深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法
【課題】 土被り地盤がある橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、作用する地震荷重を低減させることができる、深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を提供する。
【解決手段】 深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、構造物1の周囲に、土被り地盤2に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材3を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物1に対する土被り地盤2の拘束を緩和して、前記構造物1に作用する地震荷重を低減させる。
【解決手段】 深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、構造物1の周囲に、土被り地盤2に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材3を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物1に対する土被り地盤2の拘束を緩和して、前記構造物1に作用する地震荷重を低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路などに用いる橋脚や高架橋などの構造物で、深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、免震材を用いたトンネルの耐震対策工法及びその免震壁の施工方法並びにその築造構造体として、下記特許文献1に開示されるものがある。
また、袋体を用いたポリマー地盤改良体の築造方法及びその築造方法に使用する充填用部材として、下記特許文献2に開示されるものがある。
しかし、深い土被り地盤を有する橋脚や高架橋などの構造物に対して、地盤に拘束された場合での慣性力や地盤変位荷重といった地震荷重に対する応答については、検討がほとんどなされておらず、これらに対する対策工法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4387919号公報
【特許文献2】特開2007−100452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の設計では、橋脚や高架橋などの構造物が土被り地盤を有する場合、土被り地盤が構造物を拘束するため耐震性能が向上するものと考えられてきた。しかしながら、近年の研究では、土被り地盤が構造物を拘束する結果、耐力が向上して、かえって大きな慣性力や地盤変位荷重を負担してしまうことがわかった。
図12は橋脚に深い土被り地盤を有する場合と土被り地盤がない場合の拘束力を受ける橋脚の慣性力と変位の関係を示す図である。
【0005】
この図において、aは橋脚に土被り地盤がない場合を示し、bは橋脚に深い土被り地盤を有する場合を示している。
この図から明らかなように、橋脚が土被り地盤を有する場合の方が、土被り地盤がない場合に比べて地震時の応答変位が小さくなるものの、慣性力は土被り地盤を有する場合の方が大きく作用することが分かる。
【0006】
また、地震時の地盤変位により構造物に荷重が作用することが確認されており、土被り地盤が深い場合には作用する地盤変位荷重が増大し、構造物が損傷を受ける可能性があることが分かってきた。
本発明は、上記状況に鑑みて、土被り地盤がある橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して慣性力の負担を低減すると共に、作用する地盤変位荷重を低減させることができる、深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させることを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記構造物が橋脚及び高架橋であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記免震材がポリマー改良土であることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記ポリマー改良土がポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記周辺地盤に対する前記免震材の剛性比は1/10〜1/500であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤による拘束を緩和することで、地震時における構造物に対する慣性力及び地盤変位荷重である地震荷重の低減を図ることができ、橋脚や高架橋などの構造物の損傷を抑制することが可能である。その施工は地盤を掘削して免震材と置換する方法、もしくは地盤を切削し、免震材と攪拌混合する方法で実施可能であり、既設構造物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す斜視模式図である。
【図3】比較例としての地震荷重低減工法を実施していない橋脚や高架橋などの構造物を示す断面模式図である。
【図4】本発明の地震荷重低減工法を実施した場合と未対策の場合とを対比した拘束力を受ける橋脚や高架橋などの構造物の慣性力と変位の関係を示す図である。
【図5】未対策時と比較した本発明の地震荷重低減工法実施時における地盤変位に対する効果を示す模式図である。
【図6】未対策時における水平応力コンター図である。
【図7】本発明の地震荷重低減工法による対策実施時における水平応力コンター図である。
【図8】周囲の地盤剛性が軟弱な場合(N値2)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図である。
【図9】周囲の地盤剛性が一般的な場合(N値5)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図である。
【図10】本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図である。
【図11】本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す斜視模式図である。
【図12】橋脚に深い土被り地盤を有する場合と土被り地盤がない場合の拘束力を受ける橋脚の慣性力と変位の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図、図2はその斜視模式図、図3は比較例としての地震荷重低減工法を実施していない橋脚や高架橋などの構造物を示す断面模式図である。
【0014】
これらの図において、1は橋脚や高架橋などの構造物、2は深い土被り地盤、3は壁状の免震材である。ここで、深い土被り地盤2とは基礎の上面から橋脚や高架橋などの構造物1の柱の断面高さの2倍以上の深さをもつ土被り地盤を指している。
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、構造物1の周囲に、深い土被り地盤2に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材3を壁状に構築し、構造物1に対する土被り地盤2の拘束を緩和して、構造物1に作用する地震荷重を低減させることを特徴とした耐震対策工法である。免震材としては、ポリマー改良土を用いることができる。また、このポリマー改良土はより具体的にはポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土を用いることとする。また、深い土被り地盤2に対する免震材3としてのポリマー改良土の剛性比は1/10〜1/500程度とする。
【0015】
図4は本発明の地震荷重低減工法を実施した場合と未対策の場合とを対比した拘束力を受ける橋脚や高架橋などの構造物の慣性力と変位の関係を示す図である。
図4において、Aは深い土被り地盤を有する場合(未対策)の特性を示し、Bは本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の特性を示している。
この図から明らかなように、本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の方が、未対策の場合に比べて橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤の拘束が緩和され、地震時の慣性力が小さくなることが分かる。
【0016】
図5は未対策時と比較した本発明の地震荷重低減工法実施時における地盤変位に対する効果を示す模式図であり、図5(a)は未対策の場合、図5(b)は本発明の地震荷重低減工法による対策を実施した場合を示している。
図5(a)に示される未対策の場合は、地盤変位荷重が橋脚や高架橋などの構造物1に直接作用するのに対して、図5(b)に示される本発明の地震荷重の低減工法による対策を実施した場合は、免震材3としてのポリマー改良土が自然地盤の地盤変位荷重に対して緩衝材として機能することで(P=K・x:剛性Kが小さくなる)、構造物1に対する地盤変位荷重が低減される。なお、ポリマー改良土3は自然地盤の変形量に追随して挙動することができる。
【0017】
図6は未対策時における水平応力コンター図、図7は本発明の地震荷重低減工法による対策実施時における水平応力コンター図である。
これらの図から、図7に示される本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の方が、図6に示される深い土被り地盤を有する場合(未対策)に比べて構造物周辺地盤に発生する応力が低下しており、構造物に対する土被り地盤の拘束が緩和されると共に、作用する地震荷重が低減されていることが分かる。
【0018】
図8は周囲の地盤剛性が軟弱な場合(N値2)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図であり、図8(a)は橋脚の高さ(m)に対するせん断力(kN)を、図8(b)は橋脚の高さ(m)に対する曲げモーメント(kNm)を示している。図9は周囲の地盤剛性が一般的な場合(N値5)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図であり、図9(a)は橋脚の高さ(m)に対するせん断力(kN)を、図9(b)は橋脚の高さ(m)に対する曲げモーメント(kNm)を示している。
【0019】
これらの図から明らかなように、橋脚周囲の地盤剛性に関わらず、対策を実施した方がせん断力(kN)及び曲げモーメント(kNm)が低くなっている。
図10は本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図、図11はその斜視模式図である。
これらの図において、11は橋脚や高架橋などの構造物、12は深い土被り地盤、13は複数の円柱形状の免震材であり、複数の円柱形状の免震材13で構造物11の周りを取り囲むようにしている。なお、この実施例における複数の円柱形状の免震材13は円柱形状以外の楕円柱や角柱としてもよい。また、このポリマー改良土はより具体的にはポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土を用いることとする。また、深い土被り地盤12に対する免震材3としてのポリマー改良土の剛性比は1/10〜1/500程度とする。
【0020】
上記した免震材としてのポリマー改良土は、土被り地盤による拘束の緩和による慣性力の低下及び地盤変位荷重の低減により、橋脚や高架橋などの構造物の損傷を抑制することが可能である。その免震材の施工は地盤を掘削して免震材と置換する方法、もしくは地盤を切削し免震材と攪拌混合する方法で実施可能であり、既設構造物にも適用できる。
なお、先行技術として示したトンネルに対して提案された対策工法は、トンネルに作用する地震力が主に直角方向であることから、トンネルの側面に免震材を配置する工法であった。しかしながら、本発明の工法で対象とする橋脚や高架橋などの構造物は、線路方向と線路直角方向の2つの方向に対して対策を行う必要があることから、構造物を取り囲むように免震材を施工するようにしている。
【0021】
上記のように構成することにより、深い土被り地盤による構造物の拘束を緩和して、地震荷重を低減することができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、土被り地盤がある構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、作用する地震荷重を低減させることができる、構造物に作用する地震荷重低減工法として利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1,11 橋脚や高架橋などの構造物
2,12 土被り地盤
3 壁状の免震材
13 複数の円柱形状の免震材
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路などに用いる橋脚や高架橋などの構造物で、深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、免震材を用いたトンネルの耐震対策工法及びその免震壁の施工方法並びにその築造構造体として、下記特許文献1に開示されるものがある。
また、袋体を用いたポリマー地盤改良体の築造方法及びその築造方法に使用する充填用部材として、下記特許文献2に開示されるものがある。
しかし、深い土被り地盤を有する橋脚や高架橋などの構造物に対して、地盤に拘束された場合での慣性力や地盤変位荷重といった地震荷重に対する応答については、検討がほとんどなされておらず、これらに対する対策工法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4387919号公報
【特許文献2】特開2007−100452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の設計では、橋脚や高架橋などの構造物が土被り地盤を有する場合、土被り地盤が構造物を拘束するため耐震性能が向上するものと考えられてきた。しかしながら、近年の研究では、土被り地盤が構造物を拘束する結果、耐力が向上して、かえって大きな慣性力や地盤変位荷重を負担してしまうことがわかった。
図12は橋脚に深い土被り地盤を有する場合と土被り地盤がない場合の拘束力を受ける橋脚の慣性力と変位の関係を示す図である。
【0005】
この図において、aは橋脚に土被り地盤がない場合を示し、bは橋脚に深い土被り地盤を有する場合を示している。
この図から明らかなように、橋脚が土被り地盤を有する場合の方が、土被り地盤がない場合に比べて地震時の応答変位が小さくなるものの、慣性力は土被り地盤を有する場合の方が大きく作用することが分かる。
【0006】
また、地震時の地盤変位により構造物に荷重が作用することが確認されており、土被り地盤が深い場合には作用する地盤変位荷重が増大し、構造物が損傷を受ける可能性があることが分かってきた。
本発明は、上記状況に鑑みて、土被り地盤がある橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して慣性力の負担を低減すると共に、作用する地盤変位荷重を低減させることができる、深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させることを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記構造物が橋脚及び高架橋であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記免震材がポリマー改良土であることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記ポリマー改良土がポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土であることを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記周辺地盤に対する前記免震材の剛性比は1/10〜1/500であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤による拘束を緩和することで、地震時における構造物に対する慣性力及び地盤変位荷重である地震荷重の低減を図ることができ、橋脚や高架橋などの構造物の損傷を抑制することが可能である。その施工は地盤を掘削して免震材と置換する方法、もしくは地盤を切削し、免震材と攪拌混合する方法で実施可能であり、既設構造物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す斜視模式図である。
【図3】比較例としての地震荷重低減工法を実施していない橋脚や高架橋などの構造物を示す断面模式図である。
【図4】本発明の地震荷重低減工法を実施した場合と未対策の場合とを対比した拘束力を受ける橋脚や高架橋などの構造物の慣性力と変位の関係を示す図である。
【図5】未対策時と比較した本発明の地震荷重低減工法実施時における地盤変位に対する効果を示す模式図である。
【図6】未対策時における水平応力コンター図である。
【図7】本発明の地震荷重低減工法による対策実施時における水平応力コンター図である。
【図8】周囲の地盤剛性が軟弱な場合(N値2)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図である。
【図9】周囲の地盤剛性が一般的な場合(N値5)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図である。
【図10】本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図である。
【図11】本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す斜視模式図である。
【図12】橋脚に深い土被り地盤を有する場合と土被り地盤がない場合の拘束力を受ける橋脚の慣性力と変位の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図、図2はその斜視模式図、図3は比較例としての地震荷重低減工法を実施していない橋脚や高架橋などの構造物を示す断面模式図である。
【0014】
これらの図において、1は橋脚や高架橋などの構造物、2は深い土被り地盤、3は壁状の免震材である。ここで、深い土被り地盤2とは基礎の上面から橋脚や高架橋などの構造物1の柱の断面高さの2倍以上の深さをもつ土被り地盤を指している。
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、構造物1の周囲に、深い土被り地盤2に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材3を壁状に構築し、構造物1に対する土被り地盤2の拘束を緩和して、構造物1に作用する地震荷重を低減させることを特徴とした耐震対策工法である。免震材としては、ポリマー改良土を用いることができる。また、このポリマー改良土はより具体的にはポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土を用いることとする。また、深い土被り地盤2に対する免震材3としてのポリマー改良土の剛性比は1/10〜1/500程度とする。
【0015】
図4は本発明の地震荷重低減工法を実施した場合と未対策の場合とを対比した拘束力を受ける橋脚や高架橋などの構造物の慣性力と変位の関係を示す図である。
図4において、Aは深い土被り地盤を有する場合(未対策)の特性を示し、Bは本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の特性を示している。
この図から明らかなように、本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の方が、未対策の場合に比べて橋脚や高架橋などの構造物に対する土被り地盤の拘束が緩和され、地震時の慣性力が小さくなることが分かる。
【0016】
図5は未対策時と比較した本発明の地震荷重低減工法実施時における地盤変位に対する効果を示す模式図であり、図5(a)は未対策の場合、図5(b)は本発明の地震荷重低減工法による対策を実施した場合を示している。
図5(a)に示される未対策の場合は、地盤変位荷重が橋脚や高架橋などの構造物1に直接作用するのに対して、図5(b)に示される本発明の地震荷重の低減工法による対策を実施した場合は、免震材3としてのポリマー改良土が自然地盤の地盤変位荷重に対して緩衝材として機能することで(P=K・x:剛性Kが小さくなる)、構造物1に対する地盤変位荷重が低減される。なお、ポリマー改良土3は自然地盤の変形量に追随して挙動することができる。
【0017】
図6は未対策時における水平応力コンター図、図7は本発明の地震荷重低減工法による対策実施時における水平応力コンター図である。
これらの図から、図7に示される本発明の地震荷重低減工法を実施した場合の方が、図6に示される深い土被り地盤を有する場合(未対策)に比べて構造物周辺地盤に発生する応力が低下しており、構造物に対する土被り地盤の拘束が緩和されると共に、作用する地震荷重が低減されていることが分かる。
【0018】
図8は周囲の地盤剛性が軟弱な場合(N値2)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図であり、図8(a)は橋脚の高さ(m)に対するせん断力(kN)を、図8(b)は橋脚の高さ(m)に対する曲げモーメント(kNm)を示している。図9は周囲の地盤剛性が一般的な場合(N値5)の構造物としての橋脚に発生する断面力分布を示す図であり、図9(a)は橋脚の高さ(m)に対するせん断力(kN)を、図9(b)は橋脚の高さ(m)に対する曲げモーメント(kNm)を示している。
【0019】
これらの図から明らかなように、橋脚周囲の地盤剛性に関わらず、対策を実施した方がせん断力(kN)及び曲げモーメント(kNm)が低くなっている。
図10は本発明の第2実施例を示す深い土被りを有する橋脚や高架橋などの構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法を示す断面模式図、図11はその斜視模式図である。
これらの図において、11は橋脚や高架橋などの構造物、12は深い土被り地盤、13は複数の円柱形状の免震材であり、複数の円柱形状の免震材13で構造物11の周りを取り囲むようにしている。なお、この実施例における複数の円柱形状の免震材13は円柱形状以外の楕円柱や角柱としてもよい。また、このポリマー改良土はより具体的にはポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土を用いることとする。また、深い土被り地盤12に対する免震材3としてのポリマー改良土の剛性比は1/10〜1/500程度とする。
【0020】
上記した免震材としてのポリマー改良土は、土被り地盤による拘束の緩和による慣性力の低下及び地盤変位荷重の低減により、橋脚や高架橋などの構造物の損傷を抑制することが可能である。その免震材の施工は地盤を掘削して免震材と置換する方法、もしくは地盤を切削し免震材と攪拌混合する方法で実施可能であり、既設構造物にも適用できる。
なお、先行技術として示したトンネルに対して提案された対策工法は、トンネルに作用する地震力が主に直角方向であることから、トンネルの側面に免震材を配置する工法であった。しかしながら、本発明の工法で対象とする橋脚や高架橋などの構造物は、線路方向と線路直角方向の2つの方向に対して対策を行う必要があることから、構造物を取り囲むように免震材を施工するようにしている。
【0021】
上記のように構成することにより、深い土被り地盤による構造物の拘束を緩和して、地震荷重を低減することができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法は、土被り地盤がある構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、作用する地震荷重を低減させることができる、構造物に作用する地震荷重低減工法として利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1,11 橋脚や高架橋などの構造物
2,12 土被り地盤
3 壁状の免震材
13 複数の円柱形状の免震材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項2】
請求項1記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記構造物が橋脚及び高架橋であることを特徴とする免震材を用いた深い土被りを有する構造物の地震荷重低減工法。
【請求項3】
請求項1記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記免震材がポリマー改良土であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項4】
請求項3記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記ポリマー改良土がポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記土被り地盤に対する前記免震材の剛性比は1/10〜1/500であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項1】
構造物の周囲に、周辺地盤に対する剛性比が小さく柔らかい材料からなる免震材を壁状もしくは柱状に構築し、前記構造物に対する土被り地盤の拘束を緩和して、前記構造物に作用する地震荷重を低減させることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項2】
請求項1記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記構造物が橋脚及び高架橋であることを特徴とする免震材を用いた深い土被りを有する構造物の地震荷重低減工法。
【請求項3】
請求項1記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記免震材がポリマー改良土であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項4】
請求項3記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記ポリマー改良土がポリビニールアルコール系ポリマー剤及び発泡スチロールビーズ混入土であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法において、前記土被り地盤に対する前記免震材の剛性比は1/10〜1/500であることを特徴とする深い土被りを有する構造物の免震材を用いた地震荷重低減工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−28994(P2013−28994A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167112(P2011−167112)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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