説明

清掃具

【課題】 構造が簡単であると共に、操作性が良好であり、空洞部を画定する内周面を効率よく清掃することが可能な清掃具を提供する。
【解決手段】 空洞部に挿入され、当該空洞部を画定する内周面を清掃する清掃具1であり、把持部12と、把持部12の先端に設けられ且つ前記空洞部に挿入可能な清掃部13を備え、清掃部13は、芯部14と、芯部14の表面に半周を越える巻き数で螺旋状に巻き付けられてなる清掃部材15とを有し、清掃部材15は、前記空洞部に挿入した際に、前記内周面に当接して弾性変形し、当該内周面に密接可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞部を画定する内周面を清掃するために使用される清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な機械部品等に形成された空洞部の内周面を清掃するための清掃具が種々知られている。
【0003】
例えば、平行穴からなる空洞部を画定する内周面の清掃を行う清掃具として、一様断面の棒体を中心軸線に対し傾斜した縦断面で2分割して、その一方を固定側、他方を可動側とした一対の半割棒体からなる清掃具本体を備え、両半割棒体間には可動側半割棒体を固定側半割棒体に対しスライド可能に係合させる係合手段を介設し、各半割棒体の外側面にスクレーパーを全長に亘って装着し、可動側半割棒体の基端部に設けたスライド操作部片を介して可動側半割棒体を薄肉側から厚肉側へ向かう方向にスライドさせることによって清掃具本体を縮径させるようにしたものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、単繊維繊度が5.0dtex以下であり、繊維長が0.5〜10mmである接着性捲縮ステープル繊維を80質量%以上含み、構成繊維が絡合と融着により網状構造を形成してなる球状清掃具を、棒状柄部の先端に直列に融着するか、または樹脂により固定した管路洗浄用具が紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−263492号公報
【特許文献2】特開2004−130209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された清掃具は、清掃具本体を平行穴に挿入する際に、勾配を付けたスライドによって清掃具本体を縮径させるため、清掃具本体側を平行穴内に容易に挿入させて両半割棒体のスクレーパーを平行穴の内周面に密着させることができ平行穴内周面の清掃を短時間で迅速に行うことができる。しかしながら、特許文献1に記載された清掃具は、構造が複雑である。
【0006】
また、特許文献2に記載された清掃具は、清掃に使用される部分が球状であるため、清掃すべき管路の壁面と球状清掃具との接触面積が、当該管路の径によって決定されることになる。したがって、径が短く細長い形状を有する管路の清掃に使用される清掃具では、管路の壁面と球状清掃具との接触面積が小さくなるため、清掃具を壁面に対して安定して保持しにくいという欠点がある。また、清掃範囲が小さくなり、清掃に手間がかかると共に、球状清掃具が汚れやすい。そしてまた、前記球状清掃具を構成する繊維の条件が複雑である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、構造が簡単であると共に、操作性が良好であり、空洞部を画定する内周面を効率よく清掃することが可能な清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明は、空洞部に挿入され、当該空洞部を画定する内周面を清掃する清掃具であって、把持部と、前記把持部の先端に設けられ且つ前記空洞部に挿入可能な清掃部と、を備えてなり、前記清掃部は、芯部と、当該芯部の表面に半周を越える巻き数で螺旋状に巻き付けられてなる清掃部材と、を有し、前記清掃部材は、前記空洞部に挿入した際に、前記内周面に当接して変形し、清掃部が当該内周面に密接可能である清掃具を提供するものである。
【0009】
この構成を備えた清掃具は、清掃部が、芯部と、当該芯部の表面に半周を越える巻き数で螺旋状に巻き付けられてなる清掃部材とを備えて構成されているため、構造が簡単である。
【0010】
また、前記清掃部材が螺旋状に巻き付けられていることで、前記空洞部を画定する内周面と、当該清掃部材との接触面積(清掃面積)を確保することができ、効率の良い清掃を行うことができる。さらにまた、清掃部を前記空洞部内に挿入する際に、当該清掃部の先端と、当該空洞部の入口との間に隙間(遊び)を形成することができるため、清掃具を簡単に空洞部内に挿入することができる。
【0011】
そしてまた、本発明にかかる清掃具は、清掃部材が芯部の表面に半周を越えた巻き数で螺旋状に巻き付けられるため、前記空洞部に前記清掃部を挿入して、空洞部を画定する内周面の清掃を行う際に、清掃部材は、前記内周面に対し少なくとも180°で密接することになる。したがって、前記清掃部材に略均等に圧力がかかるため、清掃部が前記内周面に対して安定し、清掃具の操作性を向上させることができる。
【0012】
ここで、この清掃部材は、前記空洞部を画定する内周面に対し360°で密接すれば、当該清掃部材にかかる圧力が、一層均等にかかることになり、清掃部を前記内周面に対して十分に安定させた状態で清掃作業を行うことができる。この清掃部材が、内周面に対し360°で密接する最大の巻き数は、1周の巻き数である。また、空洞部に対する前記清掃部材の巻き数が多いと、前述した効率の良い清掃性や、前記内周面に対する安定性は変わらないが、当該内周面に対する摩擦が大きくなり、操作性が低下する可能性もある。したがって、空洞部の長さに対する前記清掃部材の巻き数は、1周に余裕を持たせた1周半を越えない巻き数がよい。
【0013】
なお、前記清掃部の構成要素である芯部は、前記把持部に連続して一体に形成されていてもよく、また、把持部とは別体に構成され、例えば、接続部材や固定部材等によって把持部に取付けられていてもよい。
【0014】
また、前記清掃部材は、前記空洞部の長さ(深さ)の1/3以下の幅を有することができる。このようにすることで、前記清掃部材をピッチの大きな螺旋状に巻き付けることができ、清掃部材の巻き初め(清掃部の空洞部への挿入先端)は、芯部の径と清掃部材の厚さ分が最大径となる。したがって、清掃部を前記空洞部内に挿入する際に、当該清掃部の先端と、当該空洞部の入口との間により確実に隙間(遊び)を形成することができ、清掃具をさらに簡単に空洞部内に挿入することができる。
【0015】
また、前記空洞部は略円筒形であってもよい。この場合、前記清掃部は、清掃部材の厚さと芯部の径とを加えた値(清掃部材と芯部で構成される最大径)が空洞部の内径より小さく、清掃部材の厚さの2倍と芯部の径とを加えた値(清掃部材×2と芯部との直径)が空洞部の内径より大きくなるよう構成することもできる。
【0016】
また、前記空洞部が異なる複数の内径を有する場合、前記清掃部は、清掃部材の厚さと芯部の径とを加えた値(清掃部材と芯部で構成される最大径)が、空洞部の最小内径より小さく、清掃部材の厚さの2倍と芯部の径とを加えた値(清掃部材×2と芯部との直径)が、空洞部の最大内径より大きくなるよう構成することができる。この異なる複数の内径を有する空洞部としては、例えば、角にアール(R)が形成された多角形や、スプライン等が挙げられる。
【0017】
そしてまた、前記清掃部材は、前記空洞部に挿入した際に、前記内周面と密接可能な面が略平面形状を有することもできる。このように構成することで、前記清掃部材に、さらに均等に圧力がかかるため、清掃部が前記内周面に対してより一層安定し、清掃具の操作性をさらに向上させることができる。また、清掃面積もさらに大きく確保することができる。
【0018】
また、前記清掃部は、前記空洞部の長さと略同一の長さを有することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる清掃具は、清掃部を前記空洞部内に挿入する際に、当該清掃部の先端と、当該空洞部の入口との間に隙間(遊び)を形成することができる。このため、清掃具を簡単に空洞部内に挿入することができると共に、清掃中に、清掃部を前記内周面に対して安定させることができる。さらにまた、芯部の表面に空洞部の長さに対して清掃部材が半周を越える巻き数で螺旋状に巻き付けられているため、清掃部が前記空洞部に挿入されて清掃を行う際に、当該清掃部材に略均等に圧力がかかることになる。また、前記空洞部を画定する内周面と当該清掃部材との接触面積を確保することができる。この結果、構造が簡単であり、且つ操作性が向上した清掃具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる清掃具について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0021】
図1は、本発明にかかる清掃具を工具ホルダの工具挿入穴に挿入する際の状態を示す側面図であり、内部の様子が明確になるよう工具ホルダを断面で示した図、図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図、図3は、本発明にかかる清掃具を工具ホルダの工具挿入穴に奥深く挿入した状態を示す側面図であり、内部の様子が明確になるよう工具ホルダを断面で示した図、図4は、図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【0022】
図1〜図4に示すように、本実施の形態にかかる清掃具1によって清掃される工具ホルダ50は、略円筒形の工具挿入穴51が形成されている。なお、この工具ホルダ50は、工具挿入穴51内に、後に詳述する清掃具1の清掃部13を挿入可能となっており、この清掃部13によって、工具挿入穴51を画定する内周面52が清掃される。
【0023】
図1〜図4に示すように、本実施の形態にかかる清掃具1は、略円柱状の棒部材11の一端によって構成される把持部12と、棒部材11の他端に形成された清掃部13とを備えている。
【0024】
棒部材11は、特に図1に示すように、工具ホルダ50に形成された工具挿入穴51の内径(D)よりも小さな径(d1)を備え、且つ軸方向の長さが、工具挿入穴51の深さよりも長く、工具挿入穴51に挿入可能となっている。
【0025】
清掃部13は、棒部材11の他端によって構成される芯部14と、芯部14の表面に約1周の巻き数、所定のピッチで螺旋状に巻き付けられた清掃部材15とを備えている。なお、この清掃部13は、工具挿入穴51の軸線方向の長さ(L)より長くほぼ同一の長さを有している。
【0026】
清掃部材15は、芯部14に所定のピッチで巻き付けられた際に、芯部14の径(d1)と、清掃部材15の厚さ(d2)を合計した値が、工具挿入穴51の内径(D)よりも小さい(D>d1+d2を満たす)値となり、芯部14に1周の巻き数で螺旋状に巻き付けられた際の清掃部13の最大径、即ち、芯部14の径(d1)と、清掃部材15の厚さ(d2)の2倍を合計した値が、工具挿入穴51の内径(D)よりも大きい(D<d1+2d2を満たす)値となる厚さを備えている。
【0027】
また、清掃部材15は、工具挿入穴51の長さ(L)の1/3以下の幅(W)を有しており、芯部14に巻き付けられた表面(工具挿入穴51に挿入した際に、工具挿入穴51を画定する内周面52と密接可能な表面)が略平面形状となっている。このため、清掃部材15に圧力が均等にかかり、清掃部13が内周面52に対して安定し、清掃具1の操作性が向上する。また、清掃物を収容する溝を形成し、清掃面積も大きく確保することができる。
【0028】
ここで、清掃部材15は、芯部14に所定のピッチで螺旋状に巻き付けられてなるため、清掃部13の工具挿入穴51に挿入される先端(図1でいう左端)では、清掃部13の最大径が、芯部14の径d1と、清掃部材15の厚さd2を合計した値(即ち、d1+d2)となる。これは、前記ピッチをある程度大きく設定することで実現可能である。
【0029】
したがって、図1に示すように、清掃部13が工具挿入穴51に挿入される時点では、工具挿入穴51を画定する内周面52と、清掃部材15との間には、隙間(C)が形成されることになる。このため、清掃部13を工具挿入穴51に簡単に挿入することができる。
【0030】
また、図3に示すように、清掃部13は、清掃部材15が芯部14に半周を超えて巻き付けられた位置よりも基端側(把持部12側)では、その最大径が、芯部14の径(d1)と、清掃部材15の厚さ(d2)の2倍を合計した値(d1+2d2)となる。従って清掃部13を、清掃部材15が芯部14に半周を超えて巻き付けられた位置よりも深く工具挿入穴51に挿入すると、清掃部材15が、工具挿入穴51を画定する内周面52に押し付けられて弾性変形(縮小)し、清掃部材15は、内周面52に密着する。この時、清掃部材15は、内周面52に沿うことになるため、清掃部13は、工具挿入穴51と同心となり、圧力が清掃部材15に略均等にかかることになる。このため、清掃部13は、内周面52に安定して保持されることになる。
【0031】
なお、清掃部13を工具挿入穴51に挿入する際は、清掃具1を工具ホルダ50に対し回転させながら挿入してもよく、回転させずに真っ直ぐ挿入してもよい。
【0032】
清掃部材15は、工具挿入穴51を画定する内周面52の清掃を良好に行うことが可能なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、不織布(フェルト)、織布、スポンジ等が挙げられる。
【0033】
なお、本実施の形態では、工具ホルダ50に形成された略円筒形の工具挿入穴51を画定する内周面52を清掃具1によって清掃する場合について説明したが、これに限らず、本実施の形態にかかる清掃具1は、挿入可能であれば、変形範囲内で他の形状を備えた空洞部を画定する内周面を清掃するために使用することができる。この場合、清掃部材15が内周面の形状に沿うことができるように、清掃部材15の材質や形状等を選択することができる。
【0034】
例えば、図5に示すように、異なる複数の内径(例えば、D1、D2)を有する空洞部61が形成された部材60の場合、空洞部61を画定する内周面62(包絡線がスプラインである)を清掃する清掃具は、芯部14の径(d1)と、清掃部材15の厚さ(d2)を合計した値が、図5に示す工具挿入穴51の最小内径(D1)よりも小さい(D1>d1+d2を満たす)値となり、芯部14の径(d1)と、清掃部材15の厚さ(d2)の2倍を合計した値が、図5に示す工具挿入穴51の最大内径(D2)よりも大きい(D2<d1+2d2を満たす)値となることが好適である。
【0035】
また、本実施の形態では、空洞部の長さに対し、芯部14に清掃部材15を螺旋状に約1周巻き付けた場合について説明したが、これに限らず、清掃部材15は、空洞部の長さに対し、芯部14に半周を越えた巻き数で巻き付ければよい。
【0036】
さらにまた、本実施の形態では、清掃部材15の幅(W)を工具挿入穴51の長さ(L)の1/3以下とした場合について説明したが、これに限らず、清掃部材15の幅(W)は、清掃部13の長さ、清掃部材15の螺旋状のピッチ等、種々の条件に応じて任意に決定することができる。
【0037】
そしてまた、本実施の形態では、清掃部13の長さ(即ち、清掃部材15が巻き付けられる領域の長さ)を、工具挿入穴51の軸線方向の長さ(L)とほぼ同一の長さにした場合について説明したが、これに限らず、清掃部13の長さは、任意に設定することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、棒部材11の一端を把持部12とし、他端を芯部14とした場合について説明したが、これに限らず、把持部12と、清掃部13とを別体に構成し、これらを、例えば、接続部材や固定部材等によって連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる清掃具を工具ホルダの工具挿入穴に挿入する際の状態を示す側面図であり、内部の様子が明確になるよう工具ホルダを断面で示した図である。
【図2】図1に示すII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明にかかる清掃具を工具ホルダの工具挿入穴に奥深く挿入した状態を示す側面図であり、内部の様子が明確になるよう工具ホルダを断面で示した図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる部材の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 清掃具
11 棒部材
12 把持部
13 清掃部
14 芯部
15 清掃部材
50 工具ホルダ
51 工具挿入穴
52 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部に挿入され、当該空洞部を画定する内周面を清掃する清掃具であって、
把持部と、
前記把持部の先端に設けられ且つ前記空洞部に挿入可能な清掃部と、
を備えてなり、
前記清掃部は、芯部と、当該芯部の表面に半周を越える巻き数で螺旋状に巻き付けられてなる清掃部材と、を有し、
前記清掃部材は、前記空洞部に挿入した際に、前記内周面に当接して変形し、清掃部が当該内周面に密接可能である清掃具。
【請求項2】
前記清掃部材は、空洞部の長さに対して1周の割合で螺旋状に巻きつけられ、前記空洞部の長さの1/3以下の幅を有してなる請求項1記載の清掃具。
【請求項3】
前記空洞部が略円筒形であり、
前記清掃部は、清掃部材の厚さと芯部の径とを加えた値が空洞部の内径より小さく、清掃部材の厚さの2倍と芯部の径とを加えた値が空洞部の内径より大きい請求項1または請求項2記載の清掃具。
【請求項4】
前記空洞部は、異なる複数の内径を有し、
前記清掃部は、清掃部材の厚さと芯部の径とを加えた値が空洞部の最小内径より小さく、清掃部材の厚さの2倍と芯部の径とを加えた値が空洞部の最大内径より大きい請求項1または請求項2記載の清掃具。
【請求項5】
前記清掃部材は、前記空洞部に挿入した際に、前記内周面と密接可能な面が略平面形状を有する請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の清掃具。
【請求項6】
前記清掃部は、前記空洞部の長さと略同一の長さを有する請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−7578(P2007−7578A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192735(P2005−192735)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390016344)ビッグアルファ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】