説明

清掃体ホルダ、清掃用具

【課題】 清掃対象の清掃を行なうための清掃体が清掃体ホルダの長尺状の保持部によって保持される清掃用具において、長尺状の保持部の撓み方向に関し自由度を付与することができ、以って清掃作業の円滑化を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る清掃用具100の清掃体ホルダ130は、使用者の手指によって把持されるハンドル部150と、ハンドル部150から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在する一対の保持部142,142とを含み、各保持部142は、ハンドル部150と保持部142との接続部141を支点として当該保持部142の延在方向と交差する第1の方向とこの第1の方向と交差する第2の方向との少なくとも2方向に撓み変位可能であるとともに、先端部143に第1の方向に2.5Nの荷重が付与されると第1の方向に15〜80°の角度で撓み、また先端部143に第2の方向に2.5Nの荷重が付与されると第2の方向に25〜55°の角度で撓む構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用具に係り、詳しくは清掃対象を清掃するための清掃用具の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の清掃体によって清掃対象の清掃を行う清掃用具が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、清掃布と、この清掃布を着脱自在に保持する柄とを備え、柄の先端側に設けられた長尺状のヘッド部(保持部)を清掃布に設けられた収容領域に挿設することによって、清掃布が保持状態となるように構成された清掃用具が開示されている。
ところで、清掃体が清掃体ホルダの保持部によって保持されるこの種の清掃用具の設計に際しては、清掃対象の種類や場所等に対応した種々の形態の清掃作業を可能とするべく、保持部の撓み動作をより多くの方向に関して許容する構造が要請される。しかしながら、引用文献1に開示の清掃用具は、柄を介して保持された清掃布を用いることによって清掃対象の拭き清掃を行う可能性を有するが、清掃布の収容領域に挿設される保持部(ヘッド部)が平板形状であり、保持部の撓み動作がほぼ上下方向に限定されるところ、清掃作業時に保持部の撓み方向に関する自由度を確保するのが難しい。
【特許文献1】特開平9−154791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、清掃対象の清掃を行なうための清掃体が清掃体ホルダの保持部によって保持される清掃用具において、保持部の撓み方向に関し自由度を付与することができ、以って清掃作業の円滑化を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両等の室内、室外、屋外における被清掃領域(床面、壁面、窓、天井面、外壁面、柱、家具面、衣類、カーテン、ブラインド、寝具、照明、電気コード類、家電品等)や、人体の各構成部位における被清掃領域等を含む清掃対象を清掃するための清掃用具の構成に適用され得る。これら各種の清掃対象における被清掃領域は、平面として構成されてもよいし、或いは曲面、凹凸面、段差面として構成されてもよい。
【0005】
本発明に係る清掃体ホルダは、清掃対象の清掃に用いられる清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダであって、把持部及び保持部を少なくとも備える。把持部は、使用者の手指で把持される部位として構成される。保持部は、把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し清掃体を保持する部位として構成される。このとき、把持部及び保持部は、互いに分離不能に一体状として構成されてもよいし、或いは互いに分離可能として構成されてもよい。また、把持部から延在する保持部の数は、必要に応じて1または複数とされる。
【0006】
本発明の清掃体ホルダでは特に、前記の保持部は、当該保持部の延在方向と交差する第1の方向とこの第1の方向と交差する第2の方向との少なくとも2方向に撓み変位可能とされる。この保持部は、把持部と保持部との間の部位、典型的には把持部と保持部との接続部や保持部自体の根元部分を支点とした撓み変位が許容される。この保持部は、当該保持部の延在方向先端側の先端部に第1の方向に2.5Nの荷重が付与されると第1の方向に15〜80°の角度で撓み、また先端部に第2の方向に2.5Nの荷重が付与されると第2の方向に25〜55°の角度で撓む構成であるのが好ましい。保持部の撓み変位に関する角度は、典型的には撓み変位前の保持部の延在線と、撓み変位後の保持部の先端部と撓みの支点とを結ぶ線とがなす角度として規定される。このような撓み変位特性により、清掃体を清掃対象に軽く押し付ける清掃形態を想定した場合に、荷重に見合った適正な撓み変位で保持部を撓ませることが可能となる。また、第1の方向及び第2の方向のいずれに関しても概ね一定とされた撓み変位が許容されるため、保持部の撓み方向に関し自由度を付与することができる。
【0007】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部は、先端部に第1の方向に0.5Nの荷重が付与されると第1の方向に6〜50°の角度で撓み、また先端部に第2の方向に0.5Nの荷重が付与されると第2の方向に8〜35°の角度で撓む構成であるのが好ましい。このような撓み変位特性により、更に清掃体を清掃対象に押し付けることなく清掃体を非常に軽く優しくならすような清掃形態を想定した場合に、荷重に見合った適正な撓み変位で保持部を撓ませることが可能となる。
【0008】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部は、先端部に第1の方向に4.7Nの荷重が付与されると第1の方向に35〜85°の角度で撓み、また先端部に第2の方向に4.7Nの荷重が付与されると第2の方向に45〜83°の角度で撓む構成であるのが好ましい。このような撓み変位特性により、更にかなりしっかりと清掃体を清掃対象に押し付けるような清掃形態を想定した場合に、荷重に見合った適正な撓み変位で保持部を撓ませることが可能となる。
【0009】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部は、第1の方向に沿った長さが接続部から先端部に向けて縮小された構成であるのが好ましい。なお、保持部の第1の方向に沿った長さの縮小態様や、第2の方向に沿った長さの拡張態様に関しては、当該長さが接続部から先端部に向けて直線状、曲線状、或いは段差状に縮小ないし拡張される構成等を適宜選択することができる。これにより、第1の方向に沿った長さが接続部から先端部に向けて縮小された保持部を有する清掃体ホルダが提供される。
またこのような構成によれば、保持部の先端部を用いたより繊細な払拭操作に有効とされる。また、保持部の清掃対象との間の一次接触圧を先端部によって吸収することができ、使用者にソフトな使用感を与えるのに効果的である。更に、保持部のうち先端部よりも接続部の剛性を相対的に高めることによって、清掃体ホルダの高強度を使用者に容易にアピールすることが可能となる。
【0010】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部は、第1の方向に沿った長さが当該保持部の延在方向に関し一定とされた構成であるのが好ましい。これにより、第1の方向に沿った長さが当該保持部の延在方向に関し一定とされた保持部を有する清掃体ホルダが提供される。
【0011】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部は、第1の方向に沿った一方側の面が第1の方向に凹んだ構成であるのが好ましい。このような構成によれば、保持部の先端部に設けた凹みによって、当該保持部の第1の方向に関する撓み易さが実現される。
【0012】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の保持部が複数設けられており、これら複数の保持部は、第2の方向に並置された状態で把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し、並置された保持部間に清掃対象の挿入空間を有する構成であるのが好ましい。
このような構成によれば、清掃対象を互いに隣接する保持部によって両側から挟み込んで適正な荷重で払拭することが可能となる。例えば、挿入空間の間隔を上回る清掃対象を払拭する際、挿入空間に挿入された清掃対象を、容易に撓んだ保持部によって両側から挟み込んで適正な荷重で払拭することが可能となる。また、清掃対象を保持部によって両側から挟み込んで更に長軸まわりに捻ることによって、挿入空間の間隔を下回るような細い清掃対象や薄い清掃対象であっても、当該清掃対象に清掃体を確実に密着させて適正な荷重で払拭することが可能となる。
【0013】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、前記の複数の保持部は、並置された保持部間の間隔が当該保持体の延在方向に関して一定とされ、且つ当該保持部の第2の方向に沿った長さが把持部との接続部から先端部に向けて拡張された構成であるのが好ましい。第2の方向に沿った長さの拡張態様に関しては、当該長さが接続部から先端部に向けて直線状、曲線状、或いは段差状に拡張される構成等を適宜選択することができる。
このような構成によれば、保持部間の間隔を確保しつつ、この間隔が必要以上に広がるのを抑えることで、成型時のひけ(材料の流れや収縮等によって生じるへこみや窪み)などによる成型精度の悪さ(品質の悪さ)や、継続使用により生じる保持部間の間隔の広がりを、使用者にイメージさせるのを防止するのに効果的である。また、第2の方向に沿った長さが先端部に向けて拡張された複数の保持部が並置された状態では、全体的なバランスが良いため、清掃体ホルダの作業者に与える外観上の印象を向上させるのに効果的である。
【0014】
また本発明に係る更なる形態の清掃体ホルダでは、各保持部は、先端部に2.5Nの荷重が付与されるとき、第2の方向に関する変位量が第1の方向に関する変位量を下回って撓む構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第2の方向に関する変位量を抑えることで、清掃対象を互いに隣接する保持部によって両側から挟み込む際に、清掃体を清掃対象により密着させ易い荷重を確保するのに効果的である。
【0015】
本発明に係る別の形態の清掃体ホルダは、清掃対象の清掃に用いられる清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダであって、使用者の手指で把持される把持部と、第2の方向に並置された状態で把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し清掃体を保持する複数の保持部とを含む。特に各保持部は、第2の方向と、第2の方向と交差する第1の方向との少なくとも2方向に撓み変位可能とされる。この保持部は、把持部と保持部との間の部位、典型的には把持部と保持部との接続部や保持部自体の根元部分を支点とした撓み変位が許容される。このような構成によれば、保持部の撓み方向に関し自由度が付与された清掃体ホルダが提供される。
【0016】
本発明に係る清掃用具は、清掃対象の清掃に用いられる清掃体と、清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダとを少なくとも備える。
清掃体は、当該清掃体の長尺方向と交差する方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体と、不織布からなる複数の不織布シートが積層された不織布積層体と、互いに重ねられた繊維集合体及び不織布積層体を接合する接合部と、保持部が挿入される被挿入領域とを含む構成とされる。繊維集合体は、清掃体の長尺方向と交差する方向に延在する繊維を複数集合させた構成とされる。清掃体の長尺方向は、典型的には、清掃体に清掃体ホルダが装着された状態において、保持部の延在方向としても規定される。不織布積層体は、不織布からなる複数の不織布シートが積層された構成とされる。接合部は、互いに重ねられた繊維集合体及び不織布積層体を接合する接合部分として構成とされる。この接合部には、繊維集合体の全部または一部を接合する接合部分、不織布積層体の全部または一部を接合する接合部分、繊維集合体の全部または一部と不織布積層体の全部または一部とを接合する接合部分が包含される。被挿入領域は、複数の不織布シート及び接合部によって区画され保持部が挿入される領域として構成される。この被挿入領域は、典型的には保持部の挿入を許容する挿入孔、スリット、切り込み等によって構成され得る。一方、清掃体ホルダは、前述のような各清掃体ホルダを用いて構成される。
【0017】
従って、このような構成によれば、保持部の撓み方向に関し自由度が付与されるとともに、荷重に見合った適正な撓み変位で保持部を撓ませることが可能な清掃体ホルダを備えた清掃用具が提供される。
【0018】
なお、本発明において清掃体は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、清掃対象から除去したゴミ、塵、埃などを保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、清掃対象の清掃を行なうための清掃体が清掃体ホルダの保持部によって保持される清掃用具において、保持部の撓み方向に関し自由度を付与することができ、以って清掃作業の円滑化を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明における「清掃用具」の一実施の形態である清掃用具100の構成を、図面を参照しつつ詳細に説明する。この清掃用具100は、清掃対象を清掃するのに用いられる清掃用具として構成され、典型的な清掃対象としては、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両(自動車)等の室内、室外、屋外における被清掃領域(床面、壁面、窓、天井面、外壁面、柱、家具面、衣類、カーテン、ブラインド、寝具、照明、電気コード類、家電品等)や、人体の各構成部位における被清掃領域等を含む清掃対象が挙げられる。これら各種の清掃対象として、平面構造或いは立体構造のものが挙げられる。この場合、清掃対象における被清掃領域は、平面、曲面、凹凸面、段差面などとされる。
【0021】
本実施の形態の清掃用具100を構成する清掃体110及び清掃体ホルダ130が互いに組み付けられる前の状態の斜視図が図1に示される。図1に示すように、この清掃用具100は、清掃体110(「モップ」ともいう)と清掃体ホルダ130に大別される。
【0022】
清掃体110は、清掃対象における被清掃領域のごみ、埃、塵ないし汚れ(以下、「被清掃物」ともいう)を拭き取る拭き取り機能、被清掃物を掃き取る掃き取り機構、或いは被清掃物を掻き取る掻き取り機能を有する清掃体とされる。この清掃体110は、販売時或いは未使用時にはシート状ないし平板状とされる一方、使用時には解されてシート厚み方向に関し嵩高な状態とされる。詳細については後述するが、この清掃体110は、所定の長手方向(長辺の延在方向)に長尺状に延在するような平面視が長方形のシート体であって、それぞれが同様の平面形状を有する複数のシート(後述する清掃体シート部116及び保持シート部112)が互いに重ねられた積層構造を有する。ここでいう清掃体110が、本発明における「清掃体」に相当する。
【0023】
なお、必要に応じては、この清掃体110を、平面視が正方形等の他の形状の清掃体として構成することもできる。また、平面視が長方形ないし正方形とされたこの清掃体110の隅部(角部)は、必要に応じて直角状或いは曲線状とされる。この清掃体110は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、清掃対象における被清掃領域から除去した被清掃物を刷毛部において保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【0024】
清掃体ホルダ130は、上記構成の清掃体110に対し着脱自在とされており、それぞれが互いに連接するホルダ本体140及びハンドル部150からなる長尺状の部材として構成される。この清掃体ホルダ130は、典型的には合成樹脂材料によって構成される。ここでいう清掃体ホルダ130が、本発明における「清掃体ホルダ」に相当する。ハンドル部150は、長尺状に延在するハンドル本体151を備え、このハンドル本体151が接続部141を介してホルダ本体140に接続されている。ハンドル部150のハンドル本体151は、使用者の手指によって把持される部位とされる。この清掃体ホルダ130の構造に関しては、ホルダ本体140及びハンドル部150(ハンドル本体151及び接続部141)の各々を別体構造として組み付け自在とする構成や、ホルダ本体140及びハンドル部150を接続部141とともに一体成型とする構成、またホルダ本体140、ハンドル本体151及び接続部141のいずれか二つを一体成型とする構成などを適宜採用することができる。ここでいうハンドル部150ないしハンドル本体151が、本発明における「把持部」を構成する。
【0025】
ホルダ本体140は、清掃体110を着脱自在に保持する機能を有する部位とされる。このホルダ本体140には、左右一対の保持部142,142が設けられている。ここでいう左右一対の保持部142,142とは、ハンドル部150の長手方向を前後方向として規定した場合、ハンドル部150の長手方向と交差する左右方向に関し、2つの保持部142,142が並置された態様として規定される。
【0026】
これら一対の保持部142,142は、接続部141から前方に向けて所定の間隔を空けて同一平面上にて平行に(並行して)先端部143まで延在する長尺状とされる。ここでいう接続部141、先端部142がそれぞれ、本発明における「接続部」、「先端部」に相当する。すなわち、ホルダ本体140は、その先端側が保持部142,142によって二股状に分かれたフォーク形状となっている。このとき、典型的には各保持部142が長手状の延在する延在長さを100〜180mmの範囲に設定するのが好ましい。また各保持部142には、その外縁部から保持部外方へと突出する突片146が設けられている。この突片146は、各保持部142の長手方向に関し1または複数設けられるのが好ましい。これにより、各保持部142のうち突片146が設けられた部位は、当該保持部の各部位のうち左右方向の径が最も拡張された拡径部とされる。本実施の形態では、各保持部142は、合成樹脂材料のうち特にオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂による射出成型品とされ、その曲げ弾性率が310MPa程度とされる。ここでいう保持部142,142が、本発明における「保持部」を構成する。
【0027】
なお、本明細書中では、各保持部142の長尺状の延在方向が、清掃用具100ないし清掃体110に関する「清掃体前後方向」としても規定され、また二本の保持部142,142の並置方向、或いは二本の保持部142の延在方向と交差する方向が、清掃用具100ないし清掃体110に関する「清掃体左右方向」としても規定される。また、清掃体ホルダ装着時に保持部142の先端部143の領域が、「清掃体前端領域」或いは「清掃体前端側」としても規定され、保持部142の接続部141の領域が、「清掃体後端領域」或いは「清掃体後端側」としても規定される。
【0028】
各保持部142は、清掃体110に形成された対応する被挿入領域(後述する挿入孔115)への挿入が可能とされており、この挿入状態において清掃体110を保持する機能を有する。この挿入状態においては、各保持部142が清掃体110側の被挿入領域に密着状に摺接して嵌まり込み、清掃体110に対し止着作用を付与する。更に、この挿入状態においては、各保持部142の拡径部である突片146が清掃体110の抜け止めとして作用する。これにより、各保持部142を清掃体110側の被挿入領域に挿入した挿入状態では、清掃体110がホルダ本体140によって抜け止めされつつ確実に保持されることとなる。
【0029】
上記清掃体ホルダ130の保持部142,142の具体的な構造に関しては、図2及び図3が参照される。ここで、図2には図1中の保持部142,142の側面図が示され、また図3には図1中の保持部142,142の平面図が示されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、本実施の形態では、各保持部142は、第1の方向(図2中の上下方向)D1に沿った第1の長さ(「保持部厚み」ともいう)d1が接続部141から先端部143に向けて縮小され、且つ第2の方向(図3中の上下方向)D2に沿った第2の長さ(「保持部幅」ともいう)d2が接続部141から先端部143に向けて拡張された構成とされる。このとき、典型的には第1の長さd1及び第2の長さd2をいずれも6〜7mmの範囲に設定するのが好ましい。なお、各保持部142の第1の方向D1に沿った長さの縮小態様に関しては、当該長さが接続部141から先端部143に向けて直線状、曲線状、或いは段差状に縮小される構成等を適宜選択することができる。同様に、第2の方向D2に沿った長さの拡張態様に関しては、当該長さが接続部141から先端部143に向けて直線状、曲線状、或いは段差状に拡張される構成等を適宜選択することができる。ここでいう第1の方向D1、第2の方向D2がそれぞれ、本発明における「第1の方向」、「第2の方向」に相当する。
【0031】
各保持部142の第1の長さd1が接続部141から先端部143に向けて縮小する構成によれば、各保持部142の先端部143を用いたより繊細な払拭操作に有効とされる。また、各保持部142の清掃対象との間の一次接触圧を先端部143によって吸収することができ、使用者にソフトな使用感を与えるのに効果的である。更に、各保持部142のうち先端部143よりも接続部141の剛性を相対的に高めることによって、清掃体ホルダの高強度を使用者に容易にアピールすることが可能となる。
また、各保持部142の第2の長さd2を接続部141から先端部143に向けて拡張する構成によれば、一対の保持部が並置された状態における全体的なバランスが良く、清掃体ホルダの作業者に与える外観上の印象を向上させるのに効果的である。
【0032】
なお、各保持部142の第1の長さd1や第2の長さd2は、保持部の仕様等、必要に応じて適宜変更が可能である。例えば、第1の長さd1が接続部141から先端部143に向けて縮小され、且つ第2の長さd2が延在方向に関して一定(「同一」、「同様」、「均一」或いは、「一様」ともいう)或いは接続部141から先端部143に向けて縮小された構成の保持部を採用することができる。また、第1の長さd1が延在方向に関して一定或いは接続部141から先端部143に向けて拡張され、且つ第2の長さd2が接続部141から先端部143に向けて拡張された構成の保持部を採用することができる。
特に、第1の長さd1が延在方向に関して一定となるように構成することによって、保持部間の間隔を確保しつつ、この間隔が必要以上に広がるのを抑えることで、成型時のひけ(材料の流れや収縮等によって生じるへこみや窪み)などによる成型精度の悪さ(品質の悪さ)や、継続使用により生じる保持部間の間隔の広がりを、使用者にイメージさせるのを防止するのに効果的である。
【0033】
また、本実施の形態では、各保持部142の先端部143の形状に関し、先端部143は、その上面(第1の方向D1の一方側の面)が保持部142の延在方向に対し傾斜した傾斜面144として構成され、またその下面(第1の方向D1の他方側の面)が第1の方向D1に関し上側(第1の方向D1の一方側)に凹んだ凹み面145として構成されている。各保持部142の傾斜面144は、当該保持部142を清掃体110の挿入孔への挿入し易さを実現するのに有効とされる。各保持部142の先端部143に設けた凹み面145は、当該保持部142の第1の方向D1に関する撓み易さを実現するのに有効とされる。このような構成が、本発明における「第1の方向に沿った一方側の面が第1の方向に凹んだ構成」に相当する。なお、これらの傾斜面144や凹み面145は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0034】
更に、本実施の形態では、一対の保持部142,142は、第2の方向D2に離間して並置された状態で清掃体ホルダ130の長尺方向に延在する構成とされる。このときの一対の保持部142,142間に形成された挿入空間147は、清掃対象を挿入して両側から挟み込むための空間部分とされる。この挿入空間147の間隔は、典型的には12〜25mmに設定されるのが好ましい。ここでいう挿入空間147が、本発明における「挿入空間」に相当する。
【0035】
各保持部142は、接続部141を支点として当該保持部の延在方向と交差する第1の方向D1と第1の方向D1と交差する第2の方向D2との少なくとも2方向を含む360°の方向、すなわち保持部142の長軸まわり(各保持部142の延在方向との交差面における全放射方向)に関し、予め設定された既定の撓み変位特性(「撓み特性」ないし「曲げ弾性変形特性」ともいう)、及び予め設定された既定の撓み回復特性(「弾性回復特性」ないし「曲げ弾性回復特性」ともいう)を有する。
【0036】
(撓み変位特性)
この撓み変位特性は、例えば図4及び図5に示すような撓み変位測定方法によって確認され得る。図4には、図1中の保持部142,142の側面図であって、第1の方向D1に関する撓み変位測定の様子が模式的に示され、また図5には、図1中の保持部142,142の平面図であって、第2の方向D2に関する撓み変位測定の様子が模式的に示される。図4及び図5に示す撓み変位測定では、固定具160によって各保持部142の接続部141を固定した状態で、先端部143に所定方向に関し特定の荷重を付与する。このときに撓み状態となった各保持部142(図4及び図5中の二点鎖線で示される)の先端部143と保持部142の可撓領域の根元部142aを繋いだ線で作られる角度をスケール等の計測装置によって計測する。この角度は、第1の方向D1については図4中のθ1で示されており、第2の方向D2については図5中のθ2で示されている。また、他方では、撓み状態となった各保持部142の変位量(「変位距離」、「移動量」ないし「移動距離」ともいう)をスケール等の計測装置によって計測する。この変位量は、第1の方向D1については図4中のa1で示されており、第2の方向D2については図5中のa2で示されている。これにより、各保持部142の実際の荷重と撓み範囲との関係が得られることとなる。
【0037】
本発明者らは、この撓み変位特性を実際に測定した。なお、この測定は5〜10程度繰り返して行い測定結果に再現性があることを確認した。このような撓み変位特性によれば、一対の保持部142,142間の挿入空間147に、この挿入空間147の間隔を上回る清掃対象を挿入して清掃作業を行う場合に、大きな荷重を必要とすることなく適正な荷重で円滑な払拭動作を効率的に行うのに有効となる。具体的には、挿入空間147に直径がおよそ30mm、50mm、65mmの清掃対象を挿入した場合に、それぞれ0.6〜0.7N、1.5〜1.7N、2.1〜3.0Nの荷重を確保することが可能となる。また、挿入空間147に直径がおよそ15mmの清掃対象を挿入した状態で、更に清掃体ホルダ130に対し長軸まわりに45°、90°の捩りを加えた場合に、それぞれ0.3〜0.5N、0.6〜1.5Nの荷重を確保することが可能となる。
【0038】
ここで、0.5Nの荷重は、清掃体を清掃対象に押し付けることなく清掃体を非常に軽く優しくならすような清掃形態を想定した場合の荷重とされ、4.7Nの荷重は、かなりしっかりと清掃体を清掃対象に押し付けるような清掃形態を想定した場合の荷重とされ、2.5Nの荷重は、0.5Nの場合と4.7Nの場合の概ね中間の清掃形態であって、清掃体を適度な強さで清掃対象に軽く押し付ける中程度の清掃形態を想定した場合の荷重とされる。なお、本実施の形態で想定している0.5〜4.7Nの荷重範囲は、清掃作業時に作業者の手指に疲れが生じにくい荷重範囲として規定される。
【0039】
(撓み回復特性)
一方で、荷重が解放された場合には、各保持部142が元の形状に速やかに回復ないし復帰する撓み回復特性が必要とされる。この撓み回復特性は、例えば図4及び図5に示すような撓み変位特性の場合と同様の装置を用い、(回復変位)/(荷重付与時の撓み変位)×100の算出式によって規定される撓み回復率(%)によって確認され得る。この撓み回復率として、単純撓み回復率R1、反復撓み回復率R2及び経時撓み回復率R3を用いることができる。ここで、単純撓み回復率R1(%)は、(1回の撓み操作の後、荷重を即解放して10秒後の回復変位)/(荷重付与時の撓み変位)×100の算出式によって規定される。また、反復撓み回復率R2(%)は、(撓み操作を10回繰り返した後、荷重を解放して10秒後の回復変位)/(荷重付与時の撓み変位)×100の算出式によって規定される。また、経時撓み回復率R3(%)は、(撓み操作して10秒間の固定の後、固定解除して10秒後の回復量)/(撓み量)×100の算出式によって規定される。
【0040】
本発明者らは、この撓み回復特性を実際に測定した。その測定の結果、本実施の形態の各保持部142では、荷重付与時の撓み変位が30mm、50mm、65mmの場合に、99〜100%の単純撓み回復率R1が確認された。また、本実施の形態の各保持部142では、荷重付与時の撓み変位が30mm、50mm、65mmの場合に、97〜99%の反復撓み回復率R2が確認された。また、本実施の形態の各保持部142では、荷重付与時の撓み変位が30mm、50mm、65mmの場合に、95〜97%の経時撓み回復率R3が確認された。なお、これらの測定は、各回復率それぞれについて5〜10程度繰り返して行い測定結果に再現性があることを確認した。このような撓み回復特性によれば、撓み回復率R1〜R3のいずれも90%以上の高い比率で撓み回復動作がなされるため、清掃作業を繰り返して行なう場合や長時間の清掃作業の場合に有効とされる。
【0041】
なお、各保持部142の断面形状については、円形、楕円形、半円形、半楕円形、三角形、四角形、多角形、V字形、Y字形、X字形、星形等、必要に応じて適宜変更が可能である。図3中の各保持部142のD−D線に関する断面形状については図6が参照される。本実施の形態では、各保持部142の断面形状として、例えば図6に示されるような断面形状(1)〜(10)を採用することができる。このとき、各保持部142の断面形状の選択に際しては、接続部141を支点として当該保持部の延在方向と交差する第1の方向D1と第1の方向D1と交差する第2の方向D2との少なくとも2方向に関し、所定の撓み変位特性を満たすことを条件とする。
【0042】
この所定の撓み変位特性については、先端部143に対する荷重が2.5Nのときに、第1の方向D1に15〜80°の角度で撓み、第2の方向D2に25〜55°の角度で撓むという撓み変位特性を少なくとも有するのが好ましい。また、先端部143に対する荷重が0.5Nのときに、第1の方向D1に6〜50°の角度で撓み、第2の方向D2に8〜35°の角度で撓むという撓み変位特性を更に有するのが好ましい。また、先端部143に対する荷重が4.7Nのときに、第1の方向D1に35〜85°の角度で撓み、第2の方向D2に45〜83°の角度で撓むという撓み変位特性を更に有するのが好ましい。
【0043】
また、各保持部142の延在長さが例えば110mmの場合には、先端部143に対する荷重が2.5Nのときに、第1の方向D1に29〜98mmの変位量で撓み、第2の方向D2に45〜83mmの変位量で撓むという撓み変位特性を少なくとも有するのが好ましい。また、先端部143に対する荷重が0.5Nのときに、第1の方向D1に11〜81mmの変位量で撓み、第2の方向D2に15〜60mmの変位量で撓むという撓み変位特性を更に有するのが好ましい。また、先端部143に対する荷重が4.7Nのときに、第1の方向D1に60〜100mmの変位量で撓み、第2の方向D2に74〜99mmの変位量で撓むという撓み変位特性を更に有するのが好ましい。
【0044】
なお、各保持部142の延在長さが110mmを上回る場合には、各荷重における上述の変位量の範囲は上側にシフトし、各保持部142の延在長さが110mmを下回る場合には、各荷重における上述の変位量の範囲は下側にシフトする。また、各保持部142の延在長さとして、例えば100〜180mmの範囲を外れた長さを選択するような場合には、上述の角度の範囲と変位量の範囲のうち、少なくとも角度の範囲を満たす撓み変位特性を有する断面形状を適宜採用することができる。
【0045】
上記構成の清掃体ホルダ130によれば、各保持部142の上述のような撓み変位特性によって、あらゆる方向に概ね一定とされた撓み変位が許容されるため、各保持部142の撓み方向に関し自由度を付与することができる。また、各保持部142が荷重に見合った適正な撓み変位で撓むこととなる。従って、清掃体110の表裏等の方向性を気にすることなく清掃作業行なうことができ、また清掃体110の各部位のうち今まであまり清掃に使用されなかったような部位も有効に使用することができ、以って清掃作業の円滑化を図ることが可能となる。また、清掃体ホルダ130に比較的強めの荷重を付与しても、各保持部142が撓むことによって過剰な負荷を吸収して和らげることができ、清掃対象に対し常に繊細な払拭操作を行なうことが可能となる。このような清掃体ホルダ130は、凹凸のある清掃対象や細々とした領域の払拭においても、各保持部142を沿わせて払拭することにより所望の清掃効果を発揮することとなる。
【0046】
また、本実施の形態の清掃体ホルダ130によれば、清掃対象を一対の保持部142,142によって両側から挟み込んで適正な荷重で払拭することが可能となる。例えば、挿入空間147の間隔を上回る清掃対象を払拭する際、挿入空間147に挿入された清掃対象を、容易に撓んだ一対の保持部142,142によって両側から挟み込んで適正な荷重で払拭することが可能となる。また、清掃対象を一対の保持部142,142によって両側から挟み込んで更に長軸まわりに捻ることによって、挿入空間147の間隔を下回るような細い清掃対象や薄い清掃対象であっても、当該清掃対象に清掃体110を確実に密着させて適正な荷重で払拭することが可能となる。
【0047】
なお、清掃対象を一対の保持部142,142によって両側から挟んで払拭する作業形態に関し、各保持部142は、先端部143に付与される荷重が2.5Nのとき、第2の方向(左右方向)D2に関する変位量が第1の方向(上下方向)D1に関する変位量を下回って撓む構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第2の方向D2に関する変位量を抑えることで、清掃対象を一対の保持部142,142によって両側から挟み込む際に、清掃体110を清掃対象により密着させ易い荷重を確保するのに効果的である。
【0048】
また、本実施の形態の清掃体ホルダ130では、各保持部142の第1の長さd1が接続部141から先端部143に向けて縮小される構成としたため、各保持部142の先端部143を用いたより繊細な払拭操作に有効とされる。また、各保持部142の清掃対象との間の一次接触圧を先端部143によって吸収することができ、使用者にソフトな使用感を与えるのに効果的である。更に、各保持部142のうち先端部143よりも接続部141の剛性を相対的に高めることによって、清掃体ホルダ130の高強度を使用者に容易にアピールすることが可能となる。
【0049】
次に、上記清掃体110の具体的な構造に関し、図1に加え更に図7〜図12を参照しつつ詳細に説明する。ここで、図7には、図1中の清掃体110を各積層要素に分解した状態の斜視図が示される。また、図8は、図1中の清掃体110の保持シート部112の構成を示す斜視図であり、図9は、図2中の保持シート部112の構成を示す平面図である。また、図10には、図1中の清掃体110のA−A線に関する断面構造が示され、図11には、図1中の清掃体110のB−B線に関する断面構造が示され、図12には、図1中の清掃体110のC−C線に関する断面構造が示される。
【0050】
図7に示すように、本実施の形態の清掃体110は、保持シート部112の両面に清掃体シート部116,116が積層状に重ねられた構成とされる。この清掃体110は、図8及び図9に示すように清掃体前後方向に延在するスリット状の空間部125を備えている。この空間部125は、典型的には保持シート部112の中央部分が清掃体前後方向に関し直線状、曲線状ないし波線状に切り込まれた切り込み部分として構成される。この空間部125は、典型的には清掃体前後方向に直線状、曲線状、或いは波線状に延在する構成とされる。
【0051】
また、この清掃体110は、図10及び図11に示すように、空間部125を挟んで左右一対の長尺状の分割清掃部124,124に分割される。ここでいう左右一対の分割清掃部124,124とは、清掃体前後方向と交差する左右方向に関し2つの分割清掃部124,124が並置された態様として規定される。分割清掃部124,124間に形成される空間部125は、この空間部125は、清掃体110が清掃体ホルダ130の装着されたときに、一対の保持部142,142間に形成された挿入空間147に合致し、清掃対象の挿入を許容する空間部としての機能を果たす。
【0052】
保持シート部112は、特に図7に示すように、2片の保持シート114,114の間に基材シート113を介在させ、またこの基材シート113が各保持部142の挿入側に保持シート114よりも若干突出するように設定される。そして、この保持シート部112は、分割清掃部124ごとに接合部121(「融着部」ともいう)によって互いに融着接合されるように構成されている。この接合部121は、その融着接合部分が清掃体前後方向に沿って連続状に延在する単一の接合線(「融着線」ともいう)とされる。ここでいう保持シート部112が、本発明における「不織布積層体」を構成する。
【0053】
この保持シート部112において、2片の保持シート114,114が互いに対向することによって形成される対向空間は、各保持部142の挿入を許容するべく分割清掃部124の長尺方向に長手状に延在する挿入孔115としての挿入空間とされる。このとき、基材シート113は、保持シート114よりも各保持部142の挿入側に突出することによって、挿入孔115の開口部115aへの各保持部142の円滑な誘導を可能とする。分割清掃部124の長尺方向は、典型的には、清掃体110に清掃体ホルダ130が装着された状態において、保持部142の延在方向としても規定される。ここでいう挿入孔115が、本発明における「被挿入領域」を構成する。なお、この挿入孔115を、保持部の挿入を許容する挿入孔以外の被挿入領域、例えばスリット、切り込み等に置き換えることもできる。
【0054】
一方、各清掃体シート部116は、図7に示すように、3つの繊維集合体117及び表面シート118が積層状に重ねられた状態で、保持シート部112の両面(上面及び下面)に配設されるように構成されている。このとき、表面シート118が清掃体110の表面に露出するように各清掃体シート部116が配設される。なお、必要に応じて、保持シート部112の片面のみに清掃体シート部116が配設された構成を採用することもできる。
【0055】
更に、上記の保持シート部112及び清掃体シート部116,116は、保持シート部112の両面に清掃体シート部116,116が積層状に重ねられた状態で、接合部123によって互いに融着接合されるように構成されている。この接合部123は、その融着接合部分が清掃体前後方向に沿って連続状に延在する複数の接合線(「融着線」ともいう)の集合体として構成される。
【0056】
本実施の形態では、上記構成の接合部121,123による融着接合が、少なくとも2つの機能を果たす。第1の機能(以下、「接合部の第1の機能」ともいう)は、2片の保持シート114,114の間に、各保持部142の所望の形態での挿入を許容する挿入孔115を形成する機能とされる。第2の機能(以下、「接合部の第2の機能」ともいう)は、保持シート部112及び清掃体シート部116,116を互いに接合することによって保持シート部112上に、清掃体シート部116,116からなる所望の形状の刷毛部を形成する機能とされる。上記構成の接合部121,123によって、本発明における「接合部」が構成される。なお、これらの接合部121,123の接合形態に関しては、融着接合に代えて或いは加えて、接着、係着、縫着などの接合形態を用いてもよい。
【0057】
ここで、接合部121,123による第1及び第2の機能に関し、図8及び図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0058】
(接合部の第1の機能)
図8及び図9に示すように、本実施の形態の接合部121,123が、分割清掃部124の長尺方向に長手状に延在する挿入孔115の左右を区画することによって、前述の接合部の第1の機能が達成される。
【0059】
具体的には、接合部121は、挿入孔115の内側(空間部125側)を区画する接合部分であって、清掃体110の清掃体前後方向(分割清掃部124の長尺方向)に延在する接合部分とされる。この接合部121は、挿入孔115の開口部115a側から清掃体110の清掃体前端に向けて順に配設された、互いに連接した接合線121a、接合線121b及び接合線121cを含む構成とされる。すなわち、この接合部121では、これらの接合線121a、接合線121b及び接合線121cによって連続した単一の延在線が形成される。このうち接合線121a及び接合線121cは、挿入孔115への保持部142の挿入方向に概ね合致するように直線状に延在し、且つ接合線121cが接合線121aよりも外側(空間部125とは反対側)に配設されている。そして接合線121bは、接合線121aと接合線121cの端部同士を接続するように傾斜状に形成された中間部分の接合線として構成される。
【0060】
一方、接合部123は、挿入孔115のうち、この挿入孔115を挟んで接合部121とは反対側を区画する接合部分であって、清掃体110の清掃体前後方向(分割清掃部124の長尺方向)に沿って延在する接合部分とされる。この接合部123は、開口部115a側から清掃体110の前側に向けて順に配設された、接合線123a、接合線123b及び接合線123cと、更に接合線123aの内側に配設された接合線123dとを含む構成とされる。本実施の形態では、この接合部123のうち、接合線123a、接合線123b及び接合線123cによって連続した単一の延在線が形成されるように構成されている。なお、必要に応じては、接合線123a、接合線123b及び接合線123cはそれぞれ、非接合部分を隔てて互いに離間するように構成されてもよく、また接合線123dを省略することもできる。
【0061】
また本実施の形態では、上記構成の接合部121や接合部123の寸法に関し所定の関係が成り立つのが好ましい。具体的には、図9に示すように、空間部125を挟んで対向する一対の接合部121,121に関し、一方の接合部121の接合線121cと、他方の接合部121の接合線121cとの間隔L1が、一対の保持部142,142の間隔L3よりも大きく(L1>L3)なるように設定されるのが好ましい。特に好ましくは、間隔L1が間隔L3の175〜300%の長さとなるように寸法設定する。このとき、左右一対の接合部121,121は、挿入孔115の内側を区画するため、この接合部121,121に係る間隔L1は、互いに隣接する挿入孔115,115の間隔としても規定される。このとき、挿入孔115は、当該挿入孔115のうち接合部121,121が設けられた部位(拡張部)にて延在する第1の挿入孔構成部115bと、前記の開口部115aと、これら第1の挿入孔構成部115bと開口部115aとの間に連接して傾斜状に延在する第2の挿入孔構成部115cとを含む構成とされる。
【0062】
このような寸法設定によれば、清掃体110の挿入孔115に清掃体ホルダ130の保持部142が挿入されたとき、保持部142,142の間隔L3にしたがって清掃体110全体(保持シート部112及び清掃体シート部116)が清掃体内方ないし清掃体中央部へと寄せ集められることとなる。そして、左右一対の接合部121,121が設けられた部位(拡張部)において互いに隣接する分割清掃部124,124同士の繊維集合体が近接方向に移動することで空間部125にて分割清掃部124の長尺方向と交差する方向に関し重なり合い、後述する重なり領域119を形成する。これにより、分割清掃部124,124によって所望のボリューム感を持たせことが可能となり、分割清掃部124,124間の空間部125に挿入される清掃対象が相対的に小さい場合であっても、この清掃対象に適正な圧力を作用させることで充分な清掃効果を得ることが可能とされる。
【0063】
このような清掃効果をより確実なものとするべく、上記構成のホルダ本体140の二本の保持部142,142は、少なくとも互いに離間する離間方向に弾性変形可能な弾性材、典型的には柔軟性及び保形性を兼ね備えたプラスチック材料等によって構成されるのが好ましい。これにより、清掃体110全体が保持部142の保形性によって清掃体内方ないし清掃体中央部へと確実に寄せ集められ、また空間部125に導入された清掃対象は保持部142の柔軟性によって確実に払拭される。
【0064】
また、清掃体ホルダ130の保持部142を非金属材料によって構成することで、分割清掃部124,124の間の空間部125に挿入される清掃対象が保持部142,142間の寸法よりも大きい場合であっても、保持部142が清掃対象を傷つけることなく充分な清掃効果を得ることが可能とされる。
【0065】
なお、本実施の形態では、前記の間隔L1と間隔L3との関係をL1>L3に設定したうえで、更に清掃体前後方向に関する中央線(空間部125の延在線)と接合部123との間隔L2との関係について、(L1/2−L3/2)<L2という関係が成り立つように設定するのが好ましい。このような設定は、清掃体110の挿入孔115に清掃体ホルダ130の保持部142が挿入されたとき、一方の分割清掃部124の内側の縁部(空間部125側の縁部)が、他方の分割清掃部124の接合部123を越えて寄せ集められることのない構成に対応している。
【0066】
従って、このような寸法設定によれば、分割清掃部124,124によって過剰にボリューム感が付与されるのを抑え、また分割清掃部124同士の刷毛部(保持シート部112及び清掃体シート部116)が絡み過ぎて清掃に適さない形状になるのを防止するのに有効とされる。
【0067】
(接合部の第2の機能)
また、図8及び図9に示すように、本実施の形態では、単一の延在線として形成される接合部123のうち、接合線123a、接合線123b及び接合線123cを互いに段差状に配設する構成によって、前述の接合部の第2の機能が達成される。
【0068】
具体的には、この接合部123は、清掃体ホルダ装着時に保持部142の先端側が配設される清掃体前端側において分割清掃部124の長尺方向に直線状に延在する接合線123cと、この接合線123cよりも清掃体後端側において分割清掃部124の長尺方向に直線状に延在する接合線123bと、この接合線123bよりも清掃体後端側において分割清掃部124の長尺方向に直線状に延在する接合線123aを含む構成とされる。そして、接合線123aと接合線123cとの間に形成された接合線123bが、接合線123a及び接合線123cよりも清掃体外側(空間部125とは反対側)に配設されている。また、この接合部123では、接合線123aと接合線123bとの間、及び接合線123bと接合線123cとの間に、それぞれ傾斜状の接合部分が介在するように構成されている。なお、ここでいう接合部123は、清掃体110の長尺方向と交差する方向に関し挿入孔115の外側を区画する外側接合部とされる。
【0069】
このような構成によれば、接合部123から保持シート部112及び清掃体シート部116の外側自由端までの距離が、清掃体前後方向に関し清掃体前端側及び清掃体後端側が清掃体中央部よりも長くなる。これにより、清掃体110の挿入孔115に清掃体ホルダ130の保持部142が挿入されたとき、接合部123は、接合線123a、接合線123b及び接合線123cによって形成される一連の形状が外側に向けて凸の緩やかな円弧を描き、清掃体全体が丸みを帯びた形状となる。清掃体のこのような形状によれば、清掃体全体が丸みを帯びることで使用者に対し清掃体の柔らかな印象を付与するとともに、清掃作業に適した形状や清掃し易い形状であることを情緒的にアピールすることができ、以って使用者の清掃意欲を駆り立てるのに有効となる。
【0070】
また、上記構成の接合部123によれば、各分割清掃部124の接合部123から清掃体外方へと延在する繊維集合体の長さは、接合線123aに対応する清掃体後側及び接合線123cに対応する清掃体前端側の方が、接合線123bに対応する清掃体中央部よりも長くなる。一方、各分割清掃部124の接合部123から清掃体内方へと延在する繊維集合体の長さは、接合線123aに対応する清掃体後端側及び接合線123cに対応する清掃体前端側の方が、接合線123bに対応する清掃体中央部よりも短くなる。
【0071】
このような構成によれば、清掃体前端側ないし清掃体後端側の隅部(角部)は、繊維集合体の長さが相対的に長く清掃対象に対する当たりがソフトであり、また清掃体前端側において清掃体内方へと延在する繊維集合体の長さが相対的に短いため、分割清掃部124,124間の空間部125に清掃対象を挿入する挿入動作が容易となる(空間部125に清掃対象を挟み易い)。
【0072】
なお、本実施の形態では、上記構成の接合部123における各接合線の寸法に関し所定の関係が成り立つのが好ましい。典型的には、清掃体後端部から分割清掃部124の15〜30%の範囲で接合線123aが延在し、また清掃体前端部から分割清掃部124の15〜30%の範囲で接合線123cが延在するように設定し、また接合線123aと接合線123bが、或いは接合線123cと接合線123bが、分割清掃部124の長尺方向と交差する方向に関し互いに重なり合うように構成することができる。
【0073】
上記の保持シート114及び表面シート118は、いずれもその左右方向の両端側にジクザグ状にカットされた短冊片(短冊部分)114a及び118aを複数備える構成であるのが好ましい。この場合、保持シート114及び表面シート118は、短冊シートとも称呼される。このような構成の短冊片114a,118aは、ごみを引っ掛けて捕捉し易く、また凹部に入り込んだごみを描き出し易い、清掃機能の高い構造として特に効果的である。なお、短冊片114a,118aの形状に関しては、ジクザグ状、直線状、曲線状などのうちの単一種類或いは複数種類の形状を適宜用いることができる。本実施の形態では、これら短冊片114a及び118aは、いずれも分割清掃部124の長尺方向(保持部142の延在方向と交差する方向)に延在する構成とされる。
【0074】
次に、上記基材シート113、保持シート114及び表面シート118を形成する不織布の構成、及び繊維集合体117を形成する繊維集合体の構成につき詳細に説明する。
【0075】
(不織布の構成)
基材シート113、保持シート114及び表面シート118に関しては、いずれも典型的には熱溶融性繊維(熱可塑性繊維)からなるシート状の不織布を使用することができる。従って、これら基材シート113及び保持シート114は、「不織布シート」とも称呼される。ここでいう基材シート113、保持シート114及び表面シート118が、本発明における「不織布シート」を構成している。この不織布は、機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であって、熱可塑性繊維を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布とされ、複数の短冊片を有する形状の不織布として構成される。熱可塑性繊維(熱溶融繊維)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。
【0076】
また、この不織布は、実用的な強度を備える10〜100g/m2の熱可塑性繊維によって構成されるのが好ましい。この不織布としては、エアースルー法、スパンボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、ポイントボンド法、メルトブロー法、ステッチボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等により製造されたものを適宜使用することができる。この不織布が、本発明における「不織布」に相当する。なお、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い不織布を用いるのが好ましい。また、不織布に代えて或いは加えて、ウレタン、スポンジ、織布、ネット、ワリフなどの素材を短冊状に加工したものを用いることもできる。
【0077】
(繊維集合体の構成)
一方、繊維集合体117は、繊維による単一の繊維構造体や、繊維が長さ方向および/または径方向にそろった繊維構造体(撚糸、紡績糸、複数の長繊維が部分的に接続された糸材など)、ないし当該繊維構造体の集合体とされ、熱可塑性繊維を一部に含み融着(「溶着」ともいう)が可能な繊維集合体として構成される。この繊維集合体117を形成する繊維とは、糸、織物などの構成単位であり、太さに比して十分な長さを持つ、細くてたわみやすい形態のものとして規定され、典型的には長い連続状の繊維が長繊維(フィラメント)とされ、短い繊維が短繊維(ステープル)とされる。この繊維集合体117の繊維は、保持シート114及び表面シート118の短冊片114a及び118aと同様に、保持部142の延在方向と交差する方向に長尺状に延在する構成とされる。この繊維集合体117は、複数の繊維が束状に形成された「繊維束」とも称呼される。ここでいう繊維集合体117が、本発明における「繊維集合体」に相当する。
【0078】
なお、本実施の形態では、三つの繊維集合体117が積層状に重ねられる場合について記載しているが、この繊維層の数は必要に応じて1または複数とすることができる。この繊維集合体117は、所定の平面や曲面による面構造を有するとともに、ある程度の厚みを有する立体形状として、或いは薄肉シート形状として構成されるのが好ましい。ここでいう「繊維集合体」は、典型的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、レーヨンなどを材質とし、実用上はトウを開繊することによって得られる長繊維(フィラメント)の集合体がこの繊維集合体として多用される。特には、芯部分がポリプロピレン(PP)或いはポリエチレンテレフタレート(PET)であり、この芯部分の外面を覆う鞘部分がポリエチレン(PE)の複合繊維を用いて繊維集合体が構成されるのが好ましい。この繊維集合体を形成する長繊維は、その繊度が0.5〜66dtexとされるのが好ましい。また、各繊維集合体は概ね同様の繊度の繊維から構成されてもよいし、或いは各繊維集合体が異なる繊度の繊維を含む構成であってもよい。また、熱可塑性樹脂を含む繊維を用いる場合、少なくとも2種類以上の異なった融点の樹脂(例えば融点差が20℃以上の樹脂)を使用するのが好ましい。
【0079】
また、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い繊維、すなわち繊度が高い繊維を含む繊維集合体を用いるのが好ましい。また、繊維集合体は、捲縮繊維を有する構成されるのが好ましい。この場合、1インチあたりのクリンプ数が5〜30の倦縮繊維を用いるのが好ましい。ここでいう捲縮繊維は、所定の巻き縮み処理が付与された繊維として構成され、繊維同士が絡み易い構造とされる。このような捲縮繊維を用いると、繊維集合体が清掃体ホルダ装着前の状態よりも嵩高となり、更に捲縮部分にごみを取り込み易い構造とされる。本構造は、特にトウ繊維から形成された捲縮繊維を用いることによって実現され得る。また、ゴミ、塵、埃などを確実に吸着するべく、着塵油剤を含有する繊維を用いるのが好ましい。
【0080】
なお、繊維集合体として、フィルムをテープ状にスリットし、縦方向へ延伸させたフラットヤーンや、スプリットヤーンと称呼される熱可塑性フィルム樹脂を樹脂の配向方向と直交する方向にかきわけて、繊維状となったフィルムが網目状に接合されているものを使用してもよい。或いは、繊維集合体として、エアースルー不織布などの嵩高で繊維密度の低い不織布を使用してもよい。
【0081】
ここで、上記構成の清掃用具100によって清掃対象200の清掃を行う場合の具体的な作用効果を図13〜図20を参照しつつ説明する。
【0082】
(第1の清掃形態)
図13及び図14には、いずれも本実施の形態の清掃用具100を使用して第1の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第1の清掃形態は、例えば電球や照明のカサ、花瓶などのように被清掃面201が曲面である清掃対象200を、清掃体110の外表面によって清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なうとき、図13に示すように、清掃用具100の清掃体110を被清掃面201に押し当てつつこの被清掃面201の曲面に沿って清掃体110を、例えば図中の実線位置から二点鎖線位置へと移動させる。本実施の形態では、清掃体ホルダ130の各保持部142が、その長軸まわりに(少なくとも第1の方向D1及び第2の方向D2)に関し、前述のような同様の撓み変位特性を有する。従って、被清掃面201に清掃体110を作用させる場合、作業者の手首の位置にかかわらず、すなわち清掃体ホルダ130のポジションや向きを厳密に意識しなくても、保持部142が適正な状態に撓むこととなる。これにより、図14に示すように、清掃体110を被清掃面201に常時に密着させることができ、被清掃面201の拭き残しを防止することが可能となる。
【0083】
(第2の清掃形態)
図15には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第2の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第2の清掃形態は、例えば床や壁などのように被清掃面201が平面である清掃対象200を、清掃体110の外表面によって清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、清掃用具100の清掃体110のうちの先端部分を被清掃面201に押し当てる。このとき、各保持部142は前述のような適性な撓み変位特性を有するため、図15に示すように、清掃体110のうち先端部分を含む広範囲が被清掃面201に面接触する。すなわち、清掃体110が被清掃面201に確実に押し当てられた第1の領域171が、清掃体110が被清掃面201に強く押し当てられていない(単に当接しているのみの)第2の領域172を大幅に上回ることとなる。従って、作業者によって清掃体ホルダ130に付与された荷重は、清掃体110と被清掃面201との面接触によって分散されるため、使用者の負担が低減し、以って清掃用具の使用感の向上を図ることが可能となる。また、清掃体110のうち先端部分を含む広範囲が被清掃面201に面接触することによって払拭効果が高まる。
【0084】
(第3の清掃形態)
図16には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第3の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第3の清掃形態は、例えば電球や照明のカサ、花瓶などのように被清掃面201が曲面である清掃対象200を、清掃体110の分割清掃部124,124によって挟み込んで清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、清掃対象200を分割清掃部124,124間の空間部125に挿入し、図16中の矢印で示すように被清掃面201の曲面に沿って清掃体110を、例えば図中の実線位置と二点鎖線位置との間で移動させる。これにより、清掃対象200の両面の被清掃面201,201を一度に払拭することができる。また、図16中に示す汚れ領域173は、清掃体110のうち空間部125の近傍部分のみに集中するため、当該近傍部分以外の領域を清掃に用いることで、清掃体110の寿命を延ばすことが可能となる。
【0085】
(第4の清掃形態)
図17には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第4の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第4の清掃形態は、一対の保持部142,142間の挿入空間147よりも大きい清掃対象200を、清掃体110の分割清掃部124,124によって挟み込んで清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、清掃対象200を分割清掃部124,124間の空間部125に挿入し、図17中の矢印で示すように清掃体110を前後方向或いは上下方向に移動させる。これにより、一対の保持部142,142間の挿入空間147よりも大きい清掃対象200を、一対の分割清掃部124,124によって両側から挟んで一気に払拭することが可能となる。また、図17中に示す汚れ領域173は、清掃体110のうち空間部125の近傍部分のみに集中するため、当該近傍部分以外の領域を清掃に用いることで、清掃体110の寿命を延ばすことが可能となる。
【0086】
(第5の清掃形態)
図18には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第5の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第5の清掃形態は、一対の保持部142,142間の挿入空間147と同等或いはそれを下回るような細いもの、薄いもの、小さいものからなる清掃対象200を、清掃体110の分割清掃部124,124によって挟み込んで清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、清掃対象200を分割清掃部124,124間の空間部125に挿入し、図18中の矢印で示すように清掃体110に捻りを加える。これにより、一対の保持部142,142間の挿入空間147と同等或いはそれを下回るような小さい清掃対象200であっても、清掃体110に捻りを加えることで被清掃面201との間の密着性を高めて払拭することが可能となる。また、図18中に示す汚れ領域173は、清掃体110のうち空間部125の近傍部分のみに集中するため、当該近傍部分以外の領域を清掃に用いることで、清掃体110の寿命を延ばすことが可能となる。
【0087】
(第6の清掃形態)
図19には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第6の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第6の清掃形態は、被清掃面201が段差面である清掃対象200を、清掃体110の外表面によって清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、図20に示すように、清掃用具100の清掃体110を被清掃面201に押し当てつつ清掃体110を例えば図中の矢印方向に移動させる。これにより、段差面であっても清掃体110によって一度に払拭することができる。また、図19中に示す汚れ領域173は以外の領域を清掃に用いることで、清掃体110の寿命を延ばすことが可能となる。
【0088】
(第7の清掃形態)
図20には、本実施の形態の清掃用具100を使用して第7の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。この第7の清掃形態は、角部に形成された被清掃面201を有する清掃対象200を、清掃体110の先端部分によって清掃する場合を想定している。この形態で清掃作業を行なう場合、図19に示すように、清掃用具100の清掃体110を角部に押し当てつつ清掃体110を例えば図中の矢印方向に移動させる。これにより、清掃体110の先端部分が空間部125で開いて、分割清掃部124,124が角部を挟み込むようにして被清掃面201を一度に払拭することができる。
【0089】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0090】
本発明においては、清掃体110や清掃体ホルダ130の構成要素の種類や数等に関しては、上記の例に限定されるものではなく、必要に応じて種々選択が可能である。
【0091】
また、上記実施の形態では、一対の保持部142,142有する清掃体ホルダ130と、これら保持部に対応する2つの分割清掃部124,124を有する清掃体110について記載したが、本発明では、保持部142及び分割清掃部124の数は2つ以外でもよく、1または3以上の範囲で適宜設定することが可能である。
【0092】
また、上記実施の形態では、清掃体110をシート状の不織布と繊維集合体を用いて構成する場合について記載したが、本発明では、シート状の不織布と繊維集合体のいずれか一方によって清掃体が構成されてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態の清掃体110では、各清掃体シート部116に表面シート118を含む場合について記載したが、清掃体110の設計仕様変更等の必要に応じては、表面シート118を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施の形態の清掃用具100を構成する清掃体110及び清掃体ホルダ130が互いに組み付けられる前の状態の斜視図である。
【図2】図1中の保持部142,142の側面図である。
【図3】図1中の保持部142,142の平面図である。
【図4】図1中の保持部142,142の側面図であって、第1の方向D1に関する撓み変位測定の様子を模式的に示す図である。
【図5】図1中の保持部142,142の平面図であって、第2の方向D2に関する撓み変位測定の様子を模式的に示す図である。
【図6】図3中の各保持部142のD−D線に関する断面形状を示す図である。
【図7】図1中の清掃体110を各積層要素に分解した状態の斜視図である。
【図8】図1中の清掃体110の保持シート部112の構成を示す斜視図である。
【図9】図3中の保持シート部112の構成を示す平面図である。
【図10】図1中の清掃体110のA−A線に関する断面構造を示す図である。
【図11】図1中の清掃体110のB−B線に関する断面構造を示す図である。
【図12】図1中の清掃体110のC−C線に関する断面構造を示す図である。
【図13】本実施の形態の清掃用具100を使用して第1の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図14】本実施の形態の清掃用具100を使用して第1の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図15】本実施の形態の清掃用具100を使用して第2の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図16】本実施の形態の清掃用具100を使用して第3の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図17】本実施の形態の清掃用具100を使用して第4の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図18】本実施の形態の清掃用具100を使用して第5の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図19】本実施の形態の清掃用具100を使用して第6の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【図20】本実施の形態の清掃用具100を使用して第7の清掃形態で清掃作業を行なう様子が模式的に示されている。
【符号の説明】
【0095】
100…清掃用具
110…清掃体
112…保持シート部
113…基材シート
114…保持シート
114a…短冊片
115…挿入孔
115a…開口部
115b…第1の挿入孔構成部
115c…第2の挿入孔構成部
116…清掃体シート部
117…繊維集合体
118…表面シート
118a…短冊片
119…重なり領域
121…接合部
121a,121b,121c…接合線
123…接合部
123a,123b,123c,123d…接合線
124…分割清掃部
125…空間部
130…清掃体ホルダ
140…ホルダ本体
141…接続部
142…保持部
142a…根元部
143…先端部
144…傾斜面
145…凹み面
146…突片
147…挿入空間
150…ハンドル部
151…ハンドル本体
160…固定具
171…第1の領域
172…第2の領域
173…汚れ領域
200…清掃対象
201…被清掃面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象の清掃に用いられる清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダであって、
使用者の手指で把持される把持部と、前記把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し前記清掃体を保持する保持部と、
を含み、
前記保持部は、当該保持部の延在方向と交差する第1の方向と前記第1の方向と交差する第2の方向との少なくとも2方向に撓み変位可能であるとともに、当該保持部の延在方向先端側の先端部に前記第1の方向に2.5Nの荷重が付与されると前記第1の方向に15〜80°の角度で撓み、また前記先端部に前記第2の方向に2.5Nの荷重が付与されると前記第2の方向に25〜55°の角度で撓む構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部は、前記先端部に前記第1の方向に0.5Nの荷重が付与されると前記第1の方向に6〜50°の角度で撓み、また前記先端部に前記第2の方向に0.5Nの荷重が付与されると前記第2の方向に8〜35°の角度で撓む構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部は、前記先端部に前記第1の方向に4.7Nの荷重が付与されると前記第1の方向に35〜85°の角度で撓み、また前記先端部に前記第2の方向に4.7Nの荷重が付与されると前記第2の方向に45〜83°の角度で撓む構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部は、前記第1の方向に沿った長さが前記接続部から前記先端部に向けて縮小された構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部は、前記第1の方向に沿った長さが当該保持部の延在方向に関し一定とされた構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項6】
前記4または5に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部は、前記第1の方向に沿った一方側の面が前記第1の方向に凹んだ構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の清掃体ホルダであって、
前記保持部が複数設けられており、
前記複数の保持部は、前記第2の方向に並置された状態で前記把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し、並置された保持部間に清掃対象の挿入空間を有する構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項8】
請求項7に記載の清掃体ホルダであって、
前記複数の保持部は、並置された保持部間の間隔が当該保持体の延在方向に関して一定とされ、且つ当該保持部の前記第2の方向に沿った長さが前記把持部との接続部から前記先端部に向けて拡張された構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の清掃体ホルダであって、
各保持部は、前記先端部に2.5Nの荷重が付与されるとき、前記第2の方向に関する変位量が前記第1の方向に関する変位量を下回って撓む構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項10】
清掃対象の清掃に用いられる清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダであって、
使用者の手指で把持される把持部と、第2の方向に並置された状態で前記把持部から当該清掃体ホルダの長尺方向に延在し前記清掃体を保持する複数の保持部と、
を含み、
各保持部は、前記第2の方向と、前記第2の方向と交差する第1の方向との少なくとも2方向に撓み変位可能とされた構成であることを特徴とする清掃体ホルダ。
【請求項11】
清掃対象の清掃に用いられる清掃体と、前記清掃体を保持する長尺状の清掃体ホルダとを備える清掃用具であって、
前記清掃体は、当該清掃体の長尺方向と交差する方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体と、不織布からなる複数の不織布シートが積層された不織布積層体と、互いに重ねられた前記繊維集合体及び前記不織布積層体を接合する接合部と、前記保持部が挿入される被挿入領域とを含む構成であり、
前記清掃体ホルダは、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の清掃体ホルダを用いて構成されることを特徴とする清掃用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−268975(P2010−268975A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123619(P2009−123619)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】