説明

渦巻形ガスケット

【課題】ガスケット本体の厚さが1.6〜2.0mmと従来のガスケットより非常に薄いにもかかわらず、シール性が良好となる渦巻形ガスケットを提供すること。
【解決手段】略V字断面の金属製フープ材と膨張黒鉛テープとが重ねて巻き回されてなり、両側面がシール面に当接する受圧面となるガスケット本体部を有する渦巻形ガスケットであって、下記(1)〜(4)の要件;
(1)該ガスケット本体厚さ(t)1.6〜2.0mm、(2)該金属製フープ材厚さ(t)0.14〜0.18mm及び略V字断面における金属製フープ材の幅(t)1.4〜1.7mm、(3)はみ出し量(t)−(t)= 0.1 〜 0.4mm、
(4)巻き回し前の膨張黒鉛テープ厚さ0.3〜0.45mm、(5)渦巻きガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)0.05〜0.47mmを満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧の機器や配管の継手部に使用され、水、油、蒸気、ガス等の流体をシールする目的で使用される渦巻形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻形ガスケットは、金属薄板を略V字断面に絞り加工したフープ材とフィラー材とが重ねて巻き回されてなり、両側面がシール面に当接する受圧面となるガスケット本体部を有する構成を基本形としたものが知られている。また、締付圧力によるガスケット本体の内側への変形の防止やセンタリングを目的として、金属製補強リングをガスケット本体の内側や外側あるいは両方に設けた内輪付、外輪付、内外輪付等と称される種々のタイプが知られており、一般に高温高圧用ガスケットとして広く使用されている(例えば特開2002−317874号公報)。
【0003】
フィラー材の種類としては、従来は石綿ペーパーを帯状にスリットした石綿テープが一般的であったが、石綿繊維が原因と推測されている健康障害が社会問題となって石綿の使用が禁止されたため、現在は石綿以外の無機繊維を主原料としたノンアスベストペーパーをスリットしたものや膨張黒鉛テープが使われている。
【0004】
渦巻形ガスケットはガスケット本体部の厚さが、3.2mm、4.5mm、6.4mmのものが使用されており、一般的にはガスケット本体厚さ4.5mmのガスケットが広く使用されている。このような渦巻形ガスケットは石油精製、石油化学プラント、発電所、製鉄所などにおいて、配管の接続場所等で流体をシールするために使用される。
【0005】
従来は、上記用途として石綿とゴム等を用いて製作されたシートガスケットが多用されてきたが、石綿の使用が禁止されたため、渦巻形ガスケットが代替材料として使用されるようになってきており、特に厚さがシートガスケットと同等の1.6〜2.0mm程度の渦巻形ガスケットが注目されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−317874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガスケット本体の厚さが1.6〜2.0mmと従来のシートガスケットと同様の薄さを有する渦巻形ガスケットは、締め付けによる圧縮量が大きく採れず、優れたシール性能が得られにくいという問題がある。また、本体厚さ4.5mmのガスケットの使用部材やフィラーはみ出し量などの諸次元の寸法を、例えば40%縮小ものとしたとしても、シール性が必ずしも良好となるものではないという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、ガスケット本体の厚さが1.6〜2.0mmと従来のガスケットより非常に薄いにもかかわらず、シール性が良好となる渦巻形ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、薄型の渦巻形ガスケットにおいて、ガスケット本体厚さ、金属製フープ材厚さ、略V字断面における金属製フープ材の幅及び膨張黒鉛テープ厚さがシール性に大きく影響すること、そしてこれらの寸法が所定の範囲にあるものが、シール性が良好となること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、略V字断面の金属製フープ材と膨張黒鉛テープとが重ねて巻き回されてなり、両側面がシール面に当接する受圧面となるガスケット本体部を有する渦巻形ガスケットであって、下記(1)〜(4)の要件;
(1)該ガスケット本体厚さ(t)1.6〜2.0mm、
(2)該金属製フープ材厚さ(t)0.14〜0.18mm及び略V字断面における金属製フープ材の幅(t)1.4〜1.7mm、
(3)はみ出し量(t)−(t)= 0.1 〜 0.4mm、
(4)巻き回し前の膨張黒鉛テープ厚さ0.3〜0.45mm、
(5)渦巻きガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)0.05〜0.47mm、を満たすことを特徴とする渦巻形ガスケットを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の渦巻形ガスケットによれば、従来のガスケットより顕著に薄いにもかかわらず、シール性が良好となる。このため、石綿とゴム等を用いて製作されたシートガスケットの代替品となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における渦巻形ガスケットの断面図である。
【図2】本実施の形態における渦巻形ガスケットの平面図である。
【図3】渦巻形ガスケットの受圧面に圧力Wが作用している状態を示す図である。
【図4】シール試験装置の概略図である。
【図5】外輪外れ試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態における渦巻形ガスケット10は、厚みの薄い、環状のものであり、対向するシール面間に装着されてシール機能を果たすものであり、略V字断面の金属製フープ材1と膨張黒鉛テープ2とが重ねて巻き回されてなり、両側面がシール面9に当接する受圧面5となるガスケット本体部Xを有するものである。
【0014】
また、渦巻形ガスケット10は、下記(1)〜(4)の要件;
(1)該ガスケット本体厚さ(t)が1.6〜2.0mm、
(2)該金属製フープ材厚さ(t)が0.14〜0.18mm及び略V字断面における金属製フープ材の幅(t)が1.4〜1.7mm、
(3)はみ出し量(t)−(t)が 0.1 〜 0.4mm、
(4)巻き回し前の膨張黒鉛テープ厚さ0.3〜0.45mm、
(5)渦巻きガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)0.05〜0.47mm、を満たす。
【0015】
ガスケット本体厚さ(t)は、略V字断面における膨張黒鉛テープ2の幅寸法でもある。ガスケット本体厚さ(t)が1.6mm未満であると、金属製フープ材の幅寸法を小さくせざるを得ず、金属製フープ材の略V字断面形状への精度の高い加工が困難になるとともに、締め付けによる圧縮量が大きく採れず、優れたシール性能が得られにくいという問題がある。また、2.0mmを越えるものは、石綿とゴム等を用いて製作されたシートガスケットの代替品となり得ず、本発明の薄型渦巻形ガスケットの提供という目的から外れる。
【0016】
金属製フープ材厚さ(t)は0.14〜0.18mmである。金属製フープ材厚さ(t)は、略V字断面における金属製フープ材厚さである。金属製フープ材厚さ(t)は略V字断面形状へ絞り加工する前のテープ状形状における厚みと概ね同じである。また、金属製フープ材厚さは、渦巻き方向及びガスケットの厚み方向のいずれの箇所においても概ね同じ厚み、すなわち均一である。金属製フープ材厚さ(t)が0.14mm未満であると、内外輪厚さ近くまで締め付けた時でも優れたシール性を得るために必要な締め付け面圧が確保できなくなる。また、0.18mmを越えると、所定締め付け面圧時に良好なシール性を得るために必要な圧縮量が確保できなくなる。金属製フープ材としては、SUS304、SUS304Lなどのステンレス鋼帯を使用すればよい。
【0017】
略V字断面における金属製フープ材の幅(t)は1.4〜1.7mmである。該金属製フープ材の幅(t)は、渦巻き形ガスケットとしての厚みを言う(図1参照)。略V字断面における金属製フープ材の幅(t)が1.4mm未満であると、金属製フープ材の略V字断面形状への精度の高い加工が困難になるとともに、締め付けによる圧縮量が大きく採れず、優れたシール性能が得られにくいという問題がある。また、1.7mmを越えると、はみ出し量が少なくなり、シール性が悪くなるという問題がある。
【0018】
はみ出し量(t)−(t)は 0.1 〜 0.4mmである。このはみ出し量は、一方の側におけるはみ出し量と他方の側におけるはみ出し量との合計量である。また、一方の側におけるはみ出し量と他方の側におけるはみ出し量は同じである。はみ出し量(t)−(t)が 0.1mm未満、すなわち、片側のはみ出し量が0.05mm未満では、ガスケット本体の表面への膨張黒鉛の露出が少なくなり、シール性能が悪くなり、はみ出し量(t)−(t)が 0.4mmを越えると、すなわち、片側のはみ出し量が0.2mmを越えると、所定面圧で締め付けた際、表面に露出した膨張黒鉛の部分で実体漏れが多くなるため、シール性能が低下する。
【0019】
巻き回し前の膨張黒鉛テープ厚さは、略V字断面の金属製フープ材と膨張黒鉛テープとが重ねて巻き回される前の状態の厚さ、すなわち、単独で存在する膨張黒鉛テープの厚みである。膨張黒鉛としては、従来のガスケット本体厚さ4.5mmの渦巻形ガスケットで使用されていた膨張黒鉛と同様の材質のものが使用できる。膨張黒鉛テープ厚さが0.3mm未満では、渦巻形ガスケット作製後、膨張黒鉛フィラーの表面への露出量が少なくなるため、シール性能が悪くなり、一方、0.45mmを超えると、締め付けた際、表面に露出した膨張黒鉛の部分が実体漏れが多くなり、シール性能が悪くなる。
【0020】
渦巻きガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)、すなわち、略V字断面の金属製フープ材と膨張黒鉛テープとが重ねて巻き回されて形成されたガスケット本体における膨張黒鉛フィラー厚さ(t)は0.05〜0.47mmである。ガスケット本体における膨張黒鉛フィラー厚さ(t)がこのような範囲となる理由は、成巻すると膨張黒鉛テープ゜は全体的には圧縮されて薄くなり、また均一ではなく、最も薄いところは0.05mm程度になり、一方、その分の膨張黒鉛が流れて成巻前の厚みよりわずかながら厚くなるところもあるからである。
【0021】
渦巻形ガスケット10は、ガスケット本体部Xの外周に、金属製フープ材が巻き回された外周空巻き部7を形成している。外周空巻き部7として使用する金属製フープ材は、ガスケット本体部Xを構成する金属製フープ材と同じ材質、同じ形状であってもよく、また、材質や形状が異なっていてもよい。
【0022】
渦巻形ガスケット10は、ガスケット本体部Xの内周に、金属製フープ材が巻き回された内周空巻き部8を形成している。内周空巻き部8として使用する金属製フープ材は、ガスケット本体部Xを構成する金属製フープ材と同じ材質、同じ形状であってもよく、また、材質や形状が異なっていてもよい。
【0023】
渦巻形ガスケット10は、空巻き部7の外周に、ガスケット本体部Xの厚み(t)より小の厚みを有する外輪4を形成している。外輪4は、締付圧力によるガスケット本体の内側への変形の防止やセンタリング機能を有している。外輪4は、金属板を使用すればよい。この外輪4の厚みは1.0〜1.6mmで、且つガスケット本体部Xの厚みより少なくとも0.3mm小さくするのがよい。外輪4の厚みが小さ過ぎると、外輪4が空巻き部7から外れ易くなる。また、外輪4の厚みが大きすぎてガスケット本体部Xの厚みに近くなると、適切な圧縮量が確保できず、シール性能が悪くなる。
【0024】
渦巻形ガスケット10は、内周空巻き部8の内周に、ガスケット本体部Xの厚み(t)より小の厚みを有する内輪3を形成している。内輪3は、締付圧力によるガスケット本体の内側への変形の防止やセンタリング機能を有している。内輪3は、外輪3と同様の金属板を使用すればよい。この内輪3の厚みは1.0〜1.6mmで、且つガスケット本体部Xの厚みより少なくとも3mm小さくするのがよい。内輪3の厚みが小さ過ぎると、内輪3が内周空巻き部8から外れ易くなる。なお、符号6は貫通孔であり、シール面9、9間に設置することで、流体が流れる流路となる。
【0025】
次に、渦巻形ガスケット10の製造方法を説明する。渦巻形ガスケット10の製造方法は、従来の呼び寸法4.5mmの渦巻形ガスケットの製造方法と同様である。先ず所定の厚さ、所定の幅寸法の金属製フープ材を略V字形に絞り加工する。この際、金属製フープ材の厚みは絞り加工の前後で変化しないが、金属製フープ材の幅は絞り加工により約0.4〜0.5mm小さくなる。次いで、略V字形断面の金属製フープ材は、幅が略V字形断面の金属製フープ材の幅より0.2〜0.6mm程度薄い金属製の内輪3の外周部にスポット溶接し、金属製フープ材だけを2〜5周巻いて内周空巻き部8を形成する。次いで、フィラー材として所定の厚さ、所定の幅寸法の膨張黒鉛テープを重ね合わせ、重ね合わせたまま所定寸法になるまで成巻してガスケット本体部Xを形成する。次いで、最後に金属製フープ材のみ2〜5周程度空巻きした後スポット溶接して外周空巻き部7を形成する。この時、ガスケットの本体部Xの厚さを所定の寸法になるように押駒すきまを調整し、膨張黒鉛のはみ出し量を所定の寸法とする。最後に、所定の厚さの金属板(外輪4)を装着して完成させる。
【0026】
次に、渦巻形ガスケット10の使用方法を説明する。渦巻形ガスケット10は、石油精製、石油化学プラント、発電所、製鉄所などにおいて、配管の接続場所、すなわち、対向するシール面9、9間に装着されて流体をシールするために使用される(図3参照)。なお、図3は、締め付け荷重Wが作用して、膨張黒鉛2のはみ出し部分が潰れている状態を示す。更に所定の締め付け面圧まで締め付けると、金属製フープ材1が撓み、適度な圧縮量が得られ、良好なシール性が得られる。
【0027】
本発明の渦巻形ガスケット10は、シール面9と受圧面X間の締め付け面圧39.2〜78.5N/mmで使用した際、0〜1.0MPaの内圧に対して、漏洩量はほぼゼロである。
【0028】
本発明の渦巻形ガスケットは、上記内輪及び外輪付き渦巻形ガスケット(以下、「内外輪付き渦巻形ガスケット」とも言う。)以外に、内輪が省略された外輪付き渦巻形ガスケット、外輪が省略された内輪付き渦巻形ガスケット、内輪と外輪が省略された渦巻形ガスケットを含むものである。
【0029】
実施例
次ぎに実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0030】
石油学会規格「配管用うず巻形ガスケット」で定められた規格寸法のクラス150、2インチの内外輪付きタイプ膨張黒鉛フィラー渦巻形ガスケットの製造方法に準拠して作製した。すなわち、図1及び図2に示す構造の渦巻形ガスケットを作製した。呼び寸法は、内輪内径55.6mm、本体内径69.8mm、本体外径85.9mm、外輪外径104.9mmである。先ず厚さ0.16mm、幅2.0mmのSUS304製フープ材を、略V字断面形に絞り加工した。このSUS304製フープを厚さ1.2mmのSUS304製内輪(内輪)の外周部にスポット溶接し、フープ材だけ3周巻いた後、フィラー材として厚さ0.38mm、幅3.3mmの膨張黒鉛テープを重ね合わせ、重ね合わせたものを、所定寸法になるまで渦巻き状に成巻しガスケット本体部Xを形成し、次いで最後にフープ材のみ3周空巻きした後、スポット溶接した。この時、ガスケットの本体部Xの厚さを1.8mmになるように押駒すきまを調整し、膨張黒鉛のはみ出し量は両側で0.2mm(片側0.1mm)とした。最後に、厚さ1.2mmのSUS304製外輪(外輪)を装着して渦巻形ガスケットを完成させた。
【0031】
得られた渦巻形ガスケットの製作条件及び成巻後の寸法を表1に示す。すなわち、ガスケット本体厚さ(t)1.8mm、略V字断面における金属製フープ材厚さ(t)0.16mm、略V字断面における金属製フープ材の幅(t)1.6mm、はみ出し量(t)−(t)0.2mm、渦巻形ガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)0.05〜0.39mmであった。また、得られた渦巻形ガスケットについて下記のシール試験を行なった。なお、表1中、金属製フープ材厚さ(mm)は、略V字断面加工前の状態における寸法を言うが、略V字断面加工後の金属製フープ材厚さ(t)もこの加工前の厚みと略同じであった。
【0032】
(シール試験)
図4に示すシール試験装置を使用し、水上置換法により評価した。すなわち、JPI−7S−15適用規格(クラス150 2B)フランジ21を使用し、フランジ21間に渦巻形ガスケット10を挟み、ユニファイネジ22(5/8−11UNC)4本で面圧39.2N/mmまで締め付けて試験体とし、窒素ガスを1.0MPaの内圧で負荷したときの10分間の漏洩量を測定した。符号20は水槽である。なお、ユニファイネジによる試験体の締め付けは、トルクレンチで上記面圧となるように4段階で対角に締め付け、最終トルクで3回締め付けた。シール試験は2回行ない、1回目をN=1で、2回目をN=2で表示した。その結果を表1に示す。
【0033】
実施例2〜5及び比較例1〜8
表1に示す諸次元の渦巻形ガスケットを得た以外は、実施例1と同様の方法で作製した。その結果を表1に示す。また、成巻後の膨張黒鉛フィラーの厚みは、0.05〜0.39mm(実施例2〜5、比較例2、3、4、7及び8)、0.04〜0.26mm(比較例1及び5)、0.07〜0.53mm(比較例6)であった。
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果から、実施例1〜5はいずれもシール性が非常に良好であり、シール試験での漏洩がほぼゼロであった。一方、比較例1〜8はいずれも漏洩が見られた。このように、薄型の渦巻形ガスケットにおいて、ガスケット本体厚さ、金属製フープ材厚さ、略V字断面における金属製フープ材の幅及び膨張黒鉛テープ厚さがシール性に大きく影響することが判った。特に、膨張黒鉛テープ厚さの上限値と下限値、膨張黒鉛はみ出し量の下限値には、その前後で漏洩量が大きく変わることから、臨界的意義が認められた。
【0036】
参考例1
内輪及び外輪の厚み1.2mm、1.2mmに代えて、内輪及び外輪の厚み0.8mm、0.8mmとした以外は、実施例1と同様の方法で、内外輪付き渦巻形ガスケットを作製した。得られた内外輪付き渦巻形ガスケットは、下記の外輪外れ試験を実施した。また、実施例1についても同様に、外輪外れ試験を実施した。
【0037】
(外輪外れ試験)
図5に示す外輪外れ試験装置を使用して、外輪外れ試験を行った。外輪外れ試験は図5に示すように、外輪4に低い荷重から順次、高い荷重をかけ、外輪4がガスケット本体から外れる荷重を測定した。測定は島津製作所製オートグラフAG−5000Cを用いて行なった。その結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
参考例1の呼び厚さ1.6mmの内外輪付き渦巻形ガスケットは、外輪の厚みが薄すぎて、加え込みが減少する。このため、外輪はずれ荷重は30N以下であった。このように、30N以下になると通常のハンドリングでも外輪がはずれやすい状態になる。これに対して、実施例1の呼び厚さ1.6mmの内外輪付き渦巻形ガスケットは、外輪はずれ荷重は53〜73Nで、加え込みも十分であり、外輪は外れにくいものであった。
【0040】
参考例2
内輪及び外輪の厚み1.2mm、1.2mmに代えて、内輪及び外輪の厚み1.7mm、1.7mmとした以外は、実施例1と同様の方法で、内外輪付き渦巻形ガスケットを作製した。これを実施例1のシール試験と同様の方法でシール性能を測定したところ、漏洩量は、N=1で、5.3ml/10分、N=2で、7.2ml/10分であった。これは、外輪4の厚みが大きすぎてガスケット本体部Xの厚みに近くなり、適切な圧縮量が確保できず、シール性能が悪くなったものである。
【符号の説明】
【0041】
1 金属フープ材
2 膨張黒鉛
3 内輪
4 外輪
5 受圧面
6 貫通穴(流路)
7 空巻き部
8 第1内輪
9 シール面
10 渦巻形ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略V字断面の金属製フープ材と膨張黒鉛テープとが重ねて巻き回されてなり、両側面がシール面に当接する受圧面となるガスケット本体部を有する渦巻形ガスケットであって、
下記(1)〜(4)の要件;
(1)該ガスケット本体厚さ(t)1.6〜2.0mm、
(2)該金属製フープ材厚さ(t)0.14〜0.18mm及び略V字断面における金属製フープ材の幅(t)1.4〜1.7mm、
(3)はみ出し量(t)−(t)= 0.1 〜 0.4mm、
(4)巻き回し前の膨張黒鉛テープ厚さ0.3〜0.45mm、
(5)渦巻きガスケットにおける膨張黒鉛フィラー厚さ(t)0.05〜0.47mm
を満たすことを特徴とする渦巻形ガスケット。
【請求項2】
前記ガスケット本体部の外周に、金属製フープ材が巻き回された外周空巻き部を形成することを特徴とする請求項1記載の渦巻形ガスケット。
【請求項3】
前記ガスケット本体部の内周に、金属製フープ材が巻き回された内周空巻き部を形成することを特徴とする請求項1記載の渦巻形ガスケット。
【請求項4】
前記外周空巻き部の外周に、該ガスケット本体部の厚みより小の厚みを有する外輪を形成することを特徴とする請求項2記載の渦巻形ガスケット。
【請求項5】
前記内周空巻き部の内周に、該ガスケット本体部の厚みより小の厚みを有する内輪を形成することを特徴とする請求項3記載の渦巻形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7276(P2011−7276A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152013(P2009−152013)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】