説明

混注用器具のホルダ

【課題】混注用器具をイルリガートル台に固定する場合に、主液ラインの抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具の破損を抑止する。
【解決手段】混注用器具を保持する保持部材20と、イルリガートル台Aに取り付けられる取付部材21との間にコイルバネで構成された弾性部材22を配設する。混注用器具から保持部材20に作用する外力が小さいときには、弾性部材22を変形させないようにして、混注用器具を所定位置に位置付ける。混注用器具に接続された主液ラインが引っ張られた場合に、混注用器具から保持部材20に作用する外力が大きくなると、保持部材20を所定位置から変位させて、混注用器具や主液ラインに無理な力が作用しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場で用いられる混注用器具を例えば患者のベッド等に保持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療現場で患者に輸液や輸血等を行う場合には、それら液体が流通する主液ラインから分岐する分岐ラインを設け、この分岐ラインに種類の異なる薬液等を混注して患者に投与したり、主液ラインを流れる液体を分岐ラインからサンプルとして採取することが行われている。
【0003】
上記分岐ラインを設ける場合に、例えば、特許文献1に開示されているような混注用器具が用いられることがある。この混注用器具は、管状部材と、該管状部材の周壁部に一体に設けられたディスク状の弁とを備えている。管状部材の一端部には、輸液バッグや輸血バッグ等から延びる上流側主流ラインを構成するバック側ラインが接続され、他端部には、患者に穿刺される穿刺針が設けられた下流側主液ラインを構成する穿刺側ラインが接続されている。また、弁には切れ目が形成されている。この切れ目に例えばシリンジの先端部を差し込むことで弁が開放された状態となってシリンジの先端部が管状部材内と連通するようになり、各種薬液の混注や主液ラインを流れる液体のサンプルの採取が可能になる。一方、シリンジの先端部を弁の切れ目から抜くと弁が閉じた状態になる。
【特許文献1】特開2004−237134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の混注用器具は、術者が混注処置やサンプルの採取処置を行いやすいように、患者のベッドの側部を構成する部材やイルリガートル台等の固定部材に分かりやすい状態で固定しておくのが好ましい。ところが、輸液等が長時間に亘る場合には、その間に患者が例えば寝返りを打って穿刺側ラインを引っ張ることや、穿刺側ラインを体で押さえつけて引っ張ることがある。このように穿刺側ラインが引っ張られると、混注用器具が固定部材に固定された状態となっているため、混注用器具の穿刺側ラインとの接続部分が破損したり、穿刺側ラインが混注用器具の接続部分から抜けてしまう虞れがあるとともに、穿刺側ラインの穿刺針が患者から抜けることも考えられる。また、穿刺側ラインだけでなく、バッグ側ラインも、不意に物品が当たる等して引っ張られることがあり、混注用器具の接続部分の破損やバッグ側ラインが接続部分から抜けてしまう虞れがある。さらに、混注用器具にも、不意に物品等が当たることがあり、これによって混注用器具が破損してしまう虞れがある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、混注用器具を固定部材に固定する場合に、混注用器具や主液ラインに無理な力ができるだけ作用しないようにすることで、主液ラインの抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具の破損を抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、混注用器具の保持手段と、該保持手段を固定部材に取り付ける取付手段との間に変位許容手段を設け、混注用器具から保持手段に作用した外力が大きいときに保持手段を変位させるようにした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、患者に投与される液体が流通する主液ラインから分岐する分岐ラインを構成するための混注用器具を保持する保持手段と、上記保持手段を固定部材に取り付ける取付手段と、上記保持手段と上記取付手段との間に設けられ、上記混注用器具から上記保持手段に作用した外力が設定値以下のときに該保持手段を所定位置に位置付ける一方、設定値よりも大きいときに該保持手段を上記所定位置から外力が作用した方向に変位させる変位許容手段とを備えている構成とする。
【0008】
この構成によれば、混注用器具が保持手段に保持された状態で取付手段により固定部材に取り付けられる。このとき、設定値を、主液ラインが引っ張られていない通常時に保持手段に作用している外力よりも若干大きめの値としておくことで、混注用器具を、術者が混注処置やサンプルの採取処置を行いやすい所に位置付けておくことが可能になる。
【0009】
一方、例えば主液ラインが引っ張られて混注用器具から保持手段に外力が作用した場合のように、上記設定値よりも大きな外力が保持手段に作用したときには、混注用器具を保持した状態の保持手段をそのまま変位許容手段により主液ラインの引っ張られた方向に変位させることが可能になる。また、例えば、混注用器具に物品等が当たって上記設定値よりも大きな外力が保持手段に作用したときにも、同様に保持手段を変位させることが可能である。これにより、混注用器具や主液ラインに無理な力が作用しにくくなる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、変位許容手段は、弾性部材で構成されているものとする。
【0011】
この構成によれば、保持手段に作用した外力が設定値よりも大きいときに弾性部材が変形することにより保持手段が変位する。このように、保持手段と取付手段との間に弾性部材を介在させるというシンプルな構造で変位許容手段を構成することが可能になる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、変位許容手段は、コイルバネで構成され、該コイルバネの一端部が保持手段に固定され、他端部が取付手段に固定されている構成とする。
【0013】
この構成によれば、コイルバネは、その曲げ方向や中心線方向等の複数の方向に変形可能であるため、保持手段に作用する外力の方向によらず、保持手段をその外力の向きに確実に変位させることが可能になる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、保持手段には、混注用器具の一側部及び他側部をそれぞれ着脱可能に保持する第1保持部及び第2保持部が設けられ、上記第1保持部には、上記混注用器具の一側部に係合する係合部が設けられている構成とする。
【0015】
この構成によれば、第1保持部及び第2保持部に保持された混注用器具の一側部に第1保持部の係合部が係合するので、混注用器具が保持手段から外れにくくなる。一方、輸液の種類を替える場合のように、混注用器具を保持手段から外して別の混注用器具に取り替える場合がある。この場合、混注用器具の他側部は係合部と係合していないため、保持手段に保持されている混注用器具の他側部を保持手段の第2保持部から離脱する方向に引っ張ることで、他側部が第2保持部から小さい力で外れる。このようにして混注用器具の他側部を第2保持部から外すことで、混注用器具が動き易くなる。これにより、混注用器具の一側部を第1保持部の係合部から容易に外すことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、混注用器具を保持する保持手段と取付手段との間に、混注用器具から保持手段に作用した外力が設定値よりも大きいときに保持手段を変位させる変位許容手段を設けたので、患者に各種液体を投与する間に混注用器具や主液ラインに無理な力が作用しにくくなり、主液ラインの抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具の破損を抑止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、変位許容手段を弾性部材とすることで、変位許容手段の構造をシンプルにすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、変位許容手段をコイルバネとすることで、保持手段を複数の方向に変位させることができ、保持手段に外力が作用する様々な状況で主液ラインの抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具の破損を抑止することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、混注用器具の一側部及び他側部を着脱可能に保持する第1保持部及び第2保持部を保持手段に設け、第1保持部に混注用器具の一側部に係合する係合部を設けたので、通常の使用中には混注用器具を保持手段から外れにくくしながら、混注用器具を取り替える場合のように保持手段から外そうとした場合には容易に外すことができ、作業性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る混注用器具のホルダ1を示すものである。このホルダ1は、混注用器具2(図2に示す)を患者のベッドの側部を構成する部材やイルリガートル台等の固定部材Aに取り付けるためのものである。この実施形態の説明では、ホルダ1の構造を説明する前に、図2に基づいて混注用器具2の構造について説明する。この混注用器具2は、主液ラインL1、L2から分岐する分岐ライン(図示せず)を構成するためのものである。混注用器具2は、ホルダ1の保持部材(後述する)に保持される樹脂製のベース部10と、患者に投与される液体が流れる樹脂製の管部11と、2つの弁12とを備えている。ベース部10は、図2(c)に示す略長円形の板部10aと、図2(a)及び(b)に示す板部10aの周縁部に形成された周壁部10bとで構成されている。図2(c)に示すように、ベース部10の長手方向に延びる両縁部には、中央部に凹部13がそれぞれ形成されている。また、周壁部10bの長手方向に延びる部分には、上記凹部13を挟むように配置された一対の突出部14がそれぞれ形成されている。
【0022】
上記管部11は、図2(a)及び(c)に示すように、ベース部10の長手方向に直線状に延びており、平面視で該ベース部10の長手方向と直交する方向の略中央部に位置している。この管部11とベース部10とは一体に成形されている。管部11の両端部は、ベース部10の長手方向両端部から突出している。図2(a)及び図5に示すように、管部11の一端部には、輸液バッグや輸血バッグ等(図示せず)から延びる上流側主流ラインを構成するバック側ラインL1が接続され、他端部には、患者に穿刺される穿刺針(図示せず)が設けられた下流側主液ラインを構成する穿刺側ラインL2が接続されるようになっている。
【0023】
上記弁12は、管部11の長手方向両側にそれぞれ位置しており、図2(c)に示すように、円形板状の弁体16と該弁体16の周縁部を保持する円環状の弁体保持部材17とで構成されている。弁体16はゴム製とされ、中心部を通る直線状の切れ目16aを有している。弁体保持部材17はベース部10に取り付けられており、該弁体保持部材17の内部空間は管部11の内部空間と連通している。上記弁体16の切れ目16aにシリンジ(図示せず)の先端部を差し込むことで、弁体16が開放された状態となってシリンジの先端部が管部11の内部空間に連通し、このシリンジによって分岐ラインが構成される。一方、シリンジの先端部を弁体16の切れ目16aから抜くと弁体16が閉じた状態になる。上記分岐ラインは、シリンジ以外にも管部材で構成してもよい。
【0024】
尚、上記混注用器具2の構造は、特開2004−237134号公報に開示されている構造としてもよい。
【0025】
上記ホルダ1は、図1、図3及び図4に示すように、混注用器具2を保持する保持手段としての保持部材20と、保持部材20を固定部材Aに取り付ける取付手段としての取付部材21と、保持部材20及び取付部材21の間に設けられた弾性部材22とを備えている。上記取付部材21は全体として角棒状をなしており、樹脂材で構成されている。取付部材21の一端部には、固定部材Aを挟持する挟持部24が設けられ、他端部には、保持部材20が固定される固定部25が設けられている。
【0026】
上記挟持部24は、図3に示すように、平面視で略C字状に形成され、その開放した部分から固定部材Aが挟持部24の内方に入るようになっている。図1に示すように、挟持部24には、該挟持部24の内外方向に貫通するねじ孔24aが形成されている。このねじ孔24aには、第1ねじ26が螺合するようになっている。第1ねじ26の頭部には、つまみ部26aが設けられている。このつまみ部26aを回転させることで、第1ねじ26が、挟持部24の内外方向に移動して該挟持部24の内方に位置する固定部材Aに接離するようになっている。第1ねじ26を挟持部24の内方へ移動させて固定部材Aに圧接させることで、挟持部24が固定部材Aを挟持して取付部材21が固定部材Aに取り付けられた状態になる。この第1ねじ26は、ホルダ1を構成する部材である。
【0027】
上記取付部材21の固定部25は、該取付部材21の長手方向に突出しかつ互いに間隔をあけて略平行に延びる第1板状部30及び第2板状部31で構成されている。図4に示すように、第1板状部30には、厚み方向に貫通するねじ孔30aが形成され、第2板状部31には、図1に示すように、ねじ孔30aと同心上に貫通孔31aが形成されている。この貫通孔31aに第2ねじ32が挿通され、該第2ねじ32は第1板状部30のねじ孔30aに螺合するようになっている。
【0028】
上記第1板状部30と第2板状部31との間には、上記保持部材20の位置を調整するための調整部材33が配置されている。この調整部材33は、弾性部材22が固定される丸棒材34を径方向に挟むように形成されている。調整部材33には、丸棒材32を挟む方向に貫通する挿通孔(図示せず)が形成されている。この挿通孔には、上記第2ねじ32が挿通するようになっている。
【0029】
上記調整部材33を第1板状部30及び第2板状部31の間に配置し、第2ねじ32を調整部材33の挿通孔に挿通し第1板状部30のねじ孔30aに螺合させて締めていくと、調整部材33が第1板状部30及び第2板状部31に挟まれて動かなくなるとともに、調整部材33が丸棒材34を挟んで該丸棒材34が調整部材33に対し動かなくなる。一方、第2ねじ32を緩めると、調整部材33が第2ねじ32の軸周りに回動可能になるとともに、丸棒材34がその中心線方向に移動可能になる。上記第2ねじ32、調整部材33及び丸棒材34は、ホルダ1を構成する部材である。
【0030】
上記保持部材20は、図5、6に示すように、矩形平板状の基台40を備えている。基台40の中心部には貫通孔40aが形成されている。基台40の取付部材21側の面には、図7にも示すように、貫通孔40aの周縁部から突出する円筒部41と、この円筒部41の外周面に連なる2つのリブ42とが設けられている。円筒部41は、上記丸棒材34の外径と略同じ外径を有し、基台40に対し略垂直に延びている。リブ42は、基台40に対し略垂直かつ該基台40の長手方向に延びている。
【0031】
上記混注用器具2は、図5及び図7に仮想線で示すように、基台40の円筒部41と反対側の面に保持されるようになっている。基台40の長手方向に延びる一縁部及び他縁部には、混注用器具2の長手方向と直交する方向の一側部及び他側部を保持する一側保持部43及び他側保持部44が設けられている。一側保持部43は第1保持部を構成し、他側保持部44は第2保持部を構成している。
【0032】
上記一側保持部43及び他側保持部44は、円筒部41と反対側に突出して基台40の長手方向に延びる板状をなしている。図5に示すように、一側保持部43の長手方向中央部近傍には、一対の突部43aが長手方向に離れて2組設けられている。突部43aの間には、半円状の切欠部43bが設けられている。図6〜図8に示すように、一側保持部43の長手方向両端部近傍には、上記混注用器具2の突出部14に係合する係合爪43cが他側保持部44側へ向けて突出している。この係合爪43cは、本発明の係合部を構成するものである。また、上記他側保持部44にも、図6に示すように、2組の突部44a及び切欠部44bが設けられている。この他側保持部44には、係合爪が設けられていない。
【0033】
すなわち、上記混注用器具2は、図7に示すように、ベース部10の一側部が一側保持部43に当接するとともに、突出部14が係合爪43cに係合した状態で保持部材20に保持されるとともに、ベース部10の他側部が他側保持部44に当接した状態で保持部材20に保持される。
【0034】
図6に示すように、上記基台40の円筒部41と反対側の面には、一側保持部43近傍に2つの一側突片45が長手方向に間隔をあけて形成され、他側保持部44近傍に2つの他側突片46が長手方向に間隔をあけて形成されている。これら一側突片45及び他側突片46は、上記混注用器具2のベース部10の周壁部10bにその内方から接触するように配置されている。また、基台40の円筒部41と反対側の面には、貫通孔40aの周りに複数のリブ47が形成されている。
【0035】
上記弾性部材22は、例えば図5に示すように、丸棒材34の中心線方向に直線状に延びるコイルバネで構成されており、変位許容手段を構成するものである。弾性部材22の外径は、丸棒材34の外径と略同じに設定されている。この弾性部材22を構成するバネ鋼線の巻き形状部分は、中心線方向に互いに接するように密に配置されている。このため、弾性部材22は、中心線方向については伸び方向に変形し、縮み方向には変形しないようになっている。また、弾性部材22がコイルバネで構成されているので、該弾性部材22は、捻り方向及び曲げ方向にも変形可能となっている。
【0036】
上記弾性部材22の一端部は丸棒材34の端部に固定され、他端部は円筒部41の端部に固定されている。弾性部材22の端部を固定する際には、接着剤や溶着法を用いてもよく、また、丸棒材34や円筒部41の端部を弾性部材22の端部に嵌合させるようにしてもよい。
【0037】
上記弾性部材22は、混注用器具2から保持部材20に作用した外力が設定値以下のときに保持部材20が所定位置から動かないように該保持部材20を保持する一方、設定値よりも大きいときに保持部材20を所定位置から外力が作用した方向に変位させるように構成されている。この設定値は、例えば、混注用器具2の自重及びこの混注用器具2に接続されている主液ラインL1、L2の重量によって保持部材20が所定位置から変位しないように設定されている。つまり、主液ラインL1、L2が患者やその他の物品の接触等によって引っ張られた場合、主液ラインL1、L2に物品等が接触した場合及び混注用器具2に物品等が接触した場合のように、保持部材20に通常の使用時に作用する外力よりも大きな外力が作用すると、保持部材20を上記所定位置から変位させるようになっている。
【0038】
上記のように構成されたホルダ1に混注用器具2を保持させる際には、まず、混注用器具2の一側部を一側保持部43に保持させる前に、他側部を他側保持部44に押し付けて保持させる。その後、混注用器具2の一側部の突出部14を一側保持部43の係合爪43cに係合させて一側部を一側保持部43に保持させる。
【0039】
上記のようにして混注用器具2を保持した状態のホルダ1を、図1に示すように、固定部材Aに取り付けた後、第2ねじ32を緩めて調整部材33及び丸棒材34を動かすことで混注用器具2の位置を微調整することが可能である。術者が混注処置やサンプル採取を行い易いように混注用器具2を所定位置に位置付けて第2ねじ32を締める。この状態では、主液ラインL1、L2が引っ張られたり、物品等が混注用器具2に接触しない限り、混注用器具2から保持部材20には設定値以下の外力が作用していることとなり、混注用器具2は上記所定位置で保持される。
【0040】
一方、バッグ側ラインL1や穿刺側ラインL2が引っ張られたり、混注用器具2に物品等が当たった場合のように、混注用器具2から保持部材20に作用する外力が設定値よりも大きくなると、図4に仮想線で示すように、弾性部材22が変形して保持部材20が上記所定位置から外力の作用した方向に変位する。このとき、弾性部材22を、曲げ方向や中心線方向等に変形可能なコイルバネで構成しているため、様々な方向から外力が作用した場合に保持部材20をその外力の向きに確実に変位させることが可能である。また、コイルバネは、捻り方向にも変形するので、保持部材20を、円筒部41の中心線周りに回動する方向にも変位させることが可能である。
【0041】
また、保持部材20に保持されている混注用器具2を取り替える場合のように、混注用器具2を保持部材20から外す際には、混注用器具2の一側部が係合爪43cと係合していないため、保持部材20に保持されている混注用器具2の他側部を保持部材20の他側保持部44から離脱する方向に引っ張ることで、他側部が他側保持部44から小さい力で外れる。このようにして混注用器具2の他側部を保持部材20から外すことで、混注用器具2が動き易くなる。これにより、混注用器具2の一側部を一側保持部43の係合爪43cから容易に外すことが可能になる。
【0042】
以上説明したように、この実施形態に係る混注用器具のホルダ1によれば、混注用器具2を保持する保持部材20と固定部材Aに取り付けられる取付部材21との間に、混注用器具2から保持部材20に作用した外力が設定値よりも大きいときに保持部材20を変位させる弾性部材22を設けたので、患者に各種液体を投与する間に混注用器具2や主液ラインL1、L2に無理な力が作用しにくくなり、主液ラインL1、L2の抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具2の破損を抑止することができる。
【0043】
また、弾性部材22をコイルバネで構成したので、シンプルな構造としながら、保持部材20を複数の方向に変位させることができ、保持部材20に外力が作用する様々な状況で主液ラインL1、L2の抜けや穿刺針の抜け及び混注用器具2の破損を抑止することができる。
【0044】
また、混注用器具2の一側部及び他側部を着脱可能に保持する一側保持部43及び他側保持部44を保持部材20に設け、一側保持部43に混注用器具2の一側部に係合する係合爪43cを設けたので、通常の使用中には混注用器具2を保持部材20から外れにくくしながら、混注用器具2を取り替える場合のように保持部材20から外そうとした場合には容易に外すことができ、作業性を良好にすることができる。
【0045】
尚、この実施形態では、変位許容手段をコイルバネで構成しているが、これに限らず、変位許容手段は、板バネで構成してもよいし、その他にもゴムや柔軟性を有する樹脂材等の弾性部材で構成してもよい。また、変位許容手段をコイルバネで構成する場合には、バネ鋼線の巻き形状部分が中心線方向に互いに離れるように形成し、コイルバネを縮み方向に変形可能としてもよい。こうすることで、保持部材20を変位させる際の自由度を増やすことができる。
【0046】
また、取付部材21の構造は、上記したものに限られず、保持部材20を固定部材Aに取り付けられる構造であればよい。また、固定部材Aは、ベッドの構成部材やイルリガートル台以外にも患者の周囲に配置されている各種部材としてもよい。
【0047】
また、図示しないが、混注用器具としては、上記構造のもの以外にも、医療現場で用いられている三方活栓や多方活栓等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明に係る混注用器具のホルダは、例えば、混注用器具をイルリガートル台に保持する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る混注用器具のホルダを固定部材に取り付けた状態の斜視図である。
【図2】(a)は混注用器具の側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は平面図である。
【図3】混注用器具のホルダの平面図である。
【図4】混注用器具のホルダの保持部材及びその近傍を拡大して示す側面図である。
【図5】保持部材が弾性部材に取り付けられた状態の側面図である。
【図6】保持部材の平面図である。
【図7】保持部材が弾性部材に取り付けられた状態の正面図である。
【図8】図6におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 混注用器具のホルダ
2 混注用基部
20 保持部材(保持手段)
21 取付部材(取付手段)
22 弾性部材(変位許容手段)
43 一側保持部(第1保持部)
43c 係合爪(係合部)
44 他側保持部(第2保持部)
A 固定部材
L1、L2 主液ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与される液体が流通する主液ラインから分岐する分岐ラインを構成するための混注用器具を保持する保持手段と、
上記保持手段を固定部材に取り付ける取付手段と、
上記保持手段と上記取付手段との間に設けられ、上記混注用器具から上記保持手段に作用した外力が設定値以下のときに該保持手段を所定位置に位置付ける一方、設定値よりも大きいときに該保持手段を上記所定位置から外力が作用した方向に変位させる変位許容手段とを備えていることを特徴とする混注用器具のホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の混注用器具のホルダにおいて、
変位許容手段は、弾性部材で構成されていることを特徴とする混注用器具のホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の混注用器具のホルダにおいて、
変位許容手段は、コイルバネで構成され、該コイルバネの一端部が保持手段に固定され、他端部が取付手段に固定されていることを特徴とする混注用器具のホルダ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の混注用器具のホルダにおいて、
保持手段には、混注用器具の一側部及び他側部をそれぞれ着脱可能に保持する第1保持部及び第2保持部が設けられ、
上記第1保持部には、上記混注用器具の一側部に係合する係合部が設けられていることを特徴とする混注用器具のホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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