説明

液状硬化性樹脂組成物

【課題】自己粘着性が低く、応力緩和速度が速い硬化物を与える液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(B)数平均分子量が4000を超えるポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(C)(メタ)アクリレートモノマー、
(D)重合開始剤
を含有し、かつ、
(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーの全量を100質量%として、その50〜80質量%が2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであり、
(D)成分の重合開始剤の全量を100質量%として、その50〜90質量%が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである、
液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着性が低く、応力緩和速度が速い硬化物を与える液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造において、ガラスファイバを熱溶融紡糸した直後に、保護補強を目的として樹脂被覆が施される。この樹脂被覆としては、ガラスファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層を設け、その外側により剛性の高い第二次の被覆層を設けた構造が知られている。また、これら樹脂被覆の施された光ファイバ素線を実用に供するため、平面上に数本、例えば4本または8本並べ、結束材料で固めて断面が長方形のテープ状構造にしたものが知られている。この第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をプライマリ材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をセカンダリ材、光ファイバ素線を束ねるための材料をテープ材と称している。
【0003】
セカンダリ材やテープ材は、製造プロセスで最外層となることが多い。例えば、セカンダリ材を塗布硬化したファイバ心線がボビンに巻き取られた状態で保管され、その後、インキ層の塗布やテープ化のためにボビンから巻き返される。テープ化後でも巻き取られた状態で保管され、ケーブル化の時にテープどうしが擦れ合う。このように、硬化したセカンダリ材やテープ材どうしが接触するが、硬化体どうしの貼り付き力が高いと、ボビンへの巻き取りに不整を生じ、巻き返し時にファイバの繰り出しが円滑に行われない等、製造プロセスに支障をきたす原因となる。
【0004】
巻き取りや巻き返し時の巻きくずれを防止するには、硬化体の自己粘着性が低く、応力緩和速度が速いことが必要である(特許文献1および2)。
従来、硬化体の自己粘着性を低くする試みとして、硬化時に窒素雰囲気下で硬化させるというプロセスに関する方法があるが、酸素が混入した雰囲気で硬化すると貼り付き力が高くなる。そのため、材料面からの有効な解決方法が望まれている。
【特許文献1】特開2005−255955号公報
【特許文献2】特開2006−036989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、自己粘着性が低く、応力緩和速度が速い硬化物を与える液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の2種のウレタン(メタ)アクリレート、特定の(メタ)アクリレートモノマー、特定の重合開始剤を組合わせて用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(B)数平均分子量が4000を超えるポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(C)(メタ)アクリレートモノマー、
(D)重合開始剤
を含有し、かつ、
(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーの全量を100質量%として、その50〜80質量%が2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであり、
(D)成分の重合開始剤の全量を100質量%として、その50〜90質量%が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである、
液状硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、当該液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる被覆層を提供する。
さらに、本発明は、当該被覆層を有する光ファイバを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、自己粘着性が低く、表面の滑りが良好であるとともに、応力緩和速度が速く、外部応力に対しても強いものである。光ファイバのセカンダリ材やテープ材等として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコールに由来する構造を有するものである。例えば、数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコール(ポリオール)、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
【0010】
この反応としては、例えばポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0011】
ここで用いられるポリオールとしては、数平均分子量が4000以下、好ましくは500〜4000のポリプロピレングリコールである。数平均分子量は、ポリスチレンを分子量標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求める。
ポリプロピレングリコールは、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン製)などの市販品として入手できる。
【0012】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましい。
【0013】
これらのジイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(1)または(2)
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0017】
これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0019】
これらの化合物の反応においては、例えばナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物で置き換えて用いることもできる。例えば、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノトリメトキシシランなどを挙げることができる。これらの化合物を使用することにより、ガラス等の基材への密着性を高めることができる。
【0021】
(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に20〜50質量%、特に25〜40質量%配合されるのが好ましい。
【0022】
(B)成分のウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量が4000を超えるポリプロピレングリコールに由来する構造を有するものである。前記(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートにおいて、数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコールに代え、数平均分子量が4000を超えるポリプロピレングリコールを用いて得られるものを使用することができる。
【0023】
ポリプロピレングリコールは、数平均分子量が4000を超えるもの、好ましくは6,000〜20,000、さらに好ましくは7,000〜18,000、特に好ましくは7,000〜16,000のものを用いる。
また、PREMINOL PML S−X4008、PML S−4011、PML S−X3008、PML S−3011、PML S−X3015、PML 4016、PML 7001、PML 7003、PML 7012(以上、旭硝子ウレタン社製)などの市販品を使用することができる。
【0024】
(B)成分のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0.5〜7質量%、特に1〜5質量%配合されるのが、自己粘着性を低減するので好ましい。
【0025】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、その効果を妨げない範囲で、(A)成分および(B)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート(B’)を配合することもできる。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール成分を含有せず、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このようなウレタン(メタ)アクリレートを合成原料であるジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、(A)成分の合成原料として前述したジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0026】
(A)成分および(B)成分以外のウレタン(メタ)アクリレート(B’)の具体的としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートとの2モル:1モルの反応物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの等モルの反応物等を好適に挙げることができる。
【0027】
(B’)成分の(A)成分および(B)成分以外のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に20〜70質量%、特に30〜45質量%配合されるのが好ましい。
【0028】
(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート;その他、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の多官能性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
また、上記の単官能性(メタ)アクリレートの市販品として、アロニックスM−111、M−113、M−114、M−117(以上、東亞合成社製)、KAYARAD、TC110S、R629、R644(以上、日本化薬社製)、IBXA、ビスコート3700(大阪有機化学工業社製)等が挙げられ;多官能性(メタ)アクリレートの市販品として、ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学社製)、ビスコート700(大阪有機化学工業社製)、KAYARAD R−604、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬社製)、アロニックスM−210、M−215、M−315、M−325(以上、東亞合成社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーの全量を100質量%として、その50〜80質量%、好ましくは55〜70質量%が2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0031】
(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に20〜50質量%、特に25〜35質量%配合されるのが好ましい。
【0032】
本発明で用いる成分(D)の重合開始剤としては、熱重合開始剤又は光重合開始剤を用いることができる。
本発明の樹脂組成物を熱硬化させる場合には、通常、過酸化物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が用いることができる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の樹脂組成物を光硬化させる場合には、光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を添加することができる。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;市販品として、IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、DAROCUR1116、1173(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、LUCIRIN LR8728(BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;市販品として、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、(D)成分の重合開始剤のうち、50〜90質量%、好ましくは65〜90質量%が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの割合が50質量%未満では、表面硬化性(張り付き力)が低下し、80質量%を超えると、硬化速度が低下する傾向がある。
【0035】
(D)成分の重合開始剤は、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合されるのが好ましい。
【0036】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、さらに、(E)成分として平均分子量1,500〜35,000のシリコーン化合物を含有することができる。当該(E)成分は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された光ファイバ素線の最外層の隣接する層からの剥離性向上効果を得るうえで重要である。(E)成分の平均分子量が1,500未満では、十分な剥離性向上効果が得られず、平均分子量が35,000を超えると剥離性向上効果が不十分となる。より好ましい平均分子量は1,500〜20,000であり、さらに1,500〜20,000が好ましく、特に3,000〜15,000が好ましい。
また、(E)成分は、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことが好ましい。(E)成分がエチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことにより、熱履歴を与えても良好な剥離性を維持することができる。
【0037】
当該シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ウレタンアクリレート変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのうちポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基R14−(R15O)s−R16−(ここで、R14は水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R15は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(R15は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R16は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR15としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。当該シリコーン化合物の市販品のうち、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないものとしては、例えばSH28PA;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、ペインタッド19、54;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、FM0411;サイラプレーン、チッソ、SF8428;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有)、東レダウコーニング社、BYK UV3510(ビックケミー・ジャパン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有する当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば、Tego Rad 2300、2200N、テゴ・ケミー社等を挙げることができる。
【0038】
(E)成分の配合量は、最外層層の剥離性及び強度や耐候性の点から、樹脂組成物の全組成中に0.1〜50質量%、さらに0.5〜40質量%、特に1〜20質量%であるのが好ましい。
【0039】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
【0040】
ここで、酸化防止剤としては、例えばIRGANOX1010、1035、1076、1222(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ANTIGENE P、3C、FR、GA−80(住友化学工業社製)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばTINUVIN P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、Seesorb102、103、501、202、712、704(以上、シプロ化成社製)等が挙げられる。光安定剤としては、例えばTINUVIN 292、144、622LD(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、サノールLS770(三共社製)、TM−061(住友化学工業社製)等が挙げられる。
【0041】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて他のオリゴマー、ポリマー、その他の添加剤等を、本発明の組成物の特性を損なわない範囲で配合することができる。
他のオリゴマー、ポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキサンポリマー、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0042】
本発明の液状硬化性樹脂組成物の粘度は、ハンドリング性、塗布性の点から、25℃において、0.1〜10Pa・s、さらに1〜8Pa・s、特に2〜6Pa・sが好ましい。
【0043】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、熱及び/又は放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいい、特に紫外線が好ましい。
【0044】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を光ファイバー素線のセカンダリ材又は心線のテープ材として使用する場合には、硬化させて得られる硬化物のヤング率が100〜2,500MPaとなることが好ましく、また、光ファイバー素線のプライマリ材として用いる場合には、硬化物のヤング率が0.5〜3MPaとなることが好ましい。
【0045】
また、硬化物に湿度50%で5%の延伸歪みを与えたとき、応力が、初期の応力の37%に減衰する時間で定義される応力緩和時間は、通常10分以内であり、好ましくは5分以内、特に好ましくは3分以内である。
【実施例】
【0046】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[合成例1:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート10.68g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.012g、ジブチル錫ジラウレート0.039gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量1000のプロピレンオキサイドの開環重合体30.65gを加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、ヒドロキシエチルアクリレート7.12gを滴下して液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とし、プロピレンオキサイドの両端に2,4−トリレンジイソシアネートを介してヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造のウレタンアクリレートを得た。このウレタンアクリレートをUA−1とする。
【0048】
[合成例2:(B)ウレタン(メタ)アクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート1.59g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.012g、ジブチル錫ジラウレート0.039gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら1.06g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量10000のプロピレンオキサイドの開環重合体45.78gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とし、プロピレンオキサイドの両端に2,4−トリレンジイソシアネートを介してヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造のウレタンアクリレートを得た。このウレタンアクリレートをUA−2とする。
【0049】
[合成例3:(B’)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート41.4g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02g、ジブチル錫ジラウレート0.08g、フェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20度になるまで冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート27.6gを液温度が25度以下になるように制御しながら滴下した後、室温にて1時間撹拌、反応させた。さらに2−ヒドロキシプロピルアクリレート30.9gを添加し、液温度約60度で撹拌、反応させた。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時点を反応終了とし、2,4−トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと2−ヒドロキシプロピルアクリレートの等モル反応物であるウレタンアクリレートを得た。このウレタンアクリレートをUA−3とする。
【0050】
[合成例4:((B’)ウレタン(メタ)アクリレートの合成2]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート42.9g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02g、ジブチル錫ジラウレート0.08g、フェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20度になるまで冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート57.1gを液温度が25度以下になるように制御しながら滴下した後、室温にて1時間撹拌、反応させた。残留イソシアネートが0.1重量%(全内容物に対する量;以下同じ)以下になった時点を反応終了とし、2,4−トリレンジイソシアネートの両端に2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造のウレタンアクリレートを得た。このウレタンアクリレートをUA−4とする。
【0051】
実施例1〜2、比較例1〜5
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0052】
試験例1
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0053】
(1)試験用フィルムの作成:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルムを得た。
【0054】
(2)ヤング率の測定:
上記フィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmの短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0055】
(3)破断強度および破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度および破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
【0056】
(4)応力緩和時間の測定:
上記フィルムから、幅6mm、長さ25mmの短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%で1000mm/minの速度で歪み5%を与え、引っ張り試験機(島津製作所社、オートグラフAGS−50G)のクロスヘッドを停止して応力の変化をモニターした。応力が、初期の応力の37%に低下する時間を応力緩和時間とした。
【0057】
(5)張り付き力:
実施例および比較例で得られた組成物に関し、その硬化物の密着力安定性を測定した。液状組成物を381μm厚のアプリケーターを用いてスライドガラス上に塗布し、窒素雰囲気下で0.1J/cm2の紫外線を照射し、厚さ約200μmの硬化フィルムを得た。このスライドガラス上の硬化フィルムを、温度23℃、湿度50%下に24時間静置した。その後、この硬化フィルムから延伸部が幅10mmとなるように短冊状サンプルを作成した。このサンプルを引っ張り試験器を用いてJIS Z0237に準拠して密着力試験を行った。引張速度は50mm/minでの抗張力から密着力を求めた。
【0058】
【表1】

【0059】
表1において、
ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
Irgacure184;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
Irganox245;エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
SH28PA:ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)数平均分子量が4000以下のポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(B)数平均分子量が4000を超えるポリプロピレングリコールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(C)(メタ)アクリレートモノマー、
(D)重合開始剤
を含有し、かつ、
(C)成分の(メタ)アクリレートモノマーの全量を100質量%として、その50〜80質量%が2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートであり、
(D)成分の重合開始剤の全量を100質量%として、その50〜90質量%が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである、
液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
光ファイバの第二次被覆層用である請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる被覆層。
【請求項4】
請求項3に記載の被覆層を有する光ファイバ。

【公開番号】特開2008−247981(P2008−247981A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88159(P2007−88159)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】