説明

液状硬化性組成物及びその硬化膜

【課題】 硬化性に優れ、かつ、各種基材の表面に、帯電防止性、硬度、耐擦傷性、及び透明性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る液状硬化性組成物、硬化膜及び帯電防止用積層体を提供する。
【解決手段】 下記成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)一次粒径が20nm以下であり、かつ二次粒径が50nm以下である錫含有酸化インジウム(ITO)を主成分とする粒子
(B)分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物
(C)光重合開始剤
(D)溶剤
を含有する液状硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状硬化性組成物及びその硬化膜に関する。さらに詳しくは、硬化性に優れ、かつ、各種基材、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、セラミックス、スレート等の表面に、帯電防止性、硬度、耐擦傷性及び透明性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る液状硬化性組成物及びその硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信機器の性能確保と安全対策の面から、機器の表面に、放射線硬化性組成物を用いて、耐擦傷性、密着性を有する塗膜(ハードコート)や帯電防止機能を有する塗膜(帯電防止膜)を形成することが行われている。
また、光学物品に反射防止機能を付与するために、光学物品の表面に、低屈折率層と高屈折率層との多層構造(反射防止膜)を形成することが行われている。
近年、情報通信機器の発達と汎用化は目覚しいものがあり、ハードコート、帯電防止膜、反射防止膜等のさらなる性能向上及び生産性の向上が要請されるに至っている。
【0003】
特に、光学物品、例えば、プラスチックレンズにおいては、静電気による塵埃の付着の防止と、反射による透過率の低下の改善が要求されており、また、表示パネルにおいても、静電気による塵埃の付着の防止と、画面での映り込みの防止が要求されるようになってきている。
これらの要求に対して、生産性が高く、常温で硬化できることに注目し、放射線硬化性の材料が種々提案されている。
【0004】
このような技術としては、例えば、イオン伝導性の成分として、スルホン酸及びリン酸モノマーを含有する組成物(特許文献1)、連鎖状の金属粉を含有する組成物(特許文献2)、酸化錫粒子、多官能アクリレート、及びメチルメタクリレートとポリエーテルアクリレートとの共重合物を主成分とする組成物(特許文献3)、導電性ポリマーで被覆した顔料を含有する導電塗料組成物(特許文献4)、3官能アクリル酸エステル、単官能性エチレン性不飽和基含有化合物、光重合開始剤、及び導電性粉末を含有する光ディスク用材料(特許文献5)、シランカップラーで分散させたアンチモン含有された酸化錫粒子とテトラアルコキシシランとの加水分解物、光増感剤、及び有機溶媒を含有する導電性塗料(特許文献6)、分子中に重合性不飽和基を含有するアルコキシシランと金属酸化物粒子との反応生成物、3官能性アクリル化合物、及び放射線重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物(特許文献7)、一次粒径が100nm以下の導電性酸化物微粉末、該導電性酸化物微粉末の易分散性低沸点溶剤、該導電性酸化物微粉末の難分散性低沸点溶剤、及びバインダー樹脂を含有する透明導電性膜形成用塗料(特許文献8)等を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭47−34539号公報
【特許文献2】特開昭55−78070号公報
【特許文献3】特開昭60−60166号公報
【特許文献4】特開平2−194071号公報
【特許文献5】特開平4−172634号公報
【特許文献6】特開平6−264009号公報
【特許文献7】特開2000−143924号公報
【特許文献8】特開2001−131485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術は、それぞれ一定の効果を発揮するものの、近年における、ハードコート、帯電防止膜、反射防止膜としての全ての機能を十全に具備することが要請される硬化膜としては、必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
【0007】
例えば、上述の先行技術文献にあるような従来の技術には、下記のような問題があった。特許文献1に記載された組成物は、イオン伝導性物質を用いているが帯電防止性能が十分ではなく、乾燥により性能が変動する。特許文献2に記載された組成物は、粒径の大きい連鎖状の金属粉体を分散させるため透明性が低下する。特許文献3に記載された組成物は、非硬化性の分散剤を多量に含むため、硬化膜の強度が低下する。特許文献5に記載された材料は、高濃度の帯電性無機粒子を配合するため、透明性が低下する。特許文献6に記載された塗料は、長期保存安定性が十分ではない。特許文献7には、帯電防止性能を有する組成物の製造方法について何らの開示がない。特許文献8に記載された塗料を塗布、乾燥して透明導電性膜を形成した場合、バインダーの配合物からなる有機マトリックスに架橋構造を設けていないため、有機溶剤耐性が十分とは言えない。
【0008】
帯電防止性能を高めるために導電性粒子の配合量を多くすることは容易に想到し得るが、その場合、硬化膜による可視光吸収の増加により透明性が低下するとともに、紫外線透過性の低下により硬化性が低下したり、基材との密着性、塗布液のレベリング性が損なわれるという問題を避けることができなかった。一方、導電性粒子の配合量を少なくすると、充分な帯電防止性能が発現しない。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、硬化性に優れ、かつ、各種基材の表面に、帯電防止性、硬度、耐擦傷性、及び透明性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る液状硬化性組成物及びその硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の粒径を有する錫含有酸化インジウム粒子、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物、光重合開始剤、及び溶剤を含有した組成物とすることにより、導電性粒子の配合量が従来に比べて少なくても帯電防止性能を発現し、かつ透明性を損なわない硬化膜を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、以下の液状硬化性組成物及びその硬化膜を提供するものである。
【0012】
[1]下記成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)一次粒径が20nm以下であり、かつ二次粒径が50nm以下である錫含有酸化インジウム(ITO)を主成分とする粒子
(B)分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物
(C)光重合開始剤
(D)溶剤
を含有する液状硬化性組成物。
[2]前記成分(A)の含有量が、全固形成分中5〜40重量%である上記[1]に記載の液状硬化性組成物。
[3]前記成分(A)が、表面処理剤により表面処理された酸化物粒子である上記[1]又は[2]に記載の液状硬化性組成物。
[4]前記表面処理剤が、2以上の重合性不飽和基、下記式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する化合物である上記[3]に記載の液状硬化性組成物。
−X−C(=Y)−NH− (1)
[式中、Xは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Yは、O又はSを示す。]
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の液状硬化性組成物を硬化してなる硬化膜。
[6]表面抵抗値が1×1012Ω/□以下である上記[5]に記載の硬化膜。
[7]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の液状硬化性組成物に放射線を照射して、該組成物を硬化せしめる工程を有する硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化性に優れ、かつ、各種基材の表面に、帯電防止性、硬度、耐擦傷性、及び透明性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る液状硬化性組成物及びその硬化膜を提供することができる。
本発明の液状硬化性組成物によれば、帯電防止性及び透明性の要求を両立した硬化膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
I.液状硬化性組成物
本発明の液状硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)錫含有酸化インジウム(ITO)粒子
(B)分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物
(C)光重合開始剤
(D)溶剤
を含有していることを特徴とする。
以下、成分毎に具体的に説明する。
【0015】
1.成分(A)
本発明に用いられる成分(A)は、錫含有酸化インジウム(以下、単に「ITO」ということもある)粒子である。成分(A)は、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化膜に導電性(帯電防止性)を付与するために必須の成分である。また、ITO粒子の一次粒径は20nm以下であり、かつ二次粒径は50nm以下である。ITO粒子の粒径を上記のように設定することにより、導電性(帯電防止性)を確保すると同時に硬化膜の透明性をも維持することが可能となる。ITO粒子の一次粒径及び二次粒径がそれぞれ20nm及び50nmを超えると、得られる硬化膜の透明性が損なわれるおそれがある。
ITO粒子の一次粒径は、好ましくは15nm以下であり、二次粒径は、好ましくは40nm以下である。
【0016】
成分(A)のITO粒子の一次粒径は、後述する表面処理の有無にかかわらず、その形状が球状である場合、透過型電子顕微鏡で測定した値であり、形状が針状のように細長い場合には短軸を透過型電子顕微鏡で観察し、数平均の粒径として求めた値である。
成分(A)のITO粒子の二次粒径は、後述する表面処理の有無にかかわらず、動的光散乱式粒径分布測定装置によって求めた値である。
【0017】
このようなITO粒子の粉体としての市販品としては、例えば、富士化学(株)製 商品名:ITO粉末等を挙げることができる。
【0018】
成分(A)として用いられるITO粒子は、粉体又は溶媒に分散した状態で用いることができるが、均一分散性が得易いことから、溶媒中に分散した状態で用いることが好ましい。
【0019】
成分(A)として用いられるITO粒子を溶媒に分散した市販品としては、例えば、富士化学(株)製 商品名:ハウトフォームNID−20等を挙げることができる。
【0020】
成分(A)として用いられるITO粒子は、溶剤への分散性を向上させるために、表面処理剤等で表面処理されたITO粒子であってもよい。
ここで、表面処理剤としては、例えば、アルコキシシラン化合物、テトラブトキシシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシアルミニウム等を挙げることができる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アルコキシシラン化合物の具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の分子内に不飽和二重結合を有する化合物群、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等の分子内にエポキシ基を有する化合物群、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等の分子内にアミノ基を有する化合物群、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の分子内にメルカプト基を有する化合物群、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類等を挙げることができる。これらの表面処理剤の中では、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が、表面処理されたITO粒子の分散安定性の点で好ましい。
【0022】
また、表面処理剤としては、有機樹脂と共重合又は架橋反応する官能基を有するもの(反応性表面処理剤)も好ましい。このような表面処理剤としては、上述した分子内に不飽和二重結合を有する化合物群や、2以上の重合性不飽和基、下記式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する化合物が好ましい。
−X−C(=Y)−NH− (1)
[式中、Xは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Yは、O又はSを示す。]
【0023】
上記式(1)に示す基は、好ましくは、ウレタン結合[−O−C(=O)−NH−]、−O−C(=S)−NH−及びチオウレタン結合[−S−C(=O)−NH−]からなる群から選択される少なくとも1種類の基である。
【0024】
このような表面処理剤としては、例えば、分子内にウレタン結合[−O−C(=O)NH−]及び/又はチオウレタン結合[−S−C(=O)NH−]並びに2以上の重合性不飽和基を有するアルコキシシラン化合物を挙げることができる。具体的には、下記式(2)に示す化合物を挙げることができる。
【化1】

式中、Rはメチル基、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基、mは1又は2、nは1〜5の整数、Xは炭素数1〜6の2価のアルキレン基、Yは鎖状、環状、分岐状いずれかの炭素数3〜14の2価の炭化水素基、Zは(n+1)価の鎖状、環状、分岐状いずれかの炭素数2〜14の2価の炭化水素基である。Z内には、エーテル結合を含んでもよい。
【0025】
式(2)に示す化合物は、メルカプトアルコキシシラン類、ジイソシアネート類及び水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類を反応させて製造することができる。
好ましい製造方法としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン類とジイソシアネート類との反応によりチオウレタン結合で結合した中間体を製造後、残存するイソシアネートと水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類との反応によりウレタン結合で結合した生成物とする方法を挙げることができる。
【0026】
尚、ジイソシアネート類と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類との反応により初めにウレタン結合で結合した中間体を製造後、残存するイソシアネートとメルカプトアルコキシシラン類とを反応させることによっても同一生成物は得られるが、メルカプトアルコキシシラン類と(メタ)アクリル基との付加反応が併発するため、その純度が低くなり、また、ゲル状物を形成することがあり好ましくない。
【0027】
式(2)に示す化合物の製造に用いるメルカプトアルコキシシラン類としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。中でも、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0028】
メルカプトアルコキシシラン類の市販品としては、例えば、東レダウ・コーニング(株)製 商品名:SH6062を挙げることができる。
【0029】
また、ジイソシアネート類としては、例えば、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビスフェノールAジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等を挙げることができる。中でも、2,4−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0030】
ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、三井日曹ウレタン(株)製 商品名:TDI−80/20、TDI−100、MDI−CR100、MDI−CR300、MDI−PH、NDI、日本ポリウレタン工業(株)製 商品名:コロネ−トT、ミリオネートMT、ミリオネートMR、HDI、武田薬品工業(株)製 商品名:タケネート600等を挙げることができる。
【0031】
また、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このうち、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、式(2)に示す化合物中の2以上の重合性不飽和基を形成する。
【0032】
これらのメルカプトアルコキシシラン類、ジイソシアネート類、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
式(2)に示す化合物を製造する場合の好ましいメルカプトアルコキシシラン類、ジイソシアネート類、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類の配合割合は、メルカプトアルコキシシラン類に対するジイソシアネート類のモル比が、好ましくは、0.8〜1.5、さらに好ましくは、1.0〜1.2である。このモル比が0.8未満であると、組成物の保存安定性が低下することがあり、1.5を超えると、分散性が低下することがある。
また、ジイソシアネート類に対する水酸基含有(メタ)アクリレート類のモル比が、好ましくは、1.0〜1.5、さらに好ましくは、1.0〜1.2である。このモル比が1.0未満であると、ゲル化することがあり、1.5を超えると、帯電防止性が低下することがある。
【0034】
式(2)に示す化合物の製造は、通常、アクリル基の嫌気性重合を防止し、アルコキシシランの加水分解を防止するため、乾燥空気中で行うことが好ましい。また、反応温度は0℃から100℃が好ましく、さらに好ましくは、20℃から80℃である。
【0035】
式(2)に示す化合物の製造時には、製造時間を短縮することを目的にウレタン反応で公知の触媒を添加してもよい。触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、オクチル錫トリアセテートを挙げることができる。触媒の添加量は、ジイソシアネート類との合計に対して、0.01重量%〜1重量%である。
【0036】
また、式(2)に示す化合物の熱重合を防止する目的で、製造時に熱重合禁止剤を添加してもよい。熱重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン等を挙げることができる。熱重合禁止剤の添加量は、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類との合計に対して、好ましくは、0.01重量%〜1重量%である。
【0037】
式(2)に示す化合物の製造は、溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン類、ジイソシアネート類、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート類と反応せず、沸点が200℃以下の溶媒の中から適宜選択することができる。
このような溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができる。
【0038】
本発明では、(A)ITO粒子の存在下、上記の表面処理剤を加水分解することにより、表面処理されたITO粒子を製造することができる。好ましい製造方法は、(A)ITO粒子、表面処理剤、及び有機溶媒の混合物に水を加え、加水分解する手順で調製する方法である。
この製造方法では、表面処理剤の加水分解により、アルコキシ基が、一旦シラノール基(Si−OH)に変換され、このシラノール基がITO粒子上の金属水酸化物(M−OH)と反応し、メタロキサン結合(M−O−Si)を形成することにより、表面処理剤がITO粒子上に固定されると推定される。
【0039】
表面処理剤の配合量は、(A)ITO粒子100重量部に対して、好ましくは、0.1〜50重量部、さらに好ましくは、1〜35重量部である。表面処理剤が0.1重量部未満であると、硬化膜の耐摩耗性が十分でないことがあり、50重量部を超えると帯電防止性能が不足することがある。
【0040】
水の配合量は、表面処理剤中の全アルコキシ当量に対して、好ましくは、0.5〜1.5当量であり、表面処理剤100重量部に対して、0.5〜5.0重量部添加することが好ましい。用いる水は、イオン交換水又は蒸留水が好ましい。
【0041】
加水分解反応は、有機溶媒の存在下、0℃〜成分の沸点以下の温度、通常、30〜100℃で、1時間から24時間加熱攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、予め有機溶媒に分散した(A)ITO粒子を用いる場合はそのままで行うことができるが、別途有機溶媒を添加してもよい。
【0042】
尚、加水分解を行う際、反応を促進するため、触媒として、酸又は塩基を添加してもよい。
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、蟻酸、蓚酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の有機酸や、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を挙げることができる。
塩基としては、例えば、アンモニア水、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができるが、好ましい触媒は、酸であり、より好ましくは有機酸である。これら触媒の添加量はアルコキシシラン化合物100重量部に対して、好ましくは、0.001重量部〜1重量部、より好ましくは0.01重量部〜0.1重量部である。
【0043】
尚、加水分解反応の終了時に脱水剤を添加することにより、(A)ITO粒子上への表面処理剤の加水分解物の固定をより効果的に行うことができる。
脱水剤としては、有機カルボン酸オルトエステル及びケタールであり、具体的には、例えば、オルト蟻酸メチルエステル、オルト蟻酸エチルエステル、オルト酢酸メチルエステル、オルト酢酸エチルエステル等及びアセトンジメチルケタール、ジエチルケトンジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、シクロヘキサノンジメチルケタール、シクロヘキサノンジエチルケタール、ベンゾフェノンジメチルケタール等を挙げることができる。中でも、好ましくは有機カルボン酸オルトエステル類であり、さらに好ましくはオルト蟻酸メチルエステル、オルト蟻酸エチルエステルである。
【0044】
これらの脱水剤は、組成物中に含まれる水分量と当モル以上10倍モル以下、好ましくは当モル以上3モル以下加えることができる。当モル未満であると、保存安定性向上が十分でないことがある。また、これら脱水剤は、組成物の調製後加えることが好ましい。これにより、組成物の保存安定性及び表面処理剤の加水分解物中のシラノール基と(A)ITO粒子との化学結合形成が促進される。
【0045】
このような表面処理剤で表面処理された(A)ITO粒子は、溶剤中で極めて良好な分散性を有することから、表面処理剤は、シロキシ基(Si−O−)を介した化学結合により、(A)ITO粒子の表面に固定されていると推定される。
尚、本発明では、反応性表面処理剤で表面処理された(A)ITO粒子を、特に反応性粒子(RA)と称する。
【0046】
成分(A)の配合量は特に制限されないが、本発明の組成物の固形分全量100重量%中、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜35重量%である。成分(A)が表面処理されている場合も同じである。配合量が5重量%未満では、帯電防止性が劣る場合があり、40重量部を超えると、塗膜の製膜性が劣る場合がある。ここで、成分(A)の配合量は、その固形分としての配合量をいい、分散媒を含まない。
【0047】
2.成分(B)
本発明に用いられる成分(B)は、分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物であり、本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜に成膜性、透明性を付与する成分である。このような成分(B)を用いることにより、優れた耐擦傷性、有機溶剤耐性を有する硬化物が得られる。
【0048】
成分(B)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を挙げることができる。
(メタ)アクリルエステル類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びこれらの化合物を製造する際の出発アルコール類のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。中でも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましい。これら(B)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
成分(B)の配合量は、本発明の組成物の固形分全量100重量%中、好ましくは55〜94重量%、より好ましくは60〜92重量%である。成分(B)の配合量が55重量%未満では、得られる硬化物の透明性が劣る場合があり、94重量%を超えると、帯電防止性が劣る場合がある。
【0050】
3.成分(C)
成分(C)は、光重合開始剤であり、本発明の組成物に放射線を照射して硬化させる際に、硬化速度を高めるために添加する。
尚、本発明において、放射線とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等を意味する。
【0051】
成分(C)の配合量は、本発明の組成物の固形分全量100重量%に対して、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。成分(C)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
成分(C)としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0053】
4.成分(D)
本発明に用いられる成分(D)は溶剤であり、本発明の組成物の流動性を調節するための成分である。
【0054】
本発明の組成物中の成分(D)である溶剤は、組成物の固形分全量の濃度が、0.5〜75重量%となるように添加することが好ましい。即ち、(D)溶剤の添加量としては、本発明の組成物の固形分全量を100重量部としたときに、33.3〜19,900重量部の範囲内であることが好ましい。この理由は、(D)溶剤の添加量が33.3重量部未満となると、組成物の粘度が増加して塗布性が低下する場合があり、一方、19,900重量部を超えると、得られる硬化物の膜厚が薄過ぎて、十分な硬度が発現しない場合があるからである。
【0055】
溶剤の種類は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶剤が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類等が用いられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等を挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0057】
尚、成分(A)のITO粒子が分散媒に分散した状態の分散液である場合、その分散媒を、成分(D)の溶剤としてそのまま用いてもよく、分散媒とは別の溶剤のみを用いてもよいし、さらに分散媒と別の溶剤とを併せて成分(D)の溶剤として用いてもよい。
【0058】
5.その他の重合性不飽和基を有する化合物
本発明の組成物には、成分(A)〜成分(D)以外の成分として、その他の重合性不飽和基を有する化合物(成分(E))を必要に応じて配合することができる。ここで、成分(E)とは、分子内に重合性不飽和基を1つ有する化合物である。
成分(E)の具体例としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。
CH=C(R)−COO(RO)−Ph−R (3)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、Phはフェニレン基を示し、pは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す。)
【0059】
成分(E)の市販品としては、アロニックス M−101、M−102、M−111、M−113、M−114、M−117(以上、東亜合成(株)製);ビスコート LA、STA、IBXA、2−MTA、#192、#193(大阪有機化学(株)製);NK エステル AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G(以上、新中村化学工業(株)製);ライトアクリレート L−A、S−A、IB−XA、PO−A、PO−200A、NP−4EA、NP−8EA(以上、共栄社化学(株)製);FA−511、FA−512A、FA−513A(以上、日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0060】
6.非導電性粒子
本発明では、液状硬化性組成物が分離、ゲル化等の不具合を起こさない範囲で、非導電性粒子、又は非導電性粒子とアルコキシシラン化合物とを有機溶媒中で反応させて得られる粒子を併用してもよい。
【0061】
非導電性粒子を成分(A)であるITO粒子と併用することにより、帯電防止機能、即ち、硬化膜としたときの表面抵抗として1013Ω/□以下の値を維持しながら、耐擦傷性を向上させることができる。
【0062】
このような非導電性粒子としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム等の酸化物粒子、又はケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、及びセリウムよりなる群から選ばれる2種類以上の元素を含む酸化物粒子を挙げることができる。
【0063】
非導電性粒子の一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって求めた値として、好ましくは、0.1μm以下であり、さらに好ましくは、0.001〜0.05μmである。0.1μmを超えると、組成物中で沈降が発生したり、塗膜の平滑性が低下することがある。
【0064】
非導電性粒子を本発明の組成物に配合する場合、非導電性粒子とアルコキシシラン化合物とを有機溶媒中で加水分解した後混合してもよい。この処理により、非導電性粒子の分散安定性が良好になる。非導電性粒子とアルコキシシラン化合物との有機溶媒中での加水分解処理は、前述の成分(A)である酸化物粒子の処理方法と同様にすることができる。
【0065】
非導電性粒子の市販品として、例えば、酸化ケイ素粒子(例えば、シリカ粒子)としては、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製 商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製 商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製 商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製 商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製 商品名:SGフレーク等を挙げることができる。
また、酸化アルミニウム(アルミナ)の水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:アルミナゾル−100、−200、−520;酸化ジルコニウムの分散品としては、住友大阪セメント(株)製(トルエン、メチルエチルケトン分散のジルコニアゾル);酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製 商品名:ニードラール;アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテック等を挙げることができる。
【0066】
非導電性粒子の配合割合は、本発明の組成物の固形分全量100重量%中、好ましくは0.1〜35重量%、より好ましくは0.5〜30重量%である。
【0067】
7.添加剤
本発明の組成物には、その他の添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、滑材等を必要に応じて配合することができる。酸化防止剤としては、チバスペシャルティケミカルズ(株)製 商品名:イルガノックス1010、1035、1076、1222等、紫外線吸収剤としては、チバスペシャルティケミカルズ(株)製 商品名:チヌビン P234、320、326、327、328、213、329、シプロ化成(株)製 商品名:シーソーブ102、103、501、202、712等、光安定剤としては、チバスペシャルティケミカルズ(株)製 商品名:チヌビン292、144、622LD、三共(株)製 商品名:サノ−ルLS770、LS440、住友化学工業(株)製 商品名:スミソーブ TM−061等を挙げることができる。
【0068】
このようにして得られた本発明の組成物の粘度は、通常25℃において、1〜20,000mPa・sであり、好ましくは1〜1,000mPa・sである。
【0069】
前述の通り、本発明の組成物の溶剤(D)を除く固形分含量は、0.5〜75重量%の範囲内であることが好ましい。固形分含量が0.5重量%未満であると、得られる硬化物の膜厚が薄過ぎて、十分な硬度が発現しない場合があり、75重量%を超えると組成物の粘度が増加して塗布性が低下する場合がある。
【0070】
8.液状硬化性組成物の調製方法
本発明の液状硬化性組成物は、上記成分(A)〜(D)、及び必要に応じて、上記その他の重合性不飽和基を有する化合物、非導電性粒子、その他の添加剤を加えて混合することにより得られる。
【0071】
II.硬化膜及び帯電防止用積層体
本発明の硬化膜は、上述の液状硬化性組成物を塗布、乾燥した後に、放射線を照射して、組成物を硬化させることにより得ることができる。
得られた硬化膜の表面抵抗は、通常1×1012Ω/□以下、好ましくは1×1010Ω/□以下、より好ましくは1×10Ω/□以下である。表面抵抗が1×1012Ω/□を超えると、帯電防止性能が十分でなく、埃が付着し易くなったり、付着した埃を容易に除去できない場合がある。
【0072】
組成物の塗布方法としては特に制限はないが、例えば、ロールコート、スプレーコート、フローコート、ディッピング、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の方法を適用することができる。
【0073】
組成物の硬化に用いる放射線の線源としては、組成物を塗布後、短時間で硬化させ得るものである限り特に制限はない。
可視光線の線源としては、例えば、直射日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また、紫外線の線源としては、例えば、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また、電子線の線源としては、例えば、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式等を挙げることができる。
α線、β線及びγ線の線源としては、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、γ線については、加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は、1種単独で、又は2種以上を同時に照射してもよく、また、1種以上の放射線を、一定期間をおいて照射してもよい。
【0074】
硬化膜の膜厚は、0.1〜20μmであることが好ましい。タッチパネル、CRT等の最表面での耐擦傷性を重視する用途では比較的厚く、好ましくは2〜15μmである。一方、光学フィルムの帯電防止膜として用いる場合、好ましくは0.1〜10μmである。
また、光学フィルムへ用いる場合、透明性が必要であり、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0075】
本発明の硬化膜が適用される基材は、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木材、スレート等特に制限はないが、放射線硬化性という生産性の高い、工業的有用性を発揮できる材料として、例えば、フィルム、ファイバー状の基材に好ましく適用される。特に好ましい材料は、プラスチックフィルム、プラスチック板である。そのようなプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン/ポリメチルメタクリレート共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ジエチレングリコールのジアリルカーボネート(CR−39)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、環化ポリオレフィン樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂)等を挙げることができる。
【0076】
なお、本発明の液状硬化性組成物を塗布する基材は、液状硬化性組成物が塗布される表面に易接着処理を施した基材が好ましい。易接着処理を施した基材に本発明の組成物を塗布すると、成分(A)のITO粒子が基材側に偏在する。
易接着処理としては、コロナ放電処理、易接着層塗布処理等の処理が挙げられる。
好ましい易接着処理された市販の基材としては、ポリエステルフィルムA4300(東洋紡績(株)製)等が挙げられる。
【0077】
易接着処理されたポリエステルフィルムA4300(東洋紡績(株)製)基材上に本発明の液状硬化性組成物を塗布し、硬化させることにより、成分(A)のITO粒子が基材側に偏在化した典型的な状態を示す硬化膜断面の電子顕微鏡写真を図1に示す。図1において、下部は基材側であり、上部は空気側であり、基材側にITO粒子が偏在している様子がわかる。
【0078】
光学物品に反射防止機能を付与する場合、基材、又はハードコート処理された基材等に、低屈折率層を形成する方法、又は低屈折率層と高屈折率層との多層構造を形成する方法が有効であることが知られているが、本発明の硬化膜は、これを基材上に形成することにより、光学物品に反射防止機能を付与する帯電防止用積層体の一つの層構造として用いることも有用である。即ち、本発明の硬化膜をこれよりも低屈折率の膜と併用することで、反射防止性能を有する帯電防止積層体を形成することができる。
【0079】
このような帯電防止用積層体としては、例えば、本発明の硬化膜上に形成される低屈折率層として、その厚さが0.05〜0.20μmで、屈折率が1.30〜1.45のコート層を用いた積層体を挙げることができる。また、本発明の硬化膜上に形成される高屈折率層として、その厚さが0.05〜0.20μmで、屈折率が1.65〜2.20のコート層を用い、さらにこの高屈折率層の上に形成される低屈折率層として、その厚さが0.05〜0.20μmで、屈折率が1.30〜1.45のコート層を用いた積層体を挙げることができる。
【0080】
帯電防止用積層体の製造において、他の要求、例えば、ノングレア効果、光の選択吸収効果、耐候性、耐久性、転写性等の機能をさらに付与するために、例えば、1μm以上の光散乱性の粒子を含有する層を加えること、染料を含有する層を加えること、紫外線吸収剤を含有する層を加えること、接着層を加えること、接着層と剥離層を加えること等が可能であり、さらに、これらの機能付与成分を本発明の帯電防止用硬化性組成物の1成分として加えることも可能である。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制限を受けるものではない。尚、以下において、部、%は、特に断らない限り、それぞれ重量部、重量%を示す。
【0082】
実施例1
(1)液状硬化性組成物の製造
紫外線を遮蔽した容器中において、錫含有酸化インジウム分散液(富士化学(株)製 ハウトフォームNID−20、分散溶媒 イソプロピルアルコール、錫含有酸化インジウム20重量%、平均一次粒径13nm、以下、ITO粒子−1と称する場合がある。)50部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名 KAYARAD DPHA 以下B−1と称する場合がある。)86部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.5部、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2-モルフォリノプロパン−1−オン1.5部、イソプロピルアルコール141.8部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル51.3部、を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液の組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、170℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、30重量%であった。また、この組成物を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、10重量%であった。
【0083】
実施例2〜3、比較例1〜3
同様の操作法により、表1に示す実施例2〜3、比較例1〜3の各組成物を得た。
尚、表1中、ITO粒子及び分散剤の配合量は添加した分散液中の固形分量のみを表し、分散媒は溶剤の配合量に含まれる。
【0084】
<硬化膜の作製>
ワイヤーバーコータを用いて、表面易接着処理が施されたポリエステルフィルムA4300(東洋紡績(株)製、膜厚188μm、)上に、実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた組成物をそれぞれ塗工し、オーブン中、80℃、3分間の条件で乾燥し、塗膜を形成した。次いで、大気中、メタルハライドランプを用いて、1J/cm2の光照射条件で塗膜を紫外線硬化させ、膜厚3μmの硬化膜(ハードコート層)を形成した。
【0085】
<硬化膜の評価>
得られた硬化膜の全光線透過率、ヘーズ及び表面抵抗を以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)全光線透過率、ヘーズ
硬化膜の全光線透過率(%)及びヘーズ(%)を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
(2)鉛筆硬度
硬化膜の鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4に準拠し、ガラス基板上で硬化させた被膜を評価した。
(3)表面抵抗
硬化膜の表面抵抗(Ω/□)を、ハイ・レジスタンス・メーター(アジレント・テクノロジー(株)製 Agilent4339B)、及びレジスティビティ・セル16008B(アジレント・テクノロジー(株)製)を用い、印加電圧100Vの条件で測定した。
【0086】
【表1】

【0087】
表1中の略称の内容を下記に示す。
ITO粒子−1:富士化学(株)製 ハウトフォーム NID−20(一次粒径:13nm、二次粒径:25nm IPA分散体)
分散剤1:富士化学(株)製 ハウトフォーム NID−20に含まれる分散剤
ITO粒子−2:三井金属鉱山(株)製 パストラン(一次粒径:30nm、二次粒径:150nm 水分散体)
分散剤2:三井金属鉱山(株)製 パストラン(ITO粒子−2)に含まれる分散剤
ITO粒子−3:シーアイ化成(株)製 ナノテック(一次粒径:25nm、二次粒径:80nm EtOH分散体)
分散剤3:シーアイ化成(株)製 ナノテックに含まれる分散剤
ITO粒子−4:三井金属鉱山(株)製 パストラン(一次粒径:30nm、二次粒径:300nm MeOH分散体)
分散剤4:三井金属鉱山(株)製 パストラン(ITO粒子−4)に含まれる分散剤
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPA:イソプロパノール
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
【0088】
表1の結果から、比較例1及び3は、10Ω/□オーダーと、表面抵抗は非常に小さいが、ヘーズが大きく、透明性が劣っている。比較例2は、逆にヘーズは比較的低いが、表面抵抗は1014Ω/□オーダーと大きくなっており、帯電防止性が劣っている。
これに対し、実施例1〜3では、表面抵抗はいずれも1011Ω/□オーダーであり、かつヘーズも0.1%又は0.2%と低く、帯電防止性と透明性の両方の要求を満足する特性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明によって、硬化性に優れ、かつ、各種基材の表面に、帯電防止性、硬度、耐擦傷性、及び透明性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る液状硬化性組成物、硬化膜及び帯電防止用積層体を提供することができる。
【0090】
本発明の硬化膜は、優れた耐擦傷性、密着性を有するため、ハードコートとして有用である。また、優れた帯電防止機能を有するため、フィルム状、板状、又はレンズ等の各種形状の基材に配設されることにより帯電防止膜として有用である。
【0091】
本発明の硬化膜の適用例としては、例えば、タッチパネル用保護膜、転写箔、光ディスク用ハードコート、自動車用ウインドフィルム、レンズ用の帯電防止保護膜、化粧品容器等の高意匠性の容器の表面保護膜等主として製品表面傷防止や静電気による塵埃の付着を防止する目的でなされるハードコートとしての利用、また、CRT、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル等の各種表示パネル用の帯電防止用反射防止膜としての利用、プラスチックレンズ、偏光フィルム、太陽電池パネル等の帯電防止用反射防止膜としての利用等を挙げることができる。
【0092】
本発明の帯電防止用積層体は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック筐体、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のためのハードコーティング材;各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、成分(A)のITO粒子が基材側に偏在化した典型的な状態を示す硬化膜断面の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)一次粒径が20nm以下であり、かつ二次粒径が50nm以下である錫含有酸化インジウム(ITO)を主成分とする粒子
(B)分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物
(C)光重合開始剤
(D)溶剤
を含有する液状硬化性組成物。
【請求項2】
前記成分(A)の含有量が、全固形成分中5〜40重量%である請求項1に記載の液状硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、表面処理剤により表面処理された酸化物粒子である請求項1又は2に記載の液状硬化性組成物。
【請求項4】
前記表面処理剤が、2以上の重合性不飽和基、下記式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する化合物である請求項3に記載の液状硬化性組成物。
−X−C(=Y)−NH− (1)
[式中、Xは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Yは、O又はSを示す。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状硬化性組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項6】
表面抵抗値が1×1012Ω/□以下である請求項5に記載の硬化膜。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状硬化性組成物に放射線を照射して、該組成物を硬化せしめる工程を有する硬化膜の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−348069(P2006−348069A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172278(P2005−172278)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】