深層水取水装置
【課題】圧縮空気を供給により気泡が混合する深層水を分岐容器8で水と空気に分離し水は揚水し、空気は第2のヘッド部14に送り込んで第2のヘッド部14や中途取水部16からの揚水に利用し、分岐容器24で水と空気に分離し、水は揚水し、空気は1箇所で回収する省エネルギーで循環型の深層水取水装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1のヘッド部1に空気配管4を連通接続している。第1の配管3は、第1のヘッド部1と連通し、上端は第1の分岐容器8内にて出水するようにしている。第1の分岐容器8と第2のヘッド部14は連通管12が連通されている。中途取水部16と連通接続される第2の配管23は第2の分岐容器24内にて出水するようにしている。第1の分岐容器8及び第2の分岐容器24の下部には、夫々第1の湧昇管9、第2の湧昇管25を開口接続している。
【解決手段】第1のヘッド部1に空気配管4を連通接続している。第1の配管3は、第1のヘッド部1と連通し、上端は第1の分岐容器8内にて出水するようにしている。第1の分岐容器8と第2のヘッド部14は連通管12が連通されている。中途取水部16と連通接続される第2の配管23は第2の分岐容器24内にて出水するようにしている。第1の分岐容器8及び第2の分岐容器24の下部には、夫々第1の湧昇管9、第2の湧昇管25を開口接続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋或いは湖の深層部から深層水を深層水と気体に分別して採取するための深層水取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光が水面に届く光量の1%未満の海洋等の深層部に存在する深層水は、第1に表面層水に比較して年中略一定の温度を保持する低温安定性を有すること、第2に太陽光が届かないため植物プランクトンが光合成できず、その結果、窒素、燐、珪酸等の無機塩類が消費されず深層へ沈殿され、無機塩類に富むこと、第3にプランクトンや病原性微生物を含む微生物が極めて少なく、換言すれば物理的及び生物学的清浄性を有すること、第4に大気や陸水からの影響が少ないため化学的汚染度が低いこと、第5に人体にとって大量摂取すると害になるが、銅、亜鉛等の人の健康保持に関わる必須微量元素等をバランスよく含有していること、第6に深層水は太洋を循環してきた熟成された海水であり、有機物が少ないため表層水と比較してpHが低いこと、等の理由により、近年、養殖場海洋牧場の水産資源分野や、ダム湖、湖沼、海洋、港湾等の水質浄化等の環境分野や、海洋温度差発電、濃度差発電、揚水発電等のエネルギー分野等の環境破壊防止目的の環境分野、及び飲料水、化粧水等の健康分野等の種々の幅広い分野に利用されている。
【0003】
深層水を取水するための装置としては、特許文献1〜特許文献3に開示されているものが存在する。しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示の装置は、潮流により湧昇管に横方向への力が作用し、湧昇管上端部は定位置を保持した状態で傾斜し、エアパイプが湧昇管の位置的変化に対応しきれず折損したり、或いは深層水の取り込み口である湧昇管下端開口の位置が上昇し、取水予定の深層部に存在する水の取水が困難であり、海底に取水ポンプと水車等駆動装置よりなる取水装置を設置するため必要な部品点数が多く、装置の組立作業に人手及び時間を要し、高コスト化するという問題点があった。
従来技術の取水ポンプによる汲み上げ式を採用していること、及び主として海岸で深層水を取水しているという問題点を解決するために、本願発明者はポンプに頼らない深層水取水装置を発明し、特願2008−79108を特許出願した(特許文献4参照)。特許文献4に記載の発明は、海面上に設けた圧縮空気供給装置から海洋深層部に降下配設したヘッド部に圧縮空気を送り込むことで、この送り込まれた圧縮空気と共に深層水を揚水する装置であるが、揚水された深層水を取水する場所が1箇所でしかできず、又、汲み上げられた深層水に圧縮空気供給装置からの気泡が混じっており、深層水が空気と深層水に分別されることなく汲み上げられ、空気を有効利用できなかった。
【特許文献1】特開2001−123999号公報
【特許文献2】特開平8−4700号公報
【特許文献3】特開平8−4657号公報
【特許文献4】特開2009−197572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、1個の圧縮空気供給装置の稼動で複数個所で深層水を汲み上げ可能にし、しかも複数個所で液体(水)と気体(空気)を夫々分別採取して水と空気の双方を有効利用することを可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、第1のヘッド部への圧縮空気の供給により気泡の混合した水を第1の分岐容器や第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は夫々の湧昇管から取水可能にし、圧縮空気発生装置からの空気は連通管を介して剛性揚水管からの取水に必要な空気として再利用し、最終的には排気管から回収可能にしたことを特徴とする深層水取水装置である。つまり、下面開口部にストレーナーを配設した中空体よりなる第1のヘッド部内側に、外部に設けた圧縮空気発生装置と連通接続された空気配管を開口連通し、中空体よりなる第1の分岐容器の下部内側には第1の湧昇管が開口連通接続され、第1の配管は第1のヘッド部内部に下端が開口連通接続し、第1の配管の上端は閉塞されて第1の分岐容器内に配設され、第1の配管の上部周面には第1の湧昇管の開口よりも上方位置にて出水孔が開設され、剛性揚水管は、剛性揚水管本体の下端に第2のヘッド部を取り付け、剛性揚水管本体の上端には中途取水部を具備してなり、第2のヘッド部は下面開口にストレーナーが配設された中空体よりなり、第1の分岐容器にて分別された気体が第2のヘッド部へ送気可能に、圧力気体の圧力が所定の値まで上昇すると開放する圧力弁が介装された連通管の導入口が第1のヘッド部に開口し、連通管の導出口が第2のヘッド部に開口して第1のヘッド部と第2のヘッド部を連通管にて連通接続し、中途取水部は、剛性揚水管本体の管径よりも大径の円筒体部に形成され、該円筒体部の軸心と剛性揚水管本体の軸心が同一直線上に位置するように円筒体部内に剛性揚水管本体上端が開口し、円筒体部の内側に於ける剛性揚水管本体外周面から平視放射状にガイド板が配設され、円筒体部下面にはガイド板により周方向に区画された複数の吸水用開口を設け、上面には第2の配管の下端が開口連通接続され、剛性揚水管から揚水され第1の分岐容器から連通管を介して導入された空気の気泡が混合した水を第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は第2の湧昇管へ空気は排気管へ導出可能に、中空体よりなる第2の分岐容器を中途取水部の上方に配設し、第2の分岐容器の下部内側には第2の湧昇管が開口連通接続され、上端が閉塞された第2の配管は第2の分岐容器内にて上部周面に第2の湧昇管開口位置よりも上方に出水孔が開設され、排気管は下端が第2の分岐容器内側に開口連通接続されると共に圧力弁が介装され上端は大気中にて開口されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、第1のヘッド部の下端に軸方向に著しく長い取水用配管を連通接続したことを特徴とする。第1の湧昇管からは極めて低温の深層水が、第2の湧昇管からは第1の湧昇管から取水される深層水よりは水温の高い深層水が採取可能である。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は、海面上に設けた圧縮空気発生装置から海洋深層部に降下配設した第1のヘッド部に圧縮空気を送り込むことで、深層部の複数個所からの深層水を揚水可能である。
又、複数の場所(地域)にて気泡の入っていない深層水を取得できる。揚水された深層水は低温であるため、先ずは発電所にてガスタービンの吸気冷却や蒸気タービンの冷却、温度差発電、ホテル等の大規模宿泊施設や周辺施設の冷房等に使用し、その後、大規模淡水化、水素製造、食品、化粧品、医薬品等の製造等の2次的利用が可能で、経済発展途上地域等での産業育成が期待できる。又、1次的及び2次的利用後であっても、深層水には栄養塩が残留しているため、海に戻すことで海域肥沃、海藻の生育等を通じて海中植物の光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素量を増量可能で地球温暖化防止に寄与できるという効果がある。
又、圧縮空気発生装置から送り込まれた空気を、先ずは第1のヘッド部で第1の湧昇管への揚水に利用し、次に第2のヘッド部に送気して第2の湧昇管への揚水に利用し、排気管から空気のみを回収するので、揚水された深層水を利用して湧水力発電等に利用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の分岐容器と第2のヘッド部を圧力弁を介装した連通管で連通接続することで、圧縮空気発生装置から第1のヘッド部に送り込まれた所定圧力以上の圧縮空気により第1のヘッド部配設位置の深層水を第1の湧昇管から、第2のヘッド部や中途取水部配設位置の深層水を第2の湧昇管から夫々揚水し取水することを実現した。分岐容器に上端を閉塞し上部周面に出水孔を開設することで、気泡のない深層水を取水すること及び圧縮空気発生装置から送り込まれた空気を排気管から回収することを実現可能にした。
【実施例1】
【0008】
図1から図4を参照にして実施例1を説明する。図1及び図2に示すように、第1のヘッド部1は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、下面を開放し上面を閉塞した円筒体に形成されている。第1のヘッド部1の下面開口にはストレーナー2が張設され、海砂等が第1のヘッド部1内に入り込まないようにしている。第1のヘッド部1の上面内側には第1の配管3の下端が気密且つ水密に開口し、第1の配管3と第1のヘッド部1の中空部を連通接続している。空気配管4の下端は気密且つ水密に第1のヘッド部1の上部内側に開口し、空気配管4と第1のヘッド部1の中空部を連通接続している。海面5上に設けた圧縮空気発生装置6からの圧縮空気が第1のヘッド部1の中空部に送り込まれるように空気配管4の上端は圧縮空気発生装置6に連通接続されている。第1のヘッド部1の下端開口は取水用配管7が気密且つ水密に連通接続され、第1のヘッド部1の配設位置よりも一層深い層からの取水を可能にしている。
【0009】
第1の分岐容器8は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、図2及び図3に示すように、上下面を有し閉塞した中空部を有する円筒体に形成され、下部内側には第1の湧昇管9の下端が気密且つ水密に開口連通接続されている。第1の配管3は、第1の分岐容器8の下面を気密且つ水密に貫通し、第1の配管3の上端部は第1の分岐容器8の中空部高さ方向中途位置に配設されている。第1の配管3の上端は閉塞され、上部周面には出水孔10が穿設されている。出水孔10の穿設位置は、第1の分岐容器8の中空部に於ける第1の湧昇管9の開口位置よりも上方に位置している。第1の湧昇管9は海底11を這わせ、上端は陸上で開口している。図1では、第1の湧昇管9の上端開口位置を1箇所にしているが、第1の湧昇管9の中途部分を分岐し、上端が大気中にて開口する複数の分岐管を設け、第1の分岐容器8から揚水される深層水を複数の場所(地域)で取水可能にすることも本願発明に包含される。
【0010】
第1の分岐容器8の上面内側には、連通管12の一端開口である導入口を気密且つ水密に開口し、連通管12を第1の分岐容器8の中空部に連通接続している。連通管12の長さ方向中途位置には、圧縮空気発生装置6から送気された空気圧が所定値になると開く圧力弁29を介装している。
【0011】
耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなる剛性揚水管13は、第2のヘッド部14、剛性揚水管本体15及び中途取水部16とより構成されている。第2のヘッド部14は下面を開放し上面を閉塞した円筒体に形成され、下面開放部にはストレーナー17が張設されている。連通管12の他端開口である導出口は、第2のヘッド部14の上部にて気密且つ水密に開口している。圧縮空気発生装置6から送り込まれ気泡と化して深層水に混ざっていた空気は、第1の分岐容器8にて深層水から分離される。圧力弁29の空気圧が所定値になると圧力弁29が開となり、第1の分岐容器8から空気のみが第2のヘッド部14に送気可能に、第1の分岐容器8の中空部と第2のヘッド部14中空部は連通管12により連通接続されている。第2のヘッド部14の上面には剛性揚水管本体15の下端が気密且つ水密に開口して連通接続されている。第2のヘッド部14にはワイヤーロープ挿通部を設けた取付板18が取り付けられている。
【0012】
中途取水部16は横断面が真円の円筒体部19とガイド板20とより構成されている。剛性揚水管本体15の上端は、剛性揚水管本体15の軸心と円筒体部19の軸心とが一致するように、円筒体部19の下端開口から円筒体部19の軸方向中途位置に亘り配設されている。円筒体部19の内側に配設された剛性揚水管本体15の外周縁と円筒体部19の内面との間にはガイド板20が連設され、剛性揚水管本体15を円筒体部19の内側に固定的に配設している。ガイド板20は、剛性揚水管本体15の外周縁を周方向に一定間隔離隔して平視放射状に設けられ、円筒体部19の下端開口をガイド板20で周方向に複数区画している。円筒体部19の外側に設けた取付板21にはワイヤーロープ挿通部22が設けられている。第2の配管23の下端は、中途取水部16の上面内側に開口し、中途取水部16の内側と連通接続している。
【0013】
第2の分岐容器24は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、第1の分岐容器8と同様に、上下面を有し閉塞した中空部を有する円筒体に形成され、下部には第2の湧昇管25の下端が気密且つ水密に開口連通接続されている。第2の配管23は第2の分岐容器24の下面を気密且つ水密に貫通し、第2の配管23の上端部は、第2の分岐容器24の中空部高さ方向中途位置に配設されている。第2の配管23の上端は閉塞され、上部周面には出水孔26が穿設されている。出水孔26の穿設位置は、第2の分岐容器24の中空部に於ける第2の湧昇管25の開口位置よりも上方に位置している。第2の分岐容器24の上面内側には排気管27の下端が開口している。排気管27は、空気圧が所定値になると開く圧力弁30が介装されて上方に延び、上端吐出口は大気中にて開口されている。
【0014】
実施例1の使用状態について説明する。図1及び図4に示すように、海面5の上方でワイヤーロープ28の上端を所定位置に取り付け、海中にてワイヤーロープ28をワイヤーロープ挿通部22に挿通し、ワイヤーロープ28の下端を第2のヘッド部14の取付板18、18に取り付け、剛性揚水管13の海中での位置的安定性を保持している。海中に於ける第1のヘッド部1の配設位置は、第2のヘッド部14の海中位置よりも深い位置であることを必要とする。第1の湧昇管9、第2の湧昇管25及び排気管27の上端吐出口は大気中にて開口している。
【0015】
次に、作用について説明する。圧縮空気発生装置6を駆動し、圧縮空気発生装置6から空気配管4を通って第1のヘッド部1の内側に高圧の圧縮空気を噴出する。第1のヘッド部1の内側に噴出した空気は、深層水に包み込まれて次から次へと粒状の気泡となる。気泡を有する深層水は第1の配管3内を上昇する。第1の配管3内の気泡を有する深層水の上昇により、空気配管4の下端開口より上方に位置する気泡を有する深層水は上昇を開始し、湧昇流が発生する。第1の配管3内の上部の湧昇流は第1の配管3内下部の湧昇流を促し、第1のヘッド部1の下面開口からストレーナー2で濾過された深層水が第1のヘッド部1から第1の配管3内を上昇する。第1の配管3内を上昇した気泡を有する深層水は、第1の配管3の上部に穿設した出水孔10より落下し、第1の分岐容器8内に送り込まれる。出水孔10から第1の分岐容器8内に落下した深層水の気泡は、その浮力で上昇し気泡は潰れる。詳しくは、気泡内の飽和蒸気圧が深層水から気泡に作用する圧力よりも小さくなり、深層水の圧力で気泡を圧縮して潰すのである。第1の分岐容器8の内側に於いて気泡を含まない深層水が下部に、空気が上部に夫々分離される。第1の分岐容器8の下部に送り込まれた気泡を有しない深層水は第1の湧昇管9へ送り込まれ、第1の湧昇管9内を導出路として陸上へ送り出される。
【0016】
第1の分岐容器8内にて深層水から分離された空気は、第1の分岐容器8内に於ける深層水の水面から連通管12の導入口を通って圧力弁29に亘る範囲に貯留される。圧力弁29が閉の状態では、揚水された深層水のみが第1の湧昇管9より揚水され、湧昇管9の上端開口より吐出され取水される。圧縮空気発生装置6から圧縮空気が、次から次へと第1のヘッド部1に送り込まれ、第1の配管3を通って第1の分岐容器8に送り込まれる。圧力弁29に負荷する空気圧が所定値になると圧力弁29が開となる。圧力弁29が開放するために設定した所定値以上の量の空気は、連通管12内を通って第2のヘッド部14の上部に設けた連通管12の他端開口である導出口から第2のヘッド部14内へ送り込まれる。第2のヘッド部14の内側には、高圧の圧縮空気が噴出される。圧力弁29が開状態では、第1の分岐容器8内の空気圧は一定に保持される。
【0017】
第2のヘッド部14の中空部に噴出した空気は、深層水に包み込まれて次から次へと粒状の気泡となる。気泡を有する深層水は剛性揚水管本体15内を上昇する。剛性揚水管本体15内の気泡を有する深層水の上昇により、連通管12の他端開口より上方に位置する気泡を有する深層水は上昇を開始し、湧昇流が発生する。剛性揚水管本体15内の上部の湧昇流は剛性揚水管本体15内下部の湧昇流を促し、第2のヘッド部14の下面開口からストレーナー17で濾過された深層水が第2のヘッド部14から剛性揚水管本体15内を上昇する。又、剛性揚水管本体15の上端開口より気泡の浮力で上昇する気泡と共に、該気泡よりも上方に位置する深層水は上昇し、第2の配管23内で湧昇流が発生する。第2の配管23内の湧昇流は、中途取水部16のガイド板20により区画された円筒体部19の下面開口から深層水を取り込む。円筒体部19の下面開口から取り込まれた深層水は、円筒体部19内を上昇し、次いで第2の配管23内を上昇する。ガイド板20は、円筒体部19の下面開口から取り込む深層水を静流(層流)化することで、円筒体部19内に下面開口から取り込む水量を増量化するために設けたものである。
【0018】
第2の配管23内を上昇した気泡を有する深層水は、第2の配管23の上部に穿設した出水孔26より第2の分岐容器24内に落下する。出水孔26から第2の分岐容器24内に落下した深層水の気泡は、その浮力で上へ上がり気泡内の飽和蒸気圧が深層水から気泡に作用する圧力よりも小さくなり、深層水の圧力で気泡を圧縮してつぶす。第2の分岐容器24の内側に於いて、気泡を含まない深層水が下部に、空気が上部に夫々分離される。第2の分岐容器24の下部に送り込まれた気泡を有しない深層水は第2の湧昇管25へ送り込まれ、第2の湧昇管25内を導出路として陸上へ送り出され取水される。第2の分岐容器24内にて深層水から分離された空気は、第2の分岐容器24の上部から排気管27へ導出される。圧力弁30に負荷する空気圧が所定値になると、圧力弁30は開となる。第2の分岐容器24内の余分な空気は、大気中に排気されるか或は回収される。第2の分岐容器24内の空気圧は、圧力弁30の開弁により一定値に保持される。排気管27より排気或は回収される空気は、圧縮空気発生装置6から供給された空気を深層水取水のために海中深層部で利用したものである。
【0019】
実施例1の深層水取水装置では、第1の配管3、第1の湧昇管9の内半径をrとすると、圧縮空気発生装置6からの空気供給量は毎分π2r3×60×(第1のヘッド部1の気圧)とした場合、第2の配管23と第2の湧昇管25の内半径をrとすると、連通管12からの空気供給量は毎分π2r3×60×(第2のヘッド部14の気圧)とした場合、第1の湧昇管9からの揚水量は海面5の位置で毎分48πr3×60で、水速は毎秒48rとなる。海面5からの第2の分岐容器24と第2のヘッド部14の設置位置は、第2のヘッド部14の底面位置の気圧が第2の分岐容器24の底面位置の気圧の2倍になることが好適である。具体的には、第2の分岐容器24の底面が海面下100πrの位置であり、第2のヘッド部14の底面は200πrの位置に配設される。又、海面5から出水孔10までの垂直距離Dと第1の湧昇管9が揚水が可能な海面に対して上方向垂直距離Dは等しい。第1の湧昇管9が揚水が可能な海面5からの垂直距離Dは、出水孔10の位置の気圧をXとすると、D(単位:m)=(X−1)×10となる。海面5から出水孔26までの垂直距離Bと第2の湧昇管25が揚水が可能な海面に対して上方向垂直距離Bは等しい。第2の湧昇管25が揚水が可能な海面5からの垂直距離Bは、出水孔26の位置の気圧をYとすると、B(単位:m)=(Y−1)×10となる。
【0020】
実施例1の深層水取水装置は、第1のヘッド部1から第1のヘッド部1よりも上方に配設されている第1の分岐容器8まで送り込まれた気泡が混合されている深層水を、深層水と空気に分離し、この分離された空気の圧力を利用して第2のヘッド部14及び中途取水部16から深層水を揚水可能にしたので、送気された圧縮空気を少なくとも2度は利用でき、省エネルギーで経済的であるという効果がある。
第1のヘッド部1の配設位置或は取水用配管7の下端開口配設位置の深層水を第1の湧昇管9の上端開口から採水可能にし、第2のヘッド部14や中途取水部16配設位置の深層水を第2の湧昇管25の上端開口から採水可能であるため、第1の湧昇管9の上端開口や第2の湧昇管25の上端開口の位置を施設近傍に設けることで、複数施設にて揚水発電、水温差を利用した温度差発電、発電所のガスタービンの吸気冷却や蒸気タービンの復水器の冷却等の様々な用途に利用できるという効果がある。
圧縮空気発生装置6の駆動エネルギー源を、海面や湖面に設置した太陽光電池パネルから発生した電力、或は水中に設けた本願装置を利用した湧水力発電の電力とすることで、循環型の省エネルギー深層水取水装置となることが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】深層水取水装置の使用状態を示す説明図である。(実施例1)
【図2】第1のヘッド部、第1の配管、圧力弁及び第1の分岐容器の取り付け状態を示す説明図である。(実施例1)
【図3】図2の第1の分岐容器のA−A線断面図である。(実施例1)
【図4】剛性揚水管、第2の配管、圧力弁及び第2の分岐容器の取り付け状態を示す説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0022】
1 第1のヘッド部
2、17 ストレーナー
3 第1の配管
4 空気配管
6 圧縮空気発生装置
7 取水用配管
8 第1の分岐容器
9 第1の湧昇管
10、26 出水孔
12 連通管
13 剛性揚水管
14 第2のヘッド部
15 剛性揚水管本体
16 中途取水部
19 円筒体部
20 ガイド板
23 第2の配管
24 第2の分岐容器
25 第2の湧昇管
27 排気管
29、30 圧力弁
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋或いは湖の深層部から深層水を深層水と気体に分別して採取するための深層水取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光が水面に届く光量の1%未満の海洋等の深層部に存在する深層水は、第1に表面層水に比較して年中略一定の温度を保持する低温安定性を有すること、第2に太陽光が届かないため植物プランクトンが光合成できず、その結果、窒素、燐、珪酸等の無機塩類が消費されず深層へ沈殿され、無機塩類に富むこと、第3にプランクトンや病原性微生物を含む微生物が極めて少なく、換言すれば物理的及び生物学的清浄性を有すること、第4に大気や陸水からの影響が少ないため化学的汚染度が低いこと、第5に人体にとって大量摂取すると害になるが、銅、亜鉛等の人の健康保持に関わる必須微量元素等をバランスよく含有していること、第6に深層水は太洋を循環してきた熟成された海水であり、有機物が少ないため表層水と比較してpHが低いこと、等の理由により、近年、養殖場海洋牧場の水産資源分野や、ダム湖、湖沼、海洋、港湾等の水質浄化等の環境分野や、海洋温度差発電、濃度差発電、揚水発電等のエネルギー分野等の環境破壊防止目的の環境分野、及び飲料水、化粧水等の健康分野等の種々の幅広い分野に利用されている。
【0003】
深層水を取水するための装置としては、特許文献1〜特許文献3に開示されているものが存在する。しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示の装置は、潮流により湧昇管に横方向への力が作用し、湧昇管上端部は定位置を保持した状態で傾斜し、エアパイプが湧昇管の位置的変化に対応しきれず折損したり、或いは深層水の取り込み口である湧昇管下端開口の位置が上昇し、取水予定の深層部に存在する水の取水が困難であり、海底に取水ポンプと水車等駆動装置よりなる取水装置を設置するため必要な部品点数が多く、装置の組立作業に人手及び時間を要し、高コスト化するという問題点があった。
従来技術の取水ポンプによる汲み上げ式を採用していること、及び主として海岸で深層水を取水しているという問題点を解決するために、本願発明者はポンプに頼らない深層水取水装置を発明し、特願2008−79108を特許出願した(特許文献4参照)。特許文献4に記載の発明は、海面上に設けた圧縮空気供給装置から海洋深層部に降下配設したヘッド部に圧縮空気を送り込むことで、この送り込まれた圧縮空気と共に深層水を揚水する装置であるが、揚水された深層水を取水する場所が1箇所でしかできず、又、汲み上げられた深層水に圧縮空気供給装置からの気泡が混じっており、深層水が空気と深層水に分別されることなく汲み上げられ、空気を有効利用できなかった。
【特許文献1】特開2001−123999号公報
【特許文献2】特開平8−4700号公報
【特許文献3】特開平8−4657号公報
【特許文献4】特開2009−197572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、1個の圧縮空気供給装置の稼動で複数個所で深層水を汲み上げ可能にし、しかも複数個所で液体(水)と気体(空気)を夫々分別採取して水と空気の双方を有効利用することを可能にした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、第1のヘッド部への圧縮空気の供給により気泡の混合した水を第1の分岐容器や第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は夫々の湧昇管から取水可能にし、圧縮空気発生装置からの空気は連通管を介して剛性揚水管からの取水に必要な空気として再利用し、最終的には排気管から回収可能にしたことを特徴とする深層水取水装置である。つまり、下面開口部にストレーナーを配設した中空体よりなる第1のヘッド部内側に、外部に設けた圧縮空気発生装置と連通接続された空気配管を開口連通し、中空体よりなる第1の分岐容器の下部内側には第1の湧昇管が開口連通接続され、第1の配管は第1のヘッド部内部に下端が開口連通接続し、第1の配管の上端は閉塞されて第1の分岐容器内に配設され、第1の配管の上部周面には第1の湧昇管の開口よりも上方位置にて出水孔が開設され、剛性揚水管は、剛性揚水管本体の下端に第2のヘッド部を取り付け、剛性揚水管本体の上端には中途取水部を具備してなり、第2のヘッド部は下面開口にストレーナーが配設された中空体よりなり、第1の分岐容器にて分別された気体が第2のヘッド部へ送気可能に、圧力気体の圧力が所定の値まで上昇すると開放する圧力弁が介装された連通管の導入口が第1のヘッド部に開口し、連通管の導出口が第2のヘッド部に開口して第1のヘッド部と第2のヘッド部を連通管にて連通接続し、中途取水部は、剛性揚水管本体の管径よりも大径の円筒体部に形成され、該円筒体部の軸心と剛性揚水管本体の軸心が同一直線上に位置するように円筒体部内に剛性揚水管本体上端が開口し、円筒体部の内側に於ける剛性揚水管本体外周面から平視放射状にガイド板が配設され、円筒体部下面にはガイド板により周方向に区画された複数の吸水用開口を設け、上面には第2の配管の下端が開口連通接続され、剛性揚水管から揚水され第1の分岐容器から連通管を介して導入された空気の気泡が混合した水を第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は第2の湧昇管へ空気は排気管へ導出可能に、中空体よりなる第2の分岐容器を中途取水部の上方に配設し、第2の分岐容器の下部内側には第2の湧昇管が開口連通接続され、上端が閉塞された第2の配管は第2の分岐容器内にて上部周面に第2の湧昇管開口位置よりも上方に出水孔が開設され、排気管は下端が第2の分岐容器内側に開口連通接続されると共に圧力弁が介装され上端は大気中にて開口されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、第1のヘッド部の下端に軸方向に著しく長い取水用配管を連通接続したことを特徴とする。第1の湧昇管からは極めて低温の深層水が、第2の湧昇管からは第1の湧昇管から取水される深層水よりは水温の高い深層水が採取可能である。
【発明の効果】
【0006】
本願発明は、海面上に設けた圧縮空気発生装置から海洋深層部に降下配設した第1のヘッド部に圧縮空気を送り込むことで、深層部の複数個所からの深層水を揚水可能である。
又、複数の場所(地域)にて気泡の入っていない深層水を取得できる。揚水された深層水は低温であるため、先ずは発電所にてガスタービンの吸気冷却や蒸気タービンの冷却、温度差発電、ホテル等の大規模宿泊施設や周辺施設の冷房等に使用し、その後、大規模淡水化、水素製造、食品、化粧品、医薬品等の製造等の2次的利用が可能で、経済発展途上地域等での産業育成が期待できる。又、1次的及び2次的利用後であっても、深層水には栄養塩が残留しているため、海に戻すことで海域肥沃、海藻の生育等を通じて海中植物の光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素量を増量可能で地球温暖化防止に寄与できるという効果がある。
又、圧縮空気発生装置から送り込まれた空気を、先ずは第1のヘッド部で第1の湧昇管への揚水に利用し、次に第2のヘッド部に送気して第2の湧昇管への揚水に利用し、排気管から空気のみを回収するので、揚水された深層水を利用して湧水力発電等に利用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の分岐容器と第2のヘッド部を圧力弁を介装した連通管で連通接続することで、圧縮空気発生装置から第1のヘッド部に送り込まれた所定圧力以上の圧縮空気により第1のヘッド部配設位置の深層水を第1の湧昇管から、第2のヘッド部や中途取水部配設位置の深層水を第2の湧昇管から夫々揚水し取水することを実現した。分岐容器に上端を閉塞し上部周面に出水孔を開設することで、気泡のない深層水を取水すること及び圧縮空気発生装置から送り込まれた空気を排気管から回収することを実現可能にした。
【実施例1】
【0008】
図1から図4を参照にして実施例1を説明する。図1及び図2に示すように、第1のヘッド部1は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、下面を開放し上面を閉塞した円筒体に形成されている。第1のヘッド部1の下面開口にはストレーナー2が張設され、海砂等が第1のヘッド部1内に入り込まないようにしている。第1のヘッド部1の上面内側には第1の配管3の下端が気密且つ水密に開口し、第1の配管3と第1のヘッド部1の中空部を連通接続している。空気配管4の下端は気密且つ水密に第1のヘッド部1の上部内側に開口し、空気配管4と第1のヘッド部1の中空部を連通接続している。海面5上に設けた圧縮空気発生装置6からの圧縮空気が第1のヘッド部1の中空部に送り込まれるように空気配管4の上端は圧縮空気発生装置6に連通接続されている。第1のヘッド部1の下端開口は取水用配管7が気密且つ水密に連通接続され、第1のヘッド部1の配設位置よりも一層深い層からの取水を可能にしている。
【0009】
第1の分岐容器8は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、図2及び図3に示すように、上下面を有し閉塞した中空部を有する円筒体に形成され、下部内側には第1の湧昇管9の下端が気密且つ水密に開口連通接続されている。第1の配管3は、第1の分岐容器8の下面を気密且つ水密に貫通し、第1の配管3の上端部は第1の分岐容器8の中空部高さ方向中途位置に配設されている。第1の配管3の上端は閉塞され、上部周面には出水孔10が穿設されている。出水孔10の穿設位置は、第1の分岐容器8の中空部に於ける第1の湧昇管9の開口位置よりも上方に位置している。第1の湧昇管9は海底11を這わせ、上端は陸上で開口している。図1では、第1の湧昇管9の上端開口位置を1箇所にしているが、第1の湧昇管9の中途部分を分岐し、上端が大気中にて開口する複数の分岐管を設け、第1の分岐容器8から揚水される深層水を複数の場所(地域)で取水可能にすることも本願発明に包含される。
【0010】
第1の分岐容器8の上面内側には、連通管12の一端開口である導入口を気密且つ水密に開口し、連通管12を第1の分岐容器8の中空部に連通接続している。連通管12の長さ方向中途位置には、圧縮空気発生装置6から送気された空気圧が所定値になると開く圧力弁29を介装している。
【0011】
耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなる剛性揚水管13は、第2のヘッド部14、剛性揚水管本体15及び中途取水部16とより構成されている。第2のヘッド部14は下面を開放し上面を閉塞した円筒体に形成され、下面開放部にはストレーナー17が張設されている。連通管12の他端開口である導出口は、第2のヘッド部14の上部にて気密且つ水密に開口している。圧縮空気発生装置6から送り込まれ気泡と化して深層水に混ざっていた空気は、第1の分岐容器8にて深層水から分離される。圧力弁29の空気圧が所定値になると圧力弁29が開となり、第1の分岐容器8から空気のみが第2のヘッド部14に送気可能に、第1の分岐容器8の中空部と第2のヘッド部14中空部は連通管12により連通接続されている。第2のヘッド部14の上面には剛性揚水管本体15の下端が気密且つ水密に開口して連通接続されている。第2のヘッド部14にはワイヤーロープ挿通部を設けた取付板18が取り付けられている。
【0012】
中途取水部16は横断面が真円の円筒体部19とガイド板20とより構成されている。剛性揚水管本体15の上端は、剛性揚水管本体15の軸心と円筒体部19の軸心とが一致するように、円筒体部19の下端開口から円筒体部19の軸方向中途位置に亘り配設されている。円筒体部19の内側に配設された剛性揚水管本体15の外周縁と円筒体部19の内面との間にはガイド板20が連設され、剛性揚水管本体15を円筒体部19の内側に固定的に配設している。ガイド板20は、剛性揚水管本体15の外周縁を周方向に一定間隔離隔して平視放射状に設けられ、円筒体部19の下端開口をガイド板20で周方向に複数区画している。円筒体部19の外側に設けた取付板21にはワイヤーロープ挿通部22が設けられている。第2の配管23の下端は、中途取水部16の上面内側に開口し、中途取水部16の内側と連通接続している。
【0013】
第2の分岐容器24は耐薬品性、防錆性、耐腐食性及び剛性を有する材料よりなり、第1の分岐容器8と同様に、上下面を有し閉塞した中空部を有する円筒体に形成され、下部には第2の湧昇管25の下端が気密且つ水密に開口連通接続されている。第2の配管23は第2の分岐容器24の下面を気密且つ水密に貫通し、第2の配管23の上端部は、第2の分岐容器24の中空部高さ方向中途位置に配設されている。第2の配管23の上端は閉塞され、上部周面には出水孔26が穿設されている。出水孔26の穿設位置は、第2の分岐容器24の中空部に於ける第2の湧昇管25の開口位置よりも上方に位置している。第2の分岐容器24の上面内側には排気管27の下端が開口している。排気管27は、空気圧が所定値になると開く圧力弁30が介装されて上方に延び、上端吐出口は大気中にて開口されている。
【0014】
実施例1の使用状態について説明する。図1及び図4に示すように、海面5の上方でワイヤーロープ28の上端を所定位置に取り付け、海中にてワイヤーロープ28をワイヤーロープ挿通部22に挿通し、ワイヤーロープ28の下端を第2のヘッド部14の取付板18、18に取り付け、剛性揚水管13の海中での位置的安定性を保持している。海中に於ける第1のヘッド部1の配設位置は、第2のヘッド部14の海中位置よりも深い位置であることを必要とする。第1の湧昇管9、第2の湧昇管25及び排気管27の上端吐出口は大気中にて開口している。
【0015】
次に、作用について説明する。圧縮空気発生装置6を駆動し、圧縮空気発生装置6から空気配管4を通って第1のヘッド部1の内側に高圧の圧縮空気を噴出する。第1のヘッド部1の内側に噴出した空気は、深層水に包み込まれて次から次へと粒状の気泡となる。気泡を有する深層水は第1の配管3内を上昇する。第1の配管3内の気泡を有する深層水の上昇により、空気配管4の下端開口より上方に位置する気泡を有する深層水は上昇を開始し、湧昇流が発生する。第1の配管3内の上部の湧昇流は第1の配管3内下部の湧昇流を促し、第1のヘッド部1の下面開口からストレーナー2で濾過された深層水が第1のヘッド部1から第1の配管3内を上昇する。第1の配管3内を上昇した気泡を有する深層水は、第1の配管3の上部に穿設した出水孔10より落下し、第1の分岐容器8内に送り込まれる。出水孔10から第1の分岐容器8内に落下した深層水の気泡は、その浮力で上昇し気泡は潰れる。詳しくは、気泡内の飽和蒸気圧が深層水から気泡に作用する圧力よりも小さくなり、深層水の圧力で気泡を圧縮して潰すのである。第1の分岐容器8の内側に於いて気泡を含まない深層水が下部に、空気が上部に夫々分離される。第1の分岐容器8の下部に送り込まれた気泡を有しない深層水は第1の湧昇管9へ送り込まれ、第1の湧昇管9内を導出路として陸上へ送り出される。
【0016】
第1の分岐容器8内にて深層水から分離された空気は、第1の分岐容器8内に於ける深層水の水面から連通管12の導入口を通って圧力弁29に亘る範囲に貯留される。圧力弁29が閉の状態では、揚水された深層水のみが第1の湧昇管9より揚水され、湧昇管9の上端開口より吐出され取水される。圧縮空気発生装置6から圧縮空気が、次から次へと第1のヘッド部1に送り込まれ、第1の配管3を通って第1の分岐容器8に送り込まれる。圧力弁29に負荷する空気圧が所定値になると圧力弁29が開となる。圧力弁29が開放するために設定した所定値以上の量の空気は、連通管12内を通って第2のヘッド部14の上部に設けた連通管12の他端開口である導出口から第2のヘッド部14内へ送り込まれる。第2のヘッド部14の内側には、高圧の圧縮空気が噴出される。圧力弁29が開状態では、第1の分岐容器8内の空気圧は一定に保持される。
【0017】
第2のヘッド部14の中空部に噴出した空気は、深層水に包み込まれて次から次へと粒状の気泡となる。気泡を有する深層水は剛性揚水管本体15内を上昇する。剛性揚水管本体15内の気泡を有する深層水の上昇により、連通管12の他端開口より上方に位置する気泡を有する深層水は上昇を開始し、湧昇流が発生する。剛性揚水管本体15内の上部の湧昇流は剛性揚水管本体15内下部の湧昇流を促し、第2のヘッド部14の下面開口からストレーナー17で濾過された深層水が第2のヘッド部14から剛性揚水管本体15内を上昇する。又、剛性揚水管本体15の上端開口より気泡の浮力で上昇する気泡と共に、該気泡よりも上方に位置する深層水は上昇し、第2の配管23内で湧昇流が発生する。第2の配管23内の湧昇流は、中途取水部16のガイド板20により区画された円筒体部19の下面開口から深層水を取り込む。円筒体部19の下面開口から取り込まれた深層水は、円筒体部19内を上昇し、次いで第2の配管23内を上昇する。ガイド板20は、円筒体部19の下面開口から取り込む深層水を静流(層流)化することで、円筒体部19内に下面開口から取り込む水量を増量化するために設けたものである。
【0018】
第2の配管23内を上昇した気泡を有する深層水は、第2の配管23の上部に穿設した出水孔26より第2の分岐容器24内に落下する。出水孔26から第2の分岐容器24内に落下した深層水の気泡は、その浮力で上へ上がり気泡内の飽和蒸気圧が深層水から気泡に作用する圧力よりも小さくなり、深層水の圧力で気泡を圧縮してつぶす。第2の分岐容器24の内側に於いて、気泡を含まない深層水が下部に、空気が上部に夫々分離される。第2の分岐容器24の下部に送り込まれた気泡を有しない深層水は第2の湧昇管25へ送り込まれ、第2の湧昇管25内を導出路として陸上へ送り出され取水される。第2の分岐容器24内にて深層水から分離された空気は、第2の分岐容器24の上部から排気管27へ導出される。圧力弁30に負荷する空気圧が所定値になると、圧力弁30は開となる。第2の分岐容器24内の余分な空気は、大気中に排気されるか或は回収される。第2の分岐容器24内の空気圧は、圧力弁30の開弁により一定値に保持される。排気管27より排気或は回収される空気は、圧縮空気発生装置6から供給された空気を深層水取水のために海中深層部で利用したものである。
【0019】
実施例1の深層水取水装置では、第1の配管3、第1の湧昇管9の内半径をrとすると、圧縮空気発生装置6からの空気供給量は毎分π2r3×60×(第1のヘッド部1の気圧)とした場合、第2の配管23と第2の湧昇管25の内半径をrとすると、連通管12からの空気供給量は毎分π2r3×60×(第2のヘッド部14の気圧)とした場合、第1の湧昇管9からの揚水量は海面5の位置で毎分48πr3×60で、水速は毎秒48rとなる。海面5からの第2の分岐容器24と第2のヘッド部14の設置位置は、第2のヘッド部14の底面位置の気圧が第2の分岐容器24の底面位置の気圧の2倍になることが好適である。具体的には、第2の分岐容器24の底面が海面下100πrの位置であり、第2のヘッド部14の底面は200πrの位置に配設される。又、海面5から出水孔10までの垂直距離Dと第1の湧昇管9が揚水が可能な海面に対して上方向垂直距離Dは等しい。第1の湧昇管9が揚水が可能な海面5からの垂直距離Dは、出水孔10の位置の気圧をXとすると、D(単位:m)=(X−1)×10となる。海面5から出水孔26までの垂直距離Bと第2の湧昇管25が揚水が可能な海面に対して上方向垂直距離Bは等しい。第2の湧昇管25が揚水が可能な海面5からの垂直距離Bは、出水孔26の位置の気圧をYとすると、B(単位:m)=(Y−1)×10となる。
【0020】
実施例1の深層水取水装置は、第1のヘッド部1から第1のヘッド部1よりも上方に配設されている第1の分岐容器8まで送り込まれた気泡が混合されている深層水を、深層水と空気に分離し、この分離された空気の圧力を利用して第2のヘッド部14及び中途取水部16から深層水を揚水可能にしたので、送気された圧縮空気を少なくとも2度は利用でき、省エネルギーで経済的であるという効果がある。
第1のヘッド部1の配設位置或は取水用配管7の下端開口配設位置の深層水を第1の湧昇管9の上端開口から採水可能にし、第2のヘッド部14や中途取水部16配設位置の深層水を第2の湧昇管25の上端開口から採水可能であるため、第1の湧昇管9の上端開口や第2の湧昇管25の上端開口の位置を施設近傍に設けることで、複数施設にて揚水発電、水温差を利用した温度差発電、発電所のガスタービンの吸気冷却や蒸気タービンの復水器の冷却等の様々な用途に利用できるという効果がある。
圧縮空気発生装置6の駆動エネルギー源を、海面や湖面に設置した太陽光電池パネルから発生した電力、或は水中に設けた本願装置を利用した湧水力発電の電力とすることで、循環型の省エネルギー深層水取水装置となることが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】深層水取水装置の使用状態を示す説明図である。(実施例1)
【図2】第1のヘッド部、第1の配管、圧力弁及び第1の分岐容器の取り付け状態を示す説明図である。(実施例1)
【図3】図2の第1の分岐容器のA−A線断面図である。(実施例1)
【図4】剛性揚水管、第2の配管、圧力弁及び第2の分岐容器の取り付け状態を示す説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0022】
1 第1のヘッド部
2、17 ストレーナー
3 第1の配管
4 空気配管
6 圧縮空気発生装置
7 取水用配管
8 第1の分岐容器
9 第1の湧昇管
10、26 出水孔
12 連通管
13 剛性揚水管
14 第2のヘッド部
15 剛性揚水管本体
16 中途取水部
19 円筒体部
20 ガイド板
23 第2の配管
24 第2の分岐容器
25 第2の湧昇管
27 排気管
29、30 圧力弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヘッド部への圧縮空気の供給により気泡の混合した水を分岐容器にて水と空気に分け、水は湧昇管へ、空気は排気管から排気回収可能にした深層水取水装置であって、
下面開口部にストレーナーを配設した中空体よりなる第1のヘッド部内側に、外部に設けた圧縮空気発生装置と連通接続された空気配管を開口連通し、
中空体よりなる第1の分岐容器の下部内側には第1の湧昇管が開口連通接続され、第1の配管は前記第1のヘッド部内部に下端が開口連通接続し、第1の配管の上端は閉塞されて前記第1の分岐容器内に配設され、前記第1の配管の上部周面には前記第1の湧昇管の開口よりも上方位置にて出水孔が開設され、
剛性揚水管は、剛性揚水管本体の下端に第2のヘッド部を取り付け、剛性揚水管本体の上端には中途取水部を具備してなり、
前記第2のヘッド部は下面開口にストレーナーが配設された中空体よりなり、前記第1の分岐容器にて分別された気体が第2のヘッド部へ送気可能に、圧力気体の圧力が所定の値まで上昇すると開放する圧力弁が介装された連通管の導入口が第1のヘッド部に開口し、連通管の導出口が第2のヘッド部に開口して第1のヘッド部と第2のヘッド部を連通管にて連通接続し、
前記中途取水部は、前記剛性揚水管本体の管径よりも大径の円筒体部に形成され、該円筒体部の軸心と前記剛性揚水管本体の軸心が同一直線上に位置するように前記円筒体部内に前記剛性揚水管本体上端が開口し、前記円筒体部の内側に於ける前記剛性揚水管本体外周面から平視放射状にガイド板が配設され、前記円筒体部下面には前記ガイド板により周方向に区画された複数の吸水用開口を設け、上面には第2の配管の下端が開口連通接続され、
前記剛性揚水管から揚水され第1の分岐容器から前記連通管を介して導入された空気の気泡が混合した水を第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は第2の湧昇管へ空気は排気管へ導出可能に、中空体よりなる第2の分岐容器を前記中途取水部の上方に配設し、前記第2の分岐容器の下部内側には第2の湧昇管が開口連通接続され、上端が閉塞された第2の配管は前記第2の分岐容器内にて上部周面に第2の湧昇管開口位置よりも上方に出水孔が開設され、排気管は下端が第2の分岐容器内側に開口連通接続されると共に圧力弁が介装され上端は火気中にて開口されていることを特徴とする深層水取水装置。
【請求項2】
上記第1のヘッド部の下端には軸方向に著しく長い取水用配管を連通接続したことを特徴とする請求項1に記載の深層水取水装置。
【請求項1】
第1のヘッド部への圧縮空気の供給により気泡の混合した水を分岐容器にて水と空気に分け、水は湧昇管へ、空気は排気管から排気回収可能にした深層水取水装置であって、
下面開口部にストレーナーを配設した中空体よりなる第1のヘッド部内側に、外部に設けた圧縮空気発生装置と連通接続された空気配管を開口連通し、
中空体よりなる第1の分岐容器の下部内側には第1の湧昇管が開口連通接続され、第1の配管は前記第1のヘッド部内部に下端が開口連通接続し、第1の配管の上端は閉塞されて前記第1の分岐容器内に配設され、前記第1の配管の上部周面には前記第1の湧昇管の開口よりも上方位置にて出水孔が開設され、
剛性揚水管は、剛性揚水管本体の下端に第2のヘッド部を取り付け、剛性揚水管本体の上端には中途取水部を具備してなり、
前記第2のヘッド部は下面開口にストレーナーが配設された中空体よりなり、前記第1の分岐容器にて分別された気体が第2のヘッド部へ送気可能に、圧力気体の圧力が所定の値まで上昇すると開放する圧力弁が介装された連通管の導入口が第1のヘッド部に開口し、連通管の導出口が第2のヘッド部に開口して第1のヘッド部と第2のヘッド部を連通管にて連通接続し、
前記中途取水部は、前記剛性揚水管本体の管径よりも大径の円筒体部に形成され、該円筒体部の軸心と前記剛性揚水管本体の軸心が同一直線上に位置するように前記円筒体部内に前記剛性揚水管本体上端が開口し、前記円筒体部の内側に於ける前記剛性揚水管本体外周面から平視放射状にガイド板が配設され、前記円筒体部下面には前記ガイド板により周方向に区画された複数の吸水用開口を設け、上面には第2の配管の下端が開口連通接続され、
前記剛性揚水管から揚水され第1の分岐容器から前記連通管を介して導入された空気の気泡が混合した水を第2の分岐容器にて水と空気に分け、水は第2の湧昇管へ空気は排気管へ導出可能に、中空体よりなる第2の分岐容器を前記中途取水部の上方に配設し、前記第2の分岐容器の下部内側には第2の湧昇管が開口連通接続され、上端が閉塞された第2の配管は前記第2の分岐容器内にて上部周面に第2の湧昇管開口位置よりも上方に出水孔が開設され、排気管は下端が第2の分岐容器内側に開口連通接続されると共に圧力弁が介装され上端は火気中にて開口されていることを特徴とする深層水取水装置。
【請求項2】
上記第1のヘッド部の下端には軸方向に著しく長い取水用配管を連通接続したことを特徴とする請求項1に記載の深層水取水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−196364(P2011−196364A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89019(P2010−89019)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(508090114)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(508090114)
【Fターム(参考)】
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