説明

混合ワクチン

本発明は、細菌に対する抗原およびウイルスに対する抗原の組み合わせ、その組み合わせの使用、ならびに感染症に対する防御を提供するためのこれらの抗原の組み合わせを含む医薬の調製に関する。特に、本発明は、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎(TBE)に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原とを含有する、混合ワクチンに関する。特に、本発明は、Clostridium tetaniの少なくとも1種の抗原と、Corynebacterium diphtheriae由来の少なくとも1種の抗原と、TBE−フラビウイルス由来の少なくとも1種の抗原との、混合ワクチンに関し、この混合ワクチンは、これらの病原性生物によって引き起こされる疾患および医学的状態に対する血清防御を提供するのに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌に対する抗原およびウイルスに対する抗原の組み合わせ、その組み合わせの使用、ならびに感染症に対する防御を提供するためのこれらの抗原の組み合わせを含む医薬の調製に関する。特に、本発明は、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎(TBE)に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原とを含有する、混合ワクチンに関する。本発明の好ましい実施形態に従って、Clostridium tetaniの少なくとも1種の抗原と、Corynebacterium diphtheriae由来の少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来の少なくとも1種の抗原とを含む組み合わせが、提供される。
【背景技術】
【0002】
感染症に対する特異免疫の誘導は、現代医学において最も重要な里程石の1つであった。現在、膨大な数の異なるワクチンが、ヒトおよび動物の予防的防御に関する分野において公知である。とりわけ、広く用いられるワクチンは、破傷風に対するワクチンおよびジフテリアに対するワクチンである。破傷風ワクチンおよびジフテリアワクチンは、通常、投与の際に防御を誘導し得る、抗原などの不活化毒素(トキソイド)を含む。これらのトキソイドは、一般に、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム)上に吸着されて、そのトキソイドの免疫原性が増強される。
【0003】
利便性の問題のために、破傷風抗原およびジフテリア抗原は、破傷風およびジフテリアの両方に対する防御免疫を誘導する破傷風/ジフテリア−混合ワクチンと組み合わせられ得る。このようにして、複数の注射および大きい総注射容量が、回避され得る。数種の混合ワクチンは、既に当該分野で公知である(例えば、ジフテリア(D)と破傷風(T)と百日咳(T)とに対するワクチン;DTPといわれる組み合わせ、麻疹とムンプス(MM)とに対するワクチン、または麻疹(M)とムンプス(M)と風疹(R)とに対するワクチン;MMRといわれる組み合わせ)。さらに、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原およびHaemophilus influenzaeB型抗原(Hib)と一緒になったDTPなどの五価ワクチンもまた、実用化されている。さらに、無菌体百日咳(aP)由来の抗原および不活化ポリオウイルス(IPV)由来の抗原を含む多価ワクチンが、調製されている。例えば、ジフテリアの感染、破傷風の感染、百日咳の感染、B型肝炎の感染、ポリオの感染およびHaemophilus influenzaeB型の感染に対する防御を提供するための抗原を含む六価ワクチンDTaP−HBV−IPV−Hibが、先行技術において記載された(非特許文献1)。
【0004】
混合ワクチンについての必須条件は、「競合する」抗原の欠如、および免疫化される被験体に対する高い適合性である。免疫化に関して適用される国際基準にしたがって、混合型ワクチンは、別個の予防接種によって達成される防御に匹敵する防御を与えるべきである。しかし、抗原の配合は、多くの問題および不確実性を伴う複雑な工程である。混合ワクチンの個々の成分が不活性な物質でない場合、1つの混合物への種々の成分の配合は、個々の抗原性成分の免疫原性に対してネガティブに影響し得る。例えば、異なる抗原の間の相互作用、または抗原と、このようなワクチンに代表的に使用される他の成分との間の相互作用が、電荷、化学的残留物、洗浄剤、ホルムアルデヒド、イオンの濃度などにおける違いに起因して生じ得る。これらの変化は、異なる抗原を互いに接触させた後か、または異なる抗原をワクチン処方物にて通常存在する他の物質と接触させた後に、直ちに生じ得る。さらに、これらの変化はまた、例えば、保管、輸送などの間の混合に、顕著な遅れを伴って生じ得る。しかし、個々の抗原の免疫原性が、それらを1つの組み合わせに混合することによって影響され得る程度を、予測することはできない。結果として、上記ワクチンの1種以上の抗原が疾患の1種以上に対する不十分な血清防御(seroprotection)を与えるのみである状況が、生じ得、この状況は、医療上の実施に適さない製品を提供する。
【0005】
例えば、Zott(非特許文献2)は、全菌体百日咳成分を無菌体百日咳抗原(DaPT)によって置換することが、全菌体百日咳と、ジフテリアトキソイドと、破傷風トキソイド(DPT)とからなる混合ワクチン中の破傷風成分の力価を、1用量あたり370IUから1用量あたり84IUに低下させることを報告する。
【0006】
同様に、Haemophilus influenzaeB型接合抗原と、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドと、無菌体百日咳抗原と、不活化ポリオウイルス抗原とからなる混合ワクチン(DTaP−Hib−IPV)は、同時に与えられるDTaPの組み合わせと、身体の異なる部位における一価IPVワクチンおよび一価Hibワクチンとの組み合わせと比較した場合に、Hib抗原に対する減少した抗体形成を示すことが臨床試験において示された(非特許文献3)。血清防御における損失を生じるこのような相互作用の結果は、劇的であり得る。McVernonら(非特許文献4)は、2000年〜2001年の英国における、細胞性の百日咳成分と一緒になったHaemophilus influenzae抗原を含むこのようなより低い免疫原性の混合ワクチンの広範な使用を非難さえし、このワクチンは、1998年以来の英国におけるHaemophilus influenzaeB型による侵襲性の感染の全体的な増加の一因である。
【非特許文献1】Scandinavian Journal of Infectious Diseases、2004年、第36巻、第8号、p.585−592
【非特許文献2】Zott、Bundesgesundhbl、1997年12月発行、p.498−501
【非特許文献3】Eskolaら、Lancet、1996年、第348号、p.1688−1692
【非特許文献4】McVernonら、BMJ、2004年、第329号、p.655−658
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの結果は、有効な混合ワクチンの生産が、ワクチンの個々の成分の間の多次元的な(multidimensional)相互作用に依存し、そして別々に投与される場合に観察される成分の任意の効果の推定を許容しない複雑な問題であることを明確に示す。したがって、数種の感染症に対する防御を提供する混合ワクチンに対する必要性が、存在する。この必要性は、本発明に従う混合ワクチンによって充足される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原とを含有する混合ワクチンが、破傷風の感染、ジフテリアの感染およびダニ媒介性脳炎ウイルスの感染に通常関連している症状に対する有効な血清防御を与えるのに適していることが、ここで、本出願人によって意外にも見出された。特に、Clostridium tetaniの少なくとも1種の抗原と、Corynebacterium diphtheriae由来の少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来の少なくとも1種の抗原とを含有する混合ワクチンが、提供される。本発明によるワクチンは、優れた免疫学的防御を示す。さらに、本発明による混合ワクチンは、そのワクチン組成物の有効性を著しく減少させることなく他の抗原と組み合わせられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特定の例示された分子または特定の例示された方法のパラメータ(そういうものとして当然に変化し得る)に限定されないことが、理解されるべきである。本明細書中で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであり、そしてその専門用語は、限定を意図しないことが、理解され得る。さらに、本発明の実施には、特に明記されない限り、ウイルス学、微生物学、分子生物学、組換えDNA技術および免疫学の従来の方法を利用し、その方法の全ては、当業者の技術範囲内である。このような技術は、文献において十分に説明される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);DNA Cloning:A Practical Approach、第I巻および第II巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編、1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);およびFundamental Virology、第2版、第I巻および第II巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。
【0010】
前述または後述にかかわらず、本明細書中に列挙される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が本明細書に参考として援用される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」が、その内容が明確にそうではないことを指定しない限り、複数の対象を含むことに、注意しなければならない。本願において使用される全ての技術用語および科学用語は、特に定められない限り、当該分野において一般的に使用される意味を有する。本願において使用される場合、以下の語または語句は、指定された意味を有する。
【0011】
用語「含む(包含する、含有する)(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる」を意味する。Xを「含む(含有する)」組成物は、Xのみからなり得るか、またはさらなるものも含み得る(例えば、X+Y)。
【0012】
数値xに関する「約」という用語は、例えば、x±10%を意味する。
【0013】
ジフテリアは、Corynebacterium diphtheriaeによって引き起こされる感染症である。この生物の特定の株は、約62000Daの分子量を有する非耐熱性のポリペプチド毒素を産生する。培地中に分泌される毒素は、2つのフラグメントからなる、いわゆる「A−B毒素」に属する。フラグメントA(約22000Da)は、NADの存在下で標的細胞中の延長因子を不活化し得る致死性の毒素である。したがって、上記毒素は、タンパク質合成の阻害および細胞死をもたらす。一方で、フラグメントB(約40000Da)は、標的細胞に対する結合および細胞質膜を介した細胞質へのフラグメントAの輸送に関与し、その細胞質においてこの毒素は、その作用を示す。特に、外毒素を産生するCorynebacterium diphtheriaeの全ての株は、上記毒素をコードするバクテリオファージ(βファージと称される)を含む。
【0014】
ジフテリアトキソイド(「D」)は、Vaccines、Plotkin & Orenstein編、第4版、2004の第13章に、より詳細に開示される。好ましいジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるトキソイドである。上記ジフテリアトキソイドは、Corynebacterium diphtheriaeをウシの抽出物が補充され得る増殖培地(例えば、Fenton培地、またはLinggoud & Fenton培地)中で増殖させ、次いでホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降を行なうことによって得られ得る。次いで上記トキソイド化した(toxoided)材料は、無菌濾過および/または透析を包含する方法によって処理され得る。ジフテリアトキソイドの量は、国際単位(IU)で表され得る。例えば、NIBSCは、「Diphtheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」[Sesardicら、2001、Biologicals 29:107−22;NIBSCコード:98/560]を提供し、これは、1アンプルあたり160IUを有する。IUシステムに代わるものとして、「Lf」単位(「凝集単位(flocculating unit)」または「限界凝集用量(limes flocculating dose)」)が、1国際単位の抗毒素と混合されたときに最適に凝集する混合物をもたらすトキソイドの量として定義される[Module 1 of WHO’The immunological basis for immunization series(Galazka)]。例えば、NIBSCは、1アンプルあたり300LFを有する「Diphtheria Toxoid,Plain」[NIBSCコード:69/017]を提供し、そしてまた、1アンプルあたり900Lfを含む「The 1st International Reference Reagent For Diphtheria Toxoid For FJocculation Test」[NIBSCコード:DIFT]を提供する。
【0015】
一般的に、約10年毎のワクチンブースター用量が、獲得免疫の維持のために必要とされる。WHOによって示される推奨にしたがって、ジフテリアワクチンが、通常、一次免疫のため、および免疫化を強化する(「ブースター(booster)」)のために、就学前の小児に対して三価ワクチン(DTP)として投与される一方で、二価ワクチン(DT)が、これらの就学前の小児においてブースター用量のために使用される。このようなワクチンにおいて使用されるジフテリアトキソイドの量は、約20Lf/ml(Lfは、以下で詳細に定義される凝集単位(Limes flocculationis)の略語である)またはそれ以上であり、かつ1用量あたり少なくとも20国際単位〜50国際単位(1用量あたりのIU)の力価を有する。この量は、上記トキソイド(DT)の小児形態として指定される。
【0016】
このような高濃度のジフテリア抗原は、5歳より老いた者において比較的高い反応性(reactogenicity)を誘導し得るので、より老いた者のためのジフテリアワクチンは、より少ない抗原量のジフテリアトキソイドを含む。5歳〜7歳の年長者(age onwards)に対して、成人形態(成人投与形態または成人形態)に適した濃度の上記トキソイド(Td)が、使用され、この形態は、小児形態よりかなり少ないトキソイドを含む。例えば、Chiron Behring GmbH & Co KGによって生産される、成人のための上記一価ジフテリアワクチンは、1.5Lfのジフテリアトキソイドを含み、そして1用量あたり少なくとも2IUを示す。
【0017】
このワクチンは、5歳以上の者、および新生児期の間にジフテリアに対する完全な一次予防接種を有した者、およびジフテリアに対する免疫応答のブーストを必要とする者を予防接種するために、使用され得る。多くの国において、ジフテリアに対するブースター予防接種は、10年毎が推奨される。破傷風に対する抗体価もまた、時間と共に徐々に減少するので、破傷風に対するブースター予防接種もまた、10年毎が推奨される。破傷風に対する免疫応答のブーストおよびジフテリアに対する免疫応答のブーストについての推奨に従わない場合、これらの者は、Corynebacterium diphtheriaeもしくはClostridium tetaniによる感染の際に、ジフテリアまたは破傷風を発症する危険性がある。
【0018】
破傷風は、病原性微生物Clostridium tetaniによって引き起こされる。クロストリジウム属の微生物は、嫌気条件下においてのみ増殖し得る。Clostridium tetaniは、数種の毒素を合成し、その毒素のうちで最も重要なものは、テタノスパミン(150000Daの分子量を有する非耐熱性タンパク質)である。テタノスパミンは、非常に強力な細菌性毒素である;10−4μgの量の純粋な毒素は、48時間以内にマウスを殺すのに十分である。上記ジフテリア毒素のように、破傷風毒素は、いわゆる「A−B毒素」に属し、そしてこの破傷風毒素は、2つのサブユニット(約100000Daの重鎖および約50000Daの軽鎖)からなる。上記重鎖が、標的細胞への結合を担うのに対して、上記軽鎖は、毒性成分に相当する。
【0019】
破傷風の臨床症状は、感染された生物における破傷風毒素の合成によって引き起こされる。Clostridium tetaniは、嫌気性を生じる深い刺創(wound puncture)において増殖し得る。上記微生物自体は、最初の感染部位から身体に侵襲しないが、産生された毒素は、拡散し得、そして死をもたらす重篤な神経学的障害を引き起こす。中枢神経系への毒素の進入の際、この毒素は、神経シナプスの膜の一方の脂質に結合することによって、神経シナプスを硬直させる(fixed)。具体的には、上記毒素は、筋肉の弛緩を可能にする神経因子の活性をブロックし、代表的に、破傷風に付随する痙攣性麻痺をもたらす、運動ニューロンの持続的な発火を生じる。
【0020】
破傷風トキソイド(「T」)は、Vaccines、Plotkin & Orenstein編、第4版、2004の第27章において、より詳細に開示される。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって調製されるトキソイドである。上記破傷風トキソイドは、Clostridium tetaniを増殖培地(例えば、ウシのカゼインに由来するLatham培地)中で増殖させ、次いでホルムアルデヒド処理、限外濾過および沈降を行なうことによって得られ得る。次いで上記材料は、無菌濾過および/または透析を包含する方法によって処理され得る。破傷風トキソイドの量は、国際単位(IU)で表され得る。例えば、NIBSCは、「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」[esardicら、2001、Biologicals 30:49−68;NIBSCコード:98/552]を提供し、これは、1アンプルあたり469IUを有する。IUシステムに代わるものとして、「Lf」単位(「凝集単位」または「限界凝集用量」)が、1国際単位の抗毒素と混合されたときに最適に凝集する混合物をもたらすトキソイドの量として定義される[Module 1 of WHO’The immunological basis for immunization series(Galazka)]。例えば、NIBSCは、1アンプルあたり1000LFを含む「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For Flocculation Test」[NIBSCコード:TEFT]を提供する。
【0021】
ダニ媒介性脳炎(TBE)ウイルスは、フラビウイルスのうちの、ダニが媒介する群の種である。TBEウイルス(中央ヨーロッパ脳炎ウイルスもしくはロシア春夏脳炎ウイルス、またはドイツにおいて、Fruehsommer−Meningo−Enzephalitisウイルス(FSMEウイルスとも称される)は、ヒトにおいて種々の臨床症状を引き起こし、これらの症状としては、不顕性感染、軽度もしくは重度の発熱および髄膜炎、髄膜脳炎ならびに深刻な続発症を伴う髄膜脳脊髄炎が挙げられる(Kaiser、Brain 1999;122:2067−2078)。ヨーロッパおよびアジアの多くの地域は、TBEに関して風土的であり、したがって、TBE予防接種が、ヨーロッパおよびアジアの多くの国において推奨される(Dumpisら、Clin.Infect.Dis.1999;28:882−890;Suess、Vaccine 2003;S1:19−35)。
【0022】
TBEワクチンは、一様に、不活化ウイルス(主に、エンベロープ糖タンパク質E)を含み、そしてそのウイルス抗原もまた、T抗原およびD/d抗原と同様に、アルミニウム塩に吸着される。利用可能なTBEは、Neudoerfl株(Heinzら、J.Med.Virol.1980;6:213−221)またはK23株(Klockmannら、J.Biol.Standard.1989;17:331−342)のいずれかに由来する、不活化ウイルス抗原および精製ウイルス抗原からなる。ヨーロッパ、シベリアおよび極東アジアからの単離体(isolate)の血清学的分析ならびに遺伝的分析に基づいて、ダニ媒介性脳炎ウイルスは、近い関係にある3種の血清型に細分されているが、免疫防御を与える糖タンパク質E抗原の、アミノ酸レベルにおける変動の程度は、低く(Eckerら、J.Gen.Virol.1999;80:179−185)、したがって、Neudoerfl株またはK23株のいずれかに基づくTBEワクチンは、交換可能であり、そしてそれらの両方は、広範な種々のTBEウイルス株に対する防御を誘導する。
【0023】
最初に開発されたTBEワクチンは、幼い小児において全身的な副作用(例えば、発熱)を引き起こし得、したがって、減少した量のTBE抗原を含むTBEワクチンが、小児の免疫化のために開発されている(GirgsdiesおよびRosenkranz,Vaccine 1996;14:1421−1428;Zentら、Vaccine 2003;21:3584−3952)。例えば、成人用のTBEワクチンであるEncepur(登録商標)(Chiron Behring GmbH & Co KG)は、1用量あたり1.5μgの抗原を含むが、小児用のEncepur(登録商標)(Chiron Behring GmbH & Co KG)は、1用量あたり0.75μgの抗原からなり、そして小児用のEncepur(登録商標)は、1歳〜11歳の小児に適用される。特に、TBEの場合において、抗原の力価に関して、抗原量についての列挙を可能にする国際的な基準(calibration)は、存在しない。したがって、TBEの場合において使用される抗原の量は、μgで取り扱われる。興味深いことに、幼い者および成人の者における、上記TBEワクチンの反応性プロフィールならびに上記のジフテリアワクチンの反応性プロフィールまたは破傷風/ジフテリアワクチンの反応性プロフィールは、全く異なって挙動する。高いジフテリア抗原量を含むワクチンの副作用は、小児と比較して、成人において、より一般的であるが、TBEワクチンに関する副作用の数は、抗原量が高い場合、成人と比較して、小児において増加する。
【0024】
TBEに対する一次免疫は、3種のワクチン用量からなり、これらの用量は、Neudoerfl株またはK23株のいずれかに基づくワクチンの両方に関して、0日目、1〜3ヶ月目(第1の用量の後)および9〜12ヶ月目(第2の用量の後)に、製造業者の特定の製品特性(Specific Product Characteristics)に従って与えられる。ブースター予防接種は、TBE感染の危険性がある者に対して、3年毎が推奨される。これらの推奨に基づいて、ダニ媒介性脳炎ウイルスが風土的である地域に生きる者は、TBEに対する防御を確実にするために、その者の生涯において、25回以上のTBE予防接種を受ける。
【0025】
最近、血清学的調査は、免疫化におけるTBEに対する防御が3年より長く持続することを示し(Rendi−Wagnerら、Vaccine 2004;22、pp.2743−2749)、したがって、オーストリア予防接種諮問機関「Oberster Sanitatsrat」のVaccination Committee(Impfausschuss)は、2004年から、第1のブースター予防接種が行なわれている際に、59歳までの者についてのブースター間隔を3年間から5年間に延長することを推奨する(Hoerandl、Impfplan 2004、Welche Neuerungen gibt es? Jatros Vaccines、1/2004、4−5;Hoerandl、FSME−Impfung.Impfschutz auf fuenf Jahre verlaengert.Jatros Vaccines 1/2004、6−7)。他の国がこれらの推奨に従うことが、予想され得る。長期的に、TBE予防接種についてのブースター間隔が10年間にさえ延長され得ることは、同じく除外することができない。この場合において、破傷風と、ジフテリアと、TBEとに対する防御を提供する混合ワクチンが、特に有利である。なぜなら、上記3種の疾患についてのブースター間隔が、同じであるからである。
【0026】
(本発明の混合ワクチンの利点)
破傷風とジフテリアとに対する一次免疫は、一般的に、3〜12月齢の乳児において実施され、そしてブースター予防接種は、学校入学および小学校卒業の頃、ならびにその後10年間毎にて推奨される。ヒトが老いる一方で、免疫系の効力は低下する。したがって、オーストリアにおいて、60歳を超える者についての、破傷風とジフテリアとに対するブースター免疫は、破傷風と、ジフテリアとに対する十分な免疫応答および防御抗体価のレベルを保証するために、5年間毎が推奨される一方で、ドイツにおいては、予防接種諮問機関であるSTIKO(Standige Impfkommission am Robert Koch−Institut)が、高齢者についても10年間のブースター間隔を推奨する。TBEに対する一次予防接種は、3歳以上の小児、ダニ媒介性脳炎ウイルスが風土的な地域に生きるか、またはその地域に行く、青年および成人に対して推奨され、そしてブースター予防接種は、3年間毎が推奨され、かつ種々の年齢層に対する予防接種の間隔に関して、全く異ならない。
【0027】
破傷風と、ジフテリアと、TBEとに対するブースター予防接種が、5歳以上の者において行なわれるべきときには、事実上、2種のワクチン注射(shot)、すなわち、TdおよびTBE予防接種が、実施される必要がある。これらの2種のワクチンは、2週間または4週間のいずれかの間隔を空けることと同時に、身体の2つの部位(例えば、左上腕および右上腕)において、別々に与えられ得る。本発明にしたがって、破傷風と、ジフテリアと、TBEとに対する防御は、T抗原と、d抗原と、TBE抗原とからなる混合ワクチンによって促進され得る。本明細書中で使用される場合、この混合ワクチンは、Td−TBEと称される。5歳〜11歳の者は、好ましくは、既に現在の一価TBEワクチンに応用されているような、減少したTBE抗原量を含むTd−TBE混合ワクチンを受容する(Zentら、Vaccine 2003;21:3584−3952;Ehrlichら、Int.J.Med.Microbiol.2004;37:126−127)。他の強力なワクチンの大部分に関して、Td−TBEワクチンは、12歳以上の者に対する上記TBE抗原量からなるべきであり、その抗原量は、より年長の小児、青年および成人の免疫化のために、既に使用されている(Zentら、Vaccine、2003;21:738−741;Ehrlichら、Vaccine 2003;22:217−223)。本発明の文脈において、減少した抗原濃度を有するジフテリアトキソイドワクチンの成人形態は、一般に、「d」と表されるが、小児用のワクチンに使用される高い量のジフテリアトキソイドを有する小児形態は、「D」と称される。例えば、DT−Impfstoff Behring fur Kinder(小児用のDT吸着物ワクチン;Chiron Behring GmbH & Co KG)は、1用量あたり少なくとも40IUの力価を有する20Lfの破傷風トキソイド、および1用量あたり少なくとも30IUの力価を有する20Lfのジフテリアトキソイドを含む。比較して、混合ワクチンTd−pur(登録商標)(Chiron Behring GmbH & Co KG)は、1用量あたり少なくとも20IUの力価を有する20Lfの破傷風トキソイド、および1用量あたり少なくとも2IUの力価を有する1.5Lfだけのジフテリアトキソイドを含む。
【0028】
この新規混合ワクチンは、患者の望みをかなえる。なぜなら、破傷風とジフテリアとTBEとに関する防御免疫状態を維持するのに必要な注射の数が、顕著に減少し得るからである。さらに、この新規混合ワクチンは、TBEワクチンを季節性の予防接種のみであることから遠ざける取り組みを支援し、そしてこの新規混合ワクチンは、好ましくは、その後の夏の間にTBEから防御するために、春期に与えられる。
【0029】
Tdブースター予防接種が、最後のTd予防接種後の間隔が10年以上を超えることに起因して、秋に人々に与えられるべき場合、被験体は、しばしば、TBEブースター予防接種が必要とされる場合でさえ、同時での2つの針による注射の懸念に起因して、TBEについても同時に予防接種されることを控える。このような状況において、多くの者は、翌年の春期の間に予防接種されることを好むが、不運なことに、その後、これらの免疫化は、頻繁に忘れられ、そしてこれら者は、防御されないままである。ダニ媒介性脳炎ウイルスによる感染が年の早期に発生し得ることを、考慮すべきである。例えば、2001年にオーストリアにおいて第1に報告されたダニ媒介性脳炎ウイルスは、早くも2月であった(Waldnerら、Wien.Klin.Wochenschr.113、454−458(2001))。この例は、TBEブースター予防接種の遅延が感染をもたらし得、その感染が、早発の予防接種によって予防され得たこと、およびTd−TBE混合ワクチンが、TBEブースター予防接種の受け入れを増加させることを示す。
【0030】
Td予防接種が必要とされるときはいつでも、上記新規Td−TBEワクチンの使用は、TBE感染の危険性がある者に対して望ましく、TBEに対する最後の予防接種が少なくとも3年前であった場合に望ましい。
【0031】
上記新規Td−TBE混合ワクチンの価値は、TBEが風土的である地域に生きる者の、破傷風と、ジフテリアとTBEとに対する免疫化の数を顕著に減少させ得る。20歳の者は、80歳になるまでに、実際のドイツ予防接種勧告に従うと約7回のTdブースター予防接種を受け、そしてTBE予防接種について5年のブースター間隔を予測すると、13回のTBEブースター注射を受け、混合型Td−TBEブースター予防接種は、合計で7回の注射を、予防接種の数から減少させると、仮定される。このことは、注射の数が35%減少し得ることを意味する。特に、20歳の者は、20歳で、破傷風と、ジフテリアと、TBEとに対するブースターのために、Td−TBE混合ワクチンによって免疫化される。次のTBEブースターは、25歳のときに一価TBEワクチンによって与えられる。30歳になった者は、Td−TBEブースター注射を再び受容し、次いで、一価TBE予防接種を、30歳などのときに受ける。
【0032】
上記の場合において、TBEブースター予防接種についての推奨は、3年間から10年間までか、または5年間から10年間まで変化し、破傷風と、ジフテリアと、TBEとに対するブースター免疫の管理は、新規Td−TBE混合ワクチンによって、さらに容易になり、かつ実施可能であり、そしてその新規Td−TBE混合ワクチンによって、その注射が50%減少する。注射の数の減少は、予防接種の受け入れを増加させるだけでなく、副作用の数を減少させる。したがって、TBEブースター予防接種についての推奨は、さらなる医学上の進歩である。
【0033】
予防接種される者が、それまでにTBE予防接種を受けていない場合でさえ、Tdブースター免疫と、この新規Td−TBEワクチンを使用する一次TBE免疫の第1の用量とを組み合わせ得る。次いで、一次TBE予防接種を完全にするための次の第2のTBE免疫化は、一価TBEワクチン処方物によって与えられる。
【0034】
本発明に従うTd−TBE混合ワクチンは、TBE予防接種についての受け入れを支援するだけでなく、破傷風とジフテリアとから防御するための一般的なブースター予防接種の割合を上昇させる手段でもある。破傷風およびジフテリアに対する免疫化の大きな隔たりが、特に、成人および高齢者の者の群において存在し(Hammerら、InfFo 1/97、35−37)、この隔たりは、多くの者が、破傷風とジフテリアとに対する防御を有さないか、または破傷風とジフテリアとに対する限定的な防御のみを有するというようなことである。ほとんどの者は、一般的に、すすんで予防接種されるようになり、そして予防接種されることに興味をもつが、低い達成範囲の割合についての理由は、患者および医師の両方が、患者の来診の機会において、破傷風予防接種および/またはジフテリア予防接種についてほとんど考えないことであると理解され得る。患者が、TBEに対して免疫化されることについての具体的な望みを有する場合(例えば、患者が、TBEが風土的でない地域から、TBEが風土的である地域への旅行を望む場合)、これは、一価TBEワクチンのみを用いることに代えて、必要とされる場合、上記Td−TBE混合ワクチンを用いて予防接種するよい機会である。
【0035】
予防接種の間に最大限の間隔が存在しないことが、一般的に、賛同される。破傷風、ジフテリアおよび/またはTBEに対するブースター予防接種の推奨される間隔を超える場合、この新規Td−TBEワクチンを用いた1回の単一の注射は、これらの3種の感染に対する防御を確実にするのに十分である。
【0036】
本発明に従って、少なくとも3種の異なる感染症に対する防御を提供する抗原を含有する混合ワクチンが、提供される。具体的に、本発明は、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原とを含有する混合ワクチンに関する。本発明の好ましい実施形態に従って、Clostridium tetani由来の少なくとも1種の抗原と、Corynebacterium diphtheriae由来の少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎ウイルスに由来する少なくとも1種の抗原とを含有する混合ワクチンが、提供される。
【0037】
さらなる局面に従って、本発明は、破傷風とジフテリアとダニ媒介性脳炎との予防的処置のための混合ワクチンの調製のための、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原との使用に関する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、表現「Lf」は、いわゆる限界凝集量(Limes flocculationis)の略語である。1Lfは、1IUの抗毒素の存在下において凝集を生じる、毒素(またはトキソイド)の量として定義される。したがって、Lf単位は、サンプル中の特定のタンパク質の含量を示す。抗原の量(例えば、毒素(またはトキソイド)の量)は、通常、LfまたはLf/mlと表される。Lf値の決定は、毒素(またはトキソイド)および抗毒素が等量で混合される場合に、凝集が生じることに従う、Ramon(1922)の知見に基づく。これは、Lfが、規定された量の抗原の存在下において沈降する抗原の量をいうことを意味する。上記Lfは、ワクチン調製の分野において一般的な方法(例えば、Rocket電気泳動(Michael Schwanig、「Diphtherie und Tetanus:Wie haeufig braucht der Mensch Boosterdosen?」、Alte und neue Impfstoffe in Deutschland.Grundlagen fuer kuenftige Entscheidungen、27−33(2001) 、Infomed Medizinische Verlagsge−sellschaft mbH、Berlinを参照のこと))によって決定され得る。
【0039】
上に記載される通り、用語Lfは、物理化学的方法によって測定されるトキソイドの量を定義する。しかし、水酸化アルミニウムに吸着されていない抗原を含むワクチンを上回る非常に向上した有効性を有する、水酸化アルミニウムに吸着された抗原を含むワクチンの開発は、ワクチンに対する新規評価方法を提供する必要性をもたらした。なぜなら、凝集法によって決定される結合値は、免疫学的応答についての信頼にたる値を示さないからである。したがって、(トキソイド)ワクチンの効力の評価のために、上記力価は、所与のワクチン中のLfの量より、ずっと適切である(Michael Schwanig、「Diphtherie und Tetanus:Wie haeufig braucht der Mensch Boosterdosen?」、Alte und neue Impfstoffe in Deutschland.Grundlagen fuer kuenftige Entscheidungen、27−33(2001)、Infomed Medizinische Verlagsgesellschaft mbH、Berlinを参照のこと)。ワクチンの上記力価は、国際単位(通常は、1mlあたり(IU/ml)か、または1用量あたり(IU/用量))と称され、国際単位で表される。本明細書中で使用される場合、「ワクチンの力価」は、IUで検定された基準のワクチンに対する、所与の抗原の有効性または所与のワクチンの有効性として定義される。上記力価の決定は、例えば、動物モデルまたは細胞培養物において、周知の方法によって行なわれる。さらなる詳細は、European Pharmacopoeia、第5版5.0から推論され得る。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「混合ワクチン」とは、1種より多くの感染症に対する防御を提供するワクチンをいう。この用語は、例えば、病原性微生物によって1種より多くの疾患に対する防御を提供する抗原を含有するワクチンを包含する。したがって、上記混合ワクチンは、2種、3種、4種、5種または6種の、異なる疾患に対する防御を提供し得る。したがって、このようなワクチンは、それぞれ、二価、三価、四価、五価、および六価と称される。対照的に、ただ1つの特定の疾患に対する防御を提供するワクチンは、本明細書中で一価と称される。一様に、混合ワクチンは、異なる生物から生じる数種の抗原を含有する。
【0041】
本発明にしたがって、以下が提供される:投与の際に被験体(例えば、哺乳動物)において免疫学的応答を誘導するのに適している、少なくとも1種の抗原を含む混合ワクチン(この応答は、その被験体が破傷風に対して防御されるようなものである);同時投与の際にその被験体において免疫学的応答を誘導するのに適している、少なくとも1種のさらなる抗原を含む混合ワクチン(この応答は、その被験体がジフテリアに対して防御されるようなものである);および投与の際にその被験体において免疫学的応答を誘導するのに適している、少なくとも1種の抗原を含むワクチン(この応答は、その被験体がダニ媒介性脳炎に対して防御されるようなものである)。好ましくは、上記抗原は、これらの抗原に対して特異的な抗体を誘導すること(能動免疫)によって、免疫化された被験体において、その抗原の防御効果を達成する。
【0042】
本発明に従う混合ワクチンが、1種以上のさらなる抗原と組み合わされ得、かつ有効および安定なままであり得ることが、見出されている。本発明の文脈において使用される場合、用語「安定な(stable)」は、混合ワクチン処方物が、8日間、またはより好ましくは14日間、その異なる抗原化合物の免疫原性および安定性に関してあらゆる実質的な損失を伴わずに、室温にて保たれることを意味する。安定性を向上させるために、ショ糖などの安定化剤が、上記ワクチン組成物に添加され得る。ショ糖の代わりにか、またはショ糖に加えて、他の安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、マンノース、トレハロース、マンニット、またはポリゲリン(polygeline))がまた、安定化剤として添加され得る。本発明のワクチンは、好ましくは5.0〜8.0の間のpH値、より好ましくは6.0〜7.0の間のpH値を示し、6.8〜7.8のpH値が、最も好ましい。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「有効な(effective)」とは、被験体に対する単回投与または被験体(例えば、哺乳動物)に対する反復投与の際に、上記抗原が、特定の疾患に対する防御を提供するという事実をいう。本明細書中で使用される場合、用語「防御を提供する」は、投与の際に、上記抗原が、予防接種された被験体において免疫学的応答を誘導し、この応答が、その被験体をその後の感染から防御し得ることを、意味する。本明細書中で使用される場合「免疫学的応答」は、被験体と、病原性微生物、その生物の一部またはその生物の産物との接触の際に、その生物によって引き起こされる疾患に関連した症状が、減少するか、または完全に排除されるように、その被験体の免疫系が抗原に順応することを、意味する。好ましくは、予防接種された被験体において誘導される免疫学的応答は、病原性微生物、その病原性微生物の部分、またはその微生物によって産生される代謝産物(例えば、毒素)を、直接指向する特異的抗体の産生に基づく。好ましくは、上記破傷風抗原および/またはジフテリア抗原は、少なくとも0.01IU/ml〜2.0IU/mlの抗原、好ましくは0.1IU/ml以上の抗原、および最も好ましくは1.0IU/ml以上の抗原に関して、予防接種の後、14日間、幾何的な(geometric)抗体価まで上昇させる程度に、抗体の産生を誘導する。簡単にいうと、最小限の防御が、幾何的な抗体価が約0.01IU/mlである場合に達成される一方で、長期の防御は、上記力価が、約0.5IU/ml、好ましくは約1.0IU/mlである場合に達成される。予防接種された者の抗体価の決定は、一般的な方法の使用によって行われ得る。好ましくは、投与の際に達成される防御の程度は、一価ワクチン、二価ワクチンまたは三価ワクチン(例えば、DT混合、TBEワクチン、またはTd−TBE混合ワクチン)を投与することによって達成される防御と同程度に高い。
【0044】
本発明の文脈において、用語「抗原」とは、疾患を引き起こす微生物に由来する任意の物質であって、投与の際に、その特定の疾患に対する防御を提供するのに適した物質をいう。特に、この用語は、病原性微生物(好ましくは、細菌、原生動物、ウイルスまたは真菌)から生じる物質であって、(例えば、経皮注射もしくは筋肉内注射、または経口摂取による)投与の際に、被験体(例えば、哺乳動物)において、この微生物、この微生物の部分またはこの生物の代謝産物に対する抗体の形成を誘導し得る物質について言及する;この型の免疫性は、本明細書中で能動免疫と称される。
【0045】
上記抗原は、殺したウイルス、弱毒化ウイルスもしくは不活化ウイルス、または殺した細菌、弱毒化細菌もしくは不活化細菌、またはそれらのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、もしくはフラグメント、脂質、オリゴ糖、多糖、リポ多糖であり得る。
【0046】
本発明の免疫原性組成物に使用される抗原は、個別に分離したポリペプチドとして上記組成物中に存在し得る。一般に、本発明の組換えタンパク質は、GST融合タンパク質および/またはHisタグ化融合タンパク質として調製される。
【0047】
しかし、好ましくは、上記抗原の少なくとも2種(すなわち、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、16種、17種、18種、19種または20種)は、単一のポリペプチド鎖(「ハイブリッド」ポリペプチド)として発現される。パイブリッドポリペプチドは、2つの主要な利点を提供する:第1に、それ自体で、不安定であり得るか、または乏しく発現され得るポリペプチドが、それらの問題を克服する適切なハイブリッドパートナーを加えることによって補助される;第2に、商業的な製造が、2つのポリペプチドを産生するために利用される必要がある1つの発現および精製のみとして単純化され、この2つのポリペプチドは、両方とも抗原として有用である。
【0048】
異なるハイブリッドポリペプチドは、単一の処方物中に、一緒に混合され得る。このような組成物において、本発明の免疫原性組成物の抗原は、1つより多いハイブリッドポリペプチドで存在し得、そして/または非ハイブリッドポリペプチドとして存在し得る。しかし、抗原は、ハイブリッドまたは非ハイブリッドのいずれかとして存在するが、その両方として存在しないことが、好ましい。
【0049】
ハイブリッドポリペプチドは、式NH−A−{−X−L−}−B−COOHによって表され、Xは、本発明の抗原のアミノ酸配列またはそのフラグメントであり;Lは、必要に応じたリンカーアミノ酸配列であり;Aは、必要に応じたN末端アミノ酸配列であり;Bは、必要に応じたC末端アミノ酸配列であり;そしてnは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。
【0050】
−X−部分が、その野生型形態においてリーダーペプチド配列を有する場合、これは、上記ハイブリッド抗原中に含まれても、そのハイブリッド抗原から省かれてもよい。いくつかの実施形態において、上記リーダーペプチドは、ハイブリッドタンパク質のN末端に配置される−X−部分のリーダペプチドを除いて、削除される(すなわち、Xのリーダーペプチドは、保持されるが、X...Xのリーダーペプチドは、省かれる)。これは、全てのリーダーペプチドを削除すること、およびXのリーダーペプチドを部分−A−として使用することと等しい。
【0051】
各nに関して、(−X−L−)の場合、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在しても、存在していなくてもよい。例えば、n=2である場合、上記ハイブリッドは、NH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列−L−は、代表的に、短い(例えば、20アミノ酸、またはより少ないアミノ酸(すなわち、20アミノ酸、19アミノ酸、18アミノ酸、17アミノ酸、16アミノ酸、15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、1アミノ酸))。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(GIy、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である)、およびヒスチジンタグ(His、nは、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者にとって明らかである。有用なリンカーは、クローニングおよび操作を補助するBamRI制限酵素部位から形成されるGly−Serジペプチド、ならびに代表的なポリ−グリシンリンカーである(Gly)テトラペプチドを有する、GSGGGGである。
【0052】
−A−は、必要に応じたN末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40アミノ酸、またはより少ないアミノ酸(すなわち、40アミノ酸、39アミノ酸、38アミノ酸、37アミノ酸、36アミノ酸、35アミノ酸、34アミノ酸、33アミノ酸、32アミノ酸、31アミノ酸、30アミノ酸、29アミノ酸、28アミノ酸、27アミノ酸、26アミノ酸、25アミノ酸、24アミノ酸、23アミノ酸、22アミノ酸、21アミノ酸、20アミノ酸、19アミノ酸、18アミノ酸、17アミノ酸、16アミノ酸、15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、1アミノ酸))。例としては、タンパク質輸送(protein trafficking)を指揮するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ(His、nは、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である))が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者にとって明らかである。Xが、それ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は、好ましくは、(例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸または8アミノ酸を含む)オリゴペプチドであり、このオリゴペプチドは、N末端メチオニンを提供する。
【0053】
−B−は、必要に応じたC末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40アミノ酸、またはより少ないアミノ酸(すなわち、40アミノ酸、39アミノ酸、38アミノ酸、37アミノ酸、36アミノ酸、35アミノ酸、34アミノ酸、33アミノ酸、32アミノ酸、31アミノ酸、30アミノ酸、29アミノ酸、28アミノ酸、27アミノ酸、26アミノ酸、25アミノ酸、24アミノ酸、23アミノ酸、22アミノ酸、21アミノ酸、20アミノ酸、19アミノ酸、18アミノ酸、17アミノ酸、16アミノ酸、15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、1アミノ酸))。例としては、タンパク質輸送を指揮するリーダー配列、クローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、His、nは、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である)、またはタンパク質安定性を向上させる配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者にとって明らかである。
【0054】
上記ハイブリッド内の免疫原性組成物の個々の抗原(個々の−X−部分)は、1種以上の株に由来しても、1種以上のM型に由来してもよい。n=2である場合、例えば、Xは、Xと、同じ株または同じ型に由来しても、異なる株または異なる型に由来してもよい。n=3である場合、上記株は、以下:
【0055】
【化1】

であり得る。
【0056】
ハイブリッドポリペプチドが使用される場合、上記ハイブリッド内の個々の抗原(すなわち、個々の−X−部分)は、1種以上の株に由来し得る。n=2である場合、例えば、Xは、Xと、同じ株に由来しても、異なる株に由来してもよい。n=3である場合、上記株は、以下:
【0057】
【化2】

であり得る。例として、TBEウイルス抗原は、Eckerら、(1999)、J General Virology 80:179−185の表1に示される1種以上の疫学的に流行性の血清型から選択される。
【0058】
このような分子の、フラグメント、誘導体および他の改変形態もまた、抗原として使用され得ることが、理解される。
【0059】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、好ましくは、「高ストリンジェンシー」な条件下(例えば、0.1×SSC、0.5% SDS溶液で65℃)においてこの核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。
【0060】
本発明のポリペプチドは、種々の手段(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)によって、種々の形態(例えば、ネイティブ形態、融合体、非グリコシル化形態、脂質付加した形態など)にて調製され得る。それらのポリペプチドは、好ましくは、実質的に純粋な形態にて調製される(すなわち、他の宿主細胞タンパク質または他の非宿主細胞タンパク質を実質的に含まない)。
【0061】
本発明に従う核酸は、多くの方法(例えば、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーからの化学合成、生物自体からの化学合成など)によって調製され得、そしてその核酸は、種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)をとり得る。それらの核酸は、好ましくは、実質的に純粋な形態にて調製される(すなわち、他の宿主細胞核酸または他の非宿主細胞核酸を実質的に含まない)。
【0062】
用語「核酸」は、DNAおよびRNA、ならびにまた、DNAのアナログおよびRNAのアナログ(例えば、改変型骨格(例えば、ホスホロチオエートなど)を含むもの)、ならびにまた、ペプチド核酸(PNA)などを含む。本発明は、上に記載される核酸と相補的な配列を含む核酸を包含する(例えば、アンチセンス目的またはプロービング(probing)目的のため)。
【0063】
さらに、上記抗原は、核酸(例えば、デオキシ核酸またはリボ核酸)であり得る。DNAに基づくワクチンまたはRNAに基づくワクチンは、近年、非常に興味を集めている。このアプローチにおいて、上記ワクチンに含有される核酸は、投与後に被験体の身体内で、それぞれのタンパク質またはポリペプチドへと翻訳される。DNAワクチンまたはRNAワクチンの場合において、上記核酸の抗原性が単純な配列改変によって改変され得ることは、特に有益である。
【0064】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを産生するための方法を提供し、この方法は、本発明の核酸によって形質転換された宿主細胞を、ポリペプチド発現を誘導する条件下において培養する工程を包含する。例として、上記ダニ媒介性脳炎ウイルスの糖タンパク質Eは、組換え技術によって発現され得、そしてその糖タンパク質Eは、組換えサブユニットTBEワクチンを含有する免疫原性組成物を開発するために使用され得る。あるいは、ウイルスカプシドタンパク質遺伝子がまた、TBE混合ワクチンを目的として使用され得る。
【0065】
上記異種の宿主は、原核生物(例えば、細菌)であっても、真核生物であってもよい。その宿主は、好ましくは、E.coliであるが、他の適切な宿主としては、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、ミコバクテリア(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが挙げられる。
【0066】
本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、ネイティブ形態、融合体、グリコシル化形態、非グリコシル化形態など)にて調製され得る。
【0067】
本発明のポリペプチドは、固体支持体に結合され得る。
【0068】
本発明のポリペプチドは、検出可能な標識(例えば、放射性標識もしくは蛍光標識、またはビオチン標識)を含み得る。
【0069】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを産生するための方法を提供し、この方法は、このポリペプチドの少なくとも一部を、化学的手段によって合成する工程を包含する。
【0070】
さらに、本発明は、本発明の核酸を産生するための方法を提供し、この核酸は、(少なくとも部分的に)化学合成によって調製される。
【0071】
本発明はまた、本発明の核酸を産生するための方法を提供し、この方法は、プライマーベースの増幅方法(例えば、PCR)を使用して核酸を増幅する工程を包含する。
【0072】
本発明はさらに、本発明のタンパク質複合体を産生するための方法を提供し、この方法は、クラスI MHCタンパク質と、本発明のポリペプチド、またはそのフラグメントとを接触させる工程を包含する。
【0073】
本発明は、本発明のタンパク質複合体を産生するための方法を提供し、この方法は、本発明のポリペプチド、またはそのフラグメントを、被験体に投与する工程を包含する。この方法は、上記複合体を、上記被験体から精製する工程をさらに包含する。
【0074】
本発明はまた、組成物を産生するための方法を提供し、この方法は、本発明のポリペプチドおよび/もしくは本発明の核酸を、薬学的に受容可能なキャリアまたは薬学的に受容可能な希釈剤と一緒に投与する工程を、包含する。
【0075】
上記抗原は、異なる製造業者から純粋な形態で入手されても、適切な供給源から、それぞれの抗原性分子を精製することによって調製されてもよい。上記抗原が、例えば、産生する生物によって分泌される細菌のエキソポリペプチド(exopolypeptide)である場合、そのエキソポリペプチドは、一般的なクロマトグラフィー法によって、培養上清から容易に精製され得る(例えば、上記ジフテリア毒素)。あるいは、上記抗原が、核酸である場合、その核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応などを包含する方法によって得られ得る。上記抗原が、全ウイルスである場合、その全ウイルスは、例えば、感染後の細胞培養上清、およびその細胞の溶解物から、分離器および濾過器の使用によって精製され得る。抗原のさらなる例、ならびにそれらの単離方法および精製方法のための手段のさらなる例は、von Behringら、Sera und Impfstoffe.、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie.Band 21、273−310(1982)、Verlag Chemie GmbH、Weinheimによって記載されている。あるいは、ペプチド抗原、ポリペプチド抗原またはタンパク質抗原もまた、組換えDNA技術(例えば、異種発現)によって産生され得る。このような産生工程に適した方法は、当該分野において公知である。
【0076】
抗原性分子(例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質)もまた、組換えDNA技術(例えば、異種発現)によって産生され得ることが、当業者によって理解される。このような産生工程に適した方法は、当該分野において公知であり、そしてこれらの方法は、例えば、バキュロウイルス発現システム、酵母ツーハイブリッドシステム、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)システムおよび多くの他のシステムを包含する。
【0077】
用語「抗原」は、特に、微生物(細菌)によって分泌される、エキソタンパク質(exoprotein)またはエキソポリペプチドを包含する。溶解の際に上記産生する細胞から放出される、エンドタンパク質(endoprotein)またはエンドポリペプチド(endopolypeptide)もまた、包含される。このようなエキソタンパク質/エキソポリペプチドまたはエンドタンパク質/エンドポリペプチドは、例えば、タンパク質毒素またはペプチド毒素であり得る。ワクチンにおいて、これらの毒素は、好ましくは、改変形態で使用される。なぜなら、多くの場合において、純粋な毒素は、直接注射に適さないからである。ここで、上記毒素は、通常、それらの毒素がその抗原性を保持するが、その毒性(一部)を失うように、化学的に改変される。このような改変型毒素は、通常、トキソイドと称される。トキソイドの形成は、例えば、その分子中の自由なアミノ基のいくつかをブロックするホルムアルデヒド用いて毒素を処理し、それによって、上記毒素からトキソイドへと変換することによって達成され得る。好ましくは、上記トキソイドは、対応する毒素と比較して、ずっと少ない効果を有し、したがってそのトキソイドは、安全であり、かつ高用量にて与えられ得る。トキソイド抗原の例は、上記ジフテリアトキソイドおよび上記破傷風トキソイドである。トキソイドを産生する方法は、当該分野において周知であり、そして、例えば、von Behringら(上記を参照のこと)による記載において要約される。未改変形態もしくは改変形態の、ポリペプチド毒素のフラグメントまたはトキソイドのフラグメントもまた、本発明の実施において使用され得ることが、理解される。
【0078】
そのままの微生物に対する免疫化が目的とされる場合、本発明に従う抗原は、グラム陰性菌の外膜の特定のタンパク質などのその微生物の一部、またはその微生物自体であり得る。後者の場合において、上記微生物は、ホルムアルデヒド、フェノールまたは熱などの因子によって殺され得、次いで、その死んだ細胞は、ワクチン中に抗原として組み込まれ得、そして注射され得る。これらの場合において、上記抗原は、細胞全体/全ウイルス、またはこのような分画の抽出物からなる。この様式の予防接種は、例えば、一様に、病原性生物(例えば、Vibrio cholerae、Bordetella pertussisおよびYersinia pestis)に関して適用される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態に従って、上記混合ワクチン中の破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、破傷風トキソイドを含む。本発明のさらに好ましい実施形態に従って、上記混合ワクチン中のジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ジフテリアトキソイドを含む。このことは、本発明に従う混合ワクチンが、他の抗原性物質とほぼ同じく、Clostridium tetaniおよびCorynebacterium diphtheriaeの毒素産生株から得られ得るトキソイドを含むことを意味する。
【0080】
一般的に、トキソイドは、Clostridium tetaniの培養物およびCorynebacterium diphtheriaeの培養物において、毒素から調製され得る。これらの生物によって産生される毒素は、それらの一次構造に関して記載されている;例えば、Eisel,Uら、EMBO J.、1986年10月;5(10):2495−502。
【0081】
Corynebacterium diphtheriaeのトキソイドおよびClostridium tetaniのトキソイドはまた、DT混合ワクチン(DT−Impfstoff Behring fuer Kinder;Diphtherie−Tetanus−Adsorbat−Impfstoff fuer Kinder(Chiron Behring GmbH & Co KG))の形態で購入され得、この形態は、1用量あたり少なくとも40IUの力価を有する20Lfの破傷風トキソイド、および1用量あたり少なくとも30IUの力価を有する20Lfのジフテリアトキソイドを含む。さらに、混合ワクチンTd−pur(登録商標)(Chiron Behring GmbH & Co KG)は、1用量あたり少なくとも20IUの力価を有する20Lfの破傷風トキソイド、および1用量あたり少なくとも2IUの力価を有する1.5Lfだけのジフテリアトキソイドを含む。本発明に従って、これらのワクチン、またはこれらのワクチンの成分である上記抗原は、本発明の混合ワクチンを調製するための出発材料として、直接使用され得る。あるいは、上述の通り、上記トキソイドはまた、それぞれの生物の培養物の上清から上記毒素を精製することによって調製され得る。次いで、上記精製された毒素は、トキソイドを産生するために、当該分野において周知である方法によって改変され得る。
【0082】
本発明に従って、上記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原(例えば、上記破傷風トキソイド)は、1用量あたり約1IU〜約70IUの力価に対応する量で存在し得る。12歳未満の小児用の混合ワクチンにおいて使用される場合、その抗原は、1用量あたり約20IU〜約60IUの力価に対応する量で存在し得るが、1用量あたり約30IU〜約50IUの力価が、好ましく、そして1用量あたり少なくとも40IUの力価が、最も好ましい。少なくとも12歳の小児用の混合ワクチンおよび成人用の混合ワクチンにおいて使用される場合、その抗原は、1用量あたり約5IU〜約40IUの力価に対応する量で存在し得るが、1用量あたり約10IU〜約30IUの力価が好ましく、そして1用量あたり少なくとも20IUの力価が、最も好ましい。
【0083】
同様に、上記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原(例えば、上記ジフテリアトキソイド)は、1用量あたり0.1IU〜70IUの力価に対応する量で存在し得る。12歳未満の小児用の混合ワクチンにおいて使用される場合、その抗原は、1用量あたり約10IU〜約50IUの力価に対応する量で存在し得るが、1用量あたり約20IU〜約40IUの力価が、好ましく、そして1用量あたり少なくとも30IUの力価が、最も好ましい。少なくとも12歳の小児用の混合ワクチンおよび成人用の混合ワクチンにおいて使用される場合、その抗原は、1用量あたり約0.5IU〜約10IUの力価に対応する量で存在し得るが、1用量あたり約0.75IU〜約5IUの力価が好ましく、そして1用量あたり少なくとも2IUの力価が、最も好ましい。
【0084】
本発明の好ましい実施形態に従って、上記破傷風に対する防御を提供する混合ワクチン中の少なくとも1種の抗原は、Clostridium tetani Massachusetts F1株に由来する。その株は、Commonwealth of Massachusetts、Departure of Publich Health、Division Biologic Laboratories、Bostonから入手され得る。さらに、上記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、好ましくは、Corynebacterium diphtheriae Massachusetts 8 Park Williams株(J.H.Mueller、1939、J.Immunol.37、103−111;Russell,L.およびR.Holmes、1985、Infect.Immun.47:575−578を参照のこと)に由来する。この株は、Massachusetts Antitoxin and Vaccine Laboratory、Forest Hills、Bostonから入手され得る。
【0085】
ウイルスワクチンの場合において、上記ワクチンの抗原は、全ウイルスまたは全ウイルスの抽出物、およびそのウイルスに由来する異なる純粋な分子(例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質のフラグメントおよびペプチドのフラグメン)からなり得る。本明細書中で使用される場合、表現「全ウイルス」は、上記ワクチン処方物のために単離されるウイルスは、サブユニット抗原分画が調製されるように処理されないことを、意味する。対照的に、完全な分画は、培地成分から分離した後に培養物から得られるウイルスを含む。上記完全な分画もまた、抗原として使用され得る。特定の抗原について濃縮される分画もまた、この用語によって包含される。例えば、上記ダニ媒介性脳炎ウイルスの場合において、糖タンパク質Eについて濃縮される分画が、使用される;しかし、その分画はまた、他のウイルス成分を含む(すなわち、その分画は、精製されたウイルスを含有する分画ではない)。「全ウイルス」を得るための方法および手段は、例えば、「Vaccines」、PlotkinおよびOrenstein(編)、2004に記載される。
【0086】
本発明の好ましい実施形態に従って、上記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、その抗原がTBE−フラビウイルスNeudoerfl株またはTBE−フラビウイルスK23株から生じることによって特徴付けられ、その抗原の両方は、先行技術において、その配列に関して公知である(Heinzら、J.Med.Virol.1980;6:213−221;Klockmannら、J.Biol.Standard.1989;17:331−342)。しかし、上記ダニ媒介性脳炎ウイルスの他の株(例えば、Louping Ill株、Petracova株、Sofyn株)もまた、TBEに対する抗原を得るために使用され得る。
【0087】
本発明の好ましい実施形態に従って、上記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、TBE−フラビウイルスに由来する(すなわち、その抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルスの抗原である)。本発明の特に好ましい実施形態に従って、TBE−フラビウイルス由来の抗原は、エンベロープ糖タンパク質Eまたはそのフラグメントである。この糖タンパク質の一次構造は、先行技術において公知であり、そしてそれは、例えば、Eckerら、J.Gen.Virol.80、179−185(1999)の刊行物において記載される。本発明の代替的な実施形態に従って、上記TBE−ウイルスの抗原は、全ウイルスである。
【0088】
本発明に従って、上記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原(例えば、ダニ媒介性脳炎ウイルスに由来する抗原)の量は、全ウイルスワクチン(例えば、Encepur(登録商標))が使用される場合、上記混合ワクチンにおいて、1用量あたり約0.01μg〜1用量あたり約10μgの範囲であり得る。あるいは、上記ウイルスの純粋な成分が使用される場合において、その量は、その抗原分子の性質に依存する。例えば、精製された糖タンパク質Eが上記混合ワクチンに組み込まれるべき場合、1用量あたり約0.1μg〜約5μgの量、好ましくは1用量あたり0.5μg〜2.5μgの量が、使用され得る。好ましくは、上記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する抗原は、1用量あたり1.5μgの量で存在する。
【0089】
このましい局面に従って、本発明は、混合ワクチンを提供し、上記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり少なくとも20IUの力価に対応する量で存在し、上記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり少なくとも2IUの力価に対応する量で存在し、そして上記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり少なくとも0.75μgの量で存在する。
【0090】
本明細書中で使用される場合、用語「用量」とは、投与されるべき医薬の量または投与されるべきワクチンの量をいう。具体的に、この用語は、医薬またはワクチンの、投薬単位形態に言及する。例えば、問題となる医薬が液体である場合、上記用量は、その容量に関して言及される。本発明の文脈における適切な用量は、0.1ml〜2.0mlの容量を有し、好ましくは0.5ml〜1.0mlの容量を有する。問題となる医薬が丸剤として存在する場合、上記用量は、投与されるべき丸剤の数に関して言及される。本発明の文脈において、用語「用量」は、好ましくは、投与されるべき容量を扱うために使用される。本明細書中で使用される場合、本発明に従う混合ワクチンの力価は、1用量あたりのIUと称される。このことは、上記用量が投与される場合に、特定のIU値によって表されるような力価が適用されることを、意味する。例えば、ワクチンが1用量あたり20IUの力価を示し、かつ上記用量が1mlの用量で存在する場合、20IU(それぞれの検定ワクチンに対して)に対応する防御の効果が、完全に1mlが投与されるときに、達成される。
【0091】
本発明に従う混合ワクチンは、さらなる疾患に対する防御を提供する少なくとも1種のさらなる抗原(例えば、別の病原性微生物(例えば、ウイルスおよび/または細菌病原体)由来の抗原)を、さらに含有し、その結果、四価ワクチン、五価ワクチンまたは六価ワクチンが、生産され得る。好ましくは、上記1種以上のさらなる抗原は、百日咳、ポリオ、A型肝炎、髄膜炎菌性疾患、ライム病からなる群より選択される疾患または医学的状態に対する防御を提供し得る。本発明に従って調製され得るこのような多価ワクチンの例としては、Td−aP−TBEワクチン、Td−IPV−TBEワクチン、およびTd−aP−IPV−TBEワクチンが挙げられる(しかし、これらに限定されない)。
【0092】
一般的に、特異的抗原の至適量は、その抗体価を測定することを包含する標準的な方法、および予防接種された被験体の他の応答を用いて、評価され得る。予防接種の過程は、国内機関または国際機関の提議に採用され得る。本発明に従う混合ワクチンの抗原は、防御を提供する免疫学的応答をもたらす量で使用されることが、予想される。具体的に、これらの量は、特異的抗原(破傷風またはジフテリア)に対する抗体の、少なくとも約0.01IU/mlの幾何平均の力価、好ましくは少なくとも0.1IU/mlの幾何平均の力価、および最も好ましくは少なくとも1.0IU/mlの幾何平均の力価を、予防接種後に少なくとも14日間もたらす。
【0093】
本発明の好ましい実施形態に従って、Clostridium tetaniの抗原、Corynebacterium diphtheriaeの抗原、および上記ダニ媒介性脳炎ウイルスの抗原は、アジュバントに吸着されたワクチン中に存在する。アジュバントは、頻繁に、ワクチン組成物の処方において使用される。本発明の文脈において、用語「アジュバント」とは、アジュバントを伴わずにワクチンを投与することと比較して、免疫化を受容する被験体の、上昇した免疫学的反応または上昇した免疫学的応答を引き出すあらゆる物質をいう。このような増強した応答は、例えば、それぞれの抗原に対する上昇した抗体価として観察され得る。
【0094】
本発明と使用するためのアジュバントとしては、以下の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない:組成を有する無機質(例えば、アルミニウム塩および/またはカルシウム塩);スクアレン−水エマルションなどの油エマルション(例えば、MF59(5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85);QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられるサポニン処方物;免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含む配列);生体接着因子(bioadhesives)および粘膜接着因子(mucoadhesives)(例えば、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(Singhら、(2001)、J.Cont.ReIe.70:267−276))、またはポリ(アクリル酸)の架橋型誘導体、ポリビニルアルコールの架橋型誘導体、ポリビニルピロリドンの架橋型誘導体、多糖の架橋型誘導体およびカルボキシメチルセルロースの架橋型誘導体などの粘膜接着因子;生分解性微粒子(例えば、ポリ−α−ヒドロキシ酸の粒子、ポリヒドロキシ酪酸の粒子、ポリオルトエステルの粒子、ポリ無水物の粒子、ポリカプロラクトンの粒子など);リポソーム;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル(例えば、WO99/52549を参照のこと)、ポリホスファゼン(PCPP)処方物;ムラミルペプチド;イミダゾキノロン化合物;インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子などのヒト免疫調節因子;など。
【0095】
無機塩類(例えば、アルミニウム塩および/またはカルシウム塩)を含有する無機質含有組成物は、アジュバントとして、本発明において特に好ましい。本発明は、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物(oxyhydroxide))、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩(hydroxyphosphate)、オルトリン酸塩)、硫酸塩など(例えば、Vaccine Design(1995)、PowellおよびNewman編、ISBN:030644867X.Plenum.の第8章および第9章)などの無機塩類、または異なる無機化合物の混合物(例えば、必要に応じて過剰なリン酸塩を含む、リン酸塩と水酸化物アジュバントとの混合物)を包含し、その混合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル形態、結晶形態、非晶質形態など)をとる化合物を含み、そして好ましい塩に対する吸着を伴う。上記無機質含有化合物はまた、金属塩の粒子として処方され得る(例えば、WO 00/23105を参照のこと)。本発明の好ましい実施形態に従って、使用されるアジュバントは、アルミニウム塩である。本発明の特に好ましい実施形態に従って、使用されるアルミニウム塩は、水酸化アルミニウムである。使用されるべきアジュバントの正確な量は、そのアジュバントの性質に依存する。例えば、水酸化アルミニウムが上記アジュバントである場合、水酸化アルミニウムは、1リットルの抗原懸濁液あたり2g〜20gの量で使用され得る。
【0096】
本明細書中で使用される場合、用語「混合ワクチン」とは、例えば、ポリペプチド抗原または核酸分子を含有する免疫原性組成物をいう。
【0097】
このような組成物のpHは、好ましくは、6と8との間であり、好ましくは約7である。上記pHは、緩衝液の使用によって維持され得る。上記組成物は、無菌であり得、かつ/または発熱物質を含まない可能性がある。上記組成物は、ヒトに対して等張であり得る。本発明に従うワクチンは、予防的か、または治療的のいずれかで使用され得るが、そのワクチンは、代表的に、予防的であり、そして(コンパニオン哺乳動物(companion mammal)および実験用哺乳動物を含む)動物(特に、ヒト)を処置するために使用され得る。
【0098】
本発明の組成物は、本発明の治療方法、予防方法、または診断方法に使用するための1種以上の抗原と組み合わせて投与され得る。好ましい抗原としては、下に列挙されるものが挙げられる。さらに、本発明の組成物は、下に列挙される病原体のいずれかによって引き起こされる感染を、処置または予防するために使用され得る。下に記載される抗原との組み合わせに加えて、本発明の組成物はまた、本明細書中に記載されるようなアジュバントと組み合わされ得る。
【0099】
本発明で使用するための抗原としては、下に示される以下の抗原の1種以上、または下に示される病原体の1種以上に由来する抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
(A.細菌抗原)
本発明における使用に適した細菌抗原としては、細菌から単離され得るか、細菌から精製され得るか、または細菌に由来し得る、タンパク質、多糖、リポ多糖、および外膜小胞が挙げられる。さらに、細菌抗原としては、細菌溶解物および不活化細菌の処方物が挙げられ得る。細菌抗原は、組換え発現によって産生され得る。細菌抗原は、好ましくは、その生活環の少なくとも1つの段階の間にその細菌の表面に露出されるエピトープを含む。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型にわたって保存される。細菌抗原としては、下に示される細菌の1種以上に由来する抗原、および以下に同定される特定の抗原の例が挙げられる。
【0101】
Neisseria meningitides:髄膜炎抗原は、A、C、W135、Y、および/もしくはBなどの血清群のN.meningitidesから精製されるか、またはそのような血清群のN.meningitidesに由来する、タンパク質(例えば、参考文献1〜7において同定されるタンパク質)、糖類(多糖、オリゴ糖またはリポ多糖が挙げられる)、あるいは外膜小胞(参考文献8、9、10、11)を含み得る。髄膜炎タンパク質抗原は、接着因子(adhesions)、自己輸送体(autotransporter)、毒素、Fe捕捉タンパク質、および膜関連タンパク質(好ましくは、完全な外膜タンパク質)から選択され得る。
【0102】
Streptococcus pneumoniae:Streptococcus pneumoniae抗原は、Streptoeoccus pneumoniae由来の、糖類(多糖またはオリゴ糖が挙げられる)および/またはタンパク質を含み得る。糖抗原は、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33Fから選択され得る。タンパク質抗原は、WO 98/18931、WO 98/18930、米国特許第6,699,703号、同第6,800,744号、WO 97/43303、およびWO 97/37026において同定されたタンパク質から選択され得る。Streptococcus pneumoniaeタンパク質は、ポリヒスチジン三連構造(Poly Histidine Triad)ファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpX短縮物(truncate)、LytXファミリー、LytX短縮物、CbpX短縮物−LytX短縮物キメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125またはSp133から選択され得る。
【0103】
Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原としては、WO 02/34771またはWO 2005/032582において同定されたタンパク質(GAS 40が挙げられる)、GAS Mタンパク質のフラグメントの融合体(WO 02/094851、およびDale、Vaccine、(1999)、17:193−200、およびDale、Vaccine、14(10):994−948に記載されるものが挙げられる)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfb1)、連鎖球菌性ヘム関連タンパク質(Shp)、およびストレプトリシンS(SagA)が挙げられ得る。
【0104】
Moraxella catarrhalis:モラクセラ属抗原としては、WO 02/18595およびWO 99/58562において同定された抗原、外膜タンパク質抗原(HMW−OMP)、C−抗原、ならびに/またはLPSが挙げられる。
【0105】
Bordetella pertussis:百日咳抗原としては、必要に応じてペルタクチンならびに/または凝集原2抗原および凝集原3抗原とも組み合わされる、B.pertussis由来の百日咳(petussis)ホロ毒素(PT)および繊維状赤血球凝集素(FHA)が挙げられる。
【0106】
百日咳抗原(「P」)は、全菌体性(「wP」)または無菌体性(「aP」)のいずれかであり得る。全菌体百日咳抗原は、代表的に、不活化したB.pertussis細胞の形態をとる。全菌体百日咳抗原の調製は、十分に記録されており[例えば、Vaccinesの第21章、PlotkinおよびOrenstein編、第4版、2004]、例えば、全菌体百日咳抗原は、B.pertussisの第一相培養物(phase I culture)の熱失活によって得られ得る。wP抗原の量は、国際単位(IU)で表され得る。例えば、NIBSCは、「Third International Standard For Pertussis Vaccine」[NIBSCコード:66/303]を提供し、これは、1アンプルあたり46IUを有する。各アンプルは、水溶液の2.0mlアリコートの凍結乾燥残留物を含み、これは、8リットルのM/15 Sorensen緩衝液(pH7.0)によって希釈された10リットルの細菌懸濁液(U.S.Opacity StandardについてのISO混濁単位(opacity unit)に相当する)を含んだ。IU系に代わるものとして、「OU」単位(「混濁単位」)もまた、使用される(例えば、40Uは、約1IUであり得る)。全菌体百日咳抗原は、現在、百日咳トキソイド(PT)、繊維状赤血球凝集素(FHA)、ペルタクチン(「69キロダルトンの外膜タンパク質」としても公知である)、および線毛(例えば、凝集原2および凝集原3)を含むワクチンにおいて使用される。本発明は、好ましくは、PT、FHAおよびペルタクチンのうちの、少なくとも2つを使用し、そして好ましくは、それらの3つ全てを使用する(すなわち、凝集原の使用を伴わない)。これらの3つの抗原は、好ましくは、Slainer−Scholte改変液体培地中で増殖させたft.pertussis培養物からの単離によって調製される。PTおよびFHAが、(例えば、ヒドロキシアパタイトゲル上の吸着によって)発酵ブロスから単離され得るのに対して、ペルタクチンは、熱処理および(例えば、塩化バリウムを使用した)凝集によって細胞から抽出され得る。上記抗原は、連続的なクロマトグラフィー工程および/または沈降工程において精製され得る。PTおよびFHAは、疎水性クロマトグラフィー(hydrophobia chromatography)、アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製され得る。ペルタクチンは、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製され得る。FI−IAおよびペルタクチンは、本発明に従って使用する前に、ホルムアルデヒドによって処理され得る。FPは、好ましくは、ホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドを用いた処理によって無毒化される。この化学的な無毒化手順に代わるものとして、上記PTは、酵素活性が突然変異誘発によって減少した変異体PT[Roppuoliら、1991、TIBTECH 9:232−238]であり得るが、化学的処理による無毒化が、好ましい。無菌体百日咳抗原の量は、代表的に、マイクログラムで表される。
【0107】
Staphylococcus aureus:Staph aureus抗原としては、必要に応じて非毒性の組換Pseudomonas aeruginosa体外毒素Aと結合体化されるS.aureus5型およびS.aureus8型の莢膜多糖類(例えば、StaphVAXTM)、もしくは表面タンパク質に由来する抗原、インベーシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食作用の飲み込みを阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロテノイド、カタラーゼ産生、プロテインA、凝固酵素、凝固因子、ならびに/または真核生物の細胞膜を溶解する膜障害性毒素(必要に応じて無毒化される)(ヘモリシン、ロイコトキシン、ロイコシジン)が挙げられる。
【0108】
Staphylococcus epidermis:S.epidermidis抗原としては、粘液関連抗原(SAA)を含む。
【0109】
Clostridium tetani(破傷風):破傷風抗原としては、破傷風トキソイド(TT)(好ましくは、本発明の組成物との組み合わせ/結合体化においてキャリアタンパク質として使用される)が挙げられる。
【0110】
Crnynebacterium diphtheriae(ジフテリア):ジフテリア抗原は、ジフテリア毒素(好ましくは、無毒化される)(例えば、CRM197)を含み、さらに、ADPリボシル化を調節し得るか、ADPリボシル化を阻害し得るか、またはADPリボシル化に関連し得る抗原が、本発明の組成物との組み合わせ/同時投与/結合体化に関して企図され、ジフテリアトキソイドは、キャリアタンパク質として使用される。
【0111】
Haemophilus influenzae B(Hib):Hib抗原としては、Hibが挙げられる。
【0112】
Pseudomonas aeruginosa:シュードモナス属抗原としては、内毒素A、Wzzタンパク質、P.aeruginosa LPS(より具体的には、PAO1(O5血清型)から単離されたLPS)、および/または外膜タンパク質F(OprF)(Infect Immun.、2001年5月;69(5):3510−3515)が挙げられる外膜タンパク質が挙げられる。
【0113】
Legionella pneumophila:細菌抗原は、Legionella pneumophilaに由来し得る。
【0114】
Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原としては、WO 02/34771、WO 03/093306、WO 04/041157、またはWO 2005/002619において同定されたタンパク質または糖抗原(タンパク質GBS 80、GBS 104、GBS 276およびGBS 322、ならびに血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIに由来する糖抗原が挙げられる)が挙げられる。
【0115】
Neiserria gonorrhoeae:gonorrhoeae抗原としては、Por(すなわち、ポーリン)タンパク質(例えば、PorB(Zhuら、Vaccine(2004)、22:660−669を参照のこと)、輸送する結合タンパク質(例えば、TbpAおよびTbpB(Priceら、Infection and Immunity(2004)、71(1):277−283を参照のこと)、混濁タンパク質(例えば、Opa)、還元−改変可能タンパク質(Rmp)、および外膜小胞(OMV)調製物(Planteら、J.Infectious Disease(2000)、182:848−855を参照のこと)(例えば、WO99/24578、WO99/36544、WO99/57280、WO02/079243も参照のこと)が挙げられる。
【0116】
Chlamydia trachomatis:Chlamydia trachomatis抗原としては、血清型A、B、BaおよびC(トラコーマ(失明の原因)の因子である)に由来する抗原、血清型L、LおよびL(性病性リンパ肉芽腫に関連する)に由来する抗原、ならびに血清型D〜Kに由来する抗原が挙げられる。Chlamydia trachomas抗原としてはまた、WO 00/37494、WO 03/049762、WO 03/068811、またはWO 05/002619において同定された抗原(PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH様(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、and MurG(CT761)が挙げられる)が挙げられ得る。
【0117】
Treponema pallidum(梅毒):梅毒抗原としては、TmpA抗原が挙げられる。
【0118】
Haemophilus ducreyi(軟性下疳を引き起こす):ducreyi抗原としては、外膜タンパク質(DsrA)が挙げられる。
【0119】
Enterococcus faecalisまたはEnterococcus faecium:抗原としては、三糖の繰り返しの抗原、または米国特許第6,756,361号に提供される他のエンテロコッカス属由来の抗原が挙げられる。
【0120】
Helicobacter pylori:H pylori抗原としては、Cag、Vac、Nap、HopX、HopYおよび/またはウレアーゼ抗原が挙げられる。
【0121】
Staphylococcus saprophyticus:抗原としては、S.saprophyticus抗原の160kDaのヘマグルチニンが挙げられる。。
【0122】
Yersinia enterocolitica:抗原としては、LPS(Infect Immun.、2002年8月;70(8):4414)が挙げられる。
【0123】
E.coli:E.coli抗原は、腸毒性E.coli(ETEC)、凝集型付着性E.coli(EAggEC)、分散型付着性E.coli(DAEC)、腸病原性E.coli(EPEC)、および/または腸出血性E.coli(EHEC)に由来し得る。
【0124】
Bacillus anthracis(炭疽):B.anthracis抗原は、必要に応じて無毒化され、そしてA成分(致死因子(LF)および浮腫因子(EF)(これらの両方は、保護抗原(PA)として公知である共通のB成分を共有し得る))から選択され得る。
【0125】
Yersinia pestis(ペスト):ペスト抗原としては、F1莢膜抗原(Infect Immun.、2003年6月;71(1):374−383)、LPS(Infect Immun.、1999年10月;67(10):5395)、Yersinia pestis V抗原(Infect Immun、1997年11月;65(11):4476−4482)が挙げられる。
【0126】
Mycobacterium tuberculosis:結核抗原としては、リポタンパク質抗原、LPS抗原、BCG抗原、必要に応じてカチオン性脂質小胞中に処方される、抗原85B(Ag85B)および/もしくはESAT−6の融合タンパク質(Infect Immun.、2004年10月;72(10):6148)、Mycobacterium tuberculosis(Mtb)のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原(Proc Natl Aead Sci USA.、2004年8月24日;101(34):12652)、ならびに/またはMPT51抗原(Infect Immun.、2004年7月;72(7):3829)が挙げられる。
【0127】
Rickettsia:抗原は、外膜タンパク質Aおよび/または外膜タンパク質B(OmpB)が挙げられる外膜タンパク質(BiochimBiophys Acta.、2004年11月1日;1702(2):145)、LPS、および表面タンパク質抗原(SPA)(J Autoimmun.、1989年6月;第2補遺:81)が挙げられる。
【0128】
Listeria monocytogenes:細菌抗原は、Listeria monocytogenesに由来し得る。
【0129】
Chlamydia pneumoniae:抗原としては、WO 02/02606において同定された抗原が挙げられる。
【0130】
Vibrio cholerae:抗原としては、プロテイナーゼ抗原、LPS(特に、Vibrio cholerae IIのリポ多糖)、O1 Inaba O特異的多糖、V.cholera 0139、IEM108ワクチンの抗原(Infect Immun.、2003年10月;71(10):5498−504)、および/または閉鎖帯毒素(Zot)が挙げられる。
【0131】
Salmonellatyphi(腸チフス):抗原としては、莢膜多糖類(好ましくは、結合体(Vi、すなわち、vax−TyVi)が挙げられる。
【0132】
Borrelia burgdorferi(ライム病):抗原としては、リポタンパク質(例えば、OspA、OspB、OspCおよびOspD)、他の表面タンパク質(例えば、OspE関連タンパク質(Erps))、デコリン結合タンパク質(例えば、DbpA)、および抗原性可変VIタンパク質(例えば、P39およびP13(内在性膜タンパク質、Infect Immun.、2001年5月;69(5):3323−3334)に関連した抗原)、VIsE抗原変異タンパク質(J Clin Microbiol.、1999年12月;37(12):3997))が挙げられる。
【0133】
Porphyromonas gingivalis:抗原としては、P.gingivalis外膜タンパク質(OMP)が挙げられる。
【0134】
クレブシエラ属:抗原としては、OMP Aが挙げられるOMP、または必要に応じて破傷風トキソイドと結合体化した多糖が挙げられる。
【0135】
本発明のさらなる細菌抗原は、上記のあらゆるの莢膜抗原、多糖抗原またはタンパク質抗原であり得る。さらなる細菌抗原としてはまた、外膜小胞(OMV)調製物が挙げられ得る。さらに、抗原としては、上述の細菌のいずれかの生きたバリエーション、弱毒化したバリエーション、および/または精製したバリエーションが挙げられる。本発明の細菌由来の抗原は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌に由来し得る。本発明の抗原は、および好気性菌または嫌気性菌に由来し得る。
【0136】
さらに、あらゆる上記の細菌由来の糖類(多糖、LPS、LOSまたはオリゴ糖)は、別の因子または別の抗原(例えば、キャリアタンパク質(例えば、CRM197))に結合体化され得る。このような結合体化は、米国特許第5,360,897号およびCan J Biochem Cell Biol.、1984年5月;62(5):270−5に提供されるような、タンパク質上のアミノ基への糖類上のカルボニル部分の還元的アミノ化によって達成される、直接的な結合体化であり得る。あるいは、これらの糖類は、例えば、スクシンイミド連結、またはBiocoiijugate Techniques、1996およびCRC、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking、1993に提供される他の連結を用いたリンカーによって結合体化され得る。
【0137】
(B.ウイルス抗原)
本発明に使用するのに適したウイルス抗原としては、不活化(または殺した)ウイルス処方物、弱毒化ウイルス処方物、分解したウイルス処方物、精製したサブユニット処方物、ウイルスから単離され得るウイルスタンパク質か、ウイルスから精製され得るウイルスタンパク質、またはウイルスからに由来し得るウイルスタンパク質、およびウイルス様粒子(VLP)が挙げられる。ウイルス抗原は、細胞培養または他の培養基において増殖されたウイルス、あるいは、ウイルス抗原は、組換え発現され得る。ウイルス抗原は、好ましくは、その生活環の少なくとも1つの段階の間にそのウイルスの表面に露出されるエピトープを含む。ウイルス抗原は、好ましくは、複数の血清型または複数の単離体にわたって保存される。ウイルス抗原としては、下に示されるウイルスの1つ以上に由来する抗原、および下で同定される特定の抗原の例が挙げられる。
【0138】
オルソミクソウイルス:ウイルス抗原は、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザA型、インフルエンザB型およびインフルエンザC型)に由来し得る。オルソミクソウイルス抗原は、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、転写酵素成分(PB1、PB2およびPA)の1つ以上が挙げられる、ウイルスタンパク質の1つ以上から選択され得る。好ましい抗原としては、HAおよびNAが挙げられる。
【0139】
インフルエンザ抗原は、流行の間(年間)のflu株に由来し得る。あるいは、インフルエンザ抗原は、流行性の感染を引き起こす可能性を有する株(すなわち、現在広まっている株におけるヘマグルチニンと比較して新しいヘマグルチニンを有するインフルエンザ株、または鳥類の被験体において病原性であり、かつヒト集団に水平に伝染する可能性を有するインフルエンザ株、またはヒトに対して病原性であるインフルエンザ株)に由来し得る。
【0140】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス科ウイルス(例えば、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)および麻疹ウイルス(麻疹)に由来し得る。
肺炎ウイルス:ウイルス抗原は、肺炎ウイルス(例えば、RSウイルス(RSV)、ウシRSウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルス)に由来し得る。好ましくは、肺炎ウイルスは、RSVである。肺炎ウイルス抗原は、以下に挙げられるタンパク質の1つ以上から選択され得る:表面タンパク質融合体(F)、糖タンパク質(G)および低分子疎水性タンパク質(SH)、マトリックスタンパク質MおよびM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、PおよびL、ならびに非構造タンパク質NS1およびNS2。好ましい肺炎ウイルス抗原としては、F、GおよびMが挙げられる。例えば、J Gen Virol.、2004年11月;85(Pt 11):3229を参照のこと。肺炎ウイルス抗原はまた、キメラウイルスにて処方されても、キメラウイルスに由来してもよい。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含み得る。
【0141】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス1型〜4型(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルス、およびニューカッスル病ウイルス)に由来し得る。好ましくは、パラミクソウイルスは、PIVまたはムンプスである。パラミクソウイルス抗原は、以下のタンパク質の1つ以上から選択され得る:ヘマグルチニン−ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、大(large)タンパク質(L)、ならびにマトリックスタンパク質(M)。好ましいパラミクソウイルスタンパク質としては、HN、F1およびF2が挙げられる。パラミクソウイルス抗原はまた、キメラウイルスにて処方されても、キメラウイルスに由来してもよい。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含み得る。市販されているムンプスワクチンは、一価形態、または麻疹・風疹ワクチンとの組み合わせのいずれかにおいて、弱毒化した生きたムンプスウイルスを含む(MMR)。
【0142】
麻疹ウイルス:ウイルス抗原は、麻疹ウイルス(例えば、麻疹)に由来し得る。麻疹ウイルス抗原は、以下のタンパク質の1つ以上から選択され得る:ヘマグルチニン(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、大タンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、およびマトリックス(M)。市販されている麻疹ワクチンは、ムンプスおよび風疹との組み合わせにおいて、代表的に、弱毒化した生きた麻疹ウイルスを含む(MMR)。
【0143】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、ピコルナウイルス(例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス(Heparnavirus)、カーディオウイルスおよびアフトウイルス)に由来し得る。エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス)に由来する抗原が、好ましい。
【0144】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス1型、2型または3型、コサッキーAウイルス1型〜22型および24型、コサッキーBウイルス1型〜6型、エコーウイルス(ECHOウイルス)1型〜9型、エコーウイルス11型〜27型およびエコーウイルス29型〜34型ならびにエンテロウイルス68〜71)に由来し得る。好ましくは、上記エンテロウイルスは、ポリオウイルスである。エンテロウイルス抗原は、好ましくは、以下のカプシドタンパク質の1つ以上から選択される:VP1、VP2、VP3およびVP4。市販されているポリオワクチンとしては、不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)および/または経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が挙げられる。
【0145】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパルナウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス(HAV))に由来し得る。市販されているHAVワクチンとしては、不活化HAVワクチンが挙げられる。
【0146】
トガウイルス:ウイルス抗原は、トガウイルス(例えば、ルビウイルス、アルファウイルス、またはアルテリウイルス)に由来し得る。ルビウイルス(例えば、風疹ウイルス)に由来する抗原が、好ましい。トガウイルス抗原は、E1、E2、E3、C、NSP−1、NSPO−2、NSP−3またはNSP−4から選択され得る。トガウイルス抗原は、好ましくは、E1、E2またはE3から選択される。市販されている風疹ワクチンとしては、代表的に、ムンプスワクチンおよび麻疹ワクチンと組み合わせた、生きた低温順応ウイルスが挙げられる(MMR)。
【0147】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、フラビウイルス(例えば、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、デング熱ウイルス(1型、2型、3型または4型)、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、西ナイル脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポーワッサン脳炎ウイルス)に由来し得る。フラビウイルス抗原は、PrM、M、C、E、NS−1、NS−2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、およびNS5から選択され得る。フラビウイルス抗原は、好ましくは、PrM、MおよびEから選択される。市販されているTBEワクチンとしては、不活化ウイルスワクチンが挙げられる。
【0148】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ペスチウイルス(例えば、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、古典的な豚コレラウイルス(CSFV)またはボーダー病ウイルス(BDV))に由来し得る。
【0149】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)に由来し得る。ヘパドナウイルス抗原は、表面抗原(L、MおよびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択され得る。市販されているHBVワクチンとしては、表面抗原Sタンパク質を含むサブユニットワクチンが挙げられる。
【0150】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原は、E1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS 345−コアポリタンパク質、コア、および/または非構造領域由来のペプチド(Houghtonら、Hepatology、(1991)、14:381)の1つ以上から選択され得る。
【0151】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、ラブドウイルス(例えば、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス(VSV))に由来し得る。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、大タンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択され得る。市販されている狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト2倍体細胞または胎仔アカゲザル肺細胞で増殖する殺したウイルスを含む。
【0152】
カリシウイルス科;ウイルス抗原は、カリシウイルス科(例えば、ノーウォークウイルス、およびノーウォーク様ウイルス(例えば、ハワイウイルスおよびスノーマウンテンウイルス))に由来し得る。
【0153】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、トリ感染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原は、スパイク(S)、エンベロープ(E)、マトリックス(M)、ヌクレオカプシド(N)、およびヘマグルチニン−エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択され得る。好ましくは、コロナウイルス抗原は、SARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は、WO 04/92360に記載される。
【0154】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、レトロウイルス(例えば、オンコウイルス、レンチウイルスまたはスプマウイルス)に由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV−1、HTLV−2またはHTLV−5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV−1またはHIV−2に由来し得る。レトロウイルス抗原は、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、およびvprから選択され得る。HIV抗原は、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev、vpu、小型タンパク質(好ましくは、p55gag欠失およびgp140v欠失)から選択され得る。HIV抗原は、以下の株の1つ以上に由来し得る:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4
【0155】
レオウイルス:ウイルス抗原は、レオウイルス(例えば、オルソレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、またはコルチウイル)に由来し得る。レオウイルス抗原は、非構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、もしくはσ3、または非構造タンパク質σNS、μNS、もしくはσ1sから選択され得る。好ましいレオウイルス抗原は、ロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4(または分解産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4、またはNSP5から選択され得る。好ましいロタウイルス抗原としては、VP4(または分解産物VP5およびVP8)、およびVP7が挙げられる。
【0156】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19)に由来し得る。パルボウイルス抗原は、VP−1、VP−2、VP−3、NS−1およびNS−2から選択され得る。好ましくは、パルボウイルス抗原は、カプシドタンパク質VP−2である。
【0157】
D型肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDVに由来し得る(特に、HDV由来のδ−抗原)(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)。
【0158】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVに由来し得る。
【0159】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVに由来し得る。
【0160】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、ヒトヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8))に由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原は、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)、および後期タンパク質(γ)から選択され得る。HSV抗原は、HSV−1株またはHSV−2株に由来し得る。HSV抗原は、糖タンパク質gB、gC、gDおよびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(gC、gE、またはgI)から選択され得る。VZV抗原は、コアタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、外被タンパク質、またはエンベロープタンパク質から選択され得る。弱毒化した生のVZVワクチンが、市販されている。EBV抗原は、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスカプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択され得る。CMV抗原は、カプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(例えば、gBおよびgH)、および外被タンパク質から選択され得る。
【0161】
パポバウイルス:抗原は、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルス)に由来し得る。パピローマウイルスは、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63および65を含む。好ましくは、HPV抗原は、血清型6、11、16または18に由来する。HPV抗原は、カプシドタンパク質(L1)および(L2)、もしくはカプシドタンパク質E1〜E7、またはそれらの融合体から選択され得る。HPV抗原は、好ましくは、ウイルス様粒子(VLP)中に処方される。ポリオーマウイルス(Polyomyavirus virus)としては、BKウイルスおよびJKウイルスが挙げられる。ポリオーマウイルス抗原は、VP1、VP2またはVP3から選択され得る。
【0162】
Vaccines、第4版(PlotkinおよびOrenstein編、2004);Medical Microbiology、第4版(Murrayら編、2002);Virology、第3版(W.K.Joklik編、1988);Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1991)に含まれる抗原、組成物、方法、および微生物が、さらに提供され、これらは、本発明の組成物に関連して企図される。
【0163】
(C.真菌抗原)
本発明で使用するための真菌抗原は、以下に示される真菌の1種以上に由来し得る。
【0164】
真菌抗原は、以下の皮膚糸状菌に由来し得る:
【0165】
【化3】

真菌病原体は、以下に由来し得る:
【0166】
【化4】

真菌抗原を産生するための方法は、当該分野において周知である(米国特許第6,333,164号を参照のこと)。好ましい方法において、細胞壁が実質的に除去されたか、または少なくとも部分的に除去された真菌細胞から入手可能な不溶性分画から抽出され、そして分離される可溶化された分画は、以下の工程を包含する方法において特徴付けられる:生きている真菌細胞を得る工程;細胞壁が、実質的に除去されたか、または少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得る工程;細胞壁が、実質的に除去されたか、または少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させる工程;不溶性分画を得る工程;およびこの不溶性分画から可溶化された分画を抽出し、そして分離する工程。
【0167】
(D.STD抗原)
本発明の組成物は、性感染症(STD)に由来する1種以上の抗原を含有し得る。このような抗原は、STD(例えば、クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(例えば、HCV)、性器いぼ、淋病、梅毒および/または軟性下疳(WO 00/15255を参照のこと))の予防または治療を提供し得る。抗原は、1種以上のウイルス性STDまたは1種以上の細菌性STDに由来し得る。本発明で使用するためのウイルス性STD抗原は、例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および肝炎(HCV)に由来し得る。本発明で使用するための細菌性STD抗原は、例えば、Neiserria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Treponema pallidum、Haemophilus ducreyi、E.coli、およびStreptococcus agalactiaeに由来し得る。これらの病原体に由来する特異的抗原の例は、上に記載される。
【0168】
(E.呼吸器抗原)
本発明の組成物は、呼吸器疾患を引き起こす病原体に由来する1種以上の抗原を含有し得る。例えば、呼吸器抗原は、呼吸器のウイルス(例えば、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZV、およびコロナウイルス(SARS))に由来し得る。呼吸器抗原は、呼吸器疾患を引き起こす細菌(例えば、Streptococcus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Bordetella pertussis、Mycobacterium tuberculosis、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniae、Bacillus anthracis、およびMoraxella catarrhalis)に由来し得る。これらの病原体に由来する特異的抗原の例は、上に記載される。
【0169】
(F.小児用ワクチン抗原)
本発明の組成物は、小児の被験体において使用するのに適した1種以上の抗原を含有し得る。小児の被験体は、代表的に、約3歳未満であるか、または約2歳未満であるか、または約1歳未満である。小児用抗原は、6ヶ月間、1年間、2年間または3年間の過程にわたって、複数回投与され得る。小児用抗原は、小児集団を標的とし得るウイルスおよび/または小児集団が感染に対して感受性であるウイルスに由来し得る。小児用ウイルス抗原としては、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、および水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)のうちの1種以上に由来する抗原が挙げられる。小児用細菌抗原としては、Streptococcus pneumoniae、Neisseria meningitides、Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、Bordetella pertussis、Staphylococcus aureus、Clostridium tetani(破傷風)、Cornynebacterium diphtheriae(ジフテリア)、Haemophilus influenzae B(Hib)、Pseudomonas aeruginosa、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、およびE.coliのうちの1種以上に由来する抗原が挙げられる。これらの病原体に由来する特異的抗原の例は、上に記載される。
【0170】
(G.高齢者または免疫無防備状態の個体における使用に適した抗原)
本発明の組成物は、高齢者または免疫無防備状態の個体における使用に適した1種以上の抗原を含有し得る。このような個体は、より頻繁に、より高い用量、または標的化された抗原に対する個体の免疫応答を改良するアジュバント型処方物を用いて、予防接種される必要があり得る。高齢者または免疫無防備状態の個体において使用するために標的化され得る抗原としては、以下の病原体のうちの1種以上に由来する抗原が挙げられる:Neisseria meningitides、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、Bordetella pertussis、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermis、Clostridium tetani(破傷風)、Cornynebacterium diphtheriae(ジフテリア)、Haemophilus influenzae B(Hib)、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、Enterococcus faecalis、Helicobacter pylori、Clamydia pneumoniae、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)。これらの病原体に由来する特異的抗原の例は、上に記載される。
【0171】
(H.青年用ワクチンにおいて使用するのに適した抗原)
本発明の組成物は、青年の被験体において使用するのに適した1種以上の抗原を含有し得る。青年は、先に投与された小児抗原のブーストを必要とし得る。青年に使用するのに適切であり得る小児用抗原は、上に記載される。さらに、青年は、性的活動が始まる前に防御免疫または治療免疫を確実にするために、STD病原体に由来する抗原を受容するように、目的を定められ得る。青年に使用するのに適切であり得るSTD抗原は、上に記載される。
【0172】
(I.抗原処方物)
本発明の他の局面において、吸着された抗原を有する微粒子を生成する方法が、提供される。この方法は、以下を包含する:(a)(i)水、(ii)洗浄剤、(iii)有機溶媒、および(iv)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択される生分解性ポリマーを含有する混合物を分散することによってエマルションを提供する工程(このポリマーは、代表的に、この有機溶媒に対して約1%〜約30%の濃度で、この混合物中に存在する一方で、この洗浄剤は、代表的に、約0.00001:1〜約0.1:1(より代表的には、約0.0001:1〜約0.1:1、約0.001:1〜約0.1:1、または約0.005:1〜約0.1:1)の洗浄剤 対 ポリマーの重量比でこの混合物中に存在する);(b)このエマルションからこの有機溶媒を除去する工程;および(c)微粒子の表面上に抗原を吸着する工程。特定の実施形態において、この生分解性ポリマーは、この有機溶媒に対して約3%〜約10%の濃度にて存在する。
【0173】
本明細書中で使用するための微粒子は、滅菌可能であり、非毒性であり、そして生分解性である材料から形成される。このような材料としては、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、PACAおよびポリシアノアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明で使用するための微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(特に、ポリ(ラクチド)(「PLA」)、またはD,L−ラクチドと、グリコリドもしくはグリコール酸とのコポリマー(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(「PLG」または「PLGA」)、またはD、L−ラクチドとカプロラクトンとのコポリマー)である。上記微粒子は、多様な分子量、およびコポリマー(例えば、PLG)の場合においては、多様なラクチド:グリコリドの比(この選択の大部分が好みの問題である)を有する、種々のポリマー出発材料のいずれかに由来し得、そのポリマー出発材料は、部分的に、同時投与される高分子に依存する。これらのパラメータは、下でより完全に考察される。
【0174】
さらなる抗原としてはまた、外膜小胞(OMV)調製物が挙げられ得る。
【0175】
さらなる処方方法およびさらなる抗原(特に、腫瘍抗原)は、米国特許出願番号第09/581,772号において提供される。
【0176】
(J.抗原の参考文献)
以下の参考文献は、本発明の組成物との組み合わせにおいて有用な抗原を含む:
【0177】
【化5】

【0178】
【化6】

【0179】
【化7】

本発明の組成物は、代表的に、上述の化合物に加えて、1種以上の「薬学的に受容可能なキャリア」を含有する。これらはとしては、上記組成物を受容する個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体は誘導しない任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的に、大きくゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸のポリマー、アミノ酸コポリマー、乳糖、および脂質集合体(例えば、油滴またはリポソーム))である。このようなキャリアは、当業者にとって周知である。組成物はまた、希釈剤(例えば、水、食塩水、グリセロールなど)を含み得る。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)が、存在し得る。薬学的に受容可能なキャリアの徹底的な考察は、Gennaro、(2000)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472において入手可能である。
【0180】
本発明の免疫原性組成物は、種々の形態にて調製され得る。例えば、上記組成物は、上記組成物は、溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る。注射前に、液体ビヒクル中の溶液または懸濁液に適した固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥された組成物または噴霧凍結乾燥された組成物)。上記組成物は、例えば、軟膏、クリームまたは粉末として、局所投与のために調製され得る。上記組成物は、例えば、錠剤もしくはカプセル、スプレー、または(必要に応じて香り付けされた)シロップとして、経口投与のために調製され得る。上記組成物は、例えば、微細な粉末またはスプレーを使用する吸入器として、肺投与のために調製され得る。上記組成物は、坐剤または膣坐剤として調製され得る。上記組成物は、例えば、点滴剤として、鼻投与、耳投与または眼投与のために調製され得る。上記組成物は、組み合わせた組成物が、患者に投与する直前に再構成されるように設計されたキット形態中にあり得る。このようなキットは、液体形態にある1種以上の抗原および1種以上の凍結乾燥された抗原を備え得る。
【0181】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、抗原の免疫学的有効量、および必要に応じて、任意の他の成分を含有する。「免疫学的有効量」によって、個体に対するその量の投与(単一用量または一連の用量の一部のいずれかとして)が処置または予防に有効であることが、意味される。この量は、処置される個体の健康状態および身体状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される防御の程度、上記ワクチンの処方、処置する医師による医学的状況の評価、および他の関連因子に依存して変動する。その量は、慣用的な試行によって決定され得る比較的幅広い範囲内にあることが予想される。
【0182】
本発明の免疫原性組成物は、他の免疫刺激性因子と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明のワクチンは、アジュバントを含有し得る。好ましいアジュバントとしては、下に記載される以下の型のアジュバントの1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
(A.無機質含有組成物)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適した無機質含有組成物としては、無機塩類(アルミニウム塩およびカルシウム塩)が挙げられる。本発明は、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩など(例えば、Vaccine Design(1995)、PowellおよびNewman編、ISBN:030644867X.Plenum.の第8章および第9章)などの無機塩類、または異なる無機化合物の混合物(例えば、必要に応じて過剰なリン酸塩を含む、リン酸塩と水酸化物アジュバントとの混合物)を包含し、その混合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル形態、結晶形態、非晶質形態など)をとる化合物を含み、そして好ましい塩に対する吸着を伴う。上記無機質含有化合物はまた、金属塩の粒子として処方され得る(例えば、WO 00/23105を参照のこと)。
【0184】
アルミニウム塩は、Al3+の用量が、1用量あたり0.2mgと1.0mgとの間であるように、本発明のワクチンに含有され得る。
【0185】
1つの実施形態において、本発明において使用するためのアルミニウムベースのアジュバントは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO))、またはリン酸緩衝液中の抗原とミョウバンとを混合し、次いで塩基(例えば、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウム)を用いて、滴定および沈殿を行うことによって形成されるようなミョウバン誘導体である。
【0186】
本発明のワクチン処方物において使用するための別のアルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(Al(OH))、または優れたアジュバントであって、約500m/gの表面積を有する結晶性オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)である。あるいは、リン酸アルミニウムアジュバント(AlPO)、またはヒドロキシリン酸アルミニウム(水酸化アルミニウムアジュバントのいくつかのヒドロキシル基または全てのヒドロキシル基に代えて、リン酸基を有する)が、提供される。本明細書中に提供される好ましいリン酸アルミニウムアジュバントは、酸性媒体、塩基性媒体および中性媒体において、非晶質かつ可溶性である。
【0187】
別の実施形態において、本発明のアジュバントは、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムの両方を含む。より特定のその実施形態において、上記アジュバントは、水酸化アルミニウムより大きい量のリン酸アルミニウムを有する(例えば、リン酸アルミニウム 対 水酸化アルミニウムの重量比で、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または9:1より大きい)。よりさらに具体的には、上記ワクチン中のアルミニウム塩は、1ワクチン用量あたり0.4mg〜1.0mg、または1ワクチン用量あたり0.4mg〜0.8mg、または1ワクチン用量あたり0.5mg〜0.7mg、または1ワクチン用量あたり約0.6mgにて存在する。
【0188】
一般的に、好ましいアルミニウムベースのアジュバント、または複数のアルミニウムベースのアジュバントの比(例えば、リン酸アルミニウム 対 水酸化アルミニウム)は、上記抗原が、所望のpHにて上記アジュバントと反対の電荷を保有するように、分子間の静電引力の最適化によって選択される。例えば、リン酸アルミニウムアジュバント(等電点=4)は、pH7.4にて、リゾチームを吸着するが、アルブミンを吸着しない。アルブミンが、その標的である場合、水酸化アルミニウムアジュバント(等電点11.4)が選択される。あるいは、リン酸塩による水酸化アルミニウムの前処理は、水酸化アルミニウムの等電点を低下させ、水酸化アルミニウムを、より塩基性の抗原に対する好ましいアジュバントにする。
【0189】
(B.油エマルション)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適した油エマルション組成物としては、スクアレン−水エマルション(例えば、MF59(マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を使用してサブミクロン粒子へと処方される5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85))が挙げられる。WO90/14837を参照のこと。Podda、「The adjuvanted influenza vaccines with novel adjuvants:experience with the MF59−adjuvanted vaccines」、Vaccine(2001)19:2673−2680;Freyら、「Comparison of the safety、tolerability、and immunogenicity of a MF59−adjuvanted influenza vaccine and a non−adjuvanted influenza vaccine in non−elderly adults」、Vaccine(2003)21:4234−4237もまた参照のこと。MF59は、FLUADTMインフルエンザウイルス三価サブユニットワクチン中でアジュバントとして使用される。
【0190】
上記組成物において使用するための特に好ましいアジュバントは、サブミクロンの水中油型エマルションである。本明細書中で使用するための好ましいサブミクロンの水中油型エマルションは、スクアレン/水エマルションであり、このエマルションは、必要に応じて、種々の量のMTP−PE(例えば、4%〜5%(w/v)のスクアレン、0.25%〜1.0%(w/v)のTween 80TM(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、および/または0.25%〜1.0%のSpan 85TM(ソルビタントリオレエート))、および必要に応じて、種々の量のN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ(huydroxyphosphophoryloxy))−エチルアミン(MTP−PE)(例えば、「MF59」として公知であるサブミクロンの水中油型エマルション(国際公開第90/14837号;米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号、ならびにOttら、「MF59−−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」、Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.およびNewman,M.J.編)、Plenum Press、New York、1995、pp.277−296))を含む。MF59は、4%〜5%(w/v)のスクアレン(例えば、4.3%)、0.25%〜0.5%(w/v)のTween 80TM、および0.5%(w/v)のSpan 85TMを含み、そしてMF59は、必要に応じて、マイクロフルイダイザー(例えば、Model HOYマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA))を使用してサブミクロン粒子へと処方される種々の量のMTP−PEを含む。例えば、MTP−PEは、1用量あたり約0μg〜約500μgの量、より好ましくは1用量あたり0μg〜250μgの量、および最も好ましくは1用量あたり0μg〜100μgの量で存在し得る。本明細書中で使用される場合、用語「MF59−0」とは、MTP−PEを欠く上記のサブミクロンの水中油型エマルションをいうが、用語MF59−MTPは、MTP−PEを含む処方を示す。例えば、「MF59−100」は、1用量あたり100μgのMTP−PEなどを含む。MF69(本明細書中で使用するための別のサブミクロンの水中油型エマルション)は、4.3%(w/v)のスクアレン、0.25%(w/v)のTween 80TM、および0.75%(w/v)のSpan 85TMを含み、そしてMF69は、必要に応じて、MTP−PEを含む。なお別のサブミクロンの水中油型エマルションは、SAFとしても公知であるMF75であり、MF75は、10%スクアレン、0.4% Tween 80TM、5%プルロニック(pluronic)ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、MF75もまた、サブミクロンエマルションへとマイクロフルイダイズされる。MF75−MTPは、MTP(例えば、1用量あたり100μg〜400μgのMTP−PE)を含むMF75処方物を示す。
【0191】
サブミクロンの水中油型エマルション、それを作製する方法、および上記組成物において使用するための免疫刺激因子(例えば、ムラミルペプチド)は、国際公開第90/14837号ならびに米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号において詳細に記載される。
【0192】
フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。
【0193】
(C.サポニン処方物)
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花においてさえ見出される、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種の群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮から単離されたサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)、およびSaponaria officianalis(サボンソウの根(soap root))から商業的に入手され得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物(例えば、QS21)、および脂質処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。
【0194】
サポニン組成物は、高性能薄層クロマトグラフィー(HP−TLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を使用して精製されている。これらの技術を使用する特定の精製された分画が、同定され、その分画としては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、上記サポニンは、QS21である。QS21を生成する方法は、米国特許第5,057,540号に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール(WO96/33739を参照のこと))を含み得る。
【0195】
サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫刺激複合体(ISCOM)と称される独特の粒子を形成するために使用され得る。ISCOMはまた、代表的に、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)を含む。任意の公知のサポニンが、ISCOM中に使用され得る。好ましくは、上記ISCOMは、Quil A、QHAおよびQHCのうちの1種を含む。ISCOMは、EP0109942、WO96/11711およびWO96/33739においてさらに記載される。必要に応じて、上記ISCOMは、さらなる洗浄剤を欠き得る。WO00/07621を参照のこと。
【0196】
サポニンベースのアジュバントの開発についての概説は、Barrら、「ISCOMs and other saponin besed adjuvants」、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:247−271において見出され得る。Sjolanderら、「Uptake and adjuvant activity of orally delivered saponin and ISCOM vaccines」、Advanced Drug DeIivery Reviews(1998)32:321−338もまた参照のこと。
【0197】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP))
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造物は、一般に、ウイルス由来の1種以上のタンパク質を含み、そのタンパク質は、必要に応じて、リン脂質と組み合わされるか、またはリン脂質と一緒に処方される。それらは、一般に、非病原性であり、そして一般に、あらゆるネイティブなウイルスゲノムを含まない。上記ウイルスタンパク質は、組換え的に産生されても、そのままのウイルスから単離されてもよい。ビロソームまたはVLPにおいて使用するのに適したこれらのウイルスタンパク質としては、以下に由来するタンパク質が挙げられる:インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアまたはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、手足口病ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNAファージ、Qβファージ(例えば、コートタンパク質)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)。VLPは、以下:
【0198】
【化8】

においてさらに考察される。ビロソームは、例えば、Gluckら、「New Technology Platforms in the Development of Vaccines for the Future」、Vaccine、(2002)、20:B10−B16においてさらに考察される。免疫増強性の再構成されたインフルエンザビロソーム(Immunopotentiating reconstituted influenza virosome(IRIV))は、鼻腔内用で三価のINFLEXALTM製品{MischlerおよびMetcalfe、(2002)、Vaccine、20、第5補遺:B17−23}、およびINFLUVAC PLUSTM製品において、サブユニット抗原送達システムとして使用される。
【0199】
(E.細菌性誘導体または微生物性誘導体)
本発明において使用するのに適したアジュバントとしては、以下のような、細菌性誘導体または微生物性誘導が挙げられる。
【0200】
((1)腸内細菌のリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体)
このような誘導体としては、一リン酸化リピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱−O−アシル化した一リン酸化リピドAと、4アシル化鎖、5アシル化鎖、または6アシル化鎖との混合物である。3脱−O−アシル化した一リン酸化リピドAの好ましい「小粒子」形態は、EP0689454において開示される。3dMPLのこのような「小粒子」は、0.22ミクロンのメンブレン(EP0689454を参照のこと)を通して濾過滅菌されるほどに小さい。他の非毒性LPS誘導体としては、一リン酸化リピドA模倣物(mimic)(例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529))が挙げられる。Johnsonら、(1999)、Bioorg Med Chem Lett 9:2273−2278を参照のこと。
【0201】
((2)リピドA誘導体)
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体(例えば、OM−174)が挙げられる。OM−174は、例えば、以下:
【0202】
【化9】

に記載される。
【0203】
((3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ(リン酸結合によって連結される、メチル化されていないシトシン、およびそれに続くグアノシンを含む配列)を有するヌクレオチド配列を含む。パリンドローム配列もしくはポリ(dG)配列を含む細菌の二本鎖RNA、またはパリンドローム配列もしくはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性を有することが見出されている。
【0204】
CpG’は、ヌクレオチド修飾物(modification)/ヌクレオチドアナログ(例えば、ホスホロチオエート修飾物)を含み得、そしてCpG’は、二本鎖または一本鎖であり得る。必要に応じて、上記グアノシンは、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンなどのアナログによって置換され得る。可能なアナログ置換の例については、Kandimallaら、「Divergent synthetic nucleotide motif recognition pattern:design and development of potent immunomodulatory oligodeoxyribonucleotide agents with distinct cytokine induction profiles」、Nucleic Acids Research、(2003)、31、(9):2393−2400;WO02/26757およびWO99/62923を参照のこと。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg、「CpG motifs:the active ingredient in bacterial extracts?」、Nature Medicine、(2003)、9(7):831−835;McCluskieら、「Parenteral and mucosal prime−boost immunization strategies in mice with hepatitis B surface antigen and CpG DNA」、FEMS Immunology and Medical Microbiology、(2002)、32:179−185;WO98/40100;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号および米国特許第6,429,199号においてさらに考察される。
【0205】
上記CpG配列は、TLR9を指向し得る(たとえば、モチーフGTCGTTまたはモチーフTTCGTT)。Kandimallaら、「Toll−like receptor 9:modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic CpG DNAs」、Biochemical Society Transactions、(2003)、31(第3部):654−658を参照のこと。上記CpG配列は、Th1免疫応答を誘導することについて特異的(例えば、CpG−A ODN)であり得るか、またはCpG配列は、B細胞応答を誘導することについて、より特異的(例えば、CpG−B ODN)であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、以下:
【0206】
【化10】

において考察される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。
【0207】
好ましくは、上記CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識のために利用しやすいように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列が、「イムノマー(immunomer)」を形成するように、それらの3’末端にて結合され得る。例えば、以下:
【0208】
【化11】

を参照のこと。
【0209】
((4)ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体)
細菌のADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、そのタンパク質は、E.coli(すなわち、E.coliの非耐熱性エンテロトキシン(「LT」))、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての無毒化したADPリボシル化毒素の使用は、WO95/17211に記載され、そして非経口アジュバントとしての無毒化したADPリボシル化毒素の使用は、WO98/42375に記載される。好ましくは、そのアジュバントは、無毒化LT変異体(例えば、LT−K63、LT−R72、およびLTR192G)である。アジュバントとしてのADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体の使用(特に、LT−K63およびLT−R72)は、以下の参考文献において見出され得る:
【0210】
【化12】

アミノ酸置換についての数字の参照は、Domenighiniら、Mol.Microbiol、(1995)、15(6):1165−1167に示される、ADPリボシル化毒素のAサブユニットと、ADPリボシル化毒素のBサブユニットとのアラインメントに基づく。
【0211】
(F.生体接着因子および粘膜接着因子)
生体接着因子および粘膜接着因子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着因子としては、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(Singhら、(2001)、J.Cont.ReIe.70:267−276)、または粘膜接着因子(例えば、の架橋型誘導体ポリアクリル酸の架橋型誘導体、ポリビニルアルコールの架橋型誘導体、ポリビニルピロリドンの架橋型誘導体、多糖の架橋型誘導体およびカルボキシメチルセルロースの架橋型誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。例えば、WO99/27960。
【0212】
(G.微粒子)
微粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。生分解性かつ非毒性である材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)と、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)とによって形成される微粒子(すなわち、直径が約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは直径が約200nm〜約30μmの粒子、および最も好ましくは直径が約500nm〜約10μmの粒子)が、好ましい。その粒子は、必要に応じて、(例えば、SDSによって)負に荷電した表面を有するように処理されるか、または(例えば、カチオン性洗浄剤(例えば、CTAB)によって)正に荷電した表面を有するように処理される。
【0213】
(H.リポソーム)
アジュバントとして使用するのに適したリポソーム処方物の例は、米国特許第6,090,406号、米国特許第5,916,588号、EP0626169に記載される。
【0214】
(I.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明において使用するのに適したアジュバントとしては、ポリエチレンエーテルおよびポリエチレンエステルが挙げられる。WO99/52549。このような処方物は、オクトキシノールと組み合わせたポリエチレンソルビタンエステル界面活性剤(WO01/21207)、および少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリエチレンアルキルエーテルエステル界面活性剤(WO01/21152)を含む。
【0215】
好ましいポリエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリエチレン−9−ステロイル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(polyoxytheylene)−8−ステロイル(steoryl)エーテル、ポリエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0216】
(J.ポリホスファチジン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、以下:
【0217】
【化13】

に記載される。
【0218】
(K.ムラミルペプチド)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(ノル−MDP)、およびN−アセチルムラミル−l−アラニル−d−グルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホルホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が挙げられる。
【0219】
(L.イミダゾキノリン化合物)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適したイミダゾキノリン化合物としては、「Imiquimod and the imidazoquinolines:mechanism of action and therapeutic potential」、Clin Exp Dermatol、(2002)、27(7):571−577;Jones、「Resiquimod 3M」、Curr Opin Investig Drugs、(2003)、4(2):214−218;ならびに米国特許第4,689,338号、同第5,389,640号、同第5,268,376号、同第4,929,624号、同第5,266,575号、同第5,352,784号、同第5,494,916号、同第5,482,936号、同第5,346,905号、同第5,395,937号、同第5,238,944号、同第および5,525,612号においてさらに記載される、イミキモドおよびそのアナログが挙げられる。
【0220】
(M.チオセミカルバゾン化合物)
チオセミカルバゾン化合物の例、ならびに本発明においてアジュバントとして使用するのに完全に適した化合物について処方し、製造し、そしてスクリーニングする方法の例としては、WO04/60308に記載されるものが挙げられる。上記チオセミカルバゾンは、サイトカイン(例えば、TNF−α)の産生ためのヒト末梢血単核細胞の刺激において、特に有効である。
【0221】
(N.トリプタントリン化合物)
トリプタントリン化合物の例、および本発明においてアジュバントとして使用するのに完全に適した化合物について処方し、製造し、そしてスクリーニングする方法の例としては、WO04/64759に記載されるものが挙げられる。上記トリプタントリン化合物は、サイトカイン(例えば、TNF−α)の産生ためのヒト末梢血単核細胞の刺激において、特に有効である。
【0222】
本発明はまた、上で特定したアジュバントのうちの1種以上の組成物の局面を包含し得る。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:
(1)サポニンおよび水中油型エマルション(WO99/11241);
(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(WO94/00153を参照のこと);
(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;
(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(WO98/57659);
(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルションとの組み合わせ(欧州特許出願第0835318号、同第0735898号および同第0761231号を参照のこと);
(6)SAF(10%スクアレン、0.4% Tween 80、5% プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルション中にマイクロフルイダイズされるか、またはボルテックスされてより大きい粒径のエマルションを生じる)
(7)RibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem)(2%スクアレン、0.2% Tween 80、ならびに一リン酸化リピドA(MPL)、トレハロースジマイコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)からなる1種以上の細菌細胞壁成分を含む);ならびに
(8)1種以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩)+LPS(例えば、3dPML)の非毒性誘導体
(9)1種以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩)+免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列)。
【0223】
(O.ヒト免疫調節因子)
本発明においてアジュバントとして使用するのに適したヒト免疫調節因子としては、サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0224】
アルミニウム塩およびMF59が、注射用インフルエンザワクチンと一緒に使用するのに好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着因子が、粘膜送達されるワクチン(例えば、鼻用のワクチン)と一緒に使用するのに好ましいアジュバントである。
【0225】
本発明の混合ワクチンは、異なる方法(その全ては、当該分野において公知である)によって容易に調製され得る。ワクチンを生産するための方法およびワクチンを生産するための手段は、例えば、「Vaccines」、PlotkinおよびOrenstein(編)、2004に記載される。さらに、「Impfcodex,Impfung fuer Kinder,Erwachsende und Reisende」、第5版、Chiron Behring GmbH & Co(編)、2001は、有用な情報を提供する。上記ワクチンの成分は、例えば、混合され、次いでその混合物は、適切なアジュバントに吸着される。しかし、当業者によって認識されるように、各抗原成分はまた、この成分と他の抗原成分とを混合する前に、別々にアジュバントに吸着され得る。
【0226】
例えば、混合ワクチンTd−IPV−TBEが、処方される場合、別々に濃縮された、血清型1のIPV抗原、血清型2のIPV抗原、および血清型3のIPV抗原は、予め混合されたTd−TBEの組み合わせまたは予め混合されたTdの組み合わせのいずれかに添加され得る。後者の場合において、TBE濃縮物は、最後に添加される。あるいは、上記3種の別個のIPV抗原は、三価のIPV濃縮物へと混合され、次いでこの三価のIPV濃縮物は、Td予製混合物またはTd−TBE予製混合物に添加される。その製造方法は、百日咳抗原化合物が、Td−aP−TBEワクチンまたはTd−aP−IPV−TBEワクチンを生成するために添加される場合も、同様である。百日咳抗原含有ワクチンは、全菌体、無菌体産物または組換え的に生成された産物を含有し得る。好ましくは、上記百日咳成分は、上記百日咳トキソイドもしくはそのフラグメント、繊維状赤血球凝集素抗原、または外膜のタンパク質である。
【0227】
さらなる実施形態に従って、異なる抗原処方物は、上記混合ワクチンをボトリングする前にブレンドされる。このことは、上記異なる抗原処方物が、混合型多価ワクチンへと混合され、次いで適切なキャリア/アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)に吸着されることを意味する。
【0228】
上記生産方法は、優良試験所基準の指針に従って行われる必要がある。例えば、異なる抗原処方物の混合は、得られるワクチンが危険な物質(例えば、免疫化される被験体に対して有害である感染性因子)によって汚染されないように、滅菌条件下で行われる必要がある。一般的に、上記混合ワクチンの混合および上記混合ワクチンのボトリングは、当該分野において周知である方法によって行われ得る。
【0229】
さらなる局面に従って、本発明は、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原;およびダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ならびに本発明に従う混合ワクチンを調製するのに適したさらなる試薬を備えるキットに関する。好ましくは、本発明のキットは、Clostridium tetaniの少なくとも1種の抗原、Corynebacterium diphtheriaの少なくとも1種の抗原、およびダニ媒介性脳炎ウイルスの少なくとも1種の抗原を備える。さらなる試薬は、例えば、緩衝液、安定剤、抗酸化剤および/または保存剤を含み得る。
【0230】
本発明はまた、本発明の組成物の1つ以上の容器を備えるキットを提供する。組成物は、個々の抗原がそうであり得るように、液体形態であっても、凍結乾燥されてもよい。組成物の適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器、および試験管が挙げられる。容器は、種々の材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成され得る。容器は、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、その容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する、静脈内用溶液のバッグまたは静脈内用溶液のバイアルであり得る)。
【0231】
上記キットは、薬学的に受容可能な緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液、またはデキストロース溶液)を含む第2の容器を、さらに備え得る。上記キットはまた、エンドユーザーにとって有用な他の材料(他の薬学的に受容可能な処方用溶液(例えば、緩衝液)、希釈剤、フィルター、針、および注射器、または他の送達デバイス)を含み得る。上記キットは、アジュバントを包含する第3の構成要素をさらに備え得る。
【0232】
上記キットはまた、免疫を誘導する方法のためか、または感染を処置するための文書化された説明書を含む、パッケージの挿入物を備え得る。上記パッケージの挿入物は、未承認の起案(draft)であるパッケージの挿入物であっても、Food and Drug Administration(FDA)または取締機関によって承認されたパッケージの挿入物であってもよい。
【0233】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物によって予め充填された送達システムを提供する。
【0234】
好ましくは、上記混合ワクチンの抗原は、注射前の即時的な混合のために、別々に保存される。ここで、上記抗原は、再構成のために、溶液または凍結乾燥形態のいずれかとして、別個のバイアル中に存在し得る。さらなる実施形態に従って、上記抗原処方物は、2つ以上の別個のチャンバーを備える注射器中に存在し得る。注射の際に、これらのチャンバーは、上記異なる抗原処方物が、注射前に短時間で本発明の混合ワクチンへと混合されるように連結される。
【0235】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明に従う組成物を調製するための方法に関し、この方法において、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、およびダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、混合され、次いでその混合された抗原は、適切なアジュバントに吸着される。あるいは、本発明は、本発明に従う組成物を調製するための方法に関し、この方法において、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、およびダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、互いとそれぞれ別々に適切なアジュバントに吸着され、次いでその吸着された抗原は、互いに混合される。
【0236】
本発明はまた、医薬として使用するための、本発明の組成物を提供する。上記医薬は、好ましくは、哺乳動物において、免疫応答を惹起し得る(すなわち、その医薬は、免疫原性組成物である)。本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を惹起するための医薬の製造における、本発明の組成物の使用を提供する。
【0237】
本発明は、上に記載される組成物を使用して免疫応答を誘導するための方法、または上に記載される組成物を使用して増加させるための方法を提供する。上記免疫応答は、好ましくは、防御的であり、そしてその免疫応答は、抗体媒介性免疫および/または細胞媒介性免疫(全身性免疫および粘膜性免疫が挙げられる)を誘導し得る。免疫応答は、ブースター応答を含む。
【0238】
本発明はまた、哺乳動物において、免疫応答をもたらすための方法、または免疫応答を惹起するための方法を提供し、これらの方法は、請求項1〜20のいずれか1項に従う混合ワクチンの有効量を投与する工程を包含する。上記免疫応答は、好ましくは、防御的であり、そしてその免疫応答は、好ましくは、抗体媒介性免疫および/または細胞媒介性免疫を包含する。好ましくは、上記免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答の、一方または両方を包含する。この方法は、ブースター応答を惹起し得る。
【0239】
上記哺乳動物は、好ましくは、ヒトである。好ましくは、上記ワクチンは、予防的に使用するためのワクチンであり、そのヒトは、好ましくは、小児(例えば、歩き初めの小児または乳児、好ましくは就学前、好ましくは1歳以下または3歳を超える年長者)、または10歳〜19歳の者である;上記ワクチンが、治療的使用のためのワクチンである場合、そのヒトは、好ましくは、10歳〜19歳の者または成人である。小児を目的とするワクチンはまた、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために、成人に投与され得る。好ましくは、上記ヒトは、10歳〜19歳の者である。より好ましくは、上記ヒトは、青年になる前の10歳〜19歳の者である。よりさらに好ましくは、上記ヒトは、青年になる前の女性または青年になる前の男性である。好ましくは、上記青年になる前の男性または上記青年になる前の女性は、約9歳〜約12歳である。好ましくは、上記青年になる前の男性または上記青年になる前の女性は、約15歳〜約19歳である。好ましくは、上記男性または上記女性は、約20歳〜約49歳である。好ましくは、上記男性または上記女性は、49歳を超えている。
【0240】
本発明の組成物は、一般的に、患者に対して直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、または組織の間隙空間に対する注射)、もしくは粘膜投与(例えば、直腸投与、経口投与(例えば、錠剤、スプレー)、膣投与、局所投与、経皮(transdermal)投与(例えば、WO99/27961を参照のこと)、または経皮(transcutaneous)投与(例えば、WO02/074244およびWO02/064162を参照のこと)、鼻腔内投与(例えば、WO03/028760を参照のこと)、眼投与、耳投与、肺投与もしくは他の粘膜投与によって達成され得る。
【0241】
上記免疫原性組成物は、全身性免疫および/または粘膜性免疫を誘発するために使用され得、好ましくは全身性免疫および/または粘膜性免疫を増強するために使用され得る。
【0242】
投薬処置は、単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールであり得る。複数用量は、一次免疫スケジュールおよび/またはブースター免疫スケジュールで使用され得る。複数用量スケジュールにおいて、種々の用量は、同一の経路または異なる経路(例えば、非経口の初回刺激経路および粘膜のブースト経路、粘膜の初回刺激経路および非経口のブースト経路など)によって与えられ得る。
【0243】
好ましくは、上記免疫原性組成物は、一般的に、迅速な免疫化スケジュールを用いて投与され、この免疫化スケジュールは、0日目、7日目および21日目における3回の免疫化を含み、そして長期の防御が必要とされる場合に、12ヶ月目〜18ヶ月目におけるその後のブースター用量を含む(Zentら、(2004)、Vaccine、23;312−315およびZentら、(2005)、J Travel Med、17:331−342)。一次免疫の完了のための3回の用量が3週間以内に与えられる迅速な免疫化スケジュールは、従来のスケジュールとは異なり、ここで従来のスケジュールにおいて、一次免疫のために必要とされる用量は、0日目、1ヶ月後〜3ヵ月後、および9ヶ月後〜12ヶ月後において、1年以内に与えられる。迅速な免疫化スケジュールは、Rabies曝露前予防接種(Rabies pre−exposure vaccination)などの他のワクチンについてのスケジュールと、ほぼ同様であり、そして他のウイルスワクチン(例えば、A型肝炎ワクチンおよびB肝炎ワクチンならびに日本脳炎ワクチン)について評価されている(Nothdurftら、(2002)、Vaccine、20:1157−1162)。これは、時間的な制約に起因して、従来のスケジュールを、例えば、ダニの季節の間に風土的な地域に生きる者、および風土的な地域に旅行する直前の旅行者に対して行なうことができない状況において、特に適切である。後者に対しては特に、ブースターの推奨が、常に行なわれるとは限らない。
【0244】
好ましくは、上記投薬レジメンは、中和特性を有する抗体を生じる抗体反応のアビディティーを増強する。
【0245】
(免疫応答の効力を決定するための試験)
治療的処置の効力を評価する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に感染をモニタリングすることを包含する。予防的処置の効力を評価する1つの方法は、本発明の組成物中の抗原に対する免疫応答を、その組成物の投与後にモニタリングすることを包含する。
【0246】
本発明の免疫原性組成物の成分タンパク質の免疫原性を評価する別の方法は、そのタンパク質を組換え的に発現させること、および免疫ブロットによって患者の血清または患者の粘膜切片をスクリーニングすることである。上記タンパク質と患者の血清との間のポジティブな反応は、問題のタンパク質に対する免疫応答をこれまでにマウント(mount)したことを示す(すなわち、そのタンパク質は、免疫原である)。この方法はまた、免疫優勢(immunodominant)な、タンパク質および/またはエピトープを同定するために使用され得る。
【0247】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープ」とは、一般に、T細胞レセプターおよび/または抗体によって認識される抗原上の部位をいう。好ましくは、エピトープは、タンパク質抗原に由来する短いペプチドであるか、またはタンパク質抗原の一部としての短いペプチドである。しかし、この用語はまた、グリコペプチドを有するペプチドおよび炭水化物エピトープを有するペプチドを含むことを意図する。数種の異なるエピトープは、単一の抗原性分子によって保有され得る。用語「エピトープ」はまた、アミノ酸の改変配列または炭水化物の改変配列を含み、その改変配列は、そのままの生物を認識する応答を刺激する。このことは、選択されたエピトープが、感染症を引き起こす感染性因子のエピトープである場合に、有益である。
【0248】
上記エピトープは、そのペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸および対応するDNA配列の知見、ならびに特定のアミノ酸の性質(例えば、大きさ、電荷など)およびコドン一覧表(codon dictionary)から、過度な実験を伴わずにもたらされ得る。例えば、Ivan Roitt、Essential Immunology、1988;Kendrew、前出;Janis Kuby、Immunology、1992(例えば、pp.79−81)を参照のこと。タンパク質が応答を刺激するか否かを決定するいくつかの指針としては、以下が挙げられる:ペプチドの長さ(好ましくは、そのペプチドは、MHCクラスI複合体に適合するために、約8アミノ酸長または約9アミノ酸長であり、そしてそのペプチドは、クラスII MHC複合体に適合するために、約13アミノ酸長または約25アミノ酸長である)。この長さは、MHC複合体に結合するペプチドに関して最低限である。これらの長さより長いことが、上記ペプチドに関して好ましい。なぜなら、細胞は、ペプチドを切断し得るからである。上記ペプチドは、適切なアンカーモチーフを含み得、このアンカーモチーフは、それが、免疫応答をもたらすのに十分に高い特異性を有する種々のクラスI分子または種々のクラスII分子に結合することを、可能にする(Bocchia,M.ら、Specific Binding of Leukemia Oncogene Fusion Protein Pentides to HLA Class I Molecules、Blood 85:2680−2684;Englehard,VH、Structure of peptides associated with class I and class II MHC molecules Ann.Rev.Immunol.12:181(1994)を参照のこと)。このことは、過度な実験を伴わずに、目的のタンパク質の配列と、MHC分子に関連するペプチドの公開された構造とを比較することによって行われ得る。したがって、当業者は、目的のエピトープを、そのタンパク質と、タンパク質データベースに列挙される配列とを比較することによって確認し得る。
【0249】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞エピトープ」とは、一般に、T細胞応答を誘導し得るペプチド構造の形をいい、「B細胞エピトープ」とは、一般に、B細胞応答を誘導し得るペプチド構造の形をいう。
【0250】
治療的処置の効力を確認する別の方法は、本発明の上記組成物の投与後に、感染をモニタリングすることを包含する。予防的処置の効力を確認する1つの方法は、本発明の組成物中の抗原に対する全身の免疫応答をモニタリングすること(例えば、IgG1産生のレベルおよびIgG2a産生のレベルをモニタリングすること)および本発明の組成物中の抗原に対する粘膜の免疫応答をモニタリングすること(例えば、IgA産生のレベルをモニタリングすること)の両方を包含する。代表的に、血清特異的な抗体応答は、免疫化後に決定されるが、負荷(challenge)前には決定されないのに対して、粘膜特異的な抗体応答は、免疫化後および負荷後に決定される。
【0251】
本発明の免疫原性組成物は、宿主(例えば、ヒト)に対する投与前に、インビトロ動物モデルおよびインビボ動物モデルにおいて評価され得る。特に有用なマウスモデルとしては、腹腔内の免疫化が行なわれ、次いで腹腔内の負荷または鼻腔内の負荷が行なわれるマウスモデルが挙げられる。
【0252】
本発明の免疫原性組成物の効力はまた、上記免疫原性組成物を用いて、感染の負荷動物モデル(例えば、モルモットまたはマウス)によって、インビボで決定され得る。上記免疫原性組成物は、負荷する株と同じ株に、由来しても、由来しなくてもよい。好ましくは、免疫原性組成物は、上記負荷する株と同じ株に由来することが可能である。
【0253】
インビボ効力モデルとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)ヒトの株を使用するマウス感染モデル;(ii)マウス適合株(例えば、マウスに対して特に毒性を有する株)を使用するマウスモデルであるマウス疾患モデル、および(iii)ヒト単離体を使用する霊長類モデル。
【0254】
上記免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の、一方または両方であり得る。
【0255】
上記免疫応答は、改善した免疫応答であっても増強した免疫応答であっても変化した免疫応答であってもよい。上記免疫応答は、全身性免疫応答および粘膜性免疫応答の、一方または両方であり得る。
【0256】
好ましくは、上記免疫応答は、全身および/または粘膜の増強した応答である。
【0257】
増強した全身性免疫および/または増強した粘膜性免疫は、増強したTH1免疫応答および/または増強したTH2免疫応答に反映される。好ましくは、増強した免疫応答としては、IgG1の産生および/もしくはIgG2aの産生の増加、ならびに/またはIgAの産生の増加が挙げられる。
【0258】
好ましくは、上記粘膜性免疫応答は、TH2免疫応答である。好ましくは、上記粘膜性免疫応答としては、IgAの産生の増加が挙げられる。
【0259】
活性化したTH2細胞は、抗体産生を増強し、それによって細胞外感染に対して応答するものである。活性化したTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10の1つ以上を分泌し得る。TH2免疫応答は、IgG1の産生、IgEの産生、IgAの産生および未来の防御のための記憶B細胞の産生をもたらし得る。
【0260】
TH2免疫応答は、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10)の1種以上における増加、またはIgG1の産生の増加、IgEの産生の増加、IgAの産生の増加および記憶B細胞の産生の増加のうちの、1つ以上を含み得る。好ましくは、上記増強したTH2免疫応答としては、IgG1産生の増加が挙げられる。
【0261】
TH1免疫応答は、CTLの増加、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−2、IFNγ、およびTNFβ)の1種以上における増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2aの産生の増加のうちの、1つ以上を含み得る。好ましくは、上記増強したTH1免疫応答としては、IgG2a産生の増加が挙げられる。
【0262】
本発明の免疫原性組成物(特に、本発明の抗原のうちの1種以上を含有する免疫原性組成物)は、単独で使用されても、他の抗原との組み合わせ(必要に応じて、Th1応答および/またはTh2応答を誘発し得る免疫刺激性因子を伴う)において使用されてもよい。
【0263】
本発明はまた、無機塩類(例えば、アルミニウム塩)と、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドなどの1種以上の免疫刺激性因子とを含有する免疫原性組成物を包含する。最も好ましくは、上記免疫原性組成物は、アルミニウム塩と、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドとの両方を含む。あるいは、上記免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素(例えば、無毒化したADPリボシル化毒素)と、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドとを含む。好ましくは、上記1種以上の免疫刺激性因子としては、アジュバントが挙げられる。上記アジュバントは、TH1アジュバントおよびTH2アジュバント(上でさらに考察される)からなる群のうちの1つ以上から選択され得る。
【0264】
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、感染に対して有効に取り組むために、細胞媒介性免疫応答および粘膜性免疫応答を誘発する。この免疫応答は、好ましくは、長く持続する(例えば、中和)抗体、および感染による1種以上の抗原に対する曝露の際に迅速に応答し得る細胞媒介性免疫を誘導する。例えば、患者の血液サンプル中の中和抗体の証拠は、中和抗体の形成がTBE感染におけるウイルスの排除についての重要な確証であるので、防御に関する代理のパラメータと見なされる(KaiserおよびHolzmann、(2000)、Infection、28;78−84を参照のこと)。
【0265】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0266】
(実施例1:Td−TBE混合ワクチンの生産)
この実施例は、Td−TBE混合ワクチンの製造を開示する。好ましくは、全ての上記抗原を、少なくとも30分間、別々に水酸化アルミニウムに吸着させる。
【0267】
破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドを、当該分野において周知の方法によって、入手し、そして精製する。簡単にいうと、一般的な半合成媒体を、前培養として発酵槽中に1回〜2回継代したClostridium tetani(Harvard株)によって接種する。その細胞を、6〜7日間培養する。破傷風毒素は、播種した後の最初の3日間で産生される。上記毒素を、細胞の溶解後に、培地中に放つ。培養期間の終わりに、上記毒素を、濾過滅菌により入手し、そしてホルマリンの添加および37℃で3〜4週間のインキュベーションによって無毒化する。トキソイドの濃度を、限外濾過および塩析によって得る。同様に、Corynebacterium diphtheriae(Park & Williams,BW 8株)の培養物を、1回〜2回継代した後に、発酵槽中に接種する。上記細胞を、撹拌条件および強力な曝気条件下において48時間培養する。培養温度は、通常、33℃〜37℃である。ジフテリア毒素は、細胞によって、培養上清中に分泌される。この毒素を、濾過滅菌によって入手し、そして通常、(ホルマリンを添加せずに)数週間インキュベートする。次いで、ホルマリンを添加し、そしてこの毒素を、37℃でのインキュベーションによって6週間無毒化する。精製および濃縮を、限外濾過および硫酸アンモニウム沈殿によって行なう。
【0268】
あるいは、すぐに使用できる混合ワクチン(例えば、Td−pur(登録商標)(Chiron Behring GmbH & Co KG)またはDT Impfstoff fuer Kinder(Chiron Behring GmbH & Co KG)も、出発材料として使用し得る。簡単にいうと、Td−pur(登録商標)は、1用量あたり20IUの破傷風トキソイド(約20Lfに対応する)、および1用量あたり約2IUのジフテリアトキソイド(約1.5Lfに対応する)を含有する。比較して、DT Impfstoff fuer Kinderは、1用量あたり少なくとも40IUの破傷風トキソイド(約20Lfに対応する)、および1用量あたり少なくとも30IUのジフテリアトキソイド(約20Lfに対応する)を含む。それぞれの場合において、15g/lの濃度の水酸化アルミニウムを、使用する。
【0269】
上記ワクチンを調製するために、破傷風抗原を、750Lf/mlの濃縮物を得るために、水酸化アルミニウムに吸着させる。同様に、上記ジフテリアトキソイドを、300Lf/mlの濃縮物を得るために、吸着させる。最後に、精製した全TBE−ウイルスを、60μg/mlの濃縮物が得られるように、使用する。上記破傷風トキソイド懸濁液および上記ジフテリアトキソイド懸濁液を、最終的な混合ワクチンの濃度と比較して、75倍に濃縮する。上記TBE抗原の濃度は、最終的な混合ワクチンの濃度と比較して、20倍である。
【0270】
水酸化アルミニウムの濃度は、各濃縮物について15g/lである。これらの濃縮物を、処方容器(Hermann Waldner GmbH & Co KG、Wangen、Germany or Pharmatec Deutschland GmbH、Dresden、Germany)に移し、次いで適切な量の水酸化アルミニウム懸濁液(15g/1)を、最終的な混合ワクチンにおいて1mlあたり2.0mgの水酸化アルミニウムの最終濃度が得られるように添加する。次いで、濾過滅菌したショ糖溶液を、50mg/mlの最終濃度が得られるように添加し、そして濾過滅菌したNaCl溶液および注射用水を、マスターバッチを満たすように、上記最終容量に添加する。必要な場合、pH値を、6.8〜7.8に調整し、そしてそのマスターバッチを、30分間撹拌する。次いで、TBE−Tdワクチン部分を、バイアルまたは注射器にボトリングした。数種のさらなる混合ワクチン(とりわけ、Td−TBE−aPの組み合わせ、Td−TBE−IPVの組み合わせおよびTd−TBE−aP−IPVの組み合わせ)を、この方法によって生産し得る。
【0271】
(実施例2:投与の様式および保存の様式)
保存/投与の異なる様式を、上記混合ワクチンの有効性に関する推定上の違いを考慮して、使用し得る。簡単にいうと、以下のアプローチを、使用し得る:
(A)Td抗原およびTBE抗原を、その2つの液体成分がデバイス中で別個に保存され、かつそれらの抗原が注射時において即時的(instantaneously)であるように、2つのチャンバーを備えるワクチン注射器(Becton−Dickinson)または2個のバイアル中に配合する。
【0272】
(B)上記2つの抗原成分のうちの一方(上記Td成分または上記TBE成分のいずれか)を、凍結乾燥器(Hof−Sonderanlagenbau、Lohra、Germany)の使用によって凍結乾燥する一方で、上記他の抗原を、実施例1に記載される方法によって液体形態で得る。その凍結乾燥した成分を、免疫化の前に、液体成分によって再構成する。
【0273】
(C)上記Td抗原および上記TBE抗原を、注射器またはバイアル中で1つの懸濁液としてブレンドし、そしてその混合物を、免疫化の前に、4℃にて7日間保存する。
【0274】
(実施例3:四価Td−TBE混合ワクチンの生産または五価Td−TBE混合ワクチンの生産)
実施例1に記載する通り、全ての成分を、別々に水酸化アルミニウムに吸着させ、次いで混合する。
【0275】
上述の実施例に従うTBE成分とブレンドするために、Td−aPなどの三価成分(無菌体百日咳抗原を伴うTd;例えば、Chiron Vaccines、Chiron S.p.A.、Siena、Italyの一価ワクチンAcelluvaxとして入手可能である)またはTd−IPV(不活化ポリオウイルス;例えば、The Netherland Vaccine Institute、Bilthoven、The Netherlandから入手可能な抗原)を、Tdを使用する代わりに使用して、それぞれ、四価Td−TBE−aPワクチンまたは四価Td−TBE−IPVワクチンを入手し得る。さらに、より広範な組み合わせが、可能である(例えば、Td−TBE−aP−IPVワクチン)。
【0276】
(実施例4:単独か、または免疫刺激性因子との組み合わせにおける、T抗原と、D(d)抗原と、TBE抗原との組み合わせによる免疫化)
以下の実施例は、T抗原と、D(d)抗原と、TBE抗原との種々の組み合わせを用いた、マウスモデルにおける免疫化を示す。上記T抗原、上記D(d)抗原、上記TBE抗原を、本明細書中に記載する通りに、調製し、かつ特徴付ける。
【0277】
CD1マウスを、以下の通り、9個の群に分け、そしてそのCD1マウスを、免疫化する:
【0278】
【表1】

マウスを、2週間の間隔を空けて免疫化する。最後の免疫化の後に2週間、全てのマウスを、適切な株を用いて負荷する。粘膜を介した免疫化(例えば、鼻腔内(in))を使用し、上記動物モデルをまた、粘膜を介する免疫原の防御効果を試験するために、粘膜に負荷する。
【0279】
添付の明細書において言及される全ての刊行物は、参考として本明細書中に援用される。記載された本発明の方法および本発明のシステムの種々の改変およびバリエーションは、当業者にとって明らかであり、本発明の範囲および精神から逸脱しない。本発明は、特定の好ましい実施形態を伴って記載されているが、特許請求される本発明は、不当にこのような特定の実施形態に制限されるべきではないことが、理解されるべきである。実際に、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、分子生物学分野の当業者または関連分野の当業者にとって明らかであり、これらの改変は、本発明によって網羅されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原;
b)ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原;および
c)ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原;
を含有する、混合ワクチン。
【請求項2】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Clostridium tetaniの抗原であり、前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Corynebacterium diphtheriaeの抗原であり、そして前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来の抗原である、請求項1に記載の混合ワクチン。
【請求項3】
前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルスNeudoerfl株由来の抗原またはダニ媒介性脳炎ウイルスK23株由来の抗原である、請求項1または2に記載の混合ワクチン。
【請求項4】
前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質Eである、請求項1〜3に記載の混合ワクチン。
【請求項5】
前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルスの全ウイルスである、請求項1〜3に記載の混合ワクチン。
【請求項6】
前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり約0.1μg〜約5μgの量で存在し、好ましくは1用量あたり0.5μg〜2.5μgの量で存在する、請求項4に記載の混合ワクチン。
【請求項7】
前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり0.01μg〜約10μgの量で存在する、請求項5に記載の混合ワクチン。
【請求項8】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Clostridium tetani Harvard株に由来する、請求項1〜7に記載の混合ワクチン。
【請求項9】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、破傷風トキソイドを含む、請求項1〜8に記載の混合ワクチン。
【請求項10】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり約10IU〜約60IUの力価に対応する量で存在し、好ましくは1用量あたり10IU〜50IUの力価に対応する量で存在し、そしてより好ましくは1用量あたり少なくとも20IUの力価に対応する量で存在する、請求項1〜9に記載の混合ワクチン。
【請求項11】
前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Corynebacterium diphtheriae Massachusetts 8 Park Williams株に由来する、請求項1〜10に記載の混合ワクチン。
【請求項12】
前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ジフテリアトキソイドを含む、請求項1〜11に記載の混合ワクチン。
【請求項13】
前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり約10IU〜約50IUの力価に対応する量で存在し、好ましくは1用量あたり20IU〜40IUの力価に対応する量で存在し、そしてより好ましくは1用量あたり少なくとも30IUの力価に対応する量で存在する、請求項1〜12に記載の混合ワクチン。
【請求項14】
前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり約0.5IU〜約10IUの力価に対応する量で存在し、好ましくは1用量あたり0.75IU〜5IUの力価に対応する量で存在し、そしてより好ましくは1用量あたり少なくとも2IUの力価に対応する量で存在する、請求項1〜12に記載の混合ワクチン。
【請求項15】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり少なくとも20IUの力価に対応する量で存在し、前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり少なくとも2IUの力価に対応する量で存在し、そして前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、1用量あたり0.75IUの量で存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の混合ワクチン。
【請求項16】
前記ワクチンは、アジュバントをさらに含有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の混合ワクチン。
【請求項17】
前記アジュバントは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩である、請求項16に記載の混合ワクチン。
【請求項18】
前記ワクチンは、別の病原性微生物由来の少なくとも1種のさらなる抗原をさらに含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の混合ワクチン。
【請求項19】
前記少なくとも1種のさらなる抗原は、百日咳、ポリオ、A型肝炎、髄膜炎菌性疾患もしくはライム病からなる群より選択される疾患または医学的状態に対する防御を提供し得る、請求項18に記載の混合ワクチン。
【請求項20】
前記少なくとも1種のさらなる抗原は、百日咳に対する防御を提供し得る、請求項19に記載の混合ワクチン。
【請求項21】
破傷風、ジフテリアおよびダニ媒介性脳炎の予防的防御のための混合ワクチンの調製のための、破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原との使用。
【請求項22】
前記抗原は、Clostridium tetaniの抗原、Corynebacterium diphtheriaeの抗原、および前記ダニ媒介性脳炎ウイルスの抗原である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、および混合ワクチンを調製するのに適した試薬を備える、キット。
【請求項24】
前記抗原は、Clostridium tetaniの抗原、Corynebacterium diphtheriaeの抗原、および前記ダニ媒介性脳炎ウイルスの抗原である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記抗原は、別々に保管される、請求項23または24に記載のキット。
【請求項26】
前記抗原は、2個以上の別個のチャンバーを備える注射器中に存在する、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記抗原は、2個以上の別個のバイアル中に存在する、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合ワクチンを調製するための方法であって、
a)破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原と、ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原とを混合する工程;および
b)該混合した抗原を適切なアジュバントに吸着させる工程;
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合ワクチンを調製するための方法であって、
a)破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原、およびダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原を、それぞれ別々に適切なアジュバントに吸着させる工程;ならびに
b)該吸着させた抗原を互いに混合する工程;
を包含する、方法。
【請求項30】
前記破傷風に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Clostridium tetaniの抗原であり、前記ジフテリアに対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、Corynebacterium diphtheriaeの抗原であり、そして前記ダニ媒介性脳炎に対する防御を提供する少なくとも1種の抗原は、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来の抗原である、請求項28または29に記載の方法。

【公表番号】特表2008−515842(P2008−515842A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535108(P2007−535108)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010845
【国際公開番号】WO2006/037658
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507114794)カイロン ベーリング ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】