説明

深層混合処理装置および深層混合処理工法

【課題】均一かつ高強度の固結柱体が形成できるとともに、盛り上がり土が発生しない深層混合処理装置および深層混合処理工法を提供することである。
【解決手段】深層混合処理装置1は、ベースマシン2のリーダ3に昇降自在に設置された駆動モータ4と、該駆動モータ4に回転自在に設置された土砂排出用ケーシング5と、該土砂排出用ケーシング5の下端部に設置された掘削バケット6と、該掘削バケット6の上部開口14に位置する土砂排出用ケーシング5に設置されたフィン7と、土砂排出用ケーシング5内から掘削バケット6の底部15にかけて設けられた回転自在なスクリューフィーダ8とからなり、該スクリューフィーダ8の回転軸21内には混合スラリー用圧送路22が形成され、該混合スラリー用圧送路22の噴射口24が掘削バケット6の底部15から突出した回転軸21の先端部に開口されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は対象地盤の掘削土砂を一旦地上に排出し、これを地上のリサイクルプラントでセメントスラリーなどの固化材と攪拌混合して混合スラリーを製造し、これを地盤中に再び注入する深層混合処理装置および深層混合処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の深層混合処理工法は、先端部に攪拌翼が装着された回転軸の噴射口からセメントなどの固化材を地盤内に注入して攪拌混合することにより固結柱体を造成するものである。この工法は軟弱地盤上に盛土道路、河川堤体、擁壁およびボックスカルバートなどを構築する際の基礎地盤の安定を図るために広く適用されている。また、その他の深層混合処理工法としては、例えば特開2001−355230号公報の発明が開示されている。
【特許文献1】特開平2001−355230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の工法は、固化材と地盤中の土砂とを原位置で攪拌混合するため、場所によって微妙に変化する土砂の土性値(含水比、粒度)に固化材配合量が対応できず、固結柱体の強度にバラツキがあるという問題があった。また固化材と地盤中の土砂とを原位置で攪拌混合して高強度の固結柱体を造成するには、対象地盤中の土砂1mに対してセメントを200〜300kg混合するのが限界であるため高強度のソイルセメント固結柱体の造成が困難であった。また地盤中に固化材を注入すると、その体積分だけ地盤が押し出されて盛り上がり土が発生する。この盛り上がり土は産業廃棄物として扱わざるを得ないという問題があった。さらに水平変位が生じて近接構造物に悪影響を与えることがあった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、均一かつ高強度の固結柱体が形成できるとともに、盛り上がり土および水平変位が発生しない深層混合処理装置および深層混合処理工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための深層混合処理装置は、ベースマシンのリーダに昇降自在に設置された駆動モータと、該駆動モータに回転自在に設置された土砂排出用ケーシングと、該土砂排出用ケーシングの下端部に設置された掘削バケットと、該掘削バケットの上部開口部に位置する土砂排出用ケーシングに設置されたフィンと、土砂排出用ケーシング内から掘削バケットの底部にかけて設けられた回転自在なスクリューフィーダとからなり、該スクリューフィーダの回転軸内には混合スラリー用圧送路が形成され、該混合スラリー用圧送路の噴射口が掘削バケットの底部から突出した回転軸の先端部に開口されたことを特徴とする。
また深層混合処理工法は、請求項1の深層混合処理装置を使用するものであり、掘削バケットと、土砂排出用ケーシングと、スクリューフィーダとを正回転させながら地盤に貫入した後、掘削バケットと、土砂排出用ケーシングとを逆回転、スクリューフィーダを正回転させながら引き抜きつつ、回転軸の噴射口から混合スラリーを注入するとともに、掘削バケットの上部における掘削土砂をフィンで掘削バケット内に取り込んでスクリューフィーダによって土砂排出用ケーシングから外部に排出した後、該外部に排出した土砂とセメントスラリーとで製造した混合スラリーをスクリューフィーダの回転軸における噴射口から注入して混合スラリー固結柱体を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
掘削バケットで掘削した対象地盤の土砂をフィンで掘削バケット内に取り込んでスクリューフィーダにより土砂排出用ケーシングから外部に排出することができる。また対象地盤の土砂を一旦地上に排出し、これを地上プラントでセメントスラリーなどの固化材と攪拌混合して混合スラリーを製造し、この混合スラリーを地盤中に再び注入して地盤を改良することにより、土砂の土性値と、これに対応するセメント配合量の設定の精度が飛躍的に向上するため、固結柱体の強度のバラツキがなくなり均一にすることができる。またセメント配合量を対象地盤の土砂1mに対して200〜300kg以上混合することが可能であることから、高強度の固結柱体を造成することができる。また盛り上がり土および水平変位の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の深層混合処理装置および深層混合処理工法の構築方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。はじめに深層混合処理装置の実施の形態について説明し、次に、この深層混合処理装置を使用した深層混合処理工法の実施の形態について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成は異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1は、深層混合処理装置1を示したものであり、ベースマシン2のリーダ3に昇降自在に設置された駆動モータ4と、該駆動モータ4に回転自在に設置された土砂排出用ケーシング5と、該土砂排出用ケーシング5の下端部に設置された掘削バケット6と、該掘削バケット6の上部開口に位置する土砂排出用ケーシング5に設置されたフィン7と、土砂排出用ケーシング5内から掘削バケット6の底部にかけて設けられた回転自在なスクリューフィーダ8とから構成されている。
【0009】
この駆動モータ4は、リーダ3に支持体9で取り付けられたケーシング用モータ10と、このケーシング用モータ10の上面に設置されたスクリューフィーダ用モータ11とからなり、該スクリューフィーダ用モータ11の上面に接続した昇降用ワイヤー12でリーダの頂部13から吊り下げられ、この昇降用ワイヤー12の巻き上げ、または巻き戻しによってリーダ3に沿って昇降するようになっている。
【0010】
このケーシング用モータ10には土砂排出用ケーシング5が回転自在に取り付けられ、この下端部に設けた4枚のフィン7によって土砂排出用ケーシング5に掘削バケット6を接合している。このフィン7は正回転(時計回り)方向側を下側にして傾斜し、内側端が土砂排出用ケーシング5の外周面に接続されるとともに、外側端が掘削バケット6の上部開口14の内周面に接続されている。
【0011】
この掘削バケット6は、図2〜図4に示すように、上部が開口した円筒形であり、底部15が尖塔形に形成され、この底部15には二つの土砂取込口16が開口され、これが油圧シリンダ17で移動する蓋体18により開閉自在となっている。また土砂取込口16の口縁には内部ビット19が、底部15の外周面には外部ビット20がそれぞれ設置され、これらのビット19、20で掘削された土砂が土砂取込口16から掘削バケット6内に取り込まれるようになっている。
【0012】
一方、土砂排出用ケーシング5内にはスクリューフィーダ用モータ11で回転するスクリューフィーダ8が設置され、このスクリューフィーダ8の下端部が土砂排出用ケーシング5の下端部から突出し、その回転軸21が掘削バケット6の底部中心部に回転自在に設置され、その先端部が底部15から外部に突出している。このスクリューフィーダ6の回転軸21内には、混合スラリー用圧送ホース23が接続された混合スラリー用圧送路22が形成され、該混合スラリー用圧送路22の噴射口24が回転軸21の先端部に設けられている。
【0013】
これらの土砂排出用ケーシング5と掘削バケット6とフィン7とはケーシング用モータ10によって同じ方向に同時に回転するが、スクリューフィーダ8はスクリューフィーダ用モータ11によってこれらとは別回転する。このためスクリューフィーダ8は掘削バケット6などが正回転しているときは同様に正回転し、逆回転するときには正回転するようになっている。
【0014】
したがって、掘削バケット6が正回転すると掘削された土砂は土砂取込口16からバケット6内に取り込まれるとともに、この取り込まれた土砂がフィン7によって上部開口から掘削バケット6外に排出される。しかし、掘削バケット6が逆回転(反時計回り)すると外部に排出された土砂がフィンによって上部開口から掘削バケット6内に取り込まれ、これがスクリューフィーダ8の正回転によって土砂排出用ケーシング5内に取り込まれて土砂排出口25から地上に排出される。
【0015】
次に、上記の深層混合処理装置1を使用した深層混合処理工法について説明する。この工法は対象地盤の土砂を一旦地上に排出し、これと固化材とを地上のリサイクルプラントで混合して混合スラリーを製造し、これを再び地盤中に注入するものであり、図5に示すように、上記の深層混合処理装置1における混合スラリー用圧送ホース23が地上のリサイクルプラント26に接合されている。
【0016】
まず、図5に示すように、ケーシング用モータ10によって掘削バケット6を正回転させて地盤27を掘削するが、この回転と同時に土砂排出用ケーシング5およびフィン7も回転する。そして、この掘削バケット6のビット19、20で掘削された土砂28が、開口した土砂取込口16から掘削バケット6内に取り込まれ、これがフィン7によって掘削バケット6外に上部開口14から排出される。そして、この掘削を地盤27の所定深さまで行ったところで、掘削バケット6などの正回転を止めると、ほぐれた土砂の柱体29が形成される。
【0017】
次に、図6に示すように、この掘削バケット6の逆回転と同時にスクリューフィーダ8も正回転するため、これらを回転させながら引き抜きを開始するとともに、土砂(上記の掘削土砂28ではなく別途準備した土砂)とセメントスラリーとを混合した混合スラリー31をスクリューフィーダ8の回転軸21における噴射口24から注入する。この掘削バケット6の逆回転による引き抜きの際には、土砂取込口16は蓋体18で閉塞されている。
【0018】
そして、この掘削バケット6の逆回転に伴うフィン7の回転によってバケット6内に土砂28が取り込まれるとともに、これがスクリューフィーダ8によって土砂排出用ケーシング5内に取り込まれて土砂排出口25から外部に排出される。そして、この土砂排出口25から排出された掘削土砂28が落下用シュート32によって地上に積み上げられる。
【0019】
次に、この積み上げられた掘削土砂28をペイローダ33でリサイクルプラント26の近くまで運び、ここからバックホウ34でリサイクルプラント26に投入し、セメントスラリーなどの固化材と混合して混合スラリー31を製造する。
【0020】
次に、この混合スラリー31を混合スラリー用圧送ホース23で回転軸21の混合スラリー用圧送路22に送り、この混合スラリー用圧送路22の噴射口24から注入する。そして、この作業を連続して行うことにより、掘削土砂28を利用した均一な強度の固結柱体35を造成することができるとともに、盛り上げ土および水平変位の発生を防ぐこともできる。
【0021】
このように本願発明の深層混合処理工法は、対象地盤の掘削土砂28を一旦地上に排出し、これを利用して、地上のリサイクルプラント26でセメントスラリーなどの固化材と攪拌混合して混合スラリー31を製造して地盤中に注入するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】深層混合処理装置の一部切欠正面図である。
【図2】掘削バケットの断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】掘削バケットの斜視図である。
【図5】深層混合処理工法の断面図である。
【図6】深層混合処理工法の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 深層混合処理装置
2 ベースマシン
3 リーダ
4 駆動モータ
5 土砂排出用ケーシング
6 掘削バケット
7 フィン
8 スクリューフィーダ
9 支持体
10 ケーシング用モータ
11 スクリューフィーダ用モータ
12 昇降用ワイヤー
13 リーダの頂部
14 上部開口
15 底部
16 土砂取込口
17 油圧シリンダ
18 蓋体
19 内部ビット
20 外部ビット
21 回転軸
22 混合スラリー用圧送路
23 混合スラリー用圧送ホース
24 噴射口
25 土砂排出口
26 リサイクルプラント
27 地盤
28 土砂
29 柱体
30 空隙部
31 混合スラリー
32 落下用シュート
33 ペイローダ
34 バックホウ
35 固結柱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンのリーダに昇降自在に設置された駆動モータと、該駆動モータに回転自在に設置された土砂排出用ケーシングと、該土砂排出用ケーシングの下端部に設置された掘削バケットと、該掘削バケットの上部開口部に位置する土砂排出用ケーシングに設置されたフィンと、土砂排出用ケーシング内から掘削バケットの底部にかけて設けられた回転自在なスクリューフィーダとからなり、該スクリューフィーダの回転軸内には混合スラリー用圧送路が形成され、該混合スラリー用圧送路の噴射口が掘削バケットの底部から突出した回転軸の先端部に開口されたことを特徴とする深層混合処理装置。
【請求項2】
請求項1の深層混合処理装置を使用するものであり、掘削バケットと、土砂排出用ケーシングと、スクリューフィーダとを正回転させながら地盤に貫入した後、掘削バケットと、土砂排出用ケーシングとを逆回転、スクリューフィーダを正回転させながら引き抜きつつ、回転軸の噴射口から混合スラリーを注入するとともに、掘削バケットの上部における掘削土砂をフィンで掘削バケット内に取り込んでスクリューフィーダによって土砂排出用ケーシングから外部に排出した後、該外部に排出した土砂とセメントスラリーとで製造した混合スラリーをスクリューフィーダの回転軸における噴射口から注入して混合スラリー固結柱体を製造することを特徴とする深層混合処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−321524(P2007−321524A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155813(P2006−155813)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(598076502)みらいジオテック株式会社 (8)
【出願人】(390001993)みらい建設工業株式会社 (26)
【Fターム(参考)】