説明

混合された複数の電子輸送材料を含むエレクトロルミネッセンス・デバイス

OLEDデバイスは、カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えていて、この追加の層が、a)この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上かつ100体積%未満である第1の化合物と;b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;c)仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種類の化合物の混合物を含む層を発光層とカソードの間に有する有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。これら2つの層の界面は、注入された正孔/電子対が再結合してエレクトロルミネッセンスが出る効率的な部位となる。
【0003】
このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322〜334ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0004】
より最近の多層有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。これらのデバイスは、駆動電圧が低く、高輝度で、視角が広く、フル-カラーのフラット発光ディスプレイが可能であるため、今や多くの用途のディスプレイにとって非常に魅力的になっている。Tangらは、この多層OLEDデバイスを、アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第4,885,211号、J. Applied Physics、第65巻、3610〜3616ページ、1989年に記載している。これらの文献には、正孔輸送層と電子輸送層に挟まれた有機発光層(LEL)が記載されており、この発光層は、一般に、ゲスト材料(ドーパント)をドープされたホスト材料からなるため、効率が向上していて、色の調節が可能である。
【0005】
近年のELデバイスには、単一色発光デバイス(例えば、赤、緑、青)だけでなく、白色光を出す白色デバイスも含まれるようになっている。白色光を効率的に発生させるOLEDデバイスは産業界において非常に望ましく、いくつかの用途(紙のように薄い光源、LCDディスプレイのバックライト、自動車の室内灯、オフィスの照明など)では低コストの代替手段と考えられている。白色発光OLEDデバイスは明るく、効率的で、一般に国際照明委員会(CIE)の色度座標が(0.33, 0.33)でなければならない。いずれにせよ、この明細書では、白色光は、ユーザーが白色と認識する光である。
【0006】
初期の発明以来、例えばアメリカ合衆国特許第5,061,569号、第5,409,783号、第5,554,450号、第5,593,788号、第5,683,823号、第5,908,581号、第5,928,802号、第6,020,078号、第6,208,077号に開示されているようにデバイス材料がますます改善された結果、色、安定性、輝度効率、製造しやすさなどの属性に関して性能が改善された。
【0007】
こうした進歩にもかかわらず、高い輝度効率と、長い寿命と、高い色純度を維持しつつ、デバイスの駆動電圧をさらに低下させることで電力消費を低下させる有機ELデバイス成分(例えば電子輸送材料や電子注入材料)が相変わらず必要とされている。
【0008】
電子輸送材料の有用な1つのクラスは、金属キレート化オキシノイド化合物に由来する材料であり、その中にはオキシンそのもの(一般に8キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(AlqまたはAlq3としても知られる)や、他の金属オキシンキレートおよび非金属オキシンキレートは、従来から電子輸送材料としてよく知られている。
【0009】
Tangら(アメリカ合衆国特許第4,769,292号)とVanSlykeら(アメリカ合衆国特許第4,539,507号)は、発光層または発光領域でAlqを電子輸送材料として用いることによってELデバイスの駆動電圧を低下させている。
【0010】
Baldoら(アメリカ合衆国特許第6,097,147号)とHungら(アメリカ合衆国特許第6,172,459号)は、カソードに隣接した有機電子輸送層を用いることで、電子がカソードから電子輸送層に注入されたときに電子が電子輸送層と発光層の両方を横断することを教示している。
【0011】
Tamanoら(アメリカ合衆国特許第6,150,042号)は、有機ELデバイスで正孔注入層を使用することを教示している。このデバイスで役立つ電子輸送材料が例示されており、それは、電子輸送材料の混合物などである。最低非占軌道(LUMO)のレベルがどのような電子輸送材料を選択するかと、デバイスの駆動電圧低下に関しては記載されていない。
【0012】
Seoらは、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0086180 A1において、電子輸送材料としてのBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンまたはバソフェナントロリンとしても知られる)と、電子注入材料としてのAlqが1:1である混合物を用いて電子輸送混合層を形成することを教示している。しかしSeoらのBphen/Alq混合物は安定性が劣っているため、本発明の範囲外である。
【0013】
Kidoらは、アメリカ合衆国特許第6,013,384号において、ドーパントとして機能することのできる金属をドープした有機化合物を含む少なくとも1つの発光層を有するELデバイスを教示している。この特許には、金属をドープした化合物の混合物を使用することについての言及はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしこれらのデバイスは、素子の安定性に加え、低い駆動電圧に関して望ましいEL特性を持っていない。
【0015】
したがって解決すべき問題は、優れた輝度効率と安定性を示すと同時に、必要とされる駆動電圧が低いために電力消費が減った発光層(LEL)を持つOLEDデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明により、カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上かつ100体積%未満である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを含む、OLEDデバイスが提供される。
【0017】
このOLEDデバイスは、優れた輝度効率と安定性を示すと同時に、必要とされる駆動電圧が低いために消費電力がより少なくてバッテリーの寿命がより長くなる発光層(LEL)を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、全体として上記のようになっている。本発明のOLEDデバイスは、カソードと、アノードと、正孔注入層(必要な場合)と、電子注入層(必要な場合)と、正孔輸送層と、電子輸送層と、発光層(LEL)を備える多層エレクトロルミネッセンス・デバイスである。本発明による追加の層は、発光層のカソード側に位置し、少なくとも2種類の異なる化合物(第1の化合物と第2の化合物)と金属ドーパントを含んでいる。第1の化合物は、この層に含まれる化合物の中で最低のLUMO値を持つ。第2の化合物は第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、第2の化合物のうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である。金属ドーパントは、この層に含まれる化合物のうちの少なくとも1つを減らせるのであれば、任意の金属が可能である。
【0019】
本発明の第1の化合物は、低電圧電子輸送材料である第2の化合物よりも低い最低非占軌道(LUMO)値を持つ。言い換えるならば、第2の化合物は、第1の化合物よりも大きいLUMO値を持つ。上記の第1の化合物と第2の化合物の混合物を含むデバイスは、駆動電圧がより低いことに加え、優れた輝度効率と優れた動作安定性を持つ。本発明のさらに別の実施態様では、追加の層に第2の化合物が2種類以上含まれている。ドーピングに役立つ金属は、追加の層に含まれる有機化合物のうちの1つ以上を減らせる金属であれば、特定の金属に限定されることはない。簡単にするため、本発明の好ましい実施態様は、1種類の第1の化合物と1種類の第2の化合物を含んでいるものである。この層に存在する第1の化合物の量は10体積%以上だが、100%になることはできない。この層に存在する低電圧電子輸送材料である第2の化合物の合計量は、90体積%以下だが、0%になることはできない。金属ドーパントの量は、0.1%超かつ15%未満である。
【0020】
この明細書では、“低電圧電子輸送材料”という用語は、実施例3と4のデバイスの段落d)に記載してあるように、電子輸送層に単独で組み込まれた場合に、駆動電圧が13ボルト以下になる材料である。駆動電圧が10ボルト以下である低電圧電子輸送材料も本発明の第2の化合物として有用だが、8ボルト以下の材料が第2の化合物としてより好ましい。
【0021】
この明細書では、“金属材料”という用語に、仕事関数が4.2eV未満の金属元素と、その金属元素の化合物の両方が含まれる。
【0022】
本発明に従って製造したOLEDデバイスは、低電圧電子輸送材料である第2の化合物を追加の層に単独で使用したデバイスよりも低い駆動電圧で動作するデバイスとなる。
【0023】
本発明の好ましい一実施態様では、第1の化合物が1種類だけと、第2の化合物が1種類だけ存在している。本発明の別の実施態様では、第2の化合物が2種類以上存在していてもよい。どの実施態様でも、第1の化合物は、追加の層に含まれるあらゆる化合物のうちで最低のLUMO値を持つ。
【0024】
本発明の実施態様は、大きな動作安定性も示し、デバイスの寿命が来るまで電圧上昇が小さく、再現性よく製造でき、優れた光効率を一貫して提供することができる。
【0025】
図1は本発明の一実施態様であり、正孔注入層と電子注入層が存在している。この実施態様の電子輸送層は上記の追加の層であり、第1の化合物と第2の化合物の両方と金属ドーパントを含んでいて、電子注入層に隣接している。電子注入層が存在していない場合には、上記の追加の層はカソードに隣接する。別の実施態様では、2つ以上の正孔注入層、電子注入層、電子輸送層が存在していてもよい。2つ以上の電子輸送層が存在している場合には、本発明による上記の追加の層がカソードに隣接し、追加の電子輸送層が発光層に隣接するようにできる。さらに、2つ以上の電子輸送層が存在している場合には、本発明による上記の追加の層が発光層に隣接し、追加の電子輸送層がカソードに隣接するようにできる。
【0026】
上に説明した追加の層は、発光層でも非発光層でもよい。この追加の層は電子を輸送する機能を持ち、その結果としてOLEDデバイスが必要とする動作電圧は、第1の化合物または第2の化合物だけが含まれる場合よりも低くなる。発光する場合には、この層からのエレクトロルミネッセンスがデバイスからの他の発光層からの発光を増大させることができる。発光しない場合には、第1の化合物と第2の化合物の一方または両方が、実質的に無色または非発光性でなければならない。
【0027】
本発明の有用な一実施態様は、カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)縮合した少なくとも2つの環を含んでいて、この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属とを含む、OLEDデバイスである。
【0028】
上記の縮合した2つの環のうちの少なくとも1つは炭素環にすること、またはその縮合環の少なくとも1つは複素環にすることができる。
【0029】
本発明の別の有用な一実施態様は、カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)縮合した少なくとも3つの環を含んでいて、この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属とを含む、OLEDデバイスである。
【0030】
上記の縮合した3つの環のうちの少なくとも1つは、炭素環にすること、またはその縮合環の少なくとも1つは複素環にすることができる。
【0031】
この明細書全体を通じ、炭素環または炭素環基と、複素環または複素環基という用語は、一般に、『グラントとハックーの化学事典』、第5版、マグロウヒル社に定義されている通りである。炭素環は、炭素原子だけを含む任意の芳香族環系または非芳香族環系であり、複素環は、炭素原子と非炭素原子の両方を含む任意の芳香族環系または非芳香族環系である。非炭素原子は、例えば、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)や、環系を形成するのに役立つ周期表の他の元素などである。本発明の目的のためには、複素環の定義に、配位結合を含む環も含まれる。配位結合の定義は、『グラントとハックーの化学事典』の91ページに見いだすことができる。要するに、配位結合は、電子が豊富な原子(OやNなど)が、電子が欠乏している原子(AlやBなど)に一対の電子を与えるときに形成される。そのような一例は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも呼ばれる)に見られる。この場合には、キノリン部分の窒素が孤立電子対をアルミニウム原子に与えて複素環を形成し、したがってAlqに合計で3つの縮合した環が含まれる。仕事関数の定義は、『化学と物理のCRCハンドブック』、第70版、1989〜1990年、CRC出版社、F-132ページに見いだすことができ、さまざまな金属に関する仕事関数のリストは、E-93ページとE-94ページに見いだすことができる。
【0032】
本発明において第1の化合物と第2の化合物にとって有用な炭素環系と複素環系の選択は、金属キレート化オキシノイド、非金属キレート化オキシノイド、アントラセン、ビピリジル、ブタジエン、イミダゾール、フェナントレン、フェナントロリン、スチリルアリーレン、ベンズアゾール、バックミンスターフラーレン-C60(バッキーボールまたはフラーレン-C60としても知られる)、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム、フルオランテン、ペリフラントレン、シラシクロペンタジエンまたはシロール、チアピリリウム、トリアジン、カルボスチリル、金属キレート化ビス(アジニル)アミン、非金属キレート化ビス(アジニル)アミン、金属キレート化ビス(アジニル)メテン、非金属キレート化ビス(アジニル)メテンの中からなされる。
【0033】
より詳細には、本発明の第1の化合物と第2の化合物は、一般式(I)で表わされる化合物:
【化1】

の中から選択することができる。ただし、
Mは金属または非金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0034】
第1の化合物と第2の化合物は、一般式(II)で表わされる化合物:
(RS-Q)2-M-O-L 一般式(II)
の中から選択することもできる。ただし、
Mは金属または非金属であり;
Qは、各々、置換された8-キノリノラト・リガンドを表わし;
RSは、3個以上の置換された8-キノリノラト・リガンドがアルミニウム原子に結合するのを立体的に阻止するように選択した8-キノリノラト環置換基を表わし;
Lは、縮合したフェニル環部分または縮合した芳香族環部分であり、炭化水素基で置換されてLが6〜24個の炭素原子を持っていてもよい。
【0035】
第1の化合物と第2の化合物の両方とも一般式(I)で表わされる化合物の中から選択すること、または両方とも一般式(II)で表わされる化合物の中から選択することができるが、そのための条件は、それらの化合物が異なるLUMO値を持ち、第2の化合物の少なくとも1つは低電圧電子輸送材料であり、その第2の化合物が最高のLUMO値を持つことである。追加の第2の化合物として、一般式(I)または一般式(II)を持つ化合物を選択することができる。
【0036】
本発明の第1の化合物は、一般式(III)で表わされるキレート化ビス(アジニル)アミン:
【化2】

と一般式(IV)で表わされるキレート化ビス(アジニル)メテン:
【化3】

の中から選択することができる。これらの化合物では、ホウ素と窒素が配位結合を形成している。ただし、上記の一般式において、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素原子を含む6員の芳香族環に対応するアジン環系を表わし;
それぞれのXaとXbは、独立に選択した置換基であり、そのうちの2つが合わさってAまたはA'への縮合環を形成していてもよく;
mとnは、独立に0〜4であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
Yは、水素原子または置換基であり;
1、2、3、4、1'、2'、3'、4'は、独立に、炭素原子または窒素原子として選択される。
【0037】
さらに、第1の化合物は、一般式(V)で表わされるナフタセン誘導体:
【化4】

の中から選択することができる。ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、独立に、水素または置換基として選択されるが;
その置換基のうちの任意のものが合わさってさらに縮合環を形成していてもよい。
【0038】
一般式(V)で表わされる本発明の第1の化合物は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12のうちの少なくとも1つがアルキル基とアリール基の中から独立に選択された化合物であることが好ましい。
【0039】
他の第1の化合物は、一般式(VI)で表わされるアントラセン誘導体:
【化5】

の中から選択することができる。ただし、
R13、R14、R15、R16は、水素であるか、以下のグループ:
グループ1:水素と、一般に1〜24個の炭素原子を持つアルキル基とアルコキシ基;
グループ2:一般に6〜20個の炭素原子を持つ環基;
グループ3:一般に6〜30個の炭素原子を持つ縮合炭素環基(ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ペリレニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ4:一般に5〜24個の炭素原子を持つ縮合複素環基(フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ5:一般に炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基;
グループ6:フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基
の中から選択した1つ以上の置換基である。
【0040】
より詳細には、本発明の第1の化合物は、以下の構造で表わされる化合物の中から選択することができる。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
構造A-1〜A-6には、A-1〜A-6の構造上の特徴を備えていて、本発明の第1の化合物として機能する上で望ましい性質をその構造に与えるのに適した置換基が含まれた化合物も含まれる。
【0045】
本発明の特別な第1の化合物は、以下のグループの中から選択することができる。
【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
本発明の第2の化合物は、一般式(VII)で表わされるフェナントロリン誘導体:
【化17】

の中から選択することができる。ただし、
R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24は、水素または置換基であるが;
その置換基のうちの任意のものが合わさってさらに縮合環を形成していてもよい。
【0055】
一般式(VIII)で表わされる複素環誘導体:
【化18】

は材料の1つのグループを形成し、その中から本発明の第2の化合物を選択することができる。ただし、
mは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR29、Sのいずれかであり;
R25、R26、R27、R28、R29は、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル;炭素原子が5〜20個のアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール;ハロのいずれかであるか;縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子であり;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のベンズアゾールを共役または非共役に結合させる結合単位である。
【0056】
本発明による追加の第2の化合物は、一般式(IX)で表わされるシロール誘導体またはシラシクロペンタジエン誘導体:
【化19】

の中から選択することができる。ただし、
R30、R31、R32は、水素または置換基であるか、縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子である。
【0057】
本発明による他の第2の化合物は、一般式(X)で表わされるトリアジン誘導体:
【化20】

の中から選択することができる。ただし、
kは1〜4の整数であり;
R33は、水素、置換基、炭素環基、複素環基のいずれかであり;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のトリアジンを共役または非共役に結合させる結合単位である。
【0058】
一般式(I)、(II)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)に基づく特別な第2の化合物は以下の構造を有する。
【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
【化23】

【0062】
本発明において役立つ第1の化合物と第2の化合物は、本発明のLUMO条件に合致し、第2の化合物のうちの少なくとも1つが本発明で定義した低電圧電子輸送材料である従来から知られている任意の化合物である。
【0063】
追加の層に含まれる第1の化合物の量は、この層の10体積%以上だが、100%未満であり、第2の化合物の合計量はこの層の90体積%以下だが0体積%よりも多い。第1の化合物の特に有用な範囲は、20、40、50、60、75、90%であり、第2の化合物と金属の合計量は必然的に、それぞれ、残る80、60、50、40、25、10%になる。
【0064】
この層に含まれる金属の濃度が特定の濃度に限定されることはない。しかし濃度は、この層に含まれる全材料の0.1〜15体積%の範囲であることが好ましい。金属ドーパントの好ましい濃度は0.1%〜10%であるが、1%〜8%の範囲がより好ましい。
【0065】
本発明の実施態様は、第1の化合物の量を上記の範囲内の任意の値に選択し、第2の化合物の合計量を上記の範囲内の任意の値に選択し、金属の量を上記の範囲から選択することにより、合計を100%にした実施態様である。
【0066】
本発明では、追加の層の金属は、有機化合物のうちの少なくとも1つを減らせるのであれば、特定の金属に限定されることはない。金属は、アルカリ金属(例えばLi)、アルカリ土類金属(Mg)、遷移金属(希土類金属を含む)の中から選択することができる。特に、仕事関数が4.2eV以下の金属が適切であり、そのような金属ドーパントの典型例として、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Sm、Gd、Ybなどがある。
【0067】
本発明の好ましい組み合わせは、第1の化合物がA-7、A-8、A-9、A-13、A-14、A-15、A-16、A-18、A-19、A-24の中から選択され、第2の化合物がB-1、B-2、B-3、B-4、B-5、B-6、B-7、B-8の中から選択された組み合わせである。
【0068】
本発明で説明した追加の層は、第1の化合物と、少なくとも1種類の第2の化合物と、仕事関数が4.2eV以下の金属を含んでいる。第1の化合物は、この層に含まれる化合物のうちで最低のLUMO値を持つ。さらに、少なくとも1種類の第2の化合物は、低電圧電子輸送化合物である。本発明による追加の層に第1の化合物と第2の化合物の両方と金属の組み合わせが上記の割合で含まれていると、第1の化合物または第2の化合物が単独でこの層に組み込まれているデバイスと比べて駆動電圧がさらに低いデバイスになる。
【0069】
本発明に現われる化合物と関係した化学名と略号を以下に示す。
A-2、ペリレン;A-7またはB-1、AlqまたはAlq3、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III);A-8またはB-2、BAlq;A-9またはB-3、GaqまたはGaq3、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III);A-10、9-(2-ナフチル)-10-(4-フェニル)フェニルアントラセン;A-11、ADN、9,10-ビス(2-ナフチル)-2-フェニルアントラセン;A-12、tBADN、2-t-ブチル-9,10-ビス(2-ナフチル)-2-フェニルアントラセン;A-13、tBDPN、5,12-ビス[4-t-ブチルフェニル]ナフタセン;A-14、ルブレン、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン;A-18、TBP、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン;B-4、BPhen、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;B-5、BCP、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン;B-6、TPBI、2,2',2"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール];A-24またはB-8、TRAZ、2,2'-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジイルビス(4,6-(p-トリル)-1,3,5-トリアジン)。
【0070】
この明細書では、8-キノリノラト・リガンドという用語は、キノリン配位体の1位の窒素がその自由電子対を、8位のヒドロキシル基に結合していて電子を受け取る金属原子または非金属原子に与えることにより、配位結合と、キレート化環系または複素環系とを形成する8-ヒドロキシキノリン由来のリガンドである。RSは、その金属原子または非金属原子に3つ以上の置換された8-キノリノラト・リガンドが結合するのを立体的に阻止するため選択した8-キノリノラト置換基である。好ましいRS基は、アルキル基とアリール基の中から選択される。L基は、6〜24個の炭素原子を持つ炭化水素である。好ましいL基は、アルキル基、炭素環基、複素環基の中から選択される。Y基は、アルキル基、炭素環基、複素環基の中から選択される。好ましいY基は、アリール基またはビフェニル基である。Mとしては、一般式(I)と(II)の化合物を形成するのに使用できる周期表の適切な任意の金属または非金属が可能である。Mとして、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど);アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど);土類金属(アルミニウム、ガリウムなど);遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、有用なキレート化金属であることが知られている任意の1価、2価、3価、4価の金属を使用できる。その中にはホウ素とベリリウムも含まれる。一般式(II)で表わされる第1の化合物と第2の化合物の別の例は、Bryanらのアメリカ合衆国特許第5,141,671号に見いだすことができる。
【0071】
本発明のELデバイスは、安定な発光が望ましいあらゆるデバイスで役立つ。そのようなデバイスとして、ランプ、静的または動的なイメージング装置の部品(例えばテレビ、携帯電話、DVDプレイヤー、コンピュータのモニタ)などがある。
【0072】
本発明の典型的な実施態様では、駆動電圧が改善されるだけでなく、改善された輝度効率、改善された動作安定性、小さな電圧上昇も提供できる。
【0073】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、“基”という用語を使用する場合、1つの置換基が置換可能な1つの水素を含んでいるとすると、その中には置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質を失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいる。2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルなどが例として挙げられる);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0074】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0075】
デバイスの一般的アーキテクチャ
【0076】
本発明は、たいていのOLEDデバイス構造で使用することができる。OLEDデバイス構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0077】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。本質的に必要とされるのは、カソードと、アノードと、HILと、LELである。OLED100の非常に典型的な構造を図1に示してある。この構造は、基板110と、アノード120と、正孔注入層130(なくてもよい)と、正孔輸送層132と、発光層134と、電子輸送層136と、電子注入層138(なくてもよい)と、カソード140を備えている。これらの層について以下に詳細に説明する。基板はカソードの隣に配置してもよく、基板が実際にアノードまたはカソードを構成していてもよい。また、有機層を合計した厚さは500nm未満であることが好ましい。
【0078】
発光層は、単一の層または複数の層で構成することができる。単層である場合には、用途に応じて任意の色の光を出すように製造できるが、色は、スペクトルの特に赤領域、緑領域、青領域から選択される。デバイスが白色光を出す必要がある場合には、十分なスペクトル幅を持った異なる色の光を出すいくつかの層が必要とされ、それらを組み合わせて白色光を形成する。
【0079】
OLEDのアノードとカソードは、導電体160を通じて電圧/電流源150に接続される。アノードとカソードの間に、アノードがカソードよりも正の電位となるように電位を印加すると、OLEDが動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入する。ACモードでOLEDを動作させると、サイクル中のある期間はバイアス電位が逆転して電流が流れないため、デバイスの安定性が向上することがある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0080】
基板
【0081】
基板110は、どの方向に光を出したいかに応じ、透光性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、回路板材料などがある。もちろん、このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0082】
アノード
【0083】
導電性アノード層120が一般に基板の上に形成され、アノードを通じてEL光を見る場合には、そのアノード層は、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)とスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物(IZO)、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード120で用いることができる。EL光を上部電極を通して見るような用途では、アノード120の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させることができる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。
【0084】
正孔注入層(HIL)
【0085】
必ずしも必要なわけではないが、正孔注入層130をアノード120と正孔輸送層132の間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つことができる。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーなどがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0086】
正孔輸送層(HTL)
【0087】
有機ELデバイスの正孔輸送層132は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。さらに、正孔輸送層を1つ以上の層で構成し、各層に同じ発光材料または異なる発光材料をドープするか、発光材料をドープしないようにすることができる。HTLの厚さは適切な任意の厚さにでき、0.1〜300nmの範囲が可能である。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0088】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化24】

で表わされるものがある。ただし、Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環基(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基のいずれかであることが好ましい。
【0089】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン基を含むトリアリールアミン基の有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化25】

で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化26】

に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に選択したアリール基である。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環基(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0090】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミン基として、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミン基としては、一般式(D):
【化27】

で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に選択したアリーレン基(例えばフェニレン基またはアントラセン基)であり;
nは1〜4の中から選択され;
Ar、R7、R8、R9は、独立に選択したアリール基である。
【0091】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環基(例えばナフタレン)である。
【0092】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリーレン基は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。これらのさまざまなアルキル基とアルキレン基は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール基とアリーレン基は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0093】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、後者は、トリアリールアミンと電子注入・輸送層の間に位置する層として配置される。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-メチルシクロヘキサン
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフトアセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0094】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0095】
発光層(LEL)
【0096】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)134は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数種類のゲスト・エレクトロルミネッセンス化合物をドープした非エレクトロルミネッセンス化合物からなる。光は主としてエレクトロルミネッセンス化合物から発生し、任意の色が可能である。発光層内の非エレクトロルミネッセンス化合物は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。エレクトロルミネッセンス化合物は通常は強い蛍光染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。エレクトロルミネッセンス化合物は、一般に、0.01〜50%の割合で非エレクトロルミネッセンス材料に組み込むことができるが、典型的には、0.01〜30%、より典型的には0.01〜15%が非エレクトロルミネッセンス材料に組み込まれる。LELの厚さは、適切な任意の厚さにすることができ、0.1mm〜100mmの範囲が可能である。
【0097】
エレクトロルミネッセンス成分として染料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最大被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。非エレクトロルミネッセンス化合物からエレクトロルミネッセンス化合物分子にエネルギーが効率的に移動するための必要条件は、エレクトロルミネッセンス化合物のバンドギャップが、非エレクトロルミネッセンス化合物のバンドギャップよりも小さいことである。
【0098】
有用であることが知られている非エレクトロルミネッセンス化合物およびエレクトロルミネッセンス分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0099】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用な非エレクトロルミネッセンス成分の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0100】
【化28】

ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0101】
以上の説明から、金属は、1価、2価、3価、4価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(アルミニウム、ガリウムなど);遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の1価、2価、3価、4価の金属を使用することができる。
【0102】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0103】
キレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
CO-10:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-フェニルフェノラトアルミニウム(III)
【0104】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾールとトリアジンも有用な電子輸送材料である。
【0105】
発光層の好ましい一実施態様は、蛍光染料をドープされたホスト材料からなる。この方法を利用し、高効率のELデバイスを構成することができる。それと同時に、共通する1つのホスト材料の中で発光波長が異なる複数の蛍光染料を用いることにより、ELデバイスの色を調節することができる。Tangらは、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号に、Alqをホスト材料として用いたELデバイスに関してこのドーパント・スキームを非常に詳細に記載している。
【0106】
Shiらは、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第5,935,721号に、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)誘導体をホスト材料として用いた青色発光OLEDに関してこのドーパント・スキームを非常に詳細に記載している。
【0107】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式F)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用な非エレクトロルミネッセンス材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0108】
【化29】

ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、水素であるか、以下のグループ:
グループ1:水素と、一般に1〜24個の炭素原子を持つアルキル基とアルコキシ基;
グループ2:一般に6〜20個の炭素原子を持つ環基;
グループ3:一般に6〜30個の炭素原子を持つ縮合炭素環基(ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ペリレニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ4:一般に5〜24個の炭素原子を持つ縮合複素環基(フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ5:一般に炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基;
グループ6:フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基
の中から選択した1つ以上の置換基である。
【0109】
代表例として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)や2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(TBADN)などがある。他のアントラセン誘導体(例えばアメリカ合衆国特許第5,927,247号に記載されているジフェニルアントラセンとその誘導体)は、LELにおける非エレクトロルミネッセンス化合物として有用である可能性がある。アメリカ合衆国特許第5,121,029号と日本国特開平08-333569に記載されているスチリルアリーレン誘導体も青色発光のための有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。例えばヨーロッパ特許第681,019号に記載されている4,4'-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1'-ビフェニル(DPVBi)とフェニルアントラセン誘導体は、青色発光のための有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。青色発光のためのエレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる別の有用な非エレクトロルミネッセンス材料は、以下に示すH-1とその誘導体である。
【0110】
【化30】

【0111】
一般式(G)のベンズアゾール誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用な非エレクトロルミネッセンス材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0112】
【化31】

ただし、
nは3〜8の整数であり;
Zは、-O、-NR、-Sのいずれかであり(ただしRはHまたは置換基である);
R'は、場合によっては存在する1つ以上の置換基であり、RとそれぞれのR'は、H、または一般に炭素原子が1〜24個のアルキル基(例えばプロピル基、t-ブチル基、ヘプチル基);炭素環基または複素環基(例えばフェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリニル基)と、一般に炭素原子が5〜20個の縮合芳香族環基を完成させるのに必要な原子;ハロ(例えばクロロ、フルオロ)であり;
Lは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のベンズアゾールを共役または非共役に結合させる結合単位である。
【0113】
有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール](TPBI)である。
【0114】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体もLELにおける有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。
【0115】
望ましい蛍光エレクトロルミネッセンス成分として、縮合環や複素環や他の化合物に由来する基があり、例えば、アントラセン化合物、テトラセン化合物、キサンテン化合物、ペリレン化合物、ルブレン化合物、ピラン化合物、ローダミン化合物、キナクリドン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、カルボスチリル化合物が挙げられる。有用なエレクトロルミネッセンス成分の代表例として以下のものがあるが、これですべてではない。
【0116】
【化32】

【0117】
【化33】

【0118】
【化34】

【0119】
【化35】

【0120】
【化36】

【0121】
多くの青色蛍光ドーパントが従来技術で知られていて、それを本発明を実施する際に用いることが考えられる。青色ドーパントまたは青色発光材料は、ホスト材料に0.01〜50質量%を組み込むことができるが、一般にはホスト材料に0.01〜30質量%、より一般的には0.01〜15質量%が組み込まれる。青色発光材料の厚さは、適切な任意の厚さにすることができ、10〜100nmの範囲が可能である。特に有用な青色蛍光ドーパントのクラスとして、ペリレンとその誘導体(例えば2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(TBP))、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアミン誘導体(例えば上に構造式を示したL47)などがある。
【0122】
青色蛍光ドーパントの別の有用なクラスは、ビス(アジニル)アミンホウ素錯体として知られていて一般式(2)で表わされるものであり、譲受人に譲渡されたBenjamin P. Hongらによる「エレクトロルミネッセンス・デバイスのための有機素子」という名称のアメリカ合衆国特許第6,661,023号(2003年2月9日)に記載されている。
【0123】
【化37】

ただし、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素を含む6員の芳香族環系に対応するアジン環系であり;
それぞれのXaとXbは、独立に選択した置換基であり、そのうちの2つが合わさってAまたはA'に対する縮合環を形成していてもよく;
mとnは、独立に、0〜4であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
1、2、3、4、1'、2'、3'、4'は、独立に、炭素原子または窒素原子として選択される。
【0124】
アジン環は、1、2、3、4、1'、2'、3'、4がすべて炭素でキノリニル環またはイソキノリニル環になっていること;mとnは2以上であること;XaとXbは、合わさって芳香族環を形成する少なくとも2つの炭素置換基であることが望ましい。ZaとZbはフッ素原子であることが望ましい。
【0125】
好ましい実施態様にはさらに、2つの縮合環系がキノリン系またはイソキノリン系であり;アリール置換基または複素環置換基がフェニル基であり; 2つのXa基と2つのXb基が少なくとも存在していて、それらはそれぞれ合わさって6-6縮合環を形成し、形成された縮合環系は、1-2位、3-4位、1'-2'位、3'-4'位のいずれかで縮合していて;縮合環の一方または両方がフェニル基で置換されており;ドーパントが一般式(3)、(4)、(5)のいずれかで表わされるデバイスが含まれる。
【0126】
【化38】

ただし、
Xc、Xd、Xe、Xf、Xg、Xhは、水素または独立に選択した置換基であり、そのうちの1つはアリール基または複素環基でなければならない。
【0127】
アジン環は、1、2、3、4、1'、2'、3'、4がすべて炭素でキノリニル環またはイソキノリニル環になっていること;mとnは2以上であること;XaとXbは、合わさって芳香族環を形成する少なくとも2つの炭素置換基であり、そのうちの1つはアリール基または置換されたアリール基であることが望ましい。ZaとZbはフッ素原子であることが望ましい。
【0128】
脱プロトン化されたビス(アジニル)アミン・リガンドの環上の2個の窒素によって錯体化されていて、環上のその2つの窒素は異なる6,6縮合環系のメンバーであり、その系のうちの少なくとも1つがアリール置換基または複素環基を含んでいる本発明で有用なホウ素化合物の代表例は以下のものであるが、これですべてではない。
【0129】
【化39】

【0130】
【化40】

【0131】
【化41】

【0132】
クマリンは、Tangらがアメリカ合衆国特許第4,469,292号と第6,020,078号に記載しているように、緑色発光ドーパントの有用な1つのクラスである。緑色ドーパントまたは緑色発光材料は、ホスト材料に0.01〜50質量%を組み込むことができるが、一般にはホスト材料に0.01〜30質量%、より一般的には0.01〜15質量%が組み込まれる。有用な緑色発光クマリンの例として、C545TやC545TBなどがある。キナクリドンは、緑色発光ドーパントの別の有用なクラスである。有用なキナクリドンはアメリカ合衆国特許第5,593,788号、日本国特開平09-13026A、2002年6月27日にLelia Cosimbescuによって「緑色有機発光ダイオードを備えるデバイス」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/184,356号に記載されている。
【0133】
特に有用な緑色発光キナクリドンの例を以下に示す。
【0134】
【化42】

【0135】
以下の一般式(6)は、本発明において有用な緑色発光ドーパントの別のクラスである。
【0136】
【化43】

ただし、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素原子を含む6員の芳香族環に対応するアジン環系を表わし;
それぞれのXaとXbは、独立に選択した置換基であり、そのうちの2つが合わさってAまたはA'への縮合環を形成していてもよく;
mとnは、独立に0〜4であり;
Yは、Hまたは置換基であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
1、2、3、4、1'、2'、3'、4'は、独立に、炭素原子または窒素原子として選択される。
【0137】
このデバイスでは、1、2、3、4、1'、2'、3'、4'は、すべて炭素原子であることが好ましい。このデバイスは、合わさって縮合環を形成する置換基を含む環AまたはA'の少なくとも一方または両方を含んでいることが望ましい。有用な一実施態様では、ハロゲン化物、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基からなるグループの中から選択した少なくとも1つのXa基またはXb基が存在している。別の一実施態様では、フッ素、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基からなるグループの中から独立に選択したZa基またはZb基が存在している。望ましい一実施態様では、ZaとZbがFである。Yは、水素または置換基(例えばアルキル基、アリール基、複素環基)であることが好ましい。
【0138】
これら化合物の発光波長は、目的とする色、すなわち緑に合うよう、中心のビス(アジニル)メテンホウ素基のまわりで適切な置換を行なってある程度調節することができる。有用な一般式のいくつかの例を以下に示す。
【0139】
【化44】

【0140】
【化45】

【0141】
ナフタセンとその誘導体も発光ドーパントの有用な1つのクラスであり、安定剤として使用できる。これらのドーパント材料は、ホスト材料に0.01〜50質量%を組み込むことができるが、一般にはホスト材料に0.01〜30質量%、より一般的には0.01〜15質量%が組み込まれる。以下のナフタセン誘導体Y-1(別名t-BuDPN)は、安定剤として使用されるドーパント材料の一例である。
【0142】
【化46】

【0143】
電子輸送層(ETL)
【0144】
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層を形成する際に用いる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。考慮するオキシノイド化合物の例は、すでに説明した構造式(E)を満たすものである。
【0145】
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。構造式(G)を満たすベンズアゾールも、有用な電子輸送材料である。
【0146】
電子輸送層と発光層は、場合によっては単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。ETLの厚さは、適切な任意の厚さにすることができ、0.1nm〜100nmの範囲が可能である。
【0147】
カソード
【0148】
アノードを通して発光する場合には、本発明で使用するカソード層140は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れたフィルム形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。カソード材料は、Mg:Ag合金、Al:Li合金、Mg:Al合金からなる。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。カソード材料の別の適切なクラスとして、仕事関数が小さな金属または金属塩からなる薄い層により厚い導電性金属層を被せた二層がある。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,961号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0149】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第5,776,623号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0150】
有機層の堆積
【0151】
上記の有機材料は、昇華を通じてうまく堆積するが、溶媒から堆積させること(そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)もできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0152】
OLEDの製造に役立つ有機材料(例えば有機正孔輸送材料、有機エレクトロルミネッセンス成分をドープされた有機発光材料)は比較的複雑な分子構造を持っていて分子結合力が比較的弱いため、物理的蒸着の間に有機材料が分解しないように注意せねばならない。上記の有機材料は比較的高純度で合成されて、粉末、フレーク、顆粒の形態で提供される。これまでは、このような粉末またはフレークを物理的蒸着源に入れ、熱を与えて有機材料を昇華または気化させて蒸気を形成し、その蒸気を基板上で凝縮させて有機層にしていた。
【0153】
物理的蒸着で有機の粉末、フレーク、顆粒を用いる際には問題がいくつか観察されている。すなわち粉末、フレーク、顆粒は、取り扱いが難しい。これら有機材料は、一般に、比較的小さな物理的密度と、望ましくない低い熱伝導率を持つ。特に、10-6トルまで減圧したチェンバーに物理的蒸着源を配置した場合にそうなる。その結果、粉末、フレーク、顆粒は、加熱された蒸着源からの輻射熱によってと、蒸着源の加熱された表面と直接接触している粉末またはフレークの熱伝導によってだけ加熱される。蒸着源の加熱された表面と接触していない粉末、フレーク、顆粒は、粒子間の接触面積が比較的小さいため、熱伝導によって効果的に加熱されることはない。すると物理的蒸着源の中ではこのような有機材料の加熱が不均一になる可能性がある。したがって蒸着によって基板の表面に形成される有機層は不均一になる可能性がある。
【0154】
有機粉末を固めて固体ペレットにすることができる。昇華可能な有機材料の粉末の混合物からなるこれら固体ペレットを1つの固体ペレットにするとより取り扱いやすい。有機粉末を固めて固体ペレットにするのは、比較的簡単な道具を用いて実現できる。1種類以上の非発光性有機非エレクトロルミネッセンス材料を含む混合物、または1種類以上の発光性エレクトロルミネッセンス材料を含む混合物、または非エレクトロルミネッセンス材料とエレクトロルミネッセンス材料の混合物から形成した固体ペレットを物理的蒸着源の中に入れて有機層を形成することができる。このように固めたペレットは、物理的蒸着装置で使用することができる。
【0155】
本発明の1つの特徴により、有機材料が圧縮されたペレットから、基板上に、OLEDの一部となる有機層を形成する方法が提供される。
【0156】
本発明の材料を堆積させる好ましい1つの方法がアメリカ合衆国特許出願公開2004/0255857と、アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/945,941号に記載されており、異なる蒸発源を用いて本発明のそれぞれの材料を蒸発させる。第2の好ましい方法では、温度制御された材料供給路に沿って材料を計量供給するフラッシュ蒸発を利用する。このような好ましい方法は、譲受人に譲渡された以下の特許出願:アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号、第10/805,980号、第10/945,940号、第10/945,941号、第11/050,924号、第11/050,934号に記載されている。この第2の方法を利用して、各材料を異なる蒸着源から蒸発させること、または固体材料を混合した後に同じ蒸着源を用いて蒸発させることができる。
【0157】
封止
【0158】
たいていのOLEDデバイスは、水分および/または酸素に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。
【0159】
本発明とその利点を以下の特別な実施例によってさらに詳しく説明する。“割合”または“パーセント”という用語と記号“%”は、本発明の層とデバイスの他の要素に含まれる全材料のうちの特定の第1の化合物または第2の化合物の体積パーセント(または薄膜厚さモニタで測定した厚さの比)を意味する。2種類以上の第2の化合物が存在している場合には、その第2の化合物の全体積は、本発明の層に含まれる全材料に対する割合として表現することもできる。
【実施例】
【0160】
本発明とその利点を以下の特別な実施例によってさらに詳しく説明する。実施例1にはLUMO値が説明されている。実施例2は合成の説明である。実施例3はデバイスの製造の説明である。実施例4では、本発明で定義した低電圧電子輸送材料をサンプル1〜7として報告してある。実施例5には、本発明のサンプル、対照サンプル、比較用サンプルをサンプル8〜31として報告してある。実施例6には、本発明のサンプルと対照サンプルをサンプル32〜35として報告してある。実施例7には、従来の比較用サンプルをサンプル36および37として提示してある。
【0161】
A-14、A-16、A-18、B-1、B-4、B-5は、対照デバイスで単一の化合物として使用しているため、そのような用法はそのままでは本発明の範囲外である。化合物B-1とCBPの組み合わせ、化合物A-16とA-10の組み合わせも本発明の範囲外であり、材料のあらゆる組み合わせが望む結果を与えるわけではないことを示すのに用いる。
【0162】
【化47】

【0163】
B-1(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III))とB-4(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)は、それぞれ、従来からよく知られた電子輸送材料である。電子輸送材料としてのB-4と電子注入材料としてのB-1は、アメリカ合衆国特許出願公開2002/00086180 A1の実施態様2の対象であり、これらの材料が堆積速度比1:1で同時に堆積される。実施例7では、アメリカ合衆国特許出願公開2002/00086180 A1の実施態様2を本発明と比較する。
【0164】
例1
LUMO値
【0165】
本発明の第1の化合物と第2の化合物を選択する際に1つの重要な関係が存在している。本発明の層に含まれる第1の化合物と第2の化合物のLUMO値の比較を注意深く行なう必要がある。本発明のデバイスでは、第1の化合物だけ、または第2の化合物だけを含むデバイス全体で駆動電圧を低下させるには、化合物間にLUMO値の差がなければならない。第1の化合物は、第2の化合物よりもLUMO値が小さく(よりマイナスの値で)なければならない。
【0166】
LUMO値は、一般に、電気化学的な方法で実験的に決定される。モデルCHI660電気化学分析装置(CHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州)を使用して電気化学的を行なった。サイクリック・ボルタンメトリー(CV)とオスターヤング矩形波ボルタンメトリー(SWV)を利用して興味の対象となる化合物の酸化還元特性を明らかにした。ガラス状炭素(GC)からなるディスク電極(A=0.071cm2)を作用電極として使用した。GC電極は、0.05μmのアルミナ・スラリーで研磨した後、ミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄し、次いでアセトンを用いてリンスし、再びミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄した。電極を最終的にクリーンにして電気化学的処理によって活性化した後、使用した。白金ワイヤーを補助電極として用い、SCEを準参照電極として用いて標準的な3電極電気化学的セルを完成させた。フェロセン(Fc)を内標準(1:1アセトニトリル/トルエン、0.1MのTBAFの中で飽和カロメル電極(SCE)を基準にしてEFc=0.50V)として使用した。アセトニトリルとトルエンの混合物(50%/50%v/vすなわち1:1)を有機溶媒系として用いた。サポート用電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)をイソプロパノールの中で2回再結晶させ、真空下で乾燥させた。使用したどの溶媒も、含水量が極めて少ないグレードであった(水が20ppm未満)。テスト溶液を高純度窒素ガスで約5分間にわたってパージして酸素を除去し、実験中は窒素ブランケットが溶液の上部に被さった状態を維持した。すべての測定を25±1℃という周囲温度で実施した。可逆的電極プロセスまたは準可逆的電極プロセスに関してはアノード・ピーク電位(Ep, a)とカソード・ピーク電位(Ep, c)を平均することによって、または不可逆的プロセスに関しては(SWVにおける)ピーク電位に基づき、酸化還元電位を決定した。本出願に関するすべてのLUMO値は以下の式から計算する。
【0167】
可逆的プロセスまたは準可逆的プロセスに関してSCEを基準とした正式な還元電位:
E0'還元 = (Epa + Epc)/2
【0168】
Fcを基準とした正式な還元電位:
Fcに対するE0'還元= (SCEに対するE0'還元 ) - EFc
ただしEFcはフェロセンの酸化電位E酸化である。
【0169】
LUMOの予想される下限:
LUMO = HOMOFc - (Fcに対するE0'還元 )
ただしHOMOFc(フェロセンの最高被占軌道)は-4.8eVである。
【0170】
いくつかの第1の化合物と第2の化合物に関するLUMO値を表1にリストにしてある。本発明において有用な化合物を選択するには、第1の化合物は、それと対になる第2の化合物よりもLUMO値が小さくなければならない。
【0171】
表1.代表的な材料のLUMO値
【表1】

【0172】
例2
合成 - スキーム1
【0173】
【化48】

【0174】
例2
合成-方法
【0175】
化合物(3)の調製:窒素雰囲気下でアセチレン化合物(2)(2.0g、12ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)(100ml)に溶かし、得られた溶液を0℃に冷却した。カリウムt-ブトキシド(KButO)(1.4g、12ミリモル)を添加し、得られた混合物を約15分間にわたってよく撹拌した。次に、この混合物にベンゾフェノン(1)(3.53g、30ミリモル)を添加した。0℃にて約30分間にわたって撹拌を続けた後、1時間かけて室温まで戻した。この時間が経過した後、溶液を0℃に冷却し、反応物を飽和塩化ナトリウム(20ml)で処理した。次にこの混合物を酢酸エチルで希釈し、2NのHCl(×3)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を石油エーテルと研和すると、生成物が灰白色の固形物として得られた。化合物(3)の収量は3.0g。
【0176】
化合物A-16の調製:化合物(3)(7.0g、15ミリモル)を塩化メチレン(CH2Cl2)(70ml)に溶かし、窒素雰囲気下で0℃にて撹拌した。この溶液にトリエチルアミン(NEt3)(1.56g、15ミリモル)を添加した後、反応物の温度を0〜5℃の範囲に維持しながら、塩化メタンスルホニル(CH3SO2Cl)(1.92g、15ミリモル)を一滴ずつ用いて処理した。添加が終了した後、この溶液を0℃にて30分間にわたって撹拌し、次いで1時間かけて室温まで戻した。次に反応物を還流温度まで加熱し、蒸溜によって塩化メチレン溶媒を除去して徐々にキシレンと置き換えた(合計で70ml)。反応物の内部温度が80℃に達したとき、キシレン(10ml)に溶かしたコリジン(2.40g、19.82ミリモル)を10分間かけて一滴ずつ添加した。次に温度を110℃まで上昇させ、この温度を4時間にわたって維持した。この期間が経過した後、反応物を冷却し、減圧下で濃縮した。油性残留物をメタノール(70ml)とともに撹拌すると、粗生成物が得られた。この材料を濾過して取り出し、メタノールと石油エーテルで洗浄すると、本発明の化合物A-16が明るい赤色の固形物として得られた。収量は1.5gであり、融点は300〜305℃である。N2キャリア・ガスを用い、この生成物を昇華(250℃、200ミリトル)によってさらに精製した。
【0177】
例3
ELデバイスの製造
【0178】
比較のため、本発明の条件を満たすELデバイスを以下のようにして構成した。
【0179】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0180】
a)プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0181】
b)次に、N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが75nmの正孔輸送層(HTL)をa)の上に蒸着した。
【0182】
c)次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を正孔輸送層の上に堆積させた。
【0183】
d)次に、表2〜表7と表9に示した材料と量の電子輸送層(ETL)を発光層の上に35nm堆積させた。
【0184】
e)ETLの上に厚さ0.5nmのLiF層を堆積させた。
【0185】
f)LiF層の上に厚さ130nmのAl層を堆積させてカソードを形成した。
【0186】
上記の順番でELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。
【0187】
例4
低電圧電子輸送材料
【0188】
本発明による追加の層は、第1の化合物と第2の化合物を含んでいる。第2の化合物は低電圧電子輸送材料である。本発明による追加の層に上記の比率で含まれる第1の化合物と第2の化合物の組み合わせにより、第1の化合物または第2の化合物が単独でこの層に組み込まれたデバイスと比較して駆動電圧がはるかに低いデバイスが得られる。
【0189】
一般に、低電圧電子輸送材料は、実施例3のデバイスの段落d)で説明した電子輸送層に単独で組み込まれたとき、駆動電圧が13ボルト以下になる材料である。駆動電圧が10ボルト以下の低電圧電子輸送材料も本発明の第2の化合物として有用だが、8ボルト以下の材料のほうが第2の化合物として好ましい。低い駆動電圧を求めて調べた材料とその結果を表2に示してある。
【0190】
表2.低電圧電子輸送材料
【表2】

【0191】
表2から、化合物B-1、B-5、B-6が低電圧電子輸送材料として選択されるのに対し、A-10、A-13、A-18、CBPはそうならないことがわかる。
【0192】
例5
本発明のサンプル、対照サンプル、比較用サンプル
【0193】
本発明の条件を満たすOLEDデバイスを実施例3と同様の方法でサンプル8〜31として構成した。ただし段落d)の層に含まれる材料とその量は、表3〜表7に記載してある。
【0194】
表3.Liを2%含むELデバイスの試験結果
第1の化合物(A-14)と第2の化合物(B-1)を含む電子輸送層
【表3】

1:20mA/cm2で測定した輝度収率
2:安定性は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて250時間にわたって動作させた後に残っている輝度の%を意味する。
【0195】
表4.Liを2%含むELデバイスの試験結果
第1の化合物(A-16)と第2の化合物(B-1)を含む電子輸送層
【表4】

1:20mA/cm2で測定した輝度収率
2:安定性は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて250時間にわたって動作させた後に残っている輝度の%を意味する。
【0196】
表5.Liを2%含むELデバイスの試験結果
第1の化合物(A-18)と第2の化合物(B-5)を含む電子輸送層
【表5】

1:20mA/cm2で測定した輝度収率
2:安定性は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて240時間にわたって動作させた後に残っている輝度の%を意味する。
【0197】
表6.Liを2%含むELデバイスの比較試験結果
CBPよりもLUMO値が小さいB-1
【表6】

【0198】
表7.Liを2%含むELデバイスの比較試験結果
A-10よりもLUMO値が小さいA-16
【表7】

【0199】
表3、表4、表5に示した結果から、本発明のデバイスはすべて、第1の化合物または第2の化合物が100%であるそれぞれの対照よりもある期間にわたって動作させた後の性能が優れていることがわかる。図2と図3にはさらに、駆動電圧に関して本発明が比較例よりも250〜300時間の期間にわたって優れていることを、サンプル13、14、15、16、17、18、19、20、21についてグラフの形態で示してある。
【0200】
表6と表7の結果から、材料のすべての組み合わせが好ましい結果をもらたすわけではないことがわかる。表6では、B-1は、LUMO値がCBPよりも小さいため第1の化合物として分類される。しかしCBPが第2の化合物であるとすると本発明で定義した低電圧電子輸送材料にはならないため、本発明の条件を満たさない。表7では、A-16は、LUMO値がA-10よりも小さいため第1の化合物として分類される。しかしA-10が第2の化合物であるとするとやはり本発明で定義した低電圧電子輸送材料にはならないため、本発明の条件を満たさない。
【0201】
例6
本発明のサンプルと対照サンプル
【0202】
比較のため、本発明の条件を満たすELデバイスをサンプル32〜35として以下のようにして構成した。
【0203】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0204】
a)プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0205】
b)次に、N,N'-ジ-1-ナフタレニル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが75nmの正孔輸送層(HTL)をa)の上に蒸着した。
【0206】
c)次に、9-(2-ナフチル)-10-(4-フェニル)フェニルアントラセン(A-10)(95%);NPB(5%);2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン(A-18、TBP)(2%)からなる厚さ35nmの発光層(LEL)を正孔輸送層の上に堆積させた。
【0207】
d)次に、B-1とA-16とLiが表8の表に示した量である混合物からなる厚さ35nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上に堆積させた。
【0208】
e)ETLの上に厚さ0.5nmのLiF層を堆積させた。
【0209】
f)LiF層の上に厚さ130nmのAl層を堆積させてカソードを形成した。
【0210】
上記の順番でELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。
【0211】
表8.Liを2%含むELデバイスの試験結果
第1の化合物(A-16)と第2の化合物(B-1)を含む電子輸送層
【表8】

1:20mA/cm2で測定した輝度収率
2:安定性は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて240時間にわたって動作させた後に残っている輝度の%を意味する。
3:電圧上昇は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて240時間にわたって動作させたときに起こる電圧の変化である。
【0212】
サンプル32は、第2の化合物が98%でLiが2%のOLEDデバイスであり、サンプル33は、第1の化合物が98%でLiが2%のOLEDデバイスである。表8から、全体として、本発明のサンプル34と35は、駆動電圧、安定性、電圧上昇に関して対照よりもはるかに優れていることがわかる。
【0213】
例7
本発明のサンプルと比較用サンプル
【0214】
本発明の条件を満たすOLEDデバイスを実施例3と同様の方法でサンプル36、37として構成した。ただし段落d)の層に含まれる材料とその量は、表9に記載してある。
【0215】
表9.Liを2%含むELデバイスの試験結果
B-1/B-4比較例と、第1の化合物(A-16)と第2の化合物(B-4)の比較
【表9】

1:安定性は、デバイスを電流密度20mA/cm2で70℃にて250時間にわたって動作させた後に残っている輝度の%を意味する。
【0216】
表9から、本発明のサンプル37における安定性が比較用のサンプル36よりも優れていることがわかる。
【0217】
本発明を特にいくつかの好ましい実施態様を参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神と範囲の中で、さまざまな変形や変更が可能であることが理解されよう。例えば複数の第2の化合物を、それらが第1の化合物に対して正しいLUMO値を持つのであれば、本発明による追加の層で使用することができる。さまざまな金属をドーパントとして使用することができる。さらに、本発明を任意の色の光を出すデバイスで使用することと、追加の層を、カソードとLELの間で他の層のいずれかの側に隣接させることができる。
【0218】
引用した特許と他の刊行物は、その全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明の一実施態様の断面図であり、第1の化合物と、第2の化合物と、金属が、電子輸送層(ETL、136)の中に位置している。この図には正孔注入層(HIL、130)と電子注入層(EIL、138)が示してあるが、これらはなくてもよい。
【図2】電圧と動作時間の関係を示すグラフであり、本発明に従って製造したOLEDデバイスでは時間が経過しても駆動電圧が低いことを示している。
【図3】電圧と動作時間の関係を示すグラフであり、本発明に従って製造したOLEDデバイスでは時間が経過しても駆動電圧が低いことを示している。
【符号の説明】
【0220】
100 OLED
110 基板
120 アノード
130 正孔注入層(HIL)
132 正孔輸送層(HTL)
134 発光層(LEL)
136 電子輸送層(ETL)
138 電子注入層(EIL)
140 カソード
150 電圧/電流源
160 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上かつ100体積%未満である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを含む、OLEDデバイス。
【請求項2】
上記追加の層が上記発光層に隣接している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
上記追加の層が電子注入層に隣接していて、その電子注入層が上記カソードに隣接している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
上記追加の層が非発光層である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
上記追加の層が、1種類の第1の化合物と、1種類だけの第2の化合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
上記追加の層が、1種類の第1の化合物と、2種類の第2の化合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項7】
第1の化合物と第2の化合物が非発光性である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
第1の化合物と第2の化合物の選択が、金属キレート化オキシノイド、非金属キレート化オキシノイド、アントラセン、ビピリジル、ブタジエン、イミダゾール、フェナントレン、フェナントロリン、スチリルアリーレン、ベンズアゾール、バックミンスターフラーレン-C60(バッキーボールまたはフラーレン-C60としても知られる)、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン、チオピラン、ポリメチン、ピリリウム、フルオランテン、ペリフラントレン、シラシクロペンタジエンまたはシロール、チアピリリウム、トリアジン、カルボスチリル、金属キレート化ビス(アジニル)アミン、非金属キレート化ビス(アジニル)アミン、金属キレート化ビス(アジニル)メテン、非金属キレート化ビス(アジニル)メテンの中からなされる、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
第1の化合物が、
一般式(I):
【化1】

(ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす)、または
一般式(II):
(RS-Q)2-M-O-L 一般式(II)
(ただし、
Mは金属または非金属であり;
Qは、各々、置換された8-キノリノラト・リガンドを表わし;
RSは、3個以上の置換された8-キノリノラト・リガンドがアルミニウム原子に結合するのを立体的に阻止するように選択した8-キノリノラト環置換基を表わし;
Lは、フェニル環部分または縮合した芳香族環部分であり、炭化水素基で置換されてLが6〜24個の炭素原子を持っていてもよい)、または
一般式(III)、(IV):
【化2】

(ただし、
AとA'は、独立に、少なくとも1個の窒素原子を含む6員の芳香族環に対応するアジン環系を表わし;
それぞれのXaとXbは、独立に選択した置換基であり、そのうちの2つが合わさってAまたはA'への縮合環を形成していてもよく;
mとnは、独立に0〜4であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基であり;
Yは、水素原子または置換基であり;
1、2、3、4、1'、2'、3'、4'は、独立に、炭素原子または窒素原子として選択される)、または
一般式(V):
【化3】

(ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は、独立に、水素または置換基として選択され;
その置換基はどれも、合わさってさらに縮合環を形成していてもよい)、または
一般式(VI):
【化4】

(ただし、
R13、R14、R15、R16は、水素であるか、以下のグループ:
グループ1:水素と、一般に1〜24個の炭素原子を持つアルキル基とアルコキシ基;
グループ2:一般に6〜20個の炭素原子を持つ環基;
グループ3:一般に6〜30個の炭素原子を持つ縮合炭素環基(ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、ペリレニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ4:一般に5〜24個の炭素原子を持つ縮合複素環基(フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリニル基など)を完成させるのに必要な原子;
グループ5:一般に炭素原子を1〜24個持つアルコキシアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基;
グループ6:フッ素基、塩素基、臭素基、シアノ基
の中から選択した1つ以上の置換基である)で表わされる、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
第1の化合物の選択が、
【化5】

【化6】

【化7】

からなるグループの中からなされ、このグループの構成メンバーは置換されていてもよい、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
第1の化合物の選択が、
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

からなるグループの中からなされる、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項12】
第2の化合物が、
一般式(I):
【化17】

(ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす);
一般式(II):
(RS-Q)2-M-O-L 一般式(II)
(ただし、
Mは金属または非金属であり;
Qは、各々、置換された8-キノリノラト・リガンドを表わし;
RSは、3個以上の置換された8-キノリノラト・リガンドがアルミニウム原子に結合するのを立体的に阻止するように選択した8-キノリノラト環置換基を表わし;
Lは、フェニル環部分または縮合した芳香族環部分であり、炭化水素基で置換されてLが6〜24個の炭素原子を持っていてもよい)、または一般式(VII):
【化18】

(ただし、
R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24は、水素または置換基であり;
その置換基のうちの任意のものが合わさってさらに縮合環を形成していてもよい);
一般式(VIII):
【化19】

(ただし、
mは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR29、Sのいずれかであり;
R25、R26、R27、R28、R29は、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル;炭素原子が5〜20個のアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール;ハロのいずれかであるか;縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子であり;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のベンズアゾールを共役または非共役に結合させる結合単位である);
一般式(IX):
【化20】

(ただし、
R30、R31、R32は、水素または置換基であるか、縮合炭素環または縮合複素環を完成させるのに必要な原子である));
一般式(X):
【化21】

(ただし、
kは1〜4の整数であり;
R33は、水素、置換基、炭素環基、複素環基のいずれかであり;
Yは、通常はアルキル基またはアリール基を含んでいて複数のトリアジンを共役または非共役に結合させる結合単位である)で表わされる化合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項13】
第2の化合物が、
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

からなるグループの中から選択した化合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項14】
第1の化合物の選択が、
【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

からなるグループの中からなされ、第2の化合物の選択が、
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

からなるグループの中からなされる、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項15】
上記カソードの選択が、LiF/Al、Mg:Ag合金、Al-Li合金、Mg-Al合金からなるグループの中からなされる、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項16】
第1の化合物が、上記追加の層の20体積%以上かつ100体積%未満の量で存在し、第2の化合物が、上記追加の層の80体積%以下かつ0体積%超の量で存在し、上記金属が、上記追加の層の0.1%超かつ10%未満の量で存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項17】
第1の化合物が、上記追加の層の40体積%以上かつ100体積%未満の量で存在し、第2の化合物が、上記追加の層の60体積%以下かつ0体積%超の量で存在し、上記金属が、上記追加の層の0.1%超かつ10%未満の量で存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項18】
第1の化合物が、上記追加の層の60体積%以上かつ100体積%未満の量で存在し、第2の化合物が、上記追加の層の40体積%以下かつ0体積%超の量で存在し、上記金属が、上記追加の層の0.1%超かつ10%未満の量で存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項19】
第1の化合物が、上記追加の層の90体積%以上かつ100体積%未満の量で存在し、第2の化合物が、上記追加の層の10体積%以下かつ0体積%超の量で存在し、上記金属が、上記追加の層の0.1%超かつ10%未満の量で存在している、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項20】
カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)縮合した少なくとも2つの環を含んでいて、この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを含む、OLEDデバイス。
【請求項21】
上記追加の層に含まれる金属材料が、アルカリ金属とアルカリ土類金属の中から選択した1つの金属、またはその金属をベースとした化合物である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項22】
上記金属の選択が、Li、Na、K、Rb、Csの中からなされる、請求項21に記載のOLEDデバイス。
【請求項23】
1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースとした上記金属材料が、上記追加の層に含まれる全材料の0.1〜15体積%の量で存在している、請求項21に記載のOLEDデバイス。
【請求項24】
上記追加の層に、1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースとした金属材料が、その層に含まれる全材料の0.1〜10体積%の量で存在している、請求項23に記載のOLEDデバイス。
【請求項25】
上記追加の層に、1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースとした金属材料が、その層に含まれる全材料の1〜8体積%の量で存在している、請求項23に記載のOLEDデバイス。
【請求項26】
カソードと、アノードと、発光層と、この発光層のカソード側にある追加の層とを備えるOLEDデバイスであって、この追加の層が、
a)縮合した少なくとも3つの環を含んでいて、この層に含まれる化合物のうちの最低LUMO値を持ち、量が、この層の10体積%以上である第1の化合物と;
b)第1の化合物よりも大きなLUMO値を持ち、合計量が、この層の90体積%以下である少なくとも1種類の第2の化合物(そのうちの少なくとも1つは低電圧電子輸送材料である)と;
c)仕事関数が4.2eV未満の金属をベースとした金属材料とを含む、OLEDデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538157(P2008−538157A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500737(P2008−500737)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006641
【国際公開番号】WO2006/098860
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】