説明

淡水化装置及び淡水化装置の前処理膜の洗浄方法

【課題】スケールを効率的に除去すると共に、逆洗浄のインターバルを向上させることができる淡水化装置及び淡水化装置の前処理膜の洗浄方法を提供する。
【解決手段】原水11中の濁質分を濾過する前処理膜12を有する前処理装置13と、前記前処理装置13からの濾過水14から塩分を除去して淡水15を生産する逆浸透膜(RO膜)16を有する逆浸透膜装置17と、前記逆浸透膜装置17で生産された淡水15を前記前処理装置13に送給する淡水逆洗ライン30と、前記淡水逆洗ライン30に塩素31を供給する塩素供給部32とを具備してなり、前記淡水15を前記前処理膜12の逆洗浄に用いてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆洗浄の洗浄効率を向上させる淡水化装置及び淡水化装置の前処理膜の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水を逆浸透膜により処理し、淡水を生産する逆浸透膜装置の前処理として、精密濾過等を用いているが、有機物の付着等が発生するので、定期的に洗浄する必要がある。
この洗浄には、単なる洗浄水を用いて、逆洗浄する方法と、洗浄液に薬剤を添加して逆洗浄する方法とがある。
【0003】
従来においては、この逆洗浄の際に、逆浸透膜で淡水を生産した際に発生する濃縮水を用いることを提案した(特許文献1)。
図5に従来の淡水化装置の一例を示す。図5に示すように、淡水化装置100Aは、原水(海水)11中の濁質分を濾過する前処理膜12を有する前処理装置13と、前記前処理装置13から供給された濾過水14から塩分を除去して淡水15を得る逆浸透膜(RO膜)16を有する逆浸透膜装置17と、前記逆浸透膜装置17からの塩分が濃縮された濃縮水18を前記前処理装置13に送給する逆洗ライン19とを具備してなり、前記濃縮水18を洗浄水20として用いて、前記前処理膜12の逆洗浄を行うようにしている。ここで、図中、符号21は濃縮水18を貯留するタンクであり、22は原水11を前処理装置13に供給する原水ライン、23は濾過水14を前処理装置13から逆浸透膜装置17に供給する濾過水ライン、24は濃縮水18をタンク21に供給する濃縮水ライン、25は淡水15を外部の水使用設備等に供給する淡水ライン、Pは送給液ポンプを図示する。
【0004】
前記構成の淡水化装置100Aにおいて、原水11は前処理装置13の前処理膜12で濁質分を除去して、濾過水ライン23を経由して濾過水14が逆浸透膜装置17に送給される。そして、逆浸透膜装置17で塩分を除去して淡水15を得た後、淡水ライン25を経由して外部の図示しない水使用設備等に送給される。なお、濃縮された濃縮水18は濃縮水ライン24を経由してタンク21に貯留される。ここで、濁質分を除去する前記前処理膜12は、例えばUF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等の分離膜を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0005】
そして、前処理装置13を逆洗浄する場合には、所定時間の淡水化を行った後、原水11の供給を停止し、タンク21から濃縮水18を洗浄水20として逆洗ライン19を経由して前処理装置13に送給し、前処理膜12の逆洗を行う。そして濁質分を含む逆洗水26は逆洗水ライン27から外部に送給され、所定の処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−14902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案の濃縮水を用いる場合には、スケール成分が存在し、次亜塩素酸ナトリウムやアルカリ等の薬剤を用いた洗浄において、有機物を除去することはできるものの、その副次効果として、炭酸カルシウムや次亜塩素酸カルシウムのスケール成分が前処理膜に付着する、という問題がある。
【0008】
このため、図6の他の淡水化装置100Bに示すように、塩酸等の酸28を酸供給部29から供給することで、その発生したスケール分を除去することが提案されているが、逆洗浄において、アルカリ剤と酸との二種類の薬剤を併用することとなり、逆洗工程が増加すると共に、前処理装置13からの逆洗水26が酸性の廃液となり、その処理がさらに問題となる。
特に、冬季における運転の際には、水温が低下するので、酸化効果が低減し、さらに薬剤を添加する必要があり、酸性廃液量が増大することとなる。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、スケールを効率的に除去すると共に、逆洗浄のインターバルを向上させることができる淡水化装置及び淡水化装置の前処理膜の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、原水中の濁質分を濾過する前処理膜を有する前処理装置と、前記前処理装置からの濾過水から塩分を除去して淡水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置で生産された淡水を前記前処理装置に送給する淡水逆洗ラインと、前記淡水逆洗ラインに塩素を供給する塩素供給部とを具備してなり、前記淡水を前記前処理膜の逆洗浄に用いてなることを特徴とする淡水化装置にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記淡水逆洗ラインに淡水を加熱する加熱部を介装することを特徴とする淡水化装置にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記逆浸透膜装置からの塩分が濃縮された濃縮水を前記前処理装置に送給する濃縮水逆洗ラインとを具備してなり、前記前処理膜の逆洗浄に淡水と前記濃縮水とを併用してなることを特徴とする淡水化装置にある。
【0013】
第4の発明は、原水中の濁質分を前処理膜で濾過した後に、逆浸透膜を用いて淡水を得る際に、逆浸透膜で生産された淡水を、前記前処理膜の逆洗浄に用いることを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法にある。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記淡水を加熱しつつ洗浄することを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法にある。
【0015】
第6の発明は、第4又は5の発明において、前記前処理膜の逆洗の際に、塩素を添加した淡水を用いて洗浄した後、濃縮水を用いて洗浄することを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塩素を淡水に添加して前処理装置の前処理膜の逆洗浄を行うことで、淡水が純水であるので、次亜塩素酸カルシウム等の析出が抑制され、効率的な洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係る他の淡水化装置の概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。
【図4】図4は、加温水に変更した際の圧力変動を示す図である。
【図5】図5は、従来技術に係る淡水化装置の概略図である。
【図6】図6は、従来技術に係る他の淡水化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例1に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る淡水化装置を示す概略図である。なお、従来技術で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
実施例に係る淡水化装置10Aは、原水11中の濁質分を濾過する前処理膜12を有する前処理装置13と、前記前処理装置13からの濾過水14から塩分を除去して淡水15を生産する逆浸透膜(RO膜)16を有する逆浸透膜装置17と、前記逆浸透膜装置17で生産された淡水15を前記前処理装置13に送給する淡水逆洗ライン30と、前記淡水逆洗ライン30に塩素31を供給する塩素供給部32とを具備してなり、前記淡水15を前記前処理膜12の逆洗浄に用いてなるものである。
図1中、符号55は淡水タンクを図示する。
【0020】
そして、前処理装置13を逆洗浄する場合には、所定時間の淡水化を行った後、原水11の供給を停止し、淡水タンク50から淡水15を洗浄水として淡水逆洗ライン30を経由して前処理装置13に送給し、塩素31を添加しつつ前処理膜12の逆洗を行う。そして濁質分を含む逆洗水26は逆洗水ライン27から外部に送給され、所定の処理を行う。
【0021】
この結果、塩素31を淡水15に添加して定期的に逆洗浄することで、塩素31で殺菌すると共に、純水である淡水15により前処理膜12が洗浄されるので次亜塩素酸カルシウムの析出を大幅に抑えることができる。
【0022】
また、図2に示す他の淡水化装置10Bに示すように、淡水逆洗ライン30に加熱部51を介装し、加熱媒体52により淡水15を加温することで、洗浄に必要な時間を短縮することができる。
また、加熱媒体(例えば140℃前後のスチーム)52により淡水15が加温(例えば40℃)されるので、冬季における洗浄効率の低下も抑制することができる。
図4は淡水を加温水に変更した際における前処理装置13での前処理膜の圧力の変動を示す。淡水から加温水に変更することで、圧力の大幅な低減が確認された。
【0023】
なお、生産水である淡水15を逆洗浄に用いることは、生産水の製造量が低下することとなるが、スケール除去のための薬剤(酸)の投入や、その処理のための逆洗時間の超過及び酸性の逆洗水の処理の費用を考慮すると、長期的な観点からは、生産水の大幅な低下とはならない。
また、従来は逆洗のインターバルが30分に一回であったが、本実施例においては、スケールの発生がなくなるので、1〜3時間に一回程度と逆洗インターバルを伸ばすことができた。
【実施例2】
【0024】
本発明による実施例2に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。
図3は、実施例2に係る淡水化装置を示す概略図である。なお、従来技術及び実施例1で説明した淡水化装置の構成部材と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
実施例2に係る淡水化装置10Cは、実施例1の装置において、さらに前記逆浸透膜装置17からの塩分が濃縮された濃縮水18を前記前処理装置13に送給する濃縮水逆洗ライン55を具備してなり、前記前処理膜12の逆洗浄に淡水15と前記濃縮水18とを併用してなるものである。
【0025】
そして、前処理装置13を逆洗浄する場合には、所定時間の淡水化を行った後、原水11の供給を停止し、淡水タンク50から純水である淡水15を洗浄水として淡水逆洗ライン30を経由して前処理装置13に送給し、塩素31を添加しつつ前処理膜12の逆洗を行う。そして濁質分を含む逆洗水26は逆洗水ライン27から外部に送給され、所定の処理を行う。
【0026】
その後、前処理膜12でスケール成分を除去してから、濃縮水18で逆洗浄した場合でもスケールの付着がなくなり、淡水15の使用量を低減することができる。
【0027】
この結果、塩素31を淡水15に添加して定期的に逆洗浄することで、次亜塩素酸カルシウムの析出を抑えることができると共に、淡水15で洗浄した後に、濃縮水18で洗浄するので、逆洗浄に用いる淡水15の使用量を低減することができる。
【0028】
また、本実施例においては、スケールの発生がなくなるので、逆洗のインターバルを1〜3時間に一回程度とすることができると共に、淡水15での処理を2〜3分程度、濃縮水18での処理を5分程度と短時間での逆洗を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る淡水化装置は、従来のような濃縮水を用いて洗浄するものではないので、スケールの発生がなくなり、長期的に亙っての淡水化製造効率を低下させることがないので、海水を淡水化する設備に用いて適している。
【符号の説明】
【0030】
10A〜10C 淡水化装置
11 原水
12 前処理膜
13 前処理装置
14 濾過水
15 淡水
16 逆浸透膜
17 逆浸透膜装置
18 濃縮水
30 淡水逆洗ライン
31 塩素
32 塩素供給部
51 加熱部
55 濃縮水逆洗ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水中の濁質分を濾過する前処理膜を有する前処理装置と、
前記前処理装置からの濾過水から塩分を除去して淡水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置と、
前記逆浸透膜装置で生産された淡水を前記前処理装置に送給する淡水逆洗ラインと、
前記淡水逆洗ラインに塩素を供給する塩素供給部とを具備してなり、前記淡水を前記前処理膜の逆洗浄に用いてなることを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記淡水逆洗ラインに、淡水を加熱する加熱部を介装することを特徴とする淡水化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記逆浸透膜装置からの塩分が濃縮された濃縮水を前記前処理装置に送給する濃縮水逆洗ラインを具備してなり、前記前処理膜の逆洗浄に淡水と前記濃縮水とを併用してなることを特徴とする淡水化装置。
【請求項4】
原水中の濁質分を前処理膜で濾過した後に、逆浸透膜を用いて淡水を得る際に、逆浸透膜で生産された淡水を、前記前処理膜の逆洗浄に用いることを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記淡水を加熱しつつ洗浄することを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記前処理膜の逆洗の際に、塩素を添加した淡水を用いて洗浄した後、濃縮水を用いて洗浄することを特徴とする淡水化装置の前処理膜の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31121(P2011−31121A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176893(P2009−176893)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】