説明

減衰力可変ダンパ

【課題】圧電体の変位量を増幅させて減衰力を好適に変えることが可能な減衰力可変ダンパを提供する。
【解決手段】減衰力可変ダンパ10は、ピストンシリンダ41の大径シリンダ部42に摺動自在に設けられた大径ピストン45と、小径シリンダ部43に摺動自在に設けられた小径ピストン47と、大径ピストン、小径ピストンおよびピストンシリンダ間で形成された液密部57と、液密部を下流体室32に連通する連通路61と、連通路を開閉するように大径ピストンに連動可能に設けられた連通路開閉手段65とを備えている。大径ピストンの摺動に伴う力を液密部の作動油13を介して小径ピストンに伝えることで流体通路86の開閉状態を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置に用いられてシリンダ内のピストンを摺動させることで減衰力を変えることができる減衰力可変ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
減衰力可変ダンパのなかには、シリンダ内に摺動自在に収納されたピストンでシリンダを第1、第2の流体室に区画し、第1、第2の流体室を連通する流体通路の開口を圧電体で調整可能としたものが知られている。
流体通路の開口を圧電体で調整することで減衰力を変えることができる。
この減衰力可変ダンパは、圧電体の変位量を増幅させるために、ピストン内に液密部が設けられている。さらに、液密部の大径部に第1ピストンが摺動自在に設けられ、液密部の小径部に第2ピストンが摺動自在に設けられている。
【0003】
第1ピストンを圧電体で押圧することで、液密部の粘性流体(以下、「作動油」という)を介して第2ピストンが押圧される。よって、第1ピストンの変位量(すなわち、圧電体の変位量)を液密部で増幅させて第2ピストンに伝えることができる。
第2ピストンが移動することで第2ピストンとともに弁部材が移動し、弁部材で流体通路の開口を調整する。弁部材で流体通路の開口を調整することで減衰力を変えることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この第2ピストンは液密部の小径部に摺動自在に設けられている。
よって、液密部の作動油で第2ピストンを押圧する際に、液密部の作動油が第2ピストンの外周に沿って漏出することが考えられる。
このため、液密部から漏出した分の作動油を液密部に導入する必要がある。
【0005】
そこで、第1ピストンの背面側に背圧室を設け、背圧室および液密部を逆止弁を用いて連通可能とした。
これにより、圧電体の押圧力を除去して第1ピストンを変位前の位置に復帰させる際に、背圧室および液密部の圧力差で逆止弁を開いて背圧室から液密部に流体を導くことができる。
【0006】
ところで、特許文献1の減衰力可変ダンパは、弁部材の近傍で発生した気泡を第1、第2の流体室に導いて液密部に混入(浸入)しないようにしている。
これにより、第1ピストンの押圧力を液密部の作動油を介して第2ピストンに効率よく伝えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−83932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1の減衰力可変ダンパは、背圧室および液密部の圧力差で逆止弁を開いて背圧室から液密部に作動油を導いている。
すなわち、背圧室に逆止弁が連通されている。
加えて、弁部材の近傍で発生した気泡を液密部に混入しないように背圧室が第1、第2の流体室に連通されている。
よって、第1、第2の流体室は背圧室を経て逆止弁が連通されている。
【0009】
この減衰力可変ダンパは、外力が作用して減衰力可変ダンパが伸縮動作した際に、第1、第2の流体室に圧力変動が発生する。
よって、第1、第2の流体室に圧力変動が発生した際に、発生した圧力変動で逆止弁が不用意に開閉することが考えられる。
【0010】
このように、逆止弁が不用意に開閉することで、例えば、第1ピストンを復帰させる際に液密部に作動油を良好に導き難くなり液密部の作動油が不足する虞がある。
このため、液密部の作動油で圧電体の変位量を増幅し難くなり減衰力可変ダンパの減衰力を好適に変えることが難しい。
【0011】
本発明は、圧電体の変位量を増幅させて減衰力を好適に変えることが可能な減衰力可変ダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車両の懸架装置に用いられて圧電体への電圧の印加に応じて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、流体が充填されたシリンダと、前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通する流体通路を有するピストン組立体と、を備え、前記ピストン組立体は、前記シリンダに摺動自在に収納されたピストンケースと、前記ピストンケース内に設けられ、中空状の大径シリンダ部および前記大径シリンダ部より断面積の小さい中空状の小径シリンダ部が軸線方向に連続して形成されたピストンシリンダと、前記ピストンシリンダの大径シリンダ部に摺動自在に設けられ、前記圧電体に連結された大径の第1ピストンと、前記ピストンシリンダの小径シリンダ部に摺動自在に設けられた小径の第2ピストンと、前記第1、第2のピストンおよび前記ピストンシリンダ間で密閉空間が形成され、流体が密閉された液密部と、前記液密部を、前記第1、第2の流体室のうち前記第2ピストン側の流体室に連通する連通路と、前記連通路を開閉するように、前記第1ピストン、前記第2ピストンの少なくとも一方のピストンに連動可能に設けられた連通路開閉手段と、を備え、前記圧電体の伸縮に伴い前記第1ピストンを前記第2ピストンに向けて摺動し、前記第1ピストンの摺動に伴う力を前記液密部の流体を介して前記第2ピストンに伝えることで前記第2ピストンを摺動させて前記流体通路の開閉状態を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項2は、前記連通路開閉手段は、前記第1ピストンに摺動自在に設けられ、前記連通路を開閉可能な開閉ロッドと、前記第1ピストンに設けられ、前記開閉ロッドを前記第1ピストンから前記連通路に向けて突出させたロッド規制位置に位置決め可能なロッド規制部と、前記第1ピストンに設けられ、前記ロッド規制部に前記開閉ロッドを保持した状態に付勢可能なロッド付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3は、前記連通路開閉手段は、前記連通路に摺動自在に設けられ、前記連通路を開閉可能な開閉ピストンと、前記連通路を閉塞するピストン規制位置に前記開閉ピストンを位置決め可能なピストン規制部と、前記ピストン規制部に前記開閉ピストンを保持した状態に付勢可能なピストン付勢手段と、前記第2ピストンに設けられ、前記圧電体への未印加状態において前記開閉ピストンを前記ピストン付勢手段の付勢力に抗して前記ピストン規制部から離間した離間位置に配置可能な押圧部と、を備え、前記圧電体への印加状態において前記開閉ピストンを前記ピストン付勢手段の付勢力で前記ピストン規制部に配置可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、第1ピストン、第2ピストンの少なくとも一方のピストンに連動可能に連通路開閉手段を設けた。この連通路開閉手段を一方のピストンに連動させて連通路を開閉するようにした。
連通路開閉手段を一方のピストンに連動させることで連通路を確実に開くことができる。
【0016】
ここで、減衰力可変ダンパに外力が作用して減衰力可変ダンパが伸縮動作した際に、第1、第2の流体室に圧力変動が発生し、圧力変動が連通路の開閉に影響を与える虞がある。
そこで、連通路開閉手段を一方のピストンに連動させて連通路を確実に開くようにした。よって、第1、第2の流体室に発生した圧力変動の影響を受けることなく連通路を開くことができる。
このように、圧力変動の影響を受けることなく連通路を開くことで、圧電体の伸縮に同期させて連通路を確実に開くことができ、液密部に流体を良好に導くことができる。
【0017】
よって、液密部に流体を好適に蓄えることができる。
これにより、第1ピストンの摺動に伴う力(すなわち、圧電体の変位量)を液密部の流体で増幅させて第2ピストンに伝えることができる。
したがって、第2ピストンで流体通路の開閉状態を良好に調整することが可能になり、減衰力可変ダンパの減衰力を好適に変えることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、第1ピストンに開閉ロッドを設けることで、開閉ロッドを第1ピストンに連動させて連通路を開閉することができる。
このように、開閉ロッドを第1ピストンに連動させることで、圧電体の伸縮に同期させて連通路を確実に開くことができ、液密部に流体を良好に導くことができる。
【0019】
よって、液密部に流体を好適に蓄えることができる。これにより、第1ピストンの摺動に伴う力(すなわち、圧電体の変位量)を液密部の流体で増幅させて第2ピストンに伝えることができる。
したがって、第2ピストンで連通路の開閉状態を良好に調整することが可能になり、減衰力可変ダンパの減衰力を好適に変えることができる。
【0020】
さらに、連通路開閉手段(すなわち、開閉ロッド、ロッド規制部およびロッド付勢手段)を第1ピストンに設けることで、連通路開閉手段を第1ピストンにまとめて設けることができる。
これにより、連通路開閉手段をコンパクトに形成することが可能になり、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
加えて、第1ピストンは大径に形成された部材である。
この大径に形成された第1ピストンに連通路開閉手段を設けることで、連通路開閉手段を設ける箇所を容易に確保できる。
このように、連通路開閉手段を設ける箇所を容易に確保可能とすることで設計の自由度を高めることができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、第2ピストンに押圧部を設けることで、押圧部を第2ピストンに連動させて連通路を開閉することができる。
このように、押圧部を第2ピストンに連動させることで、圧電体の伸縮に同期させて連通路を確実に開くことができ、液密部に流体を良好に導くことができる。
【0023】
よって、液密部に流体を好適に蓄えることができる。これにより、第1ピストンの摺動に伴う力(すなわち、圧電体の変位量)を液密部の流体で増幅させて第2ピストンに伝えることができる。
したがって、第2ピストンで連通路の開閉状態を良好に調整することが可能になり、減衰力可変ダンパの減衰力を好適に変えることができる。
【0024】
さらに、連通路開閉手段のうち押圧部のみを第2ピストンに設け、その他の部材(すなわち、開閉ピストン、ピストン規制部およびピストン付勢手段)を連通路に設けた。
よって、第2ピストンに押圧部を連動させることができる。
これにより、第2ピストンに同期させて連通路を開閉することができる。
【0025】
加えて、連通路開閉手段を第2ピストンおよび連通路の二部材に分けて設けた。
これにより、連通路開閉手段を設ける部位を決める際に選択範囲を広く確保でき、設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施例1の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図2】図1の減衰力可変ダンパのピストン組立体を示す断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】図3の連通路開閉手段で連通路を閉塞した状態を示す断面図である。
【図5】実施例1の圧電体で大径ピストンおよび小径ピストンを下降させる例を説明する図である。
【図6】実施例1の連通路開閉手段(開閉ロッド)で連通路を閉塞する例を説明する図である。
【図7】実施例1の大径ピストンおよび小径ピストンを上昇させる例を説明する図である。
【図8】実施例1の連通路開閉手段(開閉ロッド)を上昇させて連通路を開放する例を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施例2の減衰力可変ダンパを示す断面図である。
【図10】図9の10部拡大図である。
【図11】図10の連通路開閉手段で連通路を閉塞した状態を示す断面図である。
【図12】実施例2の連通路開閉手段で連通路を閉塞する例を説明する図である。
【図13】実施例2の連通路開閉手段で連通路を開放する例を説明する図である。
【図14】実施例2の流体通路を開放して下流体室の作動油を液密部に導く例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0028】
実施例1に係る減衰力可変ダンパ10について説明する。
図1に示すように、減衰力可変ダンパ10は、車両11の懸架装置に用いられて減衰力を変えることが可能な緩衝装置である。
この減衰力可変ダンパ10は、円筒状のシリンダ(シリンダチューブ)12と、シリンダ12内に摺動自在に収納されたピストン組立体14と、ピストン組立体14に連結されてシリンダ12の上端部12aから突出されたピストンロッド16とを備えている。
【0029】
さらに、減衰力可変ダンパ10は、ピストン組立体14の圧電体51がワイヤハーネス21を経て制御部22に接続され、圧電体51が電源(バッテリ)24に接続され、電源24が電装部品25などに接続されている。
【0030】
シリンダ12は、内部に作動油(流体)13が充填され、ピストン組立体14が矢印方向に摺動自在に収納されている。
シリンダ12内にピストン組立体14が収納されることで、シリンダ12内がピストン組立体14で上流体室(第1流体室)31および下流体室(第2流体室)32に区画されている。
【0031】
減衰力可変ダンパ10が伸縮する際にシリンダ12内でピストン組立体14を矢印方向に摺動させて作動油13を上流体室31および下流体室32間で移動させることができる。
上流体室31および下流体室32間で作動油13を移動させることにより、減衰力可変ダンパ10で減衰力を得ることができる。
【0032】
図2に示すように、ピストン組立体14は、シリンダ12に摺動自在に収納されたピストンケース(ピストン)34と、ピストンケース34内に設けられたピストンシリンダ41と、ピストンシリンダ41に設けられた大径ピストン(第1ピストン)45および小径ピストン(第2ピストン)47と、大径ピストン45に連結された圧電体51と、圧電体51を密封しつつ圧電体51の伸縮を阻害することのない構造体として、例えばベローズ53とを備えている。
【0033】
さらに、ピストン組立体14は、大径、小径のピストン45,47およびピストンシリンダ41間で形成された液密部57と、液密部57を上流体室31に連通する連通路61と、連通路61を開閉可能な連通路開閉手段65と、小径ピストン47に設けられたバルブ手段71とを備えている。
【0034】
ピストンケース34は、円筒状に形成され、シリンダ12内に収納可能で、かつ、シリンダ12の軸線方向(上下方向)に摺動可能なケースである。
このピストンケース34は、上部34a、壁部34bおよび下部34cを有し、下部34cにピストンリング38が設けられている。
上部34aがピストンロッド16の下部16aに連結されることで、ピストンケース34がピストンロッド16に連結されている。
【0035】
上部34aは、中央に係止孔35が形成され、係止孔35に圧電体51が係止されている。
壁部34bは、内部にピストンシリンダ41が設けられている。
壁部34bにピストンシリンダ41が設けられることで壁部34b内に中空部が形成される。
ピストンシリンダ41については後で詳しく説明する。
【0036】
下部34cは、壁部34bに設けられた下壁部34dと、下壁部34dに設けられた底部34eとを有する。
下壁部34dは、バルブ手段71の外側に設けられている。
この下壁部34dは、円筒状に形成され、周壁に複数のピストン開口部82が設けられている。
下壁部34dにピストン開口部82が設けられることで、下壁部34d内のバルブ収納空間83がピストン開口部82を経て上流体室31に連通されている。
【0037】
底部34eは、ピストンケース34の内部(バルブ収納空間83)と外部(下流体室32)とを仕切る仕切部である。
この底部34eは、ピストン開口部82の下方に設けられ、底部34eの外周壁に沿って複数の流体通路86が設けられている。
底部34eに流体通路86が設けられることで、ピストンケース34内のバルブ収納空間83が流体通路86を経て下流体室32に連通される。
【0038】
底部34eの外周壁にピストンリング38が設けられている。
ピストンリング38は、環状に形成され、外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されている。
これにより、ピストン組立体14をシリンダ12の軸線方向(矢印方向)に安定させた状態で摺動させるようにピストンリング38で支持することができる。
【0039】
さらに、ピストンリング38の外周面38aがシリンダ12の内周面12bに摺動自在に接触されることで、外周面38aおよび内周面12b間が密閉される。
よって、シリンダ12内がピストンリング38で上流体室31および下流体室32に区画される。
【0040】
ピストンシリンダ41は、ピストンケース34内に設けられた中空状の大径シリンダ部42と、大径シリンダ部42の下方に設けられた中空状の小径シリンダ部43とを有する。
大径シリンダ部42は、内径を大きくすることで断面積が大きく形成されている。
小径シリンダ部43は、内径を大径シリンダ部42の内径より小さくすることで断面積が大径シリンダ部42より小さく形成されている。
大径シリンダ部42および小径シリンダ部43は、壁部34b内において軸線方向に連続して形成されている。
【0041】
大径シリンダ部42内に大径ピストン45が軸線方向に摺動自在に設けられている。
大径ピストン45は、上部45aが圧電体51の下端部51aに連結(接触)されている。
この大径ピストン45は、大径シリンダ部42に摺動可能に大径に形成され、上部45aの外周壁にベローズ53の下端部が嵌入されている(設けられている)。
【0042】
小径シリンダ部43内に小径ピストン47が軸線方向に摺動自在に設けられている。
小径ピストン47は、大径ピストン45より小径に形成され、大径ピストン45の下方で、かつ、大径ピストン45に対して同軸上に設けられている。
大径ピストン45および小径ピストン47は、ピストンケース34の軸線方向に所定間隔をおいてそれぞれが摺動自在に設けられている。
【0043】
圧電体51は、複数の圧電素子(ピエゾ素子)単体52が上下方向に積層されている。
この圧電体51は、ピストンロッド16の下部16a内に上部51bが同軸上に収納されることで液密部57の反対側に設けられている。
圧電体51の下端部51aが大径ピストン45(上部45a)に連結(接触)されている。
【0044】
この圧電体51は、ワイヤハーネス21を経て制御部22および電源24(図1参照)に接続されている。
図1に示す制御部22は、圧電体51に電源24から電圧を印可する状態と、電源24から印可しない状態に切り替える機能を備えている。
さらに、制御部22は、電源24から圧電体51に印可する電圧を調整する(変化させる)機能を備えている。
【0045】
図2に示す圧電体51は、電源24(図1参照)から電圧が印加されることで伸長する機能を備えている。
圧電体51が伸長することで、圧電体51で大径ピストン45を小径ピストン47に向けて押圧することができる。
【0046】
圧電体51の下端部51aはベローズ53で覆われている。
ベローズ53は、円筒形状に形成されるとともに周壁が蛇腹状に形成され、圧電体51の伸縮を阻害することのない構造体である。
このベローズ53は、上端部53aが大径シリンダ部42に設けられ、下端部53bが大径ピストン45(上部45a)の外周壁に設けられている。
【0047】
図3に示すように、大径ピストン45は、ピストンシリンダ41の大径シリンダ部42に摺動自在に設けられている。
このため、大径ピストン45および大径シリンダ部42間に大径ピストン45を摺動させるための隙間46が形成されている。
この隙間46を介して大径シリンダ部42に液密部57が連通されている。
【0048】
液密部57は、大径、小径のピストン45,47およびピストンシリンダ41間で形成された密閉空間である。
この液密部57に流体(すなわち、作動油)13が密閉されている。
液密部57に作動油13が密閉されることで、大径ピストン45の大径端面45bが作動油13に接触され、小径ピストン47の小径端面47aが作動油13に接触されている。
【0049】
よって、大径端面45b(すなわち、大径ピストン45)の押圧力を作動油13を介して小径端面47a(すなわち、小径ピストン47)に伝えることができる。
ここで、大径端面45bの面積S1は小径端面47aの面積S2より大きい。
これにより、大径ピストン45が矢印方向に下降した際に、小径ピストン47を大径ピストン45の下降量より大きく下降させることができる。
換言すれば、大径ピストン45の下降量より小径ピストン47の下降量を大きくできる。
【0050】
また、大径ピストン45は、圧電体51の下端部51aに連結(接触)されている。
よって、圧電体51の伸長量を液密部57で増幅させて小径ピストン47に伝えることができる。小径ピストン47にはバルブ手段71が設けられている。
【0051】
すなわち、圧電体51は、大径ピストン45、液密部57および小径ピストン47を介してバルブ手段71に連結されている。
このように、圧電体51およびバルブ手段71間に大径ピストン45、液密部57および小径ピストン47を介在させることでバルブ手段71の移動量を十分に確保することができる。
【0052】
図2に示すように、液密部57は、連通路61を経てピストンケース34内のバルブ収納空間83に連通されている。
バルブ収納空間83は、ピストンケース34のピストン開口部82を経て上流体室31に連通されている。
すなわち、液密部57は連通路61、バルブ収納空間83およびピストン開口部82を経て上流体室(すなわち、上下の流体室31,32のうち小径ピストン47側の流体室)31に連通されている。
【0053】
図3に示すように、連通路61は、壁部34bのうち小径シリンダ部43の近傍部位34fに小径シリンダ部43の軸線方向に向けて設けられている。
この連通路61は、連通路開閉手段65の開閉ロッド67で開閉可能に形成されている。
具体的には、連通路61は、液密部57に連通する小径貫通孔62と、小径貫通孔62の上端部62aに形成された座部63と、小径貫通孔62の下端部62bに連通する大径貫通孔64とを有する。
【0054】
小径貫通孔62は、開閉ロッド67に備えたロッド部98のロッド径より小径に形成された貫通孔である。
小径貫通孔62を小径に形成することで、液密部57の作動油13を連通路61を経てバルブ収納空間83に適量だけ流出させることができる。
【0055】
座部63は、小径貫通孔62(上端部62a)の周囲に形成された凹状の部位である。
この座部63は、ロッド部98の先端部98aを受入れ(保持)可能で、かつ、ロッド部98の先端部98aが接触可能に形成されている。
よって、ロッド部98の先端部98aを座部63に接触させることで小径貫通孔62を座部63で閉じる(閉塞させる)ことができる。
【0056】
大径貫通孔64は、小径貫通孔62より大径に形成された貫通孔である。
この大径貫通孔64は、下端部64aがバルブ収納空間83に連通されている。
バルブ収納空間83は、前述したように、図2に示す下部34cのピストン開口部82を経て上流体室31に連通されている。
よって、大径貫通孔64は、バルブ収納空間83、ピストン開口部82を経て上流体室31(図2参照)に連通されている。
【0057】
大径貫通孔64を小径貫通孔62より大径に形成することで、作動油13が大径貫通孔64を流れる際に、大径貫通孔64で形成された流路の抵抗(流路抵抗)を小さく抑えることができる。
よって、大径貫通孔64を小径貫通孔62より大径に形成することで、液密部57の作動油13を連通路61を経てバルブ収納空間83に適量だけ流出させることができる。
これにより、流体通路86に作動油13を円滑に流すことが可能になり、減衰力可変ダンパ10の減衰力を好適に確保できる。
連通路61の上方に連通路開閉手段65が設けられている。
【0058】
連通路開閉手段65は、大径ピストン45に取り付けられることで大径ピストン45と連動可能に設けられている。
この連通路開閉手段65を大径ピストン45に連動させることで、連通路開閉手段65を開放位置P1および閉塞位置P2(図4参照)間で移動させることができる。
開放位置P1は連通路61を開放する位置、閉塞位置P2は連通路61を閉塞する位置である。
このように、連通路開閉手段65を大径ピストン45に連動可能とすることで連通路61を開閉することができる。
【0059】
この連通路開閉手段65は、大径ピストン45に設けられた収納シリンダ部66と、収納シリンダ部66に摺動自在に設けられた開閉ロッド67と、開閉ロッド67をロッド規制位置P3に位置決め可能なロッド規制部68と、ロッド規制部68に開閉ロッド67を保持可能なロッド付勢手段69とを備えている。
【0060】
収納シリンダ部66は、大径ピストン45のうち連通路61の上方部位45cに設けられ、大径ピストン45の軸線に沿って形成された収納空間である。
収納シリンダ部66の下端部66aに突出孔96が設けられている。
突出孔96は、連通路61と同軸上に形成されている。
【0061】
開閉ロッド67は、収納シリンダ部66に上下方向に摺動自在に収納された摺動ピストン97と、摺動ピストン97から下方に向けて突出されたロッド部98とを備えている。
ロッド部98は、摺動ピストン97の中央から外側にオフセットされた部位97aから下方に向けて突出され、先端部98aが半球状に形成されている。
このロッド部98は、突出孔96を経て連通路61に向けて突出されることで、連通路61と同軸上に配設されている。
【0062】
ロッド規制部68は、大径ピストン45のうち摺動ピストン97の下方部位に設けられ、摺動ピストン97が上方から当接可能な部位である。
ロッド規制部68に摺動ピストン97が当接することにより、ロッド部98がロッド規制位置P3に位置決めされる。
ロッド規制位置P3は、ロッド部98を大径ピストン45から連通路61に向けて所定量だけ突出可能な位置である。
【0063】
ロッド付勢手段69は、大径ピストン45の収納シリンダ部66に収納された(設けられた)圧縮ばねである。以下、ロッド付勢手段69をロッド押圧ばね69として説明する。
ロッド押圧ばね69は、収納シリンダ部66の天井部位66bおよび摺動ピストン97間に圧縮された状態で収納されている。
【0064】
よって、摺動ピストン97がロッド押圧ばね69のばね力でロッド規制部68に当接された状態(保持された状態)に付勢されている。
すなわち、ロッド押圧ばね69のばね力で摺動ピストン97がロッド規制位置P3に位置決めされ、かつ、ロッド部98が開放位置P1に位置決めされている。
【0065】
ここで、圧電体51に電圧を印加しない状態(すなわち、未印加状態)において大径ピストン45が待機位置P4に保持されている。
この状態で、ロッド部98の先端部98aが連通路61の座部63から離れて上方の開放位置P1に配置されている。
よって、液密部57が連通路61を経てバルブ収納空間83に連通されている。
【0066】
つぎに、連通路開閉手段65で連通路61を閉じた(閉塞した)状態を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、圧電体51に電圧を印加した状態(すなわち、印加状態)において大径ピストン45が押圧位置P5に保持されている。
この状態で、ロッド部98の先端部98aが連通路61の座部63に当接して閉塞位置P2に配置される。
ロッド部98の先端部98aが連通路61の座部63に当接することで、連通路61がロッド部98の先端部98aで閉塞されて液密部57が密閉状態に保たれる。
【0067】
よって、大径端面45b(すなわち、大径ピストン45)の押圧力を液密部57の作動油13を介して小径端面47a(すなわち、小径ピストン47)に伝えることができる。
小径ピストン47にはバルブ手段71が設けられている。
これにより、大径ピストン45で小径ピストン47を移動させてバルブ手段71で複数の流体通路86(図2参照)を閉塞することができる。
【0068】
図3、図4に示すように、連通路開閉手段65の開閉ロッド67を大径ピストン45に摺動自在に設けることで、大径ピストン45とともに開閉ロッド67を移動させることができる。
これにより、圧電体51に電圧を印加しない状態において、開閉ロッド67を座部63から離して連通路61を開放することができる。
一方、圧電体51に電圧を印加した状態において、開閉ロッド67を座部63に当接させて連通路61を閉塞することができる。
【0069】
このように、連通路開閉手段65を大径ピストン45に連動させることで連通路61を確実に開くことができる。
ここで、減衰力可変ダンパ10に外力が作用して減衰力可変ダンパ10が伸縮動作した際に、上下の流体室31,32(図2参照)に圧力変動が発生し、発生した圧力変動が連通路61の開閉に影響を与える虞がある。
【0070】
そこで、連通路開閉手段65を大径ピストン45に連動させて連通路61を確実に開くようにした。よって、上下の流体室31,32に発生した圧力変動の影響を受けることなく連通路61を開くことができる。
このように、圧力変動の影響を受けることなく連通路61を開くことで、圧電体51の伸縮に同期させて連通路61を確実に開くことができる。
【0071】
よって、圧電体51への電圧の印加を解除した状態において、液密部57に連通路61を経て作動油13を良好に導いて、液密部57に作動油13を好適に蓄えることができる。
これにより、圧電体51に電圧を印加させる状態に切り替えた際に、大径ピストン45の摺動に伴う力(すなわち、圧電体51の変位量)を液密部57の作動油13で増幅させて小径ピストン47に伝えることができる。
したがって、小径ピストン47に設けられたバルブ手段71で流体通路86(図2参照)の開閉状態を良好に調整することが可能になり、減衰力可変ダンパ10の減衰力を好適に変えることができる。
【0072】
さらに、連通路開閉手段65(すなわち、収納シリンダ部66、開閉ロッド67、ロッド規制部68およびロッド付勢手段69)を大径ピストン45に設けることで、連通路開閉手段65を大径ピストン45にまとめて設けることができる。
これにより、連通路開閉手段65をコンパクトにまとめることが可能になり、減衰力可変ダンパ10の構成の簡素化を図ることができる。
【0073】
加えて、大径ピストン45は大径に形成された部材である。
この大径に形成された大径ピストン45に連通路開閉手段65を設けることで、連通路開閉手段65を設ける箇所を容易に確保できる。
このように、連通路開閉手段65を設ける箇所を容易に確保可能とすることで設計の自由度を高めることができる。
【0074】
図2に示すように、下壁部34dにピストン開口部82が設けられることで、下壁部34d内のバルブ収納空間83がピストン開口部82を経て上流体室31に連通されている。
また、底部34eに流体通路86が設けられることで、下壁部34d内のバルブ収納空間83が流体通路86を経て下流体室32に連通されている。
これにより、上流体室31が、ピストン開口部82、バルブ収納空間83および流体通路86を経て下流体室32に連通されている。
【0075】
流体通路86の上方にバルブ手段71が設けられている。
バルブ手段71は、小径ピストン47に筒状バルブ部72が支持軸73を介して連結されている。
筒状バルブ部72は、周壁が中空状の略円錐台状に形成され、周壁に設けられたバルブ開口部72aと、周壁の下端部で形成された閉塞端部72bとを有する。
【0076】
閉塞端部72bは、流体通路86を押圧することで流体通路86を閉塞可能な部位である。
この閉塞端部72bは、圧電体51に電圧を印加して圧電体51を伸長させた状態において流体通路86を押圧(当接)可能な部位である。
閉塞端部72bが流体通路86に押圧(当接)された状態において、閉塞端部72bで流体通路86を閉塞することができる。
【0077】
つぎに、圧電体51に電圧を印加して流体通路86をバルブ手段71で閉塞する例を図5〜図6に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、制御部22を制御して電源24から圧電体51に電圧を印加して圧電体51を矢印Aの如く伸長させる。
圧電体51が伸長することで大径ピストン45が矢印Bの如く下降する。
【0078】
図5(b)に示すように、大径ピストン45が下降することで、大径ピストン45とともに開閉ロッド67が矢印Bの如く下降する。
開閉ロッド67が下降することで、開閉ロッド67のロッド部98が連通路61の座部63に向けて矢印Bの如く移動する。
【0079】
図6(a)に示すように、ロッド部98の先端部98aが座部63に接触(当接)することにより、先端部98aで小径貫通孔62(すなわち、連通路61)を閉塞する。
よって、ロッド部98の先端部98aで連通路61を閉塞することで液密部57を密閉空間として液密部57の作動油13を密閉する。
【0080】
液密部57の作動油13を密閉することで、大径端面45b(すなわち、大径ピストン45)の押圧力を作動油13を介して小径端面47a(すなわち、小径ピストン47)に伝えることができる。
大径端面45bの面積S1は小径端面47aの面積S2より大きい。
よって、大径ピストン45が矢印Bの如く下降した際に、小径ピストン47を大径ピストン45の下降量より大きく矢印Cの如く下降させることができる。
【0081】
図6(b)に示すように、小径ピストン47を下降させることで、小径ピストン47とともにバルブ手段71(筒状バルブ部72)を矢印Dの如く下降する。
筒状バルブ部72が下降することで、筒状バルブ部72の閉塞端部72bを流体通路86に向けて押圧することができる。
閉塞端部72bを流体通路86に向けて押圧することで、閉塞端部72bで流体通路86を閉塞することができる。
【0082】
つぎに、圧電体51から電圧を解除して流体通路86を開放する例を図7、図8に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、制御部22を制御して圧電体51から電圧を解除する。
圧電体51から電圧を解除することで圧電体51を伸長状態から伸長前の状態に復帰するように矢印Eの如く収縮する。
【0083】
図7(b)に示すように、圧電体51が伸長状態から伸長前の状態に復帰することで大径ピストン45が矢印Fの如く上昇する。
大径ピストン45が上昇することで、大径ピストン45に追従して液密部57の作動油13が上昇する。
よって、液密部57の作動油13に追従して小径ピストン47が上昇する。
さらに、大径ピストン45が上昇することで、大径ピストン45とともに開閉ロッド67が矢印Fの如く上昇する。
【0084】
図8(a)に示すように、開閉ロッド67が上昇することで、開閉ロッド67のロッド部98が連通路61の座部63から離れる。
これにより、圧電体51に電圧を印加しない状態において、開閉ロッド67のロッド部98を座部63から離して連通路61を開放することができる。
【0085】
このように、開閉ロッド67を大径ピストン45に連動させることで、上下の流体室31,32(図1参照)に発生した圧力変動の影響を受けることなく連通路61を確実に開くことができる。
上下の流体室31,32の圧力変動は、減衰力可変ダンパ10に外力が作用した際に減衰力可変ダンパ10の伸縮動作で発生する。
連通路61を確実に開くことでバルブ収納空間83の作動油13を液密部57に矢印Gの如く良好に導くことができる。
【0086】
バルブ収納空間83は、流体通路86を経て下流体室32に連通されている。
よって、バルブ収納空間83などを経て下流体室32の作動油13を液密部57に矢印Gの如く良好に導くことができる。
よって、液密部57に作動油13を好適に蓄えることができる。
【0087】
図8(b)に示すように、大径ピストン45の上昇に追従して液密部57の作動油13が上昇し、この作動油13に追従して小径ピストン47が矢印Hの如く上昇する。
これにより、圧電体51への電圧の印加が解除された際に、大径ピストン45および小径ピストン47を変位前の位置に好適に戻すことができる。
【0088】
この状態から、圧電体51に電圧を印加させる状態に切り替えて大径ピストン45を下方に向けて押圧する。
ここで、液密部57に作動油13が好適に蓄えられている。
よって、大径ピストン45の摺動に伴う力(すなわち、圧電体51の変位量)を、液密部57の作動油13で良好に増幅させて小径ピストン47に伝えることができる。
これにより、小径ピストン47に設けられたバルブ手段71で流体通路86(図7(a)参照)の開閉状態を良好に調整することが可能になり、減衰力可変ダンパ10の減衰力を好適に変えることができる。
【0089】
ところで、図1に示す減衰力可変ダンパ10において、車両11の走行中に圧電体51に路面振動が反力として作用する。
圧電体51に路面振動が反力として作用することで、圧電体51が変位して圧電体51に電圧(電力)が発生する。
このように、圧電体51で発生させた電圧(電力)を電源24に蓄える(回生する)ことができる。
【0090】
つぎに、実施例2に係る減衰力可変ダンパ120を図9〜図11に基づいて説明する。
なお、実施例2の減衰力可変ダンパ120において実施例1の減衰力可変ダンパ10と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0091】
実施例2に係る減衰力可変ダンパ120について説明する。
図9に示すように、減衰力可変ダンパ120は、ピストンケース34の壁部34bに連通路124が設けられ、連通路124および小径ピストン47に連通路開閉手段131が設けられたもので、その他の構成は実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様である。
【0092】
図10に示すように、連通路124は、ピストンケース34の壁部34bのうち小径シリンダ部43の近傍部位34fに小径シリンダ部43の軸線方向に向けて設けられている。
この連通路124は、液密部57側に開口された上連通路125と、上連通路125の下方に設けられてバルブ収納空間83側に開口された下連通路126と、上連通路125および下連通路126間に設けられた収納シリンダ部127とを有する。
【0093】
上連通路125が液密部57側に開口され、下連通路126がバルブ収納空間83側に開口されることで、液密部57が連通路124でバルブ収納空間83に連通されている。
バルブ収納空間83は、実施例1で述べたように、流体通路86(図9参照)を経て下流体室32(図2参照)に連通されている。
【0094】
すなわち、連通路124は、液密部57を、バルブ収納空間83、および流体通路86を経て下流体室32に連通する通路である。
収納シリンダ部127は、上連通路125および下連通路126より大径に形成され、連通路開閉手段131の開閉ピストン132を摺動可能に収納する中空部である。
この収納シリンダ部127および小径ピストン47に連通路開閉手段131が設けられている。
【0095】
連通路開閉手段131は、収納シリンダ部127に摺動自在に設けられた開閉ピストン132と、開閉ピストン132をピストン規制位置P7に位置決め可能なピストン規制部133と、ピストン規制部133に開閉ピストン132を保持可能なピストン付勢手段134と、ピストン付勢手段134の付勢力に抗して開閉ピストン132をピストン規制部133から離間可能な押圧ロッド部(押圧部)135とを備えている。
【0096】
開閉ピストン132は、収納シリンダ部127において上下方向に摺動自在に設けられることで、収納シリンダ部127を上シリンダ部128と下シリンダ部129とに仕切る部材である。
開閉ピストン132には複数の貫通孔137が形成されている。複数の貫通孔137を経て上シリンダ部128および下シリンダ部129が連通されている。
よって、開閉ピストン132がピストン規制部133から離れた状態で、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が開放される。
【0097】
ピストン規制部133は、ピストンケース34の壁部34bのうち収納シリンダ部127の下方部位に設けられ、開閉ピストン132が上方から当接可能な部位である。
ピストン規制部133に開閉ピストン132が当接することにより、ピストン規制部133で複数の貫通孔137が閉塞される。
よって、開閉ピストン132がピストン規制部133に当接してピストン規制位置P7に位置決めされた状態で、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が閉塞される。
【0098】
ピストン付勢手段134は、収納シリンダ部127に収納され、収納シリンダ部127の収納頂部127aおよび開閉ピストン132間に設けられて開閉ピストン132を押圧するばねである。以下、ピストン付勢手段134をピストン押圧ばね134として説明する。
ピストン押圧ばね134は、開閉ピストン132を付勢することで開閉ピストン132をピストン規制部133に保持した状態に保つことができる。
【0099】
押圧ロッド部135は、小径ピストン47の左側部47bに設けられている。
小径ピストン47の左側部47bに押圧ロッド部135が設けられることで、押圧ロッド部135を小径ピストン47に連動させることができる。
この押圧ロッド部135は、水平ロッド141および鉛直ロッド142で略L字状に形成されている。
【0100】
水平ロッド141は、基端部141aが小径ピストン47の左側部47bに設けられ、基端部141aから小径ピストン47の外方に向けて突出されたロッドである。
水平ロッド141の先端部141bから上方に向けて鉛直ロッド142が突出されている。
【0101】
鉛直ロッド142は、開閉ピストン132に向けて鉛直状に突出され、連通路124および開閉ピストン132に対して同軸上に設けられている。
鉛直ロッド142は、下連通路126に挿通可能で、かつ、上端部142aが開閉ピストン132に下方から当接可能に形成されている。
【0102】
押圧ロッド部135を小径ピストン47に連動させることで、圧電体51(図9参照)に電圧を印加しない状態(未印加状態)において、鉛直ロッド142の上端部142aがピストン離間位置P8に配置される。
この状態において、鉛直ロッド142の上端部142aが開閉ピストン132に当接されている。
【0103】
よって、鉛直ロッド142の上端部142aがピストン離間位置P8に配置されることで、開閉ピストン132がピストン押圧ばね134の付勢力に抗してピストン規制部133から離間した位置(すなわち、ピストン離間位置P8)に配置される。
開閉ピストン132がピストン離間位置P8に配置されることで、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が開放される。
【0104】
つぎに、連通路開閉手段131で連通路124を閉じた(閉塞した)状態を図11に基づいて説明する。
図11に示すように、圧電体51に電圧を印加して大径ピストン45を押圧することで、圧電体51の押圧力が大径ピストン45および液密部57の作動油13を経て小径ピストン47に伝えられる。
よって、小径ピストン47が押下位置P9まで下降(移動)した状態に配置される。
【0105】
小径ピストン47に鉛直ロッド142が連動することで、鉛直ロッド142の上端部142aがロッド押下位置P10まで下降(移動)した状態に配置される。
鉛直ロッド142の上端部142aがロッド押下位置P10に配置されることで、上端部142aが開閉ピストン132から離間する(離れる)。
【0106】
よって、開閉ピストン132がピストン押圧ばね134の付勢力でピストン規制部133に保持(配置)した状態に保たれる。
これにより、ピストン規制部133で複数の貫通孔137が閉塞され、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が閉塞された状態に保たれる。
【0107】
図10、図11に示すように、押圧ロッド部135を小径ピストン47に設けることで、小径ピストン47とともに押圧ロッド部135を連動させることができる。
これにより、圧電体51に電圧を印加しない状態において、開閉ピストン132を押圧ロッド部135でピストン規制部133から離間させて連通路124を開放できる。
【0108】
一方、圧電体51に電圧を印加した状態において、押圧ロッド部135を開閉ピストン132から離間させて開閉ピストン132をピストン規制部133に当接できる。
これにより、ピストン規制部133で複数の貫通孔137を閉塞して、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)を閉塞できる。
【0109】
このように、押圧ロッド部135を小径ピストン47に連動させることで、実施例1と同様に、圧電体51の伸縮に同期させて連通路124を確実に開くことができ、液密部57に作動油13を良好に導くことができる。
よって、液密部57に作動油13を好適に蓄えることができる。これにより、大径ピストン45の摺動に伴う力(すなわち、圧電体51の変位量)を液密部57の作動油13で増幅させて小径ピストン47に伝えることができる。
【0110】
さらに、連通路開閉手段131のうち押圧ロッド部135のみを小径ピストン47に設け、その他の部材(すなわち、開閉ピストン132、ピストン規制部133およびピストン押圧ばね134)を連通路124に設けた。
よって、小径ピストン47に押圧ロッド部135を連動させることができる。
これにより、小径ピストン47に同期させて連通路124を開閉することができる。
【0111】
加えて、連通路開閉手段131を小径ピストン47および連通路124の二部材に分けて設けた。
これにより、連通路開閉手段131を設ける部位を決める際に選択範囲を広く確保でき、設計の自由度を高めることができる。
【0112】
つぎに、圧電体51に電圧を印加して流体通路86をバルブ手段71で閉塞する例を図12に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、制御部22を制御して電源24から圧電体51に電圧を印加して圧電体51を矢印Iの如く伸長させる。
圧電体51が伸長することで大径ピストン45が矢印Iの如く下降する。
【0113】
大径ピストン45が下降することで小径ピストン47が矢印Jの如く下降する。
小径ピストン47が下降することで、小径ピストン47とともに押圧ロッド部135が開閉ピストン132から離間する(離れる)方向に移動する。
【0114】
図12(b)に示すように、開閉ピストン132がピストン押圧ばね134の付勢力で矢印Jの如く下降する。
開閉ピストン132が下降することで、開閉ピストン132がピストン押圧ばね134の付勢力でピストン規制部133に当接してピストン規制位置P7に保持される。
よって、ピストン規制部133で複数の貫通孔137が閉塞され、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が閉塞される。
【0115】
連通路124を閉塞することで液密部57を密閉空間として液密部57の作動油13を密閉する。
液密部57の作動油13を密閉することで、大径端面45b(すなわち、大径ピストン45)の押圧力を作動油13を介して小径端面47a(すなわち、小径ピストン47)に伝えることができる。
大径端面45bの面積S1は小径端面47aの面積S2より大きい。
よって、大径ピストン45が矢印Iの如く下降した際に、小径ピストン47を大径ピストン45の下降量より大きく矢印Jの如く下降させることができる。
【0116】
小径ピストン47を下降させることで、小径ピストン47とともにバルブ手段71(筒状バルブ部72)を矢印Jの如く下降する。
筒状バルブ部72が下降することで、図9に示す筒状バルブ部72の閉塞端部72bを底部34eの流体通路86に向けて押圧することができる。
これにより、筒状バルブ部72の閉塞端部72bで流体通路86を閉塞することができる。
【0117】
つぎに、圧電体51から電圧を解除して流体通路86を開放する例を図13、図14に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、制御部22を制御して圧電体51から電圧を解除する。
圧電体51から電圧を解除することで圧電体51を伸長状態から伸長前の状態に復帰するように矢印Kの如く収縮する。
【0118】
圧電体51が伸長状態から伸長前の状態に復帰することで、大径ピストン45が矢印Kの如く上昇する。
大径ピストン45が上昇することで、大径ピストン45に追従して液密部57の作動油13が上昇する。
よって、液密部57の作動油13に追従して小径ピストン47が矢印Lの如く上昇する。
【0119】
図13(b)に示すように、小径ピストン47が上昇することで、小径ピストン47に連動して押圧ロッド部135が矢印Lの如く上昇する。
押圧ロッド部135が上昇することで、押圧ロッド部135の上端部142aが開閉ピストン132に当接する。
小径ピストン47が継続して上昇することで、ピストン押圧ばね134の付勢力に抗して押圧ロッド部135で開閉ピストン132を矢印Lの如く上昇させる。
【0120】
図14に示すように、開閉ピストン132が上昇することで、開閉ピストン132がピストン規制部133から離間したピストン離間位置P8に配置される。
よって、上シリンダ部128および下シリンダ部129が複数の貫通孔137を経て連通される。
これにより、開閉ピストン132をピストン離間位置P8に配置することで、収納シリンダ部127(すなわち、連通路124)が開放される。
【0121】
このように、押圧ロッド部135を小径ピストン47に連動させることで、連通路124を確実に開くことができる。
ここで、減衰力可変ダンパ120に外力が作用して減衰力可変ダンパ120が伸縮動作した際に、上下の流体室31,32(図2参照)に圧力変動が発生し、圧力変動が連通路124の開閉に影響を与える虞がある。
【0122】
そこで、押圧ロッド部135を小径ピストン47に連動させて連通路124を確実に開くようにすることで、上下の流体室31,32に発生した圧力変動の影響を受けることなく連通路124を開くことができる。
【0123】
よって、バルブ収納空間83の作動油13を下連通路126を経て収納シリンダ部127の下シリンダ部129に矢印Mの如く導くことができる。
下シリンダ部129に導いた作動油13を複数の貫通孔137を経て上シリンダ部128に矢印Nの如く導くことができる。
【0124】
上シリンダ部128に導いた作動油13を上連通路125を経て液密部57に矢印Oの如く良好に導くことができる。
すなわち、バルブ収納空間83の作動油13を連通路124や複数の貫通孔137を経て液密部57に矢印M〜矢印Oの如く良好に導くことができる。
【0125】
バルブ収納空間83は、図2に示すように、流体通路86を経て下流体室32に連通されている。
よって、図14に示すように、下流体室32の作動油13(図2参照)を、バルブ収納空間83、連通路124や複数の貫通孔137を経て液密部57に矢印M〜矢印Oの如く良好に導くことができる。
下流体室32の作動油13を液密部57に良好に導くことで、液密部57に作動油13を好適に蓄えることができる。
【0126】
これにより、大径ピストン45の摺動に伴う力(すなわち、圧電体51の変位量)を液密部57の作動油13で増幅させて小径ピストン47に伝えることができる。
したがって、小径ピストン47で連通路124の開閉状態を良好に調整することが可能になり、実施例1と同様に、減衰力可変ダンパ120の減衰力を好適に変えることができる。
【0127】
以上説明したように、実施例2の減衰力可変ダンパ120によれば、実施例1の減衰力可変ダンパ10と同様に、減衰力を好適に変えることができるなどの効果を得ることができる。
【0128】
なお、本発明に係る減衰力可変ダンパは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1で連通路開閉手段65を備え、前記実施例2で連通路開閉手段131を備えた例について説明したが、これに限らないで、連通路開閉手段65および連通路開閉手段131の両方の手段を備えることも可能である。
【0129】
また、前記実施例1,2で示した減衰力可変ダンパ10,120、車両11、シリンダ12、ピストン組立体14、ピストンケース34、ピストンシリンダ41、大径シリンダ部42、小径シリンダ部43、大径ピストン45、小径ピストン47、圧電体51、液密部57、連通路61,124、連通路開閉手段65,131、開閉ロッド67、ロッド規制部68、ロッド押圧ばね69、流体通路86、開閉ピストン132、ピストン規制部133、ピストン押圧ばね134および押圧ロッド部135などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、車両の懸架装置に用いられ、シリンダ内のピストンを摺動させることにより減衰力を可変可能な減衰力可変ダンパを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0131】
10,120…減衰力可変ダンパ、11…車両、12…シリンダ、13…作動油(流体)、14…ピストン組立体、31…上流体室(第1流体室)、32…下流体室(第2流体室)、34…ピストンケース、41…ピストンシリンダ、42…大径シリンダ部、43…小径シリンダ部、45…大径ピストン(第1ピストン)、47…小径ピストン(第2ピストン)、51…圧電体、57…液密部、61,124…連通路、65,131…連通路開閉手段、67…開閉ロッド、68…ロッド規制部、69…ロッド押圧ばね(ロッド付勢手段)、86…流体通路、132…開閉ピストン、133…ピストン規制部、134…ピストン押圧ばね(ピストン付勢手段)、135…押圧ロッド部(押圧部)、P3…ロッド規制位置、P7…ピストン規制位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の懸架装置に用いられて圧電体への電圧の印加に応じて減衰力を変えることが可能な減衰力可変ダンパにおいて、
流体が充填されたシリンダと、
前記シリンダに摺動自在に収納されて前記シリンダを第1、第2の流体室に区画するとともに、前記第1、第2の流体室を連通する流体通路を有するピストン組立体と、
を備え、
前記ピストン組立体は、
前記シリンダに摺動自在に収納されたピストンケースと、
前記ピストンケース内に設けられ、中空状の大径シリンダ部および前記大径シリンダ部より断面積の小さい中空状の小径シリンダ部が軸線方向に連続して形成されたピストンシリンダと、
前記ピストンシリンダの大径シリンダ部に摺動自在に設けられ、前記圧電体に連結された大径の第1ピストンと、
前記ピストンシリンダの小径シリンダ部に摺動自在に設けられた小径の第2ピストンと、
前記第1、第2のピストンおよび前記ピストンシリンダ間で密閉空間が形成され、流体が密閉された液密部と、
前記液密部を、前記第1、第2の流体室のうち前記第2ピストン側の流体室に連通する連通路と、
前記連通路を開閉するように、前記第1ピストン、前記第2ピストンの少なくとも一方のピストンに連動可能に設けられた連通路開閉手段と、
を備え、
前記圧電体の伸縮に伴い前記第1ピストンを前記第2ピストンに向けて摺動し、前記第1ピストンの摺動に伴う力を前記液密部の流体を介して前記第2ピストンに伝えることで前記第2ピストンを摺動させて前記流体通路の開閉状態を調整することを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項2】
前記連通路開閉手段は、
前記第1ピストンに摺動自在に設けられ、前記連通路を開閉可能な開閉ロッドと、
前記第1ピストンに設けられ、前記開閉ロッドを前記第1ピストンから前記連通路に向けて突出させたロッド規制位置に位置決め可能なロッド規制部と、
前記第1ピストンに設けられ、前記ロッド規制部に前記開閉ロッドを保持した状態に付勢可能なロッド付勢手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の減衰力可変ダンパ。
【請求項3】
前記連通路開閉手段は、
前記連通路に摺動自在に設けられ、前記連通路を開閉可能な開閉ピストンと、
前記連通路を閉塞するピストン規制位置に前記開閉ピストンを位置決め可能なピストン規制部と、
前記ピストン規制部に前記開閉ピストンを保持した状態に付勢可能なピストン付勢手段と、
前記第2ピストンに設けられ、前記圧電体への未印加状態において前記開閉ピストンを前記ピストン付勢手段の付勢力に抗して前記ピストン規制部から離間した離間位置に配置可能な押圧部と、
を備え、
前記圧電体への印加状態において前記開閉ピストンを前記ピストン付勢手段の付勢力で前記ピストン規制部に配置可能に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の減衰力可変ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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