説明

渦流発生器及びその発生器を用いた加熱流体通流加熱装置

【課題】 配管内を流れる流体に渦巻きを発生させ配管内の内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体との間に発生する境界層を確実になくすことができるようにすること。
【解決手段】 周方向に複数の凹部11aを形成した波状の凹凸を有する筒体からなり、凹部11aの端縁に略三角形状の切り越し片11bを形成し、この円筒を配管18に、切り越し片11bが配管18内を流れる流体の上流側に向けて嵌合配置し、配管18内の中央部を流れる流体を切り越し片11bによって凹部11aにねじ込み、内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体とを巻き込んだ渦流を発生させる。これにより配管内の境界層が薄くなり、配管内を流れる流体の均温化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内に流れる流体の渦流発生器及びその発生器を用いた加熱流体通流加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばローラ内に加熱した流体を通流してローラの表面温度を所定の温度に維持し、樹脂フィルムなどの処理物をローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。この場合、ローラは熱交換器を設けた流体の循環路中に配置され、その熱交換器により加熱された流体をローラ内に供給し、この流体の通流でローラに熱を加えるように構成されている。そして、ローラの表面温度を所定の温度に維持するためにローラ内へ流入する流体の温度を検出し、その検出とローラの表面温度を所定の温度とするための予め設定した目標値と比較し、その偏差によりたとえば熱交換器の発熱量を制御し、熱交換器を通流する熱媒体の温度を制御し、これによりローラの表面温度を所定の温度に保持している。
【特許文献1】特開2004−195888号公報
【0003】
しかし、この温度制御では、迅速にローラの表面温度を所定の温度とすることができない場合、たとえば流体の物性値(粘度、密度等)が変わると表面温度を所定の温度とすることができないといった問題があった。この問題の発生を究明したところ、配管内を流れる流体の温度が配管外部からの加熱または冷却に影響され、図4に示すように流体2が流れる配管1内で、中央部を流れる流体2bと温度などの異なる流体が流れる境界層2aが発生し、この境界層は流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速により温度差も境界層の厚みも変化することによるものと判明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、配管内の中央部を流れる流体と温度などの異なる流体が流れる内壁近くの境界層を確実に薄くし、境界層の発生による問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体が通流する管の内部に嵌合配置され、管内を流れる流体に渦を発生させる渦流発生器であって、周方向に波状の凹凸を有し、長手方向の凹部に位置する一端にその端縁から管の内壁と平行する切込みを形成し、前記切込みから斜め方向内側に折り曲げた略三角形状の切り越し片を形成してなる筒体からなることを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、配管内の中央部を流れる流体は略三角形状の切り越し片によって配管内の内壁部にねじ込まれ、内壁近くを流れる流体と中央部を流れる流体とが入り混じって配管内の中央部に収斂する渦流が発生し、この渦流によって配管内を流れる流体の境界層が、小さい流体抵抗で、きわめて薄くなり、配管内の流体のたとえば温度が均一化され、流体の熱量、物性値(粘度、密度等)、流速に関わらず配管内を通流する流体の温度などを簡単かつ正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
配管内の中央部を流れる流体と温度などの異なる流体が流れる内壁近くの境界層を確実に薄くする目的を、周方向に波状の凹凸を形成した筒体からなり、前記筒体凹部の端縁に、内側斜め方向に折り曲げた略三角形状の切り越し片を形成した渦流発生器を配管内に設けることにより実現した。
【実施例】
【0008】
図1は、本発明の実施例に係る渦流発生器の構成を示すもので、(a)は正面図、(b)はX−X断面図、図2は図1の渦流発生器の端部の一部を拡大して示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。図1および図2において、11は渦流発生器、18は管である。渦流発生器11は、本例ではSUS(ステンレススチール)製で外径42.7mm、肉厚3.0mmの周方向に波状の凹凸(図示では6箇所)を形成した筒体をなし、その凹部11aの窪みの最大深さは約3mmとされ、筒体凹部11aの端縁に内側に折り曲げた三角形状の切り越し片11bが形成されている。
【0009】
切り越し片11bは、図2(b)に示すように長手方向の凹部11aに位置する一端にその端縁から管18の内壁と平行する略10mmの切込み11cを形成し、その切込みから斜め方向内側に略45度折り曲げて形成された頂点の角α略30度の直角三角形状をなしている。なお、以上の各数値は一例であってこれらの数値に限定されるものではない。
【0010】
そして、渦流発生器11は配管18の内壁との間に僅かな隙間を隔てて配管18内に固定されている。配管18の両側の端部には、フランジ18a、18bが設けられ、流体が流れる配管とフランジ18a、18bにより切り越し片11bを流体の流入側に向けて連結する。
【0011】
このように構成された渦流発生器11は、配管内の中央部を流れる流体は切り越し片11bによって配管内の内壁部にねじ込まれ、内壁近くの凹部11aを流れる流体と中央部を流れる流体とが入り混じって配管内の中央部に収斂する渦流が発生し、この渦流によって配管内を流れる流体の境界層が、小さい流体抵抗で、薄くなり、配管内の流体のたとえば温度は均一化される。
【0012】
図3は、このように構成された渦流発生器11の使用例を示す図で、図3において、3はローラ本体を構成するロールシェル、4は図示しないモータにより回転してロールシェルを回転する回転駆動軸、5は中子、6はロータリジョイント、7はポンプ、8は冷却用熱交換器、9は加熱用熱交換器、10は配管、12は熱媒体の温度検出器、13はローラ表面の温度検出器、14は回転トランス、15は温度調節器、16はサイリスタなどの加熱電力制御回路、17は冷却水調整電磁弁である。
【0013】
ロールシェル3は円筒状をなし、この例ではその肉厚内部に長手方向に沿う密閉室3aと温度検出器を挿入する挿入孔3bが形成され、挿入孔3bには、ロールシェル3の表面温度を検出する温度検出器13が配置され、密閉室3a内には、潜熱移動によってロールシェル3の表面の温度を均一化する水などの気液二相の熱媒体が封入されている。そして、ロールシェル3の中空内部に中子5が配置され、中子5の中央部を貫通して熱媒体通流路5aが形成されている。熱媒体通流路5aは回転駆動軸4内を経てロータリジョイント6の流入口に連結され、ロールシェル3の内周壁と中子5の外周壁との間で形成された熱媒通流路3cは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント6の出口に連結されている。
【0014】
ロールシェル3内を通流する熱媒体は、ポンプ7により配管10内を通流して冷却用熱交換器8、加熱用熱交換器9を順に経由して循環する。加熱用熱交換器9には電熱ヒータが配置され、このヒータにより所定の温度に加熱された熱媒体をロールシェル3内へ送る。加熱用熱交換器9からロールシェル3内へ送る配管10には、温度検出器12が配置され、この温度検出器12の温度検出信号と、ロールシェル3に配置された温度検出器13の温度検出信号が温度調節器15に入力され、予め設定した目標値と比較し、その偏差信号を加熱電力制御回路に送り、電熱ヒータに供給する電力、すなわち熱媒体の温度を制御する。また、温度調節器15の出力信号は、冷却水調整電磁弁17を制御し温度変動に伴う熱媒体の応答速度を高める。
【0015】
図1に示す渦流発生器11は、加熱用熱交換器9と温度検出器12との間に挿入されている。この渦流発生器11の挿入により、渦流発生器11を通過した直後の配管内を流れる熱媒体は均温化され温度検出器12の挿入位置に影響されず、配管内を通流する熱媒体の温度を正確に検出することができ、迅速にローラなどの加熱装置の表面温度を所定の温度にすることができる。
【0016】
なお、以上の使用例は加熱装置がローラであるが、加熱装置はローラに限らずたとえば平板状の加熱板であっても良い。また、熱媒体の温度を検出して熱媒体の温度を制御するものであるが、熱媒体の温度を検出して熱媒体の通流量を制御する場合にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る渦流発生器の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図2】図1の渦流発生器の端部の一部を拡大して示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の使用例に係る熱媒体通流ローラ装置の構成を示す図である。
【図4】配管内を流れる流体の温度分布の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1、10、18 配管
3 ロールシェル
4 回転駆動軸
5 中子
6 ロータリジョイント
7 ポンプ
8 冷却用熱交換器
9 加熱用熱交換器
10 配管
11 渦流発生器
11a 凹部
11b 切り越し片
12 熱媒体の温度検出器
13 ローラ表面の温度検出器
14 回転トランス
15 温度調節器
16 加熱電力制御回路
17 冷却水調整電磁弁
19 回転接続器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通流する管の内部に嵌合配置され、管内を流れる流体に渦を発生させる渦流発生器であって、周方向に波状の凹凸を有し、長手方向の凹部に位置する一端にその端縁から管の内壁と平行する切込みを形成し、前記切込みから斜め方向内側に折り曲げた略三角形状の切り越し片を形成してなる筒体からなることを特徴とする渦流発生器。
【請求項2】
略三角形状の切り越し片の頂角を略30度とし、切り越し角度を略45度としてなることを特徴とする請求項1に記載の渦流発生器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の渦流発生器を、流体を加熱する加熱器と、前記加熱器で加熱された流体を通流して加熱する加熱体と、前記加熱体と加熱器とを連結し前記加熱器で加熱された流体を前記加熱体へ送る配管と、前記配管内に流れる流体の温度を検出する検出器とを有し、前記検出器の検出温度に基づいて前記加熱体の表面温度を制御してなる加熱流体通流加熱装置の前記加熱器と検出器との間の配管内に設けてなることを特徴とする加熱流体通流加熱装置。
【請求項4】
加熱体が加熱流体を通流するローラであることを特徴とする請求項3に記載の加熱流体通流加熱装置。
【請求項5】
加熱体が加熱流体を通流する平板であることを特徴とする請求項3に記載の加熱流体通流加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−301758(P2007−301758A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130524(P2006−130524)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】