説明

温度センサ

【課題】保護管及びエレメント管が接触して破損することを防止すると共にエレメント管の抜き差しを容易にする温度センサを提供する。
【解決手段】流体が流れる流路に配置される保護管22と、保護管22内に配置されるエレメント管23と、エレメント管23内に配置されて流体の温度を計測する計測手段Mと、保護管22とエレメント管23との間に配置される樹脂の保護部材24とを備え、
保護部材24は、保護管22からエレメント管23を抜き差し可能にする構成を備えると共に、振動による保護管22とエレメント管23の接触を防止するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機等に配置される温度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に圧縮機は、図6に示す如く、空気等の流体により駆動するインペラ1と、圧縮した流体を冷却するインタクーラ2と、インペラ1とインタクーラ2を接続する配管3とを備えており、配管3には、インペラ1の出入口近傍等に位置するように温度センサ4が備えられている。
【0003】
温度センサ4は、図7、図8に示す如く、流体5が流れる配管3に固定される保護管6と、保護管6内に配置されるエレメント管7と、エレメント管7内に配置されて流体5の温度を計測する測温抵抗体素子8と、配管3の外部に位置するようにエレメント管7の端部に配置されるターミナルヘッド9とを備えている。
【0004】
保護管6は、配管3の内方から外方へ延在して構成され、外方端寄りの外周面にねじ込み構造やフランジ構造の外側固定部10を備えて配管3に取り付けられている。又、保護管6の外方端の内周面には凹部やネジ溝等の内側固定部11を構成している。更に保護管6には、配管3内の流体5の流れに伴うカルマン渦によって数百Hzの低周波振動を生じることから、低周波振動に耐える高い剛性が備えられている。
【0005】
エレメント管7は、保護管6と同軸状に保護管6の内側端から外方へ延在し、中途位置に補強パイプ12を備えて後端のターミナルヘッド9に接続されている。又、エレメント管7は、先端で保護管6の内方端に接触すると共に、中途位置の外周面にフィンやネジ溝等の締結部13を備えて保護管6の内側固定部11に固定されている。更に保護管6とエレメント管7には、互いに接触しないように所定幅の隙間14が備えられている。
【0006】
測温抵抗体素子8はエレメント管7の先端近傍に位置しており、測温抵抗体素子8には、エレメント管7内に沿ってターミナルヘッド9まで延在する導線15が接続されている。又、測温抵抗体素子8とエレメント管7との間には、MgO等の充填材を配して測温抵抗体素子8が固定されている。
【0007】
ターミナルヘッド9は、内部に端子(図示せず)を備えており、端子には測温抵抗体素子8の導線15が接続されている。
【0008】
流体5の温度を測定する際には、測温抵抗体素子8を介して温度を測定している。又、測温抵抗体素子8やエレメント管7の補修や交換等を行う際には、エレメント管7を保護管6から引き抜き、補修や交換等を行って保護管6に戻すようにしている。
【0009】
ここで温度センサ4の他の例では、保護管6とエレメント管7の間に流体や粉体を充填するものや、保護管6とエレメント管7の間に金属筒を配置するものがあり、更に保護管6の内方端側とエレメント管7の先端側との間に、熱導電率の良い金属ウール等の熱伝導部材を配置するものがある。
【0010】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1、2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公平1−8983号公報
【特許文献2】特開2006−258724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、温度センサ4を配置する圧縮機が多段(図6では4段)で数千kWの出力の遠心圧縮機である場合には、出力のロス分に相当するエネルギが数kHzの高周波振動となって温度センサ4の保護管6及びエレメント管7に作用するため、保護管6及びエレメント管7が柔構造になると共に保護管6とエレメント管7との剛性の違いによって図9に示す如く保護管6及びエレメント管7に異なる定在波を生じ、保護管6とエレメント管7の接触に伴う衝撃加速度によって保護管6やエレメント管7に破損を生じる可能性があった。ここで図9の破線の箇所は保護管6とエレメント管7の接触位置を示している。又、保護管6は配管3内に設置されるため、保護管6に破損を生じた場合には、配管3の流体5が保護管6内に流れ込むおそれがあった。更にエレメント管7に破損を生じた場合には、測温抵抗体素子8の導線15に断線を生じるおそれがあった。
【0013】
又、保護管6とエレメント管7の間に流体や粉体を充填した場合には、保護管6とエレメント管7の締結位置から流体や粉体が漏れないように保護管6の先端を下方に向けて配置する必要があるため、取付位置が制限されると共に、流体や粉体によってエレメント管7の抜き差しが困難になるという問題があった。更に又、保護管6とエレメント管7の間に金属筒を配置した場合であっても、数kHzの高周波振動に対応することができず、保護管6やエレメント管7に破損を生じる可能性があった。
【0014】
本発明は、斯かる実情に鑑み、保護管及びエレメント管が接触して破損することを防止すると共にエレメント管の抜き差しを容易にする温度センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の温度センサは、流体が流れる流路に配置される保護管と、該保護管内に配置されるエレメント管と、該エレメント管内に配置されて流体の温度を計測する計測手段と、前記保護管とエレメント管との間に配置される樹脂の保護部材とを備え、
前記保護部材は、保護管からエレメント管を抜き差し可能にする構成を備えると共に、振動による保護管とエレメント管の接触を防止するように構成されたものである。
【0016】
又、本発明の温度センサにおいて、振動は、流体のカルマン渦に伴う振動よりも高い高周波振動である。
【0017】
更に本発明の温度センサにおいて、保護部材は、保護管との間又は/及びエレメント管との間に、保護管からエレメント管を抜き差し可能にする隙間を備えることが好ましい。
【0018】
更に又、本発明の温度センサにおいて、保護部材は、エレメント管の外周面にシート状の樹脂又は帯状の樹脂を巻き付けて構成されることが好ましい。
【0019】
又、本発明の温度センサにおいて、保護管の内側端とエレメント管の先端との間に第二保護部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の温度センサによれば、高周波振動が作用して保護管とエレメント管に異なる定在波を生じる場合であっても、樹脂の保護部材が、振動による保護管とエレメント管の接触を防止して保護管及びエレメント管への衝撃加速度を除去するので、保護管やエレメント管の破損を抑制し、よって配管の流体が保護管内に流れ込むおそれや、高周波振動によって計測手段の導線に断線を生じるおそれを無くすことができる。又、樹脂の保護部材は、保護管からエレメント管を抜き差し可能にする構成を備えるので、保護管とエレメント管の間に流体や粉体を充填した場合と異なり、取付位置の制限を緩和すると共に、エレメント管の抜き差しを容易にすることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の温度センサを示す全体概要図である。
【図2】本発明の温度センサの構成を示す断面図である。
【図3】図2のIII−III方向矢視図である。
【図4】温度センサの構成の他の例を示す概念図である。
【図5】温度センサの構成の別の例を示す概念図である。
【図6】圧縮機に温度センサを配置した箇所を示す概念図である。
【図7】従来の温度センサを示す全体概要図である。
【図8】従来の温度センサの構成を示す断面図である。
【図9】高周波振動により保護管及びエレメント管が定在波を生じる状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施する形態例を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明の実施の形態例であり、実施の形態例である温度センサ21は、空気等の流体5が流れる配管(流路)3に配置される保護管22と、保護管22内に配置されるエレメント管23と、エレメント管23内に配置されて流体5の温度を計測し得るように測温抵抗体素子8や熱電対(図示せず)等から選択される計測手段Mと、保護管22の内周面とエレメント管23の外周面との間に配置される樹脂の保護部材24と、保護管22の内方端側とエレメント管23の先端側との間に配置される第二保護部材25と、配管3の外部に位置するようにエレメント管23の端部に配置されるターミナルヘッド9あるいは補強パイプ23aに延在するリード線(図示せず)を備えている。
【0024】
保護管22は、配管3の内方から配管3の内面近傍まで延在する保護管本体22aと、保護管本体22aの配管寄り端側に位置し且つ配管3に固定し得るようにねじ込み構造等で構成される固定手段22bと、配管3の外周面に位置するように固定手段22bの外方端に形成される保護管台座部22cとを備えている。又、保護管22とターミナルヘッド9の間には、コンプレッションフィッティングの固定手段26が配置されても良い。
【0025】
又、保護管22には、配管3内の流体5の流れに伴うカルマン渦によって数百Hzの低周波振動を生じることから、低周波振動に耐える高い剛性が備えられている。ここで保護管22の固有振動数は200〜400kHzになっている。
【0026】
エレメント管23は、保護管22と同軸状に保護管22の内側端から外方へ延在し、中途位置に補強パイプ23aやフレキシブル管23bを備えて後端のターミナルヘッド9に接続されている。ここで補強パイプ23aは、保護管22の固定手段22b近傍位置から
配管3の外方中途位置(図1では固定手段26の外方位置まで)まで延在し、エレメント管23の折れを抑制するようにしている。又、補強パイプ23aはフレキシブル管23bに接続しても良いし、ターミナルヘッド9に直接接続しても良い。
【0027】
又、エレメント管23は、図2のように先端を保護管22の内方端部に接触させている。他の実施例として、図1にように保護管22の内方端部をテーパ状にし、エレメント管23の先端を保護管22のテーパ状の内方端部に接触させると同時に安定的に保持するようにしても良い。更に図4、図5に示すように保護管22とエレメント管23の間に、樹脂の保護部材24と第二保護部材25とを配置し得る所定幅の隙間27を備え、エレメント管23の先端を第二保護部材25aによって保護管22の内側端部に接触させないようにしても良い。
【0028】
樹脂の保護部材24は、エレメント管23の外周に0.2mm以上5.0mm以下の厚さの樹脂層を形成するように、エレメント管23の外周面にシート状の樹脂又は帯状の樹脂を隙間無く巻き付けて構成されている。又、保護部材24は、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、天然ゴム等の弾性素材で構成されている。ここで樹脂の保護部材24は、樹脂の筒体を差し込んだものでも良いし、流動性の樹脂を充填して固化したものでも良いし、他の手段で構成したものでも良い。
【0029】
又、樹脂の保護部材24は、保護管22との間又は/及びエレメント管23との間に、保護管22からエレメント管23を抜き差し可能にする所定幅の隙間28を備えている(図2では隙間28を保護部材24と保護管22との間に備えている)。ここで保護管22からエレメント管23を抜き差し可能にする構成は、樹脂の保護部材24が保護管22又はエレメント管23に摺動してエレメント管23を抜き差し可能にするものでも良い。
【0030】
更に、第二保護部材25は、カッパウール等の金属ウール、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、天然ゴム等の樹脂から選択される弾性素材であり、エレメント管23の先端寄り外周面に衝撃の緩衝帯を形成するように、エレメント管23の先端寄り外周面に配置されている。
【0031】
ここで保護管22の内側端とエレメント管23の先端との間に第二保護部材25aを配置する場合には、第二保護部材25aをカッパウール等の金属ウールや樹脂等にし、間接的に熱伝達する構成が好ましい。
【0032】
一方、実施の形態例である温度センサ21は、多段で数千kWの出力の遠心圧縮機に備えられるものであり、温度センサ21の保護管22及びエレメント管23に作用する振動は、流体5のカルマン渦に伴う数百Hzの低周波振動に加え、それよりも高い数kHzの高周波振動(1kHz以上6kHz以下)となっている。ここで温度センサ21に作用する振動が高周波振動であるならば、温度センサ21を配置する機器は、遠心圧縮機に限定されるものではなく、他の動力手段や装置でも良い。
【0033】
以下本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0034】
流体5の温度を測定する際には、測温抵抗体素子8等の計測手段Mを介して温度を測定する。又、計測手段Mのエレメント管23の補修や交換等を行う際には、エレメント管23を保護管22から引き抜き、補修や交換等を行って保護管22に戻す。
【0035】
遠心圧縮機により数kHzの高周波振動が保護管22及びエレメント管23に作用する場合には、保護管22とエレメント管23に異なる定在波が生じる一方で、樹脂の保護部材24が振動を吸収して保護管22とエレメント管23の接触を防止する。
【0036】
而して、実施の形態例によれば、高周波振動が作用して保護管22とエレメント管23に異なる定在波を生じる場合であっても、樹脂の保護部材24が、振動による保護管22とエレメント管23の接触を防止して保護管22及びエレメント管23への衝撃加速度を除去するので、保護管22やエレメント管23の破損を抑制し、よって配管3の流体5が保護管22内に流れ込むおそれや、高周波振動によって計測手段Mの導線15に断線を生じるおそれを無くすことができる。又、保護管22とエレメント管23との間に配置される樹脂の保護部材24により全体の耐久性を向上させるので、安価で高性能の測温抵抗体素子8を用いることが可能となり、結果的に製造コストを低減すると共に計測精度を高めることができる。更に樹脂の保護部材24の厚さを0.2mm以上5.0mm以下にすると、振動による保護管22とエレメント管23の接触を適切に防止して保護管22及びエレメント管23への衝撃加速度を除去するので、保護管22やエレメント管23の破損を好適に抑制することができる。ここで樹脂の保護部材24の厚さを0.2mm未満にすると振動による保護管22とエレメント管23の接触を適切に防止することができないという問題がある。又、樹脂の保護部材24の厚さを5.0mmより大きくしても、高周波振動に対する耐久性改善効果は、厚さが増すに従い穏やかになるので、経済的な合理性が得られなくなる。
【0037】
又、樹脂の保護部材24は、保護管22からエレメント管23を抜き差し可能にする構成を備えるので、保護管22とエレメント管23の間に流体や粉体を充填した場合と異なり、取付位置や取付方向の制限を緩和すると共に、エレメント管23の抜き差しを容易にすることができる。
【0038】
実施の形態例において、振動が、流体5のカルマン渦に伴う振動よりも高い数kHzの高周波振動である場合であっても、樹脂の保護部材24が、振動による保護管22とエレメント管23の接触を適切に防止して保護管22及びエレメント管23への衝撃加速度を除去するので、保護管22やエレメント管23の破損を好適に抑制することができる。又樹脂の保護部材24は、振動が1kHz以上6kHz以下の高周波振動である場合に極めて好適に対応することができる。
【0039】
実施の形態例において、保護部材24は、保護管22との間又は/及びエレメント管23との間に、保護管22からエレメント管23を抜き差し可能にする隙間28を備えると、エレメント管23の抜き差しを一層容易にすることができる。
【0040】
実施の形態例において、保護部材24は、エレメント管23の外周面にシート状の樹脂又は帯状の樹脂を巻き付けて構成されると、振動による保護管22とエレメント管23の接触を防止して保護管22及びエレメント管23への衝撃加速度を除去すると共に、樹脂の保護部材24を容易に形成して製造コストを低減することができる。
【0041】
実施の形態例において、保護管24の内側端とエレメント管23の先端との間に第二保護部材25aを備えると、エレメント管23の外周面のみならず先端に衝撃の緩衝帯を形成するので、先端側で振動による保護管22とエレメント管23の接触を防止し、保護管22やエレメント管23の破損を極めて好適に抑制することができる。
【0042】
尚、本発明の温度センサは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
3 配管(流路)
5 流体
21 温度センサ
22 保護管
23 エレメント管
24 保護部材
25 第二保護部材
25a 第二保護部材
28 隙間
M 計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路に配置される保護管と、該保護管内に配置されるエレメント管と、該エレメント管内に配置されて流体の温度を計測する計測手段と、前記保護管とエレメント管との間に配置される樹脂の保護部材とを備え、
前記保護部材は、保護管からエレメント管を抜き差し可能にする構成を備えると共に、振動による保護管とエレメント管の接触を防止するように構成されたことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
振動は、流体のカルマン渦に伴う振動よりも高い高周波振動であることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
保護部材は、保護管との間又は/及びエレメント管との間に、保護管からエレメント管を抜き差し可能にする隙間を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項4】
保護部材は、エレメント管の外周面にシート状の樹脂又は帯状の樹脂を巻き付けて構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項5】
保護管の内側端とエレメント管の先端との間に第二保護部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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