説明

混注管

【課題】 混注管を取り替えることなく採血、点滴、液剤の注入が安定して繰り返し行えるようにする。
【解決手段】 管本体11に分岐管部12が接近、離反可能に接続され、分岐管部12は、弾力材よりなり通常は閉じるスリット部32を持つ弁本体31と、そのスリット部32を嵌入することで開く弁開閉体40と、その弁開閉体40の戻り用付勢体70とを備え、管本体11に分岐管部が接近位置で接続されている場合には、弁開閉体40が戻り用付勢体70の付勢力に抗して弁本体31のスリット部32を嵌入することで開き、その接近位置から離反位置になる際には戻り用付勢体70の付勢力により弁開閉体40が戻ることで弁本体31のスリット部32が閉じられるように構成されてなる混注管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、点滴及び人工透析等において血液の抽出、薬液の注入等を行うために用いられる混注管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工透析での血液抽出等のために、体外に形成した血液管路の途中に分岐路を設けるための混注管が用いられる。この種のものとして注射器の接続状態において流路を遮断、開放でき、混注管を取り替えることなく採血、点滴、液剤の注入が繰り返し行える構成が提案されている。
【特許文献1】特開2007−117210
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、上記従来構成の場合、採血、点滴、薬剤の注入を行った後の待機時に流路が確実に遮断されないという問題が発生する恐れがあった。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、混注管を取り替えることなく採血、点滴、液剤の注入が安定して繰り返し行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明では、管本体に分岐管部が接近、離反可能に接続され、前記分岐管部は、弾力材よりなり通常は閉じるスリット部を持つ弁本体と、そのスリット部を嵌入することで開く弁開閉体と、その弁開閉体の戻り用付勢体とを備え、前記管本体に前記分岐管部が接近位置で接続されている場合には、前記弁開閉体が前記戻り用付勢体の付勢力に抗して前記弁本体のスリット部を嵌入することで開き、その接近位置から離反位置になる際には前記戻り用付勢体の付勢力により前記弁開閉体が戻ることで前記弁本体のスリット部が閉じられるように構成されてなる混注管を提供する。
【0006】
上記構成の混注管によれば、管本体に分岐管部が接近位置で接続されている場合には、弁開閉体が弁本体を嵌入することでスリット部を開き、これにより内部の分岐流路がつながる状態となって採血等が可能となる。その接近位置から離反位置になる際には戻り用付勢体の付勢力により弁開閉体が戻ることで弁本体のスリット部が閉じられて内部の分岐流路は閉じられる。このようして混注管は内部の分岐流路の開放、遮断の両状態がスムーズに確実に切り換えられる。戻り用付勢体としては金属製のコイルバネや弾性ゴム材等が適宜の形態において用いられる。分岐管部への注射器等の接続部に弁開閉体と一体に移動するシール材が取り付けられる構成とすることで、その部分での外部への血液等の液体の漏れが防止される。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、混注管は内部の分岐流路の開放、遮断の両状態がスムーズに確実に切り換えられることで、混注管を取り替えることなく採血、点滴、液剤の注入が安定して繰り返し行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1はこの発明の混注管の実施形態の断面正面図、図2は同待機位置P2の状態を示す断面正面図、図3は同流通位置P1の状態を示す断面正面図、図4はこの発明の混注管の実施形態の部分拡大断面図、図5は弁開閉体のシール材を外した状態の平面図、図6はキャップ部材の一部切り欠き平面図、図7はキャップ部材の断面正面図、図8はキャップ部材50の待機位置と流通位置との状態を示す断面図、図9はキャップ部材50の待機位置と流通位置との切り換え状態を示す側面図、図10は弁本体を示す図である
【0009】
混注管1は主流路SRを形成する管本体11、管本体11の胴部21に接続されて主流路SRから分岐する分岐流路BRを形成する分岐管部12とからなる。管本体11は樹脂材よりなり略円筒状で両端に配管部材それぞれに接続するポート22、23を備えている。
【0010】
分岐管部12は、ゴム材よりなり通常は閉じるスリット部32を持つ弁本体31と、そのスリット部32を嵌入することで開く弁開閉体40と、その弁開閉体40の戻り用バネ70とを備えている。弁開閉体40は外側筒部材41と、その外側筒部材41の内側に同心状に配置され外側筒部材41に対して軸方向に相対移動可能な内側作動体42とからなる。
【0011】
外側筒部材41は円錐面状に形成された内周面411を備え、内側作動体42はその内周面411と密着可能な外周面421を備え、外側筒部材41と内側作動体42とが相対移動することでそれらの間に隙間が形成されこれによって内部流路BNが形成される。
【0012】
内側作動体42は外側筒部材41に対して軸方向の外方に突出して設けられ、図2〜図4に示すように注射器TKを取り付けた時に、その注射器TKの口部TKKの先端が内側作動体42と外側筒部材41とが軸方向に相対移動して内部流路BNが形成されるようになっている。
【0013】
外側筒部材41の外方の端部には、注射器TKの口部TKKの先端が嵌入される凹部81が設けられたゴム製の環状のシール材80が装着されており、その凹部81に注射器TKの口部TKKの先端が弾力的に嵌入される。また、外側筒部材41にはその上部外周位置に環状のバネ係止部71が一体に突設され、そのバネ係止部71と後に説明する保持部材34との間に戻り用付勢体としてのコイル状の戻り用バネ70が装着され、これにより外側筒部材41は弁本体31から離反する方向に付勢されている。
【0014】
内側作動体42の外方の端部には、その中央に注射器TKの口部TKKの内径より小さい外径を有する半球状の突起422が設けられ、且つ、突起422をも含めた位置に内側作動体42の外周面を連通する溝423が形成されている。
【0015】
弁本体31は管本体11に一体に設けられた略円筒状の分岐管基部33の中に配置されている。分岐管基部33にはその外周面に外嵌して軸方向および回転方向に摺動可能なキャップ部材50が外嵌装着されている。
【0016】
キャップ部材50はキャップ本体51とスリーブ部52とを備え、2段の有底円筒状である。スリーブ部52の外周面には注射器TKのロック用カラーTKCの雄ねじTKMに螺合して係合する係合部片522が設けられている。係合部片522は図6に示すようにスリーブ部52の外周面の180度ずれた位置それぞれに2個設けられている。
【0017】
注射器TKの雄ネジTKMを係合部片522に係合させたときに、その注射器TKの口部TKKの先端が外側筒部材41の上端に装着されたシール材70および内側作動体42の突出端に当接して押し、図2〜図4に示すようにそれらをスリーブ部52の内方に弁開閉体40を戻り用バネ70と弁本体31との付勢力に抗して押し込む。
【0018】
スリーブ部52の内周面521は円錐面状に形成され、外側筒部材41の外周面414はスリーブ部52の内周面521と密着可能な円錐面状に形成されている。内側作動体42は弁本体31の弾性力によって軸方向の外方に向かうように付勢されており、これによって注射器TKを取り付けない状態において内側作動体42の外周面421が外側筒部材41の内周面411と密着してシールされる。また、この状態においては外側筒部材41はバネ係止部71の上面がキャップ部材50の段部59の下面に係止することで位置決めされ、また、シール部材80がスリーブ部52内面と内側作動体42の上端より少し下の位置の周面との間をシールしている。
【0019】
キャップ本体51の内周面の下部には、その内周面から半径方向の内方へ突出する係止突起511が設けられている。分岐管基部33の外周面には係止突起511と軸方向に当接することによってキャップ部材50を流通位置P1および待機位置P2において保持するための保持突起331、332が設けられている。また、分岐管基部33の外周面には、係止突起511と当接してキャップ部材50の周方向の回転角度を規制するためのストッパー333が設けられている。
【0020】
さらに詳細に説明する。弁本体31は分岐管基部33の内側に圧縮された状態で収納されている。弁本体31の上部には弁本体31が抜けるのを防止するための保持部材34が設けられている。保持部材34は円環状であり、分岐管基部33の上端部の内周面に設けられた突起部334を弾性変形により乗り越えて嵌めこまれている。
【0021】
図10に示されるように、弁本体31は円柱状の胴部311の上部に円板状の突出部312が、下部に円錐台状の突出部313がそれぞれ一体に備えられている。スリット部32は弁本体31の上部から下部に貫通するように設けられている。
【0022】
図1、図2、図3の状態をそれぞれ説明する。図1の状態では、内側作動体42の先端が少し弁本体31のスリット部32に挿入されるがスリット部32は密着状態に閉じている。図2に示すように、内側作動体42が待機位置にあるとき内側作動体42はスリット部32を貫通するが、外側筒部材41はスリット部32の中にありそのため内部流路BNを形成する隙間の下方の開口部はスリット部32内に位置して塞がれ、内部流路BNはスリット部32内において閉じられた状態である。図3に示すように弁開閉体40が流通位置P1にあるときに内側作動体42および外側筒部材41のいずれもがスリット部32を貫通し、そのため内部流路BNの下方開口部は主流路SRに露出する。この状態で内部流路BNを含んで形成される分岐流路BRは主流路SRと連通し、これによって主流路SRに流れる流体は分岐流路BRにも流入する。分岐流路BRに流入した流体は、凹溝423を通って口部TKKの内部へと流入可能となる。
【0023】
図4、図5に示すように、内側作動体42上端部に設けられた半球状の突起422は、口部TKKの開口部の中に突入することが可能である。したがって、図1に示す状態から注射器TKの口部TKKを取り付け部TBに取り付けようとする際に、口部TKKの開口部の中に突起422が入るようにあてがい、その状態で下方に押し下げることで口部TKKと突起422とが係合してこれらが外れることなく弁開閉体40をスリーブ52の中へ押し込むことができる。押し込んだ状態で注射器TKを回転させてその雄ネジTKMを係合部片522に螺合させることで図2〜図4に示すように注射器TKが取り付けられる。
【0024】
その状態では注射器TKの口部TKKの先端部がシール材80の凹部81内に弾力的に嵌入されてシールが行われるので、分岐流路BRと口部TKKとが密に結合される。その際凹溝423が突起422の部分にも形成されているので、突起422によって口部TKの開口部が塞がれてしまうことはない。
【0025】
図1に示すように、注射器TKを取り付けない状態においては内側作動体42の下端部は弁本体31の中に若干入り込んでおり、この状態においては外側筒部材41がバネ係止部71に位置決めされているので内側作動体42は弁本体31に押し上げられることで内側作動体42の外周面421が外側筒部材41の内周面411に押し付けられ、それらの間が密着してシールされる。外側筒部材41の外周面414とスリーブ部52の内周面521間はシール部材70によりシールされる。
【0026】
図7に示すように、キャップ部材50の係止突起511はキャップ本体51の内周面に設けられた環状体が2か所において切り欠かれた状態に形成され、これにより係止突起511は2つ設けられている。分岐管基部33の外周面に設けられた保持突起332およびストッパー333も周方向の互いに180度変位する位置に2つずつ設けられており、2つの係止突起511の端部が2つの保持突起332およびストッパー333と係合する。また、キャップ本体51の下端縁には2つの切り欠き部512が設けられている。
【0027】
キャップ部材50は分岐管基部33の外周面を摺動可能であるが、キャップ本体51の内周面に設けられた係止突起511が分岐管基部33の外周面に設けられた保持突起331と係合することによって軸方向の抜け止めが図られている。なお、キャップ部材50を分岐管基部33に装着する際には、それらの弾性的変形によって互いに乗り越えて嵌め込まれる。このキャップ部材50を回転させ且つ軸方向に移動させることにより、その待機位置P2と流通位置P1とを切り換えることができる。
【0028】
すなわち、図8(A)、図9(A)に示すように、係止突起511が保持突起331との間にあるときは図2に示す状態の待機位置であり、その状態でロックされている。キャップ部材50を左回転させ、図9(B)に示すように係止突起511を保持突起332から離し、その状態で押し込んで図9(C)に示すように係止突起511を保持突起332よりも下方に位置させ、この状態で右回転させることによって図8(B)および図9(D)に示すように、係止突起511が保持突起332の下面に係合し、図3に示す状態の流通位置P1となり、この状態でロックされる。流通位置P1から待機位置P2への切り換えは上記と逆の操作を行う。
【0029】
混注管1の使用方法を説明する。まず混注管1の管本体11を例えば輸血流路の途中に接続しておく。キャップ部材50は待機位置P2としておく。この状態では分岐流路BRは弁本体31によって閉ざされており、血液等の外部への流出はない。採血や薬液の注入のために注射器TKを取り付ける。これにより図2に示す状態となるが、この状態においても内部流路BNは主流路SRに接続されておらず、血液等の外部への流出はない。そこでキャップ部材50を流通位置に切り換えることによって、図3に示す状態となり、内部流路BNが主流路SRに接続されて分岐流路に血液が流入する。この状態で注射器TKによる採血や薬液の注入を行う。1回目の採血等が終わると、注射器を取り付けた状態のままキャップ部材50を待機位置P2に切り換える。これによって、内部流路BNは主流路SRから再び遮断される。
【0030】
上記の流通位置P1から待機位置P2への切り換えの際には、戻り用バネ70のバネ力により外側筒部材41が押し上げられ、また、シール材80が内側作動体42の上端近傍の周面に弾力的に密着してそれを把持していることで、内側作動体42も外側筒部材41と一体に上昇するシール材80とともに上昇し、これにより弁開閉体40はスムーズに上昇する。
【0031】
2回目以降の採血等を行うときには、キャップ部材50を流通位置P1に切り換えて必要な作業を行う。全ての採血等が終われば、待機位置P2に切り換えた状態で注射器TKKを取り外す。
【0032】
このように、待機位置P2と流通位置P1とを切り換えることによって、注射器TKを取り付けた状態で何回も採血等が行える。注射器TKを取り外さないことで操作が極めて簡単に行えるとともに、部材の表面に付着した血液による衛生上の問題も発生しない。また、1個の混注管1で何度も採血等が行えるので、混注管1の使用個数が大幅に低減するとともに使用済みの混注管の廃棄の手間も少なくなり、これにともなってコストも大幅に低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の混注管の断面正面図
【図2】混注管の待機位置の状態の断面正面図
【図3】混注管の流通位置の状態の断面正面図
【図4】図2の一部拡大断面図
【図5】弁開閉体のシール材を外した状態の平面図
【図6】キャップ部材の一部切り欠き平面図
【図7】キャップ部材の断面正面図
【図8】キャップ部材の待機位置と流通位置との状態を示す拡大断面図
【図9】キャップ部材の待機位置と流通位置との切り換え状態の側面図
【図10】弁本体の形状を示す図
【符号の説明】
1 混注管
11 管本体
12 分岐管部
31 弁本体
32 スリット部
40 弁開閉体
70 戻り用バネ(戻り用付勢体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管本体に分岐管部が接近、離反可能に接続され、
前記分岐管部は、弾力材よりなり通常は閉じるスリット部を持つ弁本体と、そのスリット部を嵌入することで開く弁開閉体と、その弁開閉体の戻り用付勢体とを備え、
前記管本体に前記分岐管部が接近位置で接続されている場合には、前記弁開閉体が前記戻り用付勢体の付勢力に抗して前記弁本体のスリット部を嵌入することで開き、その接近位置から離反位置になる際には前記戻り用付勢体の付勢力により前記弁開閉体が戻ることで前記弁本体のスリット部が閉じられるように構成されてなる混注管。
【請求項2】
前記分岐管部への注射器等の接続部に、前記弁開閉体と一体に移動するシール材が取り付けられてなる請求項1記載の混注管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−119210(P2009−119210A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320174(P2007−320174)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(598085847)住吉金属株式会社 (6)
【出願人】(504322921)
【Fターム(参考)】