説明

清掃用具及び清掃体

【課題】 被清掃領域を拭き清掃するための清掃体を備える清掃用具において、清掃効果向上を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る清掃用具は、清掃体110に4つの被挿入領域116,117,118,119を備え、これらの被挿入領域のうち任意に選択された2つの被挿入領域に対し、清掃体ホルダおいて所定の離間距離で並行して長手状に延在する2つの保持体が挿入可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用具に係り、詳しくは室内や車内などの被清掃領域を拭き清掃するための清掃体を備える清掃用具の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃対象の拭き清掃を行うシート状の清掃体を備える清掃用具が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、清掃布と、この清掃布に設けられた収容領域に挿設されたこの清掃布を着脱自在に保持する柄を備える構成の清掃用具が開示されている。この清掃用具は、柄を介して保持された清掃布を用いることによって被清掃領域の拭き清掃を行う可能性を有するが、清掃体を備えるこの種の清掃用具の設計に際しては、清掃効果を高める技術に対する要請がある。
【特許文献1】特開平9−154791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被清掃領域を拭き清掃するための清掃体を備える清掃用具において、清掃効果向上を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両等の屋内や屋外における被清掃領域(床面、壁面、天井面、外壁面、家具面、衣類、カーテン、寝具、家電品など)や、人体の各構成部位における被清掃領域等を清掃するための清掃用具の構成に適用され得る。これら各種の被清掃領域は、平面として構成されてもよいし、或いは曲面、凹凸面、段差面として構成されてもよい。
【0005】
本発明に係る清掃用具は、被清掃領域の拭き清掃に用いられるものであって、清掃体ホルダ及び清掃体を少なくとも備える構成とされる。清掃体ホルダは、長尺状の部材として構成される。この清掃体ホルダは、使用者によって把持される把持部と、把持部に連接して設けられ、所定の離間距離で並行して長手状に延在する2つの保持体を有する構成とされる。この場合、2つの保持体が並行して概ね同方向に延在する。清掃体は、長尺状の清掃体ホルダに装着される部材として構成される。この清掃体は、不織布からなるシート体によって区画されて並行して延在する少なくとも3つの被挿入領域と、シート体のまわりを被覆して拭き清掃面を形成する被覆部を有する構成とされる。この場合、少なくとも3つの被挿入領域が並行して概ね同方向に延在する。清掃用具は、所定の離間距離で延在する2つの保持体が、少なくとも3つの被挿入領域のうち任意に選択された2つの被挿入領域に挿入されてなる。
【0006】
本発明に係る清掃用具のこのような構成によれば、必要に応じて2つの保持体を挿入する2つの被挿入領域の組み合わせを変更して、2つの保持体の差し替えを行うことによって、保持体まわりに関する被覆部の相対的な配置関係が可変とされる。これにより、被覆部の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することができ、清掃体が本来有する清掃能力をロスすることなく使用することが可能となるため、清掃効果の高い清掃用具が提供される。また、一つの清掃体を長期間にあたって使用することが可能となり経済的である。
【0007】
本発明に係る更なる形態の清掃用具では、前記の少なくとも3つの被挿入領域は、シート体として不織布からなる基材シート及び保持シートを互いに積層して接合することによって形成される。また前記の被覆部は、保持シートを清掃体内方とし基材シートを清掃体外方とし、更に所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体が基材シートのまわりに接合された構成とされる。このような構成によれば、2つの保持体が挿入される2つの被挿入領域の組み合わせを必要に応じて変更して、2つの保持体の差し替えを行うことによって、繊維集合体の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することが可能となる。
【0008】
本発明に係る清掃体は、被清掃領域の拭き清掃に用いる清掃体であって、不織布からなるシート体によって区画されて並行して長手状に延在する少なくとも3つの被挿入領域と、シート体のまわりを被覆して拭き清掃面を形成する被覆部を備える構成とされる。
このような構成によれば、2つの保持体を有する清掃体ホルダに清掃体を装着する場合に、必要に応じて2つの保持体を挿入する2つの被挿入領域の組み合わせを変更して、2つの保持体の差し替えを行うことによって、保持体まわりに関する被覆部の相対的な配置関係が可変とされる。これにより、被覆部の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することができ、清掃体が本来有する清掃能力をロスすることなく使用することが可能となる。これによって、一つの清掃体を長期間にあたって使用することが可能となり経済的である。更に、2つの被挿入領域の組み合わせによって被挿入領域間の距離が変更されるように構成した場合には、任意に選択された2つの被挿入領域に2つの保持体が挿入される毎に、清掃体の清掃体ホルダの延在方向と交差する方向に関する断面形状を、円形状、平坦状、凹凸状など、種々の形状に変更することが可能となる。
【0009】
本発明に係る更なる形態の清掃体では、前記の少なくとも3つの被挿入領域は、シート体として不織布からなる基材シート及び保持シートを互いに積層して接合することによって形成される、また、前記の被覆部は、保持シートを清掃体内方とし基材シートを清掃体外方とし、更に所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体が基材シートのまわりに接合された構成とされる。このような構成によれば、2つの保持体が挿入される2つの被挿入領域の組み合わせを必要に応じて変更して、2つの保持体の差し替えを行うことによって、繊維集合体の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することが可能となる。
【0010】
なお、本発明に係る清掃体において、不織布からなるシート体は、単一の不織布シート層として構成されてもよいし、同一或いは異なる機能を有する複数の不織布シート層が積層された構成であってもよい。ここでいう「不織布」は、機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であり、典型的には熱溶融性繊維(熱可塑性繊維)を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布として構成される。また、所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体は、所定の平面や曲面による面構造を有するとともに、ある程度の厚みを有する立体形状として、或いは薄肉シート形状として構成されるのが好ましい。なお、ここでいう「繊維」とは、糸、織物などの構成単位であり、太さに比して十分な長さを持つ、細くてたわみやすい形態のものとして規定され、典型的には長い連続状の繊維が長繊維(フィラメント)とされ、短い繊維が短繊維(ステープル)とされる。また、ここでいう「繊維集合体」とは、上述の繊維による単一の繊維構造体や、上述の繊維が長さ方向および/または径方向にそろった繊維構造体(撚糸、紡績糸、複数の長繊維が部分的に接続された糸材など)、ないし当該繊維構造体の集合体とされる。典型的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、レーヨンなどを材質とし、実用上はトウを開繊することによって得られる長繊維(フィラメント)の集合体が繊維集合体として多用される。
【0011】
また、本発明に係る清掃体は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、被清掃領域から除去したごみや埃を刷毛部において保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、被清掃領域を拭き清掃するための清掃体を備える清掃用具において、特に清掃体に少なくとも3つの被挿入領域を設け、これらの被挿入領域のうち任意に選択された2つの被挿入領域に対し、清掃体ホルダおいて所定の離間距離で並行して長手状に延在する2つの保持体が挿入可能とされた構成を採用することによって、被覆部の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することができ、以って清掃効果の高い清掃用具を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1〜図4を用いて、本発明における「清掃用具」の一実施の形態である清掃用具100の構成を説明する。この清掃用具100を用いて拭き清掃される清掃対象としては、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両等の室内、室外、屋外における被清掃領域(床面、壁面、窓、天井面、外壁面、家具面、衣類、カーテン、寝具、照明、家電品等)や、人体の各構成部位における被清掃領域等が挙げられる。これら各種の被清掃領域は、平面として構成されてもよいし、或いは曲面、凹凸面、段差面として構成されてもよい。
【0014】
本実施の形態の清掃用具100を構成する清掃体110及び清掃体ホルダ120を互いに組み付ける前の状態の斜視図が図1に示される。図1に示すように、この清掃用具100は、清掃体110と清掃体ホルダ120に大別される。
【0015】
清掃体110は、拭き清掃において清掃対象である被清掃領域の汚れを掻き取る汚れ掻き取り機能を有する清掃体とされる。この清掃体110は、販売時或いは未使用時にはシート状として構成され、使用時には解されて嵩高として構成される。詳細については後述するが、この清掃体110は、シート状の積層部110aを上下に積み重ねて接合することによって図1に示すように平面視が長方形とされ、所定の長手方向(長辺の延在方向)に長尺状に延在する構成とされる。この清掃体110が、本発明における「清掃体」に相当する。なお、必要に応じては、この清掃体110を、平面視が正方形の清掃体として構成することもできる。
【0016】
清掃体ホルダ120は、上記構成の清掃体110に対し着脱自在とされており、互いに連接するホルダ本体130及びハンドル部140からなる長尺状の部材として構成される。この清掃体ホルダ120が、本発明における「清掃体ホルダ」に相当する。ハンドル部140は、長尺状に延在するハンドル本体141と、このハンドル本体141とホルダ本体130との間に介在する連結部141aを備える。ハンドル本体141は、使用者によって把持される部位とされる。連結部141aは、ハンドル本体141とホルダ本体130を固定状に連結する部位を構成している。ここでいうハンドル部140ないしハンドル本体141が、本発明における「把持部」を構成する。
【0017】
ホルダ本体130は、清掃体110を着脱自在に保持する機能を有する部位である。このホルダ本体130には、ハンドル部140側の基部131に左右一対の保持板132,132、及び押え板134が設けられている。左右一対の保持板132,132は、基部131から前方に向けて所定の間隔を空けて同一平面上にて平行に(並行して)延在する長手状の板状部材として構成される。すなわち、ホルダ本体130は、その先端が二股状に分かれたフォーク形状となっている。各保持板132の横幅は、長手方向に関し一定或いは先端に向けて狭幅状に設定される。ここでいう保持板132,132が、本発明における「二つの保持体」を構成する。二本の保持板132,132の断面形状に関しては、断面が円形ないし多角形の棒形状とすることもできる。
【0018】
また、各保持板132には、その外側縁部の前後二箇所に突部133,133が設けられている。各突部133は、その外形が保持板132の外側に向けて突出した楕円形状とされており、その突出面が凸曲線形状とされている。また、各突部133は、その中央部分が開口状とされた中空部133aを有する構成とされる。押え板134は、左右一対の保持板132,132の間において前方へと延在するとともに、下側に向けて凸形状となるように湾曲して形成される板状部材として構成され、更にその下面に係止突部(図示省略)を備える。
【0019】
各保持板132は、清掃体110に設けられる被挿入領域(後述する被挿入領域116)への挿入が可能とされており、この挿入状態において清掃体110を保持する機能を有する。この挿入状態においては、各保持板132が清掃体110側の被挿入領域に密着状に摺接して嵌まり込み、清掃体110に対し止着作用を付与する。更に、この挿入状態においては、押え板134が清掃体110を上方から押えつけるとともに、その下面に設けられた係止突部(図示省略)が清掃体110の抜け止めとして作用する。これにより、各保持板132を清掃体110側の被挿入領域に挿入した挿入状態では、清掃体110がホルダ本体130によって確実に保持されることとなる。
【0020】
ここで、図1中の清掃体ホルダ120の分離状態における斜視図が図2に示される。図2に示すように、上記のホルダ本体130及びハンドル部140は、各々が樹脂成型後に一体状に組み付けられるように構成されており、また互いに分離可能に構成されている。ホルダ本体130は、基部131の後端側に被嵌合板131aを備える一方、ハンドル部140は、ハンドル本体141の先端側に第1嵌合板143及び第2嵌合板144を備える。また、第1嵌合板143と第2嵌合板144との間には、被嵌合板131aが嵌まり込み可能な嵌合領域145が形成されるとともに、この嵌合領域145には、第1嵌合板143の凹部131bに係合可能な凸部(図示省略)が設けられている。
【0021】
このような構成において、被嵌合板131aを嵌合領域145に嵌め込んだ場合には、この被嵌合板131aを第1嵌合板143及び第2嵌合板144が上下から挟持し、更に第1嵌合板143の凹部131bに嵌合領域145の凸部が係合することで、ホルダ本体130とハンドル部140との間に止着作用が付与される。一方、ホルダ本体130及びハンドル部140が互いに止着された状態において、当該止着力よりも大きい引っ張り力にて両者を離間方向に引っ張ることによって、これらホルダ本体130及びハンドル部140を分解することが可能となる。なお、本構成にかえて、ホルダ本体130及びハンドル部140(ハンドル本体141及び連結部141a)を一体成型とする構成や、ホルダ本体130、ハンドル本体141及び連結部141aのいずれか二つを一体成型とする構成を採用したり、或いは各々を独立して成型されたものを固定状に組み付ける構成を採用してもよい。
【0022】
次に、上記清掃体110の具体的な構成に関しては図3及び図4が参照される。図3には、図1中の清掃体110のA−A線に関する断面構造が示され、図4には、清掃体110の積層部110aを各構成要素に分離した状態の斜視図が示される。
【0023】
図3に示すように、本実施の形態の清掃体110は、2つの積層部110aを積層して溶着接合部113にて溶着接合することによって形成されている。各積層部110aは、清掃対象側から順に積層部本体111、保持シート112を積層して溶着接合部114にて溶着接合することによって形成された構成であり、更に積層部本体111は、清掃対象側から順に表面側シート111c、繊維集合体111b、基材シート111aが積層された構成とされる。この場合、保持シート112及び基材シート111aは、繊維集合体111bを挟んで表面側シート111cと反対側に積層されたシート体とされる。2つの積層部110aによって形成される被覆部分は、保持シート112を清掃体内方とし基材シート111aを清掃体外方とし、更に繊維集合体111bが基材シート111aのまわりに溶着接合された構成とされる。この被覆部分が、本発明における「被覆部」を構成する。
【0024】
また、各積層部110aでは、保持シート112と基材シート111aが左右二箇所において溶着接合部115にて溶着接合され、これによって溶着接合部114を挟んで両側に左右一対の被挿入領域が形成される。従って、2つの積層部110aが積層された状態では、清掃体110の内部に並行して長手状に延在する計4つの被挿入領域116,117,118,119が形成されることとなる。これら被挿入領域116〜119は、保持シート112、基材シート111a、溶着接合部114及び115によって区画された領域とされ、いずれもホルダ本体130の各保持板132が挿入可能な大きさ(挿入幅及び挿入深さ)を有する形状とされている。これら4つの被挿入領域116,117,118,119が、本発明における「少なくとも3つの被挿入領域」に相当する。
【0025】
各積層部110aの具体的な構成に関しては図4が参照される。図4に示すように、各積層部110aは、清掃体の外表面から順に積層部本体111、保持シート112が積層された構成であり、更に積層部本体111は、清掃体の外表面から順に表面側シート111c、繊維集合体111b、基材シート111aが積層された構成とされる。この場合、保持シート112及び基材シート111aは、繊維集合体111bを挟んで表面側シート111cと反対側に積層されたシートとされる。
【0026】
積層部本体111を構成する基材シート111a、繊維集合体111b、表面側シート111cは、いずれも平面視が同様の長方形のシート状とされ、清掃体110の長手方向に長尺状に延在する構成とされる。繊維集合体111b及び表面側シート111cは、汚れ掻き取り機能を有する刷毛状部位を構成しており、いわゆる「刷毛部」とも称呼される。この清掃体110は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、清掃対象の被清掃領域から除去したごみや埃を刷毛部において保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。また、本実施の形態では、清掃体110の積層部本体111を、基材シート111a、繊維集合体111b及び表面側シート111cが積層状に重ねられた構造としたが、この積層部本体111を更なる繊維層やシートが付加された構造とすることもできる。
【0027】
表面側シート111cは、清掃体110の長手方向と交差する方向に延在するジクザグ状の短冊片(短冊部分)を複数備える。具体的には、表面側シート111cに関しては、清掃体110の長手方向と交差する方向に複数の短冊片111dが並列状に延在する構成とされる。各シートの短冊片をジクザグ状とすることによって、ごみを引っ掛けて捕捉し易い清掃機能の高い構造が実現される。なお、短冊片の形状に関しては、ジクザグ状、直線状、曲線状などのうちの単一種類或いは複数種類の形状を適宜用いることができる。
【0028】
次に、上記基材シート111a、表面側シート111c及び保持シート112を形成する不織布の構成、及び繊維集合体111bを形成する繊維集合体の構成につき詳細に説明する。
【0029】
(不織布の構成)
基材シート111a、表面側シート111c及び保持シート112に関しては、いずれも典型的には熱溶融性繊維(熱可塑性繊維)からなるシート状の不織布を使用することができる。すなわち、これら基材シート111a、表面側シート111c及び保持シート112は、不織布シートとも称呼される。ここでいう基材シート111a及び保持シート112が、本発明における「不織布からなるシート体」を構成している。この不織布は、機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であって、熱可塑性繊維を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布とされ、複数の短冊片を有する形状の不織布として構成される。熱可塑性繊維(熱溶融繊維)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。この不織布としては、エアースルー法、スパンボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、ポイントボンド法、メルトブロー法、ステッチボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等により製造されたものを適宜使用することができる。この不織布が、本発明における「不織布」に相当する。なお、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い不織布を用いるのが好ましい。また、不織布に代えて或いは加えて、ウレタン、スポンジ、織布、ネット、ワリフなどの素材を短冊状に加工したものを用いることもできる。
【0030】
(繊維集合体の構成)
一方、繊維集合体111bは、繊維による単一の繊維構造体や、繊維が長さ方向および/または径方向にそろった繊維構造体(撚糸、紡績糸、複数の長繊維が部分的に接続された糸材など)、ないし当該繊維構造体の集合体とされ、熱可塑性繊維を一部に含み融着(「溶着」ともいう)が可能な繊維集合体として構成される。この繊維集合体111bを形成する繊維とは、糸、織物などの構成単位であり、太さに比して十分な長さを持つ、細くてたわみやすい形態のものとして規定され、典型的には長い連続状の繊維が長繊維(フィラメント)とされ、短い繊維が短繊維(ステープル)とされる。この繊維集合体111bの繊維は、基端側が溶着接合部114及び溶着接合部115にて接合されるとともに、当該溶着接合部を固定端とし当該固定端と対向する側(先端側)を自由端として、清掃体110(或いは繊維集合体111b)の長手方向と交差する方向に長尺状に延在する構成とされる。清掃体110の長手方向と交差する方向に延在するこの繊維集合体111bが、本発明において「所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体」に相当する。この繊維集合体111bは、複数の繊維が束状に形成された「繊維束」とも称呼される。
【0031】
なお、図2中に示す例では、三つの繊維層が積層状に重ねられることによって繊維集合体111bが形成される場合について記載しているが、この繊維層の数は必要に応じて1または複数とすることができる。この繊維集合体111bは、所定の平面や曲面による面構造を有するとともに、ある程度の厚みを有する立体形状として、或いは薄肉シート形状として構成されるのが好ましい。ここでいう「繊維集合体」は、典型的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、レーヨンなどを材質とし、実用上はトウを開繊することによって得られる長繊維(フィラメント)の集合体がこの繊維集合体として多用される。特には、芯部分がポリプロピレン(PP)或いはポリエチレンテレフタレート(PET)であり、この芯部分の外面を覆う鞘部分がポリエチレン(PE)の複合繊維を用いて繊維集合体が構成されるのが好ましい。また、この繊維集合体を形成する長繊維の繊度は、1〜50dtexのものが好ましく、更には2〜10dtexのものが好ましい。また、各繊維集合体は概ね同様の繊度の繊維から構成されてもよいし、或いは各繊維集合体が異なる繊度の繊維を含む構成であってもよい。
【0032】
また、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い繊維、すなわち繊度が高い繊維を含む繊維集合体を用いるのが好ましい。また、繊維集合体は、捲縮繊維を有する構成されるのが好ましい。ここでいう捲縮繊維は、所定の巻き縮み処理が付与された繊維として構成され、繊維同士が絡み易い構造とされる。このような捲縮繊維を用いると、繊維集合体が清掃体ホルダ装着前の状態よりも嵩高となり、更に捲縮部分にごみを取り込み易い構造とされる。本構造は、特にトウ繊維から形成された捲縮繊維を用いることによって実現され得る。
【0033】
なお、繊維集合体として、フィルムをテープ状にスリットし、縦方向へ延伸させたフラットヤーンや、スプリットヤーンと称呼される熱可塑性フィルム樹脂を樹脂の配向方向と直交する方向にかきわけて、繊維状となったフィルムが網目状に接合されているものを使用してもよい。或いは、繊維集合体として、エアースルー不織布などの嵩高で繊維密度の低い不織布を使用してもよい。
【0034】
また、清掃体110の構成要素の種類や数等に関しては、上記の例に限定されるものではなく、必要に応じて種々選択が可能である。
【0035】
上記構成の清掃用具100の作用に関しては、図5〜図10が参照される。これら図5〜図10には、本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子が模式的に示される。
【0036】
清掃用具100を用いた被清掃領域の拭き清掃に際し、清掃体110及び清掃体ホルダ120を互いに組み付ける場合には、清掃体ホルダ120の保持板132,132を清掃体110側の任意の被挿入領域に挿入する。これにより、清掃体110及び清掃体ホルダ120が互いに組み付けられる。このとき、清掃効果を高めるべく、清掃体110を必要に応じて毛羽立たせ、ボリューム感を高めるのが好ましい。
【0037】
本実施の形態では、清掃体110の内部に計4つの被挿入領域116,117,118,119を設けているため、所定の離間距離で延在する2つの保持板132,132は、4つの被挿入領域116〜119のうち任意に選択された2つの被挿入領域に挿入可能である。これによって、この保持板132,132の挿入態様として図5〜図10に示す計6種類の態様が可能とされる。
【0038】
図5に示す第1の形態は、清掃体110の被挿入領域116,117に対し保持板132,132を挿入して、清掃面S1及び清掃面S2を清掃体110の上面側に配設し、また清掃面S3及び清掃面S4を清掃体110の下面側に配設する形態とされる。
また、図6に示す第2の形態は、清掃体110の被挿入領域118,119に対し保持板132,132を挿入して、清掃面S3及び清掃面S4を清掃体110の上面側に配設し、また清掃面S1及び清掃面S2を清掃体110の下面側に配設する形態とされる。
また、図7に示す第3の形態は、清掃体110の被挿入領域117,118に対し保持板132,132を挿入して、清掃面S2及び清掃面S3を清掃体110の上面側に配設し、また清掃面S1及び清掃面S4を清掃体110の下面側に配設する形態とされる。
また、図8に示す第4の形態は、清掃体110の被挿入領域116,119に対し保持板132,132を挿入して、清掃面S1及び清掃面S4を清掃体110の上面側に配設し、また清掃面S2及び清掃面S3を清掃体110の下面側に配設する形態とされる。
また、図9に示す第5の形態は、清掃体110の被挿入領域116,118に対し保持板132,132を挿入する形態とされる。
また、図10に示す第6の形態は、清掃体110の被挿入領域117,119に対し保持板132,132を挿入する形態とされる。
【0039】
このような構成によれば、清掃体110の汚れが確認された場合に、保持板132,132の挿入態様を変更して、2つの保持板132,132の差し替えを行うことによって、清掃体110の外表面全体を清掃面としてまんべんなく使用することができ、清掃体110が本来有する清掃能力をロスすることなく使用することが可能となり、清掃効果向上を図ることが可能となる。また、一つの清掃体110を長期間にあたって使用することが可能となり経済的である。
【0040】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0041】
上記実施の形態では、清掃体110の内部に保持板132,132を挿入可能な計4つの被挿入領域116,117,118,119が配設される場合について記載したが、本発明では、清掃体110の内部に少なくとも3つの被挿入領域を配設することが可能である。
【0042】
また、上記実施の形態では、2つの積層部110aが積層された積層構造の清掃体110について記載したが、本発明の清掃体は、不織布からなるシート体によって区画された少なくとも3つの被挿入領域のまわりが、拭き清掃面を形成する被覆部によって被覆された構成であればよく、前記積層構造以外の構成であってもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、不織布からなるシート体のまわりを被覆する被覆部分を、繊維集合体を用いて構成する場合について記載したが、本発明では、この被覆部分は不織布のみによって構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態の清掃用具100を構成する清掃体110及び清掃体ホルダ120を互いに組み付ける前の状態の斜視図である。
【図2】図1中の清掃体ホルダ120の分離状態における斜視図である。
【図3】図1中の清掃体110を各構成要素に分離した状態の斜視図である。
【図4】図1中の清掃体110のA−A線に関する断面構造を示す図である。
【図5】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【図6】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【図7】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【図8】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【図9】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【図10】本実施の形態の清掃体110に対し保持板132,132が装着された様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0045】
100…清掃用具
110…清掃体
110a…積層部
111…積層部本体
111a…基材シート
111b…繊維集合体
111c…表面側シート
111d…短冊片
112…保持シート
112a…短冊片
113,114,115…溶着接合部
116,117,118,119…被挿入領域
120…清掃体ホルダ
130…ホルダ本体
131…基部
131a…被嵌合板
132…保持板
133…突部
133a…中空部
134…押え板
140…ハンドル部
141…ハンドル本体
141a…連結部
143…第1嵌合板
144…第2嵌合板
145…嵌合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃領域の拭き清掃に用いられる清掃用具であって、
長尺状の清掃体ホルダと、
前記清掃体ホルダに装着される清掃体と、
を備え、
前記清掃体ホルダは、使用者によって把持される把持部と、前記把持部に連接して設けられ、所定の離間距離で並行して長手状に延在する2つの保持体を有し、
前記清掃体は、不織布からなるシート体によって区画されて並行して延在する少なくとも3つの被挿入領域と、前記シート体のまわりを被覆して拭き清掃面を形成する被覆部を有する構成であり、
所定の離間距離で延在する前記2つの保持体が、前記少なくとも3つの被挿入領域のうち任意に選択された2つの被挿入領域に挿入されてなる清掃用具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃用具であって、
前記少なくとも3つの被挿入領域は、前記シート体として不織布からなる基材シート及び保持シートを互いに積層して接合することによって形成され、
前記被覆部は、前記保持シートを清掃体内方とし前記基材シートを清掃体外方とし、更に所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体が前記基材シートのまわりに接合された構成であることを特徴とする清掃用具。
【請求項3】
被清掃領域の拭き清掃に用いる清掃体であって、
不織布からなるシート体によって区画されて並行して長手状に延在する少なくとも3つの被挿入領域と、
前記シート体のまわりを被覆して拭き清掃面を形成する被覆部と、
を備える構成であることを特徴とする清掃体。
【請求項4】
請求項3に記載の清掃体であって、
前記少なくとも3つの被挿入領域は、前記シート体として不織布からなる基材シート及び保持シートを互いに積層して接合することによって形成され、
前記被覆部は、前記保持シートを清掃体内方とし前記基材シートを清掃体外方とし、更に所定方向に延在する繊維を複数集合させた繊維集合体が前記基材シートのまわりに接合された構成であることを特徴とする清掃体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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