20は、計測結果取得部40、勾配演算部42、凹所部検出部44、空洞部推定部46、変換部48、合成部50、表示制御部52及び通信部54を含んで構成されており、これらの機能は、例えばCPU22とCPU22の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0032】
計測結果取得部40は、レーザスキャナ10、赤外線熱計測装置12、光学カメラ14、座標計測装置16及び距離発生手段18の計測結果を取得する。取得した計測結果は、記憶装置34に記憶させるとともに勾配演算部42、凹所部検出部44、空洞部推定部46、変換部48等に出力する。また、レーザスキャナ10で求めた相対的な高さ情報と座標計測装置16が取得した座標値とから、地表面の三次元座標データ(点群データ)を生成し、記憶装置34に記憶させる。
【0033】
勾配演算部42は、上記計測結果取得部40が取得した地表面の三次元座標データに基づき、地表面の勾配を演算する。ここで勾配は、取得した地表面の三次元座標データにより構成される不整三角形網(TIN:Triangulated Irregular Network)などを用いて地表面を平面で近似し(数値標高モデル)、各平面と基準面(例えば水準面や隣接する平面)とのなす角度(傾斜角)として求めることができる。図4に、TINを用いて勾配を求める例について説明する。例示したように、TINによる数値標高モデルで作成された三角形状面abcの勾配は、その各頂点の座標値、最も高い頂点aから引いた垂線とXY平面(基準面)との交点pの座標値、その交点pから引いた直線が三角形状面abcの延長面とXY平面が交わる直線に直交する点rの座標値等によって算定され、辺apの長さ(=M)を辺prの長さ(=L)で除し、百分率で表示して求めることができる。なお、地表面の勾配を演算する方法は、上記不整三角形網を使用する方法に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
【0034】
凹所部検出部44は、上記勾配演算部42の演算結果に基づき、例えば上記各三角形状面の勾配から、略平面状の底面と、その底面の周囲を包囲する、底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する。
【0035】
空洞部推定部46は、上記凹所部検出部44が検出した凹所部に基づき地面中の空洞部の存在を推定する。地震の際に発生する液状化現象により、地中に空洞が発生する場合、その上の地表面では、ある面積(面積の値は一定ではない)の面が陥没し、あるいはその周囲が隆起する。この結果、上述したような、当該面を底面とし、その底面より大きな勾配の周囲壁とで形成された凹所部が形成される。従って、この特徴的な形状の凹所部を検出すれば、その下の地中に液状化現象により生じた空洞があると推定することができる。
【0036】
なお、本実施形態のレーザ計測の対象が道路表面である場合、わだち掘れにより形成される凹所部と液状化現象により形成された凹所部とを識別する必要がある。わだち掘れにより形成される凹所部は、通常、道路(車両走行)方向に沿って直線状に伸びて形成される。また、車両の走行に伴い、タイヤの両側面のうち車両の幅方向の中心から遠い側の側面側に形成される路面の勾配が、車両の幅方向の中心から近い側の側面側に形成される路面の勾配より大きくなる傾向がある。これに対し液状化現象により形成された凹所部は、周囲壁縁辺あるいはそこでの隆起形状が道路(車両走行)方向に平行した単純な一本線状ではなく、道路方向に沿ってその幅が変化し、あるいは消滅し、また、さらに液状化現象による凹所部の形成方向が道路方向と平行ではなく交差する(所定範囲以上の角度をなす)場合がある。これらの知見を用いて、わだち掘れによる凹所部と液状化現象による凹所部とを識別する。本実施形態の空洞部推定部46は、このような違いを検出して、液状化により形成された凹所部の位置、形状を把握し、地中に形成された空洞部の存在を推定する。
【0037】
また、本実施形態のレーザ計測の対象が道路表面である場合、上記底面の勾配は、道路構造令等の規定に基づいて道路に形成された道路横断勾配よりもその勾配が小さくなる場合が多い。そのため、底面の勾配の大きさを空洞の位置の推定処理に使用してもよい。
【0038】
変換部48は、レーザスキャナ10の計測結果から、既存の手法により地表面の高さ情報を等高線画像に変換する。なお、地表面の高さ情報を表す画像であれば、等高線画像に限定されない。例えば、地表面の高さの測定点を結んで三角形状面を形成し、この三角形状面の勾配を色分け等で表現してもよい。また、変換部48は、赤外線熱計測装置12の計測結果を画像データ(熱画像)に変換する。この場合、赤外線熱計測装置12の計測結果である地表面の温度の高低を、画像の濃度、色、図形、模様の変更または有無等により表現する。
【0039】
合成部50は、レーザスキャナ10の計測結果である地表面の高さ情報または上記点群データの標高値成分と変換部48の変換処理の結果である熱画像とを、座標計測装置16が計測したレーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測位置の座標値に基づいて対応付け、合成する。この場合、座標計測装置16を構成するGPS受信機とレーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12との相対位置並びにレーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測方向(レーザスキャナ10のレーザ照射方向及び赤外線カメラの撮影方向)に基づいて、上記レーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12により計測される地表面の座標値を決定することができる。合成部50は、決定した地表面の座標値により、上記熱画像の画素ごとにまたは複数画素からなる所定範囲ごとに高さ情報の対応付け処理を行って合成する。あるいは、赤外線熱計測装置12の赤外線カメラの一回の撮影範囲の熱画像ごとに、上記高さ情報を変換部48が変換した等高線画像に対応付けてもよい。さらに、上記高さ情報または高さ情報と合成された熱画像を、光学カメラ14で取得した光学画像と合成してもよい。
【0040】
表示制御部52は、変換部48の変換結果の等高線画像及び熱画像を表示装置30に表示させる。また、合成部50が合成した高さ情報と熱画像との合成結果の画像(例えば、等高線と地表面の温度を表す色とが付された画像等)または光学画像との合成画像を表示装置30に表示させる。また、その際に、画面中に空洞の推定位置を表す記号、文字等を表示してもよい。
【0041】
通信部54は、通信装置32を介してレーザスキャナ10、赤外線熱計測装置12、光学カメラ14、座標計測装置16及び距離発生手段18の計測結果、並びに制御装置20の処理結果等を外部の装置とやり取りする。
【0042】
図5には、レーザスキャナ10の計測結果に基づき、変換部48が生成した等高線画像の例が示される。図5では、道路のT字路部分を測定した結果が示されており、歩道と道路路面が表示されている。
【0043】
図5において、Bで示される領域が凹所部の底面であり、その周囲が周囲壁Wで包囲されている。上述した凹所部検出部44は、底面Bと周囲壁Wで形成された凹所部を検出し、空洞部推定部46に凹所部の形状データ(底面Bの形状及び勾配、周囲壁Wの形状及び勾配のデータ)を渡す。周囲壁Wでは等高線の間隔が底面Bより密になっており、周囲壁Wの勾配が底面Bの勾配よりも大きいことがわかる。空洞部推定部46は、このような凹所部の形状から、この下の地中に液状化に起因する空洞が存在すると推定する。
【0044】
なお、底面Bの勾配は、上述した道路横断勾配よりも小さい場合が多いので、空洞部推定部46が底面Bの勾配と道路横断勾配とを比較し、底面Bの勾配が道路横断勾配より小さい凹所部により液状化に起因する空洞の存在の推定をするのが好適である。
【0045】
図6には、本実施形態にかかる液状化に伴う変状箇所検出支援装置の動作例のフローが示される。図6において、計測結果取得部40が、レーザスキャナ10の計測結果である高さ情報を取得する(S1)。
【0046】
次に、勾配演算部42は、計測結果取得部40が取得したレーザスキャナ10の計測結果である高さ情報に基づき、地表面の勾配を演算する(S2)。
【0047】
凹所部検出部44は、勾配演算部42の演算結果に基づき、平面状の底面と、その底面の周囲を包囲する、底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する(S3)。
【0048】
空洞部推定部46は、上記凹所部検出部44が検出した、液状化現象に特徴的な形状の凹所部を検出し、この凹所部に基づいて地面中の空洞部の存在を推定する(S4)。ここで、液状化現象に特徴的な形状の凹所部とは、道路横断勾配よりも勾配が小さい略平面状の底面と、上記底面の周囲またはその一部を包囲する、上記底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部である。なお、上記特徴を備えたわだち掘れが存在する可能性があるが、これらについては、わだち掘れの特徴である、道路(車両走行)方向に平行して単純な一本線状に伸びている点、あるいは車両の走行に伴い、タイヤの両側面のうち車両の幅方向の中心から遠い側の側面側に形成される路面の勾配が、車両の幅方向の中心から近い側の側面側に形成される路面の勾配より大きくなる点を利用して、液状化による凹所部の候補から除外する、あるいは候補の可能性が低い旨を画面上に表示することができる。
【0049】
変換部48は、計測結果取得部40が取得したレーザスキャナ10の計測結果を、地表面の高さ情報を表す等高線画像に変換する(S5)。なお、地表面の高さ情報を表す画像であれば、等高線画像に限定されない。例えば、地表面の高さの測定点を結んで三角形を形成し、この三角形の面の勾配を色分け等で表現してもよい。また、S5における等高線画像の生成処理は、上記S2またはS3のステップの後で行ってもよい。
【0050】
次に、計測結果取得部40は、赤外線熱計測装置12の計測結果である、地表面の温度データを取得する(S6)。
【0051】
変換部48は、赤外線熱計測装置10の計測結果を画像データに変換し、熱画像を生成する(S7)。合成部50は、ステップS5で変換部48が生成した等高線画像と、ステップS7で変換部48が生成した熱画像とを、座標計測装置16が計測したレーザスキャナ10及び赤外線熱計測装置12の計測位置の座標値に基づいて合成する(S8)。この場合、等高線画像の各画素毎に熱画像の各画素を対応付けて重畳してもよいし、複数画素からなる所定範囲ごとに等高線画像と熱画像とを対応付けて重畳してもよい。さらに、赤外線熱計測装置12の赤外線カメラの一回の撮影で取得した熱画像ごとに、上記等高線画像を対応付けて重畳してもよい。
【0052】
表示制御部52は、上記等高線画像と熱画像とを合成した画像を表示装置30に表示させ、利用者による液状化現象に基づく内部変状(空洞)検出業務を支援する(S9)。この際に、画面中に空洞の推定位置を表す記号、文字等を表示してもよい。
【0053】
上述した、図6の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明としてとらえてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 レーザスキャナ、12 赤外線熱計測装置、14 光学カメラ、16 座標計測装置、18 距離発生手段、20 制御装置、22 CPU、24 RAM、26 ROM、28 入力装置、30 表示装置、32 通信装置、34 記憶装置、36 バス、38 入出力インターフェース、40 計測結果取得部、42 勾配演算部、44 凹所部検出部、46 空洞部推定部、48 変換部、50 合成部、52 表示制御部、54 通信部、100 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ計測により、地表面上の各点の高さ情報を取得する高さ情報取得手段と、
前記高さ情報取得手段の計測結果を取得して、地表面の勾配を演算する勾配演算手段と、
前記勾配演算手段の演算結果に基づき、略平面状の底面と、前記底面の周囲を包囲する、前記底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する凹所部検出手段と、
前記凹所部検出手段が検出した凹所部に基づき地面中の空洞部の存在を推定する空洞部推定手段と、
を備えることを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液状化に伴う変状箇所検出支援装置において、レーザ計測の対象が道路表面であり、前記凹所部の底面は、道路に形成された道路横断勾配よりも勾配が小さいことを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液状化に伴う変状箇所検出支援装置が、前記高さ情報の取得地点の座標を取得する座標取得手段を備え、前記高さ情報とその取得位置とを3次元座標で構成した点群データとして保持することを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液状化に伴う変状箇所検出支援装置が、地表面の温度を計測するための赤外線熱計測手段と、前記赤外線熱計測手段の計測結果を熱画像データに変換する変換手段と、前記高さ情報と前記熱画像データとを、前記高さ情報の取得位置及び前記赤外線熱計測手段の計測位置に基づいて合成する合成手段と、前記合成手段が合成した高さ情報と熱画像データとの合成結果の画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液状化に伴う変状箇所検出支援装置において、前記空洞部推定手段は、道路の車両走行方向に平行して単純な一本線状に伸びているか否か、または、車両の走行に伴い、タイヤの両側面のうち車両の幅方向の中心から遠い側の側面側に形成される路面の勾配が車両の幅方向の中心から近い側の側面側に形成される路面の勾配より大きくなるか否かに基づき、わだち掘れにより形成された凹所部を液状化現象により形成された凹所部の候補から除外することを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援装置。
【請求項6】
コンピュータを、
レーザ計測により計測した、地表面上の各点の高さ情報を取得する計測結果取得手段、
前記計測結果取得手段が取得した高さ情報に基づき、地表面の勾配を演算する勾配演算手段、
前記勾配演算手段の演算結果に基づき、略平面状の底面と、前記底面の周囲を包囲する、前記底面より大きな勾配を有する周囲壁とで形成された凹所部を検出する凹所部検出手段、
前記凹所部検出手段が検出した凹所部に基づき地面中の空洞部の存在を推定する空洞部推定手段、
として機能させることを特徴とする液状化に伴う変状箇所検出支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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