説明

液面測定装置

【課題】必要に応じてタンクに着脱することを可能にし、荷役作業を行うタンクにのみ液面測定装置を装着して荷役を行うことができる液面測定装置を得る。
【解決手段】液面レベルを液体に接触することなく検出するセンサ1と、検出される液面レベル信号を送信する無線送受信機3と、センサ1、無線送受信機3を駆動するための電力を供給する内蔵電源5と、密閉された内部空間にセンサ1、無線送受信機3、内蔵電源5を収納したハウジング10と、を有し、ハウジング10は、複数設けられるタンクの上部に着脱可能に設けられ、個々のタンクは、ハウジング10が装着されることによって個々のタンクの識別信号を無線送受信機3に入力するタンク情報入力部を有し、無線送受信機3は、タンクの識別信号とともに液面レベル信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として船舶のタンクに収蔵される液体のレベル面を測定する液面測定装置に関するもので、数多くのタンクを備えている船舶などであっても、少数の測定装置があれば役目を果たすことができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
タンカーなどの船舶は、原油などの貨油を収蔵するタンクのほかに、船体のバランスを調整するためのバラストタンク、エンジンの燃料を収蔵する燃料タンクなど、各種のタンクを備えており、特にタンカーは30個程度のタンクを備えている。各タンクに収蔵している液体の量は必要に応じていつでも把握することができるようにしておく必要があるため、各タンクに液面測定装置(「液面計」ともいう)が設置されている。
【0003】
船舶において液面測定装置が有用になるのは、港において荷役作業を行っているときであって、それぞれのタンクにおいて予定した量の液体を積み降ろすために、あるいは液体の収蔵量をリアルタイムに測定するために液面測定装置が使用される。そのため、従来は、船舶が備えているタンクのすべてに、常備タンク専用設備として液面測定装置が設置されている。
【0004】
船舶のタンクに設置されている液面測定装置の測定方式は様々で、垂直に設置したガイドに沿い液面に応じて上下するフロートを備えこのフロートの位置を検知するフロート式、タンクの底部に設置した圧力センサの検出信号から液面を割り出す受圧式、空気供給管の先端をタンクの底部で開口させ、この空気供給管に圧縮空気を送り込んで先端から空気を漏出させ、そのときの空気供給管内の空気圧から液面を割り出す気泡式、液面に向かって電波を送信し、液面で反射されて戻ってきた電波を受信して送信電波との時間差あるいは周波数差により液面を割り出す電波式などが知られている。
【0005】
いずれの測定方式の液面測定装置にせよ、従来は、前述のとおり船舶が備えているタンクのすべてに液面測定装置を設置している。しかるに、船舶において液面測定装置が必要になるのは、寄港地で荷役作業を行っている場合である。しかも、船舶が備えているタンクのすべてについて一斉に荷役を行うわけではなく、同時に荷役を行うタンクは3個か4個であり、これらのタンクの荷役が終了すると別のタンクに荷役を行っている。したがって、液面測定装置は、荷役を行うときに使用するためにタンクに設置されているのであって、それ以外の航海中を含めた大半の時間は不使用状態にある。さらに、液面測定装置は、電源の供給と計測データの伝送が必要であり、そのためのケーブルを船舶の甲板上に引き回すことになるため、これらケーブルを保護することと防爆対策のために金属のパイプに収納している。しかるに、広い面積の船舶の甲板上にこのようなケーブルを敷設するためのコストは液面測定装置自体のコストを上回っている。また、液面測定装置が設置されている船舶のタンクの環境条件は劣悪といっても過言ではなく、かかる条件下に設置されている液面測定装置は寿命が短く、正常な動作を保障するためには常時比較的短い周期で定期点検を行う必要がある。
【0006】
いま、仮に、比較的軽量で楽に持ち運ぶことができ、必要に応じてタンクに着脱することができる液面測定装置があるとすれば、荷役作業中のタンクにのみ液面測定装置を装着することによって荷役を行えばよい。そのタンクの荷役が終了すれば、そのタンクから液面測定装置を取り外し、この液面測定装置を次に荷役を行うタンクに装着してこのタンクの液面を計測しながら荷役を行えばよい。したがって、例えば3〜4個の液面測定装置を使い回しながら荷役を行うこともできる。また、すべてのタンクに液面測定装置を設置する必要はないし、高いコストをかけて電源ラインや信号ライン用のケーブルを敷設する必要はなく、そのための配管工事も必要なくなる。その結果として、液面測定装置にかけるコストを大幅に低減することができ、また、不使用時は液面測定装置を環境の良い場所に保存することによって液面測定装置の寿命を延ばすことができる。さらに、メンテナンス要員が船舶まで出掛けていかなくても、液面測定装置を工場に送ってメンテナンスを行うことができる、など、多くの効果を期待できる。
【0007】
そこで、本発明者は、比較的軽量で楽に持ち運ぶことができ、必要に応じてタンクに着脱することができる液面測定装置の開発に着手した。かかる液面測定装置を実現するためには、揮発性の液体を収蔵するタンクを想定して防爆機能を備えていること、個々のタンクに関する測定データを識別することができること、個々のタンクからの測定データを簡便にコントロールルームなどに向けて送信できること、などの技術的な課題を解決する必要がある。
【0008】
上に述べたような技術的課題を解決できる可能性のある技術要素を記載した文献として以下のものがある。
特許文献1には、無線送信部を有する液面計を各タンクに設け、互いに乱数系列の異なる乱数発生手段により生成されるタイミングで自己の識別符号および液面レベル信号を含む送信信号を複数個送信する送信部を設け、すべてのタンクの液面計の送信部からの送信電波の搬送波周波数を同一とし、監視所に設けられている一つの受信機に、受信信号が正しい信号か否かをチェックする手段と、正しい信号であればその信号からタンクと液面レベル信号を認識する手段とを設けた無線式液面計信号伝送装置が記載されている。
【0009】
特許文献2には、外部より配管内に光エネルギーを供給するための光ファイバーケーブルと、光エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を供給する太陽電池と、この太陽電池から電力を供給されて動作する電子機器と、上記配管内に形成したガス流路と、このガス流路から隔絶された上記電子機器、太陽電池を収容する部屋と、を備えた電源供給装置が記載されている。
【0010】
特許文献3には、液体貯蔵タンクへの単独荷卸しに必要な機器(例えば、液量指示計など)を収納した単独荷卸し用関連機器収納ボックスであって、機器の電源を、ボックス本体またはその周辺に設置した太陽電池またはその周辺に設置した風力発電機としたものが記載されている。そして、液面計からの信号を無線で受信する液量指示計をボックスに内蔵することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−43000号公報
【特許文献2】特開平9−107643号公報
【特許文献3】特開2001−206500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1乃至3には、前述のように、液面計による測定データを無線で例えばコントロールルームに送信する技術、防爆のために光エネルギーを伝達しこれを電気エネルギーに変換してこれを電源として供給する技術、複数の液面計から送信される液面レベル信号を一つの受信機で受信して複数のタンクの液面レベルを一括して監視する技術が記載されている。
【0013】
しかしながら、太陽電池を使用して光エネルギーを電力に変換し、あるいは風力発電機によって電力を得たとしても、従来の技術思想によれば、液面測定装置本体と電源とをケーブルで結ぶ必要がある。したがって、仮に本願発明が目指しているように、数台の液面測定装置を移動させながら全タンクの液面を測定するようにしたとしても、電源ケーブルや信号ケーブルを無くすことはできない。また、特許文献1乃至3には、必要に応じてタンクに着脱することができる液面測定装置に関しては何ら記載がなく、何れの特許文献記載の発明も、測定装置ないしはセンサがタンクなどに作り付けられている。したがって、特許文献1乃至3に記載されているような技術思想によれば、従来から行われているように、個々のタンクにそれぞれ液面測定装置を設置する必要があり、液面測定装置自体の設置コストの増大、ケーブルの配線や配管などのコストの増大、メンテナンスコストの増大、その他、既に述べたような問題点がある。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を解消すること、すなわち、配管工事を必要とせず、比較的軽量で楽に持ち運ぶことができ、必要に応じてタンクに着脱することを可能にすることにより、荷役作業を行うタンクにのみ液面測定装置を装着して荷役を行い、そのタンクの荷役が終了すれば、そのタンクから液面測定装置を取り外し、この液面測定装置を次に荷役を行うタンクに装着してこのタンクの液面を計測しながら荷役を行うことを可能にすること、また、各タンクの液面測定情報を一括して集計することを可能にした液面測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、液体を収蔵するタンクに装着して収蔵されている液体の液面レベルを測定する液面測定装置であって、上記液面レベルを上記液体に接触することなく検出するセンサと、このセンサによって検出される液面レベル信号を外部に送信する無線送受信機と、上記センサおよび無線送受信機にこれらを駆動するための電力を供給する内蔵電源と、密閉された内部空間に上記センサ、無線送受信機および内蔵電源を収納したハウジングと、を有し、上記ハウジングは、複数設けられる上記タンクの上部に着脱可能に設けられ、個々の上記タンクは、上記ハウジングが装着されることによって個々のタンクの識別信号を上記無線送受信機に入力するタンク情報入力部を有し、上記無線送受信機は、上記タンクの識別信号とともに上記液面レベル信号を送信することを最も主要な特徴とする。
【0016】
内蔵電源は二次電池とし、電力中継部を通じて外部電源から充電されるようにするとよい。
上記電力中継部はトランスで構成し、トランスのコアによる磁気結合によって交流外部電源からハウジング内に電力が中継されるように構成し、ハウジング内には、中継された交流電源を直流に変換して二次電池を充電する充電回路を設けるとよい。
上記トランスのコアの一部はハウジング側に、トランスのコアの他の一部は充電装置側に設け、タンクから取り外した上記ハウジングを上記充電装置に装着することにより、上記トランスのコアの一部とトランスのコアの他の一部が磁気結合するように構成するとよい。
内蔵電源からセンサおよび無線送受信機に至る電源供給回路に、過剰な電圧および電流を抑制するバリア回路を設けるとよい。
【0017】
ハウジングのタンクへの装着部とこの装着部を装着する上記タンクの受け部にはフランジを設け、双方のフランジの周囲を締めつけて上記双方のフランジを互いに密着させる箍(「たが」)を設けるとよい。
ハウジングを装着するタンクの受け部には、タンクの内部空間を密閉する防護板を固定するとよい。
防護板は電波を透過させる材質で構成し、センサは電波式液面計とするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、すべてのタンクに液面測定装置を設置する必要はなく、例えば3〜4個の液面測定装置を使い回しながら荷役を行うことができる。その結果として、液面測定装置にかけるコストを大幅に低減することができ、不使用時は液面測定装置を環境の良い場所に保存することによって液面測定装置の寿命を延ばすことができる。また、メンテナンス要員が船舶まで出かけていかなくても、液面測定装置を工場に送ってメンテナンスを行うことができ、メンテナンス時の校正の精度を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る液面測定装置の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】上記実施例に組み込む電気回路の例を示す回路図である。
【図3】本発明に係る液面測定装置の別の実施例を示す縦断面図である。
【図4】上記実施例中の箍を示す平面図である。
【図5】本発明に係る液面測定装置のさらに別の実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る液面測定装置のさらに別の実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明に適用可能な充電装置の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る液面測定装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0021】
図1において、符号11はタンクの上部に設けられているセンサ取り付け台を示している。センサ取り付け台11は円筒形状をしていて、その上端には第1フランジ12が適宜の固着手段によってセンサ取り付け台11と一体に設けられ、さらに第1フランジ12の上には第2フランジ13が重ねて一体に設けられている。第1フランジ12と第2フランジ13には中心孔が設けられているが、第1フランジ12と第2フランジ13の間に挟み込まれて固定された防護板14によって上記中心孔が塞がれ、上記タンクの内部空間が密閉されている。
【0022】
上記防護板14は、電波を透過することができる材質、例えばフッ素樹脂などの誘電体からなる。また、防護板14は、傾斜の緩やかな円錐形状に形成されていて、後で詳細に説明する液面測定装置の平面アンテナ15の下面に円錐形の頂部を対向させて固定されている。防護板14と上記平面アンテナ15は、防護板14が平面アンテナ15の電磁界に悪影響を及ぼさないように、可能な限り相互の距離が短い距離になるように取り付けられる。上記第2フランジ13は、液面測定装置のハウジング10を受けてこれ装着することができるタンク側の受け部となっている。
【0023】
図1において符号20は、上記タンクの受け部に着脱することができる液面測定装置を示している。液面測定装置20は、下面側が解放したハウジング10を有している。ハウジング10の解放した下部には平面アンテナ15が取り付けられ、ハウジング10の上記解放面が平面アンテナ15で塞がれている。ハウジング10と平面アンテナ15で囲まれることによって密閉された空間16が形成されていて、この密閉空間16に、センサ1、内臓電池5、充電回路6、無線送受信機3が配置されている。センサ1は前記タンクに収蔵されている液体の液面レベルをこの液体に接触することなく検出するセンサであって、この実施例では、液面に向かって電波を放射し、液面で反射されて返ってくる電波の位相のずれなどに応じて液面レベルを演算する電波式液面計からなる。平面アンテナ15は上記センサ1で生成される電波を液面に向かって放射し、液面で反射されて戻ってくる電波を受信して受信信号をセンサ1に入力する。センサ1と平面アンテナ15は、これらの信号の伝送路17でつながれている。
【0024】
タンクに収蔵される液体の種類は様々である。例えば石油類を収蔵している場合、石油類が蒸発して防護板14にパラフィンが結露する場合がある。平面アンテナ15の電界強度は平面アンテナ15の中心部が最も強いため、平面アンテナ15の中心部に対向する防護板14の中心付近にパラフィンが結露すると平面アンテナ15の電界強度が弱くなり、測定精度が低下する。そこで、防護板14を円錐形としてその頂部を上向きにし、防護板14に結露するパラフィンを円錐面に沿い周辺部に向かって流下させ、パラフィンによる電波の透過障害を抑制するように工夫している。
【0025】
前記内臓電池5は、センサ1および無線送受信機3にこれらを駆動するための電力を供給するための電源である。この実施例における内臓電池は充電可能な二次電池からなり、充電回路6によって充電することができるようになっている。
【0026】
無線送受信機3は、センサ1によって検出される液面レベル信号を外部に送信するもので、無線送受信機3からはアンテナ31が引き出され、アンテナ31はさらにハウジング10の外部に引き出されて、アンテナ31から上記液面レベル信号で変調された電波が放射されるようになっている。この電波は図示されない受信機で受信され、液面レベル信号が復調されて図示されない荷役コンソールといわれる集中制御盤に入力され、上記コンソールのディスプレイに、液面計測装置で計測された各タンクの液面レベルが表示されるようになっている。
【0027】
タンクに収蔵する液体は、上記のような石油類のほかに、揮発性の高い液体、発火性の高い液体など様々な液体があることを考慮して、液面測定装置が火花や熱などを発生したとしても、火花や熱などが漏れることのないように、防爆構造にする必要がある。そこで、図示の実施例では、ハウジング10の内部空間を気密にするとともに、ハウジング10の内部空間に外部から不活性ガスを注入するためのバルブ18が設けられている。
【0028】
図1に示す液面測定装置の実施例は、荷役作業を行うタンクにのみ任意に装着することができるようにコンパクトにまとめられ、また、タンクに収蔵される液体に接触することなく液面レベルを測定することができるように、電波式の液面測定装置になっている。すなわち、一つの液面測定装置が不特定のタンクに装着される。したがって、従来の液面測定装置のように、特定のタンクには特定の液面測定装置が設置されているというものではないから、液面測定装置から液面レベルに関する情報を送信するとき、その情報がどのタンクにおける情報かを識別する識別信号も送信する必要がある。そこで、図示の実施例では、液面測定装置を装着するタンクを識別するための信号、例えばIDコード信号を送信するために、タンク情報入力部としてのコード設定スイッチ2が取り付けられている。コード設定スイッチ2は、例えば適宜のビット数のコードを手動で設定することができるデジスイッチといわれるような種類のスイッチを用いることができ、一つ一つのタンクに設定されている識別コードを設定するようになっている。
【0029】
ただし、手動によるコード設定は誤って設定する原因になりやすいので、それぞれのタンクに液面測定装置を装着すると、例えば、それぞれのタンクに設定されている凹凸が液面測定装置側のタンク情報入力部としてのコード設定スイッチの各桁をオン、オフさせ、自動的に識別コードが設定されるようにしてもよい。あるいは、タンク側に磁気的はあるいは光学的に設定されているコードを液面測定装置側の磁気的はあるいは光学的な読み取り装置で読み取ることによりタンクを特定するなど、任意の設定手段を採用すればよい。
【0030】
本発明に係る液面測定装置は、不特定のタンクに簡便に着脱することができるようにすることを目的としている。そこで、図1に示す実施例では、液面測定装置20のハウジング10の底部外周にフランジ101を設け、このフランジ101をタンク側の前記第2フランジ13の上に載せ、これらのフランジ101,13をボルト19で締結する構成になっている。一つのタンクの荷役が終わると、そのタンクに装着していた液面測定装置20はボルト19を緩めることによって取り外すことができ、次に荷役を行うタンクに装着することができる。液面測定装置20は測定方式が電波式であるため、タンク内の液体に対しては非接触であるとともにタンクに向かって延びる部材はない。これに加えて、タンク内の液面レベル測定データおよび個々のタンクの識別信号が無線で送信され、かつ、内臓電池で駆動されるようになっているため、上記のように、不特定のタンクに簡便に着脱することを可能にしている。
【0031】
図2は、上記実施例に適用される電気回路の例を示す。この電気回路は内蔵電源5の充電回路に特徴を有している。図2において、符号1はセンサを、2はタンク情報入力部を、3は無線送受信機を、5は内蔵電源を、6は充電回路をそれぞれ示しており、図1において同一を符号が付された部材ないしは回路に対応している。
【0032】
図2において符号7は電力中継部を示している。電力中継部7は、液面測定装置の内蔵電源5を外部電源によって充電するために設けられたもので、図2に示す例ではトランスで構成されている。トランスの一次巻線71には例えば商用交流電源が接続される。トランスの二次巻線72には充電回路6が接続されている。トランスの一次巻線71と二次巻線72はコアによって磁気結合されるが、一次巻線71が巻かれたコアと二次巻線72が巻かれたコアは分離されている。例えば、タンクから取り外した液面測定装置を充電装置に装着することにより、一次巻線71が巻かれた充電装置側のコアと二次巻線72が巻かれた液面測定装置側のコアが対向して磁気的に結合し、一次巻線71と二次巻線72の巻き数比に対応した交流電圧が二次巻線72に生成されるように構成されている。
【0033】
二次巻線72に生成される交流電圧は、整流用のダイオードD1、平滑用のコンデンサC1、抵抗R1を有してなる充電回路6によって直流電圧に変換され、内蔵電源5に入力されるようになっている。内蔵電源5は充電可能な二次電池51を有していて、充電回路6から供給される直流電圧によって二次電池51が充電される。ダイオードD2は二次電池51への逆流防止用である。
【0034】
内蔵電源5は、バリア回路4を介してセンサ1、無線送受信機3に電源を供給し、これらのセンサ1、無線送受信機3は内蔵電源5から供給される直流電源によって駆動されるようになっている。バリア回路4は、過電流が流れようとするとこれを遮断するヒューズ41と、過電圧が加わってもセンサ1、無線送受信機3には一定の電圧しかかからないようにするための定電圧ダイオード42と、保護抵抗R2を有してなる。
【0035】
以上説明した実施例1によれば、一つの液面測定装置を複数のタンクに対して着脱しながら使い回すことができる。したがって、例えば30個程度のタンクを備えるタンカーであっても、同時に荷役を行うタンクは3〜4個であるから、予備の液面測定装置を含めて4〜5台の液面測定装置を用意しておけばよく、すべてのタンクに液面測定装置を設置する必要はないから、液面測定装置にかけるコストを大幅に低減することができる。上記予備の液面測定装置はメンテナンスのために工場に送り、メンテナンスが終わったら荷役の現場に持ち込んで使用し、代わりの液面測定装置をメンテナンスのために工場に送る、というように定期的なローテーションを行うことも可能になる。また、上記液面測定装置は、荷役時などに運用するとき以外は環境の良い場所に保管することができるため、上記定期的なローテーションと相まって、液面測定装置の寿命を延ばすことができるという利点もある。
【実施例2】
【0036】
図3、図4は第2の実施例を示している。上記第1の実施例の構成部分ないしは構成部材と実質的に同一の構成部分ないしは構成部材には共通の符号を付している。図3、図4において、タンクのセンサ取り付け台11の上端に固定された第1のフランジ12には防護板14が載せられ、防護板14の周縁部の上には円筒状の介在部材131の下端部に形成された内向きフランジ132が載せられている。この内向きフランジ132と上記第1のフランジ12はボルトで締結され、第1のフランジ12と防護板12と介在部材131が一体に結合されている。
【0037】
介在部材131の上端部には外向きのフランジ133が形成されていて、このフランジ133の上に液面測定装置30が着脱自在に装着されている。液面測定装置30は、有底円筒形状の部材を伏せた形のハウジング10と、このハウジング10の開放した下端縁部に形成されたフランジ102の下面に固着された支持板111を有している。一体化された支持板111とハウジング10で液面測定装置30の筐体を構成していて、この筐体内において支持板111の上面に内側ハウジング110が固定され、内側ハウジング110によってセンサ1、無線送受信機3が囲まれている。内側ハウジング110内には、第1の実施例と同様に、内蔵電源、タンク情報入力部などが配置されている。支持板11の下面に平面アンテナ15が固定されている。この液面測定装置30の測定方式は、第1の実施例と同じ電波式である。
【0038】
この第2の実施例は、前記第1の実施例に対して、以下に述べるように、液面測定装置30の装着構造に違いがある。ハウジング10のフランジ102は支持板111とともに介在部材131のフランジ133の上に載せられ、フランジ102とフランジ133は箍25によって互いに密着させられている。図4は箍25を示している。箍25は本体部分が半円形になっていて、この本体部分の両端部は外側に向かう折り曲げ部27となっている。箍25の本体部分は横断面形状が半円形になっていて、この半円内に、上記フランジ133と支持板111とフランジ102の厚さ寸法の合計が包含されるように寸法が設定されている。
【0039】
箍25は2個を一組とし、双方の折り曲げ部27を対向させることにより円形をなすようにして用いられ、この円形をなす一対の箍25でフランジ133とフランジ102の周囲を取り囲んでいる。そして、一組の箍25の互いに対向する折り曲げ部27にボルト28を挿入し、これにナットをねじ込んで一組の箍25を互いに締め付けるようになっている。一組の箍25はフランジ133とフランジ102の周囲を半径方向外側から内側に向かって引き締める。箍25の本体部分の横断面は上記のように半円形になっているため、箍25の上記引き締め力により、箍25の半円形の内周面でフランジ133は図3において上向きの、フランジ102は下向きの力を受け、支持板111が介在した態様で双方のフランジ133とフランジ102が密着する。タンクに装着した液面測定装置30を取り外すには、締結されている一対の箍25を緩めればよい。
【0040】
このように、第2の実施例によれば、タンクへの液面測定装置30の着脱を、一対の箍25の締結と弛緩によって容易に行うことができ、多数のタンクに対して少数の液面測定装置を使い回すようにした本発明に係る液面測定装置に適した着脱構造を得ることができる。また、第1の実施例について説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0041】
本発明に係る液面測定装置の測定方式は、液面レベルを液体に接触することなく検出することができるものであれば任意である。例えば、図5に示す実施例のように、ホーンアンテナ36を備えた電波式液面測定装置であってもよい。この実施例では、タンクの上部に設けられたセンサ取り付け台11の上端にアンテナ取り付け板112が固定され、取り付け板112に取り付けられた中継器34から下方に向かって伸びたホーンアンテナ36が取り付け台112を貫通して液面に対向している。上記タンクは取り付け板112と中継器34によって密閉されている。取り付け板112の上面には中継器34を囲んで円筒形状の第2のセンサ取り付け台114が固定され、この第2のセンサ取り付け台114の上端部に形成されたフランジと液面測定装置のハウジング10に形成されたフランジが重ねられている。この双方のフランジを箍25によって締め付け、また、この締め付けを緩めることにより、第2の実施例と同様に、液面測定装置が上記センサ取り付け台11に着脱可能になっている。
【0042】
上記ハウジング10内には、タンク内の液体の液面レベルを液体に接触することなく検出するセンサ1、センサ1によって検出される液面レベル信号を外部に送信する無線送受信機3が配置されている。また、ハウジング10内には、図示されていないが、センサ1および無線送受信機3にこれらを駆動するための電力を供給する内蔵電源を備えている。各タンクのセンサ取り付け台114には、ハウジング10が装着されることによって個々のタンクの識別信号を無線送受信機3に入力するタンク情報入力部を有していて、無線送受信機3は、タンクの識別信号とともにセンサ1によって検出される液面レベル信号を送信するようになっている。
【0043】
この第3の実施例は、中継器34とホーンアンテナ36が各タンクに設置されていて、ハウジング10とこのハウジング10に組み込まれた液面測定装置が各タンクに対して着脱自在となっている。液面測定装置をタンクに装着したとき、センサ取り付け台114とハウジング10に設けられている適宜のコネクタにケーブル32を接続することによって、液面測定装置側のセンサ1とタンク側の中継器34が接続されるようになっている。
この第3の実施例も、前述の実施例と同様の効果を奏する。
【実施例4】
【0044】
図6は第4の実施例を示している。この実施例も電波式といわれる方式の液面測定装置を示すもので、第1、第2の実施例における平面アンテナに代えてパラボラアンテナ40を用いている。パラボラアンテナ40は、各タンクのセンサ取り付け台11内に設置されている。センサ取り付け台11の上端にはアンテナ支持板116が固定されている。この支持板116を貫通してパラボラアンテナ40の軸44が貫通しかつ気密を保って支持板116と軸44が固着されることにより、タンクが気密に保たれている。軸44のタンク側の先端には副反射鏡42が一体に取り付けられている。軸44の上部は支持板116の上面側に突出し、この軸44の上部を囲んで、円筒形状の第2のセンサ取り付け台118が支持板116の上に固定されている。
【0045】
液面測定装置はハウジング10を有し、ハウジング10に、センサ1、無線送受信機3、図示されない内蔵電源、その他の部品が組み込まれている。ハウジング10の下端部に設けられたフランジと上記第2のセンサ取り付け台118の上端部に設けられたフランジが重ねられ、これらのフランジを箍25で締結することができるようになっている。箍25については既に説明した通りで、箍25を締め付け、また弛緩することにより、液面測定装置をタンクに着脱することができる。ハウジング10の下端部に固定された支持板111を貫きトランスデューサ38が下方に向かって延び出ていて、液面測定装置をタンクに装着した状態で、トランスデューサ38にパラボラアンテナ40の軸44を嵌合させるようになっている。
【0046】
この第4の実施例は、パラボラアンテナ40が各タンクに設置されていて、ハウジング10とこのハウジング10に組み込まれた液面測定装置が各タンクに対して着脱自在となっている。この第4の実施例も、前述の実施例と同様の効果を奏する。
【0047】
図7は本発明に適用可能な充電装置の例を示す。本発明に係る液面測定装置は、任意のタンクに対して着脱自在な構成にしたことを特徴としており、内蔵電源もなるべく簡単な構成にすることが望ましい。そこで、内蔵電源は充電可能な二次電池とし、液面測定装置を運用しないときは、液面測定装置ごと充電装置に装着することにより内蔵電源が充電されるようにするとよい。また、充電装置の大本の電源は、太陽光、風力、温度差、振動など、自然界に存在するエネルギーを利用したものであることが望ましい。
【0048】
図7に示すDC(直流)電源50は、上記のような自然界に存在するエネルギーを利用して電力を生成する電源である。タンカーなどの船舶においては、防爆対策が厳しく求められるため、充電装置と液面測定装置の内蔵電源は、電気的な接続、切断時に火花が発生しないように、無接触で電力が中継されるようにすることが望ましい。そこで、図7に示す例では、上記のようにして生成された直流電源を発振回路52によって断続させ、この断続する電源を電力中継部としてのトランス7を介して液面測定装置の内蔵電源に伝達するようになっている。
【0049】
トランス7は1次巻線71が巻き回された第1のコア73と、2次巻線72が巻き回された第2のコア74を有している。第1のコア73は充電装置側にあり、第2のコア74は液面測定装置側にあって、液面測定装置を充電装置に装着することによって第1のコア73と第2のコア74が接触または近接して対向し、これらのコアを介して1次巻線71と2次巻線72が磁気的に結合し、トランスを構成するようになっている。こうして、1次巻線71から2次巻線72に電力が伝達され、図2について説明したように、充電回路6を介して直流に変換され、内蔵電源5の二次電池を充電する。DC電源50で生起される直流電圧が上記二次電池を充電電圧に適合しない場合は、適宜の充電電圧になるように、1次巻線71と2次巻線72の巻数比を設定すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 センサ
2 タンク情報入力部(コード設定スイッチ)
3 無線送受信機
4 バリア回路
5 内臓電源
6 充電回路
7 電力中継部(トランス)
10 ハウジング
11 センサ取り付け台
14 防護板
15 平面アンテナ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収蔵するタンクに装着して収蔵されている液体の液面レベルを測定する液面測定装置であって、
上記液面レベルを上記液体に接触することなく検出するセンサと、
上記センサによって検出される液面レベル信号を外部に送信する無線送受信機と、
上記センサおよび無線送受信機にこれらを駆動するための電力を供給する内蔵電源と、
密閉された空間内に上記センサ、無線送受信機および内蔵電源を収納したハウジングと、を有し、
上記ハウジングは、複数設けられる上記タンクの上部に着脱可能に設けられ、
個々の上記タンクは、上記ハウジングが装着されることによって個々のタンクの識別信号を上記無線送受信機に入力するタンク情報入力部を有し、
上記無線送受信機は、上記タンクの識別信号とともに上記液面レベル信号を送信する液面測定装置。
【請求項2】
内蔵電源は二次電池からなり、電力中継部を通じて外部電源から充電される請求項1記載の液面測定装置。
【請求項3】
電力中継部はトランスからなり、トランスのコアによる磁気結合によって交流外部電源からハウジング内に電力が中継されるように構成され、ハウジング内には、中継された交流電源を直流に変換して二次電池を充電する充電回路が設けられている請求項2記載の液面測定装置。
【請求項4】
トランスのコアの一部はハウジング側に、トランスのコアの他の一部は充電装置側に設けられていて、タンクから取り外した上記ハウジングを上記充電装置に装着することにより、上記トランスのコアの一部とトランスのコアの他の一部が磁気結合するように構成されている請求項3記載の液面測定装置。
【請求項5】
内蔵電源からセンサおよび無線送受信機に至る電源供給回路には過剰な電圧および電流を抑制するバリア回路が設けられている請求項1記載の液面測定装置。
【請求項6】
ハウジングのタンクへの装着部とこの装着部を装着する上記タンクの受け部にはフランジが設けられていて、双方のフランジの周囲を締めつけて上記双方のフランジを互いに密着させる箍を有している請求項1記載の液面測定装置。
【請求項7】
ハウジングを装着するタンクの受け部には、タンクの内部空間を密閉する防護板が固定されている請求項1記載の液面測定装置。
【請求項8】
防護板は電波を透過させる材質からなり、センサは電波式液面計からなる請求項7記載の液面測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−68195(P2012−68195A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215062(P2010−215062)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(391014631)ムサシノ機器株式会社 (14)
【Fターム(参考)】