涼風機
【課題】住宅用の室内空気の撹拌や気流による清涼感を目的に使用される涼風機において、省エネで広範囲に気流による清涼感を得ることができる涼風機を提供することを目的とする。
【解決手段】遠心羽根車１から発生する高圧空気が、ディフューザによる空気の圧力回復等を行うことなく、効率的に気流吹出し部の長手方向へと送ることにより、低入力で気流吹出し部内を高圧空気で満たすことができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られる。
【解決手段】遠心羽根車１から発生する高圧空気が、ディフューザによる空気の圧力回復等を行うことなく、効率的に気流吹出し部の長手方向へと送ることにより、低入力で気流吹出し部内を高圧空気で満たすことができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、居室内の天井に設置され、直接風による体感温度の減少や室内空気の循環に使用される扇風機や天井扇などの涼風機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の涼風機は、羽根車とモータを台座となる基部に内包して、基部上部に備えられた楕円環形状の送風部から床面と水平方向に吹き出すものが知られている。（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
以下、その涼風機について図６〜９を参照しながら説明する。
【０００４】
図６に示すように、涼風機は、ベース１０１と、ベース１０１上に取付けられて支持されるノズル１０２の形の空気出口とを含む、家庭用携帯型タワーファンの形態である。
【０００５】
図７は、ベース１０１の断面図を示す。ベース１０１内には、円筒形グリル１０３からベース１０１内に空気を引き込むためのインペラ１０４と、インペラ１０４を回転させるモータ１０５と、モータ１０５の軸動力をインペラ１０４に伝達する回転シャフト１０６が配置されている。インペラ１０４で昇圧された空気は、インペラ１０４下流に位置し螺旋状羽根を有するディフューザ１０７により、旋回流が圧力に変換され、高圧空気となってノズル１０２に送られる。
【０００６】
図６に示すように、ノズル１０２は細長い環状形状を有し、細長い開口１０８を形成する。ノズル１０２は、インペラ１０４から生成された高圧空気を吹き出す口部１０９と、口部１０９から放出される空気を配向するコアンダ面１１０と、コアンダ面１１０の下流側に位置しコアンダ面１１０によって配向された空気の面積を拡大するディフューザ表面１１１からなる。また、ディフューザ表面１１１のさらに下流側には、開口１０８からの気流の効率的な送風を更に助けるガイド表面１１２が設置されている。
【０００７】
図８は、ノズル１０２の分解図を示す。ノズル１０２は細長い環状の内側ケーシングセクション１１３に接続されてこの付近から延びる細長い環状の外側ケーシングセクション１１４を含むケーシングを備え、ノズル１０２の環状内部通路を形成する。
【０００８】
また図９は、図８の点線で囲った部分の拡大図を示す。ノズル１０２は、内部通路内に位置づけられ、且つ各々が高圧気流の一部分を口部１０９に配向するための複数の固定されたガイドベーン１１５を含む。ガイドベーン１１５が存在しない場合、高圧空気の大半は、口部１０９の上側部分を通ってノズル１０２から離れ、開口１０８の中心軸と鋭角をなして口部１０９から上方に出る傾向となる。結果として、ノズル１０２によって発生した空気の流れ内には一様でない空気の分布があることになる。更に、ノズル１０２からの高圧空気の大半は、ディフューザ表面１１１によって適切には拡散されず、遥かに大きな乱流を有する空気の流れが発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００９】
【特許文献１】特開２０１０−２０３４５２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
このような従来の涼風機において、円筒形グリルから吸引された空気は、インペラ内で昇圧された後、その後段のディフューザにより旋回流が圧力に変換され、ノズルの内部通路に到達して風路断面積が急拡大される。その後、口部で風路断面積が急縮小されるという構成となっている。
【００１１】
風路断面積が急縮小する場合、流れが増速し、風路に沿って圧力勾配が負となる。流れは圧力差による力で流れ方向に押され壁面に沿って流れるので、壁面との摩擦損失によるロスを受ける。また、風路断面積が急拡大する場合は、流れは減速し、風路に沿って圧力が上昇する。この場合、壁面近傍の流れは、流れの運動エネルギーが壁面摩擦によって失われ、ロスを受ける。さらに、風路に沿った圧力上昇に打ち勝つことができない場合は、壁近くの流れが逆流して壁面境界層のはく離が生じ、流れが渦巻き、流れのロスが増大することとなる。
【００１２】
このように、従来の涼風機では、流れの急拡大、急縮小によるロスが大きく、高圧空気を効率よくノズルに送風できないという課題があった。
【００１３】
また、風路構成上、インペラは斜流羽根車を利用しているが、斜流羽根車の静圧だけではノズル静圧に打つ勝つことができず、後段にディフューザを設けて圧力を回復させている。圧力を回復させる際も流れのロスが生じるため、羽根車の効率を低下させる要因となる。
【００１４】
さらに、ガイドベーンで高圧空気の風向を変更していることも、流れのはく離を誘発する原因となる。特にノズルが細長い環状形状の場合、ガイドベーンの略垂直方向であるノズルの長手方向の風速成分が発達するため、この影響は顕著となる。
【００１５】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすとともに、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更も不要とし、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られる涼風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
そして、この目的を達成するために、本発明は、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及び羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、前記高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、前記ダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有する構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明によれば、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及び羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、前記高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、前記ダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有するという構成にしたことにより、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすことができる。また低圧損のため、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更が不要となるため、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の実施の形態１の涼風機を示す上方向からの斜視図
【図２】本発明の実施の形態１の涼風機を示す断面斜視図
【図３】本発明の実施の形態１の涼風機を示す下方向からの斜視図
【図４】本発明の実施の形態１の涼風機を示す断面上面図
【図５】本発明の実施の形態１の気流吹出し部を示す断面図
【図６】従来の涼風機を示す斜視図
【図７】従来の涼風機のベースを示す断面図
【図８】従来の涼風機のノズルを示す分解図
【図９】従来の涼風機のガイドベーンを示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の請求項１記載の涼風機は、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及びこの羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、この高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、このダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有するという構成を有する。
【００２０】
これにより、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすことができる。また低圧損のため、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更が不要となるため、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２１】
また、前記遠心羽根車の直径ｄ、前記気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗという構成にしてもよい。
【００２２】
これにより、羽根車から吹出口までの風路断面積が漸次減少する構成となるため、流れの急拡大、急縮小が少なく、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２３】
また、前記気流吹出し部を２つ以上備え、かつ前記モータの回転軸に対し、互いに対称となるよう配置されるという構成にしてもよい。
【００２４】
これにより、遠心羽根車から発生する高圧空気の吹出し方向に複数の気流吹出し部を設けることで、気流吹出し部の長手方向の距離を変更することなく、容易に風量を増やすことができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２５】
また、前記ダクト部が舌部を有するという構成にしてもよい。
【００２６】
これにより、遠心羽根車から発生する高圧空気を効率的に気流吹出し部に送ることができ、かつ騒音を低減することができるので、省エネ、低騒音で快適な空間を形成することができるという効果を奏する。
【００２７】
また、前記気流吹出し部は、高圧空気を保持するチャンバを有するという構成にしてもよい。
【００２８】
これにより、チャンバが高圧空気の圧力を調整する緩衝空間となることで、吹出口の吐出圧力を均等に平均化することができ、効率的に周辺空気を誘引することができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２９】
また、前記高圧空気発生手段の下部に、照明器具を取付け可能な構成にしてもよい。
【００３０】
これにより、誘引効果への影響が小さい位置に光源を設けて天井壁面に設置することで、照明付き涼風機として一体化できるので、気流による清涼感が得られるとともに、照明器具としても利用できるという効果を奏する。
【００３１】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【００３２】
（実施の形態１）
図１、図２に本実施の形態の涼風機を示す。矢印は空気の流れ方向を示しており、点線はそれぞれ回転軸方向と遠心方向を示している。
【００３３】
本実施の形態の涼風機は、高圧空気を発生するための遠心羽根車１及び遠心羽根車１を駆動するためのモータ２からなる高圧空気発生手段３を本体４の中央部に有する。遠心羽根車１は吸込口５から回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す。本実施の形態では、涼風機の上方向から空気を吸い込んでいるが、下方向から空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す構成にしてもよい。
【００３４】
遠心方向に吹き出された空気は、ダクト部６を通過した後、遠心方向を長手方向とする細長い環形状の気流吹出し部７の吹出口８から高圧空気を吹き出す構成となっている。細長い環形状の定義は、気流吹出し部の遠心方向における幅ｗ、気流吹出し部の長手方向の長さｌの関係がｗ＜ｌであることを示す。本実施の形態では一例として、ｗを２０ｃｍ、ｌを５０ｃｍとしている。また気流吹出し部７は、回転軸を中心として互いに対称となるよう配置されている。
【００３５】
本実施の形態では、回転軸を中心として２つの対向する気流吹出し部７を設置しているが、気流吹出し部７は１つでもよく、さらに回転軸を中心として対称であれば、２つ以上設置されていてもよい。
【００３６】
吹出口８から吹き出された高圧空気は、周囲の空気を巻込み、風量を増加させながら涼風機下方の居住者に涼を与える。
【００３７】
また、本体４は天井取付手段９により、天井に固定されている。天井への固定方法は、天井取付手段９上部の円環状部分と天井をネジ等で固定する方法が取られる。
【００３８】
このような構成によれば、遠心方向に気流を吹き出し、静圧型の遠心羽根車１の吹出方向に、遠心方向を長手方向とする細長いノズルを配置することで、遠心羽根車１から発生する高圧空気が、ディフューザ等により空気の圧力回復をすることなく、効率的に気流吹出し部７の長手方向へと送ることができるため、高静圧を必要とする細長い形状であっても低入力で気流吹出し部７内を高圧空気で満たすことができる。
【００３９】
一方、遠心羽根車１よりも風量型である斜流羽根車や軸流羽根車を採用した場合、高静圧を必要とする細長い形状の気流吹出部に空気を送るためには、羽根車下流にディフューザ等を配置して静圧を向上させる必要があり、さらに吹出口近傍に気流の風向を変更するガイドベーン等も必要となるため、羽根車で昇圧された空気が急縮小、急拡大を繰り返す構成にならざるを得ない。
【００４０】
空気が急縮小する場合、流れが増速し、風路に沿って圧力勾配が負となる。流れは圧力差による力で流れ方向に押され壁面に沿って流れるので、壁面との摩擦損失によるロスを受ける。また、空気が急拡大する場合は、流れは減速し、風路に沿って圧力が上昇する。この場合、壁面近傍の流れは、流れの運動エネルギーが壁面摩擦によって失われ、ロスを受ける。さらに、風路に沿った圧力上昇に打ち勝つことができない場合は、壁近くの流れが逆流して壁面境界層のはく離が生じ、流れが渦巻き、流れのロスが増大することとなる。
【００４１】
また、遠心方向に位置する細長い環形状のノズル数を増やすことにより、機器構成を変更することなく、容易に風量を増やすことができる。
【００４２】
以上より、省エネで広範囲に気流による清涼感を得ることができる。
【００４３】
また図３に示すように、高圧空気発生手段３の下部に、照明器具１０を取付け可能な構造としている。このような構成とすることで、誘引効果への影響が小さい位置に光源を設けて照明付き涼風機として一体化できるので、気流による清涼感が得られるとともに、照明器具１０としても利用することができる。
【００４４】
また図４に示すように、ダクト部６は舌部１１を有している。
【００４５】
このような構成によれば、ダクト部６と高圧空気発生手段３との接続部において、舌部１１により遠心羽根車１で昇圧された空気の吹出し方向を限定するので、昇圧された空気が高圧空気発生手段３へと逆流することを防止し、遠心羽根車１から発生する高圧空気を効率的に気流吹出し部７に送ることができる。さらにダクト部６と高圧空気発生手段３との接続部における渦の発生を抑制することで、圧力変動に起因する騒音を低減することができるので、省エネ、低騒音で快適な空間を形成することができる。
【００４６】
また図５に示すように、気流吹出し部７は、高圧空気を保持するチャンバ１２を有している。
【００４７】
このような構成によれば、チャンバ１２が高圧空気の圧力を調整する緩衝空間となることで、吹出口８の吐出圧力を均等に平均化することができ、効率的に周辺空気を誘引することができる。
【００４８】
また、遠心羽根車の直径ｄ、気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗとなっている。本実施の形態では一例として、ｄを３０ｃｍ、ｗを２０ｃｍとしている。
【００４９】
このような構成によれば、遠心羽根車から気流吹出し部の吹出口までの風路断面積が漸次減少する構成となるため、流れの急拡大、急縮小が少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【００５０】
本発明にかかる涼風機は、効率的に気流吹出し部の長手方向へと気流を送る構成とすることにより、省エネで広範囲に気流による清涼感を得ることができるので、住宅用の室内空気の撹拌や気流による清涼感を目的に使用される各種送風機器として活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【００５１】
１ 遠心羽根車
２ モータ
３ 高圧空気発生手段
４ 本体
５ 吸込口
６ ダクト部
７ 気流吹出し部
８ 吹出口
ｗ 気流吹出し部の遠心方向における幅
ｌ 気流吹出し部の長手方向の長さ
９ 天井取付手段
１０ 照明器具
１１ 舌部
１２ チャンバ
ｄ 遠心羽根車の直径
１０１ ベース
１０２ ノズル
１０３ 円筒形グリル
１０４ インペラ
１０５ モータ
１０６ 回転シャフト
１０７ ディフューザ
１０８ 開口
１０９ 口部
１１０ コアンダ面
１１１ ディフューザ表面
１１２ ガイド表面
１１３ 内側ケーシングセクション
１１４ 外側ケーシングセクション
１１５ ガイドベーン
【技術分野】
【０００１】
本発明は、居室内の天井に設置され、直接風による体感温度の減少や室内空気の循環に使用される扇風機や天井扇などの涼風機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の涼風機は、羽根車とモータを台座となる基部に内包して、基部上部に備えられた楕円環形状の送風部から床面と水平方向に吹き出すものが知られている。（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
以下、その涼風機について図６〜９を参照しながら説明する。
【０００４】
図６に示すように、涼風機は、ベース１０１と、ベース１０１上に取付けられて支持されるノズル１０２の形の空気出口とを含む、家庭用携帯型タワーファンの形態である。
【０００５】
図７は、ベース１０１の断面図を示す。ベース１０１内には、円筒形グリル１０３からベース１０１内に空気を引き込むためのインペラ１０４と、インペラ１０４を回転させるモータ１０５と、モータ１０５の軸動力をインペラ１０４に伝達する回転シャフト１０６が配置されている。インペラ１０４で昇圧された空気は、インペラ１０４下流に位置し螺旋状羽根を有するディフューザ１０７により、旋回流が圧力に変換され、高圧空気となってノズル１０２に送られる。
【０００６】
図６に示すように、ノズル１０２は細長い環状形状を有し、細長い開口１０８を形成する。ノズル１０２は、インペラ１０４から生成された高圧空気を吹き出す口部１０９と、口部１０９から放出される空気を配向するコアンダ面１１０と、コアンダ面１１０の下流側に位置しコアンダ面１１０によって配向された空気の面積を拡大するディフューザ表面１１１からなる。また、ディフューザ表面１１１のさらに下流側には、開口１０８からの気流の効率的な送風を更に助けるガイド表面１１２が設置されている。
【０００７】
図８は、ノズル１０２の分解図を示す。ノズル１０２は細長い環状の内側ケーシングセクション１１３に接続されてこの付近から延びる細長い環状の外側ケーシングセクション１１４を含むケーシングを備え、ノズル１０２の環状内部通路を形成する。
【０００８】
また図９は、図８の点線で囲った部分の拡大図を示す。ノズル１０２は、内部通路内に位置づけられ、且つ各々が高圧気流の一部分を口部１０９に配向するための複数の固定されたガイドベーン１１５を含む。ガイドベーン１１５が存在しない場合、高圧空気の大半は、口部１０９の上側部分を通ってノズル１０２から離れ、開口１０８の中心軸と鋭角をなして口部１０９から上方に出る傾向となる。結果として、ノズル１０２によって発生した空気の流れ内には一様でない空気の分布があることになる。更に、ノズル１０２からの高圧空気の大半は、ディフューザ表面１１１によって適切には拡散されず、遥かに大きな乱流を有する空気の流れが発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００９】
【特許文献１】特開２０１０−２０３４５２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
このような従来の涼風機において、円筒形グリルから吸引された空気は、インペラ内で昇圧された後、その後段のディフューザにより旋回流が圧力に変換され、ノズルの内部通路に到達して風路断面積が急拡大される。その後、口部で風路断面積が急縮小されるという構成となっている。
【００１１】
風路断面積が急縮小する場合、流れが増速し、風路に沿って圧力勾配が負となる。流れは圧力差による力で流れ方向に押され壁面に沿って流れるので、壁面との摩擦損失によるロスを受ける。また、風路断面積が急拡大する場合は、流れは減速し、風路に沿って圧力が上昇する。この場合、壁面近傍の流れは、流れの運動エネルギーが壁面摩擦によって失われ、ロスを受ける。さらに、風路に沿った圧力上昇に打ち勝つことができない場合は、壁近くの流れが逆流して壁面境界層のはく離が生じ、流れが渦巻き、流れのロスが増大することとなる。
【００１２】
このように、従来の涼風機では、流れの急拡大、急縮小によるロスが大きく、高圧空気を効率よくノズルに送風できないという課題があった。
【００１３】
また、風路構成上、インペラは斜流羽根車を利用しているが、斜流羽根車の静圧だけではノズル静圧に打つ勝つことができず、後段にディフューザを設けて圧力を回復させている。圧力を回復させる際も流れのロスが生じるため、羽根車の効率を低下させる要因となる。
【００１４】
さらに、ガイドベーンで高圧空気の風向を変更していることも、流れのはく離を誘発する原因となる。特にノズルが細長い環状形状の場合、ガイドベーンの略垂直方向であるノズルの長手方向の風速成分が発達するため、この影響は顕著となる。
【００１５】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすとともに、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更も不要とし、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られる涼風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
そして、この目的を達成するために、本発明は、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及び羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、前記高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、前記ダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有する構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【００１７】
本発明によれば、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及び羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、前記高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、前記ダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有するという構成にしたことにより、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすことができる。また低圧損のため、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更が不要となるため、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の実施の形態１の涼風機を示す上方向からの斜視図
【図２】本発明の実施の形態１の涼風機を示す断面斜視図
【図３】本発明の実施の形態１の涼風機を示す下方向からの斜視図
【図４】本発明の実施の形態１の涼風機を示す断面上面図
【図５】本発明の実施の形態１の気流吹出し部を示す断面図
【図６】従来の涼風機を示す斜視図
【図７】従来の涼風機のベースを示す断面図
【図８】従来の涼風機のノズルを示す分解図
【図９】従来の涼風機のガイドベーンを示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の請求項１記載の涼風機は、箱体に空気を取り入れる吸込口と、高圧空気を発生するための羽根車及びこの羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、この高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、このダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、前記羽根車は、回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有するという構成を有する。
【００２０】
これにより、流れの急拡大、急縮小の少ない構成により、風路の圧力損失を低減することが可能となるため、低入力、低ロスで細長いノズル内を高圧空気で満たすことができる。また低圧損のため、ディフューザによる圧力回復やガイドベーンによる風向変更が不要となるため、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２１】
また、前記遠心羽根車の直径ｄ、前記気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗという構成にしてもよい。
【００２２】
これにより、羽根車から吹出口までの風路断面積が漸次減少する構成となるため、流れの急拡大、急縮小が少なく、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２３】
また、前記気流吹出し部を２つ以上備え、かつ前記モータの回転軸に対し、互いに対称となるよう配置されるという構成にしてもよい。
【００２４】
これにより、遠心羽根車から発生する高圧空気の吹出し方向に複数の気流吹出し部を設けることで、気流吹出し部の長手方向の距離を変更することなく、容易に風量を増やすことができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２５】
また、前記ダクト部が舌部を有するという構成にしてもよい。
【００２６】
これにより、遠心羽根車から発生する高圧空気を効率的に気流吹出し部に送ることができ、かつ騒音を低減することができるので、省エネ、低騒音で快適な空間を形成することができるという効果を奏する。
【００２７】
また、前記気流吹出し部は、高圧空気を保持するチャンバを有するという構成にしてもよい。
【００２８】
これにより、チャンバが高圧空気の圧力を調整する緩衝空間となることで、吹出口の吐出圧力を均等に平均化することができ、効率的に周辺空気を誘引することができるので、省エネで広範囲に気流による清涼感が得られるという効果を奏する。
【００２９】
また、前記高圧空気発生手段の下部に、照明器具を取付け可能な構成にしてもよい。
【００３０】
これにより、誘引効果への影響が小さい位置に光源を設けて天井壁面に設置することで、照明付き涼風機として一体化できるので、気流による清涼感が得られるとともに、照明器具としても利用できるという効果を奏する。
【００３１】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【００３２】
（実施の形態１）
図１、図２に本実施の形態の涼風機を示す。矢印は空気の流れ方向を示しており、点線はそれぞれ回転軸方向と遠心方向を示している。
【００３３】
本実施の形態の涼風機は、高圧空気を発生するための遠心羽根車１及び遠心羽根車１を駆動するためのモータ２からなる高圧空気発生手段３を本体４の中央部に有する。遠心羽根車１は吸込口５から回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す。本実施の形態では、涼風機の上方向から空気を吸い込んでいるが、下方向から空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す構成にしてもよい。
【００３４】
遠心方向に吹き出された空気は、ダクト部６を通過した後、遠心方向を長手方向とする細長い環形状の気流吹出し部７の吹出口８から高圧空気を吹き出す構成となっている。細長い環形状の定義は、気流吹出し部の遠心方向における幅ｗ、気流吹出し部の長手方向の長さｌの関係がｗ＜ｌであることを示す。本実施の形態では一例として、ｗを２０ｃｍ、ｌを５０ｃｍとしている。また気流吹出し部７は、回転軸を中心として互いに対称となるよう配置されている。
【００３５】
本実施の形態では、回転軸を中心として２つの対向する気流吹出し部７を設置しているが、気流吹出し部７は１つでもよく、さらに回転軸を中心として対称であれば、２つ以上設置されていてもよい。
【００３６】
吹出口８から吹き出された高圧空気は、周囲の空気を巻込み、風量を増加させながら涼風機下方の居住者に涼を与える。
【００３７】
また、本体４は天井取付手段９により、天井に固定されている。天井への固定方法は、天井取付手段９上部の円環状部分と天井をネジ等で固定する方法が取られる。
【００３８】
このような構成によれば、遠心方向に気流を吹き出し、静圧型の遠心羽根車１の吹出方向に、遠心方向を長手方向とする細長いノズルを配置することで、遠心羽根車１から発生する高圧空気が、ディフューザ等により空気の圧力回復をすることなく、効率的に気流吹出し部７の長手方向へと送ることができるため、高静圧を必要とする細長い形状であっても低入力で気流吹出し部７内を高圧空気で満たすことができる。
【００３９】
一方、遠心羽根車１よりも風量型である斜流羽根車や軸流羽根車を採用した場合、高静圧を必要とする細長い形状の気流吹出部に空気を送るためには、羽根車下流にディフューザ等を配置して静圧を向上させる必要があり、さらに吹出口近傍に気流の風向を変更するガイドベーン等も必要となるため、羽根車で昇圧された空気が急縮小、急拡大を繰り返す構成にならざるを得ない。
【００４０】
空気が急縮小する場合、流れが増速し、風路に沿って圧力勾配が負となる。流れは圧力差による力で流れ方向に押され壁面に沿って流れるので、壁面との摩擦損失によるロスを受ける。また、空気が急拡大する場合は、流れは減速し、風路に沿って圧力が上昇する。この場合、壁面近傍の流れは、流れの運動エネルギーが壁面摩擦によって失われ、ロスを受ける。さらに、風路に沿った圧力上昇に打ち勝つことができない場合は、壁近くの流れが逆流して壁面境界層のはく離が生じ、流れが渦巻き、流れのロスが増大することとなる。
【００４１】
また、遠心方向に位置する細長い環形状のノズル数を増やすことにより、機器構成を変更することなく、容易に風量を増やすことができる。
【００４２】
以上より、省エネで広範囲に気流による清涼感を得ることができる。
【００４３】
また図３に示すように、高圧空気発生手段３の下部に、照明器具１０を取付け可能な構造としている。このような構成とすることで、誘引効果への影響が小さい位置に光源を設けて照明付き涼風機として一体化できるので、気流による清涼感が得られるとともに、照明器具１０としても利用することができる。
【００４４】
また図４に示すように、ダクト部６は舌部１１を有している。
【００４５】
このような構成によれば、ダクト部６と高圧空気発生手段３との接続部において、舌部１１により遠心羽根車１で昇圧された空気の吹出し方向を限定するので、昇圧された空気が高圧空気発生手段３へと逆流することを防止し、遠心羽根車１から発生する高圧空気を効率的に気流吹出し部７に送ることができる。さらにダクト部６と高圧空気発生手段３との接続部における渦の発生を抑制することで、圧力変動に起因する騒音を低減することができるので、省エネ、低騒音で快適な空間を形成することができる。
【００４６】
また図５に示すように、気流吹出し部７は、高圧空気を保持するチャンバ１２を有している。
【００４７】
このような構成によれば、チャンバ１２が高圧空気の圧力を調整する緩衝空間となることで、吹出口８の吐出圧力を均等に平均化することができ、効率的に周辺空気を誘引することができる。
【００４８】
また、遠心羽根車の直径ｄ、気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗとなっている。本実施の形態では一例として、ｄを３０ｃｍ、ｗを２０ｃｍとしている。
【００４９】
このような構成によれば、遠心羽根車から気流吹出し部の吹出口までの風路断面積が漸次減少する構成となるため、流れの急拡大、急縮小が少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【００５０】
本発明にかかる涼風機は、効率的に気流吹出し部の長手方向へと気流を送る構成とすることにより、省エネで広範囲に気流による清涼感を得ることができるので、住宅用の室内空気の撹拌や気流による清涼感を目的に使用される各種送風機器として活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【００５１】
１ 遠心羽根車
２ モータ
３ 高圧空気発生手段
４ 本体
５ 吸込口
６ ダクト部
７ 気流吹出し部
８ 吹出口
ｗ 気流吹出し部の遠心方向における幅
ｌ 気流吹出し部の長手方向の長さ
９ 天井取付手段
１０ 照明器具
１１ 舌部
１２ チャンバ
ｄ 遠心羽根車の直径
１０１ ベース
１０２ ノズル
１０３ 円筒形グリル
１０４ インペラ
１０５ モータ
１０６ 回転シャフト
１０７ ディフューザ
１０８ 開口
１０９ 口部
１１０ コアンダ面
１１１ ディフューザ表面
１１２ ガイド表面
１１３ 内側ケーシングセクション
１１４ 外側ケーシングセクション
１１５ ガイドベーン
【特許請求の範囲】
【請求項１】
箱体に空気を取り入れる吸込口と、
高圧空気を発生するための羽根車及びこの羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、
この高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、
このダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、
前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、
前記羽根車は、
回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、
前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有することを特徴とする涼風機。
【請求項２】
前記羽根車の直径ｄ、前記気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗであることを特徴とする請求項１に記載の涼風機。
【請求項３】
前記気流吹出し部を２つ以上備え、かつ前記モータの回転軸に対し、互いに対称となるよう配置されることを特徴とする請求項１または２記載の涼風機。
【請求項４】
前記ダクト部が舌部を有することを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の涼風機。
【請求項５】
前記気流吹出し部は、高圧空気を保持するチャンバを有することを特徴とする請求項１から４のいずれか１項に記載の涼風機。
【請求項６】
前記高圧空気発生手段の下部に、照明器具を取付け可能な構造とした請求項１から５のいずれかに記載の涼風機。
【請求項１】
箱体に空気を取り入れる吸込口と、
高圧空気を発生するための羽根車及びこの羽根車を駆動するためのモータからなる高圧空気発生手段と、
この高圧空気発生手段と接続し、前記高圧空気発生手段から送られる高圧空気の風路となるダクト部と、
このダクト部と接続し、高圧空気を気流として吹き出すための吹出口を有する環形状の気流吹出し部と、を備え、
前記高圧空気発生手段を天井に取り付けられる構成とした涼風機であって、
前記羽根車は、
回転により回転軸方向に空気を吸い込み、遠心方向に空気を吹き出す遠心羽根車であり、
前記気流吹出し部が、遠心方向を長手方向とする細長い環形状を有することを特徴とする涼風機。
【請求項２】
前記羽根車の直径ｄ、前記気流吹出し部の遠心方向における幅ｗの関係がｄ≧ｗであることを特徴とする請求項１に記載の涼風機。
【請求項３】
前記気流吹出し部を２つ以上備え、かつ前記モータの回転軸に対し、互いに対称となるよう配置されることを特徴とする請求項１または２記載の涼風機。
【請求項４】
前記ダクト部が舌部を有することを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の涼風機。
【請求項５】
前記気流吹出し部は、高圧空気を保持するチャンバを有することを特徴とする請求項１から４のいずれか１項に記載の涼風機。
【請求項６】
前記高圧空気発生手段の下部に、照明器具を取付け可能な構造とした請求項１から５のいずれかに記載の涼風機。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２０１３−３６４６０（Ｐ２０１３−３６４６０Ａ）
【公開日】平成２５年２月２１日（２０１３．２．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１２−５７０２６（Ｐ２０１２−５７０２６）
【出願日】平成２４年３月１４日（２０１２．３．１４）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年２月２１日（２０１３．２．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２４年３月１４日（２０１２．３．１４）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
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