説明

混練脱泡装置及び被混練脱泡材料の混練脱泡方法

【課題】混練精度の高い混練脱泡装置、及び、被混練脱泡材料の混練脱泡方法を提供する。
【解決手段】混練脱泡装置1は、公転軸10の回転に伴って回転する回転体20と、回転体に自転可能に取り付けられた、回転体の回転に伴って公転するホルダ30と、ホルダの公転に伴って、ホルダに自転トルクを付与する自転トルク付与機構52と、ホルダに、ホルダの自転軸線L2と交差する方向に延びる仮想の直線L3を中心に回転可能に取り付けられた、被混練脱泡材料Mが収納された容器100を保持する容器保持部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練脱泡装置及び被混練脱泡材料の混練脱泡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質を混練脱泡する装置として、物質が収納された容器を自転及び公転させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、容器を自転及び公転させる際に容器内の物質に作用する遠心力を利用して、物質を混練する(攪拌する、混合する、分散させる)とともに、物質に内在する気泡を放出させることができる。
【特許文献1】 特開平10−43568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の混練脱泡装置を利用した場合でも、被混練脱泡材料の性質や、被混練脱泡材料を収納する容器の形状によっては、被混練脱泡材料を精度よく混練することが困難な場合があった。また、自転公転速度を高めることなく、被混練脱泡材料の混練精度を高めることができれば、装置や被混練脱泡材料に大きな負担をかけることなく、被混練脱泡材料を混練することが可能になる。
【0004】
本発明の目的は、混練粘度の高い混練脱泡装置、及び、被混練脱泡材料の混練脱泡方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る混練脱泡装置は、
公転軸の回転に伴って回転する回転体と、
前記回転体に自転可能に取り付けられた、前記回転体の回転に伴って公転するホルダと、
前記ホルダの公転に伴って、前記ホルダに自転トルクを付与する自転トルク付与機構と、
前記ホルダに、前記ホルダの自転軸線と交差する方向に延びる仮想の直線を中心に回転可能に取り付けられた、被混練脱泡材料が収納された容器を保持する容器保持部と、
を含む。
【0006】
本発明に係る混練脱泡装置によると、被混練脱泡材料が収納された容器を自転及び公転させる工程で、該容器を仮想の直線を中心に回転させることが可能になり、精度の高い混練処理を行うことが可能になる。
【0007】
そのため、従来の混練脱泡装置では混練が難しかった材料や、従来の混練脱泡装置を利用した混練処理に適しない形状の容器に収納された材料であっても、精度よく混練することが可能になる。
【0008】
また、本発明に係る混練脱泡装置によると、自転及び公転の角速度を大きくすることなく、従来の混練脱泡装置と同等かそれ以上の精度で、材料の混練処理を行うことができる。そのため、混練処理中に、材料にかかる負担を小さくすることができる。
【0009】
(2)この混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転軸線と前記仮想の直線とが、直交するように構成されてもよい。
【0010】
(3)この混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転軸線と前記仮想の直線とが、斜めに交差するように構成されてもよい。
【0011】
(4)この混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転及び公転動作に伴って、前記容器保持部が前記仮想の直線を中心に回転するように、前記容器保持部に回転トルクを付与する回転トルク付与機構をさらに含んでいてもよい。
【0012】
これによると、容器保持部(容器)を、公転軸を中心に公転させながら自転軸を中心に自転させ、さらに、仮想の直線を中心に回転させることができる。すなわち、容器を、3本の軸を中心に回転させることができる。そのため、精度の高い混練処理を実現することができる。
【0013】
(5)この混練脱泡装置において、
前記回転トルク付与機構は、前記ホルダに取り付けられたモータであってもよい。
【0014】
これによると、容器の回転角速度を容易に調整することが可能になる。
【0015】
(6)この混練脱泡装置において、
前記回転トルク付与機構は、
前記回転体に固定された、前記回転体の自転軸線と同心の固定プーリーと、
前記容器保持部に固定され、前記容器保持部と同心に回転可能に構成された回転プーリーと、
前記固定プーリーと前記回転プーリーとの間で回転トルクを伝達する回転トルク伝達機構と、
を含んでもよい。
【0016】
これによると、特別な駆動源を利用することなく、容器保持部(すなわち容器)を回転させることが可能になる。そのため、混練精度が高く、かつ、簡易な構成の混練脱泡装置を提供することができる。
【0017】
(7)この混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記ホルダに対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0018】
(8)この混練脱泡装置において、
前記容器は、外形が細長い筒状となっていてもよい。
【0019】
この混練脱泡装置を利用することにより、外形が細長い筒状の容器に収納された材料であっても、精度よく混練することが可能になる。
【0020】
(9)この混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記容器を、前記容器の長手方向が前記仮想の直線と平行になるように保持してもよい。
【0021】
(10)この混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、1つの前記容器を、長手軸が前記仮想の直線と一致するように保持してもよい。
【0022】
(11)この混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、複数の前記容器を、前記仮想の直線を中心とする仮想の円周上に保持してもよい。
【0023】
(12)この混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記容器を、前記容器の長手方向が前記仮想の直線と交差するように保持してもよい。
【0024】
(13)本発明に係る被混練脱泡材料の混練脱泡方法は、
被混練脱泡材料が収納された容器を保持するホルダを自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置を利用して、前記ホルダを自転及び公転させて前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程を含み、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程で、前記容器を、前記ホルダの自転軸線と交差する方向に延びる仮想の直線を中心に回転させる。
【0025】
本発明に係る被混練脱泡材料の混練脱泡方法によると、被混練脱泡材料を混練脱泡する工程で、該容器を仮想の直線(第3の軸線)を中心に回転させるため、精度の高い混練処理を行うことが可能になる。
【0026】
そのため、従来の方法では混練が難しかった材料や、従来の方法を利用した混練処理に適しない形状の容器に収納された材料であっても、精度よく混練することが可能になる。
【0027】
また、本発明に係る混練脱泡方法によると、自転及び公転の角速度を大きくすることなく、従来の混練脱泡方法と同等かそれ以上の精度で、材料の混練処理を行うことができる。そのため、混練処理中に材料にかかる負担を大きくすることなく、精度の高い混練処理を行うことができる。
【0028】
(14)この混練脱泡方法において、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程は、
前記ホルダを自転及び公転させる第1の自公転工程と、
前記ホルダの自転及び公転を停止して、前記容器を回転させる工程と、
前記容器を回転させる工程の後に、前記ホルダを自転及び公転させる第2の自公転工程と、
を含んでいてもよい。
【0029】
(15)この混練脱泡方法において、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程では、
前記ホルダを自転及び公転させながら、前記容器を前記仮想の直線を中心に回転させてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0031】
(1)混練脱泡装置1の構成
はじめに、本発明を適用した実施の形態に係る混練脱泡装置1の構成について説明する。図1(A)〜図2は、混練脱泡装置1について説明するための図である。
【0032】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)に示すように、公転軸10を含む。公転軸10は、仮想の直線を中心に回転するように構成されている。本実施の形態では、公転軸10は、図1(A)に示すように、鉛直に延びる仮想の直線(公転軸線L1)を軸として回転するように構成されている。ただし、公転軸10は、水平に延びる直線を軸として回転するように構成されていてもよい(図示せず)。
【0033】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)に示すように、回転体20を含む。回転体20は、公転軸10の回転に伴って回転するように構成されている。回転体20は、公転軸線L1を中心に(軸線として)回転するように構成されていてもよい。なお、回転体20は、公転軸10に固定されていてもよい。これにより、回転体20を、公転軸10の回転に伴って回転させることが可能になる。
【0034】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)及び図1(B)に示すように、ホルダ30を有する。ホルダ30は、容器100(容器保持部40)を保持する役割を果たす。以下、ホルダ30について詳述する。
【0035】
ホルダ30は、回転体20の所定の位置に、自転可能に取り付けられている。ホルダ30は、回転体20の所定の位置を通る仮想の直線(自転軸線L2)を軸として自転するように構成されている。本実施の形態では、ホルダ30は、公転軸線L1と平行に延びる仮想の直線を軸として自転するように構成されている。すなわち、本実施の形態では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、平行に延びる直線となる。なお、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように混練脱泡装置を構成する場合、公転軸線L1と自転軸線L2とが所定の角度で交差するように混練脱泡装置を構成する場合に比べて、回転体20(ホルダ30及び自転軸32)の公転半径を小さくすることができる。そのため、混練脱泡装置の外形を小さくすることが可能になる。
【0036】
ホルダ30は、例えば図1(A)に示すように、回転体20に取り付けられた軸受け34と同軸に回転する自転軸32に固定されていてもよい。これにより、ホルダ30を、回転体20に対して自転可能とすることができる。
【0037】
また、ホルダ30は、回転体20における、公転軸線L1から所定の間隔をあけた位置に取り付けられている。これにより、ホルダ30を、回転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転させることが可能になる。
【0038】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)及び図1(B)に示すように、容器保持部40を含む。容器保持部40は、容器100を保持する役割を果たす。容器保持部40は、容器100を固定保持することが可能に構成されていてもよい。このとき、容器保持部40は、容器100を固定可能ないずれかの構成となっていればよい。例えば、容器保持部40には凹部が形成されており、該凹部に容器100をはめ合わせることによって、容器100を固定するように構成されていてもよい。
【0039】
容器保持部40は、ホルダ30に、自転軸線L2と交差する方向に延びる仮想の直線L3を中心に回転可能に取り付けられている。容器保持部40は、ホルダ30に取り付けられた軸受け44と同軸に回転する回転軸42に固定されていてもよい。これにより、容器保持部40を、ホルダ30に対して回転可能に設定することができる。
【0040】
容器保持部40は、外形が細長形状になっている容器100(例えばシリンジ容器)を保持することが可能に構成されていてもよい(図1(A)及び図1(B)参照)。このとき、容器保持部40は、容器100の長手方向と直線L3とが平行になるように構成されていてもよい。そして、容器保持部40は、容器100の長手軸と直線L3とが一致するように構成されていてもよい。ただし、容器保持部40は、容器100の長手軸と直線L3とが間隔をあけて配置されるように構成されていてもよい(図示せず)。
【0041】
なお、容器保持部40は、ホルダ30(回転軸42)に対して着脱自在に構成されていてもよい。このとき、容器保持部40を、ホルダ30(混練脱泡装置1)のアダプタとみなすことができる。
【0042】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)及び図1(B)に示すように、自転軸線L2(自転軸32)と直線L3(回転軸42)とが直交するように構成されている。すなわち、容器保持部40が、自転軸線L2と直交する軸を中心に回転するように構成されている。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、混練脱泡装置は、自転軸線L2と直線L3とが交差しないように(ねじれの位置に配置されるように)構成されていてもよい(図示せず)。
【0043】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)に示すように、トルク付与機構50を含む。トルク付与機構50は、ホルダ30(容器100)に回転トルクを付与する役割を果たす。トルク付与機構50は、ホルダ30に自転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。トルク付与機構50は、ホルダ30に公転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。トルク付与機構50は、また、ホルダ30に自転トルク及び公転トルクを付与することが可能に構成されていてもよい。すなわち、トルク付与機構50(混練脱泡装置1)は、ホルダ30を自転のみさせることが可能に構成されていてもよく、公転のみさせることが可能に構成されていてもよく、自転させながら公転させることが可能に構成されていてもよい。以下、トルク付与機構50の一例について説明する。
【0044】
トルク付与機構50は、ホルダ30に公転トルクを付与する公転トルク付与機構として、公転軸10を回転駆動させるモータ51を含む。先に説明したように、混練脱泡装置1では、回転体20は公転軸10の回転に伴って回転するように構成されており、ホルダ30は回転体20の回転に伴って公転するように構成されている。すなわち、公転軸10を回転させることによって、ホルダ30を公転させることができる。そのため、モータ51(モータ51、及び、公転軸10、回転体20)によって、ホルダ30に公転トルクを付与することができる。
【0045】
また、トルク付与機構50は、ホルダ30に自転トルクを付与する、自転トルク付与機構52を含む。自転トルク付与機構52は、ホルダ30の公転(公転軸10の回転)に伴って、ホルダ30に自転トルクを付与するように構成されていてもよい。自転トルク付与機構52は、ホルダ30(自転軸32)に固定された自転プーリー54と、回転体20と同心軸に回転可能な自転力付与プーリー56と、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされたトルク伝達ベルト58と、を含んでいてもよい。この構成では、トルク伝達ベルト58によって、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56の回転角速度が関連付けられる。そのため、自転プーリー54と自転力付与プーリー56とを、遊星機構と同様に挙動させることができ、回転体20を回転(自転プーリー54を公転)させることによって、自転プーリー54に自転トルクを付与することが可能になる。例えば自転力付与プーリー56が回転しないように設定された状態で、回転体20を反時計回りに回転させると(自転プーリー54を反時計回りに公転させると)、自転プーリー54は、自転軸線L2を中心に時計周りに自転する。そして、自転プーリー54はホルダ30(自転軸32)に固定されていることから、自転トルク付与機構52によって、ホルダ30に自転トルクを付与することが可能になる。あるいは、自転力付与プーリー56が回転自在の状態で自転プーリー54を公転させると、自転力付与プーリー56は自転プーリー54の公転角速度と同じ角速度で自転するため、自転プーリー54は自転せずに公転のみすることになる。
【0046】
なお、自転トルク付与機構52は、ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定することが可能に構成されていてもよい。自転トルク付与機構52は、自転力付与プーリー56の回転角速度を調整することにより、ホルダ30の自転角速度を所望の値に設定するように構成されていてもよい。自転力付与プーリー56の回転角速度は、例えば、モータ51の駆動力を自転力付与プーリー56に伝達する機構や、モータ51とは別に用意された自転力付与モータの駆動力を利用する機構など、すでに公知となっているいずれかの機構によって調整してもよい。
【0047】
なお、混練脱泡装置1が、公転軸線L1と自転軸線L2とが平行になるように構成されている場合、自転トルク付与機構52のトルク伝達のロスを極めて小さくすることができる。そのため、混練脱泡装置を、効率よく動作させることが可能になる。
【0048】
混練脱泡装置1は、ホルダ30の回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を制御する制御装置を含んでいてもよい。制御装置は、トルク付与機構50の動作を調整することによって、ホルダ30の回転角速度を制御するように構成されていてもよい。具体的には、制御装置は、モータ51の駆動(回転速度)を調整することにより、ホルダ30の公転角速度を制御するように構成されていてもよい。また、制御装置は、モータ51の駆動力を自転力付与プーリー56に伝達する駆動力伝達機構(ギア比など)を調整することにより、あるいは、自転力付与モータの駆動を調整することにより、ホルダ30の自転角速度を制御するように構成されていてもよい。
【0049】
なお、制御装置は、経過時間と関連付けられて予め定められた回転角速度で、ホルダ30を自転及び/又は公転させることが可能に構成されていてもよい。言い換えると、混練脱泡装置1は、制御装置によって、時間の経過に伴って回転角速度(自転角速度及び公転角速度)を変化させることができるように構成されていてもよい。これにより、ホルダ30を、所望の回転角速度で自転及び/又は公転させることが可能になるため、被混練脱泡材料Mに最も適した手順で、被混練脱泡材料Mを混練脱泡することが可能になる。なお、「ホルダ30を自転及び/又は公転させる」とは、ホルダ30を自転のみさせること、ホルダ30を公転のみさせること、ホルダ30を自転させながら公転させることを含むものとする。
【0050】
制御装置(混練脱泡装置1)は、ホルダ30を自転及び/又は公転させる工程の最後に、ホルダ30を公転のみさせるように構成されていてもよい。なお、「公転のみさせる」とは、「ホルダ30が回転体20に対して自転しない状態で、ホルダ30を公転させる」こと、及び、「ホルダ30を公転させながら、公転角速度に対して極めて小さい自転角速度(例えば1/40程度)で自転させる」ことを含むものとする。
【0051】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、図1(A)及び図1(B)に示すように、回転トルク付与機構60を含む。回転トルク付与機構60は、ホルダ30が自転及び公転する工程で、容器保持部40が直線L3を中心に回転するように、容器保持部40に回転トルクを付与する役割を果たす。以下、回転トルク付与機構60について説明する。
【0052】
回転トルク付与機構60は、固定プーリー62を含む。固定プーリー62は、回転体20の自転軸線L2と同心となるように、回転体20に固定されている。
【0053】
回転トルク付与機構60は、回転プーリー64を含む。回転プーリー64は、容器保持部40に固定され、容器保持部40と同心に回転可能に構成されている。回転プーリー64は、例えば、回転軸42に固定されていてもよい。なお、回転プーリー64は、自転軸線L2からずれた位置に(自転軸線L2と間隔をあけて)配置されていてもよい。これにより、ホルダ30が自転軸線L2を中心に自転する際に、回転プーリー64が自転軸線L2(固定プーリー62)を中心に公転することになる。
【0054】
回転トルク付与機構60は、固定プーリー62及び回転プーリー64にかけまわされたベルト66を含む。ベルト66は、固定プーリー62と回転プーリー64との間で回転トルクを伝達する役割を果たす。そのため、ベルト66を、回転トルク伝達機構と称してもよい。なお、回転トルク付与機構60は、図示しないガイドプーリーをさらに含んでいてもよい。ガイドプーリーによると、ベルト66を所定の角度に屈曲させることができ、回転トルク付与機構60(固定プーリー62及び回転プーリー64)の設計の自由度を確保することができる。
【0055】
回転トルク付与機構60は、以上のように構成されていてもよい。回転トルク付与機構60によると、固定プーリー62と回転プーリー64とを遊星機構と同様に挙動させることができる。そのため、ホルダ30が自転すると、回転プーリー64は固定プーリー62を中心に公転し、回転プーリー64に回転トルクが付与される。なお、固定プーリー62と回転プーリー64との回転角速度比は、固定プーリー62及び回転プーリー64の径を調整することで、自由に設定することができる。
【0056】
ただし、本発明に適用可能な回転トルク付与機構60の構成は、これに限られるものではない。例えば、回転トルク付与機構60は、固定プーリー62に変えて、自転軸線L2と同心に回転可能なプーリーを有していてもよい。そして、回転トルク付与機構60は、該プーリーの回転角速度を調整するための回転角速度調整機構を備えていてもよい。あるいは、回転トルク付与機構60を、ホルダ30に固定されたモータによって実現してもよい。
【0057】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、バランス錘70を含んでいてもよい。バランス錘70は、回転体20に取り付けられて、回転体20の回転に伴って公転するように構成されている。バランス錘70によって、回転体20を、安定して回転させることができ、混練脱泡装置1の動作を安定させることができる。なお、バランス錘70は、公転軸線L1からの距離を調整可能に構成されていてもよい。
【0058】
本実施の形態に係る混練脱泡装置1は、さらに、公転軸10、回転体20、ホルダ30、トルク付与機構50を支持するための支持体や、これらを収納する筐体をさらに含んでいてもよい(図示せず)。
【0059】
次に、容器100について説明する。容器100は、被混練脱泡材料が収納される容器である。本実施の形態では、容器100の形状は特に限定されるものではない。容器100は、図1(A)及び図1(B)に示すように、細長形状となっていてもよい。すなわち、容器100は、シリンジ容器であってもよい。容器100は、本体102と蓋体104とを含んで構成されていてもよい。ここで、本体102は被混練脱泡材料Mが収納される内部空間を有する形状となっていてもよく、蓋体104は本体102の内部空間を密閉することが可能に構成されていてもよい。これにより、被混練脱泡材料Mを混練脱泡する工程で、被混練脱泡材料Mが容器100からこぼれ出ることを防止することができる。
【0060】
なお、容器100は、容器保持部40に固定されるように構成されていてもよい。これにより、容器100を容器保持部40と同様に挙動(回転)させることが可能になる。
【0061】
(2)被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法
次に、本発明を適用した実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法について説明する。図2は、本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法について説明するためのフローチャート図である。
【0062】
本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、混練脱泡装置1、及び、被混練脱泡材料Mが収容された容器100を用意する工程(ステップS10)、及び、混練脱泡装置1の容器保持部40に容器100を保持させる工程(ステップS12)を含む。
【0063】
本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、容器100が容器保持部40に保持された状態で、混練脱泡装置1のホルダ30を自転及び公転させる工程(ステップS14)を含む。なお、先に説明したように、混練脱泡装置1は、ホルダ30を自転及び公転させることにより、容器保持部40(容器100)が回転するように構成されている。そのため、ホルダ30を自転及び公転させる工程で、容器100を、直線L3を中心に回転させることができる。本工程により、特に、被混練脱泡材料Mを精度よく混練することができる。
【0064】
本実施の形態に係る被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法は、ホルダ30が自転しないように、ホルダ30を公転のみさせる工程を含んでいてもよい。本工程により、混練処理がなされた被混練脱泡材料Mを、精度よく脱泡することができる。なお、本工程では、容器100の先端が公転軸線L1から最も遠い位置を通過するように、ホルダ30を公転させてもよい。これによると、被混練脱泡材料Mを容器100の先端に集めることができる。
【0065】
(3)作用効果
次に、本実施の形態に係る混練脱泡装置1、及び、被混練脱泡材料Mの混練脱泡方法が奏する作用効果について説明する。
【0066】
先に説明したように、混練脱泡装置1によると、ホルダ30を自転及び公転させながら、容器保持部40(容器100)を回転させることが可能になる。そのため、混練脱泡装置1によると、容器100内で、被混練脱泡材料Mを激しく移動(流動・対流)させることができるため、被混練脱泡材料Mを、高い精度で混練することが可能になる。
【0067】
そのため、従来の混練脱泡装置では混練が難しかった材料や、従来の混練脱泡装置を利用した混練処理に適しない形状の容器に収納された材料であっても、精度よく混練することが可能になる。また混練脱泡装置1によると、自転及び公転の角速度を大きくすることなく、従来の混練脱泡装置と同等かそれ以上の精度で、材料の混練処理を行うことができる。そのため、混練処理中に、材料にかかる負担を小さくすることができる。
【0068】
(4)変形例
次に、本発明を適用した実施の形態の変形例について説明する。
【0069】
(4−1)第1の変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の第1の変形例について説明する。図3は、この変形例について説明するための図である。
【0070】
本変形例に係る混練脱泡装置は、図3に示す、ホルダ35を有する。ホルダ35は、図3に示すように、容器保持部40が、自転軸線L2と斜めに交差する仮想の直線L4を中心に回転可能になるように、容器保持部40を保持する構成となっている。すなわち、容器保持部40は、ホルダ35に、ホルダ35の自転軸線L2と斜めに交差する仮想の直線L4を中心に回転可能に取り付けられていると言える。
【0071】
この混練脱泡装置を利用した場合にも、上記と同様の作用効果を奏することができるため、精度の高い混練処理を実現することができる。また、この混練脱泡装置によると、公転による遠心力の向きを、容器100の内壁面と交差する方向とすることができる。そのため、混練処理において、容器100の内壁面に材料がこびりつくことを防止することができる。また、容器100の内壁面にこびりついた材料があったとしても、混練処理において、これを押し流すことが可能になる。そのため、精度の高い混練処理が可能になる。
【0072】
(4−2)第2の変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の第2の変形例について説明する。図4は、この変形例について説明するための図である。
【0073】
本変形例に係る混練脱泡装置は、図4に示す、容器保持部45を有する。容器保持部45は、図4に示すように、ホルダ30に、ホルダ30の自転軸線L2と交差(直交)する方向に延びる仮想の直線L3を中心に回転可能に取り付けられている。
【0074】
そして、容器保持部45は、回転軸線(直線L3)と容器100の長手方向とが交差するように、容器100を保持するように構成されている。容器保持部45は、図4に示すように、容器100の長手方向と直線L3とが斜めに交差するように、容器100を保持するように構成されていてもよい。あるいは、容器保持部45は、容器100の長手方向と直線L3とが直交するように、容器100を保持するように構成されていてもよい(図示せず)。
【0075】
この混練脱泡装置を利用した場合でも、精度の高い混練処理を実現することができる。
【0076】
(4−3)第3の変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の第3の変形例について説明する。図5は、この変形例について説明するための図である。
【0077】
本変形例に係る混練脱泡装置は、図5に示すように、ホルダ35と容器保持部45とを含む。これによっても、精度の高い混練処理を実現することができる。
【0078】
(4−4)第4の変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の第4の変形例について説明する。図6は、この変形例について説明するための図である。
【0079】
本実施の形態に係る混練脱泡装置は、図6に示すように、容器保持部47を含む。容器保持部47は、複数の容器100を保持することが可能に構成されている。容器保持部47は、複数の容器100を、直線L3を中心とする円周上に保持するように構成されていてもよい。容器保持部47は、例えば図6に示すように、円柱形の外形をなし、その高さ方向に延びる複数の貫通穴(あるいは凹部)が形成された構成となっていてもよい。
【0080】
この混練脱泡装置によると、複数の容器100に収納された被混練脱泡材料Mを同時に混練することができるため、混練処理効率を高めることができる。また、複数の容器100を、直線L3から等距離の位置に配置することができるため、容器100毎の混練精度のばらつきの発生を防止することができる。
【0081】
(4−5)第5の変形例
以下、本発明を適用した実施の形態の第5の変形例について説明する。図7は、この変形例について説明するための図である。
【0082】
本変形例に係る混練脱泡装置は、回転体21を有する。回転体21は、その一部(ホルダ30を保持する部分)が屈曲している。詳しくは、回転体21は、公転軸線L1から離れるほど高さが高くなるように屈曲する屈曲部23を有する。そして、屈曲部23に、ホルダ30(自転軸32及び軸受け34)が取り付けられる。これにより、自転軸線L2が、公転軸線L1と所定の角度で交差するように設定された混練脱泡装置を実現することができる。なお、公転軸線L1と自転軸線L2とは、例えば45度で交差するように調整されていてもよい。
【0083】
この混練脱泡装置を利用した場合でも、精度の高い混練処理を実現することができる。
【0084】
(4−6)その他
なお、上記の各変形例では、容器保持部に回転トルクを付与する回転トルク付与機構について省略したが、上記混練脱泡装置は、容器保持部40又は容器保持部45、あるいは、容器保持部47に回転トルク付与機構を含んで構成されていてもよい。
【0085】
ただし、本発明に係る混練脱泡装置は、回転トルク付与機構を含まない構成となっていてもよい。この場合には、容器保持部40が、容器100内での被混練脱泡材料Mの移動(重心位置の変動)によって直線L3を中心に回転するように、ホルダ30(あるいはホルダ35)の自転・公転速度を調整してもよい。
【0086】
あるいは、混練脱泡装置が回転トルク付与機構を含まないように構成されている場合、手動にて、容器保持部(あるいは容器)を回転させてもよい。例えば、ホルダ30を自転及び公転させる第1の自公転工程の後にホルダ30の自転及び公転を停止させ、容器保持部(容器)を回転させる工程を行い、その後、ホルダ30を自転及び公転させる第2の自公転工程を行ってもよい。これによっても、容器100の内壁面に被混練脱泡材料Mがこびりつくことを防止することができるため、精度の高い混練処理を実現することができる。
【0087】
また、混練脱泡装置は、複数のホルダ30を含んで構成されていてもよい。例えば回転体20には、公転軸線L1を基準としてホルダ30と対象となる位置に、第2のホルダが備え付けられていてもよい(図示せず)。このとき、回転体20には、バランス錘70に変えて、第2のホルダが備え付けられていてもよい。この構成とすることで、一度に保持することが可能な容器100の数を増やすことができるため、一度に処理することが可能な被混練脱泡材料Mの量を増やすことができる。また、この構成によると、混練脱泡装置の運転中に被混練脱泡材料Mの移動を原因とする重心の移動が発生しにくくなり、混練脱泡装置を安定して動作させることができる。なお、混練脱泡装置は、3個以上の複数のホルダを含んで構成されていてもよい。
【0088】
また、上記の実施形態では、プーリーとベルトとを含む構成の動力伝達機構(自転トルク付与機構52や回転トルク付与機構60)を有する混練脱泡装置について説明した。ただし、本発明に適用可能な動力伝達機構は、これに限られるものではなく、例えば歯車などの、既に公知となっているいずれかの動力伝達機構を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図2】本発明に係る混練脱泡方法について説明するためのフローチャート図。
【図3】第1の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図4】第2の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図5】第3の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図6】第4の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【図7】第5の変形例に係る混練脱泡装置について説明するための図。
【符号の説明】
【0090】
1…混練脱泡装置、 10…公転軸、 20…回転体、 21…回転体、 23…屈曲部、 30…ホルダ、 32…自転軸、 34…軸受け、 35…ホルダ、 40…容器保持部、 42…回転軸、 44…軸受け、 45…容器保持部、 47…容器保持部、50…トルク付与機構、 51…モータ、 52…自転トルク付与機構、 54…自転プーリー、 56…自転力付与プーリー、 58…トルク伝達ベルト、 60…回転トルク付与機構、 62…固定プーリー、 64…回転プーリー、 66…ベルト、 70…バランス錘、 100…容器、 102…本体、 104…蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公転軸の回転に伴って回転する回転体と、
前記回転体に自転可能に取り付けられた、前記回転体の回転に伴って公転するホルダと、
前記ホルダの公転に伴って、前記ホルダに自転トルクを付与する自転トルク付与機構と、
前記ホルダに、前記ホルダの自転軸線と交差する方向に延びる仮想の直線を中心に回転可能に取り付けられた、被混練脱泡材料が収納された容器を保持する容器保持部と、
を含む混練脱泡装置。
【請求項2】
請求項1に記載の混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転軸線と前記仮想の直線とが、直交するように構成された混練脱泡装置。
【請求項3】
請求項1に記載の混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転軸線と前記仮想の直線とが、斜めに交差するように構成された混練脱泡装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の混練脱泡装置において、
前記ホルダの自転及び公転動作に伴って、前記容器保持部が前記仮想の直線を中心に回転するように、前記容器保持部に回転トルクを付与する回転トルク付与機構をさらに含む混練脱泡装置。
【請求項5】
請求項4に記載の混練脱泡装置において、
前記回転トルク付与機構は、前記ホルダに取り付けられたモータである混練脱泡装置。
【請求項6】
請求項4に記載の混練脱泡装置において、
前記回転トルク付与機構は、
前記回転体に固定された、前記回転体の自転軸線と同心の固定プーリーと、
前記容器保持部に固定され、前記容器保持部と同心に回転可能に構成された回転プーリーと、
前記固定プーリーと前記回転プーリーとの間で回転トルクを伝達する回転トルク伝達機構と、
を含む混練脱泡装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記ホルダに対して着脱可能に構成されている混練脱泡装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の混練脱泡装置において、
前記容器は、外形が細長い筒状となっている混練脱泡装置。
【請求項9】
請求項8に記載の混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記容器を、前記容器の長手方向が前記仮想の直線と平行になるように保持する混練脱泡装置。
【請求項10】
請求項9に記載の混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、1つの前記容器を、長手軸が前記仮想の直線と一致するように保持する混練脱泡装置。
【請求項11】
請求項9に記載の混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、複数の前記容器を、前記仮想の直線を中心とする仮想の円周上に保持する混練脱泡装置。
【請求項12】
請求項8に記載の混練脱泡装置において、
前記容器保持部は、前記容器を、前記容器の長手方向が前記仮想の直線と交差するように保持する混練脱泡装置。
【請求項13】
被混練脱泡材料が収納された容器を保持するホルダを自転及び公転させることが可能に構成された混練脱泡装置を利用して、前記ホルダを自転及び公転させて前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程を含み、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程で、前記容器を、前記ホルダの自転軸線と交差する方向に延びる仮想の直線を中心に回転させる被混練脱泡材料の混練脱泡方法。
【請求項14】
請求項13に記載の混練脱泡方法において、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程は、
前記ホルダを自転及び公転させる第1の自公転工程と、
前記ホルダの自転及び公転を停止して、前記容器を前記仮想の直線を中心に回転させる工程と、
前記容器を回転させる工程の後に、前記ホルダを自転及び公転させる第2の自公転工程と、
を含む混練脱泡方法。
【請求項15】
請求項13に記載の混練脱泡方法において、
前記被混練脱泡材料を混練脱泡する工程では、
前記ホルダを自転及び公転させながら、前記容器を前記仮想の直線を中心に回転させる混練脱泡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82895(P2009−82895A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276951(P2007−276951)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】