説明

渡し船

【課題】水の流れを利用し、対岸への移動を安全に往来する渡し船を提供する。又動力を使わない渡し船は大型船化が困難であった。
【解決手段】岸の堅固な固定物に取り付けたキングピン1と船の船首から船の長さの3分の1付近の甲板上に取り付けたキングピン7とを可動連結具6、ヨリモドシ5、けん引綱4を用いて連結。渡し船9(双胴船が基本)の船尾につけた複数の方向舵10の操舵により動力を使用せず流れを利用して安定した移動ができる。渡し船9の船首から船の長さの3分の1付近にキングピン7を付けた事により、従来のロープを使い流れを利用した渡し船より移動幅が格段に広くなった。双胴船を基本としたため河川の深さにも対応、安定している為大型船化をも可能にした。燃料を使わない為CO2を出さず環境にやさしい。模型船の実験ではロープの角度が45度以上の上流まで移動可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水の流れを利用し動力を使用せず、岸の固定物に連結したけん引綱と渡し船とを連結し、複数の方向舵を使用して操縦する渡し船である。
【背景技術】
【0002】
従来からの渡し船は動力、人力、風力等により対岸へ移動するものである。特許文献1
において舟首と陸の固定物とを結んだロープと舟首と舟尾に連動させた方向舵の操舵により動力を使用せず、安定した移動ができる舟とあるが左右への移動幅が少なく実用には適さない。また特許文献2においては浮体の側面にモヤイ締結具を設け該浮体の底面に水切、水切の背面側端部からモヤイ締結具と逆側に延伸する舵を設けたボートでは舵が固定されているため行きは良いが帰るのが至難のわざである。どちらも河川においては大型船化は無理である。
【特許文献1】特開2006−232246号公報
【特許文献2】特開2003−34290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のロープを使い川の流れを利用した渡し船はロープを渡し船の先端に付けけん引する構造のため移動幅が狭く又大型船化が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、岸の堅固な固定物に取り付けたキングピンと、また船の船首から船の長さの3分の1付近の甲板上に取り付けたキングピンとを可動連結具、ヨリモドシ、けん引綱を用いて連結する構造とした渡し船。
【0005】
第2の発明は、第1の発明においての渡し船を水の流れを利用して移動させるには、船
は双胴船とし、左右の船体の船尾にそれぞれの方向舵を設け、該左右の方向舵は連結棒の手段により連結して回動する舵とした。舵は船の方向と安定性をつかさどる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は動力を必要とせず水の流れを利用し対岸に接岸又元の岸に戻る事ができる渡し船である。そして船の船首から船の長さの3分の1付近にキングピンを取り付けて、けん引する事により移動幅が格段に広くなった。また連動した舵を付けた事により操縦が簡単で、河川の流れにも対応できる。船は双胴船で安定している。大型船化をも可能にしている。この渡し船は燃料を使わずCO2を出さない環境にやさしいものである。本発明の渡し船は経済性、安全性に優れ、渡し船以外にも利用効果は大きく期待できるものである。また川の中に堅固な固定物を作る事が可能であれば、その利用価値は大きく躍進できることが期待できる。そして図10の様に空中ケーブルを利用すれば川幅の制限も大きく緩和されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであるが、本発明の構成及び使用時の作用について説
明する。
【0008】
本発明の使用形態は、岸Bの堅固な固定物Cにキングピン1を取り付ける。そのキング
ピン1に可動連結具2を結合させる。可動連結具2はキングピン1と結合されても左右に回転できる様になっている。けん引綱4のねじれを防ぐ為ヨリモドシ3を入れそのヨリモドシ3からけん引綱4へとつなぐ。けん引綱4は船の方に入り船側のヨリモドシ5へとつながれ可動連結具6へと続く。この可動連結具6は船のキングピン7と結合されるがこれもまた左右に回転できる構造となっている。本発明の船に船首から船の長さの3分の1付近に取り付けたキングピン7をけん引する事で移動幅が格段に広くなった。船は双胴船でそれぞれの船尾に方向舵10を設けその左右の方向舵10は連結棒11でつながれ連動する構造となっている。本発明の渡し船9は船尾の連動舵の操作で水の流れを利用して、対岸に到達し又元の岸に戻る事ができる。なお、船の形が前後左右が対称の作りであってその中心と重心がほぼ同一であれば船首から3分の1付近が最良であるが、船の中心と重心がずれている場合は船首から4分の1から2分の1未満で良い位置を見つけるのが船の性能を充分に発揮させる事になる。船首から2分の1近くになると少しの舵取りでも急激な方向変換をするので接続各部に大きな負荷がかかるので避けなければならない。
【実施例】
【0009】
以下、本発明について図面を参照にしながら、主に、本発明の構成及び使用時の作用に
ついて説明する。図1の状態は渡し船が左の桟橋に停船を維持し続けている状態である。
【0010】
図1においては岸Bの堅固な固定物Cに取り付けたキングピン1に可動連結具2を連結、可動連結具2は左右に回転できるものでその可動連結具2にヨリモドシ3をつなぐ、ヨリモドシ3にけん引綱4を連結した物である。けん引綱4は岸Bの堅固な固定物Cと渡し船9のキングピン7とをつなぐ物でロープ、ワイヤー等がある。船が大きくなれば岸Bの堅固な固定物Cと同様にけん引綱4の強度も増す必要がある。又、川幅が広くなれば対岸への距離が大きくなり船の移動幅もそれなりに必要になり必然的にけん引綱4の長さも長くなってくる。長くなればヨリモドシも必要になるだろう。可動連結具6は左右に回転できる物でキングピン7と連結されてその取り付け位置は最も重要で本発明の発想の原点である。渡し船9は双胴船を基本としている。方向舵10は双胴船の船尾にそれぞれの方向舵10を設け連結棒11により連結され連動する。双胴船R船体13は川上に向かって右側の船体を指す。双胴船L船体14は川上に向かって左側の船体を指す。Aは水流を、Bは岸、Sは桟橋をあらわしている。図1は渡し船が左斜めになっており船体の右側に水流圧を受けて左へ押され桟橋に押し付けられている状態である。この時の方向舵10は右向きで停船を維持し続けている。
【0011】
図2はキングピン1と可動連結具2、ヨリモドシ3からけん引綱4の側面図である。岸Bの堅固な固定物Cに取り付けた物と、船の船首から3分の1付近の甲板8上に取り付けた物とはほぼ同じ物を使用し左右に回転出来る様になっている。使う材質は船が大きくなれば負荷が大きくなりおのずと強度を増す必要がある。
【0012】
図3は渡し船9(双胴船)の後方から見た図である。中心線延長にキングピン7があり左右の船体14、船体13の後方に方向舵10が方向舵回転軸12に固定されつつ船体後部に取り付けられている。左右の方向舵10は連結棒11の手段により連結し、該方向舵10を連動させて回動するようになっている。
【0013】
図4は船体後部に取り付けられた連動舵を上から見た平面図である。舵20は方向舵回転軸に直結、舵20は小さくても良いこの船の操作がしやすい点を説明する。舵20は少しずつ切るのが大切まず舵20を少し切る、方向舵10に少しの水流圧を受けるすると船尾が少し動くその時点で方向舵10は水流Aと平行になり方向舵10に受ける水の抵抗がほとんど無くなってしまうからである。一度に大きく舵20を切ろうとしない事が操作の大切なところである。連結棒11は水に浸からない様に上部に付ける必要がある。連結棒11は小型船向きと言えよう。
【0014】
図5は連動舵の他の方法として、左右の方向舵回転軸12を同じ回転するように連結連動させる方法もある。左右の方向舵回転軸12の上部にスプロケット18を付けチェーン19で1周させて回動させる。これは大型船向き。
【0015】
図6は渡し船9(双胴船)を右から見た側面図である。注目すべきはキングピン7が船首から3分の1付近の甲板8上に付けられていることである。この支点はけん引されている力が一点に集中されており、舵取りの際の方向舵10の圧力が敏感に伝わり船体の方向変換に素早く反応して向きを変えた途端に船体そのものが舵の働きをして、進むべき方向へと移動して行く。けん引綱4で注意すべき点は、船体に触れない様にする事と水面に着けない様にする事である。
【0016】
図7から図10までを使って渡し船9を右に移動させる場合の説明をする。
【0017】
図7について、船尾につけた方向舵10を左向きにさせる。水流Aは方向舵10の右
側に当たり方向舵10は左へ押される力が加わりその方向舵10は船尾に取り付けらている為、船尾が左へ、左へ移動し始める。図8では渡し船9本体がキングピン7を中心に右旋回を始める。右旋回を始めた船体は図9へと移り、水流Aに対して右斜めになった船体は左側に大きな水流圧が当り、川下へ流される力が働くが、船体はけん引綱4で位置を保持し今度は船全体が舵の作用をし渡し船9そのものが舵の働きをして右へ、右へと移動する。そして図10へと続き船体はけん引綱4で保持されつつ岸Bの堅固な固定物Cに取り付けられたキングピン1を中心にけん引綱4の長さで円を描く様に右へ、右へと移動、今度は川上へ、川上へと移動して行く。そして対岸へ到達できる。
【0018】
左へ移動する場合は、概ねその逆と考えれば良い。実験結果について図7から図8について方向舵10の作用で船尾が左へ移動した後、右斜めになった船体に左側面に大きな水流圧が加わり、キングピン7を基点に川上側の船体左側面に3分の1の圧力があり、川下側に3分の2の圧力が加わり、方向舵10の作用により船尾が左へ移動したにもかかわらず3分の2の圧力で船尾が押し戻されるのではないかと疑問が出て、模型船の実験では何の問題も無く右へ、右へ移動しました。船体のカーブの具合で川上側に当った水流Aは左へと方向を変えて流れ川下側にはあまり当らないのではないかと考えられる。又流れに対して船の傾きが25度以内で運行した方がけん引綱4に与える張力負荷が少なく感じられる。模型船の実験ではけん引綱4の角度が45度以上になるほど川上へ移動した。
【0019】
他の実施例について、図11をもとに説明すると大型船化には不向きかも知れないが、川幅が広い所には有効。川岸の両側にケーブルタワー17を建て空中ワイヤーケーブル15を張り渡す。このケーブルに空中動滑車16を通す。この空中動滑車16にヨリモドシ3をつけてけん引綱4へと続く、あとは本発明の渡し船9を連結して運航すれば良い。空中ワイヤーケーブル15で注意する点はワイヤーにはある程度の緊張感を持った引っ張る力が必要でダラッとたるませてはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】渡し船が左側桟橋に停船し続けている状態の図
【図2】キングピン、可動連結具、ヨリモドシの側面図
【図3】渡し舟の後方からの側面図
【図4】方向舵と連結棒の平面図
【図5】方向舵回転軸をチェーンを使って回動させる図
【図6】渡し船の右側面図
【図7】方向舵を左へ向けた図
【図8】船尾が左へ移動した図
【図9】船体が右へ移動している図
【図10】右へ移動しながら川上へ向かって行き対岸に着いた図
【図11】岸と対岸を空中ケーブルを渡した時の渡し船の参考図
【符号の説明】
【0021】
1 岸の堅固な固定物に取り付けたキングピン
2 岸側の可動連結具
3 ヨリモドシ
4 けん引綱
5 ヨリモドシ
6 船の可動連結具
7 船のキングピン
8 船の甲板
9 渡し船(双胴船)
10方向舵
11連結棒
12方向舵回転軸
13渡し船(双胴船R船体))
14渡し船(双胴船L船体
15空中ケーブル
16空中動滑車
17ケーブルタワー
18スプロケット
19チェーン
20舵
A 水流
B 岸
S 桟橋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流れを利用して対岸に接岸しまた元の岸に戻る事ができる渡し船において、岸の堅固な固定物に取り付けたキングピンと、船の船首から船の長さの3分の1付近の甲板上に取り付けたキングピンとを、可動連結具、ヨリモドシ、けん引綱を用いて連結させたことを特徴とする渡し船。
【請求項2】
請求項1においての渡し船を、水の流れを利用して移動させるには船は双胴船とし、そ
れぞれの船体の船尾にそれぞれの方向舵を取り付け、該左右の方向舵は連結棒の手段によ
り連結し、該方向舵を連動させて回動する舵を特徴とする渡し船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−69892(P2010−69892A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235887(P2008−235887)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【特許番号】特許第4270407号(P4270407)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(308029046)