説明

清浄剤

【課題】エンジン、特に船舶用ディーゼルエンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させること及びグループIIベースストックを含む潤滑油組成物を使用するエンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させること。
【解決手段】1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む清浄剤であって、
(i)1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含むか、又は
(ii)前記C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、50モル%超えの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、清浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、清浄剤、特にヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート清浄剤、とりわけヒドロカルビル置換サリチラート清浄剤に関する。本発明は、該清浄剤を含む潤滑油組成物及びエンジン、特に船舶用ディーゼルエンジンで「ブラックペイント(black paint)」又は「ブラックスラッジ(black sludge)」の形成をもたらし得るアスファルテンの沈殿を減少させるための潤滑油組成物における該清浄剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用トランクピストンエンジンでは、沖合いへの走行のため重質燃料油(「HFO」)が通常使用されている。重質燃料油は石油蒸留物の最も重い画分であり、15%までのアスファルテンを含む分子の複雑な混合物を含む。アスファルテンは、過剰の脂肪族炭化水素(例えばヘプタン)に不溶性であるが芳香族溶媒(例えばトルエン)中では可溶性を示す、石油蒸留物の画分として定義される。アスファルテンはシリンダー又は燃料ポンプ及びインジェクターを介して汚染物質としてエンジン潤滑油に入る場合があり、次いでアスファルテン沈殿が起こり、エンジン内で「ブラックペイント」又は「ブラックスラッジ」として現れ得る。ピストン表面上のこのような炭素質付着物の存在は絶縁層として作用する場合があり、クラックの形成をもたらし、次いでピストン全体に伝播する。クラックが全体に広がると、高温燃焼ガスがクランクケースに入ることがあり、クランクケースの爆発をもたらし得る。
トランクピストンエンジン油(「TPEO」)の重要な設計上の特徴はアスファルテン沈殿の防止であるが、芳香族含量がより低いグループII基油を現在使用しているので、この点でその有効性は低減してきた。
WO96/26995は、ディーゼルエンジン内の「ブラックペイント」を減少させるためのヒドロカルビル置換フェノールの使用を開示している。WO96/26996は、ディーゼルエンジン内の「ブラックペイント」を減少させるための油中水エマルション用の解乳化剤、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールの使用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エンジン、特に船舶用ディーゼルエンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させることである。本発明の目的は、グループIIベースストックを含む潤滑油組成物を使用するエンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させることでもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート清浄剤が、特にグループIIベースストックを含む潤滑油組成物で使用されるとき、該ヒドロキシベンゾアート清浄剤のヒドロカルビル置換基の大多数が該ヒドロカルビル置換基のC-2位の炭素原子を介してヒドロキシベンゾアート環に結合しているか又は該ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート清浄剤が、該ヒドロカルビル置換基のC-1位の炭素原子を介してヒドロベンゾアート環に結合しているヒドロカルビル置換基を含む場合に、アスファルテン沈殿の優れた減少を示すという発見に基づく。
【0005】
第1局面によれば、本発明は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む清浄剤であって、
(i)前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含むか、又は
(ii)前記C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、
前記清浄剤を提供する。
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラートを含み、さらに好ましくは本質的に1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラートから成る。
【0006】
第2局面によれば、本発明は、本発明の第1局面の清浄剤の製造方法であって、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を金属塩基及び必要に応じて二酸化炭素(and optionally with carbon dioxide)と反応させる工程を含み、
(i)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸が、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシ安息香酸を含むか、又は
(ii)前記C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸の総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換安息香酸が、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシ安息香酸を含む、
前記方法を提供する。
第3局面によれば、本発明は、本発明の第2局面で定義したとおりの1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を含む化合物を提供する。
【0007】
第4局面によれば、本発明は、本発明の第3局面の1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸の製造方法であって、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールをカルボキシル化する工程を含み、
(i)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換フェノールを含むか、又は
(ii)前記C10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールの総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換フェノールを含む、
前記方法を提供する。
第5局面によれば、本発明は、本発明の第4局面によって定義したとおりの1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールを含む化合物を提供する。
【0008】
第6局面によれば、本発明は、本発明の第5局面の1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールの製造方法であって、保護されたフェノールカルボアニオンを含む有機金属化合物を1つ以上のC10〜C40ハロ-ヒドロカルビル化合物と反応させて、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換保護フェノールを形成してから、前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換保護フェノールから保護基を除去する工程を含み、前記1つ以上のC10〜C40ハロ-ヒドロカルビル置換化合物が、1つ以上のC10〜C401-ハロ-ヒドロカルビル化合物を含むか、又はC10〜C40ハロ置換ヒドロカルビル化合物の総モル数に基づいて、50モル%超えの1つ以上のC10〜C40ハロ置換ヒドロカルビル化合物が、1つ以上のC10〜C402-ハロ-ヒドロカルビル化合物を含む、
前記方法を提供する。
【0009】
第7局面によれば、本発明は、以下の成分:
(A)潤滑粘度の油;及び
(B)本発明の第5局面の清浄剤
を含むか、又は混合して製造される、潤滑油組成物を提供する。
潤滑油組成物は、好ましくはトランクピストンエンジン油(「TPEO」)である。潤滑粘度の油は、好ましくはグループIIベースストックを含む。
第8局面によれば、本発明は、エンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させる方法であって、本発明の第7局面の潤滑油組成物でエンジンを潤滑にする工程を含む方法を提供する。
第9局面によれば、本発明は、エンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させるための潤滑粘度の油における本発明の第5局面の清浄剤の使用を提供する。
エンジンは、好ましくは船舶用ディーゼルエンジンである。
【0010】
この明細書では、以下の語及び表現を使用する場合、以下に帰する意味を有するものとする。
「活性成分」又は「(a.i.)」は希釈剤又は溶媒でない添加物質を表し;
「含む」又はいずれの同種の語も、述べた特徴、工程、又は整数若しくは成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、工程、整数、成分若しくはその群の存在又は添加を排除せず;「から成る」又は「から本質的に成る」という表現又は同種の表現は、「含む」又は同種の語に包含され、「から本質的に成る」は、適用される組成物の特性に実質的に影響を与えない物質を含めることを許容し;
「主要量」は、50質量%超えの組成を意味し;
「少量」は、50質量%未満の組成を意味し;
「TBN」は、ASTM D2869で測定した場合の総塩基数を意味し;
本明細書で使用する「油溶性」若しくは「油分散性」、又は同種の用語は、必ずしも化合物又は添加剤が全ての比率の油に可溶性、溶解性、混和性であり、又は懸濁され得ることを示さない。しかし、これらの用語は、化合物又は添加剤が、例えば、油を使用する環境内で化合物又は添加剤の意図した作用を発揮するのに十分な程度まで油に溶けるか又は安定して分散し得ることを意味する。さらに、所望により、他の添加剤のさらなる組込みは、特定の添加剤のより高いレベルの組込みをも許容することができ;
「ヒドロカルビル」は、化合物の、水素原子と炭素原子を含み、炭素原子を介して該化合物の残部に結合している化学基を意味する。この基は、炭素及び水素以外の1つ以上の原子(「ヘテロ原子」)を、それらが該基のヒドロカルビル特性に本質的に影響を与えないことを条件に含んでよく;
「ヒドロカルバ-1-イル」は、ヒドロカルビル基のC-1位の炭素原子を介して化合物の残部に直接結合しているヒドロカルビル基を意味し;
「ヒドロカルバ-2-イル」は、ヒドロカルビル基のC-2位の炭素原子を介して化合物の残部に直接結合しているヒドロカルビル基を意味し;
本明細書で1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートについて「C10〜C40ヒドロカルビル置換基の数による%」との言及は、本発明の第3及び第5局面の1つ以上の安息香酸及びフェノールのC10〜C40ヒドロカルビル置換基にも同様に適用され;
本明細書で1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアート又は1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートについて「モル%」との言及は、本発明の第3局面の1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシ安息香酸及び1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシ安息香酸;本発明の第5局面の1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換フェノール及び1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換フェノール;並びに本発明の第6局面で使用される1つ以上のC10〜C401-ハロ-ヒドロカルビル化合物及び1つ以上のC10〜C402-ハロ-ヒドロカルビル化合物ににも同様に適用される。
【0011】
また、使用する種々の成分は、本質的のみならず最適及び慣習的に、配合、貯蔵又は使用の条件下で反応し得ること、並びに本発明は、いずれの該反応の結果として得られるか又は得られた生成物をも提供することが理解される。
さらに、本明細書で述べるいずれの上下の量、範囲及び比をも独立に組み合わせてよいものと解釈する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
さて、本発明の各局面及び全局面に関する本発明の特徴をさらに詳細に以下に述べる。
(ヒドロキシベンゾアート清浄剤)
清浄剤は、エンジン内におけるピストン付着物、例えば高温ワニス及びラッカー付着物の形成を減少させる添加剤であり;それは通常、酸中和特性を有し、かつ懸濁液内で微紛固体を維持することができる。大部分の清浄剤は金属「石鹸」に基づき;酸性有機化合物の金属塩であり、時には界面活性剤と呼ばれる。
清浄剤は、極性頭部と長い疎水性尾部を含み、極性頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。過剰の金属塩基、例えば酸化物又は水酸化物を酸性ガス、例えば二酸化炭素と反応させて、金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和清浄剤を含む過塩基性清浄剤を与えることによって、多量の金属塩基を含めることができる。
【0013】
本発明の界面活性剤はヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸、好ましくはヒドロカルビル置換サリチル酸である。1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは典型的に下記式Iの1つ以上の化合物を含む。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1は、優先的に事実上脂肪族である10〜40個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、Mはアルカリ土類金属であり、nは、前記金属の原子価によって決まる1又は2の整数であり、mは1〜3の整数であり、かつ
式Iの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含み;
又は
式Iの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。
【0016】
適宜、標準的方法、例えばガスクロマトグラフィー及び核磁気共鳴(NMR)分光法、特にプロトンNMRによって、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総量中に存在する1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアート又は1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートのモル百分率を決定することができる。
式Iの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのアルカリ土類金属Mは、カルシウム、マグネシウム、バリウム又はストロンチウム等のアルカリ土類金属である。好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのアルカリ土類金属Mはカルシウム又はマグネシウムであり、カルシウムが特に好ましい。
【0017】
適宜、界面活性剤が好ましいヒドロカルビル置換サリチル酸を含む場合、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチル酸は、典型的に下記式IIの1つ以上の化合物を含む。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R1、M、n及びmは式Iの化合物について定義したとおりであり、かつ
式IIの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチル酸の総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチル酸は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含み;又は
式IIの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチル酸は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換サリチラートを含む。)
【0020】
疑念を避けるため、C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの好ましい特徴は、C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラートの好ましい特徴をも表し、逆もまた同様である。
好ましくは、ヒドロカルビル基は、炭素原子と水素原子だけから成る。ヒドロカルビルは、優先的に事実上脂肪族であり、好ましくは純粋に脂肪族である。純粋に脂肪族のヒドロカルビル基は線状若しくは分岐脂肪族基、例えば線状若しくは分岐アルキル又はアルケニル基を包含する。最も好ましくは、ヒドロカルビル基は、線状(すなわち直鎖)若しくは分岐アルキル基、特に無置換線状若しくは分岐アルキル基、特に無置換線状アルキル基を意味する。
10〜C40アルキル基(線状又は分岐でよい)の例として、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘネイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、及びトリアコンチルが挙げられる。C10〜C40アルケニル基(線状又は分岐でよく、二重結合の位置は任意である)の例として、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘネイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル、及びトリアコンテニルが挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態により、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数の50モル%超え、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、なおさらに好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。好ましくは、C10〜C40ヒドロカルビル置換基は、本明細書で定義したように1つ以上の線状若しくは分岐C10〜C40アルキル又はアルケニル基を含む。さらに好ましくは、C10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、50%超え、さらに好ましくは60%超え、なおさらに好ましくは70%超え、さらに好ましくは80%超え、特に85%超えの数のC10〜C40ヒドロカルビル置換基は1つ以上の線状若しくは分岐C10〜C40アルキル又はアルケニル基、好ましくは線状(すなわち直鎖)若しくは分岐アルキル基、さらに好ましくは無置換線状若しくは分岐アルキル基、特に無置換線状アルキル基を含む。好適には、C10〜C40ヒドロカルビル置換基がヒドロキシベンゾアート環にC-2炭素原子で結合している線状アルキル基を表す場合、該アルキル基は二級アルキル基である。他言すれば、アルキル基のC-2位の炭素原子は、そこに結合している水素原子、メチル基及び線状アルキル基を含む。
適宜、全ての前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのC10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのC10〜C40ヒドロカルビル置換基の数の50%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、なおさらに好ましくは70%以上は、該ヒドロカルビル置換基のC-2位の炭素原子を介して1つ以上のヒドロキシベンゾアート環に結合している。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態により、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数の10モル%超え、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、なおさらに好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、なおさらに好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上、なおさらに好ましくは70モル%以上は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数の好ましくは99モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下、なおさらに好ましくは90モル%以下、最も好ましくは85モル%以下は、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。好ましくは、C10〜C40ヒドロカルビル置換基は、本明細書で定義したように1つ以上の線状若しくは分岐C10〜C40アルキル又はアルケニル基を含む。さらに好ましくは、C10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、50%超え、さらに好ましくは60%超え、なおさらに好ましくは70%超え、さらに好ましくは80%超えの数のC10〜C40ヒドロカルビル置換基は、1つ以上の線状若しくは分岐C10〜C40アルキル又はアルケニル基、好ましくは線状(すなわち直鎖)若しくは分岐アルキル基、さらに好ましくは無置換線状若しくは分岐アルキル基、特に無置換線状アルキル基を含む。好ましくは、C10〜C40ヒドロカルビル置換基は、本明細書で定義したように1つ以上の線状若しくは分岐C10〜C40アルキル又はアルケニル基を含む。適切に、C10〜C40ヒドロカルビル置換基がヒドロキシベンゾアート環にC-1炭素原子で結合しているアルキル基を表す場合、該アルキル基は一級アルキル基である。他言すれば、アルキル基のC-1位の炭素原子は、そこに結合している2つの水素原子と単一の線状アルキル基を含む。
好適には、全ての前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのC10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの前記C10〜C40ヒドロカルビル置換基の数の10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、なおさらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、なおさらに好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、なおさらに好ましくは70%以上は、該ヒドロカルビル置換基のC-1位の炭素原子を介して1つ以上のヒドロキシベンゾアート環に結合している。
好適には、全ての前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートのC10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの前記C10〜C40ヒドロカルビル置換基の数の99%以下、さらに好ましくは95%以下、なおさらに好ましくは90%以下、最も好ましくは85%以下は、該ヒドロカルビル置換基のC-1位の炭素原子を介して1つ以上のヒドロキシベンゾアート環に結合している。
適宜、用語「C10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアート」及び「C10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアート」は、C10〜C40ヒドロカルビル置換基が、該ヒドロカルビル置換基のそれぞれC-2位又はC-1位の炭素原子を介してそれぞれのヒドロキシベンゾアート環に結合していることを意味する。
好適には、前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの各々のC10〜C40ヒドロカルビル置換基の総数に基づいて、前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの各々のC10〜C40ヒドロカルビル置換基の数の50%超え、さらに好ましくは55%以上、なおさらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、なおさらに好ましくは70%以上は、該ヒドロカルビル置換基のC-2位若しくはC-1位、又はその組合せの炭素原子を介してヒドロキシベンゾアート環に結合している。
【0023】
本発明の好ましい実施形態により、C10〜C40ヒドロカルビル置換基はC10〜C20ヒドロカルビル基、好ましくはC14〜C18ヒドロカルビル基、特にC14、C16及びC18ヒドロカルビル基又はその混合物を含む。好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの50モル%超え、さらに好ましくは60モル%超え、なおさらに好ましくは70モル%超え、さらに好ましくは80モル%超え、なおさらに好ましくは90モル%超え、最も好ましくは1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの本質的に全ては、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C20ヒドロカルビル、好ましくはC14〜C18ヒドロカルビル、特にC14、C16及びC18ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。
本発明の別の好ましい実施形態により、C10〜C40ヒドロカルビル置換基はC20〜C30ヒドロカルビル基、好ましくはC20〜C24ヒドロカルビル基、特にC20、C22及びC24ヒドロカルビル基又はその混合物を含む。好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの50モル%超え、さらに好ましくは60モル%超え、なおさらに好ましくは70モル%超え、さらに好ましくは80モル%超え、なおさらに好ましくは90モル%超え、最も好ましくは1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの本質的に全ては、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C20〜C30ヒドロカルビル、好ましくはC20〜C24ヒドロカルビル、特にC20、C22及びC24ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む。
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、9個以下の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基及び/又は41個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル置換基を5モル%未満含み、さらに好ましくは含まない。
【0024】
式I及び式IIの化合物のR1に相当するC10〜C40ヒドロカルビル基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタ及び/又はパラ位でよい。好ましくは、式I及び式IIの化合物のC10〜C40ヒドロカルビル基はヒドロキシル基に対してオルト及び/又はパラ位にある。式IIの化合物のC10〜C40ヒドロカルビル基がヒドロキシル基に対してオルト位にある場合、これは中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属3-置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートに相当し;式IIの化合物のC10〜C40ヒドロカルビル基がヒドロキシル基に対してパラ位にある場合、これは中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属5-置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートに相当する。
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属一置換C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含み、すなわち式I及び式IIの化合物でmが1に相当する。さらに好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラート、1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラート、又はその混合物を含む。
好適には、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルヒドロキシベンゾアート、特に1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラート、1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラート、又はその混合物を含む。
好適には、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルヒドロキシベンゾアート、特に1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラート、1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラート、又はその混合物を含む。
【0025】
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、65モル%超え、さらに好ましくは70モル%超え、なおさらに好ましくは80モル%超え、さらに好ましくは85モル%超え、最も好ましくは90モル%超えの1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属一置換C10〜C40ヒドロカルビルヒドロキシベンゾアート、好ましくは1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラート、さらに好ましくは1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートと1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートとの混合物を含む1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートを含む。
好適には、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、65モル%超え、さらに好ましくは70モル%超え、なおさらに好ましくは80モル%超え、さらに好ましくは85モル%超え、最も好ましくは90モル%超えの1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルヒドロキシベンゾアート、好ましくは1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラート、さらに好ましくは1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラートと1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラートとの混合物を含む1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-1-イルサリチラートを含む。
好適には、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートは、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、65モル%超え、さらに好ましくは70モル%超え、なおさらに好ましくは80モル%超え、さらに好ましくは85モル%超え、最も好ましくは90モル%超えの1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルヒドロキシベンゾアート、好ましくは1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラート、さらに好ましくは1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラートと1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラートとの混合物を含む1つ以上の一置換C10〜C40ヒドロカルバ-2-イルサリチラートを含む。
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート中に存在する1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートの、1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラートに対するモル比は1.2以上、さらに好ましくは1.5以上、なおさらに好ましくは1.8以上、さらに好ましくは2.0以上である。
【0026】
好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート(すなわち1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラート)は、1つ以上の中性若しくは低塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート(すなわち1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラート)を含み、好ましくは本質的に前記から成る。「過塩基性」という用語を用いて、一般的に金属成分の当量数の、酸成分の当量数に対する比が1より大きい金属清浄剤を表す。適宜、「中性」という用語を用いて、一般的に金属成分の当量数の、酸成分の当量数に対する比が1に等しい金属清浄剤を表す。「低塩基性」という用語を用いて、典型的に金属成分の酸成分に対する当量比が1より大きく、約2までである金属清浄剤を表す。好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40置換ヒドロキシベンゾアート(すなわち1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40置換サリチラート)は中性である。
適宜、用語「1つ以上の中性若しくは過塩基性カルシウムC10〜C40置換ヒドロキシベンゾアート」は、油不溶性アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属カチオンが本質的にカルシウムカチオンである中性若しくは過塩基性清浄剤を意味する。油不溶性アルカリ土類金属塩中に小量の他のカチオンが存在してもよいが、油不溶性アルカリ土類金属塩の、典型的に少なくとも80モル%、より典型的には少なくとも90モル%、例えば少なくとも95モル%のカチオンはカルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、例えば、カチオンがカルシウム以外のアルカリ土類金属である界面活性剤の塩の過塩基性清浄剤の製造における使用から誘導され得る。
炭酸塩化された過塩基性アルカリ土類金属清浄剤は典型的に非晶質のナノ粒子を含む。さらに、結晶性方解石及びバテライトの形態で炭酸塩を含むナノ粒子材料の開示がある。
【0027】
清浄剤の塩基度は、好ましくは総塩基数(TBN)として表される。総塩基数は、該材料の全て塩基性を中和するために必要な酸の量である。ASTM規格D2896又は同等の手順を用いてTBNを測定できる。1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、低TBN(すなわち50未満のTBN)、中TBN(すなわち50〜150のTBN)又は高TBN(すなわち150超え、例えば150〜500のTBN)を有し得る。好ましくは、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、150まで、好ましくは50〜150のTBNを有する。好適には、該C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート清浄剤は、低塩基性又は中性清浄剤系を含む。
1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの塩基度指数(basicity index)は、好ましくは1.0より高く、好ましくは1.5未満である。
「塩基度指数」とは、中性若しくは過塩基性清浄剤中の全石鹸に対する全塩基のモル比を意味する。中性清浄剤は1.0の塩基度指数を有し、低塩基性清浄剤は1より高く、好ましくは1.5未満の塩基度指数を有する。
【0028】
潤滑油組成物は、本発明のヒドロキシベンゾアート清浄剤とは異なる他の金属清浄剤、例えば金属フェナート清浄剤を含んでよいが、好ましくは潤滑油組成物中でヒドロキシベンゾアート清浄剤が優先的な清浄剤である。他言すれば、ヒドロキシベンゾアート清浄剤が、潤滑油組成物に対して総TBNの50%超え、好ましくは60%超え、さらに好ましくは70%超え、なおさらに好ましくは80%超え、最も好ましくは90%寄与する。好ましい実施形態では、ヒドロキシベンゾアート清浄剤が潤滑油組成物の本質的に唯一の金属清浄剤系である。
ヒドロキシ安息香酸、特にサリチル酸は、典型的にフェノキシドのカルボキシル化、コルベ−シュミット法によって調製され、この場合、一般的に、カルボキシル化されていないフェノールとの混合物で得られる(通常希釈剤中)。サリチル酸は硫化されていなくても、硫化されていてもよく、また化学修飾され及び/又は追加の置換基を含んでもよい。ヒドロカルビル置換サリチル酸を硫化する方法は当業者に周知であり、例えば、US2007/0027057に記載されている。
適宜、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸は対応する1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールのカルボキシル化によって形成される。典型的に、この方法は、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールを塩基で処理して対応するフェノキシドを形成してから、このフェノキシドを高圧及び高温にて二酸化炭素で処理することによって達成され得る。
適宜、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールは、保護されたフェノールカルボアニオンを含む有機金属化合物、例えばグリニャール試薬又は有機リチウム試薬(例えば(4-メトキシフェニル)臭化マグネシウム)を50モル%超えの1つ以上のC10〜C402-ハロ-ヒドロカルビル化合物又は適切なモル%の1つ以上のC10〜C401-ハロ-ヒドロカルビル化合物(例えば1-ハロ-又は2-ハロ-アルカン)とそれぞれ反応させた後、結果の保護されたヒドロカルビル置換フェノール化合物の脱保護によって形成され得る。
一般に、等量の金属塩基によるヒドロカルビル置換サリチル酸の中和によって、中性アルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラートを調製することができる。しかし、サリチル酸の中性カルシウム塩を調製する好ましい方法は、ヒドロカルビル置換サリチル酸の存在下で塩化カルシウム及び水酸化ナトリウムのメタノール溶液の二重分解後の固体及び処理溶媒の除去による。
【0029】
当技術分野で使用されているいずれの技術によっても過塩基性アルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラートを調製することができる。一般的方法は以下のとおりである。
1.揮発性炭化水素、アルコール及び水から成る溶媒混合物中で、ヒドロカルビル置換サリチル酸をモル過剰の金属塩基で中和してわずかに過塩基性のアルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラート複合体を生成;
2.必要に応じて、炭酸化してコロイド的に分散したアルカリ土類金属炭酸塩を生成後、後反応工程へ;
3.コロイド的に分散していない残存固体の除去;及び
4.処理溶媒を除去するためのストリッピング。
バッチ式又は連続過塩基形成処理によって、過塩基性アルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラートを調製することができる。
塩基度指数が2未満の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラート清浄剤を得るため、金属塩基の量は、酸1当量当たり2当量以下に制限され、及び/又は所望により、二酸化炭素の量は、酸1当量当たり0.5当量以下に制限される。好ましくは、金属塩基の量は、酸1当量当たり1.5当量以下に制限され、及び/又は所望により、二酸化炭素の量は、酸1当量当たり0.2当量以下に制限される。さらに好ましくは、金属塩基の量は、酸1当量当たり1.4当量以下に制限される。
或いは、炭酸化工程前に未反応固体を除去することを条件に、両方とも過剰の金属塩基と二酸化炭素を使用できる。この場合、塩基度指数は約1.5を超えないだろう。塩基度指数が1.5未満の過塩基性アルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラート清浄剤が必要な場合、いくらかでも二酸化炭素を使用することが必須ではないが、好ましい。しかし、最も好ましくはアルカリ土類金属ヒドロカルビル置換サリチラート清浄剤は1.5以下の塩基度指数を有する。
炭酸化が進行し、溶解した水酸化物が、揮発性炭化水素溶媒と不揮発性炭化水素油の混合物中に分散したコロイド状炭酸塩粒子に変換する。
アルコールプロモーターの還流温度までの温度範囲にわたって炭酸化がもたらされる。
反応混合物の揮発性炭化水素溶媒は、好ましくは約150℃以下の沸点を有する通常液体の芳香族炭化水素である。芳香族炭化水素は一定の利益、例えばろ過速度の改善を提供することが分かっている。好適な溶媒の例は、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンである。
アルカノールは、好ましくはメタノールであるが、エタノール等の他のアルコールを使用できる。所望生成物を得るため、アルカノールと炭化水素溶媒の比、及び最初の反応混合物の含水量の正しい選択が重要である。
油を反応混合物に加えてよく;その場合、好適な油として、炭化水素油、特に鉱物起源の当該油が挙げられる。38℃で15〜30cStの粘度を有する油が非常に好適である。
金属塩基との反応後、典型的に反応混合物を高温、例えば130℃以上に加熱して揮発性物質(水及びいずれの残存アルカノール及び炭化水素溶媒も)を除去する。合成が完了したとき、未加工の生成物は懸濁沈降物の存在の結果として濁っている。例えば、ろ過又は遠心分離によって濁りを澄ます。炭酸化及び溶媒除去の前、又は中間点、又は後にこれらの手段を使ってよい。
通常、生成物を油溶液として使用する。反応混合物中に、揮発性物質の除去後に油溶液の状態を保持するのに不十分な油しか存在しない場合、さらに油を添加すべきである。これは、溶媒除去の前、又は中間点、又は後に起こり得る。好適には、清浄剤は、本明細書で定義したように潤滑粘度の油を含む。
添加材料が過塩基性金属清浄剤の必須部分を形成し得る。これには、例えば、長鎖脂肪族モノ又はジカルボン酸が挙げられる。好適なカルボン酸として、ステアリン酸、オレイン酸、及びポリイソブチレン(PIB)コハク酸が挙げられる。
【0030】
(潤滑粘度の油)
潤滑粘度の油は、時には基油又はベースストックと呼ばれ、本発明の潤滑油組成物の主要の液体成分であり、この中にヒドロキシベンゾアート清浄剤、及び必要に応じて他の共添加剤、場合によっては他の油がブレンドされる。
潤滑油は、軽質留分鉱油乃至重質潤滑油、例えばガソリンエンジン油、鉱物潤滑油及び大型車両用ディーゼル油の粘度範囲でよい。通常、油の粘度は、100℃で測定した場合、約2mm2/秒(センチストークス)〜約40mm2/秒、特に約4mm2/秒〜20mm2/秒の範囲である。
好ましくは、潤滑粘度の油は、グループIIベースストックを含む。
好適には、潤滑粘度の油は、潤滑粘度の油の総質量に基づいて、10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、なおさらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、なおさらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上のグループIIベースストックを含む。最も好ましくは、潤滑粘度の油は本質的にグループIIベースストックから成り、すなわち、潤滑粘度の油は、潤滑粘度の油の総質量に基づいて、50質量%超え、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、なおさらに好ましくは80質量%以上、なおさらに好ましくは90質量%以上のグループIIベースストックを含む。グループIIベースストックが潤滑油組成物中の唯一の潤滑粘度の油であってもよい。
【0031】
この発明におけるベースストック及び基油の定義は、米国石油協会(API)出版の「エンジンオイル認証システム(Engine Oil Licensing and Certification System)」(産業サービス省、第14版、1996年12月、付録1、1998年12月)で見られる定義と同じである。前記出版物は、ベースストックを以下のように分類する:
a)グループIベースストックは、90%未満の飽和物及び/又は0.03%超えのイオウを含み、表E-1で特定される試験方法による粘度指数が80以上かつ120未満である。
b)グループIIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03%以下のイオウを含み、表E-1で特定される試験方法による粘度指数が80以上かつ120未満である。
c)グループIIIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03%以下のイオウを含み、表E-1で特定される試験方法による粘度指数が120以上である。
d)グループIVベースストックはポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループVベースストックは、グループI、II、III、又はIVに含まれない全ての他のベースストックを包含する。
【0032】
表E-1:ベースストックの分析法

【0033】
潤滑油組成物に含めてよい他の潤滑粘度の油を以下に詳述する。
天然油として動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油並びにパラフィン、ナフテン及び混合パラフィン-ナフテンタイプの水素精製、溶媒処理又は酸処理鉱油が挙げられる。石炭又は貝岩由来の潤滑粘度の油も有用な基油として働く。
合成潤滑油として炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、ポリ塩化ブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);及びアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド並びにその誘導体、類似体及び同族体が挙げられる。
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー並びに末端ヒドロキル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されたその誘導体は、別分類の公知合成潤滑油を構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソ-プロピレングリコールエーテル又は1000〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);並びにそのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル及びC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0034】
合成潤滑油の別の適切な分類は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)のエステルを含む。このようなエステルの具体例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、及び1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させて形成される複合エステルが挙げられる。
合成油として有用なエステルは、C5〜C12モノカルボン酸及びポリオール及びポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール及びトリペンタエリトリトールから調製される当該エステルをも包含する。
ケイ素ベース油、例えばポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリカート油が合成潤滑油の別の有用な分類を構成し;該油として、テトラエチルシリカート、テトライソプロピルシリカート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリカート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリカート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリカート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成潤滑油として、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレシルホスファート、トリオクチルホスファート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。
【0035】
本発明の潤滑油では、未精製、精製及び再精製油を使用できる。未精製油は、天然又は合成起源から、さらに精製処理せずに直接得られる当該油である。例えば、レトルト操作から直接得られる貝岩油;蒸留から直接得られる石油;又はエステル化から直接得、さらに処理せずに使用されるエステル油が未精製油であろう。精製油は、油をさらに1つ以上の精製工程で処理して1つ以上の特性を改善することを除き、未精製油と同様である。多くの該精製技術、例えば蒸留、溶媒抽出、酸若しくは塩基抽出、ろ過及びパーコレーションは当業者に既知である。再精製油は、精製油を与えるために使用される方法と同様の方法で得られるが、既に使用された油で始める。このような再精製油は再生又は再処理油としても知られ、多くの場合、使用済添加剤及び油分解生成物を除去するための技術を利用するさらなる処理を受ける。
潤滑粘度の油は、グループI、グループIII、グループIV又はグループVのベースストック又は上述したベースストックの基油ブレンドを含んでもよい。好ましくは、潤滑粘度の油は、グループIIベースストックに加えて、グループIII、グループIV若しくはグループVのベースストック、又はその混合物を含む。好ましくは、潤滑粘度の油又は油のブレンドの揮発性は、NOACK試験(ASTM D5880)で測定した場合、13.5%以下、好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下である。好適には、潤滑粘度の油がグループIIベースストックに加えて、グループIII、グループIV若しくはグループVのベースストック、又はその混合物を含む場合、潤滑粘度の油の粘度指数(VI)は少なくとも120、好ましくは少なくとも125、最も好ましくは約130〜140である。
【0036】
基油は、濃縮物を調製するため及び潤滑油組成物を調製するために有用である。潤滑粘度の油を用いて濃縮物を調製する場合、本発明の第5局面のヒドロキシベンゾアート清浄剤である、例えば1〜90、例えば10〜80、好ましくは20〜80、さらに好ましくは20〜70質量%の活性成分の添加剤又は複数の添加剤と、必要に応じて1つ以上の共添加剤を含む濃縮物を与えるための濃縮形成量(例えば、30〜70、例えば40〜60質量%)で潤滑粘度の油が存在する。濃縮物に使用する潤滑粘度の油は、適切な油性の典型的に炭化水素、キャリア流体、例えば鉱物潤滑油、又は他の適切な溶媒である。本明細書で述べたような潤滑粘度の油、並びに脂肪族、ナフテン、及び芳香族炭化水素は、濃縮物用の好適なキャリア流体の例である。
好適には、潤滑粘度の油を用いて濃縮物を調製する場合、1つ以上の中性若しくは過塩素酸アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、濃縮物の総質量に基づいて5〜50、好ましくは5〜40質量%の量で存在する。
濃縮物は、添加剤の使用前に添加剤を取り扱うのみならず潤滑油組成物中における添加剤の溶解又は分散を容易にする便利な手段を構成する。複数タイプの添加剤(「添加成分」と称することもある)を含む潤滑油組成物を調製する場合、各添加剤を別々に、それぞれ濃縮物の形態で組み入れることができる。しかし、多くの場合、本明細書で後述するような1つ以上の共添加剤を単一の濃縮物に含む、いわゆる添加剤「パッケージ」(「アドパック」とも称する)を準備することが便利である。
【0037】
本発明では、本発明の第5局面の少量のヒドロキシベンゾアート清浄剤、及び必要な場合、本明細書で後述するような共添加剤と共に、主要量で潤滑粘度の油を準備して、潤滑油組成物を構成することができる。この調製は、ヒドロキシベンゾアート清浄剤を直接油に添加するか又はヒドロキシベンゾアートをその濃縮物の形態で添加して、該添加剤を分散又は溶解させることによって達成される。他の添加剤の添加の前、同時、又は後に、当業者に既知のいずれの方法によっても添加剤を添加することができる。
好適には、潤滑粘度の油が主要量で存在する場合、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは0.5〜10質量%の活性成分の量で存在する。
好適には、潤滑粘度の油が主要量で存在する場合、潤滑粘度の油は、潤滑油組成物の総質量に基づいて、55質量%超え、さらに好ましくは60質量%超え、なおさらに好ましくは65質量%超えの量で存在する。好ましくは、潤滑粘度の油は、潤滑油組成物の総質量に基づいて、98質量%未満、さらに好ましくは95質量%未満、なおさらに好ましくは90質量%未満の量で存在する。
潤滑油組成物を用いて、機械的エンジン部品、特に船舶用シリンダー及びトランクピストンエンジンを潤滑にすることができる。
本発明の潤滑油組成物は(及び濃縮物も)、油性キャリアと混合する前後に化学的に同じままであるか又は同じでなくてもよい規定成分を含む。この発明は、混合前、若しくは混合後、又は混合の前後に規定成分を含む組成物を包含する。
濃縮物を用いて潤滑油組成物を調製する場合、例えば濃縮物の1質量部当たり3〜100、例えば5〜40質量部の潤滑粘度の油で濃縮物を希釈してよい。
【0038】
(共添加剤)
潤滑油組成物は、サリチラート清浄剤系(B)に加えて、摩擦調整剤、耐摩耗剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化成分及び泡制御剤から選択される少なくとも1つの他の共添加剤を含んでよい。好適には、このような1つ以上の共添加剤は潤滑油組成物の少量で存在する。好ましくは、1つ以上の共添加剤は、潤滑油組成物の5〜25、さらに好ましくは5〜18、典型的に7〜15質量%の活性成分の量で存在する。
(摩擦調整剤)
摩擦調整剤として、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えば、グリセリルモノオレアート;長鎖ポリカルボン酸とジオールとのエステル、例えば、二量体化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;及びアルコキシル化アルキル置換モノアミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えば、エトキシル化タローアミン及びエトキシル化タローエーテルアミンが挙げられる。
他の公知の摩擦調整剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。このような有機モリブデン摩擦調整剤も潤滑油組成物に抗酸化及び耐摩耗性能を与える。好適な油溶性有機モリブデン化合物はモリブデン-イオウ中心を有する。例として、ジチオカルバマート、ジチオホスファート、ジチオホスフィナート、キサンタート、チオキサンタート、硫化物、及びその混合物が挙げられる。モリブデンジチオカルバマート、ジアルキルジチオホスファート、アルキルキサンタート及びアルキルチオキサンタートが特に好ましい。
本発明の全局面で有用な好ましい有機モリブデン化合物の一分類は、式Mo3knzの三核モリブデン化合物及びその混合物である(式中、Lは独立に選択される、化合物を油中に溶解又は分散させるのに十分な数の炭素原子の有機基を有する配位子であり、nは1〜4であり、kは4〜7で変化し、Qは水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテル等の中性電子供与化合物の群から選択され、zは0〜5の範囲で、非化学量論量の値を含む)。全ての配位子の有機基には、全部で少なくとも21個、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が存在すべきである。
モリブデン化合物は、0.1〜2質量%の範囲の濃度、又はモリブデン原子の質量で少なくとも10、例えば5〜2,000ppmを与える濃度で潤滑油組成物中に存在し得る。
好ましくは、モリブデン化合物由来のモリブデンは、潤滑油組成物の総質量に基づいて10〜1500、例えば20〜1000、さらに好ましくは30〜750ppmの量で存在する。用途によっては、モリブデンは500ppm超えの量で存在する。
【0039】
(清浄剤)
サリチラート清浄剤系とは別に、潤滑油組成物中に存在し得る他の清浄剤として、金属、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムの油溶性スルホナート、フェナート、硫化フェナート、チオホスホナート、ナフテナート並びに他の油溶性カルボキシラートの中性及び過塩基性金属塩が挙げられる。最も一般的に使用される金属は、潤滑油に使用される清浄剤中に両方とも存在し得るカルシウム及びマグネシウム、並びにカルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物である。
【0040】
(ジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩)
ジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩は、耐摩耗剤及び酸化防止剤として頻繁に使用される。その金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅でよい。亜鉛塩は、潤滑油組成物の総質量に基づいて、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量で潤滑油において最も一般的に使用される。既知の技術に従い、まず、通常は1つ以上のアルコール又はフェノールとP25との反応によってジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、形成されたDDPAを次に亜鉛化合物で中和することによって亜鉛塩を調製することができる。例えば、一級アルコールと二級アルコールの混合物を反応させてジチオリン酸を調製し得る。或いは、一方についてのヒドロカルビル基の特性が全体的に二級であり、他方についてのヒドロカルビル基の特性が全体的に一級である複数のジチオリン酸を調製することができる。亜鉛塩を調製するため、塩基性又は中性のいずれの亜鉛化合物をも使用できるだろうが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応における過剰量の塩基性亜鉛化合物の使用のため、過剰量の亜鉛を含む場合が多い。
無灰耐摩耗剤の例として、1,2,3-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、硫化脂肪酸エステル、及びジチオカルバマート誘導体が挙げられる。
【0041】
(無灰分散剤)
無灰分散剤は、摩耗又は燃焼時の油の酸化によって生じる油不溶物を懸濁状態で保持する。無灰分散剤は、特にガソリンエンジンにおいてスラッジの沈殿及びワニスの形成を防止するのに特に有利である。無灰分散剤は、分散すべき粒子と結合できる1つ以上の官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素骨格を含む。典型的に、このポリマー骨格は、多くの場合、架橋基を介して、アミン、アルコール、アミド又はエステル極性成分によって官能化される。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性の塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド、及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシラート誘導体;直接結合したポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素;及び長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合することによって形成されるマンニッヒ縮合生成物から選択され得る。
これらの分散剤の油溶性ポリマー炭化水素骨格は、典型的にオレフィンポリマー又はポリエン、特に主要モル量(すなわち、50モル%超え)のC2〜C18オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、オクテン-1、スチレン)、典型的にはC2〜C5オレフィンを含むポリマーから誘導される。油溶性ポリマー炭化水素骨格はホモポリマー(例えば、ポリプロピレン又はポリイソブチレン)又は2つ以上の該オレフィンのコポリマー(例えば、エチレンとα-オレフィン、例えばプロピレン若しくはブチレンとのコポリマー、又は2つの異なるα-オレフィンのコポリマー)でよい。他のコポリマーとして、少モル量、例えば、1〜10モル%のコポリマーモノマーが非共役ジエン、例えばC3〜C22非共役ジオレフィンであるコポリマー(例えば、イソブチレンとブタジエンのコポリマー、又はエチレン、プロピレン及び1,4-ヘキサジエン又は5-エチリデン-2-ノルボルネンのコポリマー)が挙げられる。ポリイソブテニル(Mnが400〜2500、好ましくは950〜2200)スクシンイミド分散剤が好ましい。好ましくは、本発明の大型車両用ディーゼル(HDD)エンジン潤滑油組成物は、約0.08〜約0.25質量%、好ましくは約0.09〜約0.18質量%、さらに好ましくは約0.10〜約0.15質量%の窒素を組成物に導入する量の窒素含有分散剤を含む。
【0042】
(酸化防止剤)
酸化防止剤又は抗酸化剤は酸化に対する組成物の耐性を高め、ペルオキシドと化合して変性させてペルオキシドを無害にすることによって、又はペルオキシドを分解することによって、又は酸化触媒を不活性にすることによって働き得る。酸化による劣化は、潤滑油中のスラッジ、金属表面上のワニス様付着物及び粘度上昇によって証明され得る。
酸化防止剤をラジカルスカベンジャー(例えば、立体障害フェノール、二級芳香族アミン、及び有機銅塩);ヒドロペルオキシド分解剤(例えば、有機イオウ及び有機リン添加剤);及び多機能物(例えば、耐摩耗添加剤としても機能し得る亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスファート、並びに摩擦調整剤及び耐摩耗添加剤としても機能し得る有機モリブデン化合物)として分類し得る。
好適な抗酸化剤の例は、銅含有抗酸化剤、イオウ含有抗酸化剤、芳香族アミン含有抗酸化剤、ヒンダードフェノール抗酸化剤、ジチオホスファート誘導体、金属チオカルバマート、及びモリブデン含有化合物から選択される。いずれの該油溶性芳香族アミン含有抗酸化剤もその量は、好ましくは0.4質量%の活性成分を超えるべきでない。
【0043】
(粘度調整剤)
粘度調整剤(VM)又は粘度指数改良剤は潤滑油に高温及び低温操作可能性を与える。分散剤としても機能する粘度調整剤も知られており、無灰分散剤について上述したように調製され得る。これらの分散剤粘度調整剤は官能化ポリマー(例えば、無水マレイン酸等の活性モノマーで後グラフトされたエチレン-プロピレンのインターポリマー)が、次に例えば、アルコール又はアミンで誘導体化される。
通常の粘度調整剤があってもなくても、また分散剤粘度調整剤があってもなくても潤滑油を配合することができる。粘度調整剤として使うのに適した化合物は、一般的に高分子量の炭化水素ポリマー、例えばポリエステルである。油溶性粘度調整ポリマーは、一般的に、ゲル浸透クロマトグラフィー又は光散乱によって決定し得る、10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜500,000の重量平均分子量を有する。
(流動点降下剤)
潤滑油流動性向上剤(LOFI)としても知られている流動点降下剤は、流体が流動する、又は流体を注ぐことができる最低温度を低下させる。このような添加剤は周知である。流体の低温流動性を向上させる当該添加剤の典型例は、C8〜C18ジアルキルフマラート/酢酸ビニルコポリマー、及びポリメタクリラートである。
(防錆剤及び腐食防止剤)
防錆剤及び腐食防止剤は、表面を錆及び/又は腐食から保護するのに役立つ。防錆剤として、非イオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、並びにアニオン性アルキルスルホン酸が挙げられる。
(解乳化成分)
小量の解乳化成分を使用してよい。好ましい解乳化成分は、EP0,330,522に記載されている。それは、アルキレンオキシドを、ビスエポキシドと多価アルコールとを反応させて得た付加物と反応させることによって得られる。活性成分が0.1質量%を超えないレベルで解乳化剤を使用すべきである。活性成分が0.001〜0.05質量%の処理割合が都合よい。
(泡制御)
ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えば、シリコーン油又はポリジメチルシロキサンを含む多くの化合物によって、泡制御を与えることができる。
【0044】
ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含める必要がある場合がある。したがって、極性基含有添加剤はプレブレンド段階で適度に低い粘度を達成するが、長期間貯蔵すると、いつくかの組成物の粘度が上昇することが観測された。この粘度上昇を調節するのに有効な添加剤として、本明細書で上述した無灰分散剤の調製で使用されるモノ若しくはジカルボン酸又は無水物との反応により官能化された長鎖炭化水素が挙げられる。
添加した重量の一部のみが活性成分(A.I.)に相当するように、希釈剤中で、潤滑油、又は添加剤濃縮物に添加剤を添加することは珍しくない。例えば、等しい重量の希釈剤と一緒に分散剤を添加してよく、この場合「添加剤」は50%A.I.分散剤である。他方、清浄剤は通常、特定のTBNを与えるために希釈剤中で形成され、あまりA.I.ベースで参照されない。本明細書で使用する場合、質量パーセント(質量%)という用語は、清浄剤に適用される場合、特に断らない限り、清浄剤と希釈剤の合計量を指し、他の全ての添加剤に適用される場合、特に断らない限り、活性成分の重量を指す。
いずれの便利な方法によって個々の添加剤をベースストック中に組み入れてもよい。したがって、所望の濃縮度でベースストック中又は基油ブレンド中に各成分を分散又は溶解させることによって、各成分をベースストック又は基油ブレンドに直接添加することができる。このようなブレンディングは、周囲温度又は高温で起こり得る。潤滑油組成物が1つ以上の上記添加剤を含む場合、各添加剤は、典型的に、添加剤がその所望の機能を与えることができる量で基油中にブレンドされる。主要量で潤滑粘度の油を含む潤滑油組成物で使用される該添加剤の代表的な量を以下に列挙する。列挙した全ての値は活性成分の質量%として示される。
【0045】

【0046】
好ましくは、添加剤パッケージとして本明細書で記載される濃縮物又は添加剤パッケージ中に、粘度調整剤及び流動点降下剤を除く全ての添加剤をブレンドし、これを引き続きベースストック中にブレンドして完成潤滑油を製造する。濃縮物は、典型的に、濃縮物が所定量のベース潤滑油と合わされたときに最終配合物で所望濃度を与えるのに適した量で添加剤を含むように配合される。
濃縮物は、好ましくは米国特許第4,938,880号に記載される方法に従って作製される。当該特許は、少なくとも約100℃の温度でプレブレンドした無灰分散剤と金属清浄剤のプレミックスを作製することを記載している。その後、プレミックスを少なくとも85℃に冷却し、追加成分を添加する。
(船舶用シリンダー潤滑油)
船舶用シリンダー潤滑油配合物は、10〜35質量%、好ましくは13〜30質量%、最も好ましくは約16〜24質量%の濃縮物又は添加剤パッケージを使用してよく、残りはベースストックである。好ましくは、船舶用シリンダー潤滑油組成物は約40〜100、例えば50〜90の組成物TBN(ASTM D2896を用いる)を有する。
(トランクピストンエンジン油)
トランクピストンエンジン油は、7〜35質量%、好ましくは10〜28質量%、最も好ましくは約12〜24質量%の濃縮物又は添加剤パッケージを使用してよく、残りはベースストックである。好ましくは、トランクピストンエンジン油は約20〜60、例えば25〜55の組成物TBN(ASTM D2896を用いる)を有する。
【実施例】
【0047】
本発明を以下の実施例で説明するが、本発明は以下の実施例によって決して制限されない。
(実施例1:1-メトキシ-4-(ヘキサデサ-1-イル)ベンゼンの調製)
1-ブロモヘキサデカン(96.32g)を十分に乾燥させた2リットルの三つ口フラスコに移した後、Li2CuCl4(THF0.1M、31.7ml)を加えた。反応フラスコを氷/水浴内に置いた。グリニャール試薬(4-メトキシフェニル)臭化マグネシウム(THF中0.5M、948ml)を2日にわたって一滴ずつ加え、反応を一晩停止した。反応フラスコの中身をトルエン(300ml)と混合し、分離ロートに注いだ。次に10%のHCl溶液を加えて混合物を酸性にした。水(500ml)を加え、トルエンと振とうした。水層をトルエン(2×300ml)で洗浄した。有機抽出物を合わせて水(500ml)と食塩水(50ml)で洗浄してからMgSO4で乾燥させた。真空中で溶媒を除去して表題化合物をオフホワイト固体108.86gとして得、NMRで特徴づけた。
【0048】
(実施例2:4-(ヘキサデサ-1-イル)フェノールの調製)
実施例1のアルキルアニソール(40g)を乾燥した1リットルの三つ口フラスコに窒素下で移した。これにトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(12.69g)とHBr(48%水溶液、71.4ml)を加えた。結果の濃厚懸濁液を135℃に温めて5時間撹拌した。トルエンを加え、反応を分離ロートに移した。有機層を水と振とうしてから水性抽出物を新たなトルエンと振とうした。有機抽出物を合わせてMgSO4で乾燥させた。真空中で溶媒を除去して表題化合物を褐色固体として得た。
【0049】
(実施例3:2-ヒドロキシ-5-(ヘキサデサ-1-イル)安息香酸の調製)
3.1 フェナート化(phenation)工程
実施例2のアルキルフェノール(52.6g)を3リットルの三つ口煮沸フラスコに量り入れ、計量用ロートを用いてキシレン(1000ml)を加えた。フラスコを蒸留用に組み立て、窒素を400ml.分-1で混合物上に導入した。次に撹拌を約400rpmで開始し、120℃に設定した油浴で混合物を加熱し、水酸化ナトリウム水溶液(50%、9.53g)を一滴ずつ加えた。温度を160℃に上げ、ディーン・スターク装置(Dean and Stark apparatus)を用いて全ての水を除去した。4時間後、反応を室温に冷却し、一晩放置した。
3.2 カルボキシル化工程
上記工程3.1のフラスコの中身を冷却後、2リットルのオートクレーブに移した。1bargの窒素ガスキャップを適用し、撹拌を開始し、550rpmに高め、オートクレーブを138℃に加熱した。オートクレーブが138℃に達したら、CO2を添加し、圧力を約20bargに高めて当該温度と圧力で5.5時間維持した。その後、加熱と撹拌を中断し、オートクレーブを一晩加圧下で冷ました。次の日、オートクレーブ内の圧力を1bargに下げ、混合物を収集して5リットルの三つ口反応容器に移した。滴定で反応混合物の酸値を測定して二回目のフェナート化のためのNaOH装入量を決定した。
3.3 再フェナート化工程
カルボキシル化工程3.2の結果生成物(678.2g)を5リットルの三つ口煮沸フラスコに装入し、キシレン(1000ml)を加えた。フラスコを蒸留用に組み立て、窒素を400ml.分-1で混合物上に導入した。次に撹拌を約400rpmで開始し、100℃に設定した油浴で混合物を加熱した。当該温度になったら、真空装置を適用してキシレンが蒸留し始めるまで真空を高めた。水酸化ナトリウム溶液(50%、8.00g)を一滴ずつ加えた。その後、真空を高めて安定した蒸留を得て約200mlのキシレンと水を除去した。混合物を窒素下で一晩冷ました。次の日、窒素下で混合物を100℃に加熱し、真空装置を適用し、蒸留で20mlのキシレンを除去した。混合物を80℃に冷ましてから2リットルのオートクレーブに移した。
3.4 再カルボキシル化及び酸性化工程
再フェナート化工程3.3のフラスコの中身を2リットルのオートクレーブに移した。1bargの窒素ガスキャップを適用し、撹拌を開始し、550rpmに高め、オートクレーブを138℃に加熱した。オートクレーブが138℃に達したら、CO2を添加し、圧力を約20bargに高めて当該温度と圧力で5.5時間維持した。その後、加熱と撹拌を中断し、オートクレーブを止めて一晩加圧下で放置した。
次の日、オートクレーブ内の圧力を約1bargに下げ、還流用に組み立てた5リットルの三つ口煮沸フラスコに中身を移した。窒素を400ml/分で混合物の上に導入し、混合物を300rpmで撹拌し、60℃の油浴で加熱した。滴下ロートから硫酸(14%(v/v)の300ml)を混合物に加えた。酸の添加後、混合物を2時間撹拌し続けた。次に加熱と撹拌を止めて混合物を冷却し、分離させた。30分後、混合物を分離ロートに移し、酸層を流出させて捨てた。キシレン層を反応フラスコに戻し、250mlの脱イオン水を加えた。混合物を約450rpmで撹拌し、60℃の油浴で加熱した。この温度で1時間、混合物を撹拌し、室温に冷ましてキシレン層を収集した。キシレン層を反応容器に戻し、同様にさらなる250mlの脱イオン水で洗浄し、キシレン層を再び収集し、真空中で溶媒を除去して表題化合物(38.8g)を得た。
【0050】
(実施例4:低塩基カルシウム5-(ヘキサデサ-1-イル)サリチラートの調製)
実施例3の5-(ヘキサデサ-1-イル)サリチル酸(3.16g)を市販の低級アルキル(すなわちC20未満)サリチル酸(Infineum M7103、Infineum UK Limitedから得られる、3.89g)、及び実施例2の4-(ヘキサデサ-1-イル)フェノール(0.34g)と混合した。このサリチル酸混合物とキシレン(100g)を一緒に室温で混合した。水酸化カルシウム(2.50g)、プロモーター(メタノール:水(97%:3%)、25.29ml)及びさらなるキシレン(120g)を加え、混合物全体に窒素を通し(60ml.分-1)、結果として生じた混合物を40℃の油浴で1時間加熱した。
次に混合物を遠心分離機に移し、1500rpmで1時間回転させた。反応器を酸洗浄液できれいにして如何なる未反応石灰をも除去し、上澄み液を三つ口フラスコに移し、400rpmで撹拌し、55℃に加熱しながら混合物全体に窒素を60ml.分-1で通した。次に二酸化炭素を混合物全体に50ml.分-1で1時間通し、前と同様に混合物に窒素を散布した。55℃で30分間混合物を加熱してから、前と同様に1500rpmで60分間遠心分離機にかけた。キシレン(上)相を、4.0gのグループI基油(XOMAPE150、ExxonMobilから得た)を含む0.5リットルの梨型フラスコにデカントして加え、真空中でキシレン、及びいずれの残存メタノールも水も125℃で取り除いた。組成物の塩基度指数(BI)を1.23として測定した。
サリチラートを1H NMRで特徴づけると、サリチラートが50モル%のヒドロカルバ-1-イルサリチラート、20モル%のヒドロカルバ-2-イルサリチラート並びにヒドロカルバ-3-イル、及びさらに高次のヒドロカルビル置換サリチラートを含むサリチラート30モル%で構成されることを示した。
【0051】
(実施例5:2-ペンタデカノールの調製)
ペンタデカノン(200g)を3リットルの三つ口フラスコに窒素下で加え、これに滴下ロートからジエチルエーテル(1000ml)をゆっくり加えた。次にナトリウムボロヒドリド(63.54g)をゆっくり加えて混合物を窒素下で室温にて2日間撹拌した。トルエンを反応容器に加え、中身を分離ロートに移した。有機層を水で洗浄し、水層を収集した。水層をトルエンで洗浄し、それを前の有機層と合わせた。生成物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下でろ過した。次に溶媒を回転式エバポレーターで100℃にて取り除いて表題化合物を得た。
【0052】
(実施例6:2-ブロモペンタデカンの調製)
実施例5の2-ペンタデカノール(180g)とジクロロメタン(2500ml)を5リットルの三つフラスコに加えた。混合物を0℃に冷却し、四臭化炭素(313.6g)を加え、それが溶解するまで撹拌した。次にトリフェニルホスフィン(351.4g)を一滴ずつ加えた。結果の混合物を周囲温度に戻し、2日間撹拌し続けた。次に反応混合物をろ過し、回転式エバポレーターで56℃にて溶媒を除去した。結果として生じた固体をヘプタンに再び溶かして2日間撹拌し続けた。次にこれを真空下にてセライトでろ過し、回転式エバポレーターで78℃にてヘプタンを除去して表題化合物を得た。
【0053】
(実施例7:1-メトキシ-4-(ペンタデシル-2-イル)ベンゼンの調製)
十分に乾燥させた1Lの三つフラスコ中にFeCl3(0.84g)を迅速に注ぎ、これにTHF(26ml)と2-ブロモペンタデカン(実施例6、30g)を加えた。次に反応フラスコを氷/水浴に浸漬した。次にN,N,N',N'-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン(TMEDA、17ml)と(4-メトキシフェニル)臭化マグネシウム(THF中0.5M、226.5ml)の混合物を反応混合物に一滴ずつ加えた。10%のHClを反応混合物に、いずれの発熱をも最小限にするようにゆっくり加えた後、トルエンを加えた。反応容器の中身を分離ロートに移した。水層をトルエンで洗浄し、トルエン抽出液を合わせて食塩水で2回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、真空中で溶媒を除去して表題化合物をクリーム色の固体として得た(30.45g)。
【0054】
(実施例8:4-(ペンタデサ-2-イル)フェノールの調製)
1-メトキシ-4-(ペンタデシル-2-イル)ベンゼン(実施例7、30.33g)、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(9.65g)及びHBr(48%水溶液、53.9ml)から実施例2の手順で表題化合物を調製した。表題化合物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、トルエン)で精製した。
【0055】
(実施例9:2-ヒドロキシ-5-(ペンタデサ-2-イル)安息香酸の調製)
4-(ペンタデサ-2-イル)フェノール(実施例8、28.48g)及びNaOH(50%水溶液、フェナート化工程で7.6ml)から実施例3の手順で表題化合物(24.89g)を調製した。
【0056】
(実施例10:低塩基カルシウム5-(ペンタデサ-2-イル)サリチラートの調製)
5-(ペンタデサ-2-イル)サリチル酸(実施例9、3.33g)、市販の低級アルキル(すなわちC20未満)サリチル酸(Infineum M7103、Infineum UK Limitedから得られる、3.70g)、キシレン(203.33g)、水酸化カルシウム(1.56g)、及びプロモーター(メタノール:水(97%:3%)、23.37ml)を用いて、実施例4で概要を述べたとおりに、4gの基油XOMAPE150(9.12g、Basicity Index 1.21)中の表題化合物を調製した。
このサリチラートを1H NMRで特徴づけすると、サリチラートが0モル%のヒドロカルバ-1-イルサリチラート、70モル%のヒドロカルバ-2-イルサリチラート並びにヒドロカルバ-3-イル、及びさらに高次のヒドロカルビル置換サリチラートを含むサリチラート30モル%で構成されることを示した。
【0057】
(実施例11:ペンタデカン-6-オールの調製)
500mlの三つ丸底フラスコを十分に乾燥させた。1つの出入口をシュバシール(suba seal)で無効にし、1つの出入口をオイルバブラーに接続し、1つの出入口を窒素供給管に接続した。ノナナール(10g)をシュバシールを介して注射器で添加後、THF(200ml)を加えた。混合物を冷却したままにし、それを冷却しながら300rpmで撹拌した。1時間冷却後、注射器ポンプで0.5ml.分-1にてヘキシル臭化マグネシウム(37ml)を加えた。混合物を室温まで温め、窒素下4.5時間撹拌してから撹拌を中断し、反応混合物を一晩放置した。混合物を1リットルの分離ロートに移し、ヘプタン(100ml)と20%v/vのHCl(50ml)を加えた。層を分け、有機層を3×50mlの脱イオン水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、真空中で溶媒を除去して表題化合物を得た(13.08g)。
【0058】
(実施例12:6-ブロモ-ペンタデカンの調製)
ペンタデカン-6-オール(実施例11、12.65g)、四臭化炭素(22g)、トリフェニルホスフィン(24.82g)及びジクロロメタン(200ml)から実施例6の手順で表題化合物(13.87g)を調製した。
【0059】
(実施例13:1-メトキシ-4-(ペンタデサ-6-イル)ベンゼンの調製)
6-ブロモ-ペンタデカン(実施例12、34g)、N,N,N',N'-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン(14.92g)、THF(35ml)及び(4-メトキシフェニル)臭化マグネシウム(THF中0.5M、226.5ml)から実施例7の手順で表題化合物(34.8g)を調製した。
【0060】
(実施例14:4-(ペンタデサ-6-イル)フェノールの調製)
1-メトキシ-4-(ペンタデサ-6-イル)ベンゼン(実施例13、318g)、トリブチルペンタデシルホスホニウムブロミド(413g)及びHBr(48%水溶液、83.4g)から実施例2の手順で表題化合物(36.11g)を調製した。
【0061】
(実施例15:2-ヒドロキシ-5-(ペンタデサ-6-イル)安息香酸の調製)
4-(ペンタデサ-6-イル)フェノール(実施例14、10g)及びNaOH(50%水溶液、フェナート工程で3.6ml)から実施例3の手順で表題化合物(10.8g)を調製した。
【0062】
(実施例16:低塩基カルシウム5-(ペンタデサ-6-イル)サリチラートの調製)
5-(ペンタデシル-6-イル)サリチル酸(実施例15、3.3g)、市販の低級アルキル(すなわちC20未満)サリチル酸(Infineum M7103、Infineum UK Limitedから得られる、3.70g)、キシレン(203g)、水酸化カルシウム(4g)、及びプロモーター(メタノール:水(97%:3%)、23.4ml)を用いて実施例4で概要を述べたとおりに4gの基油XOMAPE 150(13.2g、塩基度指数1.48)中の表題化合物を調製した。
このサリチラートを1H NMRで特徴づけると、サリチラートが0モル%のヒドロカルバ-1-イルサリチラート、20モル%のヒドロカルバ-2-イルサリチラート並びにヒドロカルバ-3-イル、及びより高次のヒドロカルビル置換サリチラートを含むサリチラート80モル%で構成されることを示した。
【0063】
(実施例17:2-(ドドコサ-1-イル)フェノールの調製)
Fe(acac)3(鉄アセチルアセトナト錯体、0.228g)を100mLの三つ口フラスコに量り入れ、これに1-ブロモドドコサン(5.0g)、N-メチルピロリドン(5.26ml)、次いでTHF(6ml)を加えた。結果の溶液を0℃に冷却してからグリニャール試薬の溶液(2-メトキシフェニル臭化マグネシウム(THF中1M溶液、18.64ml))を2時間にわたって注射器ポンプで一滴ずつ加えた。反応を氷浴内で一晩撹拌してから徐々に室温に戻した。次に反応フラスコの中身をトルエンと混合して分離ロート中に注いだ。次にHCl溶液(10%(v/v))を加えてトルエンを酸性にした。次に上部のトルエン層を水で洗浄し、トルエンをろ過して丸底フラスコに入れ、回転式エバポレーターを用いて溶媒を取り除いた。
前工程で調製したアニソール(30g)及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(9.65g)を含む1リットルの三つ口フラスコにHBr(0.82mol、54mL)を加えた。結果として生じた撹拌懸濁液を5時間135℃に加熱した。水相をトルエンで抽出し(2×100ml)、合わせたトルエン抽出液を食塩水(150ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、真空下で溶媒を除去して褐色固体を得た。結果として生じた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、トルエン)で精製して表題化合物を固体として得た。
【0064】
(実施例18:2-ヒドロキシ-3-(ドドコサ-1-イル)安息香酸の調製)
2-(ドドコサ-1-イル)フェノール(実施例17、33.78g)及びNaOH(50%水溶液、フェナート工程で7.4ml)から実施例3の手順で表題化合物を調製した。
【0065】
(実施例19:低塩基カルシウム3-(ドドコサ-1-イル)サリチラートの調製)
3-(ドドコサ-1-イル)サリチル酸(実施例18、8.5g)、市販の低級アルキル(すなわちC20未満)サリチル酸(Infineum M7103、Infineum UK Limitedから得られる、1.9g)、キシレン(176.3g)、水酸化カルシウム(2.87g)、及びプロモーター(メタノール:水(97%:3%)、20.4ml)を用いて、実施例4で概要を述べたとおりに4gの基油XOMAPE 150(塩基度指数1.26)中の表題化合物を調製した。
このサリチラートを1H NMRで特徴づけると、サリチラートが80モル%のヒドロカルバ-1-イルサリチラート、12モル%のヒドロカルバ-2-イルサリチラート並びにヒドロカルバ-3-イル、及びより高次のヒドロカルビル置換サリチラートを含むサリチラート8モル%で構成されることを示した。
【0066】
(収束ビーム反射率法(Focused Beam Reflectance method)(「FBRM」))
アスファルテン凝集、ひいては「ブラックスラッジ」の形成を予測する、収束ビーム反射率法(「FBRM」)に従い、レーザー光散乱を利用してアルカリ土類金属サリチラート清浄剤をそのアスファルテン分散能(dispersancy)について試験した。FBRM試験法は、第7回船舶工学に関する国際シンポジウム(International Symposium on Marine Engineering)、東京、2005年10月24〜28日で開示され、その会議の議事録の「種々のベースストックを用いたTPEO適用におけるサリチラート清浄剤の利益(The Benefits of Salicylate Detergents in TPEO Applications with a Variety of Base Stocks)」で公表された。さらなる詳細は、CIMAC Congress、Vienna、2007年5月21〜24日で開示され、その会議の議事録の「中速船舶エンジンの潤滑油用の新しいベース流体の問題の会合−添加剤アプローチ(Meeting the Challenge of New Base Fluids for the Lubrication of Medium Speed Marine Engines - An Additive Approach)」で公表された。後者の論文では、FBRM法を使用することによって、グループIとグループIIの両ベースストックに基づく潤滑油系の性能を予測する、アスファルテン分散能の定量的結果を得ることができると開示している。FBRMから得られた相対的性能の予測は、船舶用ディーゼルエンジンにおけるエンジン試験で確証された。
FBRMプローブは光ファイバーケーブルを含み、その中をレーザー光が伝わってプローブ先端に達する。この先端で、光学機器がレーザー光を小さい点に収束する。収束されたビームがプローブの窓とサンプルの間の円経路を走査するように光学機器が回転する。粒子が窓を通って流れるとき、粒子は走査経路を横切り、個々の粒子からの後方散乱光を与える。
走査レーザービームは粒子よりはるかに速く移動する。このことは、粒子が事実上静止していることを意味する。収束されたビームが粒子の一方の縁に達すると後方散乱光の量が増加し;この量は、収束されたビームが粒子の他方の縁に達すると減少するだろう。
この装置は、後方散乱が増加した時間を測定する。1つの粒子由来の後方散乱の時間に走査速度を掛けて得られる結果は距離又は弦長(chord length)である。弦長は粒子の縁の任意の2点間の直線である。これは、μmの弦長寸法の関数として測定される弦長(粒子)数のグラフである弦長分布として表される。測定は実時間で行われるので、分布の統計を計算及び追跡することができる。FBRMは、典型的に1秒当たり数万の弦を測定し、ロバスト(robust)な数の弦長分布をもたらす。この方法はアスファルテン粒子の粒度分布の絶対尺度を与える。
収束ビーム反射率プローブ(FBRM)、モデルLasentec D600Lは、Mettler Toledo, Leicester, UKによって供給された。この機器を1μm〜1mmの粒径分解能を与えるような構成で用いた。FBRMからのデータをいくつかの方法で表すことができる。研究は1秒当たりの平均計数をアスファルテン分散能の定量的測定として使用できることを示唆した。この値は、集塊の平均サイズとレベルの両方の関数である。この出願では、平均計数率(全サイズ範囲にわたる)を1サンプル当たり1秒の測定時間を用いてモニターした。
それぞれのアルカリ土類金属サリチラート清浄剤(10%w/wの)及びChevron 600 RLOPグループIIベースストックを一緒に60℃に加熱し、400rpmで撹拌しながら15分間ブレンドした。温度が60℃に達したとき、FBRMプローブをサンプル中に挿入し、15分間測定を行った。一定分量の重質燃料油(10%w/w)を、4つのブレードスターラーを用いて撹拌しながら(400rpm)潤滑油製剤に導入した。計数率が平衡値に達したとき(典型的に1時間後)、1秒当たりの平均計数値の記録を取った
【0067】

(FBRM試験結果)

【0068】
上表に示されるように、50モル%超えのサリチラート清浄剤がヒドロカルバ-1-イル置換サリチラート又はヒドロカルバ-2-イル置換サリチラートを含む本発明のサリチラート清浄剤(実施例4、実施例10及び実施例19)は、50モル%超えのサリチラート清浄剤がヒドロカルバ-3-イル置換、又はより高次のヒドロカルビル置換サリチラートを含む実施例16の比較サリチラート及び市販のサリチラートより実質的に低い計数を示す。平均計数値は、集塊の平均サイズとレベルの両方の関数である。好適には、本発明のサリチラート清浄剤は、アスファルテンを分散する面で、実施例16の比較サリチラートよりほぼ少なくとも8倍有効であり、市販のサリチラートよりほぼ少なくとも2倍有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む清浄剤であって、
(i)前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含むか、又は
(ii)前記中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、
前記清浄剤。
【請求項2】
55モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上の前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビルヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1に記載の清浄剤。
【請求項3】
20モル%以上、好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上の前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビルヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1に記載の清浄剤。
【請求項4】
99モル%以下、好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下、なおさらに好ましくは85モル%以下の前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビルヒドロキシベンゾアートが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1又は3に記載の清浄剤。
【請求項5】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートの前記C10〜C40ヒドロカルビル置換基が、直鎖ヒドロカルビル置換基、好ましくは直鎖アルキル基を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項6】
前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシベンゾアートの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換基が、1つ以上の二級直鎖C10〜C40ヒドロカルビル置換基、好ましくは二級直鎖C10〜C40アルキル基を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項7】
前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシベンゾアートの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換基が、1つ以上の一級直鎖C10〜C40ヒドロカルビル置換基、好ましくは一級直鎖C10〜C40アルキル基を含む、請求項1、3又は4に記載の清浄剤。
【請求項8】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C20ヒドロカルビル置換、好ましくはC14〜C18ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項9】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C20〜C30ヒドロカルビル置換、好ましくはC20〜C24ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項10】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル一置換ヒドロキシベンゾアートを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項11】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル一置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上の3-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラート、1つ以上の5-一置換C10〜C40ヒドロカルビルサリチラート、又はその混合物を含む、請求項10に記載の清浄剤。
【請求項12】
前記1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートが、1つ以上の中性若しくは過塩基性アルカリ土類金属C10〜C40ヒドロカルビル置換サリチラートを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項13】
前記アルカリ土類金属がカルシウムである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の清浄剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の清浄剤の製造方法であって、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を金属塩基及び必要に応じて二酸化炭素と反応させる工程を含み、
(i)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸が、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換ヒドロキシ安息香酸を含むか、又は
(ii)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸の総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸が、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換ヒドロキシ安息香酸を含む、
前記方法。
【請求項15】
請求項14に記載の1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を含む化合物。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物の製造方法であって、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールをカルボキシル化する工程を含み、
(i)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-1-イル置換フェノールを含むか、又は
(ii)前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールの総モル数に基づいて、50モル%超えの前記1つ以上のC10〜C40ヒドロカルビル置換フェノールが、1つ以上のC10〜C40ヒドロカルバ-2-イル置換フェノールを含む、
前記方法。
【請求項17】
以下の成分:
(A)潤滑粘度の油;及び
(B)請求項1〜13のいずれか1項に記載の清浄剤
を含むか、又は混合して製造される、潤滑油組成物。
【請求項18】
前記潤滑粘度の油が、濃縮物形成量で存在する、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記潤滑粘度の油が、主要量で存在する、請求項17に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記潤滑粘度の油が、グループIIベースストックを含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
前記清浄剤(B)が、本質的に、前記潤滑油組成物内に存在する唯一の清浄剤である、請求項17〜20のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
前記潤滑油組成物が、トランクピストンエンジン油である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
清浄剤(B)以外に、摩擦調整剤、耐摩耗剤、分散剤、酸化防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、解乳化剤及び泡制御剤から選択される1つ以上の共添加剤をさらに含む、請求項17〜22のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
エンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させる方法であって、請求項17〜23のいずれか1項に記載の潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑にする工程を含む方法。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の清浄剤の、エンジン内のアスファルテン沈殿又は「ブラックペイント」を減少させるための潤滑粘度の油を含む潤滑油組成物における使用。
【請求項26】
前記潤滑粘度の油が、グループIIベースストックを含む、請求項25に記載の使用。

【公開番号】特開2010−65227(P2010−65227A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210189(P2009−210189)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】