説明

混合器具

【課題】溶解液と被溶解物の混合時間を短縮することができる混合器具を提供する。
【解決手段】混合器具10は、第1穿刺針42と第2穿刺針44を有する両頭針20を備え、第1穿刺針42には、両頭針20の軸線に対して交差した方向を指向する角度付き開口部66が設けられている。角度付き開口部66が設けられた第1穿刺針42を薬剤容器12に刺通し、且つ、第2穿刺針44を液体容器16に刺通すると、溶解液17が薬剤容器12の内壁面24aに向けて流出する。流出した溶解液17は、薬剤容器12の内壁面24aを流下し、内壁面24aを濡らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1成分と第2成分とを混合するための混合器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療機関等においては、例えば、患者に対し、点滴注射(輸液)を行ったり、癒着防止剤や生体組織接着剤等を投与したりする場合等において、薬剤を液体で希釈又は溶解して薬液を調製し、その薬液をシリンジで吸引して用いる場合がある。この場合、薬剤と液体を混合するために、両頭針を備えた混合器具が用いられる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
一般に、混合器具は、固体又は液体の薬剤が収容され内部が陰圧にされた薬剤容器と、蒸留水等の液体が収容された液体容器と、両側に穿刺針を有する両頭針とを備えている。このような混合器具を使用して薬剤と液体とを混合するには、まず、薬剤容器と液体容器とを両頭針により連通させる。すると、薬剤容器の内部は陰圧となっているので、液体容器内の液体は、薬剤容器側に吸引されて、両頭針を経て、薬剤容器内に流入する。その後、薬剤容器を数回振ることで、薬剤が液体で希釈又は溶解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−153720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の両頭針は、ルーメンが一端から他端まで直線状に延びた直管構造であり、溶解液は両頭針の針管の軸線方向に噴出される。このため、溶解水は被溶解物に接触した後、被溶解物である薬剤を溶かしながら容器(バイアル)の内壁面に到達する。特に、多糖類のような難溶解性の薬剤を溶解する場合、溶解液との接触により、一般的にダマあるいはママコと呼ばれる粘性をもった半溶解物が形成され、溶解液で濡れる前の乾燥した容器の内壁面に強固に付着してしまうものもある。このような状態では、容器内の溶解液及び薬剤を振り混ぜたときの攪拌効率(混合効率)が著しく低下し、完全に溶解させるために長時間振り続ける必要がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、溶解液と被溶解物の混合時間を短縮することができる混合器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1成分と第2成分を混合するための混合器具であって、前記第1成分を収容した第1容器と、前記第2成分を収容した第2容器と、一方側と他方側にそれぞれ穿刺針を有し、一方の前記穿刺針が前記第1容器に刺通され、且つ他方の前記穿刺針が前記第2容器に刺通されたとき、前記第1容器と前記第2容器を連通する両頭針と、を備え、前記一方側と他方側の穿刺針の少なくとも一方の開口部は、前記両頭針の軸線に対して交差した方向を指向する角度付き開口部として構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
また、前記第1成分は、被溶解物である薬剤であり、前記第2成分は、前記薬剤を溶解するための溶解液であり、前記角度付き開口部を有する前記穿刺針が前記第1容器に刺通されたとき、前記角度付き開口部は前記第1容器の内壁面を指向する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の上記の構成によれば、少なくとも一方の穿刺針の開口部が、角度付き開口部として構成されているので、第1容器と第2容器のうち、被溶解物が収容されている側の容器(薬剤容器)に、角度付き開口部が設けられた穿刺針を刺通し、溶解液が収容されている他方の容器(液体容器)に他方の穿刺針を刺通した場合に、溶解液が薬剤容器内の内壁面に向けて流出する。そして、流出した溶解液は、薬剤容器の内壁面を流下し、内壁面を濡らす。このため、その後に、薬剤容器内の被溶解物と溶解液を振り混ぜたときに、薬剤容器の内壁面に付着した溶解液がバリアとなって半溶解物(ダマ、ママコ)の付着が抑えられ、結果として攪拌効率(混合効率)が向上し、溶解(混合)にかかる時間を短縮することができる。
【0010】
前記角度付き開口部は、前記両頭針の軸線に対して略直交する方向を指向するとよい。
【0011】
上記の構成によれば、溶解液は、両頭針の軸線に対して略直交する方向に角度付き開口部から流出するので、より上方側の箇所から薬剤容器の内壁面を濡らすことができる。このため、溶解液で薬剤容器の内壁面を濡らす面積を増やし、これにより、半溶解物の付着量を効果的に抑制することができ、結果として、溶解にかかる時間をより短縮することができる。
【0012】
前記角度付き開口部は、周方向に複数設けられるとよい。
【0013】
上記の構成によれば、溶解液は、穿刺針から放射状に流出するので、薬剤容器の内壁面をより広い範囲で濡らすことができる。このため、溶解液で薬剤容器の内壁面を濡らす面積を増やし、これにより、半溶解物の付着量を効果的に抑制することができ、結果として、溶解にかかる時間をより短縮することができる。
【0014】
前記角度付き開口部を有する前記穿刺針は、中空構造の針管部と、前記針管部の先端に固定された針先部とを有し、前記針管部と前記針先部との間に、複数の前記角度付き開口部が周方向に間隔を置いて形成されるとよい。
【0015】
上記の構成によれば、穿刺針が、別部品として製作された針管部と針先部とで構成されるので、角度付き開口部を簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の混合器具によれば、薬剤容器内の被溶解物と溶解液を振り混ぜたときの攪拌効率(混合効率)が向上し、溶解にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合器具の断面図である。
【図2】図2Aは、図1に示した第1穿刺針の一部省略拡大断面図であり、図2Bは、第1変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図であり、図2Cは、第2変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図であり、図2Dは、第3変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図であり、図2Eは、第4変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図であり、図2Fは、第5変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る混合器具において、両頭針が第1栓体及び第2栓体を貫通し、薬剤容器と液体容器が連通した状態を示す断面図である。
【図4】図4Aは、第6変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略分解断面図であり、図4Bは、第6変形例に係る角度付き開口部が設けられた第1穿刺針の一部省略拡大断面図である。
【図5】図5Aは、図4BにおけるVA−VA線による断面図であり、図5Bは、変形例に係る針先部の横断面である。
【図6】変形例に係る両頭針が設けられたコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る混合器具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、説明の都合上、図1及び図3の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る混合器具10を示す分解断面図である。この混合器具10は、被溶解物である薬剤(第1成分)13と溶解液(第2成分)17とを混合するためのものである。
【0020】
図1に示すように、混合器具10は、薬剤13を収容する薬剤容器(第1容器)12と、薬剤容器12が装着される薬剤側ホルダ14と、溶解液17を収容する液体容器(第2容器)16と、液体容器16が装着される液体側ホルダ18と、薬剤容器12と液体容器16を連通するための両頭針20が設けられたコネクタ22とを備える。
【0021】
薬剤容器12及び液体容器16としては、それぞれ特に限定されないが、例えば、バイアル瓶(バイアル)等を用いることができる。
【0022】
薬剤容器12に収容された被溶解物である薬剤13の形態としては、例えば、固体(錠剤、顆粒剤、スポンジ状等)、粉体(散剤等)が挙げられる。また、生体組織接着材を調剤する場合、薬剤13を例えばトロンビン、あるいはフィブリノーゲンとすることができる。また、癒着防止材を調剤する場合、薬剤13を例えばスクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリン、あるいは炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物とすることができる。薬剤容器12内は、陰圧になっている。液体容器16に収容された溶解液17は、薬剤13を溶解するための、例えば、蒸留水である。
【0023】
図1に示すように、薬剤容器12は、硬質の容器本体24と、容器本体24の口部を気密に封止する弾性材料からなる第1栓体26とを有する。液体容器16は、硬質の容器本体28と、容器本体28の口部を気密に封止する弾性材料からなる第2栓体30とを有する。容器本体24は、軸線方向に外径が略一定の胴部24bと、胴部24bから縮径しながら上方に延出する肩部24cと、肩部24cから上方に延出してくびれた形状を呈する首部24dと、首部24dの上部に設けられ、第1栓体26が装着された口部24eとを有する。
【0024】
容器本体24、28の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種ガラスや、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂等が挙げられる。また、ガラスと樹脂とでは、樹脂がより好ましく、容器本体24、28が樹脂で構成されている場合には、焼却廃棄が可能となり、廃棄の手間が軽減される。なお、容器本体24、28は、内部の視認性を確保するために、光透過性を有する(実質的に透明または半透明である)のが好ましい。ガラス製又は樹脂製の容器本体24、28の内面にシリコーン、フッ素樹脂等のコーティングを施してもよい。
【0025】
第1栓体26及び第2栓体30は、後述する第1穿刺針42及び第2穿刺針44で刺通可能なものであり、その構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0026】
薬剤側ホルダ14は、薬剤容器12を収容する有底筒状の部品である。薬剤側ホルダ14の構成材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ‐(4‐メチルペンテン‐1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂等が挙げられる。
【0027】
薬剤側ホルダ14の一端部には、第1開口14aが形成されており、薬剤容器12は第1開口14aを通して薬剤側ホルダ14に挿入されるようになっている。
【0028】
また、薬剤側ホルダ14の上端部左右には、水平方向外側に突出する突出片32、34が設けられており、この突出片32、34には、それぞれ、上下方向に貫通する穴32a、34aが穿設されている。
【0029】
薬剤側ホルダ14の内部には、薬剤容器12を薬剤側ホルダ14に対して拘束するための拘束部材36が設けられている。拘束部材36は、上端及び下端が開口した筒状であり、拘束部材36の外周に設けられた凸部(図示せず)が、薬剤側ホルダ14の内周に設けられた凹部(図示せず)又は薬剤側ホルダ14の側周壁に設けられた穴部(図示せず)に係合することで、薬剤容器12が薬剤側ホルダ14に対して、所定の位置で固定される。
【0030】
拘束部材36の構成材料としては、前述した薬剤側ホルダ14の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0031】
液体側ホルダ18は、液体容器16を収容する有底筒状の部品である。液体側ホルダ18の側周壁の高さは、図1に示すように液体容器16が液体側ホルダ18の内部に完全に収容されるように設定される。液体側ホルダ18の内周面には、液体容器16を支持するための支持ガイド19が周方向に複数設けられるとともに、液体容器16の挿入深さを規制するための規制突起21が設けられている。
【0032】
液体側ホルダ18の一端部には、第2開口18aが形成されており、液体容器16は第2開口18aを通して液体側ホルダ18に挿入されるようになっている。また液体側ホルダ18の外周部の左右には、下方に向かって延在する一対のロック部38、40が設けられている。ロック部38、40は、後述するロック機構37の一部を構成するものである。
【0033】
一対のロック部38、40は、それぞれ、アーム部38a、40aと、アーム部38a、40aの先端近傍の外面(液体側ホルダ18の側壁に対向する面とは反対側の面)に設けられた第1係合部38b、40bと、第1係合部38b、40bよりもアーム部38a、40aの基端側の内面(液体側ホルダ18の側壁に対向する面)に設けられた第2係合部38c、40cとを有する。アーム部38a、40aの外面には、それぞれ、上下方向に間隔をおいて複数の突起38d、40dが形成されている。
【0034】
アーム部38a、40aは、その一端部(図中上側の部分)が液体側ホルダ18の側壁に支持、固定されている。これにより、アーム部38a、40aは、片持支持されたものとなり、その途中を液体側ホルダ18の側壁に向かって押圧することにより弾性変形することができる。また、アーム部38a、40aは、側面視でクランク状をなし、液体側ホルダ18の側壁との離間距離が先端側に向かって段階的に増大するように形成されている。
【0035】
コネクタ22は、水平方向に延在する仕切り板46と、仕切り板46から下方に延在する下部側壁48と、仕切り板46から上方に延在する上部側壁50と、仕切り壁に対して略直角に設けられた両頭針20とを有する。両頭針20は、仕切り板の略中心部から仕切り板に対して略直角に下方に突出する第1穿刺針42と、仕切り板の略中心部から仕切り板に対して略直角に上方に突出する第2穿刺針44とから構成される。
【0036】
一構成例に係るコネクタ22では、仕切り板46、下部側壁48、上部側壁50、第1穿刺針42及び第2穿刺針44が、一体成形されている。コネクタ22の構成材料としては、前述した薬剤側ホルダ14の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。なお、仕切り板46、下部側壁48、上部側壁50、第1穿刺針42及び第2穿刺針44は、これらの一部又は全部が、別体の部品として製作された後に、接着、溶着等により接合されたものであってもよい。この場合、第1穿刺針42と第2穿刺針44の一方又は両方が金属材料により形成されてもよい。
【0037】
下部側壁48は、第1穿刺針42を囲繞するように形成され、第1穿刺針42の先端(刃先)が下部側壁48よりも下方に突出しないように、下部側壁48の高さ(上下方向寸法)は、第1穿刺針42の高さよりも長く設定されている。
【0038】
上部側壁50は、第2穿刺針44を囲繞するように形成され、薬剤容器12に挿入可能な形状及び大きさに設定されている。第2穿刺針44の先端(刃先)が上部側壁50よりも上方に突出しないように、上部側壁50の高さは、第2穿刺針44の高さよりも長く設定されている。上部側壁50の上端部左右には、水平方向外側に突出する突出片52、54が設けられており、この突出片52、54には、それぞれ、上下方向に貫通する穴52a、54aが穿設されている。
【0039】
コネクタ22は、上部側壁50の外周面をスライド面として、薬剤側ホルダ14の内側に挿入可能である。すなわち、コネクタ22は、薬剤側ホルダ14に対して、両頭針20の長手方向(上下方向)にスライドして嵌合可能であるように構成されている。前述した液体側ホルダ18は、下端部外周面をスライド面として、コネクタ22に挿入可能である。すなわち、液体側ホルダ18は、コネクタ22に対して、両頭針20の長手方向にスライドして嵌合可能であるように構成されている。
【0040】
両頭針20は中空構造であり、その内部には、溶解液17の流路であるルーメン61が形成されている。このルーメン61は、両頭針20の軸線に沿って延在し、その一端側の開口部62が第1穿刺針42の先端部近傍で開口し、他端の開口部63が第2穿刺針44の先端部で開口している。第1穿刺針42の開口部62は、両頭針20の軸線に対して交差した方向を指向する角度付き開口部66として構成されている。この角度付き開口部66は、第1穿刺針42が第1栓体26に刺通された状態で、薬剤容器12の内壁面24a(薬剤13よりも上方の内壁面24a)を指向するように構成されている。
【0041】
図2Aは、第1穿刺針42の一部省略拡大断面図である。図2Aに示すように、第1穿刺針42の角度付き開口部66は、ルーメン61が第1穿刺針42の先端近傍で略直角に屈曲することで、第1穿刺針42の軸線に対して略直角方向を指向するように設けられている。このため、第1穿刺針42を第1栓体26に刺通するとともに第2穿刺針44を第2栓体30に刺通すると、溶解液17が薬剤容器12の内壁面24aに向かって角度付き開口部66から流出する。
【0042】
角度付き開口部66は、周方向に間隔を置いて複数箇所に設けられるのが好ましく、例えば、周方向に間隔を置いて3〜6箇所に設けられるのが好ましく、また、周方向に等間隔に設けられるのが好ましい。このように、角度付き開口部66が周方向に間隔を置いた複数箇所で開口するように構成された場合、両頭針20を薬剤容器12及び液体容器16に刺通した際、溶解液17が薬剤容器12の内壁面24aに向かって角度付き開口部66から放射状に流出する。
【0043】
角度付き開口部66の構成は、図2Aに示した構成例に限られず、例えば、図2B〜図2Fに示すように構成されてもよい。図2Bに示す第1変形例に係る角度付き開口部66aは、ルーメン61が第1穿刺針42aの先端近傍で複数に分岐することで形成され、第1穿刺針42aの軸線に対して第1穿刺針42aの先端寄りに傾斜する方向を指向しており、また、周方向に間隔を置いた複数箇所に設けられている。
【0044】
図2Cに示す第2変形例に係る角度付き開口部66bは、第1穿刺針42bの軸線に対してルーメン61が傾斜することで、第1穿刺針42bの軸線に対して傾斜した方向を指向している。図2Dに示す第3変形例に係る角度付き開口部66cは、ルーメン61が第1穿刺針42cの先端近傍で90度未満の角度で屈曲することで、第1穿刺針42cの軸線に対して傾斜した方向を指向している。
【0045】
図2Eに示す第4変形例に係る角度付き開口部66dは、先端にテーパ状の刃面67を有する第1穿刺針42dに設けられ、ルーメン61が第1穿刺針42dの先端近傍で略直角に屈曲することで、第1穿刺針42dの軸線に対して略直角な方向を指向している。
【0046】
図2Fに示す第5変形例に係る角度付き開口部66eは、先端にテーパ状の刃面68を有する第1穿刺針42eに設けられ、ルーメン61が第1穿刺針42eの先端近傍で90度未満の角度で屈曲することで、第1穿刺針42eの軸線に対して傾斜した方向を指向している。
【0047】
本実施の形態において、前述したロック部38、40、突出片32、34及び突出片52、54により、ロック機構37が構成されている。このロック機構37は、第1穿刺針42が第1栓体26に刺通され且つ第2穿刺針44が第2栓体30に刺通されるように、薬剤側ホルダ14、コネクタ22及び液体側ホルダ18が嵌合したとき、互いに離脱することのないように、その連結を解除可能にロックするものである。
【0048】
また、ロック機構37は、液体側ホルダ18がコネクタ22及び薬剤側ホルダ14と一括して係合する状態(図3参照)と、液体側ホルダ18がコネクタ22と係合しているが薬剤側ホルダ14との係合が解除される状態とを取り得る。
【0049】
なお、ロック機構37の変形例として、ロック部38、40と同様の構成のロック部を薬剤側ホルダ14に設け、該ロック部と係合する、突出片32、34と同様の構成の突出片を液体側ホルダ18に設けてもよい。
【0050】
本実施の形態に係る混合器具10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用及び効果について説明する。
【0051】
図1に示すように、薬剤容器12を薬剤側ホルダ14に収容し、拘束部材36により薬剤容器12を薬剤側ホルダ14に固定するとともに、液体容器16を液体側ホルダ18に装着し、液体容器16を液体側ホルダ18により保持させる。
【0052】
次に、両頭針20が設けられたコネクタ22を、第1穿刺針42を薬剤容器12側に向けた状態にして、薬剤側ホルダ14に挿入するとともに、液体容器16が装着された液体側ホルダ18を、第2栓体30を第2穿刺針44に向けた状態にして、コネクタ22に挿入する。これにより、図3に示すように、混合器具10は、液体側ホルダ18、コネクタ22及び薬剤側ホルダが一括して互いに係合した組立状態となる。
【0053】
またこのとき、薬剤側ホルダ14に設けられた突出片32、34の穴32a、34a及びコネクタ22に設けられた突出片52、54の穴52a、54aにアーム部38a、40aが挿入され、第1係合部38b、40bが、それぞれ、薬剤側ホルダ14の突出片32、34に係合し、第2係合部38c、40cがそれぞれ、コネクタ22の突出片52、54に係合する。このようなロック機構37の作用により、薬剤容器12と液体容器16の相互位置関係が規制され、すなわち、各容器12、16が不本意に移動するのが防止され、よって、薬剤容器12と液体容器16の連通状態が確実に維持される。
【0054】
第1穿刺針42及び第2穿刺針44がそれぞれ第1栓体26及び第2栓体30に刺入して貫通し、第1穿刺針42に設けられた角度付き開口部66が薬剤容器12内に到達し、且つ、第2穿刺針44の先端に設けられた開口部63が液体容器16内に到達すると、薬剤容器12と液体容器16が両頭針20によって連通された状態となる。
【0055】
本実施の形態に係る混合器具10では、薬剤側ホルダ14、コネクタ22及び液体側ホルダ18を互いに嵌合させる際に、これらが互いにスライドすることで軸線方向の相対移動がガイドされるので、第1栓体26及び第2栓体30に対して第1穿刺針42及び第2穿刺針44を、軸線方向に正確且つ簡単に刺通させることができる。
【0056】
薬剤容器12の内部は陰圧となっているので、第1穿刺針42及び第2穿刺針44をそれぞれ第1栓体26及び第2栓体30に刺通すると、液体容器16内の溶解液17は、薬剤容器12側に吸引されて、両頭針20を経て、薬剤容器12内に流入する。このとき、第1穿刺針42には角度付き開口部66が設けられているので、図3に示すように、溶解液17は薬剤容器12内の内壁面24aに向けて流出する。そして、流出した溶解液17は、薬剤容器12内の内壁面24aを流下し、内壁面24aを濡らす。
【0057】
この場合、図3に示した構成例では、両頭針20の軸線に対して略直交する方向を指向するように角度付き開口部66が設けられているので、溶解液17は、両頭針20の軸線に対して略直交する方向に角度付き開口部66から流出する。これにより、薬剤容器12の上方側の箇所から内壁面24aを濡らし、溶解液17で薬剤容器12の内壁面24aを濡らす面積を増やすことができる。
【0058】
ここで、第1穿刺針42が薬剤容器12に刺通された状態で、第1穿刺針42に設けられた角度付き開口部66の位置は、薬剤容器12の肩部24cと胴部24bの境界位置である位置P1よりも薬剤容器12の口部24e寄りに設けられるように設定されるのが好ましく、図3に示すように、薬剤容器12の肩部24cと首部24dの境界位置である位置P2よりも口部24e寄りに設けられるように設定されるのがより好ましい。このような箇所に角度付き開口部66の位置が設定されることにより、薬剤容器12のより上方側の箇所から溶解液17を流出させることができ、結果として、溶解液17で薬剤容器12の内壁面24aを濡らす面積を効果的に増やすことができる。
【0059】
また、図2B、図2C、図2D、図2Fに示した角度付き開口部66a、66b、66c、66eのように両頭針の軸線に対して傾斜する方向を指向する場合、第1穿刺針42が薬剤容器12に刺通された状態で、位置P1よりも口部24e寄りの位置から内壁面24aを濡らすことができるように、角度付き開口部66a、66b、66c、66eの指向方向が設定されることが好ましい。
【0060】
溶解液17が薬剤容器12内に十分に移送されたら、混合器具10をよく振って、薬剤容器12内の薬剤13と溶解液17を、ダマがなくなるまで十分に攪拌・混合させる。これにより、溶解液17により薬剤13が溶解され、薬液が調製される。本実施の形態に係る混合器具10では、薬剤側ホルダ14、コネクタ22及び液体側ホルダ18が、その連結をロック機構37によってロックされ、全体として一体化した混合器具10として取り扱うことができるので、混合器具10を振って薬剤13と溶解液17との混合を促進させる際の作業が容易である。
【0061】
このように薬液を調製したら、液体側ホルダ18に設けられたロック部38、40のアーム部38a、40aを、液体側ホルダ18の内方に向かって押圧する。これにより、アーム部38a、40aの第1係合部38b、40bと薬剤側ホルダ14の突出片32、34との係合が解除され、一方、アーム部38a、40aの第2係合部38c、40cがコネクタ22の突出片52、54と係合したままとなる。
【0062】
そして、この状態のまま、液体側ホルダ18を上方に向かって引っ張る。これにより、液体容器16を収容した液体側ホルダ18をコネクタ22ごと薬剤側ホルダ14から離脱させる(取り出す)ことができる。この場合、2つのアーム部38a、40aの外側面には、それぞれ突起38d、40dが設けられているので、使用者がアーム部38a、40aを側面から液体側ホルダ18の側壁に向かって押したとき、この突起38d、40dが滑り止めとして機能することで、液体側ホルダ18を引き抜きやすい。
【0063】
次いで、コネクタ22が取り外された薬剤側ホルダ14を上下反転させる。その後、薬剤側ホルダ14の左右側面を内方に向かって押すと、拘束部材36と薬剤側ホルダ14との係合が解除される。これにより、薬剤側ホルダ14から薬剤容器12が拘束部材36ごと離脱する(落下する)。そして、薬剤容器12内の調製された薬液は、シリンジ等の吸引デバイスにより吸引され、使用に供される。
【0064】
以上のように、本実施の形態に係る混合器具10によれば、第1穿刺針42の開口部62が、角度付き開口部66として構成されているので、薬剤容器12に角度付き開口部66が設けられた第1穿刺針42を刺通し、液体容器16に他方の穿刺針を刺通した場合に、溶解液17が薬剤容器12の内壁面24aに向けて流出する。そして、流出した溶解液17は、薬剤容器12の内壁面24aを流下し、内壁面24aを濡らす。このため、その後に、薬剤容器12内の薬剤13と溶解液17を振り混ぜたときに、薬剤容器12の内壁面24aに付着した溶解液17がバリアとなって半溶解物(ダマ、ママコ)の付着が抑えられ、結果として攪拌効率(混合効率)が向上し、溶解(混合)にかかる時間を短縮することができる。また、溶解液17が薬剤13自体に直接噴射されることによる気体の抱き込みを低減させることができ、ダマの形成を少なくすることができる。
【0065】
また、図2A又は図2Eに示した角度付き開口部66を採用した場合には、溶解液17は、両頭針20の軸線に対して略直交する方向に角度付き開口部66から流出するので、より上方側の箇所から薬剤容器12の内壁面24aを濡らすことができる。このため、溶解液17で薬剤容器12の内壁面24aを濡らす面積を増やし、これにより、半溶解物の付着量を効果的に抑制することができ、結果として、溶解にかかる時間をより短縮することができる。
【0066】
さらに、図2A、図2Bに示した角度付き開口部66を採用した場合には、溶解液17は、第1穿刺針42から放射状に流出するので、より広い範囲の内壁面24aを濡らすことができる。このため、溶解液17で薬剤容器12の内壁面24aを濡らす面積を増やし、これにより、半溶解物の付着量を効果的に抑制することができ、結果として、溶解にかかる時間をより短縮することができる。
【0067】
上記の混合器具10において、第1穿刺針42に変えて、図4A及び図4Bに示す第1穿刺針42fを採用してもよい。図4Aは、第6変形例に係る角度付き開口部66fが設けられた第1穿刺針42fの一部省略分解断面図であり、図4Bは、第1穿刺針42fの一部省略拡大断面図である。
【0068】
第1穿刺針42fは、中空構造の針管部70と、針管部70の先端に固定された針先部72とを有し、針管部70と針先部72との間に、複数の角度付き開口部66fが周方向に間隔を置いて形成される。
【0069】
針管部70の先端内部には、針先部72が嵌入する拡径部74が形成されている。この拡径部74の内径は、ルーメン61の内径よりも大きく設定されており、このような内径の差により針管部70の内部に肩部76が形成されている。針管部70の構成材料としては、例えば、上述したコネクタ22の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0070】
針先部72は、先端が鋭角に形成された針先体78と、針先体78の基端側に一体的に設けられ、針管部70の拡径部74と嵌合する流路形成部80とからなる。針先部72は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅系合金等の金属材料で構成することができる。図示例の針先体78は、円錐状であるが、平面且つテーパ状の刃面を有した形状に形成されてもよい。流路形成部80の外径は、針先体78の基端部の外径よりも小さい。
【0071】
流路形成部80の基端部が針管部70に形成された肩部76に当接することで、針先部72が針管部70に対して軸線方向の位置決めがなされている。流路形成部80の軸線方向の長さL1は、拡径部74の軸線方向の長さL2よりも長く形成されており、針管部70の先端と針先体78との間に形成された隙間により角度付き開口部66fが構成されている。
【0072】
図5Aは、図4BにおけるVA−VA線による断面図である。図5Aに示すように、流路形成部80材は、中心に位置するボス部81と、ボス部81から放射状に延出する複数(図示例では、4つ)のリブ82とにより構成されており、図示例では十字架状に構成されている。流路形成部80と針管部70の拡径部74とにより、ルーメン61と角度付き開口部66fとを連通する複数の流路84が周方向に間隔を置いて形成されている。
【0073】
なお、リブ82の個数は、4つに限られず、3以下又は5以上であってもよい。リブ82は、周方向に等間隔に設けられるのがよい。流路84の個数は、3〜6個程度であるのがよい。図5Aに示した流路形成部80の構成に限られず、例えば、図5Bに示す流路形成部80aのように、周方向に間隔を置いて形成された複数の溝86を設け、溝86と拡径部74とにより周方向に分割された流路84aを形成してもよい。
【0074】
上記のように構成された第1穿刺針42fは、別部品として製作された針管部70と針先部72とで構成されるので、角度付き開口部66fを簡単に形成することができる。また、例えば、針管部70を成型が容易な樹脂材料で構成する一方、針先部72を金属材料で構成することが可能である。このように針先部72を金属材料で構成した場合、穿刺能力高めることができ、これにより薬剤容器12の栓体(ゴム栓)に対する刺通抵抗を小さくできるので、穿刺針を刺通する作業がしやすくなる。
【0075】
本発明では、図6に示す変形例に係る両頭針90を採用してもよい。図6は、変形例に係る両頭針90が設けられたコネクタ88の断面図である。このコネクタ88は、上下対称形状であり、その中心に第1穿刺針92と第2穿刺針94を有する両頭針90が設けられており、薬剤側ホルダ14又は液体側ホルダ18(図1参照)と嵌合する側が規定されていない。このため、第1穿刺針92及び第2穿刺針94は、薬剤容器12と液体容器16のいずれに対しても穿刺が可能なように構成されている。
【0076】
第1穿刺針92と第2穿刺針94には、それぞれ、両頭針90の軸線に対して交差した方向を指向する角度付き開口部95が設けられている。図示例の角度付き開口部95は、図2Aに示した角度付き開口部66と同様に構成されているが、図2B〜図2Fに示した変形例に係る角度付き開口部66a〜66eと同様に構成されてもよい。
【0077】
上記のように構成された変形例に係る両頭針90によれば、薬剤容器に穿刺する穿刺針を意識して選択する必要がない。すなわち、薬剤容器と液体容器のいずれに対しても穿刺が可能な両頭針において、両頭針の一方側にのみ角度付き開口部が設けられた場合には、角度付き開口部が設けられた穿刺針を薬剤容器に穿刺することに注意を払う必要がある。これに対し、上記の構成によれば、第1穿刺針92と第2穿刺針94の両方に角度付き開口部95が設けられるので、両頭針90の向きに関わらず角度付き開口部95を薬剤容器12に穿刺することができる。
【0078】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
10…混合器具 12…薬剤容器
13…薬剤 16…液体容器
17…溶解液 20、90…両頭針
24a…内壁面 42、42a〜42f、92…第1穿刺針
44、94…第2穿刺針 62、63…開口部
66、66a〜66f、95…角度付き開口部
70…針管部 72…針先部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分と第2成分を混合するための混合器具であって、
前記第1成分を収容した第1容器と、
前記第2成分を収容した第2容器と、
一方側と他方側にそれぞれ穿刺針を有し、一方の前記穿刺針が前記第1容器に刺通され、且つ他方の前記穿刺針が前記第2容器に刺通されたとき、前記第1容器と前記第2容器を連通する両頭針と、を備え、
前記一方側と他方側の穿刺針の少なくとも一方の開口部は、前記両頭針の軸線に対して交差した方向を指向する角度付き開口部として構成されている、
ことを特徴とする混合器具。
【請求項2】
請求項1記載の混合器具において、
前記第1成分は、被溶解物である薬剤であり、
前記第2成分は、前記薬剤を溶解するための溶解液であり、
前記角度付き開口部を有する前記穿刺針が前記第1容器に刺通されたとき、前記角度付き開口部は前記第1容器の内壁面を指向する、
ことを特徴とする混合器具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の混合器具において、
前記角度付き開口部は、前記両頭針の軸線に対して略直交する方向を指向する、
ことを特徴とする混合器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合器具において、
前記角度付き開口部は、周方向に複数設けられる、
ことを特徴とする混合器具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合器具において、
前記角度付き開口部を有する前記穿刺針は、中空構造の針管部と、前記針管部の先端に固定された針先部とを有し、
前記針管部と前記針先部との間に、複数の前記角度付き開口部が周方向に間隔を置いて形成される、
ことを特徴とする混合器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167230(P2011−167230A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31191(P2010−31191)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】