説明

液面検知装置

【課題】簡易な構成で容易に静電気の帯電を検出し、検体液面の誤検知を防止できる液面検知装置を提供すること。
【解決手段】容器7に保持された検体8を分注する導体プローブ5と容器7の近傍に配置された金属板9とに電気信号V1を印加し、導体プローブ5と金属板9との間の静電容量の変化を測定し、静電容量の変化をもとに検体8の液面検知を行う液面検知装置1において、導体プローブ5に印加された電気信号V1が零電位となるタイミングを検出するタイミング検出部と、タイミング検出部が検出したタイミングによって導体プローブ5の電位を測定し、測定された導体プローブ5の電位が所定値を超えた場合、検体8の液面検知の動作を停止させる制御を行う液面検知制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に保持された検体を分注する導体プローブと前記容器の近傍に配置された金属とに交流電圧を印加し、前記導体プローブと前記金属との間の静電容量の変化を測定し、前記静電容量の変化をもとに前記検体の液面検知を行う液面検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液、尿等の検体を化学的に分析する分析装置は、検体の分注を正確に行うため検体液面を検知する液面検知装置を備えている。液面検知装置は、検体を分注する導体プローブと検体を保持する容器の近傍に配置された金属板とに交流電圧を印加し、導体プローブと金属板との間の静電容量の変化をもとに検体液面を検知する。しかし、この静電容量の変化は微小であり、静電気等の外乱によって容易に変化し、検体液面を誤検知し易い。そこで、静電気により帯電した導体プローブを除電する技術が開示されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−4640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導体プローブが帯電する場合として、検体を収容する容器が帯電する場合、検体自体が帯電する場合、帯電した物体が導体プローブに近接する場合、帯電した操作者が装置に接触することによって導体プローブが帯電する場合等がある。これらの場合に対して除電ブラシ等を用いた除電は、一部には有効であるが、全てには有効ではない。そのため、金属シ−ルドで導体プローブを被覆する等の帯電防止対策が必要となり、導体プローブの構造が複雑化するとともに導体プローブの製造コストがアップするという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で容易に静電気の帯電を検出し、検体液面の誤検知を防止できる液面検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる液面検知装置は、容器に保持された検体を分注する導体プローブと前記容器の近傍に配置された金属とに交流電圧を印加し、前記導体プローブと前記金属との間の静電容量の変化を測定し、前記静電容量の変化をもとに前記検体の液面検知を行う液面検知装置において、前記導体プローブに印加された前記交流電圧が零電位となるタイミングを検出するタイミング検出手段と、前記タイミング検出手段が検出したタイミングによって前記導体プローブの電位を測定し、測定された前記導体プローブの電位が所定値を超えた場合、前記検体の液面検知の動作を停止させる制御を行う液面検知制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる液面検知装置は、上記の発明において、容器に保持された検体を分注する導体プローブと前記容器の近傍に配置された金属とに交流電圧を印加し、前記導体プローブと前記金属との間の静電容量の変化を測定し、前記静電容量の変化をもとに前記検体の液面検知を行う液面検知装置において、前記導体プローブに印加される前記交流電圧の電位と前記導体プローブの電位とを乗算する乗算手段と、前記乗算手段が乗算した乗算値が零となるタイミングによって前記導体プローブの電位を測定し、測定された前記導体プローブの電位が所定値を超えた場合、前記検体の液面検知の動作を停止させる制御を行う液面検知制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる液面検知装置は、導体プローブに印加された交流電圧が零電位となるタイミングによって導体プローブの電位を測定して静電気の帯電を確実に検出し、検体液面の誤検知を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる液面検知装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、この発明にかかる液面検知装置1の概要構成を示すブロック図である。図1に示すように、この液面検知装置1は、制御部2と、サンプリング部3と、駆動部4と、導体プローブ5と、ホルダ6と、検体7を保持する容器8と、金属板9とを有する。
【0011】
制御部2は、交流電圧である電気信号V1を導体プローブ5と接地された金属板9とに印加するとともに導体プローブ5の電位である電気信号Vpを入力し、導体プローブ5の帯電の有無を検出する。
【0012】
導体プローブ5の帯電が検出されない場合、制御部2は、サンプリング部3に制御信号SSを出力し、サンプリング部3は、この制御信号SSの制御のもと、駆動部4を駆動してホルダ6に保持された導体プローブ5を下降させ、液面検知を実行する。一方、導体プローブ5の帯電が検出された場合、制御部2は、液面検知を停止する。つまり、この液面検知装置1は、導体プローブ5が帯電している場合は、液面検知を実行せずに液面の誤検知を未然に防止するようにしている。
【0013】
つぎに、制御部2の動作について図2を参照して説明する。図2は、制御部2の概要構成を示すブロック図である。図2に示すように、この制御部2は、交流電圧である電気信号V1を出力する交流発生部20と、電気信号V1の電位が0Vとなるタイミングを検出してタイミング信号STを出力するタイミング検出部21と、タイミング信号STを入力して導体プローブ5の電位である電気信号Vpを測定し、導体プローブ5の帯電を検出するとともに検出信号SN,SYを出力する液面検知制御部22と、電気信号Vpを入力するとともに検出信号SN,SYを入力し、液面検知を実行する液面検知部23とを有する。なお、液面検知制御部22は、静電気による帯電の有無を判断する静電気検出部220を有する。
【0014】
交流発生部20は、所定の周波数を有する電気信号V1を導体プローブ5と金属板9とタイミング検出部21とに出力する。タイミング検出部21は、電気信号V1を入力し、電気信号V1の電位が0Vとなるタイミングを検出し、タイミング信号STを液面検知制御部22に出力する。
【0015】
液面検知制御部22の静電気検出部220は、導体プローブ5から電気信号Vpを入力するとともにタイミング信号STを入力し、タイミング信号STを入力したタイミングにおける電気信号Vpを測定し、電気信号Vpが所定の閾値Vthを超えているか否かを判断し、帯電を検出する。
【0016】
静電気検出部220は、電気信号Vpが閾値Vth以下と判断し場合、導体プローブ5の帯電を検出せず、液面検知制御部22は、液面検知部23に検出信号SNを出力する。静電気検出部220は、電気信号Vpが閾値Vthを超えていると判断した場合、導体プローブ5の帯電を検出し、液面検知制御部22は、液面検地部23に検出信号SYを出力する。
【0017】
液面検知部23は、検出信号SNを入力した場合、電気信号Vpをもとに液面検知を実行し、サンプリング部3に制御信号SSを出力し、検体8の液面検知を実行する。一方、検出信号SYを入力した場合、液面検知部23は、液面検知を停止する。
【0018】
ここで、図3および図4を参照して導体プローブ5に印加される電圧である電気信号V1と導体プローブ5の電位である電気信号Vpとの関係について説明する。図3は、導体プローブ5が帯電していない場合を示し、図4は、導体プローブ5が帯電している場合を示す。
【0019】
図3に示すように、導体プローブ5が帯電していない場合、電気信号Vpは、電気信号V1に対して周波数が同期し、電気信号V1の電位が0Vになる時刻T1,T2において、電位が0V、あるいは0V近傍の値となる。
【0020】
一方、図4に示すように、導体プローブ5が帯電している場合、導体プローブ5の電位は、静電気によって浮遊し、電気信号Vpは、電気信号V1に対して同期しない。その結果、時刻T1,T2において、電気信号Vpは、0V、あるいは0V近傍の値とならず、所定の閾値Vthを超えた値となる。
【0021】
したがって、電気信号V1の電位が0Vとなるタイミングと同期したタイミングによって電気信号Vpの電位を測定することによって導体プローブ5の帯電の有無を検出できる。液面検知制御部22は、導体プローブ5の帯電を検出しない場合、検出信号SNを出力し、液面検知を実行させ、導体プローブ5の帯電を検出した場合、検出信号SYを出力し、液面検知を停止させる。
【0022】
ここで、図5に示すフローチャートを参照して、制御部2が導体プローブ5の帯電を検出し、液面検知の動作を制御する動作手順について説明する。まず、交流発生部20は、電気信号V1を出力し(ステップS101)、タイミング検出部21は、電圧信号V1の電位が0となるタイミングを検出し、タイミング信号STを出力する(ステップS102)。
【0023】
液面検知制御部22の静電気検出部220は、タイミング信号STを入力したタイミングによって電気信号Vpを測定し、電気信号Vpが閾値Vth1以下であるか否かを判断する(ステップS103)。電圧信号Vpが閾値Vth以下と判断した場合(ステップS103,YES)、帯電を検出せず、液面検知制御部2は、検出信号SNを液面検知部23に出力する(ステップS104)。液面検知部23は、検出信号SNを入力した場合、電気信号Vpをもとに液面検知を実行する(ステップS105)。
【0024】
一方、電圧信号Vpが閾値Vthを超えていると判断した場合(ステップS103,NO)、静電気検出部220は、帯電を検出し、液面検知制御部22は、検出信号SYを液面検知部23に出力する(ステップS106)。液面検知部23は、検出信号SYを入力した場合、液面検知を停止する(ステップS107)。
【0025】
この実施の形態1では、交流電圧である電気信号V1を導体プローブ5に印加し、その後、電気信号V1が0電位となるタイミングによって導体プローブ5の電位である電気信号Vpを測定して所定の閾値Vthとの大小関係を判断し、導体プローブ5の帯電を確実に検出できる。
【0026】
また、導体プローブ5の帯電を確実に検出できるとともに液面検知を停止でき、液面の誤検知を防止できる。帯電の検出が確実に行えると、帯電要因に関わらず、帯電した時のみ除電を実施すればよく、複雑な構造で高価な導体プローブを用いる必要がない。
【0027】
なお、この実施の形態1では、電気信号V1として正弦波信号を用いていたが、矩形波信号を用いてもよい。また、帯電を検出した場合、制御部2は、液面検知を停止するのみならず、帯電の発生を表示するようにしてもよいし、導体プローブ5に対する除電を実施する指示出力を行うようにしてもよい。
【0028】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2について説明する。実施の形態1では、タイミング検出部22が電気信号V1の電位が0Vとなるタイミングを検出していたが、この実施の形態2では、電気信号V1と電気信号Vpとを乗算し、この乗算値が0となるタイミングによって電気信号V1の電位が0Vとなるタイミングを検出している。
【0029】
図6は、この実施の形態2にかかる液面検知装置100の概要構成を示すブロック図である。図6に示すように、この液面検知装置100は、実施の形態1で示した制御部2に代えて制御部2Aを備えている。その他の構成は、実施の形態1で説明した液面検知装置1と同一であり、同一の構成部分には同一の符号を付している。
【0030】
図7は、制御部2Aの概要構成を示すブロック図である。図7に示すように、制御部2Aは、実施の形態1で示したタイミング検出部21に代えて乗算器24を配置し、液面検知制御部22に代えて液面検知制御部22Aを配置している。液面検知制御部22Aは、静電気検出部220Aを有している。なお、その他の構成は、実施の形態1で説明した制御部2と同一であり、同一の構成部分には同一の符号を付している。
【0031】
交流発生部20は、導体プローブ5と金属板10と乗算器24とに交流電圧である電気信号V1を出力し、乗算器24は、導体プローブ5から入力した電気信号Vpと導体プローブ5の電位である電気信号Vpとを乗算し、乗算値を乗算信号SJとして液面検知制御部22Aに出力する。
【0032】
液面検知制御部22Aの静電気検出部220Aは、乗算信号SJと電気信号Vpとをもとに導体プローブ5の帯電を検出する。帯電の検出がない場合、液面検知制御部22Aは、検出信号SNを液面検地部23に出力し、帯電の検出がある場合、検出信号SYを液面検地部23に出力する。液面検知部23は、検出信号SNを入力した場合、電気信号Vpをもとに液面検知を実行し、検出信号SYを入力した場合、液面検知を停止する。
【0033】
上述したように、乗算器24は、電気信号V1と電気信号Vpとを乗算し、乗算信号SJを出力する。電気信号V1は、所定の周期で0となり、電気信号Vpは、導体プローブ5が帯電していない場合、電気信号V1に同期し、所定の周期で0、あるいは0近傍となる。一方、導体プローブ5が帯電している場合、電位はプラス側に浮遊し、0電位となることはない。その結果、乗算信号SJは、導体プローブ5の帯電の有無に関わらず、電気信号V1に同期して0となる。
【0034】
液面検知制御部22Aは、乗算信号SJと電気信号Vpとを入力し、静電気検出部220Aは、乗算信号SJが0となるタイミングによって電気信号Vpの電位を測定し、電気信号Vpと所定の閾値Vthとの大小関係を判断し、帯電を検出する。
【0035】
ここで、図8に示すフローチャートを参照して、制御部2Aが導体プローブ5の帯電を検出し、液面検知の動作を制御する動作手順について説明する。まず、交流発生部20は、交流電圧である電圧信号V1を出力する(ステップS201)。つぎに、乗算器24は、電気信号V1と電気信号Vpとを乗算し、乗算値である乗算信号SJを液面検知制御部22Aに出力する(ステップS202)。液面検知制御部22Aの静電気検出部220Aは、乗算信号SJが0となるタイミングによって電気信号Vpを測定し、所定の閾値Vthとの大小関係を判断する(ステップS203)。
【0036】
静電気検出部220Aは、電気信号Vpが閾値Vth以下であると判断した場合(ステップS203,YES)、帯電を検出せず、液面検知制御部22Aは、検出信号SNを出力し(ステップS204)、液面検知部23は、電気信号Vpをもとに液面検知を実行する(ステップS205)。
【0037】
一方、静電気検出部220Aは、電気信号Vpが閾値Vthを超えていると判断した場合(ステップS203,NO)、静電気検出部220Aは、帯電を検出し、液面検知制御部22Aは、検出信号SYを出力し(ステップS206)、液面検知部23は、液面検知を停止する(ステップS207)。
【0038】
この実施の形態2では、乗算器24が出力する乗算信号SJによって電圧信号V1が電位となるタイミングを検出するようにしていた。乗算器24を用いることによって、静電気検出部22Aは、確実に電気信号V1が0電位となるタイミングを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる液面検知装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1にかかる制御部の概要構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1にかかる帯電のない場合の電気信号V1,Vpを示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1にかかる帯電がある場合の電気信号V1,Vpを示すタイミングチヤートである。
【図5】この発明の実施の形態1にかかる制御部の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2にかかる液面検知装置の概要構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2にかかる制御部の概要構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1,100 液面検知装置
2,2A 制御部
3 サンプリング部
4 駆動部
5 導体プローブ
6 ホルダ
7 容器
8 検体
9 金属板
20 交流発生部
21 タイミング検出部
22,22A 液面検知制御部
23 液面検知部
24 乗算器
220,220A 静電気検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に保持された検体を分注する導体プローブと前記容器の近傍に配置された金属とに交流電圧を印加し、前記導体プローブと前記金属との間の静電容量の変化を測定し、前記静電容量の変化をもとに前記検体の液面検知を行う液面検知装置において、
前記導体プローブに印加された前記交流電圧が零電位となるタイミングを検出するタイミング検出手段と、
前記タイミング検出手段が検出したタイミングによって前記導体プローブの電位を測定し、測定された前記導体プローブの電位が所定値を超えた場合、前記検体の液面検知の動作を停止させる制御を行う液面検知制御手段と、
を備えたことを特徴とする液面検知装置。
【請求項2】
容器に保持された検体を分注する導体プローブと前記容器の近傍に配置された金属とに交流電圧を印加し、前記導体プローブと前記金属との間の静電容量の変化を測定し、前記静電容量の変化をもとに前記検体の液面検知を行う液面検知装置において、
前記導体プローブに印加される前記交流電圧の電位と前記導体プローブの電位とを乗算する乗算手段と、
前記乗算手段が乗算した乗算値が零となるタイミングによって前記導体プローブの電位を測定し、測定された前記導体プローブの電位が所定値を超えた場合、前記検体の液面検知の動作を停止させる制御を行う液面検知制御手段と、
を備えたことを特徴とする液面検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−303961(P2007−303961A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132553(P2006−132553)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】