説明

混練機

【課題】混練物が注液ノズル内に流入して付着しても、これらの付着した混練物をコンパクトな機構で除去できるようにすることである。
【解決手段】注液ノズル6内で往復動可能なロッド10の先端部外周に掻き取り羽根11を設けて、シリンダ16で下方へ押圧されるロッド10を、外嵌されたスリーブ12に設けた螺旋溝12aと、注液ノズル6の上端に外嵌接続された円筒部材9に取り付けた係合ピン13との係合によって回転させることにより、混練物が注液ノズル6内に流入して付着しても、これらの付着した混練物を、回転するロッド10に設けた掻き取り羽根11で掻き取って、注入される液体と一緒にケーシング1内へ戻し、コンパクトな機構で除去できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品、食料品、樹脂等の混練に使用される混練機に関し、特に、混練機内へ液体を注入する注液ノズルを設けた混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
化学薬品、食料品、樹脂等の各種混練物の混練には、ケーシング内で回転軸の回りに回転駆動されるスクリュやパドル等の混練部材を備えた混練機が使用されている。このような混練機には、ケーシング内へ液体を注入する注液ノズルを設けて、水、油、溶剤、アルコール、溶融した樹脂等、ペースト状やスラリー状のものを含む液体を、ケーシング内の混練物に添加するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の注液ノズルを設けた混練機では、液体の注入を停止しているときに、ケーシング内の混練物が注液ノズル内に流入し、流入した混練物が注液ノズル内に付着して注液ノズルが詰まることがある。このようなノズル詰まりを防止する手段として、注液ノズル内に往復動可能なロッドを設け、このロッドの先端に注液ノズルの開口部を開閉する弁体を設けて、混練物の注液ノズル内への流入を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたものでは、ロッドの先端に設けた小径の弁体を、縮径した注液ノズルの開口部に嵌入して、弁体の先端をケーシングの内側に突出させるようにしている。
【0004】
また、混練機ではないが、注入流体導入用ヘッダから主流体通過用導管へ、流体注入ノズルを介して別の流体を注入する分散混合器を対象として、流体注入ノズル内にロッド状の弁体を貫入自在とし、主流体の注入流体導入用ヘッダへの逆流を防止するようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭56−7637号公報(第1−3頁、第3図)
【特許文献2】特許第2760931号公報(第2−3頁、第1−4図)
【特許文献3】特開昭60−187325号公報(第1−3頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されたものは、注液ノズルの開口部を弁体で閉塞することにより、混練物の注液ノズル内への流入を防止できるが、弁体により開口部を閉じるタイミングが遅れたりして、混練物が縮径した開口部よりも奥の注液ノズル内へ流入すると、これらの注液ノズル内に流入して付着する混練物を除去できない問題がある。
【0007】
このように注液ノズル内に流入して付着する混練物を除去するためには、特許文献3に記載されたようなロッド状の弁体を採用し、注液ノズルの開口部も縮径のないストレートな形状とし、注液ノズル内に流入した混練物をケーシング内へ押し戻すようにすればよいが、開口部を開閉するための弁体のストロークが大きくなる。このため、液体の注入、停止の切り換えに時間がかかり、弁体の駆動装置も大きくなる問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、混練物が注液ノズル内に流入して付着しても、これらの付着した混練物をコンパクトな機構で除去できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ケーシング内で回転軸の回りに回転駆動される混練部材を備え、前記ケーシング内へ液体を注入する注液ノズルを設けた混練機において、前記注液ノズル内で往復動可能なロッドを設け、このロッドの先端部外周に掻き取り羽根を設けて、ロッドを回転させるようにした構成を採用した。
【0010】
すなわち、注液ノズル内で往復動可能なロッドの先端部外周に掻き取り羽根を設けて、ロッドを回転させることにより、混練物が注液ノズル内に流入して付着しても、これらの付着した混練物を、回転する掻き取り羽根で掻き取って、注入される液体と一緒にケーシング内へ戻し、コンパクトな機構で除去できるようにした。
【0011】
前記掻き取り羽根を設けたロッドの先端を、前記ケーシング内へ突出可能とすることにより、掻き取り羽根で掻き取った混練物をケーシング内へ押し出し、より確実にケーシング内へ戻すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の混練機は、注液ノズル内で往復動可能なロッドの先端部外周に掻き取り羽根を設けて、ロッドを回転させるようにしたので、混練物が注液ノズル内に流入して付着しても、これらの付着した混練物を、回転する掻き取り羽根で掻き取って、注入される液体と一緒にケーシング内へ戻し、コンパクトな機構で除去することができる。
【0013】
前記掻き取り羽根を設けたロッドの先端を、ケーシング内へ突出可能とすることにより、掻き取り羽根で掻き取った混練物をケーシング内へ押し出し、より確実にケーシング内へ戻すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この混練機は、図1および図2に示すように、ケーシング1内に一対の回転軸2を平行に横架した2軸型のものであり、モータ(図示省略)で回転駆動される各回転軸2には混練部材としての複数のパドル3が外嵌され、これらの回転軸2のパドル3の回転領域が一部で重なるようになっている。基台4に支持されたケーシング1の外周には、冷却水や蒸気等の媒体を通すジャケット5が取り付けられ、混練物はケーシング1の一端側に設けられた供給口1aから供給され、他端側に設けられた排出口1bから排出される。
【0015】
前記供給口1a近くのケーシング1の頂部には、ケーシング1内へ水や油等の液体を注入する注液ノズル6が取り付けられている。注液ノズル6は、ポンプ7から液体が供給される供給口8が設けられた上方部材6aと、ケーシング1に連結された下方部材6bとから成り、上方部材6aの上端に円筒部材9が外嵌接続され、この円筒部材9と注液ノズル6の中にロッド10が挿入されている。
【0016】
前記注液ノズル6の内径は供給口8の下方で縮径され、ケーシング1に形成された注入孔1cに連なっている。また、ロッド10は上部の大径部10aと下部の小径部10bとで形成され、大径部10aは注液ノズル6の上部内径と摺接するようにほぼ等径に形成され、小径部10bの先端部に掻き取り羽根11が設けられている。
【0017】
前記ロッド10の大径部10aの上部には、外周面に螺旋溝12aが形成されたスリーブ12が外嵌され、円筒部材9の上部に取り付けられた係合ピン13が螺旋溝12aと係合するようになっている。また、スリーブ12の下端には座金14が装着され、この座金14と上方部材6aの上端面との間に設けられたコイルばね15によって、ロッド10が上方へ付勢されている。したがって、シリンダ16でロッド10を下方へ押圧することにより、螺旋溝12aと係合ピン13との係合によって、スリーブ12と一緒にロッド10が回転しながら下降する。
【0018】
図3に示すように、前記ロッド10は、先端がケーシング1内へ突出するまで回転しながら下降し、注液ノズル6内に流入して付着した混練物を掻き取ってケーシング1内へ押し出す。このとき、注液ノズル6の供給口8は下降したロッド10の大径部10aで閉塞されるので、ロッド10の大径部10aは弁体の役割もする。なお、ロッド10の先端の突出量は僅かであるので、ケーシング1内のパドル3と干渉することはない。
【0019】
図4は、前記ロッド10を回転下降させる機構の変形例を示す。この変形例は、前記スリーブ12の外周に雄ねじ12bを設けるとともに、円筒部材9の上部に雄ねじ12bと螺合する雌ねじ9aを設け、スリーブ12の上端に取り付けたハンドル17を回すことにより、ロッド10をスリーブ12と一緒に回転下降させるようにしたものである。その他の部分は、ロッド10を上方へ付勢するコイルばね15がないことを除いて、実施形態のものと同じである。
【0020】
上述した実施形態では、シリンダによるロッドへの直線駆動力を回転運動に変換する機構によりロッドを回転させ、上記変形例では、ハンドルによるロッドへの回転駆動力を直線運動に変換する機構によりロッドを往復運動させるようにしたが、このロッドを回転させながら往復運動させる手段は、実施形態や変形例のもののように、回転運動と直線運動との変換機構を用い、コンパクトに組み込めることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】混練機の実施形態を示す縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図2のロッドを回転下降させた状態を示す断面図
【図4】図2の変形例を示す断面図
【符号の説明】
【0022】
1 ケーシング
1a 供給口
1b 排出口
1c 注入孔
2 回転軸
3 パドル
4 基台
5 ジャケット
6 注液ノズル
6a 上方部材
6b 下方部材
7 ポンプ
8 供給口
9 円筒部材
9a 雌ねじ
10 ロッド
10a 大径部
10b 小径部
11 掻き取り羽根
12 スリーブ
12a 螺旋溝
12b 雄ねじ
13 係合ピン
14 座金
15 コイルばね
16 シリンダ
17 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内で回転軸の回りに回転駆動される混練部材を備え、前記ケーシング内へ液体を注入する注液ノズルを設けた混練機において、前記注液ノズル内で往復動可能なロッドを設け、このロッドの先端部外周に掻き取り羽根を設けて、ロッドを回転させるようにしたことを特徴とする混練機。
【請求項2】
前記掻き取り羽根を設けたロッドの先端を、前記ケーシング内へ突出可能とした請求項1に記載の混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−95469(P2006−95469A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286765(P2004−286765)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】