説明

混和剤

硫酸アルミニウム、非晶質水酸化アルミニウム、アルカノールアミンおよび有機二塩基酸無水物を含む、スプレーしたコンクリート用促進剤液体組成物。本組成物によって、高く早い圧縮強度の達成ができ、そして広範な種々のセメントタイプに良好な性能を与えるように調製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーすることによるセメント組成物の適用に関し、それに用いる促進剤組成物に関する。
【0002】
アルカリ−フリーの促進剤(AFAs)をスプレーすることによって、伝統的なアルミン酸塩および他の強アルカリ性材料に代えて適用されるべきであるコンクリートなどのセメント組成物における使用は現在では十分に確立された。このような促進剤の主成分は、アルミニウム化合物、一般的に出くわす硫酸アルミニウムおよび非晶質水酸化アルミニウムである。これらのアルミニウム化合物に加えて、種々の他の成分が促進剤として用いられ、これらには、アルカノールアミン、他のアルミニウム塩(シュウ酸塩および硝酸塩など)および種々の有機酸が含まれる。
【0003】
当該分野の重大な問題は、このような組成物のセメントの水和速度がスプレーした後、1〜8時間としばしば遅いことである。極端な場合は、この間全く水和しないかもしれない。このことは、表面の保全(integrity)に重要な圧縮強度の進行が、時々長期間完全に停止されることを意味する。これは危険な状態をもたらす可能性があり、例えば、組成物が破壊されたまたは割れ目のある岩石表面へスプレーする場合、スプレーされた層は表面の保全を確実にし得ない。
【0004】
したがって本発明は、硫酸アルミニウム、非晶質水酸化アルミニウム、アルカノールアミンおよび、マレイン酸、シュウ酸および有機二塩基酸無水物の少なくとも1種を含む、スプレーコンクリート用促進剤液体組成物(liquid accelerator composition)を提供する。
【0005】
さらに本発明は、基材にコンクリートをスプレーする方法であって、コンクリート混合物を形成する工程およびこれを基材にスプレーするためのスプレーノズルに運ぶ工程を含み、そこで前記の促進剤液体組成物がノズルに注入されてなる、前記方法を提供する。
【0006】
硫酸アルミニウムは、AFAsの成分としてよく知られ、任意の硫酸アルミニウムが本発明において用いられうるものとして有用であることが知られている。最も一般的なものの1つは、いわゆる「17%」硫酸アルミニウム、Al(SO.14.3HOであり、そのように言われるのは、その中の酸化アルミニウムAlの比率が17%であるからである。この材料は、主に入手可能性と良好な特性のため好ましいが、他の硫酸アルミニウムもまた用いてもよい。本発明に用いられる水酸化アルミニウムは、AFAsに頻繁に用いられるタイプの非晶質水酸化アルミニウムである。
【0007】
アルカノールアミンは、AFAsの成分として知られる。本発明の目的に好ましい材料は、ジエタノールアミンである。しかしながら、トリエタノールアミンなどの他のアルカノールアミンもまた用いうる。
【0008】
有機二塩基酸無水物はよく知られており、容易に入手可能である原材料である。最もよく知られた(そして最も本発明の目的にかなう)有機二塩基酸無水物は、通常、重合の分野において出くわす無水マレイン酸である。しかしながら、無水コハク酸などの他の無水物もまた用いうる。有機二塩基酸無水物によって、対応するセメントの改善された硬化時間(setting time)(高い早強性(early strength))を提供される。
【0009】
促進剤組成物は、さらにマレイン酸および/またはシュウ酸を含むことが可能である。
【0010】
本発明に有用な酸は、シュウ酸およびマレイン酸である。これらの酸の少なくとも1つの存在によって、最初と最後の両方で吹き付けコンクリートの圧縮強度を高めることが見出された。
【0011】
必須の成分ではないが、とくに好ましい成分は、水溶性マグネシウム塩である。任意のこのような塩が用いられうるが、好ましい塩は、炭酸マグネシウムもしくは硫酸マグネシウムまたはこれらの塩の混合物である。本発明において用いられる硫酸マグネシウムは任意の硫酸マグネシウムでよいが、好ましいマグネシウムは、エプソム塩として知られる水和MgSO.7HOである。この材料の工業的等級は、本発明のために容認できる;医薬等級を用いる必要はない。
【0012】
さらに選択的な有用な成分として、リンおよび酸素含有無機酸、とくにホスホン酸(HPO)またはリン酸(HPO)が挙げられる。異なるリンおよび酸素含有無機酸の混和剤、例えば、リン酸およびホスホン酸の混合物を用いることも可能である。
【0013】
種々の成分の比率は、以下の比率の範囲に合致し、これらの全てが重量部である:
【表1】

【0014】
促進剤組成物は、水溶液にて用いられる。約45〜65重量%の固体の溶液を形成するように溶解し、0.5〜12重量%の促進剤(セメントに対する活性成分)を提供するのに十分な割合でノズルでコンクリートに注入する。
【0015】
本発明の促進剤組成物は多数の利点を与える。最初に、よりよい岩石の支持の達成に必要な早い水和を提供する。良好なスプレーパターンを可能にする。これは、本促進剤を含むスプレーセメント組成物が、知られている促進剤(基盤を打ったときに既に部分的に乾燥し得る)と注入するものと比較して、相対的に流動的のままであり、より急速に硬化するからである。これは重要な実用的な意味をもつ;それは、硬化剤組成物のもとで空気または水を捕捉する傾向が最小化されるか、または全く排除されさえすることを意味し、これは言い換えれば、得られたスプレーした層の保全が良好であることを意味する。したがって他の促進剤を用いられた場合であっても可能なように、濡れた表面にスプレーすることが問題とはならない。加えて、スプレー組成物は、鉄筋および格子を補強しながら、再びよりよい保全をなしながら、より簡単にいきわたる。
【0016】
さらなる利点は、促進剤を任意の与えられたセメントタイプに調製することのできる能力である。異なる現場で、異なる地方の材料から製造されるので、混和剤の特性とふるまいにおいて、世界中のセメントは顕著に異なる。例えば、ヨーロッパセメントによく作用する促進剤は、米国、日本またはオーストラリアセメントによく作用しないかもしれない。本発明は、酸および酸無水物の性質および特性を変化させることにより、任意に与えられたセメントを調製するための促進剤を可能にする。当業者は、任意の与えられた環境において最良に作用することを決定するために必要な実験室規模の実験をなすことができる。
【0017】
最終的に、本発明の促進剤によれば、これまで到達し難い性能のレベルの一貫した達成が可能になる。スプレーコンクリートの標準として認められているものは、オーストリアコンクリート協会(Austrian Concrete Society)(以下、「OeBV」という)のスプレーコンクリートガイドライン(Guidelines for Sprayed Concrete of the Oesterreichisher Betonverein)に含まれる。フレッシュな(24時間以上経過していない)スプレーコンクリートの強度に対するOeBVの重要な要件は、1999年3月版の24頁に見出される。それによると、時間(横座標)に対する圧縮強度(縦座標)の種々のプロットにより規定しており、X軸からの距離の順に、したがって、性能および好ましさの増す順に、得られた曲線はJ、JおよびJと指定される。今まで、AFAが用いられた場合、Jレベルに達することは困難であった。この高められた性能レベルが達成できることは、本発明の促進剤の特徴である。したがって、本発明は、硬化が上記のように定義された促進組成物によって促進された基材上の硬化セメント組成物の層および時間に対して少なくともOeVBガイドラインの曲線Jおよび曲線Jの上部に適合する圧縮強度の発展を提供する。
【0018】
本発明は、ここでさらに、以下のこれに限定されない例を参照して記載する。ここで全ての部は、重量によって示される。
【0019】
例1〜3
次のAFAは、以下にリストした成分を混合することによって調製した。
【表2】

【0020】
これらはセメントに対し7重量%の活性剤濃度で、セメント(450部)、Sieve Line DIN 196-1の砂(1350部)および0.6%(セメントに対する活性剤)の商業的ポリカルボキシレートスーパー流動化剤(GLENIUM(登録商標)51、MBTより)で仕上げられた、水/セメント比0.4の供試モルタルミックスに添加される。
【0021】
モルタルの試験品は、ヨーロッパ基準(European Standard)EN 480-1にしたがって製造し、EN 12390-3にしたがって圧縮強度を試験した。セメントとAFAsとの異なる多数の組合せを、以下のとおり、用いた:
試験品A―ブリティッシュOPC(UK OPC : CEM I 42.5)+例No.1a
試験品B―硫酸塩低減スウェディッシュ耐硫酸塩OPC(SE OPC : CEM I 42.5 SR)+例1a
試験品C―上記のスウェディッシュOPC+比較例1b
【0022】
試験の結果は以下のとおりである:
【表3】

【0023】
1MPaより低い6時間圧縮強度の数値は許容できないとされる。
この試験によって、セメントタイプの変化がどのようにAFAsの性能に影響し得るかについて興味深い例が提供された。試験品AおよびBは共に、例1a(無水マレイン酸)のAFAを利用し、それらは極めて異なった性能を有し、試験品Bは許容でき、試験品Aは許容できない。
【0024】
加えて、マレイン酸ベースの試験品Cは、スウェディッシュOPCと許容できない結果を提供するが、一方、無水マレイン酸ベースの試験品Bは、優れた6時間の結果を提供する。このことは、酸または対応する酸無水物を用いるかによって有意な差になることを示している。
【0025】
これらを前記のOeVB曲線に置くと、
試験品A Jより下(許容できない)
試験品B Jより高く、Jに達する(良好な結果)
試験品C Jの真上(許容できない)
【0026】
【表4】

【0027】
この混合物は、ヨーロッパ標準EN-196標準モルタル(セメント:オーストリアopc CEM I 42.5)に適用した場合、3.3MPaの「8時間圧縮強度」および28.8MPaの「1日圧縮強度」を提供する。
【0028】
【表5】

【0029】
この混合物は、ヨーロッパ標準EN-196標準モルタル(セメント:オーストリアopc CEM I 42.5)に適用した場合、0.3MPaの「8時間圧縮強度」および21.3MPaの「1日圧縮強度」を提供する。
【0030】
「8時間圧縮強度」は、「1日圧縮強度」よりもより重要であると考えられる。
【0031】
例2による組成物は、「オーストリアopc CEM I 42.5」セメントとの関係で陽性の結果(とくに、圧縮強度の8時間値)を提供したが、例3による組成物は、同セメントに非常によい作用ではなかった。
【0032】
いくつかの実験室での実験で、当業者は任意の与えられたセメントタイプに適合し、促進剤を直ちに見出すことができ、望ましい結果を生み出すことができる。これはセメントが一般的に現場で製造され、互いに完全に異なり得るときに不可欠である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸アルミニウム、非晶質水酸化アルミニウム、アルカノールアミンおよび有機二塩基酸無水物を含む、スプレーコンクリート用促進剤液体組成物。
【請求項2】
組成物が、さらにマレイン酸および/またはシュウ酸を含む、請求項1に記載の促進剤液体組成物。
【請求項3】
組成物が、さらに水溶性マグネシウム塩を含む、請求項1または2に記載の促進剤液体組成物。
【請求項4】
マグネシウム塩が、炭酸マグネシウムまたは硫酸マグネシウムである、請求項3に記載の促進剤液体組成物。
【請求項5】
組成物が、さらにリンおよび酸素含有無機酸を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の促進剤液体組成物。
【請求項6】
リンおよび酸素含有無機酸が、リン酸またはホスホン酸である、請求項5に記載の促進剤液体組成物。
【請求項7】
以下の材料および重量割合:
【表1】

を含む、促進剤液体組成物。
【請求項8】
水溶性マグネシウム塩が、炭酸マグネシウムまたは硫酸マグネシウムである、請求項7に記載の促進剤液体組成物。
【請求項9】
リンおよび酸素含有無機酸が、リン酸またはホスホン酸である、請求項7または8に記載の促進剤液体組成物。
【請求項10】
基材にコンクリートをスプレーする方法であって、コンクリート混合物を形成する工程およびこれを基材にスプレーするためのスプレーノズルに運ぶ工程を含み、そこで請求項1〜9のいずれかに記載の促進剤液体組成物がノズルに注入されてなる、前記方法。

【公表番号】特表2006−525939(P2006−525939A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508206(P2006−508206)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005647
【国際公開番号】WO2004/106258
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【Fターム(参考)】