説明

混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置

【課題】被処理物が処理される際に発生する油煙分や固形物を再利用することにより、環境汚染を防止し、省エネルギー効果を高め、安全に使用することが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供する。
【解決手段】外熱式ロータリーキルン炉18を用いて混合物および混合廃棄物を過熱水蒸気により加熱処理し、その際に生成された固形物と油煙分を分離する手段23と、前記油煙分を冷却し水分と油分に分離する手段27と、固形物を回収し再利用する手段25と、水分を蒸気ボイラ6の供給水の一部として使用する手段と、油分を燃焼させることにより発生した熱量を熱分解炉22の加熱用熱源の一部として使用する手段と、前記熱分解炉22の加熱部より発生する排気ガスを過熱水蒸気発生装置1の加熱熱源の一部として使用する手段と過熱水蒸気発生装置1より発生する排気ガスを熱分解炉22の加熱用熱源の一部として使用する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車産業および各種金属素材産業や金型加工産業等における、金属切削加工時に発生する、金属切粉と切削油等の混合物および混合廃棄物から前記金属切粉と切削油等を分離し、再利用したり、あるいは、例えば、金属、非鉄金属、ガラス、セラミックス、樹脂、プラスチックなどを含む各種産業廃棄物を処理し、再利用したりするものであって、近年要求がさらに高まっている、省エネルギーで、環境にやさしい混合物および混合廃棄物の処理およびリサイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような処理装置の具体例が、例えば特開平09−241734号公報に開示されている。その装置は、図2に示すように、蒸気ボイラー6、過熱水蒸気発生装置1、熱処理炉2で構成され、熱処理炉2の被処理物挿入口10に任意に配設されている予熱装置4で、被処理物3を、事前にプレヒーティングすることによって、脱脂効果を向上させる構造となっている。
【0003】
また、その主な動作概要は、熱処理炉2に被処理物3を送り込み、蒸気ボイラー6により発生する水蒸気を連設する過熱水蒸気発生装置1に送り込み、バーナーなどの加熱熱源7によってさらに加熱して発生した過熱水蒸気を蒸気誘導管14で熱処理炉2に誘導し、該熱処理炉2の中の過熱水蒸気雰囲気のなかで、最適圧力(1.0〜5.0kg/cm2)、と最適温度(200℃〜600℃)により、ほぼ10分〜45分の間、被処理物3に蒸気噴射することによって、被処理物3の脱脂、焼鈍、焼き戻し、防錆を行うものである。
【0004】
また、熱処理炉2の内部には、被処理物3を回転移動させるスパイラル状の回転棒12が配設され、その回転スピードを調節することによって、被処理物3がスパイラル状の回転棒12の上で、過熱水蒸気の噴射の圧力が加わり、任意に、被処理物3が位置移動することから、被処理物3の脱脂、焼鈍、焼き戻し、防錆処理などが、行われるようになっている。
【0005】
さらに、熱処理炉2の内部の上部、下部、あるいは側面に過熱水蒸気の蒸気噴出口13が配設され、かつ、熱処理炉2の下部に過熱水蒸気の蒸気排出口9を配設することによって、熱処理炉2の上部に集中している過熱水蒸気を熱処理炉2の下部に自動的に移動させて脱脂加工、焼鈍、焼き戻し、防錆処理などを効率化させている。
【0006】
また、熱処理炉2から排出される過熱水蒸気を、予熱装置4に還熱パイプ8によって連携して配管することによって、排気熱を再利用し、省エネルギー効果を得つつ被処理物3の予熱ができるようにしている。さらに、下部の過熱水蒸気の排出口9から排出する過熱水蒸気を過熱水蒸気発生装置1に排気誘導管5によって、連携して配管することによって、排気熱を再利用し、省エネルギー効果をさらに向上させようとするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来装置においては、熱処理炉2によって被処理物3が加熱処理される際に発生する油煙分と過熱水蒸気の混合排気ガスは、排気誘導管5によって過熱水蒸気発生装置1に送られ、過熱水蒸気発生装置1の過熱熱源として熱エネルギーの再利用はされるが、油煙分と過熱水蒸気の混合排気ガスは、全て大気中へ排出される構造となっているため、地球温暖化等の環境汚染を生じやすいという問題がある。
【0008】
また、前記再利用される混合排気ガスには、比熱の大きい水蒸気が含まれているため、過熱水蒸気発生装置1内で再加熱する際に、改めて大きな熱エネルギーを必要とし、省エネルギーという観点から考えてもそれほど大きな効果があるとはいえない。
【0009】
さらに、前記熱処理炉2は、外気と遮断されていない開放型であり、外気中の酸素と接触可能なため、例えば被処理物3が、引火性や爆発性のある場合、過大な危険を伴う恐れがあるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、被処理物3が処理される際に発生する油煙分や固形物を再利用することにより、環境汚染を防止し、また、前記油煙分や各部から排出される排気ガスを、本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することにより、省エネルギー効果を高め、さらに、前記熱処理炉2を外気と遮断された密閉型とすることにより、被処理物3が、引火性や爆発性のある場合でも、安全に使用することが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置は、上記の目的を達成するために、請求項1は、蒸気ボイラー6と加熱熱源7を有する過熱水蒸気発生装置1と、前記過熱水蒸気発生装置1から供給された過熱水蒸気により混合物および混合廃棄物11を加熱処理する熱分解炉2と、前記熱分解炉2により生成された固形物15と油煙分を分離する手段と、前記油煙分を冷却し水分と油分に分離する手段と、前記分離された固形物15を回収し再利用する手段と、前記分離された水分を前記蒸気ボイラー6の供給水の一部として使用する手段と、前記分離された油分を燃焼させることにより発生した熱量を前記熱分解炉の加熱用熱源16の一部として使用する手段と、前記熱分解炉2の加熱部より発生する排気ガスを前記過熱水蒸気発生装置1の加熱熱源7の一部として使用する手段と前記過熱水蒸気発生装置1より発生する排気ガスを前記熱分解炉の加熱用熱源16の一部として使用する手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また請求項2は、請求項1において、前記熱分解炉2を加熱ジャケット17を有しかつ外気と遮断された外熱式ロータリーキルン炉で構成したことを特徴としている。
【0013】
また請求項3は、請求項1または請求項2において、前記分離された油分を乳化させる手段39を備えたことを特徴としている。
【0014】
また請求項4は、請求項1または請求項2または請求項3において、前記混合物および混合廃棄物11の主な構成成分が、鉄またはその合金、銅またはその合金、アルミニュウムまたはその合金、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含むことを特徴としている。
【0015】
また請求項6は、請求項1または請求項2または請求項3において、前記混合物および混合廃棄物の主な構成成分が、金属類、木類、ゴム類、プラスチック類、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
上記構成においては、被処理物3が処理される際に発生する油煙分や固形物を再利用することにより、環境汚染を防止し、また、前記油煙分や各部から排出される排気ガスを、本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することにより、省エネルギー効果を高め、さらに、前記熱処理炉2を外気と遮断された密閉型とすることにより、発生ガスおよび油煙が、引火性や爆発性のある場合でも、安全に使用することが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の構成について説明する、図1に示すように、本発明では、熱処理炉2として外熱式のロータリーキルン炉18を採用している。ロータリーキルン炉18は、被処理物挿入口10と螺旋状の送り羽の付いた供給フィーダ20と過熱水蒸気導入口21を有した入り側フード19と、横置きされた回転可能な筒状のキルン本体22と、前記キルン本体22を外部から過熱可能とする火炎バーナー等の燃焼手段16を有した過熱ジャケット17と、油煙分排出口24と固形物収納室25を有した出側フード23を備えている。
【0018】
前記ロータリーキルン炉18は、被処理物挿入口10から投入された混合物および混合廃棄物11が、図示されないモーターなどで回転駆動される供給フィーダ20により順次キルン本体22の内部へ送られ、やはり図示されない他のモーターなどでキルン本体22が回転駆動されることにより出側フード23の方向へ移動し、この際に、前記過熱水蒸気導入口21から流入する過熱水蒸気と前記過熱ジャケット17からのキルン本体22内への放射熱により混合物および混合廃棄物11の熱処理を行う構造である。
【0019】
なお、前記ロータリーキルン炉18は、キルン本体22と、入り側フード19および出側フード23が当接する部位が、シールゴムなどを用いたシール構造をしており、キルン本体22が回転稼動中であっても、外気がキルン本体22の内部へ流入しないように配慮された密閉型として構成されている。このような構造とすることにより、外気中の酸素のキルン本体22内部への流入を遮断することができ、例えば発生ガスおよび油煙が、引火性や爆発性のある場合でも、安全に熱処理を行うことが可能となる。
【0020】
また、前記ロータリーキルン炉18には、蒸気ボイラー6と火炎バーナー等の加熱熱源7を有した過熱水蒸気発生装置1が併設されており、前記過熱水蒸気発生装置1で発生した過熱水蒸気をロータリーキルン炉18内に導入するために、過熱水蒸気発生装置1とロータリーキルン炉18の過熱水蒸気導入口21が、配管30を用いて接続されている。
【0021】
前記過熱水蒸気発生装置1は、その内部に蛇管状に構成された蒸気パイプ33が設置されており、前記蒸気ボイラー6により発生した約100℃〜150℃の温度を有する水蒸気が前記蒸気パイプ33を通過する際に、火炎バーナー等の加熱熱源7により蒸気パイプ33をさらに加熱し、その温度が約200℃〜600℃の過熱水蒸気を発生させる構造をしている。
【0022】
また、図1に示すように、過熱水蒸気発生装置1と加熱ジャケット17の排気ガス導入口26を配管31を用いて接続することにより、過熱水蒸気発生装置1で発生した排気ガスを加熱ジャケット17内に導入し、熱源として再利用している。さらに、前記加熱ジャケット17で発生した排気ガスを前記過熱水蒸気発生装置1内に導入し、熱源として再利用するために、加熱ジャケット17の排気ガス排出口9と過熱水蒸気発生装置1が配管32を用いて接続されている。
【0023】
このような構造とすることにより、本発明は、従来捨てられていた排気ガス等の余剰熱源を、本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することが可能となり、省エネルギー化を図ることが可能となる。また、本発明は、前記従来捨てられていた排気ガス等の余剰熱源が、大気中に排出される量を極力少なくすることが可能となり、地球温暖化等の環境汚染を防止することが可能となる。
【0024】
さらに、前記ロータリーキルン炉18は、加熱処理の際に発生する油煙分を冷却し液化させるための、例えばラジエーター構造等を有する油煙分冷却手段27が配管33を用いて接続され、また、前記油煙分冷却手段27には、前記液化した油煙分を水分と油分に分離させるための水分・油分分離手段28が配管34を用いて接続されている。
【0025】
またさらに、前記水分・油分分離手段28には、分離された油分を燃焼させ前記加熱ジャケット17の加熱用熱源として再利用するために、火炎バーナー等の燃焼手段16が配管35を用いて接続され、かつ分離された水分を蒸気ボイラー6の供給水として再利用するために、給水タンク29が配管36を用いて接続され、前記給水タンク29は前記蒸気ボイラー6に供給水を供給するために、配管37を用いて接続された構造としてある。
【0026】
なお、既述された各配管30、31、32、33、34、35、36、37は、その規模、材質、形状等が、それぞれを通過する液体や気体の形態に応じて適宜選定され、また、従来から行われているように、図示されない流体ポンプや送風機並びにダンパー等を適宜配設することにより、流量、流速等を調節し、本発明が円滑に機能するように配慮された構造とすると良い。
【0027】
このような構造とすることにより、本発明は、廃棄されていた油煙分を回収しさらに水分と油分に分離し、前記水分は本発明の蒸気ボイラー6の供給水として再利用し、前記油分はさらに燃焼させることにより本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することが可能となり、省エネルギー、省資源およびリサイクル化を図ることが可能となる。また、当然のことながら、省エネルギーで、省資源およびリサイクル可能であるという理由により、本発明を稼動させるためのランニングコストを低減させるという利点が生じることは明白である。
【0028】
次に、本発明の稼動状態および使用方法について説明する。まず図1において、蒸気ボイラー6は、給水タンク29から供給される供給水を、その温度が約100℃〜150℃の水蒸気として過熱水蒸気発生装置1に送り出す。前記過熱水蒸気発生装置1の内部には螺旋状に構成された蒸気パイプ33が設置されており、前記蒸気ボイラー6から送られてきた水蒸気は、前記蒸気パイプ33を通過する際に、火炎バーナー等で構成された加熱熱源7により、さらに加熱され、その結果、その温度が約200℃〜600℃の過熱水蒸気として成生され、配管30を通じてロータリーキルン炉18の内部に導入される。
【0029】
前記ロータリーキルン炉18に設置されている加熱ジャケット17内部には、火炎バーナー等で構成された燃焼手段16によって発生した、熱ガスが加熱ガス導入口26から高温の状態に保たれている。
【0030】
ここで、前記加熱ジャケット17には排気ガス排出口9が設けられており、ここから排気ガスとして排出されるが、まだ十分な余剰熱エネルギーを有している。
【0031】
従来技術では、この排気ガスを大気中に無為に放出していたが、本発明では、前記排出口9と過熱水蒸気発生装置1を配管32を用いて接続し、前記加熱ジャケット17からの排気ガスを過熱水蒸気発生装置1に還流させることにより、加熱用熱源として再利用している。
【0032】
即ち、前記還流させられた排気ガスは、既述の如く十分な余剰熱エネルギーを有しているため、過熱水蒸気発生装置1に併設されている加熱熱源7の加熱能力を補助することになり、従って加熱用燃料を節約し、かつ、大気中に排出される排気ガスの量を極力少なくすることが可能となる。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0033】
またここで、前記過熱水蒸気発生装置1の内部には、加熱ジャケット17から還流した排気ガスと加熱熱源7によって発生した、高熱ガスの放射熱および伝導熱により、前記蒸気パイプ33内部に過熱水蒸気を発生させている。
【0034】
前記高熱ガスは、前記蒸気パイプ33を加熱した後、過熱水蒸気発生装置1から排気ガスとして排出されるが、この時点での前記排気ガスの温度は、低下しているが、まだ十分な余剰熱エネルギーを有している。
【0035】
従来技術では、この排気ガスを大気中に無為に放出していたが、本発明では過熱水蒸気発生装置1と加熱ジャケット17の加熱ガス導入口26を、配管31を用いて接続し、前記過熱水蒸気発生装置1からの排気ガスを加熱ジャケット17内に還流させることにより、前記加熱ジャケット17の加熱用熱源として再利用している。
【0036】
即ち、加熱ジャケット17内に還流させられた前記過熱水蒸気発生装置1からの排気ガスは、既述の如く十分な余剰熱エネルギーを有しているため、加熱ジャケット17に併設されている燃焼手段16の加熱能力を補助することになり、従って加熱用燃料を節約し、かつ、大気中に排出される排気ガスの量を極力少なくすることが可能となる。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0037】
次に、被処理物挿入口10から混合物および混合廃棄物11が投入されると、供給フィーダ20によりキルン本体22の内部へと順次送られる。キルン本体22の内部は、既述の如く、既に高温の状態に保たれているので、混合物および混合廃棄物11がキルン本体22に投入されても、キルン本体22内の温度低下は僅少に抑えられる。また、キルン本体22は回転駆動されているので、混合物および混合廃棄物11は出側フード23の方向へ順次移動して行くが、この際に、前記混合物および混合廃棄物11は、過熱水蒸気導入口21から流入する過熱水蒸気の雰囲気にさらされ、熱処理が行われる。
【0038】
ところで、過熱水蒸気の保有する熱量は、500℃の場合約229kcal/mであり、従来より使用されている、熱風の保有する約57kcal/mと比較して、約4倍の熱量を保有している。従って、その高い保有顕熱により、処理時間の大幅な短縮が可能となる。
【0039】
また、過熱水蒸気を使用した場合、洗剤や溶剤を使用せずに、被処理物の洗浄や脱脂が可能となるため、前記洗剤や溶剤を管理し、取り扱うための設備が不要となり、設備費の低減が可能となる。またさらに、過熱水蒸気雰囲気は、無酸素雰囲気であるため、被処理物3を酸化させることが無く、また、発火あるいは引火させる恐れもないという特徴を持つ。
【0040】
前記のような特徴を持つ過熱水蒸気雰囲気に、前記混合物および混合廃棄物11がさらされると、前記混合物および混合廃棄物11を構成している固形分15から、水分と油分が、気体である油煙分となって分離する。
【0041】
ここで、前記固形分が金属である場合は、酸化されること無く生成されるので、通常はそのままリサイクル使用が可能であるが、必要に応じて分別や再溶融等の2次加工を行うと良い。また、前記固形分がプラスチックなどの有機化合物である場合は、燃焼すること無く、過熱水蒸気によって熱分解、分離され、油煙分として、出側フード23の上方に設置された油煙分排出口24から排出され、配管33を通して油煙分冷却手段27内に導入される。前記油煙分冷却手段27は、従来より使用されているラジエーター構造等を用いて構成されており、前記導入された油煙分は、前記油煙分冷却手段27によって、ほぼ常温にまで冷却され、液状となる。
【0042】
以上のようにして、過熱水蒸気によって処理された固形分15は、出側フード23の方向へ順次移動して行き、キルン本体22の終端部に達すると、出側フード23の下方に設置された固形物収納室25に落下回収される。固形物収納室25には、図示されない密閉蓋等を有した取り出し口等が適宜設けられており、前記固形分15をリサイクルし易いように配慮されている。
【0043】
前記液状となった油煙分は、配管34を通して水分・油分分離手段28内に導入される。前記水分・油分分離手段28は、従来より使用されている比重差分離法等を用いて構成されており、前記液状となった油煙分は、水分と油分に分離される。
【0044】
ここで、好ましくは、前記分離された水分の純度が低いと判断される場合には、従来より使用されている、浄水器等を内設し、水分の純度を高めると良い。またここで、好ましくは、前記分離された油分に異物が含まれ易いと判断される場合には、従来より使用されているフィルター装置等を内設し、油分の純度を高めると良い。
【0045】
さらに、前記分離された水分は、配管36を通して給水タンク29内に導入される。給水タンク29は、配管37によって、蒸気ボイラー6と接続されており、過熱水蒸気の源となる供給水を供給している。このような構造とすることにより、前記分離された水分を供給水の一部として再利用することが可能となる。また、配管36と油分乳化手段39を配管40で接続することにより、さらに水資源の節約を図ることができる。
【0046】
ここで、例えば、本発明による混合物および混合廃棄物11の処理能力を15t/時間と設定すると、必要な供給水の必要量は約200L/時間であるが、この内、前記再利用される水分の量は約100L/時間であるので、供給水の使用量を従来の半分程度にすることが可能である。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0047】
また、前記分離された油分は、配管35を通して燃焼手段16内に導入される。前記燃焼手段16は従来より使用されている、火炎バーナー等で構成されており、加熱ジャケット17内に加熱ガス導入口26を通して被処理物の最適温度に制御している。このような構造とすることにより、前記分離された油分を前記燃焼手段16の燃料の一部として再利用することが可能となり、燃料資源の節約を図ることができる。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0048】
ところで、前記分離された油分の純度が十分に高くない場合、そのまま前記燃焼手段16の燃料の一部として使用すると不完全燃焼を起こし、前記過熱ジャケット17内に十分な高温ガスを供給することができなくなる可能性があるが、この場合は、図3に示すように、前記水分・油分分離手段28と前記燃焼手段16との間に、配管38および油分乳化手段39を追加設置すると良い。
【0049】
ここで、前記油分乳化手段39は、いわゆる、エマルジョン燃料を生成する装置である。即ち、前記分離された油分に水を3%〜30%混入させることにより乳化させ、微細な水粒子を含むW/0型(Water in oil)エマルジョン燃料を生成するものである。
【0050】
前記エマルジョン燃料は、これを前記燃焼手段16内で燃焼させる際に、バーナーより噴霧された油滴中の水粒子が燃焼室内温度により、急速に気化し、この気化した水蒸気が外側の油を拡散させ粉砕する。この現象を「微爆」といい、周囲の油滴をさらに微粒化して、燃焼用空気との混合効率を向上させることによって、燃焼状態をより完全にし、燃焼を促進させることができる。
【0051】
従来の燃焼方法では、油分を完全燃焼させるためには、理論空気量の1.2〜1.5倍の過剰空気を必要とするが、このため、排気による熱ロスは、油分の持っているエネルギーの15%〜40%に達する。
【0052】
しかしながら、本発明のように、油分をエマルジョン化して燃焼させることにより、非常に少ない空気で完全燃焼させることが可能となる。これは前述の如く、油中に分散している水の微粒子が、燃焼室内で瞬時に爆発気化し、油粒子をさらに微細に分割し、飛散させ、酸素との接触を助けるためである。そのため過剰空気を従来燃焼の場合の1/2以下に抑えることができる。これにより、燃焼効率を向上させ、NOx(窒素酸化物)を抑制し、煤塵を低減させるという効果を生じる。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0053】
次に、本発明によって処理される混合物および混合廃棄物11について説明する。前記混合物および混合廃棄物11として最適なものは、例えば、自動車産業および各種金属素材産業や金型加工産業等における、金属切削加工時に発生する、金属切粉と切削油等の混合物および混合廃棄物である。これらの混合物および混合廃棄物は、主な構成成分として、鉄またはその合金、銅またはその合金、アルミニュウムまたはその合金、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含む場合が通常である。本発明は、既に説明したように、これらの混合物および混合廃棄物を処理し、リサイクルする装置として最適であることは明白である。
【0054】
また、本発明によって処理される前記混合物および混合廃棄物11として最適なものは、例えば、金属、非鉄金属、ガラス、セラミックス、樹脂、プラスチックなどを含む各種産業廃棄物等である。これらの混合物および混合廃棄物は、主な構成成分として、金属類、木類、ゴム類、プラスチック類、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含む場合が通常である。本発明は、既に説明したように、これらの混合物および混合廃棄物を処理し、リサイクルする装置として最適であることは明白である。
【0055】
以上のことより明らかなように、本発明は、被処理物3が処理される際に発生する油煙分や固形物を再利用することにより、環境汚染を防止し、また、前記油煙分や各部から排出される排気ガスを、本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することにより、省エネルギー効果を高めることが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【0056】
即ち、本発明は、従来捨てられていた、加熱ジャケット17から排出される排気ガスを過熱水蒸気発生装置1に還流させることにより、加熱用熱源として再利用し、さらに、前記過熱水蒸気発生装置1からの排気ガスを加熱ジャケット17内に還流させることにより、前記加熱ジャケット17の加熱用熱源として再利用しているので、これら排気ガス等の余剰熱源を、本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することが可能となり、省エネルギー化を図ることが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【0057】
また本発明は、前記従来捨てられていた排気ガス等の余剰熱源が、大気中に排出される量を極力少なくすることが可能となり、地球温暖化等の環境汚染を防止することが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【0058】
また本発明は、廃棄されていた油煙分を回収しさらに水分と油分に分離し、前記水分は本発明の蒸気ボイラー6の供給水および回収油の乳化用水分として再利用し、前記油分はさらに燃焼させることにより本発明を稼動させるためのエネルギー源として極力再利用することが可能となり、省エネルギー化、省資源およびリサイクル化を図ることが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。また、当然のことながら、省エネルギーで、省資源およびリサイクル可能であるという理由により、本発明を稼動させるためのランニングコストを低減させるという利点を生じることは明白であり、これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0059】
また本発明は、過熱水蒸気を使用しているため、洗剤や溶剤を使用せずに、被処理物の洗浄や脱脂が可能となるため、前記洗剤や溶剤を管理し、取り扱うための設備が不要となり、設備費の低減が可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【0060】
またさらに、過熱水蒸気雰囲気は、無酸素雰囲気であるため、被処理物を酸化させることが無く、また、発火あるいは引火させる恐れもないので、本発明は、安全に使用することが可能となる混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を提供することができる。
【0061】
また本発明は、油分乳化手段39を備え、油分をエマルジョン化して燃焼させることにより、非常に少ない空気で完全燃焼させることが可能となるので、燃焼効率を向上させ、NOx(窒素酸化物)を抑制し、煤塵を低減させるという効果を生じる。これは、本発明が、省エネルギー、省資源および環境汚染防止に大きく寄与することを示している。
【0062】
よって本発明は、従来の問題点を解消した混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置として、工業的価値はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例における混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を示す全体面図である。
【図2】従来の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を示す全体面図である。
【図3】本発明の他の実施例における混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置を示す全体面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 過熱水蒸気発生装置
2 熱処理炉
3 被処理物
4 予熱装置
5 排気誘導管5
6 蒸気ボイラー
7 加熱熱源
8 還熱パイプ
9 排出口
10 被処理物挿入口
11 混合物および混合廃棄物
12 スパイラル状の回転棒
13 蒸気噴出口
14 蒸気誘導管
15 固形物
16 燃焼手段
17 加熱ジャケット
18 ロータリーキルン炉
19 入り側フード
20 供給フィーダ
21 過熱水蒸気導入口
22 キルン本体
23 出側フード
24 油煙分排出口
25 固形物収納室
26 加熱ガス導入口
27 油煙分冷却手段
28 水分・油分分離手段
29 給水タンク
30 配管
31 配管
32 配管
33 配管
34 配管
35 配管
36 配管
37 配管
38 配管
39 油分乳化手段
40 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ボイラーと加熱熱源を有する過熱水蒸気発生装置と、前記過熱水蒸気発生装置から供給された最適圧力、最適温度の過熱水蒸気により混合物および混合廃棄物を10分〜45分の間、被処理物に蒸気噴霧し、加熱処理する熱分解炉と、前記熱分解炉により生成された固形物と油煙分を分離する手段と、前記油煙分を冷却し水分と油分に分離する手段と、前記分離された固形物を回収し再利用する手段と、前記分離された水分を前記蒸気ボイラーの供給水の一部として使用する手段と、前記分離された油分を燃焼させることにより発生した熱量を前記熱分解炉の加熱用熱源の一部として使用する手段と、前記熱分解炉の加熱部より発生する排気ガスを前記過熱水蒸気発生装置の加熱熱源の一部として使用する手段と前記過熱水蒸気発生装置より発生する排気ガスを前記熱分解炉の加熱用熱源の一部として使用する手段とを備えたことを特徴とする混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置。
【請求項2】
前記熱分解炉を加熱ジャケットを有しかつ外気と遮断された外熱式ロータリーキルン炉で構成したことを特徴とする請求項1に記載の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置。
【請求項3】
前記分離された油分を乳化させる手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置。
【請求項4】
前記混合物および混合廃棄物の主な構成成分が、鉄またはその合金、銅またはその合金、アルミニュウムまたはその合金、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含むことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置。
【請求項5】
前記混合物および混合廃棄物の主な構成成分が、金属類、木類、ゴム類、プラスチック類、油脂を含む液体または固体、水のいずれかを含むことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の混合物および混合廃棄物の脱脂およびリサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−54815(P2007−54815A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276685(P2005−276685)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000217583)株式会社タナベ (11)
【Fターム(参考)】