説明

混成集積回路装置およびその製造方法

【課題】 放熱性の良好な携帯電話用パワーアンプモジュールの提供。
【解決手段】 セラミック配線基板と、前記セラミック配線基板の表面に設けられたチップ固定用パッドと、前記セラミック配線基板に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッドに連なるサーマルビアと、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して固定される半導体チップとを有する混成集積回路装置であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの周縁の外側に設けられている。前記サーマルビアおよびチップ固定用パッド等の導体部は銅ペーストの焼成によって形成され、前記セラミック配線基板を構成するセラミック板の焼成時同時に焼成されて形成されている。前記半導体チップはGaAsFETからなるとともに、前記セラミック配線基板には多段にGaAsFETが構成されて携帯電話用パワーアンプモジュールが構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は混成集積回路装置およびその製造方法に係わり、特にパーソナルディジタルセルラー(personal digital cellular:PDC)等の携帯電話用送信部電力増幅器(パワーモジュール:パワーアンプモジュール)の製造技術に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】PDC(パーソナルディジタル携帯電話)用送信部電力増幅器として、GaAsFETを多段に組み込んだGaAsパワーモジュールが使用されている。
【0003】GaAsパワーモジュールについては、たとえば、富士通株式会社発行「FUJITSU」,47,5,PP.403-407(09,1996) やアキタ電子株式会社発行「アキタ・テクニカルレポート」1995年,Vol.3,PP1-5 に記載されている。
【0004】同文献には、マイクロストリップラインを構成する基板にGaAs−FETを2段に組み込むとともに、チップ部品からなる抵抗やコンデンサを搭載した構造が開示されている。
【0005】一方、半導体チップから発生した熱を基板の裏面側に速やかに伝達する構造として配線基板に貫通状態で設けられたサーマルビアが知られている。サーマルビアは、配線基板に設けたサーマルビアホール内に熱伝導性の良好な銅等の金属(ペースト)を充填することによって形成される。
【0006】サーマルビアについては、たとえば工業調査会発行「電子材料」1994年10月号、P81およびP82に記載されている。サーマルビアは半導体チップの固定領域内の基板部分に設けられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】GaAsFETを用いた携帯電話用パワーアンプモジュールにおいては、GaAsFETチップ(半導体チップ)が多量の熱を発生することから放熱設計が重要である。
【0008】本出願人においては、図9に示すように、半導体チップ17から発生する熱を効率的に配線基板(モジュール基板)1の裏面側に伝達放散するために、半導体チップ固定部分のモジュール基板1にサーマルビア11を採用した。
【0009】モジュール基板1は、複数のパターニングされた生のセラミック板(グリーンシート)2を相互に重ね合わせた後、焼成して硬化させることによって形成される。
【0010】前記各生のセラミック基板2は、所定箇所にスルーホールやサーマルビアホール4が設けられるとともに、上面あるいは上下面および前記スルーホールやサーマルビアホール4に導体ペーストが印刷・充填されて、配線5,チップ固定用パッド6,上下接続導体やサーマルビア11等を構成する導体部15が形成される。
【0011】前記サーマルビア11は、放熱性向上のためセラミック板よりも熱伝導率の良好な銅ペーストをした。
【0012】しかし、前記グリーンシートや導体ペーストの焼成時、グリーンシート部分と導体ペースト部分では硬化収縮率の違いから、前記サーマルビア11の上下端は、他の導体部15の表面よりも数十μm盛り上がってしまうことが判明した。たとえば、焼成後のセラミック板2の厚さが0.5mm程度の場合、セラミック板2の表面の導体部15の厚さは20μm程度であるとすると、前記サーマルビア11の盛り上がり、すなわち突出高さは20μm程度になる。
【0013】この結果、前記サーマルビア11が存在するチップ固定用パッド6上に接着剤16を介して半導体チップ17を固定した場合、チップ固定用パッド6と接着剤16との間に空隙18が発生して熱抵抗が増大し、パワーモジュールの効率が低下してしまう。
【0014】本発明の目的は、半導体チップの固定面からの熱放散性が良好な混成集積回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【0015】本発明の他の目的は、放熱性の良好な携帯電話用送信部電力増幅器(パワーアンプモジュール)およびその製造方法を提供することにある。
【0016】本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【0017】
【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0018】(1)セラミック配線基板と、前記セラミック配線基板の表面に設けられたチップ固定用パッドと、前記セラミック配線基板に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッドに連なるサーマルビアと、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して固定される半導体チップとを有する混成集積回路装置であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの周縁の外側に設けられている。前記サーマルビアおよびチップ固定用パッド等の導体部は銅ペーストの焼成によって形成され、前記セラミック配線基板を構成するセラミック板の焼成時同時に焼成されて形成されている。前記半導体チップはGaAsFETからなるとともに、前記セラミック配線基板には多段にGaAsFETが構成されて携帯電話用送信部電力増幅器が構成されている。
【0019】このようなパワーアンプモジュールは以下の方法によって製造される。
【0020】チップ固定用パッドに連なるサーマルビアを有するセラミック配線基板を形成する工程と、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定する工程を有する混成集積回路装置の製造方法であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの固定領域の外側で前記接着剤の高さを変えない程度に近接した位置に形成しておき、その後前記サーマルビアから外れたチップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定する。前記サーマルビアおよびチップ固定用パッド等の導体部は銅ペーストの焼成によって形成し、前記セラミック配線基板を構成するセラミック板の焼成時同時に焼成して形成する。前記チップ固定用パッド上にGaAsFETを固定するとともに前記セラミック配線基板に多段にGaAsFETを組み込んで携帯電話用送信部電力増幅器を構成する。
【0021】(2)セラミック配線基板と、前記セラミック配線基板の表面に設けられたチップ固定用パッドと、前記セラミック配線基板に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッドに接続されるサーマルビアと、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して固定される半導体チップとを有する混成集積回路装置であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの固定領域に設けられているとともにサーマルビアホールに挿入された金属体で形成されかつ先端面は前記チップ固定用パッドの表面と略同じ面になっている。前記半導体チップはGaAsFETからなるとともに、前記セラミック配線基板には多段にGaAsFETが構成されて携帯電話用送信部電力増幅器が構成されている。
【0022】このようなパワーアンプモジュールは以下の方法によって製造される。
【0023】チップ固定用パッドに連なるサーマルビアを有するセラミック配線基板を形成する工程と、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定する工程を有する混成集積回路装置の製造方法であって、前記セラミック配線基板を焼成によって形成する際、前記チップ固定用パッドに連なるようにサーマルビアホールを形成した状態で焼成を行い、その後前記チップ固定用パッドの表面と略同一の面になるように前記サーマルビアホールに金属体を埋め込み、ついで接着剤を介して半導体チップを前記チップ固定用パッド上に固定する。前記チップ固定用パッド上にGaAsFETを固定するとともに前記セラミック配線基板に多段にGaAsFETを組み込んで携帯電話用送信部電力増幅器を構成する。
【0024】前記(1)の手段によれば、セラミック配線基板を形成する際の焼成において、サーマルビアの上下端がチップ固定用パッドの表面よりも盛り上がってもサーマルビアは半導体チップの周縁の外側に設けられていることから、前記チップ固定用パッドに接着剤を介して半導体チップを固定した場合、前記接着剤とチップ固定用パッドとの間に空隙が発生しなくなり、熱抵抗の増大が抑えられるため、GaAsFETは安定して動作する。
【0025】また、半導体チップは盛り上がったサーマルビアで支持されないことから、接着剤の厚さは薄くなり、熱抵抗の低減からGaAsFETの温度特性が良好になる。
【0026】前記(2)の手段によれば、セラミック配線基板を形成した後にサーマルビアホールに金属体をチップ固定用パッドの表面と略一致するように埋め込むことから、半導体チップの固定領域の平坦化が可能になり、前記チップ固定用パッドに接着剤を介して半導体チップを固定した場合、前記接着剤とチップ固定用パッドとの間に空隙が発生しなくなり、熱抵抗の増大が抑えられるため、GaAsFETは安定して動作する。
【0027】また、半導体チップは薄いチップ固定用パッド上に接着剤を介して固定されることから、接着剤の厚さを薄くでき、熱抵抗の低減からGaAsFETの温度特性が良好になる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】(実施形態1)図1乃至図7は本発明の実施形態1の混成集積回路装置(GaAsパワーアンプモジュール)に係わる図であって、図1は半導体チップの固定状態を示す断面図、図2はパワーアンプモジュールの断面図、図3はパワーアンプモジュールの等価回路図、図4は実装基板の平面図、図5はGaAsFETチップの固定状態を示す平面図、図6はGaAsFETチップの固定状態を示す断面図、図7はパワーアンプモジュールの実装状態を示す断面図である。
【0030】本実施形態1の混成集積回路装置(パワーアンプモジュール)20は、矩形偏平体となり、図2に示すような断面構造になっている。
【0031】すなわち、パワーアンプモジュール20は、図2に示すように、矩形状のモジュール基板1(図4参照)と、このモジュール基板1の電子部品搭載面側を被うように取り付けられるキャップ21とからなっている。
【0032】前記キャップ21は、導電性の金属板を矩形箱状に折り曲げ成形して形成され、平坦な天井板22と、この天井板22の周縁下面側に突出する側壁23とからなっている。前記キャップ21は、たとえば0.2mm程度の厚さの金属板によって形成されている。
【0033】また、前記側壁23には下縁から平行に2本のスリットが設けられて舌片状のクランプ片24が設けられている。このクランプ片24は前記天井板22の少なくとも対向する2辺の側壁23にそれぞれ2本設けられている。また、前記クランプ片24は内方に屈曲し、モジュール基板1の側面に設けられた窪んだ取付部25に弾力的に嵌合するようになっている。この結果、対向するクランプ片24によってキャップ21はモジュール基板1に弾力的に取り付けられる。
【0034】また、前記窪んだ取付部25はその表面がグランド配線層26となっている。前記嵌合片24は半田27によって前記グランド配線層26に機械的かつ電気的に接続されている。これによって、モジュール基板1はキャップ21によって電磁シールドされることになる。なお、前記クランプ片24をグランド配線層26に固定する半田27は、たとえばクリーム半田等の塗布と、リフローによって形成される。
【0035】なお、前記キャップ21とモジュール基板1との固定構造は、半田以外の接着剤による固定、または機械的固定でもよい。
【0036】一方、前記モジュール基板1は、表面に銅ペーストを所定パターンに印刷した所定パターンのセラミック板2を複数枚積層しかつ焼成して形成されたもので、多層配線基板構造になっている。
【0037】前記セラミック板2は、たとえば0.15mm程度の厚さであり、配線,チップ固定用パッド等の導体部の厚さは0.02mm程度であり、上下の配線等を電気的に接続する上下接続導体やサーマルビアの直径は0.2mm程度である。
【0038】前記モジュール基板1の最上層のセラミック板2の上面には、チップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品14が搭載されている。
【0039】本実施形態1では、モジュール基板1は3枚のセラミック板2を積層した構造となっていて、露出する最下層のセラミック板2上に設けられたチップ固定用パッド6上に接着剤16(図1参照)を介して半導体チップ17が固定されている。接着剤16は、たとえば銀ペーストが使用される。銀ペーストはAuSnに比較して接着のための設備を必要としない実益がある。
【0040】また、半導体チップ17の図示しない電極と、二段目のセラミック板2の上面に設けられた配線5の先端のワイヤ接続パッド8は、導電性のワイヤ12で接続されている。
【0041】また、前記半導体チップ17やワイヤ12等は、絶縁性樹脂からなる封止体30で覆われている。
【0042】他方、これが本発明の特徴の一つであるが、前記半導体チップ17が固定されるセラミック板2には、図1および図5に示すように、半導体チップ17で発生する熱を下方に伝達するサーマルビア11が設けられている。
【0043】このサーマルビア11は、前記半導体チップ17が固定される領域の外側に設けられ、半導体チップ17が固定されるチップ固定用パッド6に連なっている。サーマルビア11は半導体チップ17で発生する熱を放散するために、半導体チップ17が固定される領域からは外れるが、できるだけ近接した位置に設けられている。
【0044】これは、前記モジュール基板1の形成時、生のセラミック板(グリーンシート)と、銅ペーストの硬化収縮率の違いによって、サーマルビア11の上下端が、図1に示すように、セラミック板2の平坦面を延在するチップ固定用パッド6や配線5等の導体部15よりも数十μm突出することによる。すなわち、半導体チップ17をチップ固定用パッド6上に接着剤16を介して固定した場合、半導体チップ17の下面が前記突出したサーマルビア11上に位置すると、接着剤16とチップ固定用パッド6との間に空隙が発生し放熱効果が低下するおそれがある。
【0045】このため、このような空隙が発生しないように半導体チップの固定領域から外してサーマルビア11を設ける。たとえば、サーマルビア11は前記半導体チップの固定領域から0.3〜0.5mm程度離す。
【0046】図6は半導体チップ17の固定方法を示す図である。同図に示すように、モジュール基板1のチップ固定用パッド6上にスタンプによって接着剤16を形成する。この際、接着剤16はサーマルビア11にかからない位置に設ける。
【0047】つぎに、半導体チップ17を下端に保持するキャピラリ35を操作して半導体チップ17を前記接着剤16上に載置し、かつ前記接着剤16を硬化処理させて半導体チップ17をチップ固定用パッド6上に固定する。
【0048】接着剤16は平坦なチップ固定用パッド6上に固定されるため、チップ固定用パッド6と接着剤16との間に空隙が発生せず、熱抵抗の増大が抑止できる。
【0049】また、チップ固定用パッド6は、たとえば20μm程度の厚さであり、サーマルビア11の盛り上がり部分19によって接着剤16が厚くなることもないことから、熱抵抗を低く抑えることができる。
【0050】本実施形態1のパワーアンプモジュール20は、能動部品として、電界効果トランジスタを構成するGaAsFETチップ(半導体チップ)17を回路的に多段に接続して、携帯電話用送信部電力増幅器を構成している。本実施形態1では、半導体チップ17を回路的に2段に接続したパワーアンプモジュールとなっている。
【0051】図3は本実施形態1のパワーアンプモジュールの等価回路を示す回路図であり、図4はモジュール基板1における電子部品の搭載状態と端子との相関を示す図である。
【0052】図4に示すように、モジュール基板1の中央部分には、能動部品として二つのGaAsFET(Q1,Q2)が配置され、その周囲のモジュール基板1の上面には、受動部品としてはチップ抵抗(R11,R12,R14,R15,R20〜R22)、チップコンデンサ(C11〜C13,C20,C22,C23,C25〜C27,C30〜C33,C36,C41)が搭載されている。図4および図5において、10はセラミック板2の上下の配線5,チップ固定用パッド6,電極固定パッド7,ワイヤ接続パッド8等の導体部15を接続する上下接続導体であり、11はサーマルビアである。
【0053】矩形のモジュール基板1の4辺には表面実装用の外部端子40が設けられている。外部端子40はモジュール基板1の下面から側面に亘って設けられ、図4に示すように、モジュール基板1の左辺には上から下に沿って入力端子(Pin)41,初段ドレーン端子(Vd1)42,グランド端子(GND)43,後段ドレーン端子(Vd2)44が並び、モジュール基板1の下辺には左から右に沿ってグランド端子(GND)45,47が並び、モジュール基板1の右辺には下から上に沿って出力端子(Pout)48,グランド端子(GND)49,50,ゲートバイアス端子(Vg)51が並び、モジュール基板1の上辺には右から左に沿ってグランド端子(GND)53が並ぶ。
【0054】前記グランド端子(GND)45,53は辺に沿って長く設けられ、実装基板上の2個のグランド配線が接続されるようになっている。
【0055】図3の等価回路で示すように、初段のGaAsFET(Q1)のゲートには入力端子(Pin)41が接続され、初段のソースは後段のGaAsFET(Q2)のゲートに接続されている。
【0056】後段のGaAsFET(Q2)のソースは出力端子(Pout)48に接続されている。
【0057】ゲートバイアス端子(Vg)51は初段のGaAsFET(Q1)のゲートと後段のGaAsFET(Q2)のゲートに接続されている。
【0058】初段のGaAsFET(Q1)のソースには初段ドレーン端子(Vd1)42が接続され、後段のGaAsFET(Q2)のソースには後段ドレーン端子(Vd2)44が接続されている。
【0059】図3においてS1〜S3はマイクロストリップラインである。
【0060】入力端子(Pin)41と初段のGaAsFET(Q1)との間には、C11,C12,S1,R11,C13によって入力整合回路が形成されている。
【0061】R11は初段のGaAsFET(Q1)のバイアス電流調整抵抗であり、R21は後段のGaAsFET(Q2)のバイアス電流調整抵抗である。
【0062】S2,C22,C23,C25,C26,C27によって段間整合回路が形成されている。
【0063】C31,S3,C32,C33,C36によって出力整合回路が形成されている。
【0064】また、C20,C30はバイパスコンデンサである。
【0065】本実施形態1では、GaAsFETを2段に組み込んで、800〜1000MHz、さらには1.4〜1.7GHzの携帯電話用のパワーアンプモジュールとすることもできる。
【0066】このようなパワーアンプモジュール20の製造においては、図1,図2,図4に示すようなモジュール基板1を製造する。この際、図1に示すように、チップ固定領域から外れたチップ固定用パッド6部分にサーマルビア11を形成する。そして、半導体チップ17をチップ固定用パッド6に固定する場合は、チップ固定用パッド6上にスタンプによって接着剤16を形成した後、キャピラリ35を操作してキャピラリ35の下端に保持された半導体チップ17を前記接着剤16上に載置する。その後、前記接着剤16を硬化処理させて半導体チップ17をチップ固定用パッド6上に固定する。
【0067】接着剤16は平坦なチップ固定用パッド6上に固定されるため、チップ固定用パッド6と接着剤16との間に空隙が発生せず、熱抵抗の増大が抑止できる。
【0068】つぎに、半導体チップ17の電極とワイヤ接続パッド8をワイヤ12で接続する。また、前記半導体チップ17を絶縁性樹脂からなる封止体30で覆う。
【0069】一方、前記モジュール基板1の上面には、図4に示すように、所定のチップ部品14を搭載するとともに、各電極と電極固定パッド7を半田リフローによって接続する。
【0070】モジュール基板1にチップ部品14を搭載した後、モジュール基板1の上面側を覆うようにキャップ21を取り付け、かつキャップ21のクランプ片24をモジュール基板1の側面のグランド配線層26に半田27で固定する。
【0071】これによって電磁シールド構造のパワーアンプモジュール20が製造されることになる。
【0072】図7は本実施形態1のパワーアンプモジュール20の実装状態を示す断面図である。実装基板55の配線56にパワーアンプモジュール20の外部端子40を半田57を介して固定した構造になっている。
【0073】モジュール基板1の下面側では、入力端子(Pin)41,初段ドレーン端子(Vd1)42,後段ドレーン端子(Vd2)44,出力端子(Pout)48、ゲートバイアス端子(Vg)51を除く殆どの面にグランド配線層26が形成され、かつこのグランド配線層26のモジュール基板1の4辺の各外部端子40部分で半田57を介して実装基板55の配線56に接続されていることから、半導体チップ17で発生した熱は半導体チップ17が固定されたチップ固定用パッド6,サーマルビア11,グランド配線層26,半田57を介して実装基板55の配線56に伝熱放散されることになり、効果的な放熱が達成されることになる。
【0074】本実施形態1のパワーアンプモジュールの製造技術によれば以下の効果を奏する。
【0075】(1)セラミック配線基板からなるモジュール基板1を形成する際の焼成において、サーマルビア11の上下端がチップ固定用パッド6の表面よりも盛り上がっても、サーマルビア11は半導体チップ17の周縁の外側、すなわち半導体チップ17の固定領域の外側に設けられていることから、前記チップ固定用パッド6に接着剤16を介して半導体チップ17を固定した場合、前記接着剤16とチップ固定用パッド6との間に空隙が発生しなくなり、熱抵抗の増大が抑えられるため、GaAsFETは安定して動作する。
【0076】(2)半導体チップ17は盛り上がったサーマルビア11で支持されないことから、接着剤16の厚さは薄くなり、熱抵抗の低減からGaAsFETの温度特性が良好になる。
【0077】(実施形態2)図8は本発明の実施形態2のパワーアンプモジュールにおける半導体チップの固定方法を示す図である。
【0078】本実施形態2では、図8(c)に示すように、複数のセラミック板2を積層して構成されたセラミック配線基板からなるモジュール基板1と、前記モジュール基板1の表面に設けられたチップ固定用パッド6と、前記モジュール基板1に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッド6に接続されるサーマルビア11と、前記チップ固定用パッド6上に接着剤16を介して固定される半導体チップ17とを有するパワーアンプモジュールであり、前記サーマルビア11は前記半導体チップ17の固定領域に設けられている。
【0079】サーマルビア11が半導体チップ17の固定領域内に設けられることから、サーマルビア11の上面は前記モジュール基板1の上面のチップ固定用パッド6の上面と略一致している。
【0080】また、特に限定されるものではないが、前記サーマルビア11の下面は前記モジュール基板1の下面の配線5(グランド配線層26)の表面と略一致している。
【0081】前記サーマルビア11はセラミック板2に金属体(金属棒)を挿入して形成されている。また、前記チップ固定用パッド6の厚さは、たとえば20μmと薄くなっている。
【0082】前記半導体チップ17はGaAsFETからなるとともに、前記モジュール基板1には2段にGaAsFET(半導体チップ17)が構成されて携帯電話用送信部電力増幅器が構成されている。
【0083】本実施形態2のパワーアンプモジュールは以下の方法によって製造される。
【0084】先ず、チップ固定用パッド6に連なるサーマルビア11を有するモジュール基板1を焼成によって形成する。この際、図8(a)に示すように、前記チップ固定用パッド6に連なるようにセラミック板2にサーマルビアホール60を形成しておく。
【0085】つぎに、所定枚数のセラミック板2を積層させた後焼成を行う。この焼成時、セラミック板2を貫通するように導体ペーストが設けられていないことから、セラミック板2の上下面に形成された配線5,チップ固定用パッド6等の導体部15の表面は平坦になる。すなわち、チップ固定用パッド6の表面はサーマルビアホール60が設けられ部分以外は平坦になる。
【0086】つぎに、図8(b)に示すように、所定寸法に形成されたサーマルビア11、すなわち金属体(金属棒)を前記サーマルビアホール60に挿入する。この際、前記サーマルビア11の上面をチップ固定用パッド6の表面と略一致した面にする。また、前記サーマルビア11の挿入によって、セラミック板2の上面のチップ固定用パッド6と、セラミック板2の下面の配線5(グランド配線層26)は電気的に接続される。
【0087】つぎに、図8(c)に示すように、チップ固定用パッド6上にスタンプによって接着剤16を塗布する。また、前記接着剤16上にGaAsFETからなる半導体チップ17を載置した後、前記接着剤16を硬化処理してチップ固定用パッド6上に半導体チップ17を固定する。
【0088】本実施形態2のパワーアンプモジュールにおいては、モジュール基板1を形成した後にサーマルビアホール60に金属体をチップ固定用パッド6の表面と略一致するように埋め込んでサーマルビア11を形成することから、半導体チップ17の固定領域の平坦化が可能になり、前記チップ固定用パッド6に接着剤16を介して半導体チップ17を固定した場合、前記接着剤16とチップ固定用パッド6との間に空隙が発生しなくなり、熱抵抗の増大が抑えられるため、GaAsFETは安定して動作する。
【0089】また、半導体チップ17は薄いチップ固定用パッド6上に接着剤16を介して固定されることと、サーマルビア11によって半導体チップ17が高く支えられることもないことから、接着剤16の厚さを薄くでき、熱抵抗の低減からGaAsFETの温度特性が良好になる。
【0090】以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0091】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0092】(1)セラミック配線基板からなるモジュール基板の上面のチップ固定用パッド上にGaAsFETからなる半導体チップを固定する構造において、サーマルビアは半導体チップの固定領域から外れて形成されていることから、サーマルビアによって半導体チップが高く支えられることがない。この結果、半導体チップがサーマルビアによって支えられる結果発生する半導体チップの固定部分での空隙の発生や、半導体チップを固定するための接着剤が厚くなることが防止できるため、放熱抵抗の増大が防止できる。また、サーマルビアは半導体チップに近接した位置に形成されていることから、半導体チップで発生した熱は効果的にサーマルビアを介してモジュール基板の下面側(実装面)側に伝達されるため、GaAsFETの温度特性が向上する。
【0093】(2)セラミック配線基板からなるモジュール基板に金属体を挿入してサーマルビアを形成した構造では、サーマルビアの先端面をモジュール基板のチップ固定用パッドの表面と略一致させることができるため、チップ固定用パッドや接着剤の厚さを薄くして放熱のための熱抵抗の低減を図ることができるとともに、半導体チップの固定領域にサーマルビアを配置することができるため、放熱抵抗の低減が図れ、GaAsFETの温度特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1であるパワーアンプモジュールにおける半導体チップの固定状態を示す断面図である。
【図2】本実施形態1のパワーアンプモジュールの断面図である。
【図3】本実施形態1のパワーアンプモジュールの等価回路図である。
【図4】本実施形態1のパワーアンプモジュールの回路基板の平面図である。
【図5】本実施形態1のパワーアンプモジュールにおける半導体チップ部分を示す平面図である。
【図6】本実施形態1のパワーアンプモジュールの製造における半導体チップの固定状態を示す平面図である。
【図7】本実施形態1のパワーアンプモジュールの実装状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態2であるパワーアンプモジュールにおける半導体チップの固定状態を示す断面図である。
【図9】本出願人においてセラミック配線基板の半導体チップ固定部分にサーマルビアホールを設けたモジュール基板を示す断面図である。
【符号の説明】
1…モジュール基板、2…セラミック板、3…スルーホール、4…サーマルビアホール、5…配線、6…チップ固定用パッド、7…電極固定パッド、8…ワイヤ接続パッド、9…表面実装用電極、10…上下接続導体、11…サーマルビア、12…ワイヤ、14…チップ部品、15…導体部、16…接着剤、17…半導体チップ、18…空隙、19…盛り上がり部分、20…パワーアンプモジュール、21…キャップ、22…天井板、23…側壁、24…クランプ片、25…取付部、26…グランド配線層、27…半田、30…封止体、35…キャピラリ、40…外部端子、41…入力端子(Pin)、42…初段ドレーン端子(Vd1)、43,45,47,49,50,53…グランド端子(GND)、44…後段ドレーン端子(Vd2)、48…出力端子(Pout)、51…ゲートバイアス端子(Vg)、55…実装基板、56…配線、57…半田、60…サーマルビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック配線基板と、前記セラミック配線基板の表面に設けられたチップ固定用パッドと、前記セラミック配線基板に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッドに連なるサーマルビアと、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して固定される半導体チップとを有する混成集積回路装置であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの周縁の外側に設けられていることを特徴とする混成集積回路装置。
【請求項2】 前記サーマルビアおよびチップ固定用パッド等の導体部は銅ペーストの焼成によって形成され、前記セラミック配線基板を構成するセラミック板の焼成時同時に焼成されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の混成集積回路装置。
【請求項3】 セラミック配線基板と、前記セラミック配線基板の表面に設けられたチップ固定用パッドと、前記セラミック配線基板に貫通して設けられるとともに前記チップ固定用パッドに接続されるサーマルビアと、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して固定される半導体チップとを有する混成集積回路装置であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの固定領域に設けられているとともにサーマルビアホールに挿入された金属体で形成されかつ先端面は前記チップ固定用パッドの表面と略同じ面になっていることを特徴とする混成集積回路装置。
【請求項4】 前記半導体チップはGaAsFETからなるとともに、前記セラミック配線基板には多段にGaAsFETが構成されて携帯電話用送信部電力増幅器が構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の混成集積回路装置。
【請求項5】 チップ固定用パッドに連なるサーマルビアを有するセラミック配線基板を形成する工程と、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定する工程を有する混成集積回路装置の製造方法であって、前記サーマルビアは前記半導体チップの固定領域の外側で前記接着剤の高さを変えない程度に近接した位置に形成しておき、その後前記サーマルビアから外れたチップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定することを特徴とする混成集積回路装置の製造方法。
【請求項6】 前記サーマルビアおよびチップ固定用パッド等の導体部は銅ペーストの焼成によって形成し、前記セラミック配線基板を構成するセラミック板の焼成時同時に焼成して形成することを特徴とする請求項5に記載の混成集積回路装置の製造方法。
【請求項7】 チップ固定用パッドに連なるサーマルビアを有するセラミック配線基板を形成する工程と、前記チップ固定用パッド上に接着剤を介して半導体チップを固定する工程を有する混成集積回路装置の製造方法であって、前記セラミック配線基板を焼成によって形成する際、前記チップ固定用パッドに連なるようにサーマルビアホールを形成した状態で焼成を行い、その後前記チップ固定用パッドの表面と略同一の面になるように前記サーマルビアホールに金属体を埋め込み、ついで接着剤を介して半導体チップを前記チップ固定用パッド上に固定することを特徴とする混成集積回路装置の製造方法。
【請求項8】 前記チップ固定用パッド上にGaAsFETを固定するとともに前記セラミック配線基板に多段にGaAsFETを組み込んで携帯電話用送信部電力増幅器を構成することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の混成集積回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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