説明

液状表面改質剤の気化装置、及び表面改質装置

【課題】安定した表面改質効果を奏することができる液状表面改質剤の気化装置、及び表面改質装置を提供すること。
【解決手段】媒体ガスを供給する媒体ガス供給手段19と、前記媒体ガスの温度を所定の温度に調整する媒体ガス温度調整手段15と、前記所定の温度となった前記媒体ガスと液状の表面改質剤とを接触させ、前記媒体ガス中に、前記表面改質剤の蒸気を、前記所定の温度における飽和蒸気量だけ含む表面改質剤含有ガスを生成する表面改質剤含有ガス生成手段17と、を備えることを特徴とする液状表面改質剤の気化装置3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状表面改質剤の気化装置、及び表面改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンゴムやポリエチレン樹脂等の高分子、金属、セラミック等を材料とする固体物質の表面は、他の部材の接着、塗料の塗装、印刷等の表面処理が困難な状態である場合がある。そこで、従来から、固体物質の表面を改質して、接着、塗装、印刷等の表面処理を容易なものとする表面改質装置が検討されている。
【0003】
従来の表面改質装置は、液状の表面改質剤を、ナノポンプや霧化装置を利用して気化し、その気化した表面改質剤を含むガスを燃焼して生じた火炎を固体物質(被処理材)に噴射し、固体物質の表面改質を行う(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−275601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の表面改質装置では、上述したように、液状の表面改質剤を、ナノポンプや霧化装置を利用して気化し、ガスに含有させる。ガスに含有可能な表面改質剤の量(飽和蒸気量)は気温に依存するから、気温の変化により、ガスに含まれる表面改質剤の量が変化してしまう。例えば、冬季は、気温が低下し、飽和蒸気量が少なくなるから、ガスに含まれる表面改質剤の量が減少してしまう。その結果、表面改質の効果(濡れ性、接着性、塗膜密着性等)が、気候に影響され、不安定になってしまう。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、安定した表面改質効果を奏することができる液状表面改質剤の気化装置、及び表面改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液状表面改質剤の気化装置は、
媒体ガスを供給する媒体ガス供給手段と、前記媒体ガスの温度を所定の温度に調整する媒体ガス温度調整手段と、前記所定の温度となった前記媒体ガスと液状の表面改質剤とを接触させ、前記媒体ガス中に、前記表面改質剤の蒸気を、前記所定の温度における飽和蒸気量だけ含む表面改質剤含有ガスを生成する表面改質剤含有ガス生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の気化装置は、媒体ガスの温度を所定の温度に調整しておき、その媒体ガス中に、表面改質剤の蒸気を、所定の温度における飽和蒸気量だけ含ませる。そのため、気候条件等の条件が変化しても、本発明の気化装置は、表面改質剤の蒸気を常に一定の量だけ含んだ表面改質剤含有ガスを生成することができる。本発明の気化装置で生成した表面改質剤含有ガスを表面改質装置で用いれば、表面改質装置のバーナーで燃焼させるガスにおける表面改質剤含有量を、常に一定に維持することができる。その結果、表面改質の効果を常に安定させることができる。
【0009】
前記媒体ガス温度調整手段は、前記媒体ガスの流路Aと、前記流路Aを加熱又は冷却する流路A加熱/冷却手段と、を備えることが好ましい。この構成を備えることにより、媒体ガスの温度を一層安定させることができる。
【0010】
前記混合ガス生成手段は、前記媒体ガスの流路Bと、前記流路Bの内部において、液状の前記表面改質剤を保持する表面改質剤保持手段と、を備えることが好ましい。この構成を備えることにより、媒体ガス中に含まれる表面改質剤の蒸気量を一層安定させることができる。
【0011】
本発明の液状表面改質剤の気化装置は、 前記流路Bを流れる前記媒体ガスの温度が、前記所定の温度に維持されるように、前記流路Bを加熱又は冷却する流路B加熱/冷却手段を備えることが好ましい。この構成を備えることにより、流路Bにおける媒体ガスの温度を一層安定させることができる。その結果、媒体ガス中に含まれる表面改質剤の蒸気量を一層安定させることができる。
【0012】
本発明の表面改質装置は、
上述した液状表面改質剤の気化装置と、酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給手段と、前記気化装置で生成した前記表面改質剤含有ガス、前記酸素含有ガス、及び前記可燃性ガスを含む混合ガスを生成する混合ガス生成手段と、前記混合ガスを燃焼させた火炎を噴射する噴射手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の表面改質装置は、媒体ガスの温度を所定の温度に調整しておき、その媒体ガス中に、表面改質剤の蒸気を、所定の温度における飽和蒸気量だけ含ませる。そのため、気候条件等の条件が変化しても、本発明の表面改質装置は、表面改質剤の蒸気を常に一定の量だけ含んだ表面改質剤含有ガスを生成し、バーナーで燃焼させるガスにおける表面改質剤含有量を、常に一定に維持することができる。その結果、表面改質の効果を常に安定させることができる。
【0014】
本発明の表面改質装置は、前記噴射手段で生成する熱を用いて、前記表面改質剤含有ガス、及び/又は前記酸素含有ガスを加温する加温手段を備えることが好ましい。表面改質剤含有ガスを加温する加温手段を備える場合は、表面改質剤含有ガスの温度が低下しないので、表面改質剤含有ガスに含まれる表面改質剤の蒸気が結露してしまうことを防止できる。
【0015】
また、酸素含有ガスを加温する加温手段を備える場合は、混合ガス生成手段に冷たい酸素含有ガスが流入しなくなるので、混合手段で生成する混合ガスの温度低下を防止できる。その結果、混合ガスにおいて表面改質剤の蒸気が結露してしまうことを防止できる。
【0016】
また、噴射手段で生じる熱を、表面改質剤含有ガスや酸素含有ガスの加温に利用することができる。そのことにより、加温に要するエネルギーコストを低減できる。
前記媒体ガスとしては、表面改質剤の蒸気を含有できるガスから適宜選択できる。媒体ガスとしては、例えば、空気(特に圧縮空気)が挙げられる。
【0017】
前記表面改質剤は、表面改質を行う対象物の表面を改質して、塗装、印刷、接着などの処理を行い易くする作用を有する化合物である。表面改質剤としては、各種有機金属化合物や、含酸素有機化合物を使用できる。表面改質剤としては、例えば、特開2010−275601号公報、特開2011−17509号公報に記載されているものを適宜選択して用いることができる。具体例としては、Al(O−secC493、(CH33Al、(C253Al、(C252Be、As(O−C253、B(O−CH33、B(O−C253、B(O−iC493、(n−C492B(OH)、トリシクロヘキシルボロン[(C6133B]、(C252Be、(C252Cd、Cr(C25−C652、Ge(O−C254、Ge(O−nC374、Ge(O−tertC494、Hf(O−tertC494、In(O−CH33、エチルシクロペンタジエニル(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム[Ir(C5425)(C812)]、Fe(CO)5、Ni(CO)4、Nb(O−C255、Nb(O−secC495、PO(O−CH33、PO(O−C253、PO(O−secC493、P(O−CH33、P(O−secC493、Pb(O−iC372、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム[Ru(C54252]、Sb(O−nC373、Ta(O−C255、ジアセチルアセト−ジブトキシスズ[Sn(OC492(C5722]、Ti(O−iC374、Ti(O−secC494、Ti[N(CH324、VO(O−C253、Zr(O−tertC494、(CH36Si2O等が挙げられる。 これらの表面改質剤のうち、PO(O−C253や(CH36Si2O等が好ましい。
【0018】
また、表面改質剤としては、例えば、炭化水素系表面改質剤(例えば、炭素と水素と酸素とから成る炭化水素)を用いることができる。炭化水素系表面改質剤としては、例えば、以下の(A)、(B)が挙げられる。
(A)エーテル構造(−O−)を2個以上有している炭素を有する含酸素有機化合物。
(B)C=O基(カルボキシル基を含む)が2個以上結合している炭素を有する含酸素有機化合物。
【0019】
前記(A)の炭化水素系表面改質剤としては、例えば、(A1)オルトエステル類、(A2)環状ジエーテル類、(A3)アセタール類が挙げられる。(A1)オルトエステル類としては、例えば、構造式:RC(OR‘)3で表されるものが好ましい。ここで、Rは水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R’は炭素数1〜6のアルキル基である。(A1)オルトエステル類の具体例としては、オルトプロピオン酸トリエチル(Triethyl orthopropionate;CH3CH2C-(OCH2CH3)3)、オルト酢酸トリエチル(Triethyl orthoacetate;CH3C(OCH2CH3)3)、オルトギ酸トリエチル(Triethyl orthoformate;HC(OCH2CH3)3)、オルト酪酸トリエチル(Triethyl orthobutyrate;CH3CH2C(OCH2CH3)3)、オルト吉草酸トリエチル(Triethyl orthovalerate;H3CH2CH2CH2C(OCH2CH3)3)、オルトギ酸トリーn−ブチル(Tri-n-buthyl orthoformate;HC(OCH2CH2CH2CH3)3)、オルトギ酸トリイソプロピル(Triisopropyl orthoformate;HC-(OCH(CH3)2)3)等が挙げられる。
【0020】
前記(A2)環状ジエーテル類としては、例えば、酸素1、3位置の5、6員環(2位置ケトン基のものを含む)が好ましい。この中で、1、3−ジオキソラン、2C位置の炭素数1〜3アルキル基の水素置換体が好ましい。(A2)環状ジエーテル類の具体例としては、3−メチル−1,3ジオキソラン(3-methyl-1,3-dioxolane;CH3CH(-OCH2CH2O-)、1、3ジオキサン(1,3-Dioxane;CH2(O-CH2CH2CH2O-))、炭酸エチレン(Ethylene carbonate;-CH2CH2O-CO-O-)、炭酸プロピレン(Propylene carbonate;-CH2CHCH3O-CO-O-)等が挙げられる。
【0021】
前記(A3)アセタール類としては、構造式:R12C(OR3)(OR4)で表されるものが好ましい。ここで、R1、R2は、それぞれ、水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり。R3、R4はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。(A3)アセタール類の具体例としては、アセトアルデヒド=ジエチルアセタール(ジエトキシエタン)(Acetaldehydo diethyl acetal;CH3CH-(OCH2CH3)2)、ジエトキシメタン(Diethoxy methane;CH2-(OCH2CH3)2)等が挙げられる。
【0022】
前記(B)の炭化水素系表面改質剤としては、例えば、(B1)ジケトン類、(B2)ジケト酸エステル、(B3)ジカルボン酸ジエステル類が好ましい。前記(B1)〜(B3)は、それぞれ、総炭素数5〜10のものが好ましい。
【0023】
前記(B1)ジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン(acetyl acetone;CH3COCH2COCH3)が好ましい。また、前記(B2)ジケト酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル(Methy acetoacetate;CH3COCH2COOCH3)が好ましい。また、前記(B3)ジカルボン酸ジエステル類としては、マロン酸ジメチル(Dimethyl malonate;CH2(COOCH3)2)が好ましい。
【0024】
表面改質剤には、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコールを添加してもよい。アルコールを添加することにより炎色を変えることができ、アルコールの添加量は、表面改質剤とアルコールの合計質量に対して0.01〜30質量%であるのが燃焼の良否判定の点で好ましい。
【0025】
前記酸素含有ガスとしては、空気、酸素等が挙げられる。前記可燃性ガスとしては、例えば、水素ガス、硫化水素ガス、一酸化炭素、メタン、アセチレン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ジエチルエ−テル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン等の炭化水素ガス、及びジボラン等のホウ素化合物等を用いることができる。これらの可燃性ガスのうち、プロパンガスが好ましい。
【0026】
表面改質を行う対象物(被処理材)としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等のゴム類、各種ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等の高分子材料、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、ニッケル、クロム、タングステン、金、銅、鉄、銀、亜鉛、スズ、鉛等の金属材料、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、石灰、ゼオライト、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、鉛、半田、ガラス、セラミック等の材料等が挙げられる。表面改質を行う対象物は、一種の材料から構成されていてもよいし、二種以上の材料から構成されていてもよい。
【0027】
表面改質を行う対象物の形態は、例えば、板状、シート状、フィルム状、テープ状、短冊状、パネル状、紐状などの平面構造を有するものであってもよく、筒状、柱状、球状、ブロック状、チューブ状、パイプ状、凹凸状、膜状、繊維状、織物状、束状等の三次元構造を有するものであってもよく、これらに限定されない。
【0028】
また、表面改質を行う対象物の形態は、上記に例示した構造のものと、金属部品、セラミック部品、ガラス部品、紙部品、木部品等とを組み合わせた複合構造体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】表面改質装置1の全体構成を表す説明図である。
【図2】気化装置3の構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
1.表面改質装置1の構成
表面改質装置1の構成を図1、及び図2に基づいて説明する。図1は、表面改質装置1の全体構成を表す説明図である。図2は、後述する気化装置3の構成を表す平面図である。
【0031】
表面改質装置1は、気化装置3と、燃焼用圧縮空気供給部(酸素含有ガス供給手段)5と、混合器(混合ガス生成手段)7と、バーナー(噴射手段)9と、加温装置11とを備える。
上記気化装置3は、外側容器13と、その中に収容された第1の内側容器15、及び第2の内側容器17を備える。第1の内側容器15における一方の端には、外部から供給される圧縮空気を取り入れる、圧縮空気注入配管(媒体ガス供給手段)19が接続している。また、第1の内側容器15と第2の内側容器17とは、連結配管21により連通している。また、第2の内側容器17には、外部から、出口配管23が接続している。よって、圧縮空気注入配管19から、順に、第1の内側容器15、連結配管21、第2の内側容器17、及び出口配管23を通るガスの流路が形成されている。なお、このガスの流路のうち、第1の内側容器15の部分は、流路Aに該当する。また、上述したガスの流路のうち、第2の内側容器17の部分は、流路Bに該当する。
【0032】
第1の内側容器15は、圧縮空気注入配管19と連結配管21以外では、密閉された容器である。また、第2の内側容器17は、連結配管21と出口配管23以外では、密閉された容器である。第1の内側容器15、及び第2の内側容器17の材質は、金属、セラミック、プラスチック等から適宜選択できるが、熱伝導性が良いCuやAlが好適である。
【0033】
外側容器13内には、オイル25が満たされ、第1の内側容器15、第2の内側容器17、及び連結配管21は、オイル25の中に浸漬されている。気化装置3は、図示しない加熱装置によりオイル25を加熱することができる。また、気化装置3は、図示しない温度検出手段によりオイル25の温度を検出し、その検出結果に応じて、上述した加熱装置の動作を調整できる。よって、気化装置3は、オイル25の温度を一定の温度、又は一定の温度範囲に維持することができる。オイル25は、その中に浸漬されている第1の内側容器15、第2の内側容器17、及び連結配管21を加温する。なお、オイル25、及びその温度を維持する上述した機構は、媒体ガス温度調整手段、流路A加熱/冷却手段、及び流路B加熱/冷却手段に該当する。
【0034】
第1の内側容器15内には、複数の邪魔板(仕切板)27−1〜27−7が設けられている。邪魔板27−1〜27−7は、圧縮空気注入配管19の側から、連結配管21の方向へ、その番号の順番で並んでいる。邪魔板27−1、27−3、27−5、27−7は、第1の内側容器15における一方の側面15aに接しており、反対側の側面15bとの間には、隙間を有している。また、邪魔板27−2、27−4、27−6は、側面15aとの間には隙間を有しており、側面15bには接している。なお、邪魔板27−1〜27−7は、上下方向については、第1の内側容器15の底15cから、天井15dまで達している。上述した邪魔板27−1〜27−7の配置により、第1の内側容器15内に、図2の実線矢印で示すように、蛇行した(ジグザグの)ガスの流路(流路A)が形成される。邪魔板27−1〜27−7の材質は、金属、セラミック、プラスチック等から適宜選択できるが、熱伝導性が良いCuやAlが好適である。
【0035】
第2の内側容器17内の下部には、液状の表面改質剤29を保持する薬液槽(表面改質剤保持手段)31が設置されている。薬液槽31の上方は開放されており、保持された液状の表面改質剤29は、第2の内側容器17内のガスに接触する。また、第2の内側容器17内のうち、薬液槽31以外の部分(薬液槽31よりも上方)には、複数の邪魔板(仕切板)33−1〜33−7が設けられている。邪魔板33−1〜33−7は、邪魔板27−1〜27−7と同様に配置され、その結果、第2の内側容器17内に、図2の点線矢印で示すように、蛇行した(ジグザグの)流路(流路B)が形成される。
【0036】
また、気化装置3は、外側容器13の外側に、液状の表面改質剤29を収容した薬液タンク35を備える。薬液タンク35は、補給配管37を介して、第2の内側容器17内の薬液槽31に接続している。補給配管37は、切替バルブ39により、開閉制御される。切替バルブ39の開閉は、薬液槽31における液状の表面改質剤29の液面高さを検出する液面検出センサ41の検出結果により制御される。すなわち、液面が低くなれば、切替バルブ39は開となり、薬液タンク35から薬液槽31に液状の表面改質剤29が補給される。また、液面が高くなれば、切替バルブ39は閉となり、薬液タンク35から薬液槽31への補給は停止する。よって、薬液槽31における液状の表面改質剤29の液面高さは一定に維持される。薬液タンク35内の空間部35aと第2の内側容器17内とは、配管43により連通している。そのことにより、薬液タンク35内が負圧にならず、薬液タンク35から薬液槽31へスムーズに液状の表面改質剤29を補給できる。
また、配管43の途中には、手動又は自動で開閉できるバルブ44を備えている。バルブ44が開の場合は、上記のように、薬液タンク35内の空間部35aと第2の内側容器17内とを連通することができる。一方、バルブ44が閉の場合は、仮に、薬液タンク35内の液面が高くなり、配管43の口にまで達しても、表面改質剤29が配管43を通って第2の内側容器17に流入してしまうことを防止できる。
【0037】
上記燃焼用圧縮空気供給部5は、外部から取り入れた圧縮空気を、バーナー9に供給する空気配管45を備える。空気配管45は、螺旋状に巻かれた螺旋部45aを備えており、その螺旋部45aは、後述するように、加温装置11により加温される。
【0038】
上記加温装置11は、燃焼用圧縮空気供給部5の螺旋部45aを収容する空気加温槽47と、バーナー9の熱で空気を熱し、その熱せられた空気を空気加温槽47内に供給する収熱ブロアー50とを備える。空気加温槽47内に供給された、熱せられた空気は、空気加温槽47内で螺旋部45aを加温し、空気加温槽47の出口47aから排出される。また、加温装置11は、図1では省略しているが、燃焼用圧縮空気供給部5の螺旋部45aを加温する方法と同様に、出口配管23も、バーナー9の熱で加温している。
【0039】
上記混合器7は、気化装置3の出口配管23と、空気配管45と、外部から供給された可燃性ガス(プロパンガス)を取り入れる可燃性ガス注入配管(可燃性ガス供給手段)49とに接続している。混合器7は、気化装置3の出口配管23から供給されたガス(表面改質剤を含む圧縮空気)と、空気配管45から供給された空気と、可燃性ガス注入配管49から供給された可燃性ガスとを、所定の割合で混合し、その混合ガスをバーナー9に送り出す。
【0040】
バーナー9は、噴射を行う面である噴射面9aに、第1の噴射部51と、第2の噴射部53とを備えている。噴射面9aは、円形の形状を有しており、第1の噴射部51は、その円形の中心部に位置する。また、第2の噴射部53は、噴射面9aのうち、第1の噴射部51の外周を包囲する円環状に設けられている。第1の噴射部51には、混合器7で混合された混合ガスが供給される。第1の噴射部51は、点火プラグによってその混合ガスに着火し、混合ガスを燃焼させて火炎を噴射する。また、第2の噴射部53には、外部から、可燃性ガスと圧縮空気との2成分混合ガスが供給される。第2の噴射部53は、点火プラグによってその2成分混合ガスに着火し、2成分混合ガスを燃焼させて火炎を噴射する。第1の噴射部51から噴射される火炎は、第2の噴射部53から噴射される火炎で包囲される。その結果、第1の噴射部51から噴射される火炎は、外部の酸素に接触し難くなる。
【0041】
2.表面改質処理
表面改質装置1を用いて実行する表面改質処理を説明する。予め、薬液槽31に、液状の表面改質剤を、所定の液面高さとなるように供給しておく。また、オイル25の温度を一定の温度に加温しておく。オイル25の温度は、第1の内側容器15の出口における圧縮空気の温度が、所定の温度T(例えば、25℃、30℃等)となるように設定する。なお、オイル25の最適な設定温度は、オイル25の温度を数種類変えながら、第1の内側容器15の出口における圧縮空気の温度を測定する実験を行うことで容易に決めることができる。
【0042】
浄化・除湿した圧縮空気を、気化装置3の圧縮空気注入配管19に注入する。圧縮空気は、圧縮空気注入配管19から、順に、第1の内側容器15、連結配管21、第2の内側容器17、及び出口配管23を通る。圧縮空気は、第1の内側容器15において、オイル25によって加温され、圧縮空気の温度は、第1の内側容器15の出口では、所定の温度Tに調整される。なお、第1の内側容器15内における圧縮空気の流路は、邪魔板27−1〜27−7によって蛇行し、長くなっているので、第1の内側容器15の出口までに、圧縮空気の温度を所定の温度Tに到達させることができる。なお、圧縮空気の温度は、出口配管23まで、所定の温度に維持される。
【0043】
圧縮空気は、第2の内側容器17において、薬液槽31に保持された液状の表面改質剤と接触し、表面改質剤の蒸気を、所定の温度Tにおける飽和蒸気量だけ含むようになる。第2の内側容器17内における圧縮空気の流路は、邪魔板33−1〜33−7によって蛇行し、長くなっているとともに、蛇行することで乱流が発生するので、第2の内側容器17を出るまでに、圧縮空気に含まれる表面改質剤の蒸気量は、所定の温度Tにおける飽和蒸気量に達する。第2の内側容器17内においても、圧縮空気の温度は、オイル25により、所定の温度Tに維持される。また、薬液槽31に保持された液状の表面改質剤も、オイル25により加温され、気化し易くなっている。
【0044】
表面改質剤の蒸気を含んだ圧縮空気は、出口配管23により、混合器7に送られる。なお、出口配管23は、上述したように、バーナー9の熱で加温されており、出口配管23を通る圧縮空気の温度は所定の温度T以上に維持される。
【0045】
一方、混合器7には、燃焼用圧縮空気供給部5の空気配管45から空気が供給されるとともに、可燃性ガス注入配管49から可燃性ガスが供給される。空気配管45は、上述したように、加温装置11により加温されており、空気配管45から供給される空気の温度は、所定の温度T以上となっている。出口配管23から供給された、表面改質剤の蒸気を含んだ圧縮空気と、可燃性ガス注入配管49から供給された可燃性ガスと、空気配管45から供給された空気とは、混合器7で混合され、その混合ガスがバーナー9の第1の噴射部51に供給される。また、バーナー9の第2の噴射部53には、外部から、可燃性ガスと圧縮空気との2成分混合ガスが供給される。バーナー9は、第1の噴射部51において、供給された混合ガスを燃焼し、その燃焼によって生じる火炎を、表面改質対象物(被処理材)の表面に噴射する。また、バーナー9は、第2の噴射部53において、可燃性ガスと圧縮空気との2成分混合ガスを燃焼し、第1の噴射部51からの火炎を外側から包囲するように、火炎を噴射する。
【0046】
3.表面改質装置1及び気化装置3が奏する効果
(1)表面改質装置1の気化装置3は、圧縮空気の温度を所定の温度Tに調整しておき、その圧縮空気中に、表面改質剤の蒸気を、所定の温度Tにおける飽和蒸気量だけ含ませる。そのため、気候条件等の条件が変化しても、気化装置3は、表面改質剤の蒸気を常に一定の量だけ含んだ圧縮空気を生成することができる。そのことにより、バーナー9で燃焼させる混合ガスにおける表面改質剤含有量を、常に一定に維持することができる。その結果、表面改質処理後における表明改質対象物の表面状態(親水性)を常に安定させることができる。
(2)表面改質装置1は、加温装置11により、出口配管23を加温する。そのことにより、出口配管23内の圧縮空気の温度が低下しないので、出口配管23内で表面改質剤の蒸気が結露してしまうことを防止できる。
【0047】
また、表面改質装置1は、加温装置11により、燃焼用圧縮空気供給部5を加温する。そのことにより、混合器7に冷たい圧縮空気が流入しなくなるので、混合器7で生じる混合ガスの温度低下を防止できる。その結果、混合ガスにおいて表面改質剤の蒸気が結露してしまうことを防止できる。
(3)表面改質装置1は、バーナー9で生じる熱を、出口配管23や燃焼用圧縮空気供給部5の加温に利用する。そのことにより、加温に要するエネルギーコストを低減できる。
【0048】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、気化装置3において、第1の内側容器15、第2の内側容器17、及び連結配管21を加温する手段は、オイル25には限定されず、公知の加温手段(例えば、ホットプレートや浴湯を用いる加温手段等)を適宜用いることができる。
【0049】
また、第1の内側容器15、及び第2の内側容器17における邪魔板の配置は、前記実施形態における配置には限定されず、種々の配置を適用することができる。例えば、邪魔板は、互いに平行に配置するのではなく、稲妻型(V字型)に配置してもよい。また、邪魔板の形状も、前記実施形態のものには限定されず、適宜設定できる。
【0050】
また、オイル25の加熱に、バーナー9で生じる熱を利用してもよい。
また、第1の内側容器15と第2の内側容器17は、一つの容器にまとめてもよい。
また、気化装置3は、直列に接続された3以上の内側容器を備えていてもよい。その3以上の内側容器のうち、一部を、圧縮空気の温度調整に用い、残りを、圧縮空気と表面改質剤の蒸気との混合に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・表面改質装置、3・・・気化装置、5・・・燃焼用圧縮空気供給部、7・・・混合器、
9・・・バーナー、9a・・・噴射面、11・・・加温装置、13・・・外側容器、
15・・・第1の内側容器、15a、15b・・・側面、17・・・第2の内側容器、
15c・・・底、15d・・・天井、19・・・圧縮空気注入配管、21・・・連結配管、
23・・・出口配管、25・・・オイル、27−1〜27−7・・・邪魔板、
29・・・表面改質剤、31・・・薬液槽、33−1〜33−7・・・邪魔板、
35・・・薬液タンク、35a・・・空間部、37・・・補給配管、39・・・切替バルブ、
41・・・液面検出センサ、43・・・配管、45・・・空気配管、45a・・・螺旋部、
47・・・空気加温槽、47a・・・出口、49・・・可燃性ガス注入配管、
50・・・収熱ブロアー、51・・・第1の噴射部、53・・・第2の噴射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体ガスを供給する媒体ガス供給手段と、
前記媒体ガスの温度を所定の温度に調整する媒体ガス温度調整手段と、
前記所定の温度となった前記媒体ガスと液状の表面改質剤とを接触させ、前記媒体ガス中に、前記表面改質剤の蒸気を、前記所定の温度における飽和蒸気量だけ含む表面改質剤含有ガスを生成する表面改質剤含有ガス生成手段と、
を備えることを特徴とする液状表面改質剤の気化装置。
【請求項2】
前記媒体ガス温度調整手段は、
前記媒体ガスの流路Aと、
前記流路Aを加熱又は冷却する流路A加熱/冷却手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の液状表面改質剤の気化装置。
【請求項3】
前記混合ガス生成手段は、
前記媒体ガスの流路Bと、
前記流路Bの内部において、液状の前記表面改質剤を保持する表面改質剤保持手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の液状表面改質剤の気化装置。
【請求項4】
前記流路Bを流れる前記媒体ガスの温度が、前記所定の温度に維持されるように、前記流路Bを加熱又は冷却する流路B加熱/冷却手段を備えることを特徴とする請求項3記載の液状表面改質剤の気化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された液状表面改質剤の気化装置と、
酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、
可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給手段と、
前記気化装置で生成した前記表面改質剤含有ガス、前記酸素含有ガス、及び前記可燃性ガスを含む混合ガスを生成する混合ガス生成手段と、
前記混合ガスを燃焼させた火炎を噴射する噴射手段と、
を備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項6】
前記噴射手段で生成する熱を用いて、前記表面改質剤含有ガス、及び/又は前記酸素含有ガスを加温する加温手段を備えることを特徴とする請求項5記載の表面改質装置。

【図1】
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【図2】
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