説明

液状樹脂の充填装置

【課題】従来のものよりも構造を簡略化することができ、かつコンパクトで省スペース化を図ることができる液状樹脂の充填装置を提供する。
【解決手段】液状樹脂の充填装置に関する。液状樹脂1が貯留されたストックタンク2と、ストックタンク2から供給された液状樹脂1を容器内に注入して充填する注入ノズル4と、複数の容器3が円形に配置された回転テーブル5と、回転テーブル5を回転させる回転駆動装置6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの封止等に用いられる液状樹脂をシリンジ等の容器に充填するための装置に関するものであり、特に30〜500Pa・s(N・s/m)の中・高粘度の液状樹脂を充填するのに好適な液状樹脂の充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状樹脂を用いて半導体パッケージの封止を行うにあたっては、液状樹脂をシリンジに充填しておき、シリンジの下端の注出口から液状樹脂を注出して滴下することによって行なわれている。
【0003】
シリンジ32は、図4に示すように、上端が開口部33となり、下端に注出口34が設けられた注射器のような筒体によって形成されるものであり、液状樹脂1は、開口部33からシリンジ32内に注入して充填するようになっている。ここで、液状樹脂1は粘稠物であるために、液状樹脂1をシリンジ32に上端の開口部33から流し込むようにして注入すると、液状樹脂1に空気が巻き込まれて混入されるおそれがある。そこで、従来は真空雰囲気において液状樹脂1をシリンジ32に充填するようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。さらに、特許文献1に記載のものにあっては、図5に示すように、複数のシリンジ32を縦横に配列したシリンジスタンド35をスタンド移動装置36で縦方向(Y方向)や横方向(X方向)に移動させることによって、複数のシリンジ32への液状樹脂1の注入充填の作業を自動化するようにしていた。より具体的には、スタンド移動装置36は、シリンジ32が配列する縦方向と平行な方向にシリンジスタンド35をスライド移動させる縦テーブル37と、シリンジ32が配列する横方向と平行な方向に縦テーブル37をスライド移動させる横テーブル38とを具備して形成されており、このスタンド移動装置36によって、注入ノズル4の直下位置に空のシリンジ32を移動させることができ、次々に注入充填を行うことができるものである。
【特許文献1】特開2001−2190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のものにあっては、シリンジスタンド35を縦方向にスライド移動させるための駆動装置と、縦テーブル37を横方向にスライド移動させるための駆動装置とが必要である上に、注入ノズル4の直下位置にシリンジ32を移動させるためには上記二つの駆動装置を適切に連動させる必要もあるので、充填装置の構造が複雑になるという問題がある。また、注入ノズル4の直下位置に各シリンジ32を移動させるためには、図5の破線で示すように、シリンジスタンド35の面積の約4倍の面積のスペースを確保しておく必要がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、従来のものよりも構造を簡略化することができ、かつコンパクトで省スペース化を図ることができる液状樹脂の充填装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る液状樹脂の充填装置は、液状樹脂1が貯留されたストックタンク2と、ストックタンク2から供給された液状樹脂1を容器3内に注入して充填する注入ノズル4と、複数の容器3が円形に配置された回転テーブル5と、回転テーブル5を回転させる回転駆動装置6とを具備して成ることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、注入ノズル4と回転テーブル5を真空ボックス7内に設置すると共に、真空ボックス7内に真空雰囲気を形成する真空ポンプ8を具備して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る液状樹脂の充填装置によれば、従来のものよりも構造を簡略化することができ、かつコンパクトで省スペース化を図ることができるものである。また、各容器への液状樹脂の注入充填の作業は、回転駆動装置で回転テーブルを回転させて、注入ノズルの直下位置の容器を移動させると共にこの容器の移動にタイミングを合わせて注入ノズルから液状樹脂を吐出させることによって行うことができ、複数の容器への液状樹脂の注入充填の作業を自動化することができるものである。
【0009】
請求項2の発明によれば、真空雰囲気内において液状樹脂に空気が巻き込まれて混入されるようなことなく、注入ノズルから容器に液状樹脂を注入して充填することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、7はアクリル樹脂板などで作製された真空ボックスである。真空ボックス7の前面上部に出し入れ口9が設けてあり、この出し入れ口9に開閉自在に設けた扉10を閉じることによって、真空ボックス7内が密閉状態になるようにしてある。真空ボックス7の側面には排気管11が設けてあり、この排気管11に真空ポンプ8が接続してある。真空ポンプ8を作動させて真空ボックス7内の空気を排気することによって、真空ボックス7内に真空雰囲気(例えば10Pa以下)を形成することができるものである。なお、真空ポンプ8はブースター12と共に真空ポンプユニット13を構成しており、この真空ポンプユニット13は下部に設けたキャスター14で移動可能に形成してある。ここで、ブースター12は、高真空又は短時間で所定の真空度に到達させるための補助ポンプである。また、真空ボックス7の側面には真空センサー29を設け、この真空センサー29によって真空ボックス7内の真空度を測定することができるようにしてあり、さらに、真空ボックス7の上面にはライト30及び小窓31を設け、ライト30で真空ボックス7内を照らすと共に小窓31から真空ボックス7内の様子を視認することができるようにしてある。
【0012】
ストックタンク2は真空ボックス7の外部に配置されるものであり、ストックタンク2内には中・高粘度(例えば30〜500Pa・s(N・s/m))の液状樹脂1が貯留されている。ストックタンク2は下部がテーパ形状になっていると共に下端にバルブ15が設けてあり、このバルブ15を開いてエアー加圧方式で液状樹脂1を送り出すことができるようにしてある。また、このバルブ15は、図3に示すように、制御盤16の制御部17と電気的に接続してあり、この制御部17の指令に従って開閉するようにしてある。
【0013】
また、ストックタンク2の外周にはタンクヒーター18が付設してある。このタンクヒーター18は、シリコンラバーなどの基材に発熱抵抗線を内蔵して形成してあって、ストックタンク2の外周に巻き付けるようにして取り付けてある。そして、タンクヒーター18は35℃以下程度の温度で発熱するようにしてあり、図3に示すように、制御盤16の制御部17と電気的に接続してあり、この制御部17の指令に従って、ストックタンク2内の液状樹脂1の温度を例えば25±2℃の範囲の一定温度に調整できるようにしてある。
【0014】
また、ストックタンク2には液量検出センサー19が設けてあり、この液量検出センサー19によってストックタンク2内に貯留された液状樹脂1の量を知ることができるようにしてある。液状樹脂1の量が不足すると、液量検出センサー19に電気的に接続した警報装置(図示省略)が作動したり、あるいは、図3に示すように、液量検出センサー19に電気的に接続した制御盤16の表示部20に液量不足を表示したりするようにしてある。そして、液量不足を知った作業者は、液投入用ステップ21の上に乗って、不足分の液状樹脂1をストックタンク2に投入して補充することができる。
【0015】
ストックタンク2の下端のバルブ15には移送ホース22の一端が接続してある。この移送ホース22は真空ボックス7の上面に設けた導入筒23を通して真空ボックス7内に通してある。移送ホース22を導入筒23の内周に密着させるなどして導入筒23での気密が確保されるようにしてある。そして移送ホース22の真空ボックス7内に位置する他端には注入ノズル4が接続してある。
【0016】
注入ノズル4は真空ボックス7内に上下動自在に設置してあり、この注入ノズル4は移送ホース22を介してストックタンク2から供給された液状樹脂1を、下端の注入口24から吐出するように形成してある。注入口24から吐出される液状樹脂1は、後述するように複数の容器3内に順次注入して充填される。各容器3への液状樹脂1の注入を終えると、注入口24からの液状樹脂1の吐出を一旦停止する必要があるが、このような液状樹脂1の注入及びその停止はバルブ15の開閉などによって行うことができる。なお、容器3としては、シリンジ32に限定されるものではない。
【0017】
また、真空雰囲気が形成される真空ボックス7内には円板状の回転テーブル5が設置してある。回転テーブル5は、その上面に複数の容器3を円形に配置して保持するものであり、各容器3は開口部25を上にした直立姿勢で保持されており、同一円周上に同じ間隔で並ぶようになっている。回転テーブル5は注入ノズル4の下方位置に配置されるものであり、より詳しくは、回転テーブル5上の複数の容器3が形成する円周の直上位置に注入ノズル4が設置されるものである。また、回転テーブル5の下部には充填量計量器26が設けてあり、この充填量計量器26を用いて、複数の容器3及び回転テーブル5の総重量を充填前後において測定することによって、液状樹脂1の充填量を計量することができるようにしてある。また、充填量計量器26は、図3に示すように、制御盤16の制御部17と電気的に接続してある。
【0018】
また、回転テーブル5は、真空ボックス7の外部に配置した回転駆動装置6によって水平面内で回転するようになっている。回転駆動装置6としては、特に限定されるものではないが、例えば、CKD(株)製「アブソデックス」等の回転駆動ユニットを用いることができる。回転駆動装置6の回転軸27は真空ボックス7の下面に設けた真空軸シール28を通して真空ボックス7内に通してある。回転軸27を真空軸シール28の内周に密着させるなどして真空軸シール28での気密が確保されるようにしてある。そして回転軸27の真空ボックス7内に位置する他端は回転テーブル5の回転中心に接続してある。また、回転駆動装置6は、図3に示すように、制御盤16の制御部17と電気的に接続してある。なお、真空軸シール28としては、特に限定されるものではないが、例えば、(株)フェローテック製「磁気シールユニット」等を用いることができる。なお、充填量計量器26は、回転テーブル5と共に回転するようにしてある。
【0019】
そして、上記のように形成される液状樹脂の充填装置を用いて、次のように各容器3内に液状樹脂1を注入して充填することができる。まず扉10を開いて、複数の容器3を円形に配置した回転テーブル5を回転軸27の先端部にセットし、扉10を閉じた後に真空ポンプ8を作動させて真空ボックス7内の空気を排除する。このように真空ボックス7内の空気を排除することよって、真空ボックス7内に真空雰囲気が形成される。そして、図3に示すように、制御部17が指令を出してバルブ15を開くと、ストックタンク2から液状樹脂1がエアー加圧によって送り出される。この液状樹脂1は、移送ホース22を介して注入ノズル4に供給され、注入ノズル4の注入口24から吐出される。そうすると、注入ノズル4の直下に位置している容器3内にその上端の開口部25から液状樹脂1が注入されて充填される。注入ノズル4及び容器3は、真空雰囲気が形成された真空ボックス7内に配置されているので、液状樹脂1に空気が巻き込まれて混入されるようなことなく、容器3に液状樹脂1を充填することができるものである。
【0020】
一つの容器3に液状樹脂1が充填されると、この重量増加を充填量計量器26が計量し、充填完了の信号を制御部17に送信すると共に、この信号を受信した制御部17は指令を出してバルブ15を閉じる。そうすると、注入ノズル4の注入口24からの液状樹脂1の吐出が停止する。引き続き制御部17は指令を出して回転駆動装置6を作動させるものであり、これによって回転テーブル5が回転し、注入ノズル4の直下に位置する容器3が隣のものに交換される。回転テーブル5の回転角度は、容器3の個数がn個である場合には、360°/nとなるように、あらかじめ設定してある。そして注入ノズル4の直下位置に移動してきた空の容器3に上記と同様にして注入ノズル4から液状樹脂1を注入充填する。以下、同様にして、回転テーブル5の上に円形に配置した各容器3に順に注入ノズル4から液状樹脂1を注入充填するものである。ここで、各容器3への液状樹脂1の充填は注入ノズル4から液状樹脂1を吐出させて行うようにしているので、注入ノズル4からの液状樹脂1の吐出量の調整によって、各容器3への液状樹脂1の充填量を一定にすることができるものである。しかも、ストックタンク2から供給される液状樹脂1はタンクヒーター18によって所定の一定温度に調整されており、液状樹脂1の粘度は一定に保持されているので、注入ノズル4からの液状樹脂1の吐出量を一定にすることが容易であり、各容器3への液状樹脂1の充填量の精度を高く得ることができるものである。
【0021】
そして、各容器3への液状樹脂1の注入充填の作業は、回転駆動装置6で回転テーブル5を水平面内で回転させ、注入ノズル4の直下位置の容器3を移動させると共にこの容器3の移動にタイミングを合わせて注入ノズル4から液状樹脂1を吐出させることによって行うことができ、この各容器3への液状樹脂1の注入充填の作業を自動化することができるものであり、容器3への液状樹脂1の充填の生産性を高めることができるものである。
【0022】
また、図1に示す充填装置は従来のものと比較して次のような点で有利である。すなわち、図5に示す従来の充填装置にあっては、すでに述べたように、その構造が複雑になるという問題があったが、図1に示す充填装置にあっては、駆動装置を二つも必要とせず、一つの回転駆動装置6のみを具備すればよいので、従来のものよりも構造を簡略化することができるものである。さらに、従来のものでは、シリンジスタンド35の面積の約4倍の面積のスペースを確保しておく必要があったが、図1に示す充填装置にあっては、図2に示すように、回転テーブル5自体は回転以外に場所を変えるような移動はしないので、コンパクトで省スペース化を図ることができるものである。しかも、図5に示すものでは、シリンジスタンド35が移動する領域内に何らかの障害物が存在する場合には、シリンジスタンド35の移動が妨害されて、注入ノズル4の直下位置に空のシリンジ32を移動させることができなくなるという不具合が生じるおそれがあるのに対し、図2に示すものでは、回転テーブル5自体は回転以外に場所を変えるような移動はしないので、上記のような不具合が生じるおそれはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の回転テーブルを示す平面図である。
【図3】同上のブロック図である。
【図4】シリンジを示す正面図である。
【図5】従来例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 液状樹脂
2 ストックタンク
3 容器
4 注入ノズル
5 回転テーブル
6 回転駆動装置
7 真空ボックス
8 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂が貯留されたストックタンクと、ストックタンクから供給された液状樹脂を容器内に注入して充填する注入ノズルと、複数の容器が円形に配置された回転テーブルと、回転テーブルを回転させる回転駆動装置とを具備して成ることを特徴とする液状樹脂の充填装置。
【請求項2】
注入ノズルと回転テーブルを真空ボックス内に設置すると共に、真空ボックス内に真空雰囲気を形成する真空ポンプを具備して成ることを特徴とする請求項1に記載の液状樹脂の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−91249(P2007−91249A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280937(P2005−280937)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】