説明

清掃用物品及びその製造方法

【課題】狭い隙間に繊維が入り易く、また、汚れの捕集性に優れており、様々な清掃対象物を効率良く清掃することのできる清掃用物品、及び繊維束を、汚れを効率よく捕集できる程度に容易に開繊させることができ、清掃性能に優れた清掃用物品を効率良く製造することのできる清掃用物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の清掃用物品は、扁平で筒状の把手挿入部を有し、該把手挿入部の上下それぞれに繊維束からなる繊維層を具備しており、把手を該把手挿入部内に挿入して取り付け可能になされており、前記繊維層は、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該捲縮繊維に交互に存する山と谷との高低差が0.1〜0.7mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把手挿入部を有し、把手を該把手挿入部内に挿入して取り付け可能になされている清掃用物品並びに該清掃用物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、把手挿入部を有し、把手を該把手挿入部内に挿入して取り付け可能になされている清掃用物品が知られている。
また、基材シートの上面及び下面に、それぞれ繊維束からなる繊維層を設けた清掃用物品が知られている。繊維層は、基材シートに複数本の連続シール線により接合されることが一般的である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−369783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の清掃用物品においては、繊維束の開繊状態が必ずしも清掃に適したものとは言えなかった。
また、繊維束を、汚れを効率よく捕集できる程度に開繊させることが困難であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、狭い隙間に繊維が入り易く、また、汚れの捕集性に優れており、様々な清掃対象物を効率良く清掃することのできる清掃用物品、及び繊維束を、汚れを効率よく捕集できる程度に容易に開繊させることができ、清掃性能に優れた清掃用物品を効率良く製造することのできる清掃用物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、扁平で筒状の把手挿入部を有し、該把手挿入部の上下それぞれに繊維束からなる繊維層を具備しており、把手を該把手挿入部内に挿入して取り付け可能になされている清掃用物品であって、前記繊維束は、ジグザク状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束であり、該捲縮繊維に交互に存する山と谷との高低差(以下、「捲縮高低差」という)が0.1〜0.7mmである、清掃用物品を提供することにより、上記目的を達成するものである。
【0007】
また、本発明は、連続した繊維束からなる帯状の繊維層と帯状のシート部材とを重ね、両者を部分的に接合して積層体を形成する工程、前記積層体を所定の長さに切断する工程、及び切断した前記積層体における前記繊維層部分に圧搾空気を当てて、前記繊維束を開繊させる工程を具備する清掃用物品の製造方法であって、前記繊維層は、ジグザク状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該捲縮繊維の捲縮高低差が0.1〜0.7mmである、清掃用物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の清掃用物品は、狭い隙間に繊維が入り易く、また、汚れの捕集性に優れており、様々な清掃対象物を効率良く清掃することができる。
また、本発明の清掃用物品の製造方法によれば、繊維束を、汚れを効率よく捕集できる程度に容易に開繊させることができ、清掃性能に優れた清掃用物品を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の清掃用物品について、その好ましい一実施形態である第1実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本実施形態の清掃用物品10は、図1〜図4に示すように、全体として縦長で扁平形状を有しており、幅方向に一対の扁平筒状の把手挿入部15,15を備えている。本実施形態の清掃用物品10においては、一対の把手挿入部15,15内に、把手20における一対の挿入部22,22(図6参照)をそれぞれ挿入して取り付け可能になっている。
【0010】
把手挿入部15は、その上下の繊維層11,11間に介在させた2つの部材13A,13Bを、把手挿入部15の長手方向両側に接合部16A,16Bが形成されるように接合して形成されている。詳述すると、把手挿入部15は、図4(a)に示すように、対向した2枚の第1把手挿入部形成シート13A,第2把手挿入部形成シート13Bが、中央連続シール線16A及び一対のサイド非連続シール16Bで接合されて形成されている。
【0011】
把手挿入部形成シート13における把手挿入部15の上面及び下面には、それぞれ繊維束からなる繊維層11が1層以上設けられている。本実施形態においては、把手挿入部15の上面に、第1繊維層11A、第3繊維層11Cの2層の繊維層が設けられており、把手挿入部15の下面に、それぞれ第2繊維層11B、第4繊維層11Dの2層の繊維層が設けられている。
【0012】
尚、第1把手挿入部形成シート13A及び第2把手挿入部形成シート13Bに共通する説明を行う際には「把手挿入部形成シート13」の表現を用いる。第1繊維層11A、第2繊維層11B、第3繊維層11C及び第4繊維層11Dに共通する説明を行う際には「繊維層11」の表現を用いる。第1繊維層11A及び第2繊維層11Bに共通する説明を行う際には「内側繊維層11P」の表現を用いる。第3繊維層11C及び第4繊維層11Dに共通する説明を行う際には「外側繊維層11Q」の表現を用いる。
【0013】
第1繊維層11A及び第2繊維層11Bは、繊維層11のうち最も把手挿入部形成シート13側の繊維層である。第3繊維層11C及び第4繊維層11Dは、それぞれ第1繊維層11A及び第2繊維層11Bの外側の繊維層である。従って、本実施形態の清掃用物品10においては、上層から下層に向けて、第3繊維層11C、第1繊維層11A、第2繊維層11B、第4繊維層11Dの順で積層した4層の繊維層が形成されている。
【0014】
繊維層11は、繊維束が所定の厚みをもって配向されて形成されている。繊維束は、把手挿入部15の幅方向に略配向している。従って、第1繊維層11A〜第4繊維層11Dは、繊維の配向方向が把手挿入部形成シート13の長手方向と略直交するように積層されている。各繊維層11は、略矩形の平面視形状を有しており、それぞれ実質的に同形となっている。
【0015】
繊維層11は、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該繊維の捲縮高低差が0.1〜0.7mmである。
前記捲縮高低差が0.1〜0.7mmであると、繊維束が適度に開繊した状態となるため、繊維間がゴミの捕集に適したものになり、繊維間の隙間に汚れが取り込まれ易くなる。また繊維が起毛し、立体感のある形状となる。そのため、隙間のない清掃対象物は勿論のこと、狭い隙間を有する清掃対象物、凹凸形状の清掃対象物も効率よく清掃することができる。さらに、しばらく清掃を続けると発生しやすい、繊維同士の絡み合いによる凝集現象を抑えることができ、シートが十分に汚れるまで性能低下が無く使用することができる。
狭い隙間を有する清掃対象の例としては、ブラインド、家具と家具の隙間、本棚の本と棚板の隙間、等があげられる。また凹凸形状の清掃対象物としては、写真たてダウンライト、パソコンのキーボード、等が挙げられる。
【0016】
他方、前記捲縮高低差が0.7mmより大きくなると、繊維束を構成する繊維の開繊が不十分となり、ダストの捕集に適した繊維間が形成されない。また凹凸形状への追従性も低くなる。機械力等により、開繊を十分行ったとしても、繊維同士の絡み合いによる凝集を抑えることができない。結果として、清掃作業の途中から捕集性能が低下してしまう。
また、前記捲縮高低差が0.1mm未満であると、嵩高な繊維層を形成できない。即ち、十分な開繊は可能であるが、それにより作られた繊維層が外観上の立体感と十分な使用感を与えられない。
【0017】
狭い隙間への繊維の入り込み易さまた、ダストの捕集に適した繊維間の形成されやすさ、開繊後繊維の絡み合いによる凝集の効果的な防止の観点から、前記捲縮高低差は0.65mm以下であることが好ましく、嵩高な繊維層を形成し、外観の立体感と十分な使用感を得る観点から、前記捲縮高低差が0.2mm以上であることが、好ましい。
【0018】
清掃用物品における前記捲縮高低差は、以下のようにして測定される。
清掃用物品の繊維層を観察し、捲縮が最も強い(高い)部分を隣接していない3箇所以上見つける。各々の場所で、一本の繊維ではなく、ほぼ同じ形状に屈曲した繊維の集合を見つけ、形状が崩れないように切り出す。
水平に置いた厚紙等に、自重以外荷重をかけないで、かつ固定した厚紙等がゆがまないように、切り出した繊維の長手方向の何れか一端側を透明なテープで固定する(図7図)。この固定は、2次元的、立体的な捲縮がある場合、繊維の山と谷の差が最も大きくなるよう固定する。繊維が厚紙等の固定したものから浮き上がらない、かつできるだけ直線に近い状態にし写真撮影をする。この際、実寸が確認できるようスケール等も同じ写真に入れる。
得られた写真をコピー機、スキャナー等拡大可能な装置で繊維が鮮明に分かるように拡大し、好ましくは4倍以上に拡大する〔図8参照〕。
そして、繊維の捲縮が、規則正しく、できるだけ直線状の部分を選ぶ。さらに繊維の乱れの少ない方、あるいはより鮮明に写っている方を目安に天地を決定する。繊維の集合の内側、外側に注意し、隣接する谷同士の頂点をつなぐ(谷を外側にする場合は、山は内側からとなる。)
そして、図8に示すように、連続する5つの山からほぼ垂直に、前記の隣接する谷と谷をつないだ線までの距離を測定する。
倍率等に注意して、5つの山それぞれについて測定し、実寸を求める。この平均をそのサンプルの測定値とする。同一試料から切り出した残りの箇所についても同様に測定する。全てのサンプルの内、値の大きな3つを平均し、その試料の捲縮高低差とする。
【0019】
捲縮繊維の前記捲縮高低差は、清掃用物品の繊維層の部分毎に異なる場合がある。本発明の清掃用物品においては、繊維束の前記捲縮高低差は、繊維層のなかでも、最も捲縮の程度が高いと思われる部分を測定するため、清掃物品に使用された繊維について捲縮高低差の最大値を規定していると言える。
【0020】
また、繊維層11を構成する繊維束を構成する、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維は、1cm当たりの捲縮数(山と谷の合計数の1/2)が、2〜20であることが好ましく、より好ましくは2〜13である。1cm当たりの捲縮数は、JIS L 1015 8.12.1に準じて測定し、1cmあたりに換算する。例えば、図9に示す例においては、矢印で示す1cmの範囲内に合計18個の山と谷があるため、1cm当たりの捲縮数は9である。
【0021】
繊維層11を構成する繊維束の繊維長は、埃の絡み取り性の観点から、好ましくは30〜150mm、更に好ましくは50〜120mmである。繊維の太さは、埃の絡み取り性や清掃対象面への傷付き防止性の観点から、0.1〜200dtex、特に2〜30dtexであることが好ましい。
【0022】
また、繊維層を構成する繊維には、流動パラフィン等のオイル成分を塗工し、微細ダスト等の粒子状物を保持できるようにすることも好ましい。流動パラフィン以外の成分としては、一般に油剤として知られている、シリコーン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンワックス等を用いることもできる。さらにこれら成分に吸水性の向上、帯電防止能力の向上等のため、界面活性剤を添加することも有効である。
【0023】
把手挿入部形成シート13は、略矩形状で、それらの長手方向が清掃用物品10の長手方向と一致している。把手挿入部形成シート13の長さは、繊維層11の長さとほぼ同じになっている。把手挿入部形成シート13の幅は、繊維層11の幅よりも狭くなっている。換言すると、清掃用物品10の幅方向において、把手挿入部15を形成する部材13の幅方向の長さは、繊維束からなる繊維層11の幅方向の長さよりも短くなっている。
【0024】
把手挿入部形成シート13は、その長手方向に柔軟性を有しており、清掃対象面に沿って追随し易くなっている。そのため、把手挿入部形成シート13に接合されている繊維層11も、清掃対象面に沿って追随し易くなるので、清掃用物品10によるゴミ、埃等の捕集効果が高くなっている。
把手挿入部形成シート13の形成材料としては、従来の清掃用物品に用いられている不織布等の繊維シートを用いることができる。特に、エアスルー不織布又はスパンボンド不織布が好ましい。また、不織布、フィルム、合成紙、それらの複合材料でも良い。
【0025】
繊維層11と把手挿入部形成シート13とは、それらの幅方向中央部を一致させて、把手挿入部形成シート13の長手方向に亘って接合されている。
詳細には、第1繊維層11Aは、第1把手挿入部形成シート13Aに、幅方向中央部においては長手方向に連続的に延びる中央連続シール線16Aにより接合されており、中央連続シール線16Aから幅方向外方にそれぞれ離間した位置においては長手方向に非連続的に延びるサイド非連続シール16Bにより接合されている。同様に、第2繊維層11Bは、第2把手挿入部形成シート13Bに、中央連続シール線16A及びサイド非連続シール16Bにより接合されている。
また、第3繊維層11C及び第4繊維層11Dは、それぞれ第1把手挿入部形成シート13A及び第2把手挿入部形成シート13Bに、幅方向中央部においてのみ中央連続シール線16Aにより接合されている。
【0026】
本実施形態の清掃用物品10においては、その幅方向中央部に位置している中央連続シール線16Aは、連続直線状で、把手挿入部形成シート13の長手方向の前後端部間に亘って形成されている。尚、中央連続シール線16Aの幅方向位置は、把手挿入部形成シート13の幅方向中央部でもある。
【0027】
把手挿入部形成シート13の少なくとも一方の長さは、繊維層についての把手挿入部15の挿入方向に沿う長さの100%以上であることが好ましい。把手20の挿入位置の確認しやすさ、挿入操作のしやすさ等から、第1把手挿入部形成シート13A及び第2把手挿入部形成シート13Bの両方が繊維層11より長いことが好ましい。
【0028】
中央連続シール線16Aの幅方向外方にはそれぞれサイド非連続シール16B,16B(図3において破線で囲まれた部分)が設けられている。
サイド非連続シール16Bは、長手方向に離間した2〜100個の点シール18の集合体から構成されている。集合体を構成する点シール18の個数は、更に好ましくは2〜50個である。本実施形態の点シール18は、円形のヒートシールから形成されている。点シール18は、長手方向位置を一致させて配列しており、長手方向に等間隔に並んで形成されている。点シール18の長手方向間隔は、把手20を把手挿入部15に挿入する際に引っ掛からないようにする観点から、5〜40mmであることが好ましい。尚、点シール18の形状は、例えば、楕円形、矩形等でもよい。点シール18の長手方向間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0029】
中央連続シール線16Aとサイド非連続シール16Bとの幅方向間隔W1は、好ましくは5〜90mm、更に好ましくは5〜45mmである。
前記幅方向間隔W1は、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bが重なった状態において、サイド非連続シール16Bを形成している点シール18の幅方向内側の縁端と、中央連続シール線16Aの幅方向外側の縁端との間を、把手挿入部形成シート13の幅方向に沿って測った距離である。本実施形態においては、前記幅方向間隔W1は、把手挿入部15の幅となる。
【0030】
内側繊維層11Pは、幅方向に沿う縦断面視において、図4(a)に示すように、中央連続シール線16A及び2個のサイド非連続シール16Bの3箇所で接合されているか、又は図4(b)に示すように、中央連続シール線16Aのみの1箇所で接合されている。外側繊維層11Qは、幅方向に沿う縦断面視において、図4(a)及び図4(b)に示すように、どの断面においても中央連続シール線16Aのみの1箇所で接合されている。尚、図4(a)及び図4(b)においては、第2繊維層11B及び第4繊維層11Dの図示を省略している。
【0031】
また、図4(c)に示すように、繊維層11Aの幅方向端部は、把手挿入部形成シート13の幅方向端部から延出していることが好ましい。把手挿入部形成シート13は、幅方向において、少なくとも内側繊維層11Pよりも片側で1〜20mm短いことが好ましく、2〜15mm短いことが更に好ましい。
【0032】
本実施形態の清掃用物品10は、把手挿入部形成シート13の幅方向の長さが、清掃用物品の幅方向において上記繊維層11を形成している繊維束の幅方向の長さより短いため、清掃用物品10の表面に存在するのは、該繊維束による繊維層11のみとなる。さらに繊維層11のシール位置が複数あり、複数のパターンの刷毛が形成されて起毛方向が異なるため、エアブロー等により繊維は容易に立ち上がり、互いに支え合う形になる。そのため、図5に示すように清掃用物品10の全周を繊維による刷毛の先端で覆うような形態にすることが可能である。この際、繊維層11を略円筒状に起毛させて、中央連続シール線16Aを覆い隠すようにして清掃用物品10の全表面を覆うことが好ましい。
【0033】
中央連続シール線16A,サイド非連続シール16Bは、ヒートシール、接着剤による接着等の公知の接合手段により形成されている。把手挿入部形成シート13が熱融着性の材料から構成されている場合には、中央連続シール線16A,サイド非連続シール16Bは、熱融着によって形成することもできる。
【0034】
扁平筒状の一対の把手挿入部15,15は、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bが、3本のサイド非連続シール16B,中央連続シール線16A,サイド非連続シール16Bで接合されて形成されている。即ち、3本のサイド非連続シール16B,中央連続シール線16A,サイド非連続シール16Bは、把手挿入部形成シート13と繊維層11との接合シール部と、対向した把手挿入部形成シート13A,13B同士の接合シール部とを兼ねている。
【0035】
把手挿入部15は、把手挿入部形成シート13の長手方向の前後端部間の全長に亘って形成されている。把手挿入部15,15においては、把手20が挿入されていない状態では、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bが当接し得る状態にあるが、把手20が挿入された状態では、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bが離間し、筒状の空間が形成されるようになっている。
【0036】
把手挿入部15は、把手挿入部形成シート13における長手方向の前後端部それぞれに挿入口を有している。そのため、把手20は、把手挿入部15内に何れの挿入口からも挿入可能となっている。
【0037】
次に、把手20について説明する。把手20は、図6に示すように、把持部21と、把持部21の先端から2股に分岐した一対の挿入部22,22とを備えている。把持部21と挿入部22とは所定の角度をなしている。挿入部22は細長い扁平板状の形状を有している。挿入部22がこのような形状となっていることで、挿入部22に可撓性が付与される。挿入部22に可撓性が付与されていると、曲面や凹凸を有する清掃対象面を清掃した場合に、清掃用物品10が清掃対象面に追従し易くなり、埃の除去効率が高まる観点から有利である。
【0038】
一対の挿入部22は、清掃用物品10における一対の把手挿入部15内にそれぞれ挿入し得るようになっている。挿入部22,22間には、挿入部22よりも短い長さを有するフック部23が設けられている。フック部23はその先端が所定の角度をなして上方を向いている。フック部23は、挿入部22が把手挿入部15内に挿入された状態において、清掃用物品10における切れ込み19(詳細は後述)と係合することで、挿入部22を清掃用物品10から抜け難くしている。
【0039】
把手20の形成材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、成型加工性及び可撓性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂等が好ましい。
【0040】
本実施形態の清掃用物品10は、把手20における一対の挿入部22,22をそれぞれ一対の把手挿入部15,15に挿入固定した状態で清掃に用いられる。
【0041】
把手挿入部形成シート13における長手方向の前後端部は、それぞれ内側に長手方向中央部に向けて折り返されており、折り返されている部分の幅方向中央部は、中央連続シール線16Aにより、把手挿入部形成シート13に接合されている。把手挿入部形成シート13における長手方向の前後端部には、把手20のフック部23と係合する係合手段(把手20と係合可能な部分)として切れ込み19が設けられている。
【0042】
切れ込み19は、コの字状をしており、フック部23が係合することにより、把手挿入部形成シート13の長手方向内側から上方に向けて開くようになっている。切れ込み19がフック部23に係合されると、把手20は、把手挿入部15における長手方向の動き、特に長手方向外側への動きが規制されるため、挿入された把手20が清掃用物品10に安定して固定されるようになっている。
【0043】
切れ込み19は、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bの両方に形成されているため、把手20は、フック部23を清掃用物品10の上面側又は下面側の何れに配置しても、把手挿入部15に挿入して固定することができる。
尚、本実施形態では、把手挿入部15の長さが繊維層11の長さ(把手挿入部15の挿入方向に沿う長さ)とほぼ同じ長さになっているが、本発明においては、装着性等を考慮し、把手挿入部形成シート13の長さを繊維層11の長さよりも長くして、把手挿入部15の長さを繊維層11の長さよりも長く設けることが好ましい場合もある(図示せず)。
【0044】
さらに把手挿入部形成シート13の端部は、把手20に装着時に力を入れやすく、また力を入れたときの破断を防止するために、既知の補強手段より補強することが好ましい。本実施形態においては、2枚の把手挿入部形成シート13の端部は、把手挿入部15において折り返されて一体化されてシート破断強度が高められている。
【0045】
次に本発明の第2実施形態の清掃用物品10について、図10を参照しながら説明する。第2実施形態について、特に説明しない点については、第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図10において、図1〜図6と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0046】
第2実施形態の清掃用物品10は、図10に示すように、把手挿入部15が一つだけ設けられている。2枚の同形で縦長の把手挿入部形成シート13A,13Bが、その長手方向に亘る2つのサイド非連続シール16B,16Bで貼り合わされて、筒状の把手挿入部15が形成されている。2つのサイド非連続シール16B,16B(図10において点線で囲まれた部分)においては、図10に示すように、円形のヒートシールによる点シール18が、該把手挿入部形成シート13A,13Bの長手方向に等間隔に並んで形成されている。
第1実施形態の清掃用物品に設けられていた線状のヒートシールによる中央連続シール線16Aは、把手挿入部形成シート13と繊維層11との接合をしているが、2枚の把手挿入部形成シート13A,13B同士の接合をしていない。
本実施形態において、把手20の挿入部の形状は、その幅が把手挿入部15と略同じ幅を有していれば、第1実施形態と同様に図6に示すように2股に分岐していても良いし、図11に示すように分岐していない一体的形状であっても良い。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
次に、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様について、上述した図10に示す第2実施形態の清掃用物品10を製造する場合を例にして、図12〜図16を参照しながら説明する。尚、図16においては、第2連続体32B側の製造工程は、第1連続体32A側の製造工程と実質的に同じであるため、図示を省略している。
【0048】
本実施態様の製造方法においては、下記(1)〜(3)の工程を経て、清掃用物品10を製造する。また、下記(1)の工程で使用する繊維層として、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該繊維の捲縮高低差が0.1〜0.7mmであるものを用いる。
(1)連続した繊維束からなる帯状の繊維層と帯状のシート部材とを重ね、両者を部分的に接合して積層体を形成する工程
(2)前記積層体を所定の長さに切断する工程、及び
(3)切断した前記積層体における前記繊維層部分に圧搾空気を当てて、前記繊維束を開繊させる工程
【0049】
以下、本実施形態の製造方法について詳細に説明する。
(1)連続した繊維束からなる帯状の繊維層と帯状のシート部材とを重ね、両者を部分的に接合して積層体を形成する工程
本工程においては、先ず、第1連続体及び第2連続体をそれぞれ製造する。尚、第1連続体32Aについてのみ説明し、第2連続体32Bについての説明は省略するが、第2連続体32Bについても第1連続体32Aと同様に製造される。
第1連続体32Aは、図12、図13及び図16に示すように、連続した繊維束からなる帯状の第1繊維層11Aと、連続した不織布からなる第1帯状部材31A(帯状のシート部材)とを重ね、両者を中央連続シール線16Aにより部分的に接合して製造する。
本実施形態においては、連続した繊維束からなる帯状の繊維層11として、いわゆるオーバーフィードにより形成された捲縮を持つ繊維、あるいは他の製法による3次元的な捲縮を持つ繊維を用いている。
【0050】
詳細には、図16に示すように、連続した不織布からなる第1帯状部材31Aを巻き出した後、図12に示すように、第1帯状部材31Aの長手方向の両端部を折り重ねるようにして接合し、第1帯状部材31Aにミシン目(破断誘導線)加工を施して破断誘導線41を形成する。破断誘導線41は、第1帯状部材31Aの長手方向全域に亘って間欠的に形成される。その結果、第1帯状部材31Aは、一対の破断誘導線41に挟まれた中央部分42と、破断誘導線41を介して中央部分42に連設された外方部43とに区画される。更に、図13及び図16に示すように、第1帯状部材31Aの上(外面側)に、連続した繊維束からなる第1繊維層11Aを供給して、第1帯状部材31Aと第1繊維層11Aとを中央連続シール線16Aにより接合し、第1連続体32Aとする。中央連続シール線16Aは、第1繊維層11Aの長手方向全域に亘って間欠的に形成される。
【0051】
次いで、第1連続体32Aと、同様にして製造した第2連続体32Bとを重ねて固定し、更に第1連続体32Aと第2連続体32Bの上にそれぞれ連続した繊維束からなる第3繊維層11C及び第4繊維層11Dを重ねて固定して積層体34を形成する。
【0052】
詳細には、図14及び図16に示すように、第1連続体32Aと第2連続体32Bを供給して重ね合わせて、両者をサイド非連続シール16Bにより固定し、連続体接合体33を形成する。サイド非連続シール16Bは、第1繊維層11A及び第2繊維層11Bの長手方向全域に亘って間欠的に形成される。
更に、図15及び図16に示すように、第1連続体32Aの上に連続した繊維束からなる第3繊維層11Cを重ねて中央連続シール線16Aにより固定し、また第2連続体32Bの上に第4繊維層11Dを重ねて中央連続シール線16Aにより固定する。これらの固定は、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段により剥離不能に行う。なお、これらの固定は、多数のドット、格子状、スパイラル状等による部分的な接合であっても良い。またホットメルトによる接合であっても良い。これにより、連続する第1繊維層11A及び第2繊維層11Bと、連続する第3繊維層11C及び第4繊維層11Dとが長手方向に間欠的に形成された積層体34が得られる。
【0053】
(2)前記積層体を所定の長さに切断する工程
本工程においては、図16に示すように、積層体34を、個々の清掃用物品35の略一つ分の長さに切断する。また、切断後の積層体35における、第1帯状部材31A及び第2帯状部材31Bそれぞれを、破断誘導線41で切断して、中央部分42より外側の外方部43を切り取る。外方部43が切り取られた後の中央部分42は、把手挿入部形成シート13となる。また、対向した把手挿入部形成シート13A,13Bの間が把手挿入部15となる。
【0054】
(3)切断した積層体における繊維層部分に圧搾空気を当てて、繊維束を開繊させる工程
本工程は、製造の最終段階であり、本工程においては、切断した積層体35における繊維層11に対して、圧搾空気を当てて、繊維束を開繊させる。圧搾空気は、例えば、コンプレッサーに接続されたエアーガンを用いて繊維層に当てる。エアーガンは、繊維層の繊維の配向方向に直交する方向に噴射口を揺動させながら、繊維層にエアーを吹きつけることが好ましい。
清掃用物品10は、このようにして、効率的に製造することができる。
【0055】
本工程における開繊の際に、繊維層11を構成する捲縮繊維の捲縮高低差が0.7mmより大きくなると、繊維束を、汚れを効率よく捕集できる程度に開繊させることができない。本工程により製造する清掃用物品は、自身には、過大なテンションをかけることのできない繊維束からなり、さらにこれを搬送するための部材が無い。大きなテンションで加工すること、高速に加工することができない。即ち、開繊に十分な外力を加えることができない。従って、比較的小さな力で開繊できる繊維を用いる必要がある。
他方、前記捲縮高低差が0.1mm未満であると、嵩高な繊維層を形成できない。即ち、開繊は十分であるが、それにより作られた繊維層が十分な立体感と使用感を与えられない。
【0056】
狭い隙間への繊維の入り込み易さまた、ダストの捕集に適した繊維間の形成されやすさ、開繊後繊維の絡み合いによる凝集の効果的な防止、の観点から、前記捲縮高低差は0.65mm以下であることが好ましく、嵩高な繊維層を形成し、外観の立体感と十分な使用感を得る観点から、前記捲縮高低差が0.2mm以上であることが、好ましい。
尚、本実施形態においては、実質的に繊維層11に実質的に張力を加えない状態で、圧搾空気を当てている。本発明の製造方法は、このような場合に効果が一層顕著である。
【0057】
捲縮繊維の捲縮高低差は、前述した、清掃用物品についての捲縮高低差の測定方法と同様にして測定する。但し、繊維束の中で少なくとも5箇所、捲縮が高い部分を見つけ、サンプルを切り出す。1つの試料について少なくとも5サンプル測定する。前述の方法によって、各々のサンプルの捲縮高さを測定する。全てのサンプルの内、値の大きな3つを平均し、その試料の捲縮高低差とする。
【0058】
以上、本発明の清掃用物品及びその製造方法は、上述した実施形態に制限されることなく、適宜変更が可能である。
例えば、把手挿入部は、一枚の把手挿入部形成シート13Aを円筒状になして形成されていても良い。また、清掃用物品の製造方法で製造する清掃用物品は、把手挿入部の片面側にのみ繊維層11を有するものであっても良い。
また、複数の繊維層11を有する場合、そのうちの一部の繊維層のみが上述した高低差の条件を満足するものであって良い。例えば、上述した実施形態の清掃用物品におけるように、内側繊維層11Pに加えて外側繊維層11Qを有する場合、外側繊維層11Qのみ、あるいは内側繊維層11Pのみが、上述した高低差の条件を満足するものであって良い。また、第1〜第4の繊維層11A〜11Dのうちの一つのみが上述した高低差の条件を満足するものであっても良い。
【実施例】
【0059】
(実施例)
図10に示す形態の清掃用物品を製造した。
その製造においては、構成繊維の捲縮高低差が0.51mmの帯状の繊維層を用い、得られた清掃用物品の構成繊維の捲縮高低差は、0.51mmであった。
(比較例)
製造に用いた帯状の繊維層の捲縮高低差を1.39mm(比較例1)又は0.71mm(比較例2)とする以外は、実施例と同様にして清掃用物品を製造した。得られた清掃用物品においては、繊維束を構成する繊維の捲縮高低差が比較例1については1.39mm、比較例2については0.71mmであった。
【0060】
(評価)
凹凸面への追従性について、ディスクトップパソコンのキーボードを用い、キー同士の作る隙間に繊維が入り込めるか、キートップの清拭操作をしながら主に横方向から観察した。結果、実施例は、隙間に入り込めるが、比較例1は、殆ど入り込めず、比較例2は、入り込みが浅いことが分かった。また、実験後のシートを観察すると、実施例は、繊維同士の絡み合いがほとんど発生していないのに対し、比較例1は、かなり発生し、比較例2も発生し始めていた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の清掃用物品の第1実施形態に把手を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す清掃用物品の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す清掃用物品における把手挿入部形成シートを示す平面図である。
【図4】図4(a)は図3に示すIVA−IVA断面図、図4(b)は図3に示すIVB−IVB断面図、図4(c)は図1に示す清掃用物品の分解断面図である。
【図5】図5は、図1に示す清掃用物品における繊維層を毛羽立たせた状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、図1に示す把手の斜視図である。
【図7】図7は、捲縮繊維に交互に存在する山と谷との高低差の測定方法を説明するための写真である。
【図8】図8は、捲縮繊維に交互に存在する山と谷との高低差の測定方法を説明するための写真である。
【図9】図9は、捲縮数の測定方法を説明するための写真である。
【図10】図10は、第2実施形態の清掃用物品における把手挿入部形成シートを示す平面図(図3対応図)である。
【図11】図11は、図10に示す清掃用物品に取り付けられる把手の斜視図である。
【図12】図12は、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様における第1帯状部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は幅方向に沿う縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様における第1連続体を示す図で、(a)は平面図、(b)は幅方向に沿う縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様における第1連続体と第2連続体との連続体接合体を示す図で、(a)は平面図、(b)は幅方向に沿う縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様における積層体を示す図で、(a)は平面図、(b)は幅方向に沿う縦断面図である。
【図16】図16は、本発明の清掃用物品の製造方法の一実施態様の全容を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 清掃用物品
11A 第1繊維層
11B 第2繊維層
11C 第3繊維層
11D 第4繊維層
13A 第1把手挿入部形成シート
13B 第2把手挿入部形成シート
15 把手挿入部
16A 中央連続シール線
16B サイド非連続シール
18 点シール
20 把手
22 挿入部
31A 第1帯状部材(帯状のシート部材)
31B 第2帯状部材(帯状のシート部材)
32A 第1連続体
32B 第2連続体
33 連続体接合体
34 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平で筒状の把手挿入部を有し、該把手挿入部の上下それぞれに繊維束からなる繊維層を具備しており、把手を該把手挿入部内に挿入して取り付け可能になされている清掃用物品であって、
前記繊維層は、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該捲縮繊維に交互に存する山と谷との高低差が0.1〜0.7mmである、清掃用物品。
【請求項2】
連続した繊維束からなる帯状の繊維層と帯状のシート部材とを重ね、両者を部分的に接合して積層体を形成する工程、前記積層体を所定の長さに切断する工程、及び切断した前記積層体における前記繊維層部分に圧搾空気を当てて、前記繊維束を開繊させる工程を具備する清掃用物品の製造方法であって、
前記繊維層は、ジグザク形状に屈曲した捲縮繊維からなる繊維束からなり、該捲縮繊維に交互に存する山と谷との高低差が0.1〜0.7mmである、清掃用物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−119171(P2008−119171A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304910(P2006−304910)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】